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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1349337
審判番号 不服2018-7590  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-04 
確定日 2019-02-21 
事件の表示 特願2014-246976「樹脂製容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月20日出願公開、特開2016-108016〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成26年12月5日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年11月14日付け 拒絶理由通知
平成30年1月19日 意見書及び手続補正書の提出
平成30年2月22日付け 拒絶査定
平成30年6月4日 本件審判請求

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、平成30年1月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3の各々に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである

「【請求項1】
口部、肩部、胴部及び底部が連接された樹脂製容器であって、
前記胴部に、正面視において略鉛直方向に延びる縦凹部が周方向に複数設けられており、
前記縦凹部は、最大幅が10mm以下、最大長が30mm以下、最大深さが4.0mm以下であり、
前記胴部は、シュリンクラベルが装着されるラベル面を有し、
前記縦凹部は、前記ラベル面に設けられており、
前記胴部に、複数の前記縦凹部が略等間隔で設けられており、
前記胴部に、正面視において略水平方向に延びる横凹部が設けられている樹脂製容器。」

第3 引用文献
1.引用文献1
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-286743号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、外表面が熱収縮性を有するシュリンクフィルムによって被覆される容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、液体食品用の容器には、ポリエチレンテレフタレート製プリフォームをブロー成形により形成した所謂PETボトルが多用されている。
【0003】図6に示すように、一般にPETボトル1の胴部10には、商品名やメーカー名等が印刷された、熱収縮性を有する延伸フィルム、いわゆるシュリンクフィルム2が装着されることが多い。
【0004】このシュリンクフィルム2は、PETボトル1の胴部10よりも大径の筒状に形成されていて、予めその表面に商品名等の印刷が施されており、このシュリンクフィルム2を胴部10に被せて熱を加え、収縮させることにより、シュリンクフィルム2は胴部10に装着される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記シュリンクフィルム2は熱収縮する際に歪んで皺が寄る場合があった。このようにシュリンクフィルム2に皺が寄っていると、表面に印刷されていた商品名等が歪んで読み難くなるという問題があった。
【0006】本発明はこのような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、シュリンクフィルムを皺が寄らないように装着できる容器を得ることを目的とする。」
イ.「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決するために、以下の構成を採用した。即ち、本発明の容器の外表面には、容器の厚さ方向に凹む凹部が散在して形成されている。凹部は、その幅を1?10mmとするのが好ましく、長さを10?100mmとするのが好ましく、深さを1?5mmとするのが好ましい。
・・・
【0009】
【作用】シュリンクフィルムを容器に被せて熱収縮させた際に、シュリンクフィルムに皺を生じさせるような力が働いても、シュリンクフィルムにおいて凹部の上に配された部分が皺を吸収する。したがって、シュリンクフィルムを皺なく綺麗に容器の外表面に被覆することができる。その結果、熱収縮前のシュリンクフィルムに予め商品名等の印刷を施しておいても、容器へ装着後にその印刷文字等が歪むことがなく、見栄えがよくなり、品質が向上する。
【0010】又、容器はその断面形状が複雑になるため、凹部を有さない従来の容器よりも機械的強度が大きくなる。」
ウ.「【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1から図6の図面に基いて説明する。図1は本発明の第1実施例における容器の要部拡大正面図であり、図2は図1のA-A矢視断面図であり、図3は図1のB-B矢視断面図である。尚、シュリンクフィルムが装着された容器の全体外観図については図6を援用する。
【0012】容器としてのPETボトル1の胴部10の外表面には多数の凹部11が規則的に散在配置されている。凹部11は内側に凹んでおり、各凹部11は胴部10の周方向に沿って細長く形成されている。この凹部11の幅Wは1?10mmにするのが好ましく、長さLは10?100mmにするのが好ましく、深さDは1?5mmにするのが好ましい。
【0013】凹部11は、胴部10の同一高さ位置において、周方向等間隔に複数形成されている。又、凹部11は、胴部10の高さ方向(軸線方向)に対しても等間隔に離間して配されている。更に、上下に隣接して位置する凹部11同士はその端部を周方向に若干重複させている。
【0014】一方、前記胴部10に装着されるシュリンクフィルム2は筒状をなしている。このシュリンクフィルム2は1軸配向にされており、周方向にだけ収縮し、軸線方向には収縮しないようになっている。
【0015】このシュリンクフィルム2をPETボトル1の胴部10に被せ、熱収縮させた時に、シュリンクフィルム2に皺を生じさせるような力が働いても、シュリンクフィルム2において凹部11の上に配された部分によって、皺が吸収される。その結果、シュリンクフィルム2を皺なく綺麗に胴部10に装着することができる。
【0016】したがって、熱収縮前のシュリンクフィルム2に予め商品名等の印刷を施しておいても、PETボトル1装着後にその印刷文字等が歪むことがなく、見栄えがよくなり、品質が向上する。
【0017】又、PETボトル1はその胴部10の断面形状が複雑であるために、凹部11を有さない従来のPETボトルよりも機械的強度が大きくなる。・・・」
エ.「【0018】図5は本発明に係るPETボトル1の第3実施例における図1に対応する正面図である。このPETボトル1が前記第1実施例のものと相違する点は、各凹部11の長手方向が胴部10の高さ方向(軸線方向)に沿って延びている点にある。そのほかの点については前述第1実施例のものと同様であるので、説明は省略する。」
オ.【図1】?【図3】、【図5】、【図6】


