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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1349319
審判番号 不服2017-19144  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-25 
確定日 2019-02-21 
事件の表示 特願2015-518684「ネットワーク通信システムおよびその仮想化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日国際公開、WO2014/068984、平成27年12月21日国内公表、特表2015-536582〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)10月31日(優先権主張 平成24年10月31日)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月30日付けの拒絶理由通知に対し、同年9月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月25日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成29年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項6の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項6】
アクセスネットワークとコアネットワークとの間に設けられたネットワークを制御するネットワーク制御手段が、要求された通信サービスに対応する経路設定情報に従って、当該要求された通信サービスを提供するサービスサーバまでの経路上のノードを制御する、
ことを特徴とする通信システム仮想化方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年9月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6の記載は次のとおりである。
「【請求項6】
アクセスネットワークとコアネットワークとの間に設けられたネットワークを制御するネットワーク制御手段が、要求されたネットワークサービスに対応する経路設定情報に従って、前記ネットワーク内の所定のノードと、前記要求されたネットワークサービスを提供するサービスサーバと、の間の経路を設定する、
ことを特徴とする通信システム仮想化方法。」

2.補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項6に記載された発明を特定するために必要な事項である「ネットワークサービス」を「通信サービス」に限定するとともに、「ネットワーク制御手段が、要求されたネットワークサービス(通信サービス)に対応する経路設定情報に従って」制御する内容について、「前記ネットワーク内の所定のノードと、前記要求されたネットワークサービスを提供するサービスサーバと、の間の経路を設定する」を「当該要求された通信サービスを提供するサービスサーバまでの経路上のノードを制御する」に変更するものである。
ここで、「要求された通信サービスを提供するサービスサーバまでの経路上のノードを制御する」ことは、「ネットワーク内の所定のノードと、前記要求されたネットワークサービスを提供するサービスサーバと、の間の経路を設定する」ための具体的な処理と認められ、本件補正により「ネットワーク制御手段」が制御する内容を具体的な処理に限定しているといえ、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項6に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項6に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。


(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された「望月 このみ Konomi MOCHIZUKI,将来ネットワークにおけるエッジ機能動的配置のための仮想マシン高速移動方式の提案 Proposal on a Scheme for VM Quick Migration for Dynamical Layout of Edge Functions,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.112 No.231 IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2012年10月 4日,第112巻,pp.107-112」(以下、「引用文献1」という。)には、図とともに、次の記載がある。

(ア)「1.はじめに」の記載(107?108ページ、図1)
「1.はじめに
ネットワーク(NW)におけるエッジ装置は,アクセス網とコア網との境界に位置し,例えば,IP電話におけるアドレス交換やファイアウォール,インターネット接続におけるユーザ認証といったサービスを提供する.現在のNWにおいては,サービス機能が固定的に実装されたエッジ装置が,全国各地のビルに分散配置されている.エッジ装置には,多数のユーザが収容されており,装置メンテナンスや負荷分散の為のユーザ収容装置変更を行うためには,当該装置の各サービス機能に収容されている全てのユーザの通信終了を待たなければならない.また,分散配置されたエッジ装置は,地理的に離れているため,機能の動的再配置は困難である.

そこで,我々は,将来NWにおいて,機能の動的配置や障害耐性向上を目指し,エッジクラウドの導入を検討している.図1にエッジクラウドの概要を示す.近年発展している広域L2技術[1]を用いることで,各地に分散配置されていたエッジ装置を特定のビルに集約することが可能となる.このビル内にエッジクラウドを構成する.エッジクラウドは,物理装置であるエッジ装置とスイッチ群,それらと外部NWとを接続するゲートウェイルータから成る.エッジ装置には,機能を分離し[2],仮想化されたサービス機能が複数動作する.ここで,仮想化されたサービス機能を仮想エッジ(Virtual Edge:VE)と呼ぶこととする.例えば,1つのエッジクラウドに10,000人規模のユーザを収容する場合,1台のVEが収容可能なユーザを100人とすると,100台のVEが必要となる.
VEは,近年,主にデータセンタで適用が進んでいる仮想マシン技術をネットワーク装置に応用することで実現する[3].特に,ライブマイグレーション技術は,仮想マシンの動作を停止せずに,ネットワークを介した別の物理マシンに仮想マシンを移動させる技術であり,この技術をVEに適用することで,サービスを継続したまま,VEを他のエッジ装置に移動させることが可能となる.
エッジ機能の動的配置が可能になると,VEに収容されたユーザの通信終了を待たずに,エッジ装置の管理者の都合のよい時間にVEを他の装置に移動することができる.例えば,夜間帯など,VE1台あたりのユーザ収容数が少ない場合には,VEを1台の装置に集約し,他の装置を停止することで省電力につながる.
・・・(以下、略)」

