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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1349459
審判番号 不服2018-16490  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-10 
確定日 2019-03-19 
事件の表示 特願2017- 51578「EL表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日出願公開、特開2017-116959、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成12年4月25日(優先権主張 平成11年4月27日)に出願された特願2000-124078号の一部を、平成15年2月4日に新たな特許出願(特願2003-027199号)とし、その一部を、平成20年10月30日に新たな特許出願(特願2008-280095号)とし、その一部を、平成23年10月20日に新たな特許出願(特願2011-230588号)とし、その一部を、平成25年5月13日に新たな特許出願(特願2013-100869号)とし、その一部を、平成25年6月6日に新たな特許出願(特願2013-119442号)とし、その一部を、平成26年3月31日に新たな特許出願(特願2014-70860号)とし、その一部を、平成26年10月20日に新たな特許出願(特願2014-213637号)とし、その一部を、平成27年7月13日に新たな特許出願(特願2015-139666号)とし、その一部を、平成29年3月16日に新たな特許出願(特願2017-51578号)としたものであって、平成29年4月17日付けで手続補正がなされ、平成30年3月30日付けで拒絶理由が通知され、平成30年5月30日付けで手続補正がなされ、平成30年9月4日付けで拒絶査定がなされ(送達日:平成30年9月11日)、これに対し、平成30年12月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成30年5月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1、2は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基板と、
前記基板上の、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、EL素子と、を有する画素と、
前記画素を挟んで前記基板と対向するカバー材と、を有し、
前記EL素子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、電流供給線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記容量の一方の端子は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記容量の他方の端子は、前記電流供給線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタは、第1の多結晶シリコン領域と、前記第1の多結晶シリコン領域上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上のゲートと、を有し、
前記第1の多結晶シリコン領域は、第2の多結晶シリコン領域と同一の半導体膜に含まれ、
前記第2の多結晶シリコン領域は、前記第1の絶縁膜を介して、第1の導電膜と重なり、
前記第1の導電膜は、前記容量の他方の端子として機能し、
前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上に位置する前記電流供給線と重なる領域を有し、
前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記電流供給線と接する領域を有することを特徴とするEL表示装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板上の第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、EL素子と、を有する画素と、
前記画素を挟んで前記基板と対向するカバー材と、を有し、
前記EL素子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、電流供給線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記容量の一方の端子は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記容量の他方の端子は、前記電流供給線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタは、第1の多結晶シリコン領域と、前記第1の多結晶シリコン領域上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上のゲートと、を有し、
前記第1の多結晶シリコン領域は、第2の多結晶シリコン領域と同一の半導体膜に含まれ、
前記第2の多結晶シリコン領域は、前記第1の絶縁膜を介して、第1の導電膜と重なり、
前記第1の導電膜は、前記容量の他方の端子として機能し、
前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上の第2の絶縁膜を介して、前記電流供給線と重なる領域を有し、
前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有するコンタクトホールを介して、前記電流供給線と接する領域を有することを特徴とするEL表示装置。」

第3 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-2
・引用文献等 1-5

<引用文献等一覧>
1.国際公開第99/12394号
2.国際公開第98/13811号
3.特開平3-288824号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平2-44317号公報(周知技術を示す文献)
5.特開平3-6974号公報(周知技術を示す文献)」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第99/12394号)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「技術分野
本発明は、有機半導体膜等の発光薄膜に駆動電流が流れることによって発光するエレクトロルミネッセンス素子 (以下、EL素子という。)または発光ダイオード素子(以下、LED素子という。)などの薄膜発光素子を薄膜トランジスタ(以下、TFTという。)で駆動制御するアクティブマトリクス型表示装置に関するものである。」(明細書第1頁第5-10行)

