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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1349393
審判番号 不服2018-3475  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-09 
確定日 2019-02-27 
事件の表示 特願2014- 27099「レーザ加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月24日出願公開、特開2015-153917〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月17日の出願であって、平成29年8月3日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年10月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年12月6日付け(平成29年12月12日送達)で拒絶査定がなされ、これに対して平成30年3月9日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年3月9日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
放電電極を含むレーザ発振器と、
運転パルス信号に基づいて、前記放電電極に高周波電圧を印加する高周波電源と、
出力すべきパルスレーザビームの出力契機及びパルス幅を指令する情報を含む出力指令信号に基づいて、前記高周波電源に前記運転パルス信号を与える運転パルス制御装置と、
前記運転パルス制御装置に前記出力指令信号を与える加工機制御装置と、
前記レーザ発振器から出力されたパルスレーザビームを検出すると、前記運転パルス制御装置に検出信号を送信する光検出器と
を有し、
前記運転パルス制御装置は、
前記出力指令信号の受信時刻から、前記検出信号を受信するまでの遅延時間の長さを計測し、
前記出力指令信号で指令されたパルス幅に相当する時間に前記遅延時間を加算した時刻において、前記運転パルス信号の送信を停止するレーザ加工装置。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2014/010046号

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/010046号(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

(1)「[0013] レーザ加工装置100Xは、パルスレーザ光10を発振するレーザ発振器1Xと、基板11のレーザ加工を行うレーザ加工部3と、レーザ加工制御装置2と、を備えている。レーザ発振器1Xは、パルスレーザ光10を発振して、レーザ加工部3に送出する。レーザ加工部3は、ガルバノミラー15X,15Y、ガルバノスキャナ16X,16Y、fθレンズ(集光レンズ)14、XYテーブル(加工テーブル)12を備えている。」

(2)「[0021] つぎに、レーザ発振器1Xの構成について説明する。図2は、実施の形態1に係るレーザ発振器の構成を示す図である。ここでは、レーザ加工装置100Xの一例であるレーザ加工装置100Aの構成について説明する。レーザ加工装置100Aは、レーザ発振器1Xの一例であるレーザ発振器1Aを備えている。
[0022] レーザ発振器1Aは、共振器4、共振器制御電源(レーザ共振器制御電源)5A、レーザ出力検出部6を有している。共振器4は、共振器制御電源5Aからの指示に従ったタイミングでパルスレーザ光10をレーザ加工部3に出力する。
[0023] レーザ出力検出部6は、共振器4がレーザ加工部3に実際に出力したパルスレーザ光10の漏れ光を用いて、共振器4から実際に出力されたパルスレーザ光10を検出する。レーザ出力検出部6は、パルスレーザ光10検出結果(レーザ出力波形)を共振器制御電源5Aに送る。
[0024] 共振器制御電源5Aは、コンピュータなどを用いて構成されており、共振器4を制御する。共振器制御電源5Aは、パルス放電を制御する電源装置であってもよいし、LD(Laser Diode)バーなどの励起光源を制御する電源装置であってもよい。」

(3)「[0028] レーザ加工装置100Aが基板11へのレーザ加工を開始すると、レーザ加工制御装置2は、加工プログラムに設定されているレーザ光照射位置にパルスレーザ光10が照射されるようレーザ加工部3に指示を送る。また、レーザ加工制御装置2は、加工プログラムに設定されているパルスレーザ光10の出力タイミングを共振器制御電源5Aに送る。レーザ加工制御装置2は、例えば、パルスレーザ光10のパルス幅を指定したパルス幅指令31と、パルスレーザ光10の出力開始タイミングを指定したビーム出力指令(トリガ)32と、を共振器制御電源5Aに送る。
[0029] 共振器制御電源5Aは、パルス幅指令31で指定されたパルス幅(設定パルス幅W1)を記憶しておくメモリなどを具備しており、設定パルス幅W1を記憶しておく。共振器制御電源5Aは、ビーム出力指令32で指定されたパルスレーザ光10の出力開始タイミングに基づいて、パルス制御電源(制御電源波形33)をONにする(S1)。換言すると、共振器制御電源5Aは、ビーム出力指令32で指定された出力開始タイミングを有したパルス出力指令波形を生成してレーザ発振器1Aに送る。制御電源波形33は、共振器4からパルスレーザ光10を出力させる電源の波形であり、制御電源波形33がONになると(制御電源波形33が立ち上がると)、共振器4からパルスレーザ光10が出力される。
[0030] 共振器4がパルスレーザ光10を出力すると、レーザ出力検出部6によって実レーザ出力(レーザ出力波形34)が検出される(S2)。ビーム出力指令32がONになるタイミングと制御電源波形33がONになるタイミングは略同じである。ところが、制御電源波形33がONになるタイミングと、共振器4がパルスレーザ光10を出力する(レーザ出力波形34が立ち上がる)タイミングには、ばらつきを生じる場合がある。このため、制御電源波形33のONタイミングに対してパルスレーザ光10が遅れて出力される場合がある。
[0031] レーザ出力検出部6は、実レーザ出力を検出し、レーザ発振検出信号(レーザ出力波形34)として共振器制御電源5Aに通知する。共振器制御電源5Aは、レーザ出力波形34の立ち上がり(パルスレーザ光10の出力開始タイミング)を検出するとともに、この立ち上がりタイミングでトリガ35を共振器制御電源5A内のパルス幅制御基板に出力する(S3)。トリガ35は、実レーザ出力の出力開始タイミングを示す情報である。
[0032] そして、共振器制御電源5Aは、トリガ35のONタイミングを実レーザ出力のONタイミングとして扱う。これにより、共振器制御電源5Aは、トリガ35のONタイミングと、記憶しておいた設定パルス幅W1と、に基づいて、設定パルス幅W1を有したパルス波形36を生成する(S4)。
[0033] そして、共振器制御電源5Aは、パルス波形36がOFFになるタイミングに基づいて、設定パルス幅W1の完了信号を共振器4に送る(S5)。設定パルス幅W1の完了信号は、パルス制御電源をOFFにさせる制御信号(制御電源波形33を立ち下げる指示)である。これにより、共振器4は、パルスレーザ光10の出力をOFFにする。この結果、レーザ出力波形34が立ち下がる(S6)。」