(イ)「3.帯域制御によるVE移動高速化方式の提案」の記載(109ページ、図3)
「3.帯域制御によるVE移動高速化方式の提案
提案方式では,VE移動実行時に,メモリコピートラフィックと物理リンクを共用している他のトラフィックの帯域を一時的に絞ることで,メモリコピーのための帯域を確保し,VE移動を高速に完了する[11].

3.1 提案構成
図3に提案方式の構成を示す.エッジクラウドは,エッジ装置群,エッジ管理装置,共有ストレージ,スイッチ群(フロースイッチ,L2スイッチ等),ゲートウェイルータから成る.エッジ装置では,複数のVEが動作している.フロースイッチは,OpenFlow[12]で実現されるような,トラフィックをパケットのヘッダ情報の組み合わせによりフローとして識別し,フローごとに設定された処理を実施することが可能なスイッチである.トラフィックの帯域制御はフロースイッチにおいてフロー毎に実施する.エッジ管理装置は,VE管理機能,フロースイッチ管理機能,トラフィック監視機能,帯域計算機能,帯域制御設定機能を持つ.
3.2.制御の流れ
VEからコア網または広域メトロ網に向かうトラフィック(ユーザトラフィック)と,メモリコピートラフィックが物理回線を共用する場合を例に説明する.エッジ管理装置において,VE移動が決定すると,トラフィック監視機能が,クラウドエッジ内NWのトラフィック状態を収集し,帯域計算機能に通知する.また,VE管理機能は,各VEのメモリ使用量,メモリ書き込み速度等の情報を帯域計算機能に通知する.帯域計算機能は,VEをグループ分けし,グループ毎に移動先エッジ装置を決定する.また,グループ毎の帯域制御の制御値およびスケジュールを決定し,帯域制御設定機能に通知する.ここで,スケジュールは,グループの移動順や,グループ内でのVE移動順,グループ単位で実行するユーザトラフィックの帯域制御スケジュールを示すものである.帯域制御設定機能はVE管理機能が実行するVE移動と連動し,スケジュール通りに,VEのアドレスで定義されるフロー毎の帯域制御設定をフロースイッチ管理機能に通知する.通知を受けたフロースイッチ管理機能が,各フロースイッチのフローテーブルに設定情報を書き込むことで,帯域制御を実行する.
3.3.制御の具体例
・・・(以下、略)」

(ウ)前記(ア)、(イ)の記載と図1、3に図示された内容を参酌すると、以下のことがいえる。

(a)エッジクラウドは、エッジ装置群、エッジ管理装置、共有ストレージ、スイッチ群(フロースイッチ、L2スイッチ等)、ゲートウェイルータから成り、これらがクラウドエッジ内NWを構成している。

(b)エッジクラウドは、光アクセスを介してユーザがアクセスする広域メトロ網とコア網との間に設けられ、ゲートウェイルータである広域メトロ網へのGWとコア網へのGWは、クラウドエッジ内NWと外部NWである広域メトロ網またはコア網と接続している。

(c)エッジ装置群は複数の物理装置であるエッジ装置からなり、それぞれのエッジ装置では、機能を分離し、仮想化されたサービス機能である仮想エッジ(Virtual Edge:VE)が複数動作しており、例えば、IP電話におけるアドレス交換やファイアウォール、インターネット接続におけるユーザ認証といったサービスを提供する。

(d)クラウドエッジ内NWにおいて、ゲートウェイルータからサービスを提供するVEが動作するエッジ装置までの経路上には、トラフィックが複数のフロースイッチを経由するように構成されている。

(e)ライブマイグレーション技術をVEに適用することで、サービスを継続したまま、VEを他のエッジ装置に移動させることが可能となり、例えば、夜間帯など、VE1台あたりのユーザ収容数が少ない場合には、VEを1台のエッジ装置に集約し、他のエッジ装置を停止する。

