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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D
管理番号 1349233
審判番号 不服2018-2104  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-15 
確定日 2019-03-12 
事件の表示 特願2015-225466「混合気で作動する内燃エンジンの始動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月30日出願公開、特開2016-98826、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月18日(パリ条約による優先権主張2014年(平成26年)11月24日(AT)オーストリア共和国)の出願であって、その手続は以下のとおりである。
平成28年8月30日(発送日) :拒絶理由通知書
平成29年1月23日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年2月7日(発送日) :拒絶理由通知書(最後)
平成29年4月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年6月13日(発送日) :拒絶理由通知書
平成29年9月7日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年10月17日(発送日):拒絶査定
平成30年2月15日 :審判請求書の提出
平成30年9月18日(発送日) :拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)
平成30年12月13日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成29年10月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし8に係る発明は、以下の引用文献AないしDに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開平9-112353号公報
B.特開2006-291940号公報
C.実願昭57-94481号(実開昭59-560号)のマイクロフィルム
D.特開2009-57871号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし8に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし8
・引用文献1及び引用文献2

引用文献等一覧
1.特開平9-112353号公報 (原査定の引用文献A)
2.特開2012-17663号公報 (当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成30年12月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
混合気で作動する内燃エンジン(1)の始動方法であって、
前記混合気の一部として前記内燃エンジン(1)に供給されるのが、前記混合気のエネルギー含有量の特性である、少なくとも1つのパラメータに関して確認される燃料体積流(QB)であり、
前記内燃エンジン(1)は、前記内燃エンジン(1)が自発的に動き続けるまで、スタータ装置(2)により駆動し、
前記内燃エンジン(1)に供給される前記燃料体積流(QB)は、前記内燃エンジン(1)が自発的に動き続けるまで、前記混合気の前記エネルギー含有量の特性である、前記少なくとも1つのパラメータの減少により変動し、
前記少なくとも1つのパラメータが、最小必要空気量(lmin)および前記混合気の燃焼空気比(lambda)のうちの少なくとも1つを含み、
前記内燃エンジン(1)が自発的に動き続ける、前記混合気の前記エネルギー含有量の特性である、前記少なくとも1つのパラメータのパラメータ値が、少なくとも前記内燃エンジン(1)のさらなる動作に向けての時間の間だけほぼ一定に保たれ、
前記内燃エンジンへの出力要求が所定量を超えるときには、前記最小必要空気量を一定に保ったまま、前記混合気の前記燃焼空気比を増加させる、
方法。
【請求項2】
前記混合気の前記エネルギー含有量の特性である、前記少なくとも1つのパラメータが、あらかじめ設定することができる初期値を始点に変動することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内燃エンジン(1)に供給される前記燃料体積流(QB)が、式
QB=QG/(1+lambda*lmin)
により確認され、式中、QBは前記内燃エンジン(1)に供給される前記燃料体積流、QGは前記混合気のあらかじめ設定することができる混合体積流、lambdaは前記混合気の燃焼空気比、lminは前記燃料に関する最小必要空気量である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
lminが変動することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
lminが、好ましくは、初期値として約10を始点に減少することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
lambdaが変動することを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
lambdaが、好ましくは、初期値として約2を始点に減少することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
最大で前記内燃エンジンの定格負荷の30%の、前記内燃エンジン(1)の出力要求まで、前記パラメータ値がほぼ一定に保たれることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。」

第5 特許法第29条第2項(進歩性)についての判断
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1
平成30年9月14日付けの当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献1(特開平9-112353号公報)には、「ガスエンジン」に関して、図面(特に、図1を参照。)とともに以下の事項が記載されている(なお、下線部は当審が付した。以下同様。)。