2 引用発明
上記(1)ないし(3)から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「レーザ加工装置は、レーザ発振器と、レーザ加工部と、レーザ加工制御装置と、を備え、
レーザ発振器は、
パルスレーザ光をレーザ加工部に出力する共振器と、
コンピュータなどを用いて構成されており、共振器を制御し、パルス放電を制御する電源装置であってもよい共振器制御電源(レーザ共振器制御電源)と、
共振器がレーザ加工部に実際に出力したパルスレーザ光の漏れ光を用いて、共振器から実際に出力されたパルスレーザ光を検出するレーザ出力検出部を有し、
レーザ加工制御装置は、パルスレーザ光のパルス幅を指定したパルス幅指令と、パルスレーザ光の出力開始タイミングを指定したビーム出力指令(トリガ)と、を共振器制御電源に送り、
共振器制御電源は、パルス幅指令で指定されたパルス幅(設定パルス幅W1)を記憶し、ビーム出力指令で指定されたパルスレーザ光の出力開始タイミングに基づいて、パルス制御電源(制御電源波形)をONにし(S1)、
制御電源波形のONタイミングに対してパルスレーザ光が遅れて出力される場合があり、
レーザ出力検出部は、実レーザ出力を検出し(S2)、レーザ発振検出信号(レーザ出力波形)として共振器制御電源に通知し、
共振器制御電源は、レーザ出力波形の立ち上がりを検出するとともに、この立ち上がりタイミングでトリガを出力し(S3)、
トリガのONタイミングを実レーザ出力のONタイミングとして扱い、トリガのONタイミングと、記憶しておいた設定パルス幅W1と、に基づいて、設定パルス幅W1を有したパルス波形を生成し(S4)、
共振器制御電源は、パルス波形がOFFになるタイミングに基づいて、設定パルス幅W1の完了信号を共振器に送り(S5)、
これにより、共振器は、パルスレーザ光の出力をOFFにし、この結果、レーザ出力波形が立ち下がる(S6)、
レーザ加工装置。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明の「『パルスレーザ光を』『出力する共振器』」は、本願発明の「レーザ発振器」に、引用発明の「パルスレーザ光のパルス幅を指定したパルス幅指令と、パルスレーザ光の出力開始タイミングを指定したビーム出力指令(トリガ)」は、本願発明の「出力すべきパルスレーザビームの出力契機及びパルス幅を指令する情報を含む出力指令信号」に、引用発明の「コンピュータなどを用いて構成されており、共振器を制御し、パルス放電を制御する電源装置であってもよい共振器制御電源(レーザ共振器制御電源)」は、本願発明の「『電源と、』『運転パルス制御装置』」に、引用発明の「『パルスレーザ光のパルス幅を指定したパルス幅指令と、パルスレーザ光の出力開始タイミングを指定したビーム出力指令(トリガ)と、を共振器制御電源に送』る『レーザ加工制御装置』」は、本願発明の「前記運転パルス制御装置に前記出力指令信号を与える加工機制御装置」に、引用発明の「『共振器がレーザ加工部に実際に出力したパルスレーザ光の漏れ光を用いて、共振器から実際に出力されたパルスレーザ光を検出』『し、レーザ発振検出信号(レーザ出力波形)として共振器制御電源に通知』する『レーザ出力検出部』」は、本願発明の「レーザ発振器から出力されたパルスレーザビームを検出すると、前記運転パルス制御装置に検出信号を送信する光検出器」に、引用発明の「レーザ加工装置」は、本願発明の「レーザ加工装置」に、それぞれ相当する。