(f)エッジ管理装置は、VE管理機能、フロースイッチ管理機能、トラフィック監視機能、帯域計算機能、帯域制御設定機能を持ち、サービスを継続したまま、VEを他のエッジ装置に移動させるために、帯域制御設定機能はVE管理機能が実行するVE移動と連動し、スケジュール通りに、VEのアドレスで定義されるフロー毎の帯域制御設定をフロースイッチ管理機能に通知し、通知を受けたフロースイッチ管理機能が、各フロースイッチのフローテーブルに設定情報を書き込むことで、帯域制御を実行する。

(g)フロースイッチは、OpenFlowで実現されるような、トラフィックをパケットのヘッダ情報の組み合わせによりフローとして識別し、フローごとに設定された処理を実施することが可能なスイッチであり、トラフィックの帯域制御はフロースイッチにおいてフロー毎に実施する。

(エ)そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

〈引用発明〉
「エッジ装置群、エッジ管理装置、共有ストレージ、スイッチ群(フロースイッチ、L2スイッチ等)、ゲートウェイルータから成り、これらがクラウドエッジ内NWを構成しているエッジクラウドであって、
エッジクラウドは、光アクセスを介してユーザがアクセスする広域メトロ網とコア網との間に設けられ、ゲートウェイルータである広域メトロ網へのGWとコア網へのGWは、クラウドエッジ内NWと外部NWである広域メトロ網またはコア網と接続しており、
エッジ装置群は複数の物理装置であるエッジ装置からなり、それぞれのエッジ装置では、機能を分離し、仮想化されたサービス機能である仮想エッジ(Virtual Edge:VE)が複数動作しており、例えば、IP電話におけるアドレス交換やファイアウォール、インターネット接続におけるユーザ認証といったサービスを提供し、
クラウドエッジ内NWにおいて、ゲートウェイルータからサービスを提供するVEが動作するエッジ装置までの経路上には、トラフィックが複数のフロースイッチを経由するように構成され、
ライブマイグレーション技術をVEに適用することで、サービスを継続したまま、VEを他のエッジ装置に移動させることが可能となり、例えば、夜間帯など、VE1台あたりのユーザ収容数が少ない場合には、VEを1台のエッジ装置に集約し、他のエッジ装置を停止し、
エッジ管理装置は、VE管理機能、フロースイッチ管理機能、トラフィック監視機能、帯域計算機能、帯域制御設定機能を持ち、サービスを継続したまま、VEを他のエッジ装置に移動させるために、帯域制御設定機能はVE管理機能が実行するVE移動と連動し、スケジュール通りに、VEのアドレスで定義されるフロー毎の帯域制御設定をフロースイッチ管理機能に通知し、通知を受けたフロースイッチ管理機能が、各フロースイッチのフローテーブルに設定情報を書き込むことで、帯域制御を実行し、
フロースイッチは、OpenFlowで実現されるような、トラフィックをパケットのヘッダ情報の組み合わせによりフローとして識別し、フローごとに設定された処理を実施することが可能なスイッチであり、トラフィックの帯域制御はフロースイッチにおいてフロー毎に実施する
複数の仮想エッジ機能からなるエッジクラウドの仮想化方法。」