ア「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、図1に示すように、次のようにしたことを特徴とする。すなわち、ガス燃料供給通路1に開度調節式のガス計量ジェット2を設け、所定位置に制御手段4とエンジン始動検出手段5と記憶手段6とを設け、上記ガス計量ジェット2の開度変更手段3とエンジン始動検出手段5と記憶手段6とを、上記制御手段4に連携させてある。
【0007】そして、上記制御手段4により、開度初期設定処理S_(1)、エンジン始動判断S_(3)を順に行い、このエンジン始動判断S_(3)で否定的判断Nがなされた場合には、このエンジン始動判断S_(3)での肯定的判断Yが得られるまで、上記制御手段4による開度更新処理S_(4)と上記エンジン始動判断S_(3)とからなるサイクルを、1回または複数回繰り返して行い、上記エンジン始動判断S_(3)で肯定的判断Yが得られた場合には、上記制御手段4により始動開度記憶処理S_(5)を行い、その後は上記制御手段4によりジェット制御処理S_(6)を行うようにしてある。
【0008】そして、上記開度初期設定処理S_(1)では、ガス計量ジェット2の開度を所定の大きさに設定し、上記エンジン始動判断S_(3)ではエンジン始動検出手段5の検出に基づいてエンジンが始動したかどうかを判断し、上記開度更新処理S_(4)ではガス計量ジェット2の開度が大きくなるように更新し、上記始動開度記憶処理S_(5)ではエンジンが始動した時のガス計量ジェット2の始動時開度を記憶手段6に記憶させ、上記ジェット制御処理S_(6)では記憶手段6に記憶させた始動時開度を基準にして、エンジン始動時及びエンジン運転時のガス計量ジェット2の開度制御を行うようにしてある。」

イ「【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この実施形態で用いるガスエンジンの構成は次の通りである。すなわち、図1(A)に示すように、ガス燃料供給通路1に開度調節式のガス計量ジェット2を設け、所定位置に制御手段4とエンジン始動検出手段5と記憶手段6とを設け、上記ガス計量ジェット2の開度変更手段3とエンジン始動検出手段5と記憶手段6とを、上記制御手段4に連携させてある。
【0011】ガス燃料供給通路1は、主通路1aとバイパス通路1bとからなり、ガス計量ジェット2は主ジェット2aと副ジェット2bとからなる。主通路1aはガス供給源7から導出してガスミキサ8のノズル9に接続してある。このノズル9の先端はベンチュリ部10内に突き出している。主通路1aにはその上流側からレギュレータ11、主ジェット2aを順に配置してある。バイパス通路1bは、主ジェット2aの上流側で、主通路1aから分岐させ、主ジェット2aの下流側で、主通路1aに接続してある。バイパス通路1bの途中には副ジェット2bを配置してある。
【0012】主ジェット2aと副ジェット2bには各計量口に臨む弁体12をそれぞれ設け、各弁体12を開度変更手段3に連動連結してある。開度変更手段3には各弁体12を進退させる機構を備えたモータを用いている。主ジェット2aでは燃料ガス流量の粗調節を行い、副ジェット2bでは微調節を行う。制御手段4と記憶手段6にはマイクロコンピュータを用いている。エンジン始動検出手段5には、エンジン回転速度検出センサを用い、これをクランク軸13に固定したリングギヤ14に臨ませている。
【0013】この実施形態では、上記制御手段4により、開度初期設定処理S_(1)、エンジン始動判断S_(3)を順に行い、このエンジン始動判断S_(3)で否定的判断Nがなされた場合には、このエンジン始動判断S_(3)での肯定的判断Yが得られるまで、上記制御手段4による開度更新処理S_(4)と上記エンジン始動判断S_(3)とからなるサイクルを、1回または複数回繰り返して行い、上記エンジン始動判断S_(3)で肯定的判断Yが得られた場合には、上記制御手段4により始動開度記憶処理S_(5)を行い、その後は上記制御手段4によりジェット制御処理S_(6)を行うようにしてある。
【0014】エンジン始動判断S_(3)の前提として、エンジン始動を試みる必要があるが、この実施形態では、上記制御手段4により、自動的にスタータ作動処理S_(2)を行わせるようにしてある。このスタータ作動処理S_(2)では、エンジン始動判断が終了するまでスタータ15を数秒間作動させ、判断終了時にはスタータ15を停止させる。このスタータ作動処理S_(2)では、エンジン始動判断S_(3)で肯定判断Yがなされるまで、スタータ15を作動させ続けるようにしてもよいが、バッテリの無駄な放電を回避できる点では、判断終了時にスタータ15を一旦停止し、開度更新処理S_(4)が終了した後、再度スタータ15を作動させるほうが望ましい。尚、エンジン始動の試みは、自動化によらず、作業者のキースイッチ操作にまかせてもよい。
【0015】上記各処理及び判断の詳細は次の通りである。すなわち、上記開度初期設定処理S_(1)では、ガス計量ジェット2の開度を所定の大きさに設定し、上記エンジン始動判断S_(3)ではエンジン始動検出手段5の検出に基づいてエンジンが始動したかどうかを判断し、上記開度更新処理S_(4)ではガス計量ジェット2の開度が大きくなるように更新し、上記始動開度記憶処理S_(5)ではエンジンが始動した時のガス計量ジェット2の始動時開度を記憶手段6に記憶させ、上記ジェット制御処理S_(6)では記憶手段6に記憶させた始動時開度を基準にして、エンジン始動時及びエンジン運転時のガス計量ジェット2の開度制御を行うようにしてある。
【0016】このような構成によれば、エンジン始動がなされるまで、ガス計量ジェット2の開度が初期設定状態から次第に大きくなるように順次更新し、エンジンが始動した時の始動時開度を記憶し、以降、これを基準としてエンジン始動時またはエンジン運転時のガス計量ジェット2の開度制御を行うので、使用ガス種毎に内径の異なるガス計量ジェットを取り付ける必要はなく、使用ガス種の差異に基づくエンジン管理を簡素化できる。
【0017】この実施形態の構成をより具体的に説明する。すなわち、所定位置に処理スイッチ17を設け、この処理スイッチ17を制御手段4に連携させ、処理スイッチ17のON操作によって、開度初期設定処理S_(1)から始動開度記憶処理S_(5)までの一連の処理を自動的に行わせ、それ以降は、処理スイッチ17が再度ON操作されない限り、その始動開度記憶処理S_(5)で記憶された始動時開度を基準にして、エンジン始動時及びエンジン運転時のガス計量ジェット2の開度制御が行われるようにしてある。そして、処理スイッチ17が再度ON操作されると、リセット状態となり、記憶手段6の記憶が消滅し、初回の処理スイッチ17のON操作の場合と同じ処理がなされる。」

