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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A24B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A24B |
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管理番号 | 1349398 |
審判番号 | 不服2018-1433 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-02 |
確定日 | 2019-03-19 |
事件の表示 | 特願2015-505873号「植物をプロバイオティクスで処理するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月17日国際公開、WO2013/155177、平成27年4月30日国内公表、特表2015-512656号、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 経緯の概略 本願は、2013年4月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2012年4月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年12月11日に手続補正書が提出され、平成28年10月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年4月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年9月25日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成30年2月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたところ、平成30年4月6日に前置報告がされ、平成30年8月14日に上申書が提出され、当審にて平成30年10月9日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年1月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?21に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は、平成31年1月16日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 タバコ材料中のアミノ酸およびタバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減する方法であって、タバコ植物成分を2つ以上のプロバイオティクスと接触させることを含み、 前記タバコ植物成分が、タバコ種子、タバコ実生苗、未熟な生きた植物、成熟した生きた植物、収穫された植物、またはそれらの一部分からなる群から選択され、前記2つ以上のプロバイオティクスが、ビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属、エンテロコッカス属、プロイオノバクテリウム属(proionobacterium)、バシラス属、サッカロミセス属、ストレプトコッカス属のプロバイオティクス種、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記2つ以上のプロバイオティクスが、ラクトバシラス属から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスを含む、方法。 【請求項2】 前記タバコ植物成分が、収穫されていない植物である、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記2つ以上のプロバイオティクスが、ビフィドバクテリウムアドレセンティス、ビフィドバクテリウムアニマリス、ビフィドバクテリウムビフィダム、ビフィドバクテリウムブレヴェ、ビフィドバクテリウムインファンティス、ビフィドバクテリウムラクティス、ビフィドバクテリウムロンガム、ビフィドバクテリウムシュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウムシュードロンガム、ビフィドバクテリウム種、ビフィドバクテリウムサーモフィラム、ラクトバシラスアシドフィラス、ラクトバシラスアリメンタリウス、ラクトバシラスアミロボラス、ラクトバシラスブルガリクス、ラクトバシラスビフィダス、ラクトバシラスブレビス、ラクトバシラスカゼイ、ラクトバシラスカウカシクス、ラクトバシラスクリスパータス、ラクトバシラスカルバータス、ラクトバシラスデルブルッキー、ラクトバシラスファーメンタム、ラクトバシラスガリナラム、ラクトバシラスガセリ、ラクトバシラスヘルベティカス、ラクトバシラスジョンソニー、ラクトバシラスラクティス、ラクトバシラスライヒマニ、ラクトバシラスパラカゼイ、ラクトバシラスプランタルム、ラクトバシラスロイテリ、ラクトバシラスラムノサス、ラクトバシラスサリバリウス、ラクトバシラス種、ラクトバシラススポロゲネス、ラクトバシラスラクティス、ストレプトコッカスセルモリス、ストレプトコッカスフェシウム、ストレプトコッカスインファンティス、ストレプトコッカスサーモフィラス、エンテロコッカスフェシウム、ペディオコッカスアシディラクティシ、スタフィロコッカスサーモフィラス、スタフィロコッカスカルノサス、スタフィロコッカスキシロサス、サッカロミセスブラウディ、サッカロミセスセレビシエ、サッカロミセスブラウディ、バシラスセレウスバールトヨ、バシラスサブティリス、バシラスコアギュランス、バシラスリケニフォルミス、