イ.引用文献2
同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された国際公開第2012/101890号(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)段落[0028]-[0041]の記載
「[0028][全体構成]
図1に示すように、本発明に係るネットワークシステムは、制御装置10と、ネットワーク機器20(20-i、i=1?n:nは台数)と、サーバ機器30(30-j、j=1?s:sは台数)と、クライアント40を含む。
[0029] 制御装置10は、オープンフローネットワークにおけるコントローラに相当する。制御装置10は、管理対象機器の集中管理を行い、全ての管理対象機器のパフォーマンスデータを収集する。ここでは、制御装置10は、自身が管理する全てのネットワーク機器20(20-i、i=1?n)及びサーバ機器30(30-j、j=1?s)等、該ネットワークシステムを構成する全ての機器を管理対象機器として集中管理する。この場合、制御装置10は、ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々とセキュアチャネル(Secure Channel)で接続されているものとする。
[0030] ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々は、オープンフローネットワークにおけるスイッチに相当する。ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々は、制御装置10の指示によって通信を行う。具体的には、ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)は、制御装置10により設定されたフローテーブルに従ってパケットを転送する。ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)は、通常1台以上でネットワークを構成する。
[0031] サーバ機器30(30-j、j=1?s)は、エンドユーザ、クライアントへアプリケーション等のサービスを提供する。サーバ機器30(30-j、j=1?s)は、同じサービス(例えば、Webサービス等)を提供するサーバ毎にグループを形成する。すなわち、サーバ機器30(30-j、j=1?s)は、いずれかのグループを形成するサーバ群に属する。サーバ群は、グループの数だけ存在する。サーバ機器30(30-j、j=1?s)は、実IPアドレスの他に、同じサーバ群に属する全てのサーバ機器30(30-j、j=1?s)に共通の仮想IPアドレスが割り当てられる。この仮想IPアドレスは、クライアントからの要求を負荷分散する際、サーバ群を1台のサーバ機器に見せかけるために必要となる。すなわち、この仮想IPアドレスは、1つのサーバ群に1つだけ割り当てられ、そのサーバ群に属する全てのサーバ機器30(30-j、j=1?s)が共有することになる。なお、実際には、仮想IPアドレスの代わりに、仮想MACアドレス等を使用しても良い。
[0032] クライアント40は、ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)により形成される経路を経由して、サーバ機器30(30-j、j=1?s)と通信する。
[0033] ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)、サーバ機器30(30-j、j=1?s)、及びクライアント40は、ネットワーク上のノードである。制御装置10も、ネットワーク上に存在する場合は、ノードの1つとなる。
[0034] [機能詳細]
次に、各装置の機能詳細について説明する。
[0035] [制御装置]
制御装置10は、パフォーマンス管理部11と、パフォーマンスデータ格納部12と、経路計算部13と、経路情報格納部14と、フロー制御部15と、フローテーブル格納部16を備える。
[0036] パフォーマンス管理部11は、自身が管理する全てのネットワーク機器20(20-i、i=1?n)及びサーバ機器30(30-j、j=1?s)からのトポロジ情報、及び、CPU使用率、NW使用率(回線使用率)等のパフォーマンスデータを収集する。なお、NWは、ネットワーク(Network)を示す。
[0037] パフォーマンスデータ格納部12は、自身が管理する全てのネットワーク機器20(20-i、i=1?n)及びサーバ機器30(30-j、j=1?s)から収集したトポロジ情報(ネットワーク機器、サーバ機器の接続状況、IPアドレス、MACアドレス)、CPU使用率、NW使用率等のパフォーマンスデータを蓄積する。
[0038] 経路計算部13は、パフォーマンスデータ格納部12から読み出したトポロジ情報等を基に、最適経路を計算する。なお、経路計算部13は、パフォーマンス管理部11から直接トポロジ情報等を受け取っても良い。
[0039] 経路情報格納部14は、経路計算部13での計算結果である経路情報を蓄積する。
[0040] フロー制御部15は、経路情報格納部14から読み出した経路情報を基に、ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々に対するエントリを定義し、自身のフローテーブル、及びネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々のフローテーブルへエントリの登録(設定)を行う。フロー制御部15は、ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々のフローテーブルへエントリの登録を行う際、オープンフロープロトコルに準拠したエントリ登録用の制御メッセージを送信する。
[0041] フローテーブル格納部16は、制御装置10が管理する全てのネットワーク機器20(20-i、i=1?n)に対するエントリが登録されたフローテーブルを保持する。」

