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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1349400
審判番号 不服2018-2064  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-14 
確定日 2019-03-19 
事件の表示 特願2017-150351「光学部品、及びそれを備えた光学装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開、特開2018- 13786、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年8月20日に出願した特願2015-162635号の一部を平成29年8月3日に新たな特許出願としたものであって、同年9月4日付けで拒絶理由が通知され、同年11月6日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年11月7日付けで拒絶査定(以下、当該拒絶査定を「原査定」といい、原査定における拒絶の理由を「原査定拒絶理由」という。)がされ、これに対し平成30年2月14日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成30年11月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成31年1月17日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。


第2 本件発明
本願の請求項1?4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
エポキシ化合物(A)を含有する硬化性組成物の硬化物からなるフラッシュレンズであって、当該フラッシュレンズの外縁部に、白色及び銀色から選択される少なくとも一色の、総厚み20?100μm、反射率が60%以上であるコーティング層を有する、最大厚み2mm以下、平面視における最大幅10mm以下のフラッシュレンズ。
【請求項2】
エポキシ化合物(A)が、下記式(a)で表される化合物を含有する請求項1に記載のフラッシュレンズ。
【化1】

[式中、R^(1)?R^(18)は同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す。Xは単結合又は連結基を示す]
【請求項3】
硬化性組成物が、エポキシ化合物(A)、オキセタン化合物(B)、及びカチオン重合開始剤(C)を含有する請求項1又は2に記載のフラッシュレンズ。
【請求項4】
熱分解温度が200℃以上である請求項1?3の何れか1項に記載のフラッシュレンズ。」(以下、請求項1?4に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明4」という。)


第3 原査定拒絶理由の概要
原査定拒絶理由の概要は、本願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
そして、以下の引用文献1?6を挙げている。

引用文献1:国際公開第2015/098736号
引用文献2:特開平11-95001号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開平3-168937号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2011-253107号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:国際公開第2014/132646号(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2009-117945号公報(周知技術を示す文献)


第4 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(サポート要件)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2(明確性)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由3(新規性)
本件出願は、分割要件を満たしていないものであるから、現実の出願時である平成29年8月3日に出願したものとして取り扱われるものであり、本件出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に、原出願の公開公報によって、日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


第5 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の2015年(平成27年)7月2日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(国際公開第2015/098736号)には、以下の記載事項がある。なお、下線部は、合議体が発明の認定等に用いた箇所を示す。以下同様である。

ア 「技術分野
[0001] 本発明は、金型を用いてレンズを製造する用途に適した硬化性組成物(レンズ用硬化性組成物)、前記レンズ用硬化性組成物を硬化して得られるレンズ、及び前記レンズを搭載した光学装置に関する。本願は、2013年12月26日に日本に出願した、特願2013-269397号、及び2014年10月30日に日本に出願した、特願2014-221123号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
背景技術
[0002] 近年、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、モバイルコンピューター、パーソナル携帯情報機器(PDA)、デジタルスチルカメラ(DSC)等に代表されるエレクトロニクス製品は小型化、軽量化、及び高性能化が飛躍的に進んでいる。そのような技術動向に伴い、これらのエレクトロニクス製品に搭載されるカメラ等に使用されるレンズも小型化、軽量化、及び薄肉化への要望が益々高まっている。
[0003] 上記レンズは、一般に射出成型法やキャスティング成型法等の金型を用いて成型する方法により製造される。レンズ材料としては、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂や、アクリル系樹脂やシリコーン系樹脂等の熱又は光硬化性樹脂を使用することが知られている(特許文献1?4)。しかし、熱可塑性樹脂はリフロー耐熱性を有しないため、例えば熱可塑性樹脂からなるレンズを使用したカメラモジュールは、他の部品とは別工程で組立てることが必要であり、製造工程が複雑になることが問題であった。一方、アクリル系樹脂やシリコーン系樹脂からなるレンズは耐熱性の点では優れているが、光学特性の点で未だ満足できるものではなかった。

(中略)