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記2つ以上のプロバイオティクスが、前記ビフィドバクテリウム属から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスと、前記ラクトバシラス属から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスと、を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記2つ以上のプロバイオティクスが、前記ビフィドバクテリウム属から選択される2つ以上のプロバイオティクス、または前記ラクトバシラス属から選択される2つ以上のプロバイオティクス、を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記接触させるステップが、水中の溶液、懸濁液、または分散液中で前記2つ以上のプロバイオティクスを適用することを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記接触させるステップが、前記2つ以上のプロバイオティクス1mL当たり1×10^(5)個のコロニー形成単位?1×10^(10)個のコロニー形成単位を含む溶液中で前記2つ以上のプロバイオティクスを適用することを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 前記接触させるステップが、1つ以上の界面活性剤を前記タバコに適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。 【請求項9】 前記接触させるステップ後の前記タバコ材料のアスパラギン含有量が、少なくとも50重量%低減される、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記タバコ植物成分が、鉄管乾燥タバコ、バーレータバコ、オリエンタルタバコ、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項11】 前記タバコ材料を無煙タバコ製品または喫煙物品に組み込むことをさらに含む、請求項1?10のいずれかに記載の方法。 【請求項12】 前記タバコ材料が、カットフィラーの形態である、請求項11に記載の方法。 【請求項13】 前記タバコ材料が、タバコブレンドの形態である、請求項11に記載の方法。 【請求項14】 前記喫煙物品が、喫煙時の、未処理の対照喫煙物品に対して低減された主流煙のアクリルアミド含有量を特徴とする、請求項11に記載の方法。 【請求項15】 主流煙中のアクリルアミドの低減量が、未処理の対照喫煙物品と比較して少なくとも20重量%である、請求項14に記載の方法。 【請求項16】 主流煙中のアクリルアミドの低減量が、未処理の対照喫煙物品と比較して少なくとも40重量%である、請求項14に記載の方法。 【請求項17】 請求項11に記載の方法に従って調製されたシガレットまたは無煙タバコ製品の形態のタバコ製品。 【請求項18】 包装材料によって取り囲まれた喫煙可能な材料のロッドと、前記ロッドにその一端で取り付けられたフィルターと、を含むシガレットの形態の喫煙物品の形態のタバコ製品であって、前記喫煙可能な材料が、アスパラギンの含有量を低減させるように2つ以上のプロバイオティクスで前処理されたタバコ植物成分を含むタバコ材料を含み、前記タバコ植物成分が、タバコ種子、タバコ実生苗、未熟な生きた植物、成熟した生きた植物、収穫された植物、またはそれらの一部分からなる群から選択され、前記2つ以上のプロバイオティクスが、ビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属、エンテロコッカス属、プロイオノバクテリウム属(proionobacterium)、バシラス属、サッカロミセス属、ストレプトコッカス属のプロバイオティクス種、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記2つ以上のプロバイオティクスが、ラクトバシラス属から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスを含む、タバコ製品。 【請求項19】 前記喫煙物品が、喫煙時の、未処理の対照喫煙物品に対して低減された主流煙のアクリルアミド含有量を特徴とする、請求項18に記載のタバコ製品。 【請求項20】 主流煙中のアクリルアミドの低減量が、未処理の対照喫煙物品と比較して少なくとも20重量%である、請求項19に記載のタバコ製品。 【請求項21】 主流煙中のアクリルアミドの低減量が、未処理の対照喫煙物品と比較して少なくとも40重量%である、請求項19に記載のタバコ製品。」 第3 原査定の概要 原査定(平成29年9月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。すなわち、本願発明1?21は、以下の引用文献1?4に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (引用文献) 1 特開2005-27545号公報 2 特開2006-180715号公報 3 特開2005-192436号公報 4 特表2011-522558号公報 第4 当審にて通知した拒絶の理由の概要 当審にて通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。すなわち、本件出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法36条6項1号、36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 1 請求項1に記載された「タバコ材料中のアミノ酸およびタバコ特異的ニトロソアミン含有量を修正する方法」とはどのような趣旨を意味するのか不明であるから、本願発明1?17は明確でない。 