(イ)段落「0087」-「0097」の記載
「[0087] [最適経路制御処理における動作1]
図5を参照して、最適条件として、「CPU使用率」と「NW使用率」が最も小さい経路を選択する場合の動作について説明する。
[0088] ここでは、図2に示されるネットワークシステムの構成を前提とする。
[0089] 図2に示される構成において、「Client A」(クライアント40)から仮想IPアドレス「XXX」へアクセスする場合、「Client A」(クライアント40)から仮想IPアドレス「XXX」宛に通信が発生する。
[0090] (1)ステップS101
「Client A」(クライアント40)は、仮想IPアドレス「XXX」宛にパケットを送信する。
[0091] (2)ステップS102
NW機器1(ネットワーク機器20-1)は、入力側エッジスイッチ(Ingress)として「Client A」(クライアント40)に接続されている。したがって、NW機器1(ネットワーク機器20-1)のパケット制御部24は、「Client A」(クライアント40)から仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを受信し、自身のフローテーブル格納部23内のフローテーブルに登録されているエントリの中に、受信パケットに該当するエントリが存在するか確認する。パケット制御部24は、該エントリが存在する場合、該エントリに定義されたアクションに従って、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを転送する。
[0092] (3)ステップS103
NW機器1(ネットワーク機器20-1)は、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを今回初めて受信したため、自身のフローテーブル格納部23内のフローテーブルに登録されているエントリの中に、受信パケットに該当するエントリが存在しない。したがって、NW機器1(ネットワーク機器20-1)のフロー制御部22は、制御装置10に対し、「XXX」宛のパケットのフローのエントリを要求する。
[0093] (4)ステップS104
制御装置10は、「XXX」宛のパケットのフローのエントリを要求された場合、「XXX」宛のパケットの転送先として、サーバA(サーバ機器30-1)宛、又はサーバC(サーバ機器30-3)宛のどちらかを選択することになる。このとき、制御装置10の経路計算部13は、図4に示されるサーバ機器テーブル122を参照し、サーバA(サーバ機器30-1)のCPU使用率が「20%」、サーバC(サーバ機器30-3)のCPU使用率が「40%」であるため、最もCPU使用率の低いサーバA(サーバ機器30-1)を選択する。
[0094] (5)ステップS105
また、経路計算部13は、図3に示されるNW機器テーブル121を参照し、最もNW使用率の低い経路で転送することを決定する。ここでは、経路計算部13は、NW機器1(ネットワーク機器20-3)の次段のノードとして、NW機器3(ネットワーク機器20-3)のNW使用率が「20%」、NW機器4(ネットワーク機器20-4)のNW使用率が「15%」であるため、NW機器4(ネットワーク機器20-4)を次段のノードとする。また、NW機器4(ネットワーク機器20-4)の次段のノードとして、NW機器5(ネットワーク機器20-5)のNW使用率が「20%」、NW機器6(ネットワーク機器20-6)のNW使用率が「25%」であるため、NW機器5(ネットワーク機器20-5)を次段のノードとする。これにより、経路計算部13は、最終的に、最もNW使用率の低い経路である「NW機器1→NW機器4→NW機器5→サーバA」という経路で転送することを決定し、この経路情報を経路情報格納部14に蓄積する。すなわち、最適経路は、「NW機器1(ネットワーク機器20-1)→NW機器4(ネットワーク機器20-4)→NW機器5(ネットワーク機器20-5)→サーバA(サーバ機器30-1)」ということになる。
[0095] (6)ステップS106
制御装置10のフロー制御部15は、経路情報格納部14から読み出した最適経路の経路情報を基に、最適経路上のネットワーク機器の各々に対するエントリを定義し、自身のフローテーブル格納部16内のフローテーブル、及び最適経路上のネットワーク機器の各々のフローテーブルへエントリの登録を行う。ここでは、最適経路上のネットワーク機器は、NW機器1(ネットワーク機器20-1)、NW機器4(ネットワーク機器20-4)、及びNW機器5(ネットワーク機器20-5)である。フロー制御部15は、NW機器1(ネットワーク機器20-1)、NW機器4(ネットワーク機器20-4)、及びNW機器5(ネットワーク機器20-5)のフローテーブルへ、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを最適経路上の次段のノードに転送するためのエントリの登録を行う。
[0096] (7)ステップS107
最適経路上のネットワーク機器の各々のフロー制御部22は、制御装置10からのエントリ登録処理に応じて、自身のフローテーブル格納部23内のフローテーブルに、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを最適経路上の次段のノードに転送するためのエントリを登録する。すなわち、NW機器1(ネットワーク機器20-1)、NW機器4(ネットワーク機器20-4)、及びNW機器5(ネットワーク機器20-5)は、制御装置10からのエントリ登録処理に応じて、自身のフローテーブル格納部23内のフローテーブルに、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを最適経路上の次段のノードに転送するためのエントリを登録する。
[0097] (8)ステップS108
NW機器1(ネットワーク機器20-1)に辿り着いたパケットは、最もNW使用率の低い経路である「NW機器1→NW機器4→NW機器5→サーバA」という経路で転送される。すなわち、NW機器1(ネットワーク機器20-1)は、自身のフローテーブルに登録されたエントリに従い、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットをNW機器4(ネットワーク機器20-4)に転送する。NW機器4(ネットワーク機器20-4)は、自身のフローテーブルに登録されたエントリに従い、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットをNW機器5(ネットワーク機器20-5)に転送する。NW機器5(ネットワーク機器20-5)は、自身のフローテーブルに登録されたエントリに従い、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットをサーバA(サーバ機器30-1)に転送する。」