イ 「図1は、アクティブマトリクス型表示装置の全体のレイアウトを模式的に示すブロック図である。図2は、それに構成されている画素の1つを抜き出して示す平面図、図3(A)、(B)、(C)はそれそれ図2のA-A '断面図、B-B'断面図、およびC-C'断面図である。
図1に示すアクティブマトリクス型表示装置1では、その基体たる透明基板10の中央部分が表示部11とされている。透明基板10の外周部分のうち、データ線sigの端部には画像信号を出力するデータ側駆動回路3が構成され、走査線gateの端部には走査信号を出力する走査側駆動回路4が構成されている。これらの駆動回路3、4では、N型のTFTとP型のTFTとによ つて相補型TFTが構成され、この相補型TFTは、シフトレジスタ回路、レベルシフタ回路、アナログスィツチ回路などを構成している。表示部11では、アクティブマトリクス型液晶表示装置のアクティブマトリクス基板と同様、透明基板10上に、複数の走査線gateと、該走査線gateの延設方向に対して交差する方向に延設された複数のデータ線sigとによって、複数の画素7がマトリクス状に構成されている。
各々の画素7には、走査線gateを介して走査信号が供給される導通制御回路50と、この導通制御回路50を介してデータ線sigから供給される画像信号に基づいて発光する薄膜発光素子40とが構成されている。ここに示す例においては、導通制御回路50は、走査線gateを介して走査信号がゲート電極に供給される第1のTFT20と、この第1のTFT20を介してデータ線sigから供給される画像信号を保持する保持容量capと、この保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される第2のTFT30とから構成されている。第2のTFT30と薄膜発光素子40とは、詳しくは後述する対向電極opと共通給電線comとの間に直列に接続している。
このような構成のアクティブマトリクス型表示装置1では、図2および図3(A)、(B)に示すように、いずれの画素7においても、島状の半導体膜(シリコン膜)を利用して第1のTFT20および第2のTFT30が形成されている。
第1のTFT20は、ゲート電極21が走査線gateの一部として構成されている。第1のTFT20は、ソース・ドレイン領域の一方に第1層間絶縁膜51のコンタクホールを介してデータ線sigが電気的に接続し、他方にはドレイン電極22が電気的に接続している。ドレイン電極22は、第2のTFT30の形成領域に向けて延設されており、この延設部分には第2のTFT30のゲート電極31が第1の層間絶縁膜51のコンタクトホールを介して電気的に接続している。
第2のTFT30のソース・ドレイン領域の一方には、第1の層間絶縁膜51のコンタクトホールを介して、データ線sigと同時形成された中継電極35が電気的に接続し、この中継電極35には第2の層間絶縁膜52のコンタクトホールを介して薄膜発光素子40のITO膜からなる透明な画素電極41が電気的に接続している。
図2および図3(B)、(C)からわかるように、画素電極41は各画素7毎に独立して形成されている。画素電極41の上層側には、ポリフェニレンビニレン(PPV)などからなる有機半導体膜43、およびリチウムなどのアルカリ金属を含有するアルミニウム、カルシウムなどの金属膜からなる対向電極opがこの順に積層され、薄膜発光素子40が構成されている。有機半導体膜43は各画素7に形成されているが、複数の画素7に跨がってストライプ状に形成される場合もある。対向電極opは、表示部11全体と、少なくとも端子12が形成されている部分の周囲を除いた領域に形成されている。
なお、薄膜発光素子40としては、正孔注入層を設けて発光効率 (正孔注入率)を高めた構造、電子注入層を設けて発光効率(電子注入率)を高めた構造、正孔注入層および電子注入層の双方を形成した構造を採用することもできる。 再び、図2および図3(A)において、第2のTFT30のソース・ ドレイン領域のもう一方には、第1の層間絶縁膜51のコンタクトホールを介して共通給電線comが電気的に接続している。共通給電線comの延設部分39は、第2のTFT30のゲート電極31の延設部分36に対して、第1の層間絶縁膜51を誘電体膜として挟んで対向し、保持容量capを構成している。」(明細書第7頁第8行-第9頁第10行)