2 発明の詳細な説明に具体的に開示された特定のプロバイオティクスによる結果を、本願発明1?21の範囲にまで拡張ないし一般化できるものとは認められないから、本願発明1?21は、発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められない。 第5 原査定についての判断 1 引用文献、引用発明等 (1) 引用文献1 ア 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 脱窒能を有する微生物を葉タバコに処理することを特徴とする葉タバコ中の亜硝酸および/またはニトロソアミン含量を低減する方法。 【請求項2】 亜硝酸が葉タバコ中に蓄積される以前に脱窒能を有する微生物を葉タバコに処理することを特徴とする葉タバコ中の亜硝酸および/またはニトロソアミン含量を低減する方法。 【請求項3】 前記脱窒能を有する微生物がアグロバクテリウム属微生物である請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 前記脱窒能を有する微生物がアグロバクテリウム・ラジオバクターLG77(FERM BP-8386)である請求項3に記載の方法。」 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、葉タバコの乾燥および/または貯蔵中に、葉タバコ中で亜硝酸とアルカロイドなどが反応して生成するタバコ特異的ニトロソアミン(Tabacco Specific Nitrosamine;以下「TSNA」と記す)含量を低減する方法に関する。より詳しくは、葉たばこ中の硝酸あるいは亜硝酸を脱窒化することで亜硝酸の蓄積を減少させTSNAの生成を阻害する方法である。」 ・「【0013】 【発明が解決しようとする課題】 本発明者らは、収穫直後の黄変期では、シュードモナス(Pseudomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)およびキサントモナス(Xanthomonas)属の微生物など、非腸内微生物(すなわち、好気性微生物)が優勢種であるが、続く褐変期になると、硝酸還元能を有する腸内微生物(すなわち、通性嫌気性微生物)、特にエンテロバクター属(Enterobacter)やパントエア(Pantoea)属の微生物が優勢種となることを見出した。 【0014】 通気性嫌気性微生物は、好気性微生物に比較して、高い硝酸還元能を有する。実際に、褐変期に葉面上から分離されたエンテロバクターおよびパントエア属の微生物を葉タバコに添加処理してみると、葉タバコ中に亜硝酸態窒素が蓄積されていた。 【0015】 葉タバコ中に蓄積された亜硝酸はアルカロイドと反応してTSNAを生成する。しかしながら、生成された亜硝酸が更なる還元を受けたとすれば、N_(2)OやN_(2)などのガス態として放出されるので、葉面での亜硝酸の蓄積はなくなり、それによってTSNAの生成は抑制されるだろうと予想される。 【0016】 葉タバコ葉面での亜硝酸還元の手段の1つは、微生物により達成されることが期待される。微生物による硝酸還元の形態は、同化型と異化型に分けられる。同化型還元は、亜硝酸塩を経てアミノ酸を合成し、合成されたアミノ酸は細胞形態の維持や増殖のために利用される。異化型還元には、硝酸呼吸と脱窒があり、微生物の活動のためのエネルギーを得るためのものである。硝酸呼吸は、硝酸塩を亜硝酸塩に還元はするが、それから先の還元までには至らない。これに対して、脱窒は、硝酸塩をNO_(3)^(‐)→NO_(2)^(‐)→NO→N_(2)O→N_(2)の反応により還元し、最終的にガス態の窒素として体外に放出することになる。 【0017】 そこで、本発明者らは亜硝酸を還元する能力を有することが知られているシュードモナス属微生物により葉タバコ中のTSNA生成阻害効果を試みた。しかし、シュードモナス属微生物は、葉タバコの乾燥過程において葉タバコの表面上では優勢種になりえないことから、期待した亜硝酸還元効果が得られず、その結果、TSNA低減も十分に達成されなことが判明した。 【0018】 本発明の目的は、乾燥および貯蔵中に葉タバコ中に蓄積される亜硝酸を還元することにより、葉タバコ中でのTSNA生成を阻害し、結果としてTSNA含量を低減することである。さらに、葉タバコの香喫味品質に悪影響を与えることなく、また現在行われている乾燥および貯蔵形態を変更せずに葉タバコ中のTSNAを低減する方法を提供することである。」 ・「【0019】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、葉タバコの乾燥過程において、葉タバコ表面での生存率が高く、かつ脱窒能を有する微生物であってタバコの香喫味に悪影響を与えない微生物を調査した結果、アグロバクテリウム(Agrobacterium)に属する微生物が該当することを見出し本発明を完成した。 すなわち、本発明は、アグロバクテリウムに属し、脱窒能を有する微生物を葉タバコに処理することを特徴とする葉タバコ中の亜硝酸含量および/またはTSNAを低減する方法を提供する。」 ・「【0021】 なお、本発明者らにより分離された微生物は、菌学的性質から、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)に属する微生物であると同定され、LG77として特許生物寄託センターに寄託されている(FERM BP-8386)。 また、LG77は、上述のように葉タバコの表層から分離された株であり、葉タバコの品質に悪影響を及ぼさない菌株である。」 ・「【0027】 本発明の方法に従って、微生物を処理するための時期は、対象となる葉タバコの乾燥前後の何れの期間であってもよいが、少なくとも亜硝酸が葉タバコ中に蓄積される以前、すなわち黄色種にあっては黄変期以前、バーレー種にあっては褐変期前に処理することが望ましい。例えば、収穫直前にほ場で処理し、その後に収穫して乾燥に供してもよい。