(ウ)前記(ア)、(イ)の記載をまとめると、引用文献2には次の技術的事項が記載されているといえる。

〈引用文献2に記載された技術〉
「オープンフローネットワークにおけるコントローラに相当する制御装置10と、オープンフローネットワークにおけるスイッチに相当するネットワーク機器20(20-i、i=1?n:nは台数)と、クライアントへアプリケーション等のサービスを提供するサーバ機器30(30-j、j=1?s:sは台数)と、ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)により形成される経路を経由して、サーバ機器30(30-j、j=1?s)と通信するクライアント40を含むネットワークシステムにおいて、
「Client A」(クライアント40)から仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを受信したNW機器1(ネットワーク機器20-1)のフロー制御部22は、制御装置10に対し、「XXX」宛のパケットのフローのエントリを要求し、
制御装置10の経路計算部13は、「NW機器1(ネットワーク機器20-1)→NW機器4(ネットワーク機器20-4)→NW機器5(ネットワーク機器20-5)→サーバA(サーバ機器30-1)」という経路で転送することを決定し、この経路情報を経路情報格納部14に蓄積し、
制御装置10のフロー制御部15は、経路情報格納部14から読み出した経路情報を基に、経路上のネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々に対するエントリを定義し、自身のフローテーブル、及びネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々のフローテーブルへ、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを経路上の次段のノードに転送するためのエントリの登録(設定)を行い、
NW機器5(ネットワーク機器20-5)は、自身のフローテーブルに登録されたエントリに従い、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットをサーバA(サーバ機器30-1)に転送するネットワークシステム。」

(3)対比、判断
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の「エッジクラウドは、光アクセスを介してユーザがアクセスする広域メトロ網とコア網との間に設けられ」ており、「ゲートウェイルータである広域メトロ網へのGWとコア網へのGWは、クラウドエッジ内NWと外部NWである広域メトロ網またはコア網と接続して」いることから、引用発明の「クラウドエッジ内NW」は、「光アクセスを介してユーザがアクセスする広域メトロ網」と「コア網」との間に設けられたネットワークといえる。
一方、引用発明の「光アクセスを介してユーザがアクセスする広域メトロ網」及び「コア網」は、それぞれ本件補正発明の「アクセスネットワーク」及び「コアネットワーク」に相当する。
そうしてみると、引用発明の「クラウドエッジ内NW」は、本件補正発明の「アクセスネットワークとコアネットワークとの間に設けられたネットワーク」に相当する。

(b)引用発明の「エッジ管理装置」は、「VE管理機能、フロースイッチ管理機能、トラフィック監視機能、帯域計算機能、帯域制御設定機能」を持ち、「サービスを継続したまま、VEを他のエッジ装置に移動させる」ために、「帯域制御設定機能はVE管理機能が実行するVE移動と連動し、スケジュール通りに、VEのアドレスで定義されるフロー毎の帯域制御設定をフロースイッチ管理機能に通知し、通知を受けたフロースイッチ管理機能が、各フロースイッチのフローテーブルに設定情報を書き込むことで、帯域制御を実行し」ており、「エッジ管理装置」の各機能はクラウドエッジ内NWの制御を行っていると認められるから、「エッジ管理装置」はクラウドエッジ内NWを制御する制御手段であるといえる。
そして、上記(a)により、引用発明の「クラウドエッジ内NW」は、本件補正発明の「アクセスネットワークとコアネットワークとの間に設けられたネットワーク」に相当することから、引用発明の「エッジ管理装置」は、本件補正発明の「アクセスネットワークとコアネットワークとの間に設けられたネットワークを制御するネットワーク制御手段」に相当する。

(c)引用発明の「エッジ装置」は、機能を分離し、仮想化されたサービス機能である仮想エッジ(Virtual Edge:VE)が複数動作している物理装置であることから「サービスサーバ」といえる。
また、引用発明の「エッジ装置」は、VEが動作して「IP電話におけるアドレス交換やファイアウォール、インターネット接続におけるユーザ認証といったサービス」を提供するものであるところ、この「IP電話におけるアドレス交換やファイアウォール、インターネット接続におけるユーザ認証といったサービス」は「要求された通信サービス」といえる。
そうしてみると、引用発明の「エッジ装置」は、本件補正発明の「要求された通信サービスを提供するサービスサーバ」に相当する。