ウ「【0019】ガス計量ジェット5の初期開度や更新開度の選定は次のようにして行う。すなわち、予想される使用ガス種は14種類で、発熱量の大きさの順により第1順位から第14順位まであるため、初期開度は第1順位のものでしか始動できない程度に最も小さく設定し、第1回更新開度は第1順位のものを除き、第2順位のものでしか始動できない程度にやや小さく設定し、以降、第13回更新開度まで、発熱量の大きさに対応して、同様にして次第に大きくなるように設定し、14種の使用ガス種に対応する始動時開度を特定できるようにしてある。」

以上から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ガスエンジンであって、
前記ガスエンジンに供給されるのが、燃料ガスであり、
前記ガスエンジンは、前記ガスエンジンが始動するまで、スタータ15により駆動し、
前記ガスエンジンに供給される前記燃料ガスは、前記ガスエンジンが始動するまで、ガス計量ジェット2の開度が大きくなるように更新することにより変動するガスエンジン。」

また、引用文献1には、以下の事項が記載されていると認められる。

「ガスエンジンが始動する時のガス計量ジェット2の開度が記憶手段6に記憶され、記憶させた始動時開度を基準にして、ガスエンジンのエンジン始動時及び運転時のガス計量ジェット2の開度制御を行うこと」

(2)引用文献2
当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献2(特開2012-17663号公報)には、図面(特に、図3を参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア「【0007】
このような発電システムに備えられる前記ガスエンジンでは、ガス化炉等の運転状態や、おが屑等の原材料の種類により、燃料ガスの組成が時々刻々と変化するため、始動時における起動可能な燃料ガス供給量が大きく変動する。したがって、従来方法のように、常に、一定の燃料制御弁開度や燃料噴射期間で始動する方法では、始動できない場合がある。図3は、理論空燃比(理論空気量)と、始動時における起動可能な燃料ガス供給量、具体的には燃料制御弁開度又は燃料噴射期間との関係を示しており、燃料ガスの組成が変化すると、理論空燃比が変化し、理論空燃比が小さくなるに従い燃料制御弁開度又は燃料噴射期間が増大するという相関関係がある。図3における幅Dは、起動可能範囲の燃料制御弁開度の幅あるいは燃料噴射期間の幅を示している。」