2 引用発明では、共振器制御電源は、共振器を制御し、パルス放電を制御することから考えて、引用発明の『パルスレーザ光を』『出力する共振器』は、共振器制御電源が制御するパルス放電を行う電極を含んでいる。そうすると、引用発明の「『パルスレーザ光を』『出力する共振器』」は、本願発明の「放電電極を含むレーザ発振器」に、相当する。

3 引用発明の「共振器制御電源(レーザ共振器制御電源)」は、共振器を制御し、パルス放電を制御しており、共振器の制御又はパルス放電の制御の技術常識から考えて、パルス信号(運転パルス信号)に基づいて、共振器のパルス放電を行う電極に高周波の電圧を印加している。したがって、引用発明の「共振器制御電源(レーザ共振器制御電源)」は、本願発明の「運転パルス信号に基づいて、前記放電電極に高周波電圧を印加する高周波電源」の機能を有する。
また、引用発明の「共振器制御電源(レーザ共振器制御電源)」は、「コンピュータなどを用いて構成されており、共振器を制御し、パルス放電を制御する」ものであって、「『コンピュータなど』で『制御する』部分」から「電源」に、パルス放電を制御するためのパルス信号(運転パルス信号)を与えて共振器を制御していることから、本願発明の「前記高周波電源に前記運転パルス信号を与える運転パルス制御装置」の機能を有する。
そして、引用発明の「レーザ加工制御装置は、パルスレーザ光のパルス幅を指定したパルス幅指令と、パルスレーザ光の出力開始タイミングを指定したビーム出力指令(トリガ)と、を共振器制御電源に送」っていることから、パルスレーザ光のパルス幅を指定したパルス幅指令と、パルスレーザ光の出力開始タイミングを指定したビーム出力指令(トリガ)に基づいて、パルス放電を制御するための信号を与えているので、上記「高周波電源に前記運転パルス信号を与える運転パルス制御装置」の機能は、「出力すべきパルスレーザビームの出力契機及びパルス幅を指令する情報を含む出力指令信号に基づいて」制御されるものであり、上記「放電電極に高周波電圧を印加する高周波電源」の機能は、「運転パルス信号に基づいて」制御されるものである。
そうすると、引用発明の「コンピュータなどを用いて構成されており、共振器を制御し、パルス放電を制御する電源装置であってもよい共振器制御電源(レーザ共振器制御電源)」は、本願発明の「運転パルス信号に基づいて、前記放電電極に高周波電圧を印加する高周波電源と、出力すべきパルスレーザビームの出力契機及びパルス幅を指令する情報を含む出力指令信号に基づいて、前記高周波電源に前記運転パルス信号を与える運転パルス制御装置」に相当する。

4 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「放電電極を含むレーザ発振器と、
運転パルス信号に基づいて、前記放電電極に高周波電圧を印加する高周波電源と、
出力すべきパルスレーザビームの出力契機及びパルス幅を指令する情報を含む出力指令信号に基づいて、前記高周波電源に前記運転パルス信号を与える運転パルス制御装置と、
前記運転パルス制御装置に前記出力指令信号を与える加工機制御装置と、
前記レーザ発振器から出力されたパルスレーザビームを検出すると、前記運転パルス制御装置に検出信号を送信する光検出器とを有するレーザ加工装置。」

【相違点】
運転パルス制御装置において、本願発明は「前記出力指令信号の受信時刻から、前記検出信号を受信するまでの遅延時間の長さを計測し、前記出力指令信号で指令されたパルス幅に相当する時間に前記遅延時間を加算した時刻において、前記運転パルス信号の送信を停止する」のに対し、引用発明ではそのようなものではない点。

第6 判断
1 相違点について
(1)引用発明では「『共振器制御電源は、パルス幅指令で指定されたパルス幅(設定パルス幅W1)を記憶し、ビーム出力指令で指定されたパルスレーザ光の出力開始タイミングに基づいて、パルス制御電源(制御電源波形)をONにし(S1)、』『レーザ出力検出部は、実レーザ出力を検出し(S2)、』『共振器制御電源は、レーザ出力波形の立ち上がりを検出するとともに、この立ち上がりタイミングでトリガを出力し(S3)、トリガのONタイミングを実レーザ出力のONタイミングとして扱い、トリガのONタイミングと、記憶しておいた設定パルス幅W1と、に基づいて、設定パルス幅W1を有したパルス波形を生成し(S4)、共振器制御電源は、パルス波形がOFFになるタイミングに基づいて、設定パルス幅W1の完了信号を共振器に送』『(S5)』」っている。
また、引用発明は「制御電源波形のONタイミングに対してパルスレーザ光が遅れて出力される場合」を想定している。
この視点で整理すると、引用発明は、
a.まず、ビーム出力指令で指定されたパルスレーザ光の出力開始タイミングにおいて、共振器制御電源が、パルス幅(設定パルス幅W1)を記憶し、
b.次に、実レーザ出力のONタイミングすなわちパルスレーザ光の出力開始タイミングに基づいた制御電源波形のONタイミングに対しパルスレーザ光が遅れて出力されるトリガのONタイミングにおいて、パルス幅指令で指定されたパルス幅の設定パルス幅W1と、に基づいて、共振器制御電源が、設定パルス幅W1を有したパルス波形を生成し、
c.そして、このパルス波形がOFFになるタイミングにおいて、共振器制御電源が、前記完了信号を共振器に送る、
というものである。