発明が解決しようとする課題
[0005] 本発明者等は脂環エポキシ基を有するカチオン硬化性化合物を使用すると、耐熱性に優れ且つ光学特性に優れたレンズが得られることを見いだした。しかし、ウェハレベルレンズ等の小型化、軽量化、薄肉化されたレンズやフレネルレンズ等の特殊な形状を有するレンズを金型を用いて製造する場合、金型に硬化性組成物を充填する際に「泡噛み」が発生し易く、「泡噛み」により金型の転写精度が低下することがわかった。
[0006] 従って、本発明の目的は、金型の転写精度に優れ、且つ耐熱性及び光学特性に優れたレンズを形成することができる硬化性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、金型の転写精度に優れ、且つ耐熱性及び光学特性に優れたレンズ、及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記レンズが搭載された光学装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のエポキシ化合物、及び特定のポリシロキサンを含む硬化性組成物は、金型との濡れ性を向上することができ、硬化性組成物を金型に充填する際に「泡噛み」の発生を防止することができること、優れた硬化性を有し、耐熱性、光学特性、及び金型の転写精度に優れたレンズが得られることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
[0008] すなわち、本発明は、下記式(a)で表される脂環式エポキシ化合物(A)、カチオン重合開始剤(B)、及び下記式(c)で表されるポリシロキサン(C)を少なくとも含有し、且つ前記ポリシロキサン(C)を硬化性組成物全量(100重量%)に対して0.01?5重量%含有するレンズ用硬化性組成物を提供する。

(中略)

発明の効果
[0029] 本発明のレンズ用硬化性組成物は上記構成を有するため、金型との濡れ性を向上することができ、硬化性組成物を金型に充填する際に「泡噛み」の発生を防止することができる。その上、硬化性に優れ、耐熱性、光学特性(透明性、高屈折率、耐黄変性等)に優れた硬化物を形成することができる。そのため、本発明のレンズ用硬化性組成物を使用すれば、金型の転写精度に優れ、且つ耐熱性及び光学特性に優れたレンズが得られ、ウェハレベルレンズ等の小型化、軽量化、薄肉化されたレンズやフレネルレンズ等の特殊な形状を有するレンズを金型を用いて製造する用途に好適に使用することができる。
また、本発明のレンズは上記レンズ用硬化性組成物を原料とするため、金型の転写精度に優れ、且つ耐熱性及び光学特性に優れる。
更に、本発明の光学装置は前記金型の転写精度に優れ、且つ耐熱性及び光学特性に優れたレンズが搭載されているため、高い品質を有する。
[0030] 尚、本明細書において「ウェハレベルレンズ」とは、携帯電話等に使用されるカメラをウェハレベルで製造する際に使用されるレンズであり、レンズ一個のサイズは、直径が1?10mm程度、その厚みが100?2000μm程度である。
また、「フレネルレンズ」とは、通常のレンズを同心円状の領域に分割し厚みを減らしたレンズであり、のこぎり状の断面を持つ。レンズ一個のサイズは、直径が1?10mm程度、その厚みが100?2000μm程度である。」

イ 「発明を実施するための形態
[0032]<レンズ用硬化性組成物>
本発明のレンズ用硬化性組成物(単に「硬化性組成物」と称する場合がある)は、脂環式エポキシ化合物(A)、カチオン重合開始剤(B)、及びポリシロキサン(C)を少なくとも含有し、且つ前記ポリシロキサン(C)を硬化性組成物全量(100重量%)に対して0.01?5重量%含有する。
[0033][脂環式エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性組成物の必須成分である脂環式エポキシ化合物(A)は、下記式(a)で表されるカチオン硬化性化合物である。但し、脂環式エポキシ化合物(A)には、シロキサン結合を有する化合物は含まれない。

(中略)

[0054][カチオン重合開始剤(B)]
本発明のカチオン重合開始剤には光カチオン重合開始剤と熱カチオン重合開始剤が含まれる。
[0055] 光カチオン重合開始剤は、光の照射によってカチオン種を発生してカチオン硬化性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。

(中略)