ウ 「なお、以下に説明するアクティブマトリクス型表示装置1の製造方法において、透明基板10上に第1のTFT20および第2のTFT30を製造するまでの工程は、液晶アクティブマトリクス型表示装置 1のアクティブマトリクス基板を製造する工程と略同様であるため、図3(A)、(B) 、(C)を参照してその概略を簡単に説明する。
まず、透明基板10に対して、必要に応じて、TE0S (テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとしてプラズマCVD法により厚さが約2000?5000オングストロームのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず。)を形成した後、下地保護膜の表面にプラズマCVD法により厚さが約300?700オングストロームのアモルファスのシリコン膜からなる半導体膜を形成する。次にアモルファスのシリコン膜からなる半導体膜に対して、レーザアニールまたは固相成長法などの結晶化工程を行い、半導体膜をポリシリコン膜に結晶化する。
次に、半導体膜をパターニングして島状の半導体膜とし、その表面に対して、TE0S(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとしてプラズマCVD法により厚さが約600?1500オングス トロームのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜57を形成する。
次に、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜からなる導電膜をスパッタ法により形成した後、パターニングし、ゲート電極21、31、およびゲート電極31の延設部分36を形成する(ゲート電極形成工程)。この工程では走査線gateも形成する。
この状態で、高濃度のリンイオンを打ち込んで、ゲート電極21、31に対して自己整合的にソース・ドレイン領域を形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域となる。」(第13頁第16行-第14頁第12行)(なお、「ゲート絶縁膜57」との記載は、図3(A)、(B) 、(C)より、「ゲート絶縁膜37」の誤記と認められる。)

よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「アクティブマトリクス型表示装置1であって、
その基体たる透明基板10の中央部分が表示部11とされ、透明基板10上に、複数の走査線gateと、該走査線gateの延設方向に対して交差する方向に延設された複数のデータ線sigとによって、複数の画素7がマトリクス状に構成され(「イ」より。)、
各々の画素7には、導通制御回路50と、駆動電流が流れることによって発光するエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)などの薄膜発光素子40とが構成され、導通制御回路50は、第1のTFT20と、保持容量capと、第2のTFT30とから構成され(「ア」、「イ」より。)、
いずれの画素7においても、島状の半導体膜(シリコン膜)を利用して第1のTFT20および第2のTFT30が形成され(「イ」より。)、
半導体膜はポリシリコン膜であり、半導体膜をパターニングして島状の半導体膜とし、その表面にゲート絶縁膜37を形成し、次に金属膜からなる導電膜を形成した後、パターニングし、ゲート電極21、31、およびゲート電極31の延設部分36を形成し(「ウ」より。)、
第1のTFT20は、ゲート電極21が走査線gateの一部として構成され、第1のTFT20は、ソース・ドレイン領域の一方に第1層間絶縁膜51のコンタクホールを介してデータ線sigが電気的に接続し、他方にはドレイン電極22が電気的に接続し、ドレイン電極22は、第2のTFT30の形成領域に向けて延設されており、この延設部分には第2のTFT30のゲート電極31が第1の層間絶縁膜51のコンタクトホールを介して電気的に接続し、
第2のTFT30のソース・ドレイン領域の一方には、第1の層間絶縁膜51のコンタクトホールを介して、データ線sigと同時形成された中継電極35が電気的に接続し、この中継電極35には第2の層間絶縁膜52のコンタクトホールを介して薄膜発光素子40のITO膜からなる透明な画素電極41が電気的に接続し、
画素電極41は各画素7毎に独立して形成され、
対向電極opは、表示部11全体に形成され、
第2のTFT30のソース・ ドレイン領域のもう一方には、第1の層間絶縁膜51のコンタクトホールを介して共通給電線comが電気的に接続し、共通給電線comの延設部分39は、第2のTFT30のゲート電極31の延設部分36に対して、第1の層間絶縁膜51を誘電体膜として挟んで対向し、保持容量capを構成し、
第2のTFT30と薄膜発光素子40とは、対向電極opと共通給電線comとの間に直列に接続している、
アクティブマトリクス型表示装置1(「イ」より。)。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献2(国際公開第98/13811号)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