(2)ここで、パルスレーザ光の出力開始タイミングに基づいた制御電源波形のONタイミングとパルスレーザ光が遅れて出力されるトリガのONタイミングとの間の時間を、以下「時間A」といい、パルス幅指令で指定されたパルス幅の設定パルス幅W1の時間を、以下「時間B」という。

ア 引用発明の共振器制御電源は、パルスレーザ光が遅れて出力されるトリガのONタイミングにおいて、上記(1)のとおり、設定パルス幅W1を有したパルス波形を生成するものであり、パルス波形がOFFになるタイミングにおいて、前記完了信号を共振器に送るようにしたものであるから、結局、引用発明の共振器制御電源が前記完了信号を共振器に送る時刻は、前記制御電源波形のONタイミングに時間Aと時間Bとを加算することで得られる時刻と同じである。

イ 他方、相違点に係る構成では、引用発明の共振器制御電源が前記完了信号を共振器に送る時刻は、ビーム出力指令で指定されたパルスレーザ光の出力開始タイミングに基づいて、パルス制御電源(制御電源波形)をONにし、前記制御電源波形のONタイミングに時間Bと時間Aとを加算することで得られる時刻であるから、これは上記アの時刻と同じである。

ウ 上記ア及びイで検討したように、引用発明と本願発明とは、前記制御電源波形のONタイミングに時間Bと時間Aとを加算した時刻に、共に、パルス信号を停止するものであって、その制御を行うために、本願発明では、出力契機、パルスレーザビームの検出、パルス幅を用いている。
そして、引用発明の「パルスレーザ光の出力開始タイミングを指定したビーム出力指令(トリガ)」は、本願発明の「出力すべきパルスレーザビームの出力契機」に、引用発明の「『実レーザ出力』の『検出』」は、本願発明の「パルスレーザビームの検出」に、引用発明の「パルス幅」は、本願発明の「パルス幅」に、それぞれ相当することから、引用発明においても、それらを用いている。
そうすると、両者は、パルスレーザービームを検出信号の後で、出力契機、パルスレーザビームの検出、パルス幅を用いて、同じ時刻にパルスレーザビームを停止するように制御するもので一致しているから、両者の相違は、その制御のための算出方法(具体的には、算出の過程で、遅延時間の長さを計測するか否か)に集約される。しかし、パルスレーザ光の出力の遅れをどのように考慮するかで、停止するタイミング等にその差が生じるとは考えられないから、遅延時間を計測するか否かは当業者が適宜選択する事項にすぎない。

(3)以上のとおり、引用発明において、本願発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項にすぎない。

2 効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

3 まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものである。

4 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において「本願発明は、遅延時間の長さを計測し、加算することで、計測した値に基づいて制御を行っています。一方で、引用文献はショットごとのパルス幅を記憶し、記憶した値に基づいて制御を行っています。更に、引用文献は、遅延時間の時刻を測定したタイミングでパルスの送信を停止するタイミングを決定しており、遅延時間の長さによっては非常に高速でパルス幅の記憶とパルスの送信を停止するタイミングを決定しなければなりません。これに対し、本願発明は遅延時間の長さを計測し、加算することで運転パルス信号の送信を停止するタイミングを決定しているので、遅延時間の長さの長短に影響を受けることなく運転パルス信号の送信を停止することができるという引用文献にはない優れた効果を奏しています。」 旨主張している。

しかしながら、上記(2)で検討したとおり両者の差は単に算出方法の差であり、また、本願発明においても、遅延時間の長さを計測し、加算する処理を行っているから、パルス幅に相当する時間に対し遅延時間が長い場合には加算するまでの処理を行い得る時間は短くなる。そうすると、本願発明が、特に優れた効果を奏するとはいえない。
したがって、審判請求人の主張は採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-04 
結審通知日 2018-12-11 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2014-27099(P2014-27099)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 野村 伸雄
山村 浩
発明の名称 レーザ加工装置  
代理人 小島 誠  

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