[0066][ポリシロキサン(C)]
本発明のポリシロキサンは、下記式(c)で表される化合物であり、レベリング性に優れる。ポリシロキサンを硬化性組成物に添加することにより、本発明の硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の硬化に影響を与えることなく、金型との濡れ性を向上することができ、硬化性組成物を金型に充填する際の「泡噛み」の発生を防止することができる。ポリシロキサンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。

(中略)

[0079] ポリシロキサンの使用量は、硬化性組成物全量(100重量%)の0.01?5重量%であり、好ましくは0.05?4重量%、特に好ましくは0.1?3重量%である。また、硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物(例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物等のカチオン硬化性化合物の総和)100重量部に対して、例えば0.01?5重量部、好ましくは0.05?4重量部、特に好ましくは0.1?3重量部である。ポリシロキサンを上記範囲で含有すると、金型との濡れ性を向上することができ、硬化性組成物を金型に充填する際に「泡噛み」の発生を防止することができる。
[0080][シロキサン化合物(D)]
本発明の硬化性組成物は、カチオン硬化性化合物として、上記脂環式エポキシ化合物(A)以外にシロキサン化合物(D)を含むことが好ましい。シロキサン化合物(D)は、分子内に2以上のエポキシ基を有し、さらに、シロキサン結合(Si-O-Si)により構成されたシロキサン骨格を少なくとも有する化合物である。前記シロキサン骨格には、環状シロキサン骨格、直鎖状又は分岐鎖状のシリコーン(直鎖状又は分岐鎖状ポリシロキサン)、かご型やラダー型のポリシルセスキオキサン等が含まれる。本発明においては、なかでも、硬化性組成物の硬化性に優れ、耐熱性及び機械強度に優れるレンズが得られる点で、環状シロキサン骨格を有する化合物が好ましい。即ち、シロキサン化合物(D)としては、分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサンが好ましい。

(中略)

[0095][その他のカチオン硬化性化合物(E)]
本発明の硬化性組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)及びシロキサン化合物(D)以外のカチオン硬化性化合物(「その他のカチオン硬化性化合物」と称する場合がある)を1種又は2種以上含んでいてもよい。
[0096] その他のカチオン硬化性化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を1個以上有する化合物であって、脂環式エポキシ化合物(A)及びシロキサン化合物(D)以外の化合物(以後、「その他のエポキシ化合物」と称する場合がある)、分子内にオキセタン基を1個以上有する化合物(以後、「オキセタン化合物」と称する場合がある)、分子内にビニルエーテル基を1個以上有する化合物(以後、「ビニルエーテル化合物」と称する場合がある)等を挙げることができる。その他のカチオン硬化性化合物を含有することにより、本発明の硬化性組成物の粘度が制御され、取り扱い性が向上したり、レンズを形成する際の硬化収縮が抑制される場合がある。

(中略)

[0115] さらに、本発明の硬化性組成物は、硬化性に優れ、紫外線を照射することにより下記特性を有する硬化物を形成することができる。そのため、ウェハレベルレンズ、フレネルレンズ、カメラのフラッシュ用レンズ等の原料として好適に使用することができる。
[0116] 本発明の硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化物(「本発明の硬化物」と称する場合がある)は、高いガラス転移温度を維持したまま、機械強度にも優れる。本発明の硬化性組成物の硬化は、例えば、後述の<レンズの製造方法>の項に記載の方法により進行させることができる。

(中略)

[0124]<レンズの製造方法>
本発明のレンズの製造方法は、下記工程を有する。
工程1:上記レンズ用硬化性組成物をレンズ成型用金型に充填する工程
工程2:光照射して前記硬化性組成物を硬化させる工程

(中略)

[0133] 上記製造方法により製造される本発明のレンズには、ウェハレベルレンズ、フレネルレンズ、カメラのフラッシュ用レンズ等、及びこれらのレンズが2個以上連接した連接レンズ等が含まれる。また、前記レンズ又は連接レンズが複数枚(例えば2?5枚、特に2?3枚)積層されたレンズ又は連接レンズの積層体(以後、「積層レンズ」と称する場合がある)も含まれる。