微生物の処理は、前記期間に1回以上処理してもよい。なお、2回目以降の処理を乾燥後から貯蔵期間に行う場合は、貯蔵開始時に処理することが好ましい。」 ・「【0038】 [実施例2]脱窒微生物の同定 実施例1で選抜した脱窒能を有する微生物LG77菌株の菌学的性質を表1に示す。 ・・・ 【0040】 表1に示す結果から、LG77菌株は、アグロバクテリウム・ラジオバクターに属すると同定された。 なお、上記の同定は財団法人日本食品分析センターに依頼して行った。 また、LG77菌株は、アグロバクテリウム・ラジオバクター LG77として特許生物寄託センターに寄託されている(FERM BP-8386)。」 ・「【0041】 [実施例3]乾燥期間中の処理による葉タバコ中のTSNA生成抑制効果 実施例2に記載した1/10TS培地にLG77菌株を接種し、30℃で72時間培養した。培養後、この菌体を含む培地を5、000rpmで遠心して菌体を集めた。 得られた菌体を滅菌蒸留水で2回洗浄した後、再度滅菌蒸留水に懸濁した。懸濁液の菌体濃度を10^(8)?10^(10)cfu/mLに蒸留水で調整した。 【0042】 前述の微生物懸濁液を、収穫して乾燥に供するバーレー種(きたかみ1号)の葉タバコに対して処理した。 処理時期は、収穫直後、収穫3日および8日後の3回で、葉タバコ1枚当たり10mLとなるように、葉タバコの表裏に噴霧器を使用して処理した。無処理および微生物懸濁液処理と同時に当量の菌体を含有しない滅菌蒸留水を処理したものを対照とした。 ・・・ 【0049】 TSNA含量は、3試験区の中で水のみを処理した区が最も高く、乾燥21日、32日目で各々3.45、3.36μg/gであった。脱窒菌を処理した葉タバコ中のTSNA含量は、3試験区の中で最も低く、乾燥21日、32日目で各々2.22、1.71μg/gであり、無処理区の3.01、2.33μg/gと比較しても低かった。 以上の結果から、LG77菌株は葉タバコ中のTSNA生成を抑制することが示唆された。」 ・「【0050】 [実施例4]乾燥期間中の処理のよる葉タバコ中の亜硝酸態窒素生成抑制効果実施例3で処理した葉タバコ中の亜硝酸態窒素含量を定量した。・・・ ・・・ 【0054】 亜硝酸態窒素含量は、3試験区の中で水のみを処理した区が最も高く、乾燥21日、32日目で各々4.54、5.17μg/gであった。脱窒菌を処理した葉タバコ中の亜硝酸態窒素含量は、3試験区の中で最も低く、乾燥21日、32日目で、各々3.93、2.09μg/gであり、無処理区と比較しても低かった。 実施例3および実施例4の結果から、葉タバコ中のTSNAは、葉タバコ中の亜硝酸含量との関連があることが示唆された。すなわち、亜硝酸含量が多いほどTSNAの生成が多くなることが示唆された。」 ・「【0055】 [実施例5]乾燥期間中の脱窒菌の定着性 本実験に用いたLG81菌株は、実施例1で分離したアグロバクテリウム・ラジオバクターに属する脱窒菌Aであり、LG30およびCB301菌株は、脱窒能を有するシュードモナス属微生物である。これらの菌株は、葉タバコ葉面上から分離した微生物であり、脱窒能を有する微生物である。 ・・・ 【0057】 得られた菌懸濁液を、収穫1日および7日後のバーレー種(きたかみ1号)の葉タバコ1枚当たり10mLとなるように、葉タバコの表裏に噴霧器を使用して処理した。 ・・・ 【0063】 乾燥20日目の分離微生物数に対する脱窒能を有する微生物の割合を指標としたところ、無処理区、シュードモナス spp.の処理区において、脱窒能を有する微生物は分離されなかった。一方、アグロバクテリウム・ラジオバクターの処理区では、乾燥20日でも分離微生物中の30%近くが脱窒菌であった。また、アグロバクテリウム・ラジオバクター処理区から分離した脱窒能を有する微生物10菌株を同定したところ、全ての微生物がアグロバクテリウム・ラジオバクターであった。このことから、アグロバクテリウム・ラジオバクターは、葉タバコの乾燥期間中の葉タバコにおいて定着性が高いことが示唆された。」 イ 引用文献1に記載された葉タバコは、包装材料によって取り囲まれた喫煙可能な材料のロッドと、ロッドにその一端で取り付けられたフィルターと、を含むシガレットの形態の喫煙物品の形態のタバコ製品に供されることは明らかである。 そうすると、上記の記載及び図面の記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、それぞれ「引用発明1」、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 (引用発明1) 「葉タバコ中のタバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減する方法であって、収穫直前の又は収穫した葉タバコをアグロバクテリウム属微生物と接触させることを含む、方法。」 (引用発明2) 「包装材料によって取り囲まれた喫煙可能な材料のロッドと、前記ロッドにその一端で取り付けられたフィルターと、を含むシガレットの形態の喫煙物品の形態のタバコ製品であって、前記喫煙可能な材料が、タバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減させるように、収穫直前の又は収穫した葉タバコにアグロバクテリウム属微生物と接触させる処理を行った葉タバコを含む、タバコ製品。」 (2) その他の引用文献 ア 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 天然タバコ材を抽出溶媒で抽出することによって得られた抽出液をビフィズス菌と接触させ、それにより前記抽出液中のタバコ固有のニトロソアミンを減少させることを特徴とするタバコ抽出液の処理方法。 【請求項2】 (a)天然タバコ材を抽出溶媒で抽出し、該天然タバコ材の成分を含む抽出液と抽出残渣を得る工程、 (b)前記抽出液をビフィズス菌と接触させて前記抽出液中のタバコ固有のニトロソアミンを減少させる工程、 (c)前記抽出残渣を用いて再生タバコウエブを調製する工程、 (d)前記ビフィズス菌と接触させた抽出液の少なくとも一部を前記再生タバコウエブに添加する工程 を包含する再生タバコ材の製造方法。 