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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1349457
審判番号 不服2018-11449  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-23 
確定日 2019-03-25 
事件の表示 特願2016-178027号「放射パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開、特開2018-44696号、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年9月12日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年10月17日 : 拒絶理由通知
同年12月21日 : 意見書、手続補正書
平成30年 5月22日 : 拒絶査定
同年 8月23日 : 審判請求書
平成31年 2月 5日 : 拒絶理由通知
同年 2月 8日 : 手続補正書

第2 原査定の概要
請求項1ないし7に係る発明は、引用文献1、4に記載された発明及び引用文献2、3、5に示された周知技術に基いて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・引用文献
1 特開平2-178536号公報
2 特開2015-25627号公報(周知技術を示す文献)
3 特開2014-95544号公報(周知技術を示す文献)
4 特開2015-210045号公報
5 特開平11-13952号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、平成31年2月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。
「 【請求項1】
外界と熱放射により熱交換しうる放射部材と、伝熱媒体が内部を流動して前記放射部材と熱交換可能な伝熱管とを備えた放射パネルであって、
前記伝熱管は、前記内部の表面に前記伝熱媒体の流動方向に略平行に複数のヒダを備えた長尺の金属押出成形物であり、
前記放射部材は、前記外界との界面が平滑な曲面又は平滑な平面である放射フィンと、少なくとも1本の前記伝熱管を熱伝導可能にかつ前記長尺方向に貫通して収納しうる収納部とを備えた長尺の金属押出成形物であり、
前記伝熱管を前記放射部材の前記収納部に収納した単位パネルを複数備え、
かつ前記複数の単位パネルに収納された前記伝熱管相互の接続が、カシメを用いた乾式接合であり、前記伝熱管の長尺方向に対する垂直断面の最薄部分の厚み及び前記ヒダが、前記カシメの圧力に耐えるものであることを特徴とする放射パネル。
【請求項2】
前記伝熱管と前記収納部との熱伝導可能な接触が、重力か又は前記放射部材の金属弾性かによる機械的接触であることを特徴とする請求項1に記載の放射パネル。
【請求項3】
前記金属が、アルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射パネル。
【請求項4】
前記厚みが、2mmを超えることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の放射パネル。
【請求項5】
前記伝熱管相互の接続が、カシメ接続可能な端部を備えた流路管を介するものであることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の放射パネル。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の放射パネルの前記伝熱管を、前記伝熱媒体が流動可能な熱源に接続した放射冷暖房システム。
【請求項7】
外界と熱放射により熱交換する放射部材と、伝熱媒体が内部を流動して前記放射部材と熱交換可能な伝熱管とを備えた放射パネルの製造方法であって、
前記伝熱管は、前記内部の表面に前記伝熱媒体の流動方向に略平行に複数のヒダを備えて長尺に金属押出成形し、
前記放射部材は、前記外界との界面が平滑な曲面又は平滑な平面である放射フィンと、少なくとも1本の前記伝熱管を熱伝導可能にかつ前記長尺方向に貫通して収納しうる収納部とを備えて長尺に金属押出成形し、
前記伝熱管を前記放射部材の前記収納部に貫通して収納した単位パネルを複数用い、かつ前記複数の単位パネルに収納された前記伝熱管相互の接続を、カシメを用いた乾式接合により行い、さらに前記伝熱部の長尺方向に対する垂直断面の最薄部分の厚み及び前記ヒダが、前記カシメの圧力に耐えるものであることを特徴とする放射パネルの製造方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「第1図?第4図において、この発明の輻射パネルによる冷房機能を備えた建物の天井は、3枚のアルミニウム押出型材よりなる放熱板(2)と、該放熱板(2)の裏面に設けられた蛇行状通水管(4)とを備えた4つの輻射パネル(1)が、吊下げ部材(12)を介して梁(11)に並列状に取り付けられている。そして隣り合う輻射パネル(1)(1)同志の間に間隙(5)があけられるとともに、両輻射パネル(1)(1)の間に、下向きに開口した照明器具収納用凹溝(7)を有する横断面略逆U形の照明器具取付用部材(6)が間隙(5)を塞ぐように配置され、照明器具取付用部材(6)が吊下げ部材(12)を介して梁(11)に取り付けられているものである。
輻射パネル(1)の放熱板(2)は3枚のアルミニウム押出型材よりなり、第4図に示すように、各押出型材の中央部に横断面欠円形の通水管嵌込み凹部(8)が設けられるとともに、一側縁部に・・・嵌合凸部が設けられ、同他側縁部に・・・嵌合凹部(10)が設けられており、3枚1組のアルミニウム押出型材によって輻射パネル(1)の放熱部を構成している。
一方、通水管(4)は銅パイプよりなるもので、平面よりみて蛇行状を有しており、これの内部に冷却用熱媒として冷水が流される。この通水管(4)の3つの直管部(4a)が放熱板(2)の通水管嵌込み凹部(8)に嵌め合わされて、かしめ止められている。蛇行状通水管(4)の一端部は、冷水導入用ヘッダ・パイプ(13)に接続され、同他端部は冷水排出用ヘッダ・パイプ(14)に接続されている。」(2頁右上欄下8行?右下欄3行)
「第6図は、輻射パネル(1)のいま1つの配置状態を示すものである。ここで、上記実施例の場合と異なる点は、各輻射パネル(1)の蛇行状通水管(4)が4つの直線部(4a)を具備していて、この通水管(4)に4枚の放熱板(2)が取り付けられている点にある。」(3頁右上欄11?16行)
「なお、上記第3図と第6図においては、通水管(3)が蛇行状であるため、1つの輻射パネル(1)について通水管(3)の2つの端部がそれぞれヘッダ・パイプ(13)(14)に溶接によって接続されているだけである。従って第3図の4つの輻射パネル(1)と3つの照明器具取付用部材(6)とよりなるユニットの場合には、通水管(3)の接続箇所が合計8つであり、また第6図の3つの輻射パネル(1)と2つの照明器具取付用部材(6)とよりなるユニットの場合には、通水管(3)の接続箇所は合計6つとなり、さらに少なくなる。」(3頁左下欄7?18行)
「ところで、従来の輻射パネルによる冷房機能を備えた天井においては、1本の直管状通水管に対して1枚の放熱板が取り付けられていた。従って1枚の放熱板について、ヘッダ・パイプへの通水管端部の溶接による接続箇所が2カ所であり、例えば第3図のように放熱板(2)が合計12枚あれば、通水管のの接続箇所は24カ所となり、これでは管接続作業に非常に手間がかかるだけでなく、漏水の危険性があるという問題があった。
これに対し、上記2つの実施例によれば、輻射パネル〈1)が大型で、かつ通水管(3)蛇行状となされているため、ヘッダ・パイプへの通水管(3)端部の接続箇所が非常に少なく、従って管接続作業が非常に簡単であるとともに、漏水の危険性が大幅に減少するという利点がある。」(3頁左下欄下2行?右下欄下7行)