(中略)

[0136] さらに、本発明のレンズは、回路基板に実装する場合、リフローによって半田付け実装が可能である。このため、本発明のレンズを搭載したカメラモジュールは、携帯電話等のPCB(Printed Circuit Board)基板上に、他の電子部品の表面実装と同一の半田リフロープロセスにて、直接、非常に効率良く実装することができ、極めて効率的な光学装置の製造が可能となる。」

ウ 「請求の範囲
[請求項1] 下記式(a)で表される脂環式エポキシ化合物(A)、カチオン重合開始剤(B)、及び下記式(c)で表されるポリシロキサン(C)を少なくとも含有し、且つ前記ポリシロキサン(C)を硬化性組成物全量(100重量%)に対して0.01?5重量%含有するレンズ用硬化性組成物。
[化1]

(式中、R^(1)?R^(18)は同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、Xは単結合又は連接基(シロキサン結合を含む基を除く)を示す)
[化2]

[式中、R^(19)?R^(22)は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、及び-RNHCOR’基(Rはアルキレン基又はアルケニレン基を示し、R’はアルキル基又はアルケニル基を示す)から選択される基を示し、m、nは同一又は異なって、1以上の整数を示す]
[請求項2] 更に、分子内にエポキシ基を2個以上有するシロキサン化合物(D)を含む請求項1に記載のレンズ用硬化性組成物。
[請求項3] 更に、分子内にオキセタン基を1個以上有するカチオン硬化性化合物(脂環式エポキシ化合物(A)及びシロキサン化合物(D)に含まれる化合物を除く)を含む請求項1又は2に記載のレンズ用硬化性組成物。

(中略)

[請求項9] 下記工程を有するレンズの製造方法。
工程1:請求項1?5の何れか1項に記載のレンズ用硬化性組成物をレンズ成型用金型に充填する工程
工程2:光照射して前記硬化性組成物を硬化させる工程

(中略)

[請求項16] 請求項9?12、14の何れか1項に記載のレンズの製造方法により得られるレンズ。

(中略)

[請求項19] カメラのフラッシュ用レンズである請求項15又は16に記載のレンズ。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記記載事項ウに基づけば、引用文献1には、請求項19(請求項1?3、請求項9及び請求項16に記載された発明特定事項を具備するもの)に係る発明が記載されており、この発明の引用記載を整理すると、次のとおりとなる。
「下記工程を有するレンズの製造方法により得られるカメラのフラッシュ用レンズ。

工程1:下記式(a)で表される脂環式エポキシ化合物(A)、カチオン重合開始剤(B)、下記式(c)で表されるポリシロキサン(C)、分子内にエポキシ基を2個以上有するシロキサン化合物(D)、分子内にオキセタン基を1個以上有するカチオン硬化性化合物(脂環式エポキシ化合物(A)及びシロキサン化合物(D)に含まれる化合物を除く)を含む硬化性組成物であって、且つ前記ポリシロキサン(C)を硬化性組成物全量(100重量%)に対して0.01?5重量%含有するレンズ用硬化性組成物を、レンズ成型用金型に充填する工程
工程2:光照射して前記硬化性組成物を硬化させる工程

[化1]

(式中、R^(1)?R^(18)は同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、Xは単結合又は連接基(シロキサン結合を含む基を除く)を示す)
[化2]

[式中、R^(19)?R^(22)は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、及び-RNHCOR’基(Rはアルキレン基又はアルケニレン基を示し、R’はアルキル基又はアルケニル基を示す)から選択される基を示し、m、nは同一又は異なって、1以上の整数を示す]」(以下、「引用発明」という。)

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成11年4月9日に頒布された刊行物である引用文献2(特開平11-95001号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 光学機能部の外周にフランジ部を有するプラスチックレンズにおいて、
前記フランジ部の前記光学機能部の周囲に形成された面に光反射膜が設けられていることを特徴とするプラスチックレンズ。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチックレンズ、さらに詳しくは、光ピックアップ等に用いるのに好適なプラスチックレンズに関する。