【請求項3】 前記請求項2に記載の再生タバコ材の製造方法により製造された再生タバコ材。」 ・「【0001】 本発明は、タバコ固有のニトロソアミンを低減するためのタバコ抽出液の処理方法、再生タバコ材の製造方法および再生タバコ材に関する。」 ・「【0005】 さらには、特許文献3は、抽出に関するものではないが、葉タバコ自体をスフィンゴモナス・パウシモビリス種およびシュードモナス・フルオレッセンス種に属する特定の微生物で処理することにより葉タバコ中のTSNAを減少させる方法を開示している。」 ・「【0006】 ・・・ 従って、本発明は、天然タバコ材から得たタバコ抽出液から比較的簡便な手法により、ニコチン量を有意に減少させることなくTSNA量を減少させるためのタバコ抽出液の処理方法を提供することを目的とする。また本発明は、TSNA含有量が低減した再生タバコ材の製造方法および再生タバコ材を提供することを目的とする。」 ・「【0016】 他方、分離操作S2から得られた抽出液13は、ビフィズス菌との接触工程(処理工程)S4に供する。ビフィズス菌とは、ビフィドバクテリウムと総称される菌株群を指す。かかるビフィズス菌には、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティスが含まれる。本発明において、この接触工程S4は、抽出液13にビフィズス菌を添加し、攪拌することにより行うことができる。ビフィズス菌は、適当な担体に担持させて使用することもできる。ビフィズス菌を用いることにより、タバコ抽出液中のニコチン量を有意に減少させることなく、TSNA量を低減させることができる。」 ・「【0020】 以上、本発明を各種態様に沿って説明したが、本発明は上記態様に限定されるものではない。いうまでもなく、上記種々の態様を組み合わせることもできるし、種々の変形等を行うこともできる。例えば、タバコ抽出液をビフィズス菌と接触させる前または接触させた後に、タバコ抽出液を膜分離等の他の成分分離工程に供することができる。 【0021】 また、ビフィズス菌の変わりに、ビフィズス菌と同様にタバコ抽出液中でニトロソアミンを低減させる機能を備えた微生物を用いることもできる。」 イ 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 食品素材の製造、加工、調理時におけるアクリルアミドの生成を抑制することにより食品中のアクリルアミドを低減する方法であって、食品素材が100℃以上の高温で加熱される前に、微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解してそれらを減少させることを特徴とするアクリルアミドの低減方法。 ・・・ 【請求項4】 微生物菌体が、酢酸菌、パン酵母、ワイン酵母、ビール酵母、及び乳酸菌の群から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。」 ・「【0001】 本発明は、食品中のアクリルアミドの低減方法に関するものであり、更に詳しくは、食品素材の製造、加工、調理時におけるアクリルアミドの生成を微生物菌体を利用して抑制することにより食品中に含まれるアクリルアミドを低減させた低アクリルアミド食品の製造方法に関するものである。 本発明は、例えば、100℃以上の高温で加熱される加工食品の工業的製造の技術分野において、該食品中に含まれる可能性のあるアクリルアミドをその生成段階で低減させることで、アクリルアミドを含まない低アクリルアミド食品を製造することを可能とする新規食品製造技術及びその製品を提供するものとして有用である。」 ・「【0002】 従来、食品製造の技術分野において、例えば、加熱加工食品にアクリルアミドが含まれる可能性のあることが指摘されている。そのとき、アクリルアミドの生成機構は、未解明であったが、アクリルアミドの生成は、糖とアミノ酸によるメイラード反応との類似点があるのでないかと推測されていた。その後、雑誌Natureの2002年10月3日号に、英国のレディングレ大学のMottramら(非特許文献1参照)とスイスのネスレのStadlerら(非特許文献2参照)は、アミノ酸のアスパラギンとグルコースなどの糖が高温で加熱されるとアクリルアミドができることを同時に発表した。」 ・「【0006】 このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、安全で、かつ、安価な方法で食品中のアクリルアミドを低減する技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、食品素材が高温で加熱される前に、特定の微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解することにより、食品素材の製造、加工、調理時におけるアクリルアミドの生成を抑制することができることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。 本発明は、微生物菌体を用いて、各種食品素材の製造、加工、調理時においてアクリルアミドの生成を抑制することによって、食品中のアクリルアミドを低減する方法及びその製品を提供することを目的とするものである。」 ・「【0008】 ・・・本発明の方法で使用する微生物菌体としては、好適には、例えば、酢酸菌(例えば、Gluconobacter oxydans NBRC 12528)、パン酵母(市販品;ドライイースト)、ワイン酵母(市販品)、ビール酵母(市販品)、乳酸菌(Bacillus coagulance)が例示される。これらの微生物菌体は、古来から食品製造に利用される菌であり、安全性の面で問題がなく、また、変異原性でも問題がないものを選択基準として選択されたものである。 