ア 「技術分野
本発明は、電流発光素子の駆動を薄膜トランジスタで行う、表示装置(電流駆動薄膜トランジスタ表示装置)に関する。」(明細書第1頁第3-5行、なお、空白行を含まない。)

イ 「以下、 本発明の好ましい実施の形態を、図面に基づいて説明する。
(1)第1の実施の形態
第1図?第4図は、本発明の第1の実施の形態を示す図であって、この実施の形態は、本発明に係る表示装置を、EL表示素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置に適用したものである。
第1図は、本実施の形態における表示装置1の一部を示す回路図であって、この表示装置1 は、透明の表示基板上に、複数の走査線121と、これら走査線121に対して交差する方向に延びる複数の信号線122と、これら信号線122に並列に延びる複数の共通給電線123と、がそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線121及び信号線122の各交点毎に、画素領域素1Aが設けられている。
信号線122に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ側駆動回路3が設けられている。また、走査線121に対しては、シフトレジスタおよびレベルシフタを備える走査側駆動回路4が設けられている。さらに、また、画素領域1Aの各々には、走査線121を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ131と、このスイッチング薄膜トランジスタ131を介して信号線線132(当審注:「信号線122」の誤記である。)から供給される画像信号を保持する保持容量151と、該保持容量151によって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ132と、このカレント薄膜トランジスタ132を介して共通給電線123に電気的に接続したときに共通給電線123から駆動電流が流れ込む画素電極152と、この画素電極152と対向電極165との間に挟み込まれる有機蛍光材料164と、が設けられている。
第2図(a)及び(b)は、第1図に示した各画素領域1Aの構造を示す断面図及び平面図である。なお、断面図(a)は、平面図(b)のA?A'線断面図である。また、第2図中、141はチャネル領域、142は高濃度不純物領域、143は低濃度不純物領域、146は中継配線、161はゲート絶縁膜、162は層間絶縁膜、163は最上層の絶縁膜をそれぞれ示している。
第3図(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、表示装置1の製造工程を示す断面図であり、第2図(b)のA?A'線断面図に相当する。また、第3図中、211はレジストマスク、221は高濃度不純物ドープ、222は低濃度不純物ドープをそれぞれ示している。
製造工程の詳細は、次の通りである。
先ず、第3図(a)に示すように、後にスイッチング薄膜トランジスタ131及びカレント薄膜トランジスタ132のチャネル領域141やソース・ドレイン領域、並びに、保持容量151の一方の電極となる半導体膜を成膜しこれをパターニングして、島状の半導体膜140を形成する。そして、それら半導体膜14 0を覆うようにゲート絶縁膜161を形成する。
次いで、第3図(b)に示すように、レジストマスク211を成膜しこれをパターニングする。このとき、後にスイッチング薄膜トランジスタ131が形成される位置のレジストマスク211(第3図(b)左側のレジストマスク211)は、チャネル領域長よりも若干幅広とする。そして、高濃度不純物ドープ221を行って、高濃度不純物領域142を形成する。
次いで、第3図(c)に示すように、金属膜を成膜しこれをパターニングして、走査線121及び中継配線146を形成する。そして、それら走査線121及び中継配線146をマスクとして、低濃度不純物ドーブ222を行う。すると、走査線121の幅はチャネル領域長に等しいから、その下側の高濃度不純物領域142のさらに内側に、低濃度不純物領域143が形成される。また、その低濃度不純物領域143のさらに内側が、チャネル領域141となる。
この結果、LDD構造のスイッチング薄膜トランジスタ131と、セルフアライン構造のカレント薄膜トランジスタ132とが形成される。
そして、第3図(d)に示すように、層問絶縁膜162を成膜、コンタクトホールを形成し、さらに、金属膜を成膜しこれをパターニングして、信号線122及び共通給電線123を形成する。
次いで、第3図(e)に示すように、画素電極152を形成し、最上層の絶縁膜163を形成する。さらにこの後、有機蛍光材料164及び対向電極165を形成する。」(明細書第7頁第25行-第10頁第6行、なお、空白行を含めない。)