以上から、上記引用文献2には次の事項が記載されていると認められる。

「燃料ガスの組成が変化すると理論空燃比(理論空気量)が変化し、理論空燃比が小さくなるに従い燃料制御弁開度が増大するという相関関係がある点。」

2 対比・判断
(1)本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「ガスエンジン」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「内燃エンジン」に相当し、以下同様に、「始動する」は「自発的に動き続ける」に、「スタータ15」は「スタータ装置(2)」にそれぞれ相当する。
また、後者の「ガスエンジン」は、前者の「混合気で作動する内燃エンジン」にも相当することは明らかである。同様に、後者の「燃料ガス」は、前者の「混合気の一部として内燃エンジンに供給される」もので、さらに「混合気のエネルギー含有量の特性である、少なくとも1つのパラメータに関して確認される燃料体積流(QB)」にも相当する。
同様に、後者の「ガスエンジンに供給される前記燃料ガスは、前記ガスエンジンが始動するまで、ガス計量ジェット2の開度が大きくなるように更新することにより変動する」と前者の「内燃エンジン(1)に供給される前記燃料体積流(QB)は、前記内燃エンジン(1)が自発的に動き続けるまで、前記混合気の前記エネルギー含有量の特性である、前記少なくとも1つのパラメータの減少により変動し、前記少なくとも1つのパラメータが、最小必要空気量(lmin)および前記混合気の燃焼空気比(lambda)のうちの少なくとも1つを含み」とは、「内燃エンジンに供給される燃料体積流(QB)は、内燃エンジンが自発的に動き続けるまで、混合気のエネルギー含有量の特性である、少なくとも1つのパラメータにより変動し」という限りで一致する。
そして、このような後者の「ガスエンジン」は、前者の「内燃エンジンの始動方法」及び「方法」に相当する事項も含むものである。

したがって、両者は、
「混合気で作動する内燃エンジンの始動方法であって、
前記混合気の一部として前記内燃エンジンに供給されるのが、前記混合気のエネルギー含有量の特性である、少なくとも1つのパラメータに関して確認される燃料体積流(QB)であり、
前記内燃エンジンは、前記内燃エンジンが自発的に動き続けるまで、スタータ装置により駆動し、
前記内燃エンジンに供給される前記燃料体積流(QB)は、前記内燃エンジンが自発的に動き続けるまで、前記混合気の前記エネルギー含有量の特性である、前記少なくとも1つのパラメータにより変動する方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「内燃エンジンに供給される燃料体積流(QB)は、内燃エンジンが自発的に動き続けるまで、混合気の前記エネルギー含有量の特性である、少なくとも1つのパラメータにより変動し」について、前者は「少なくとも1つのパラメータの減少により」変動し、「少なくとも1つのパラメータが、最小必要空気量(lmin)および前記混合気の燃焼空気比(lambda)のうちの少なくとも1つを含む」ものであるのに対し、後者は、「ガス計量ジェット2の開度が大きくなるように更新することにより」変動する点。

[相違点2]
前者は、「内燃エンジンが自発的に動き続ける、前記混合気の前記エネルギー含有量の特性である、前記少なくとも1つのパラメータのパラメータ値が、少なくとも前記内燃エンジンのさらなる動作に向けての時間の間だけほぼ一定に保たれる」ものであるのに対し、後者はかかる構成を備えるか不明な点。

[相違点3]
前者は、「前記内燃エンジンへの出力要求が所定量を超えるときには、前記最小必要空気量を一定に保ったまま、前記混合気の前記燃焼空気比を増加させる」ものであるのに対し、後者はかかる構成を備えていない点。

事案に鑑み、先ず相違点3について検討する。
引用文献1の記載事項は、「ガスエンジンが始動する時のガス計量ジェット2の開度が記憶手段6に記憶され、記憶させた始動時開度を基準にして、ガスエンジンのエンジン始動時及び運転時のガス計量ジェット2の開度制御を行うこと」である。
また、引用文献2の記載事項は、「燃料ガスの組成が変化すると理論空燃比(理論空気量)が変化し、理論空燃比が小さくなるに従い燃料制御弁開度が増大するという相関関係がある点。」である。

してみると、引用文献1の記載事項及び引用文献2の記載事項は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を備えていない。

そうすると、引用発明、引用文献1の記載事項及び引用文献2の記載事項を総合しても、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たということはできない。

したがって、相違点1及び相違点2の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明、引用文献1の記載事項及び引用文献2の記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし本願発明8について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし請求項8は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし本願発明8は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。

したがって、本願発明2ないし本願発明8は、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献1の記載事項及び引用文献2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
平成30年12月13日の補正により、補正後の請求項1ないし8は、第5 2(1)で上述した本願発明1の相違点3に係る技術的事項を有するものとなった。当該第5 2(1)で上述した本願発明1の相違点3に係る技術的事項は、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献1)、引用文献B、引用文献C及び引用文献Dには記載されておらず、本願の優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし8は、当業者が原査定における引用文献AないしDに基いて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、当審が通知した理由及び原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-25 
出願番号 特願2015-225466(P2015-225466)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山村 秀政立花 啓  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 水野 治彦
粟倉 裕二
発明の名称 混合気で作動する内燃エンジンの始動方法  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  

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