・引用発明
以上から、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。
「輻射パネル(1)の放熱板(2)は3枚のアルミニウム押出型材よりなり、各押出型材の中央部に横断面欠円形の通水管嵌込み凹部(8)が設けられ、3枚1組のアルミニウム押出型材によって輻射パネル(1)の放熱部を構成されており、
蛇行状通水管(4)は銅パイプよりなり内部に冷却用熱媒として冷水が流され、この通水管(4)の3つの直管部(4a)が放熱板(2)の通水管嵌込み凹部(8)に嵌め合わされてかしめ止められ、蛇行状通水管(4)の一端部は冷水導入用ヘッダ・パイプ(13)に溶接によって接続され、同他端部は冷水排出用ヘッダ・パイプ(14)に溶接によって接続される輻射パネル(1)」

また、引用文献1には製造方法に係る次の発明が記載されていると認められる(以下、「方法発明」という。)。
「輻射パネル(1)の放熱板(2)を3枚のアルミニウム押出型材によるものとし、各押出型材の中央部に横断面欠円形の通水管嵌込み凹部(8)を設け、3枚1組のアルミニウム押出型材によって輻射パネル(1)の放熱部を構成する製造方法であって、
蛇行状通水管(4)は銅パイプよりなり内部に冷却用熱媒として冷水が流され、この通水管(4)の3つの直管部(4a)が放熱板(2)の通水管嵌込み凹部(8)に嵌め合わされてかしめ止められ、蛇行状通水管(4)の一端部は冷水導入用ヘッダ・パイプ(13)に溶接によって接続され、同他端部は冷水排出用ヘッダ・パイプ(14)に溶接によって接続される輻射パネル(1)の製造方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0140】
発熱体1a、1bは、輻射式熱交換器R2の正面側と背面側にやや間隔をおいて併設されており、互いに同じ構造である。化粧フレーム2、2aの上端部には、吊り梁部材19が架設されている。発熱体1a、1bは、上記鉛直管12と同じ扁平管で形成され、上下端にそれぞれ同じ高さに多数のU字状の折り返し部(符号省略)を有する蛇管である。
なお、上記発熱体1の鉛直管12及び発熱体1a、1bの蛇管状の配管は、内面に長手方向に並行する複数の条部121を有する管体12a(図6(c)参照)又は条部が形成されていない管体で形成することもできる。」