【0009】 本発明は、上記基準を基に多くの微生物菌体の中から単純系及び複雑系による実験を探り返すことによって選択した酢酸菌、パン酵母、ワイン酵母、ビール酵母及び乳酸菌を、食品素材を加熱する前に予め各種食品素材(例えば、ポテトスナック原料)に作用させると、アクリルアミドの生成を抑制し得るといった、今までに全く知られていなかった新規知見に基づいて完成されたものである。本発明で、対象となる食品素材としては、多くの食品素材が対象となり、特に、ジャガイモ、グリーンアスパラ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ショウガ、オクラやゴボウなどが好適である。本発明では、食品素材、及び食品の種類等は、特に制限されないが、本発明で対象とされる食品は、食品の製造過程で、100℃以上の高温に加熱調理され、その過程で、アクリルアミドを生成する可能性のある食品を意味するものである。」 ウ 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 ・「【請求項18】 (a)水性または有機溶媒でタバコを処理する工程と、 (b)酵素でタバコを処理する工程と、 (c)酵素処理されたタバコを塩溶液ですすぎ洗いする工程と、 (d)タバコ中の酵素を不活性化する工程とを含み、これら(a)から(d)の工程の1つ以上が1つの水平ベルトフィルター上で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項19】 タバコの抽出から得られたタバコ抽出液からタンパク質を除去するために該抽出液を処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2乃至18いずれか1項記載の方法。 ・・・ 【請求項23】 抽出後のタバコと処理されたタバコ抽出液を再度混合する工程をさらに含むことを特徴とする請求項19乃至22いずれか1項記載の方法。」 ・「【0002】 タバコ材は、変性されたタバコブレンドとするために処理、加工され、これにより燃焼時に未処理のタバコと比較して特定の成分が選択的に減少または除去された煙を発生させる。しかしながら、タバコの味および喫煙特性が維持されるようにタバコの糖およびニコチン含有量は、この処理によって実質的に影響されないようにするのが好ましい。 【0003】 タバコから選択的に成分を除去する、または少なくとも減少させるいくつかの方法が当業界で知られている。これらの方法は、タバコ材が水性または有機溶媒で抽出される抽出工程と、抽出された溶液をろ過、遠心分離などによって不溶性のタバコ残渣から分離する工程と、抽出された溶液を特定の成分を除去するために処理する処理工程とを含む。処理されたタバコ抽出液は、抽出後のタバコと再度組み合わされ、タバコの特定の成分が再生されたタバコ材に確実に保持されるようにする。」 ・「【0039】 溶媒は、有機溶液であってもよいが、好ましくは水性溶液または水である。抽出工程の極めて初期の段階では溶媒は、通常水であるが、エタノールまたはメタノールなどのアルコールも含んでもよく、または界面活性剤を含んでもよい。他の溶媒もタバコから抽出される特定の成分によって使用することが可能になる。」 エ 前置報告において引用された引用文献5(特表2009-514804号公報)には、以下の事項が記載されている。 ・「【請求項7】 骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン加水分解物の使用であって、ここで、上記加水分解物が、完全又は部分的酵素加水分解物、微生物による完全又は部分的な加水分解物、完全又は部分的な酸加水分解物、完全又は部分的な臭化シアン加水分解物、或いはその混合物である、前記使用。 ・・・ 【請求項22】 前記微生物が、バシラス属、ビフィダス属、エンテロコッカス属、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、プロピオンバクター属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属又はその混合物から選ばれる、請求項7又は14に記載の使用。」 ・「【0001】 本発明は、骨格成長の刺激、骨吸収の阻害、軟骨細胞増殖の刺激、骨芽細胞増殖の刺激、破骨細胞発生の阻害、或いは骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用に関する。」 2 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明1とを、その有する機能に照らして対比してみるに、引用発明1の「葉タバコ」は、本願発明1の「タバコ材料」、「タバコ植物成分」に相当し、引用発明1の「アグロバクテリウム属微生物」は、本願発明1の「プロバイオティクス」に相当する。 また、引用発明1の「収穫直前の又は収穫した葉タバコ」は、本願発明1の「成熟した生きた植物」、「収穫された植物」に相当する。 そして、引用発明1は「葉タバコ中のタバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減する方法」であるから、本願発明1と、「タバコ材料中」の「タバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減する方法」である点で共通する。 そうすると、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違すると認められる。 (一致点1) 「タバコ材料中のタバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減する方法であって、タバコ植物成分をプロバイオティクスと接触させることを含み、 前記タバコ植物成分が、タバコ種子、タバコ実生苗、未熟な生きた植物、成熟した生きた植物、収穫された植物、またはそれらの一部分からなる群から選択される、方法。」 (相違点1) 本願発明1は、「タバコ材料中のアミノ酸およびタバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減する方法」であって、「タバコ植物成分を2つ以上のプロバイオティクスと接触させることを含み」、「前記2つ以上のプロバイオティクスが、ビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属、エンテロコッカス属、プロイオノバクテリウム属(proionobacterium)、バシラス属、サッカロミセス属、ストレプトコッカス属のプロバイオティクス種、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記2つ以上のプロバイオティクスが、ラクトバシラス属から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスを含む」のに対し、引用発明1は、「葉タバコ中のタバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減する方法」であるものの、アミノ酸含有量を低減する方法であるか明らかでなく、「葉タバコをアグロバクテリウム属微生物と接触させる」ものであって、接触させるプロバイオティクスが異なる点。 (2) 判断 引用発明1は、葉タバコを「アグロバクテリウム属微生物」と接触させることを必須とするものであるところ、引用文献1には、アミノ酸含有量を低減することや、ラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属等の微生物を利用することについて記載は特段なく(前記1(1))、引用発明1において、葉タバコ中のアミノ酸及びタバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減するために、ラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属等の微生物を利用することについての動機付けは特段認められない。 また、引用文献2には、天然タバコ材を抽出溶媒で抽出することによって得られた抽出液をビフィズス菌と接触させることにより、TSNA量を減少させる点が記載されているが(前記1(2)ア)、タバコ植物成分に適用する点については記載がなく、ラクトバシラス属の微生物や、タバコ材料中のアミノ酸含有量を低減することについても記載がない。 そして、引用文献3には、食品素材が100℃以上の高温で加熱される前に、例えば、酢酸菌、パン酵母、ワイン酵母、ビール酵母、乳酸菌、といった微生物菌体を用いて、該食品素材中に含まれるアクリルアミド前駆体を特異的に分解してそれらを減少させる点が記載されているが(前記1(2)イ)、タバコ材料に関する記載はなく、ラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属等の微生物に関する記載もない。 このように、引用文献2、3には、前記相違点1に係る構成について記載はない。引用文献4、5をみても(前記1(2)ウ、エ)、この点について記載はなく、周知の技術であるともいえない。 そして、本願発明1は、「タバコ植物成分を2つ以上のプロバイオティクスと接触させることを含み」、「前記2つ以上のプロバイオティクスが、ビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属、エンテロコッカス属、プロイオノバクテリウム属(proionobacterium)、バシラス属、サッカロミセス属、ストレプトコッカス属のプロバイオティクス種、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記2つ以上のプロバイオティクスが、ラクトバシラス属から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスを含む」ことにより「タバコ材料中のアミノ酸およびタバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減する」といった効果を奏するものである。 したがって、引用発明1及び引用文献2?5に記載された事項に基いて、前記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 3 本願発明2?17について 本願発明1を特定するための事項をすべて含む本願発明2?17は、さらに特定された事項を検討するまでもなく、本願発明1と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 4 本願発明18について (1) 対比 本願発明18と引用発明2とをその有する機能に照らして対比してみるに、両者は「包装材料によって取り囲まれた喫煙可能な材料のロッドと、前記ロッドにその一端で取り付けられたフィルターと、を含むシガレットの形態の喫煙物品の形態のタバコ製品」である点で共通する。 また、引用発明2の「アグロバクテリウム属微生物」は,本願発明18の「プロバイオティクス」に相当し,引用発明2の「収穫直前の又は収穫した葉タバコ」は、本願発明2の「成熟した生きた植物」、「収穫された植物」に相当し,引用発明2の「アグロバクテリウム属微生物と接触させる処理を行った葉タバコ」は,本願発明18の「プロバイオティクスで前処理されたタバコ植物成分を含むタバコ材料」に相当する。 そして、引用発明2は「前記喫煙可能な材料が、タバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減させるように、収穫直前の又は収穫した葉タバコにアグロバクテリウム属微生物と接触させる処理を行った葉タバコを含む」ものであるから、本願発明18と、「前記喫煙可能な材料」が、「プロバイオティクスで前処理されたタバコ植物成分を含むタバコ材料を含(む)」ものである点で共通する。 そうすると、本願発明18と引用発明2とは、以下の点で一致し、相違すると認められる。 (一致点2) 「包装材料によって取り囲まれた喫煙可能な材料のロッドと、前記ロッドにその一端で取り付けられたフィルターと、を含むシガレットの形態の喫煙物品の形態のタバコ製品であって、前記喫煙可能な材料が、プロバイオティクスで前処理されたタバコ植物成分を含むタバコ材料を含み、前記タバコ植物成分が、タバコ種子、タバコ実生苗、未熟な生きた植物、成熟した生きた植物、収穫された植物、またはそれらの一部分からなる群から選択される、タバコ製品。 (相違点2) 本願発明18は、「喫煙可能な材料」が、「アスパラギンの含有量を低減させるように2つ以上のプロバイオティクスで前処理されたタバコ植物成分を含むタバコ材料を含み」、「前記2つ以上のプロバイオティクスが、ビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属、エンテロコッカス属、プロイオノバクテリウム属(proionobacterium)、バシラス属、サッカロミセス属、ストレプトコッカス属のプロバイオティクス種、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記2つ以上のプロバイオティクスが、ラクトバシラス属から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスを含む」のに対し、引用発明2は、「喫煙可能な材料」が、「タバコ特異的ニトロソアミン含有量を低減させるように」「処理を行った葉タバコを含む」ものの、アスパラギンの含有量を低減させる点については明らかでなく、「葉タバコにアグロバクテリウム属微生物と接触させる処理を行った」ものであって,前処理に係るプロバイオティクスが異なる点。 (2) 判断 引用発明2は、葉タバコを「アグロバクテリウム属微生物」と接触させることを必須とするものであるところ、引用文献1には、アスパラギンの含有量を低減することや、ラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属等の微生物を利用することについての記載は特段なく(前記1(1))、引用発明2において、葉タバコ中のアスパラギンの含有量を低減するために、ラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属等の微生物を利用することについての動機付けは特段認められない。 また、引用文献2、3には、前記1(2)ア、イの事項が記載されているが、引用文献2には、タバコ植物成分に適用する点、ラクトバシラス属の微生物と組み合わせること、タバコ材料中のアスパラギンの含有量を低減することについて記載がなく、引用文献3には、タバコ材料に関する記載、ラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属等の微生物に関する記載がない。 このように、引用文献2、3には、前記相違点2に係る構成について記載はない。引用文献4、5をみても(前記1(2)ウ、エ)、この点について記載はなく、周知の技術であるともいえない。 そして、本願発明18は、「喫煙可能な材料」が、「2つ以上のプロバイオティクスで前処理されたタバコ植物成分を含むタバコ材料を含み」、「前記2つ以上のプロバイオティクスが、ビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属、エンテロコッカス属、プロイオノバクテリウム属(proionobacterium)、バシラス属、サッカロミセス属、ストレプトコッカス属のプロバイオティクス種、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記2つ以上のプロバイオティクスが、ラクトバシラス属から選択される少なくとも1つのプロバイオティクスを含む」ことで、「タバコ材料」の「アスパラギンの含有量を低減させる」といった効果を奏するものである。 したがって、引用発明2及び引用文献2?5に記載された事項に基いて、前記相違点2に係る本願発明18の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。 以上のとおりであるから、本願発明18は、引用発明2及び引用文献2?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 5 本願発明19?21について 本願発明18を特定するための事項をすべて含む本願発明19?21は、さらに特定された事項を検討するまでもなく、本願発明18と同様の理由により、引用発明2及び引用文献2?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 6 以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。 第6 当審にて通知した拒絶の理由についての判断 平成31年1月16日の手続補正書により補正された特許請求の範囲は前記第2のとおりであるところ、当該補正により、特許請求の範囲の記載に関する不備は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審にて通知した拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-03-04 |
出願番号 | 特願2015-505873(P2015-505873) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A24B)
P 1 8・ 537- WY (A24B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 金丸 治之、木戸 優華 |
特許庁審判長 |
藤原 直欣 |
特許庁審判官 |
窪田 治彦 宮崎 賢司 |
発明の名称 | 植物をプロバイオティクスで処理するための方法 |
代理人 | 特許業務法人川口國際特許事務所 |