カ.「シュリンクフィルム2が装着された容器の全体外観図」(上記ウ.の段落【0011】)が示された【図6】における図示から、引用文献1に記載されたPETボトル1が、口部、肩部、胴部10及び底部が連接されたものであることがいえる。
そして、「・・・胴部10に装着されるシュリンクフィルム2は筒状をなしている。」(上記ウ.の段落【0014】)との記載から、胴部10は、シュリンクフィルム2が装着される面を有しているといえる。
また、【図6】をみると、胴部10に設けられた凹部11が描かれておらず、シュリンクフィルム2は描かれているから、凹部11は、シュリンクフィルム2が装着された際に、シュリンクフィルム2によって覆われる位置に設けられるものであることが看取できる。
キ.「本発明に係るPETボトル1の第3実施例における図1に対応する正面図である」(上記エ.の段落【0018】)【図5】の図示と、「このPETボトル1が前記第1実施例のものと相違する点は、各凹部11の長手方向が胴部10の高さ方向(軸線方向)に沿って延びている点にある」(上記エ.の段落【0018】)との記載から、胴部10には、正面視において胴部10の高さ方向(軸線方向)に伸びる凹部11が周方向に複数設けられているといえる。

(2)引用発明
上記1.に示したア.?オ.の摘記事項、図1?3、5及び6の図示、並びに、カ.及びキ.の認定事項を総合し、特に引用文献1の図5に記載されたものについて整理すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「口部、肩部、胴部10及び底部が連接されたPETボトル1であって、
前記胴部10に、正面視において胴部10の高さ方向(軸線方向)に延びる凹部11が周方向に複数設けられており、
前記凹部11は、幅Wが1?10mm、長さLが10?100mm、深さDが1?5mmであり、
前記胴部10は、シュリンクフィルム2が装着される面を有し、
前記凹部11は、前記シュリンクフィルム2が装着される面に設けられており、
前記胴部10に、複数の前記凹部11が設けられているPETボトル1」