3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0037】・・・また、配管が内面に長手方向に並行する複数の条部を有する管体であるものは、配管の内面の面積が単なる管体より広くなるので、より効率のよい熱交換が可能になる。」




4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0030】
銅管7は、直管部7aと湾曲部7bとで構成されている。湾曲部7bは、蛇行する銅管7の折り返し部分であり、図2に示すように半円形に湾曲されている。配管施工の際には温水をスムーズに流すことができるように直管部7aと湾曲部7bの接続部分で管体の内径寸法の変化を小さくする必要がある。温水の流速が大きい場合、直管部7aと湾曲部7bの接続部分で径寸法が変わると、この接続部分で水の流れが妨げられ、うず流や気泡が発生してスムーズな水の流通が妨げられると共に、水が流れる音が発生して不快感を与えることがある。また、気泡の発生は銅管6(銅管7および銅管8)の耐久性を損なう。このため、直管部7aと湾曲部7bを接続する場合は、図2に示すように受け側の直管部7aの接続端部7cをやや拡径し、直管部7aに湾曲部7bを挿入し、接続した際に内径寸法が変わらないようにする。なお、同径の管体の接続端を突き合わせて外周にソケットを嵌めて接続するようにしてもよい。」




5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0007】本発明の目的は、上記課題を解決し、簡単なかしめ治具で、シール材や熱を使わずに気密性のある部品間接合若しくは封止を実現しようとする管材同士および容器の気密接合方法を提供することにある。また本発明の他の目的は、気密接合した冷媒の配管系を容易に製造することができるようにして原価低減をはかった空調機を提供することにある。・・・
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、所定の断面形状を持つ第1の管材の開口部を、該第1の管材の開口部と相似形の断面を持ち、前記第1の管材の開口部の外周寸法より大きい内周寸法を持つ第2の管材の開口部に差し込み、該第2の管材の開口部における外形部分に圧入部材を圧入して第2の管材の開口部の外周寸法を縮めて第1の管材の開口部の外周と第2の管材の開口部の内周とを密着させて接合することを特徴とする管材同士の気密接合方法である。また、本発明は、前記管材同士の気密接合方法において、前記第1の管材の開口部または第2の管材の開口部を、塑性加工を施して製造することを特徴とする。また、本発明は、前記管材同士の気密接合方法において、前記第1の管材の開口部または第2の管材の開口部を、拡管フレア加工を施して製造することを特徴とする。本発明は、前記管材同士の気密接合方法において、前記第1の管材および第2の管材を銅材で形成し、前記圧入部材を真鍮材で形成したことを特徴とする。」
「【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係る実施の形態を図1?図15を用いて説明する。図1は本発明に係る気密封止接合方法の一実施の形態を用いて組み立てられた、管材同士の突き合わせ接合状態を示す断面図である。銅材からなる被接合管材1と被接合管材2は、共に内径D_(1)φ=10.7mmφ、外径D_(2)φ=12.8mmφで同寸法の円形断面被接合管材だが、被接合管材2の開口部は被接合管材1の開口部を挿入できるように、長さL_(1)=10.6mm?15.6mmに渡って内径D_(3)φ=12.9mmφ、外径(外周寸法)D_(4)φ=15.0mmφとなるように塑性加工の一つである拡管フレア加工されている。被接合管材1の開口部は被接合管材2の開口部であるその拡管フレア加工部2aに挿入され、その状態のまま、肉厚が2?5mm程度の内径(内周寸法)D_(5)φ=14mm?14.5mmφ程度(好ましいのは約14.25mmφ)で、長さが10.6mm?12.6mm程度の真鍮材からなる環材(圧入部材)3が圧入代約0.5mm?1mm程度(好ましいのは約0.75mm)で被接合管材2の拡管フレア加工部2aの外周に圧入される。環材3は圧入されやすいように、2.6mmの長さに渡って、8°?15゜程度のテーパが付けられている。こうして、環材3が被接合管材2の拡管フレア加工部2aの外周に圧入されることによって、被接合管材1及び環材3との間でお互いに力が作用してそれらの間にある被接合管材2のフレア加工部2aは内外径(外周寸法)が縮まりながら被接合管材1の外周(3μm?8μm程度の面粗さ)と拡管フレア加工部2aの内周(3μm?8μm程度の面粗さ)との粗さが互いに潰されて密着接合して、気密性が保たれることになる。被接合管材1は、管状であって、内径D_(1)φが10mmφ程度を有し、しかも肉厚が1mm程度以上を有することから、環材3が被接合管材2の拡管フレア加工部2aに圧入されたとしても、被接合管材1が殆ど変形することなく、即ち被接合管材1の外径が縮まることなく環材3による被接合管材2のフレア加工部2aへの内外径の縮まりを拡管フレア加工部2aを支えて被接合管材1の外周(3μm?8μm程度の面粗さ)と拡管フレア加工部2aの内周(3μm?8μm程度の面粗さ)との粗さが互いにつぶされて密着接合して、気密性が保たれることになる。なお、被接合管材1の開口部(接合部)の外周に積極的に面粗さが生じるように、塑性加工によって微小な凹凸を作ってもよい。」