(中略)

【0006】本発明は、上述した問題を解決するためになされたもので、組み付け時の傾きの検出・調整を効率よく、かつ、精度よく行うことのできるプラスチックレンズを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明に係るプラスチックレンズは、光学機能部の外周にフランジ部を有するプラスチックレンズにおいて、フランジ部の光学機能部の周囲に形成された面が光反射コーティングされていることを特徴とする。
【0008】この発明によれば、光反射コーティングされた面の傾きを反射光で検出・調整することにより、このコーティング面に垂直な光学機能部の光軸の傾きを容易に検出・調整することが可能となる。また、この検出の際には、反射ガラス板等の特別な器具が不要となるため、これらの器具を取り扱う工程を設ける必要がなくなり、効率よくレンズの組み付けが行える。また、反射ガラス板等の特別な器具を介さずに、レンズの傾きを直接的に検出するため、検出精度を向上させて正確にレンズの組み付けが行える。
【0009】更に、プラスチックレンズの傾き検出・調整時に照射される光を光反射コーティングで完全に反射させることにより、その照射される光がフランジ部を透過しホルダーで反射して戻り光が受光部Rで受光されることが回避でき、そのような光の受光により誤検出が未然に防止できる。」

ウ 「【0011】図1は本実施形態に係るプラスチックレンズの断面図である。図1に示すように、プラスチックレンズ1は、CD-ROMドライブの光ピックアップの対物レンズ等に用いられる直径数mm程度のレンズで、その中央に凸レンズとして機能する光学機能部2を有している。この光学機能部2の周囲には、フランジ部3が形成されている。フランジ部3は、プラスチックレンズ1をホルダなどに取り付ける際に取付部となるものである。
【0012】このフランジ部3において光学機能部2の光軸Xに対して垂直となる表面31には、光反射膜4が設けられている。光反射膜4は、フランジ部3の表面31に入射する光を反射させるためのものであり、主にプラスチック1の取り付けにおける傾き調整時に用いられる。この光反射膜4としては、例えば、アルミニウムの膜体(Alコート)が用いられる。この場合、光反射膜4に入射する光はその光反射膜4を透過することなくほぼ全反射することになる。
【0013】光反射膜4は蒸着などによりフランジ部3の表面31に形成すればよい。例えば、光反射膜4の付設されていないプラスチックレンズ1に対し、その光学機能部2の両側の表面部、フランジ部3の外周面などをマスクした状態において、アルミニウムを蒸発させプラスチックレンズ1に付着させる。そして、その付着後、マスクを取り外し、フランジ部3の表面31にアルミニウムの薄膜からなる光反射膜4を形成する。
【0014】なお、光反射膜4としては、プラスチックレンズ1の傾き調整時に使用される光、例えば波長633nm、780nmのレーザ光などを反射できるものであれば、Al膜に限られず、ダイクロイックミラーなどその他のものであってもよい。
【0015】図1において、フランジ部3の裏面32は、ホルダ6への取り付け時の基準面となるものであり、環状を呈する平面となっている。また、プラスチックレンズ1の傾き調整はフランジ部3の表面31への光の照射により行われるため、フランジ部3の裏面32には光反射膜4が付設されていない。また、このフランジ部3の裏面32にも光反射膜4を形成してもよいが、フランジ部3の一方の表面31のみに光反射膜4を形成することにより、プラスチックレンズ1の表裏が目視により容易に判断でき、プラスチックレンズ1が取扱いやすいものとなる。」
なお、図1は、以下に示すとおりのものである。


エ 「【0024】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
【0025】すなわち、光学機能部の外周にフランジ部を有しており、フランジ部の光学機能部の周囲に形成された面に光反射面が設けられているため、組み付け時の傾きの検出・調整を効率よく且つ精度よく行うことができる。
【0026】また、組み付け時にフランジ部に照射される光がフランジ部の光反射膜で確実に反射されるため、プラスチックレンズの傾きにおける誤検出などを未然に防止できる。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成3年7月22日に頒布された刊行物である引用文献3(特開平3-168937号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。