2.引用文献2
(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2011-93556号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製丸形壜体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す。)樹脂製等の2軸延伸ブロー成形による合成樹脂製壜体は飲料用等に幅広く使用されている。
特許文献1には円筒状の胴部を有する丸形壜体についての記載がある。図10にこの特許文献1の実施例で記載される壜体を示すが、この壜体101は2軸延伸ブロー成形による容量が280mlの丸形のPET樹脂製壜体、所謂、ペットボトルであり、口筒部102、肩部103、胴部104および底部105から形成され、胴部104の周壁には周囲を段部111で囲うようにして6ケの減圧吸収パネル112が陥没形成されている。また胴部104の上端部と下端部には周溝リブ114が配設されている。
イ.「【0006】
ここで、前述した図10の壜体の胴部104の上端部と下端部に配設される周溝リブ114の配設は、特に壜体の側周面の面剛性を確保するための有効な手段であり、従来から採用されている。
しかしながら、たとえば側周面の面剛性を大きくするために周溝リブを深くすると縦方向の座屈強度が低下する、さらにはブロー成形性が低下する、あるいは周溝リブを深くする分、表面積が増加し、壜体全体の重量を一定とすると側周壁がさらに薄肉化する等の問題を有する。
【0007】
また、周溝リブを近接させて複数配設して側周壁の凹凸を増やすことにより側周面の面剛性を大きくすることできるが、一方で縦方向に荷重が作用した場合、上下に隣接する周溝リブ同士の変形が干渉して、周方向で変形態様が一定にならず、所謂「よれ」が発生して局部的に座屈変形が発生し、むしろ座屈強度が低下してしまうと云う問題を有する。
【0008】
そこで本発明は、合成樹脂製丸形壜体において縦方向の座屈強度や成形性を低下させることなく側周面の面剛性を大きくすることが可能な周溝リブの形状を創出することを課題とするものである。」
ウ.「【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決する手段のうち、本発明の主たる構成は、
口筒部とテーパー筒状の肩部と円筒状の胴部と底部を有する丸形壜体において、
胴部の所定高さ位置に、上下に近接して陥没状に一対の周溝リブを形成し、
この周溝リブの縦断面形状における底辺が壜体の中心軸方向に対して傾斜すると共に、この底辺の傾斜方向を上部の周溝リブと下部の周溝リブで逆向きにする構成とする、と云うものである。」
エ.「【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有するものにあっては、縦断面形状における周溝リブの底辺が壜体の中心軸方向に対して傾斜すると共に、この底辺の傾斜方向を上部の周溝リブと下部の周溝リブで逆向きにする構成とすることにより、壜体に縦方向の荷重による、一対の周溝リブ近傍における側周壁の変形態様を全周に亘って一定とすることができ、
当該領域に「よれ」の発生そして局部的な座屈変形の発生を抑制して、面剛性を高くするために周溝リブを上下一対に形成したことに起因する座屈強度の低下を効果的に抑制しながら、面剛性を大きくすることができる。」
オ.「【発明を実施するための形態】
【0026】
・・・
図1、2は本発明の丸形壜体の一実施例を示すものであり、図1は正面図、図2は図1中の二点鎖線で囲った領域における側周壁の縦断面であり、上下一対の周溝リブ7a、7bの縦断面形状を示す。
この壜体1はPET樹脂製の2軸延伸ブロー成形品(ペットボトル)であり、口筒部2、テーパー筒状の肩部3、円筒状の胴部4、そして底部5を有し、全高さ206mm、横幅68mmで、容量500mlの丸形壜体である。」
カ.「【0029】
上部円筒部6tと下部円筒部6bにはそれぞれ、上下に近接して陥没状に一対の周溝リブ7a、7bが形成されており、これら上部の周溝リブ7aと下部の周溝リブ7bの間には、周突条部9が残存形成されている。
また、これら周溝リブ7a、7bの縦断面形状は底辺8bと一対の側辺8sから成るが、底辺8bが壜体1の中心軸方向Cxに対して傾斜しており、その傾斜方向を上部の周溝リブ7aと下部の周溝リブ7bで逆向きにするような構成としている。(図2参照)
ここで、周溝リブは7a、7bは上下一対の側壁と底壁から形成されるが、側壁の縦断面形状が側辺8s、底壁の縦断面形状が底辺8bに相当し、底辺8bが壜体1の中心軸方向Cxに対して傾斜していることは、底壁が壜体1の中心軸方向Cxに対して傾斜していることに相当する。
なお、下部円筒部6bに形成されている周溝リブ7a、7bの形状は図2に示されるものと同様である。」
キ.【図1】、【図2】、【図6】