(d)引用発明の「クラウドエッジ内NW」において、「ゲートウェイルータ」から「IP電話におけるアドレス交換やファイアウォール、インターネット接続におけるユーザ認証といったサービス」を提供するVEが動作する「エッジ装置」までの経路上には、トラフィックが複数のフロースイッチを経由するように構成されていることから、引用発明の「フロースイッチ」は、「クラウドエッジ内NW」における「エッジ装置」までの経路上のノードといえる。
一方、引用発明の「エッジ管理装置」の「フロースイッチ管理機能が、各フロースイッチのフローテーブルに設定情報を書き込む」ことから、「エッジ管理装置」が「フロースイッチ」を制御するといえる。
そして、上記(c)により、引用発明の「エッジ装置」は、本件補正発明の「要求された通信サービスを提供するサービスサーバ」に相当することから、引用発明の「エッジ管理装置」は、「要求された通信サービスを提供するサービスサーバ」までの経路上のノードである「フロースイッチ」を制御するものといえる。
そうしてみると、引用発明の「エッジ管理装置」と本願補正発明の「ネットワーク制御手段」とは、両者とも、「アクセスネットワークとコアネットワークとの間に設けられたネットワークを制御するネットワーク制御手段」であり、「要求された通信サービスを提供するサービスサーバまでの経路上のノードを制御する」点で共通する。

(e)引用発明の「複数の仮想エッジ機能からなるエッジクラウドの仮想化方法」は、本件補正発明の「通信システムの仮想化方法」に相当する。

(イ)してみれば、本件補正発明と引用発明には、次の一致点及び相違点があるといえる。

〈一致点〉
「アクセスネットワークとコアネットワークとの間に設けられたネットワークを制御するネットワーク制御手段が、要求された通信サービスを提供するサービスサーバまでの経路上のノードを制御する、
通信システム仮想化方法。」

〈相違点〉
本件補正発明では、ネットワーク制御手段が、「要求された通信サービスに対応する経路設定情報に従って、当該要求された通信サービスを提供するサービスサーバまでの経路上のノードを制御する」のに対し、引用発明は、当該構成について特定されていない点。

(4)判断
上記相違点について以下に検討する。

(ア)前記「イ.引用文献2」(ウ)で示した引用文献2に記載された技術的事項について以下のことがいえる。

(a)オープンフローネットワークにおけるコントローラに相当する制御装置10は、「ネットワークを制御する制御手段」といえる。

(b)サーバ機器30がクライアントへ提供する「アプリケーション等のサービス」は、「要求されたサービス」といえる。

(c)経路情報格納部14に蓄積された「NW機器1(ネットワーク機器20-1)→NW機器4(ネットワーク機器20-4)→NW機器5(ネットワーク機器20-5)→サーバA(サーバ機器30-1)」という経路情報は、クライアントへアプリケーション等のサービスを提供するサーバ機器30までの経路情報であるから、「要求されたサービスに対応する経路情報」といえる。

(d)オープンフローネットワークにおけるスイッチに相当するネットワーク機器20(20-i、i=1?n)は、「クライアントへアプリケーション等のサービスを提供するサーバ機器30」までの経路上の「ノード」といえる。

(e)制御装置10のフロー制御部15が、「経路上のネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々に対するエントリを定義し、ネットワーク機器20(20-i、i=1?n)の各々のフローテーブルへ、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットを経路上の次段のノードに転送するためのエントリの登録(設定)を行」うことは、「要求されたサービスを提供するサーバ(サーバ機器)までの経路上のノード(ネットワーク機器)を制御する」ことといえる。

(f)そして、「NW機器5(ネットワーク機器20-5)は、自身のフローテーブルに登録されたエントリに従い、仮想IPアドレス「XXX」宛のパケットをサーバA(サーバ機器30-1)に転送する」ことから、制御装置10のフロー制御部15が、各々のフローテーブルへ、経路上の次段のノードに転送するためのエントリの登録(設定)を行うことは、「ネットワーク内の所定のノード(ネットワーク機器)と、前記要求されたサービスを提供するサーバ(サーバ機器)と、の間の経路を設定する」ことといえる。