ア 「2.特許請求の範囲
光ディスク装置の光学ヘッドに用いられる対物レンズ(1)の光軸に対して直交する平面を有する鍔(5)を前記対物レンズの周縁部に一体的に設け、
前記鍔(5)の平面に光の反射膜(10)を形成したことを特徴とする光ディスク装置用対物レンズ。」(第1頁左下欄第4?9行)

イ 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、光ディスク装置用対物レンズに関する。
光ディスク装置の光学ヘッド内における対物レンズは、その光軸を常に光ディスクの記録面に対して精度よく垂直に保持されながらトラッキング駆動およびフォーカシング駆動される。もし光ディスクの記録面に対する光軸の傾きが大きくなると光学的収差(非点収差やコマ収差等)が発生して各種の情報信号に乱れが生じるため、精度よく保持するように取付け位置が調整できる手段の開発が望まれている。」(第1頁右下欄第2?13行)

ウ 「〔発明が解決しようとする課題〕
従来の対物レンズ1の外形は一般にレンズ部の直径が約3mm、鍔の直径が約5mm程度でオートコリメータは鍔の平面部の面積と、その平面部の反射率(従来は約5%程度)に依存する反射光を検出して傾きの測定を行うものである。近時光学ヘッドの小型化、すなわち対物レンズの小型化の強い要望があり、レンズ部の直径を約1mmにする可能性の検討が進められている。ところがレンズ部の直径の小型化に鍔の直径の小型化が伴うため鍔の平面部の面積が小さくなる結果、オートコリメータが検出する反射光の光度が検出可能限界を下回ることになり、オートコリメータの機能が働かなくなり、対物レンズの傾き調節が困難になるという問題点がある。
本発明は上記従来の問題点に鑑みて創作されたもので、光学ヘッドに対物レンズを装着する場合の光軸の傾き調整が容易な対物レンズの提供を目的とする。」(第2頁左下欄第1?19行)

エ 「〔課題を解決するための手段〕
第1図は本発明の対物レンズの外観図である。光ディスク装置の光学ヘッドに用いられる対物レンズ1の光軸に対して直交する平面を有する鍔5を前記対物レンズ1の周縁部に一体的に設け、前記鍔5の平面に光の反射膜10を形成して構成する。」(第2頁右下欄第1?6行)
なお、第1図は、以下に示すとおりのものである。


オ 「〔作用〕
対物レンズ1の光軸に対して直交する平面を有する鍔5を前記対物レンズ1の周縁部に一体的に設け、前記鍔5の平面に光の反射膜10を形成することにより反射率を向上させ、オートコリメータが前記反射膜10から受ける反射光量を増加させることにより光軸の傾き測定を容易にすることができる。」(第2頁右下欄第7?14行)


第6 対比・判断
1 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「カメラのフラッシュ用レンズ」は、その文言からみて、本件発明1の「フラッシュレンズ」に相当する。

(イ)引用発明の「脂環式エポキシ化合物(A)」は、その化学構造からみて、本件発明1の「エポキシ化合物(A)」に相当する。そして、引用発明「レンズ用硬化性組成物」は、「脂環式エポキシ化合物(A)」を含むものである。したがって、引用発明「レンズ用硬化性組成物」は、本件発明1の「エポキシ化合物(A)を含有する硬化性組成物」に相当する。

(ウ)引用発明は、カメラのフラッシュ用レンズが、工程1及び工程2を有するレンズの製造方法により得られるものであって、工程1において上記「レンズ用硬化性組成物」をレンズ成型用金型に充填し、工程2において、「光照射して前記硬化性組成物を硬化」させている。そうすると、引用発明の「カメラのフラッシュ用レンズ」は、「レンズ用硬化性組成物」の硬化物からなるものといえる。したがって、引用発明の「カメラのフラッシュ用レンズ」は、本件発明1の「エポキシ化合物(A)を含有する硬化性組成物の硬化物からなる」とする要件を満たしている。