第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「口部」、「肩部」、「胴部10」及び「底部」は、本願発明の「口部」、「肩部」、「胴部」及び「底部」にそれぞれ相当することは明らかである。
引用発明の「PETボトル1」は、「PET」は樹脂の一種であり、「ボトル1」は容器であるから、本願発明の「樹脂製容器」に相当する。
引用発明の「凹部11」は、本願発明の「縦凹部」に相当する。そして引用発明の「正面視において胴部10の高さ方向(軸線方向)」は、本願発明の「略鉛直方向」に相当する。
引用発明の「シュリンクラベル2が装着されるラベル面」は、本願発明の「シュリンクラベルが装着されるラベル面」に相当する。
引用文献1の【図2】及び【図3】に示された、「幅W」、「長さL」及び「深さD」のそれぞれの寸法の範囲から、引用発明の「幅W」、「長さL」及び「深さD」は、本願発明の「最大幅」、「最大長さ」及び「最大深さに」それぞれ想到する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「口部、肩部、胴部及び底部が連接された樹脂製容器であって、
前記胴部に、正面視において略鉛直方向に延びる縦凹部が周方向に複数設けられており、
前記胴部は、シュリンクラベルが装着されるラベル面を有し、
前記縦凹部は、前記ラベル面に設けられている点。」

<相違点1>
本願発明の縦凹部は、寸法が「最大幅が10mm以下、最大長が30mm以下、最大深さが4.0mm以下」であるのに対し、引用発明の凹部11は、寸法が「幅Wが1?10mm、長さLが10?100mm、深さDが1?5mm」である点。
<相違点2>
本願発明の縦凹部の樹脂製容器の胴部における配置が、「複数の前記縦凹部が略等間隔で設けられ」たものであるのに対し、引用発明の凹部11は、複数をPETボトル1の胴部に設けるものではあるものの、「略等間隔」であることは、引用文献1には明記されていない点。
<相違点3>
本願発明の樹脂製容器の胴部には、「正面視において略水平方向に延びる横凹部が設けられている」のに対し、引用文献1には、そのような構成を備えることが記載されていない点。

第5 相違点についての検討
1.相違点1について
引用発明の凹部11は、「幅Wが1?10mm」であるところ、それは本願発明の縦凹部の「最大幅10mm以下」の範囲内のものである。また、同凹部11は、「深さDが1?5mm」であるところ、当該範囲のうち、本願発明の縦凹部の「最大深さが4.0mm以下」の数値範囲内のものは、「深さD」の上記範囲のうちの75%もの範囲を占めるものである。そして、PETボトルの高さは、その内容量に応じて大小さまざまなものであることは当業者にとって技術常識であるところ、引用発明の凹部11の長さLや幅Wは、ボトルの大きさに応じて当業者が適宜設定すべきものと解されるから、例えばPETボトルの高さが低いものについて、設ける凹部11の長さLを、「30mm以下」とすることに格別の困難性が存するとは認められない。
そうすると、引用発明のPETボトル1に形成する凹部11の幅W、深さD、そして、長さLについて、それぞれ本願発明の最大幅10mm、最大長30mm以下、そして、最大深さ4.0mm以下の数値範囲内のものを選択することで、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項である。

2.相違点2について
上記第3の1.(2)ウには、「周方向に沿って細長く形成されている」凹部11を有する第1実施例について、「凹部11は、胴部10の同一高さ位置において、周方向等間隔に複数形成されている。」(段落【0013】)という記載がある。そして、上記3の1.(2)のエ.には、第3実施例について「このPETボトル1が前記第1実施例のものと相違する点は、各凹部11の長手方向が胴部10の高さ方向(軸線方向)に沿って延びている点にある。そのほかの点については前述第1実施例のものと同様である」(段落【0018】)という記載がある。そうすると、凹部11が「正面視において胴部10の高さ方向(軸線方向)に延びる」第3実施例のもの、すなわち引用発明における凹部11は、その胴部における配置が、第1実施例の「周方向等間隔」と「同様」であることが、当業者には理解できる。したがって、相違点2は実質的な相違点ではなく形式的な相違点である。
仮に、相違点2が実質的な相違点であったとしても、引用発明の凹部11は、「シュリンクフィルムを容器に被せて熱収縮させた際に、シュリンクフィルムに皺を生じさせるような力が働いても、シュリンクフィルムにおいて凹部の上に配された部分が皺を吸収する。したがって、シュリンクフィルムを皺なく綺麗に容器の外表面に被覆することができる。」(上記第3の1.(1)イの段落【0007】)との作用を奏するものであって、かつ、「シュリンクフィルム2は筒状をなしている。このシュリンクフィルム2は1軸配向にされており、周方向にだけ収縮し、軸線方向には収縮しないようになっている。」(上記第3の1.(1)ウの段落【0014】)ものである。したがって、シュリンクフィルム2の収縮による皺はPETボトル1の周方向のいずれの位置でも発生する可能性があることが理解できるから、そうした皺を吸収するために、凹部を設ける配置をPETボトル1の周方向において、複数の凹部を略等間隔とすることすることは、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、仮に相違点2が実質的なものであったとしても、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項である。