上記(a)?(f)をまとめると、ネットワークを制御する制御手段である制御装置10が、経路情報格納部14に蓄積された「要求されたサービスに対応する経路情報」に従って、「当該要求されたサービスを提供するサーバまでの経路上のノードを制御する」こと、「前記ネットワーク内の所定のノードと、前記要求されたサービスを提供するサーバと、の間の経路を設定する」ことが、引用文献2に開示されていると認められる。

(イ)一方、引用発明の「フロースイッチ」は、「OpenFlowで実現されるような、トラフィックをパケットのヘッダ情報の組み合わせによりフローとして識別し、フローごとに設定された処理を実施することが可能なスイッチであり、トラフィックの帯域制御はフロースイッチにおいてフロー毎に実施する」ものであり、「エッジ管理装置」の「フロースイッチ管理機能が、各フロースイッチのフローテーブルに設定情報を書き込むことで、帯域制御を実行する」ものであるところ、引用発明の「エッジ管理装置」と引用文献2記載の「制御装置10」は、両者ともネットワークを制御する手段であり、各フロースイッチのフローテーブルに設定情報を書き込む制御を行う点で共通している。このことから、引用発明の「エッジ管理装置」に、オープンフローネットワークに関する引用文献2記載の制御装置10に係る技術事項を適用しようとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、引用発明の「エッジ管理装置」が、「要求されたサービスに対応する経路情報」に従って、「当該要求されたサービスを提供するサーバまでの経路上のノードを制御する」ようにすること、「前記ネットワーク内の所定のノードと、前記要求されたサービスを提供するサーバと、の間の経路を設定する」ようにすることに格別の困難性は認められない。

(ウ)よって、引用発明において、「要求された通信サービスに対応する経路設定情報に従って、当該要求された通信サービスを提供するサービスサーバまでの経路上のノードを制御する」ことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)そして、相違点を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(オ)したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成29年12月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項6に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]「1.本件の補正について」(2)に記載のとおりのものであると認める。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-12に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

〈引用文献等一覧〉
引用文献1.望月 このみ Konomi MOCHIZUKI,将来ネットワークにおけるエッジ機能動的配置のための仮想マシン高速移動方式の提案 Proposal on a Scheme for VM Quick Migration for Dynamical Layout of Edge Functions,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.112 No.231 IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2012年10月 4日,第112巻,pp.107-112
引用文献2.国際公開第2012/101890号

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項は、前記第2の[理由]「2.補正の適否」(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、両者には、次の一致点及び相違点があるといえる。

〈一致点〉
「アクセスネットワークとコアネットワークとの間に設けられたネットワークを制御するネットワーク制御手段が、要求された通信サービスを提供するサービスサーバまでの経路上のノードを制御する、
通信システム仮想化方法。」

〈相違点〉
本願発明では、ネットワーク制御手段が、「要求されたネットワークサービスに対応する経路設定情報に従って、前記ネットワーク内の所定のノードと、前記要求されたネットワークサービスを提供するサービスサーバと、の間の経路を設定する」のに対し、引用発明は、当該構成について特定されていない点。

(2)上記相違点について検討する。
(ア)前記第2の[理由]「2.補正の適否」(4)に記載したように、引用発明の「エッジ管理装置」に、オープンフローネットワークに関する引用文献2記載の制御装置10に係る技術事項を適用しようとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、引用発明の「エッジ管理装置」が、「要求されたサービスに対応する経路情報」に従って、「当該要求されたサービスを提供するサーバまでの経路上のノードを制御する」ようにすること、「前記ネットワーク内の所定のノードと、前記要求されたサービスを提供するサーバと、の間の経路を設定する」ようにすることに格別の困難性は認められない。

(イ)よって、引用発明において、「要求されたネットワークサービスに対応する経路設定情報に従って、前記ネットワーク内の所定のノードと、前記要求されたネットワークサービスを提供するサービスサーバと、の間の経路を設定する」ことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ)そして、相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(エ)したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-20 
結審通知日 2018-12-25 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2015-518684(P2015-518684)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 翔太  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 菊地 陽一
▲吉▼田 耕一
発明の名称 ネットワーク通信システムおよびその仮想化方法  
代理人 桂木 雄二  

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