第5 対比、判断
1 本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明を対比すると、次のとおりである。
引用発明の「アルミニウム押出型材より」なる「放熱板(2)」は、その形状、機能又は技術的意義からみて、本願発明の「外界と熱放射により熱交換しうる放射部材」及び「放射部材は」「前記外界との界面が平滑な曲面又は平滑な平面である放射フィン」を備えた「長尺の金属押出成形物」に相当する。
以下同様に、「内部に冷却用熱媒として冷水が流され」「放熱板(2)の通水管嵌込み凹部(8)に嵌め合わされてかしめ止められ」る「蛇行状通水管(4)」は「伝熱媒体が内部を流動して前記放射部材と熱交換可能な伝熱管」に、「輻射パネル(1)」は「放射パネル」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「この通水管(4)の3つの直管部(4a)が放熱板(2)の通水管嵌込み凹部(8)に嵌め合わされてかしめ止められ」は、本願発明の「伝熱管を熱伝導可能にかつ」「長尺方向に貫通して収納しうる収納部とを備えた」「放射部材」と、伝熱管を熱伝導可能にかつ収納しうる収納部を備えた放射部材という限りにおいて相当する。
したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
ア 一致点
外界と熱放射により熱交換しうる放射部材と、伝熱媒体が内部を流動して放射部材と熱交換可能な伝熱管とを備えた放射パネルであって、
放射部材は、外界との界面が平滑な曲面又は平滑な平面である放射フィンと、少なくとも1本の伝熱管を熱伝導可能にかつ収納しうる収納部とを備えた長尺の金属押出成形物である放射パネル。
イ 相違点
本願発明においては、伝熱管は内部の表面に伝熱媒体の流動方向に略平行に複数のヒダを備えた長尺の金属押出成形物であり、放射部材は伝熱管を熱伝導可能にかつ長尺方向に貫通して収納しうる収納部を備えるものであり、伝熱管を放射部材の収納部に収納した単位パネルを複数備え、かつ複数の単位パネルに収納された伝熱管相互の接続が、カシメを用いた乾式接合であり、伝熱管の長尺方向に対する垂直断面の最薄部分の厚み及びヒダが、カシメの圧力に耐えるものであるのに対し、
引用発明においては、3枚1組のアルミニウム押出型材によって輻射パネル(1)の放熱部が構成されており、蛇行状通水管(4)の3つの直管部(4a)が放熱板(2)の通水管嵌込み凹部(8)に嵌め合わされてかしめ止められ、蛇行状通水管(4)の一端部は冷水導入用ヘッダ・パイプ(13)に溶接によって接続され、同他端部は冷水排出用ヘッダ・パイプ(14)に溶接によって接続されるものであるものの、蛇行状通水管(4)の内部構造及び製造手段が不明であり、該通水管(4)の直管部(4a)が放熱板(2)の横断面欠円形の通水管嵌込み凹部(8)へ嵌め合わされてかしめ止められる態様が長尺方向に貫通した収納とまではいえないことに加え、蛇行状通水管(4)相互の接続態様を含め他の構成を有しない点。