(エ)以上より、本件発明1と引用発明とは、
「エポキシ化合物(A)を含有する硬化性組成物の硬化物からなるフラッシュレンズ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件発明1は、当該フラッシュレンズの外縁部に、白色及び銀色から選択される少なくとも一色の、総厚み20?100μm、反射率が60%以上であるコーティング層を有するのに対し、引用発明はそのようなコーティング層を有するとは特定されていない点。
[相違点2]本件発明1は、フラッシュレンズが最大厚み2mm以下、平面視における最大幅10mm以下であるのに対し、引用発明は、カメラのフラッシュ用レンズの最大厚み及び平面視における最大幅を特定していない点。

イ 判断
上記[相違点1]について検討する。
引用文献2の記載事項ア及び記載事項ウには、プラスチックレンズにおいて、光学機能部の外周に、光反射膜が設けられたフランジ部を有することが記載されている。また、引用文献3の記載事項エにも、対物レンズの周辺部に一体的に設けられた鍔の平面に光の反射膜を形成したことが記載されている。しかし、これらのレンズは、いずれも、光ディスク装置の対物レンズに用いられるもの(引用文献2の記載事項イ、ウ及び引用文献3の記載事項ア、イ)である。そして、設けられた光の反射膜は、組み付け時の傾きの検出のため(引用文献2の記載事項イ)又は光学ヘッドに対物レンズを装着する場合の光軸の傾きを調整するために設けられたもの(引用文献3の記載事項ウ)であって、傾きの検出を、効率良く又は容易に行うための構成(引用文献2の記載事項エ及び引用文献3の記載事項オ)である。
一方、引用発明は、カメラのフラッシュ用レンズに関する発明であり、光ディスク装置の対物レンズのような、受光部で光を受光する構成を有していない。そうしてみると、光ディスク装置の対物レンズにおいて、レンズの傾きの検出を効率良く又は容易に行うために、レンズの外縁部に光反射膜を設けることが、本願出願前に周知技術であったとしても、カメラのフラッシュ用レンズに関する発明である引用発明において、上記周知技術を適用することに動機付けがあるとはいえない。
したがって、引用発明において、フラッシュレンズの外縁部に、白色及び銀色から選択される少なくとも一色の、総厚み20?100μm、反射率が60%以上であるコーティング層を設けることは、当業者であっても、容易になし得たということはできない。
また、[相違点1]に係る本件発明1の構成は、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1?6のいずれにも記載されておらず、周知であるともいえない。

そして、本願明細書の段落【0089】における、「また、フラッシュレンズは反射性が高いことが、光の取り出し効率を向上することができる点で好ましく、反射率が、例えば60%以上(特に、70%以上)であるコーティング層を設けることが好ましい。」との記載に基づけば、本件発明1は、光の取り出し効率を向上させるという効果を奏するものといえる。このような効果は、原査定に引用された引用文献1?6のいずれにも、記載も示唆もされておらず、本件発明1の効果が、当業者にとって知られていたものということもできない。

ウ むすび
以上のとおりであるから、[相違点2]について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1と同じ、フラッシュレンズの外縁部に、白色及び銀色から選択される少なくとも一色の、総厚み20?100μm、反射率が60%以上であるコーティング層を設けることを構成要件とするものである。そうすると、本件発明2?4も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、容易に発明することができたものということはできない。


第7 原査定拒絶理由についての判断
本件発明1?4は、いずれも、フラッシュレンズの外縁部に、白色及び銀色から選択される少なくとも一色の、総厚み20?100μm、反射率が60%以上であるコーティング層を設けることを構成要件とするものである。そうすると、前記第6の1イに記載したとおり、当業者であっても、容易に発明をすることができたということができない。
したがって、原査定拒絶理由を維持することはできない。


第8 当審拒絶理由についての判断
当審拒絶理由の理由1?理由3は、いずれも、本件補正によって解消されることとなった。


第9 むすび
以上のとおり、本件発明1?4は、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-04 
出願番号 特願2017-150351(P2017-150351)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
宮澤 浩
発明の名称 光学部品、及びそれを備えた光学装置  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
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