3.相違点3について
引用発明は、「容器はその断面形状が複雑になるため、凹部を有さない従来の容器よりも機械的強度が大きくなる」(上記第3の1.(1)イの段落【0010】)との作用を奏することから、PETボトル容器の断面形状を複雑にして、機械的強度を大きくすることの動機付けがあるといえる。
一方、引用文献2には、PET樹脂製の2軸延伸ブロー成形品(ペットボトル)において、)正面視において水平方向に延びる横凹部である周溝リブ7a、周溝リブ7b、周溝リブ114が記載されていて、その効果として面剛性が大きくなることが理解できる。
引用発明において、凹部11が伸びる方向を、軸方向のみ、あるいは周方向のみに延びるものだけから構成するよりも、それぞれの方向のものを組み合わせたほうがより断面形状が複雑となることは明らかである。したがって、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、軸方向のみに延びる凹部11を備えた引用発明に対して、機械的強度を大きくするとの上記動機付けにしたがって、PETボトル容器である点で引用発明と共通する引用文献2に記載された、容器の周方向に延びる上記横凹部を、引用発明に対して組み合わせることで、当業者が容易になし得た事項である。

4.作用効果について
本願発明が奏する作用・効果については、当業者が予測し得る以上の格別なものであるとは認められない。

5.請求人の主張について
請求人は「・・・各引例には、『胴部に縦凹部及び横凹部の両方を同時に設けて、側面剛性を高くする』及び『縦凹部を略等間隔でラベル面に設けて、シュリンクラベルのデザイン性の低下を抑制する』という技術思想は無く、各引例には、その必要性を示唆する記載もありません。」(審判請求書3.(2))と主張しているから検討する。
まず、「縦凹部を略等間隔でラベル面に設け」る点は、上記2.に示したとおり、引用発明もそのようなものであるか、あるいは、仮に引用発明がそのようなものではないとしても、略等間隔で設けることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
次に、「胴部に縦凹部及び横凹部の両方を同時に設けて、側面剛性を高くする」ことは、例えば、特開平8-82992号公報(特に、段落【0022】?【0025】、【0058】、【図1】に記載された「トナーボトルの長手方向に沿ったリブ1a、1b」及び「トナーボトルの長手方向に略直交するリブ1c」と剛性に関する記載に着目されたい。)、登録実用新案第3157075号公報(特に段落【0031】、【0032】及び【図1】に記載された「縦横に複数の溝状凹部14」と容器の強度に関する記載に着目されたい。)、及び、実願平2-52807号(実開平4-13509号)のマイクロフィルム(特に、6ページ2行?7ページ8行、10ページ1?11行、第1図?第3図に記載あるいは看取できる「中央部2」と「下部3」との間の溝及び「溝部(II)62」と強度的に有利な容器構造に関する記載に着目されたい。)に記載されているように、従来周知の事項であるから、上記3.で示したように引用発明に引用文献2に記載されたものを組み合わせたもの、すなわち「胴部に縦凹部及び横凹部の両方を同時に設け」る構成を備えたものが側面剛性が高くなるという作用効果を奏することは、当業者が十分予測し得たことである。
したがって、上記請求人の主張はいずれも採用できない。

6.小括
以上に示したとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-19 
結審通知日 2018-12-25 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2014-246976(P2014-246976)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新田 亮二  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 西藤 直人
久保 克彦
発明の名称 樹脂製容器  
代理人 特許業務法人R&C  

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