(2)判断
本願発明は、「現場への搬入性や設置性が良好で大型にしやすい放射パネル及びそれを用いた放射冷暖房システムを提供すること」(【0007】)を課題の1つとしており、上記相違点に係る本願発明の構成である複数の単位パネルに収納された伝熱管相互の接続をカシメを用いた乾式接合とすることにより、「放射パネルの全体が機械的な接触や乾式接続だけで構成されているため、放射パネルの組み立てや設置にバーナー等の火気が必要なく、設置現場でパネルを組み立てることができるし、設置の際に伝熱管の長さ等を現場で調整することも容易である。・・・さらに、建築物内に大型の放射パネルを設置するにあたり、放射パネルの単位パネルの長さや設置間隔や数を任意に設計でき、室内の容積や床面積や壁面積や冷暖房負荷が異なる様々な空間に対し、放射面積を任意に設計できるうえ、設置位置の自由度も大きく、室内の形状やサイズに合わせて適宜設計することができる」(【0011】)という効果を奏するものである。
これに対し、引用発明は、1枚の放熱板(2)及び通水管の直線部(4a)からなるものを、通水管として蛇行状通水管(4)を用いることで3枚1組の輻射パネルにすることに加え、蛇行状通水管(4)のヘッダ・パイプへの接続が乾式接続とは異なる溶接接続とすることについても本願発明と技術が異なるものである。
さらに、引用発明は、従来1枚の放熱板につきヘッダ・パイプへの溶接接続箇所が2カ所であったため、放熱板が12枚あると接続箇所が24箇所となり、作業に手間がかかり漏水の危険性があることを解決するために、通水管(3)を蛇行状として3枚の放熱板を備えた構成とすることにより接続箇所が非常に少なくなったというものであるから(引用文献1の3頁左下欄下2行?右下欄下7行)、蛇行する銅管の折り返し部分において直管部7aに湾曲部7bを挿入して接続する態様が公知であり(引用文献4)、かつ、管材の挿入に際しカシメを用いた乾式接合が周知技術(引用文献5)であったとしても、これらの技術的事項を引用発明に適用することは、接続作業が増大し漏水の危険性が高まることであるから、当該適用に阻害要件があるというべきである。
また、引用文献2及び3は、管内に複数の条部を設けることが周知であることを示す記載は認められるものの、相違点に係る本願発明の他の構成についての開示はない。
さらに、相違点に係る本願発明の構成は周知技術であるともいえない。

したがって、本願発明は、引用発明並びに引用文献2?5に記載された事項に基き当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 請求項2?6に係る発明について
請求項2?6に係る発明は、請求項1を引用し本願発明の発明特定事項の全てを含むものであるから、上記1で述べたことと同様に、請求項2ないし6に係る発明は、引用発明並びに引用文献2?5に記載された事項に基き当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 請求項7に係る発明について
(1)対比
請求項7に係る発明と方法発明とを対比すると、両者の間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
ア 一致点
外界と熱放射により熱交換する放射部材と、伝熱媒体が内部を流動して放射部材と熱交換可能な伝熱管とを備えた放射パネルの製造方法であって、
放射部材は、外界との界面が平滑な曲面又は平滑な平面である放射フィンと、少なくとも1本の伝熱管を熱伝導可能にかつ収納しうる収納部とを備えて長尺に金属押出成形する放射パネルの製造方法。
イ 相違点
本願発明においては、伝熱管は内部の表面に伝熱媒体の流動方向に略平行に複数のヒダを備えて長尺に金属押出成形し、放射部材は伝熱管を熱伝導可能にかつ長尺方向に貫通して収納しうる収納部を備えるようにし、伝熱管を放射部材の収納部に貫通して収納した単位パネルを複数用い、かつ複数の単位パネルに収納された伝熱管相互の接続を、カシメを用いた乾式接合により行い、さらに伝熱部の長尺方向に対する垂直断面の最薄部分の厚み及びヒダが、カシメの圧力に耐えるものであるのに対し、
方法発明においては、3枚1組のアルミニウム押出型材によって輻射パネル(1)の放熱部を構成する製造方法であって、通水管(4)の3つの直管部(4a)が放熱板(2)の通水管嵌込み凹部(8)に嵌め合わされてかしめ止められ、蛇行状通水管(4)の一端部は冷水導入用ヘッダ・パイプ(13)に溶接によって接続され、同他端部は冷水排出用ヘッダ・パイプ(14)に溶接によって接続されるものの、蛇行状通水管(4)の内部構造及び製造手段が不明であり、該通水管(4)の直管部(4a)が放熱板(2)の横断面欠円形の通水管嵌込み凹部(8)への嵌め合わされてかしめ止められる態様が貫通した収納とまではいえないことに加え、蛇行状通水管(4)相互の接続態様を含め他の構成を有しない点。

(2)判断
上記相違点は、上記1(1)で述べた相違点と実質的に同一である。
したがって、上記1(2)で述べたことと同様の理由により、請求項7に係る発明は、方法発明並びに引用文献2?5に記載された事項に基き当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 当審拒絶理由について
・特許法第36条第6項第2号について
発明が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成31年2月8日の補正により補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審で通知した拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-12 
出願番号 特願2016-178027(P2016-178027)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金丸 治之町田 豊隆  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 藤原 直欣
窪田 治彦
発明の名称 放射パネル  
代理人 田中 哲郎  

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