ウ 「また、本実施の形態では、保持容量151を、ゲート絶縁膜161を利用して形成しているが、一般に、ゲート絶縁膜161は、他の絶縁膜よりも薄く形成される。このため、小面積かつ大容量の保持容量151 を形成することができるという利点がある。」(明細書第10頁第20-23行、なお、空白行を含めない。)

また、第2図、第3図より、「保持容量151の一方の電極となる半導体膜」と「共通給電線123」とが、「層間絶縁膜162」及び「ゲート絶縁膜161」に形成されたコンタクトホールを介して接続されていることが見て取れる。

さらに、第2図、第3図より、「中継配線146」は、「スイッチング薄膜トランジスタ131」の「高濃度不純物領域142」の一方と接続され、「保持容量151」の上部(他方)の電極と、「カレント薄膜トランジスタ132」の「ゲート電極」とを形成していることが見て取れる。

よって、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「EL表示素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置であって、
透明の表示基板上に、複数の走査線121と、これら走査線121に対して交差する方向に延びる複数の信号線122と、これら信号線122に並列に延びる複数の共通給電線123と、がそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線121及び信号線122の各交点毎に、画素領域素1Aが設けられ、
画素領域1Aの各々には、走査線121 を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ131と、このスイッチング薄膜トランジスタ131を介して信号線122から供給される画像信号を保持する保持容量151と、該保持容量151によって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ132と、このカレント薄膜トランジスタ132を介して共通給電線123に電気的に接続したときに共通給電線123から駆動電流が流れ込む画素電極152と、この画素電極152と対向電極165との間に挟み込まれる有機蛍光材料164と、が設けられ、
スイッチング薄膜トランジスタ131及びカレント薄膜トランジスタ132のチャネル領域141やソース・ドレイン領域、並びに、保持容量151の一方の電極となる半導体膜を成膜しこれをパターニングして、島状の半導体膜140を形成し、それら半導体膜140を覆うようにゲート絶縁膜161を形成し、
金属膜を成膜しこれをパターニングして、走査線121及び中継配線146を形成し(「イ」より。)、
中継配線146は、スイッチング薄膜トランジスタ131の高濃度不純物領域142の一方と接続され、保持容量151の上部(他方)の電極と、カレント薄膜トランジスタ132のゲート電極とを形成し(図2、図3より。)、
走査線121の下側の内側が、チャネル領域141となり、
そして、層問絶縁膜162を成膜、コンタクトホールを形成し、さらに、金属膜を成膜しこれをパターニングして、信号線122及び共通給電線123を形成し(「イ」より。)、
保持容量151の一方の電極となる半導体膜と共通給電線123とが、層間絶縁膜162及びゲート絶縁膜161に形成されたコンタクトホールを介して接続され(図2、図3より。)、
次いで、画素電極152を形成し、最上層の絶縁膜163を形成し、さらにこの後、有機蛍光材料164及び対向電極165を形成し(「イ」より。)、
保持容量151を、ゲート絶縁膜161を利用して形成している(「ウ」より。)、
EL表示素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置(「イ」より。)。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由において、周知技術を示す文献として引用された、引用文献3(特開平3-288824号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「(産業上の利用分野)
本発明は、薄膜トランジスタ(以下では「TFT」と称す)等のスイッチング素子を有し、液晶等を表示媒体として用いたアクティブマトリクス表示装置に関する。」(第1頁右下欄第15-19行)

イ 「(発明が解決しようとする課題)
このような駆動回路一体型のアクティブマトリクス型のLCDでは付加容量が設けられているので、絵素電極の表示に寄与する部分の面積が小さくなり、表示画面の開口率が低下するという問題点がある。このような開口率の低下を防止し、同時に信号遅延の生じない付加容量共通配線構造としたアクティブマトリクス表示装置が、特願平1-304402号に開示されている。
第5図に上記表示装置に用いられるTFTアレイの部分平面図を示す。第6図に第5図のVI-VI線に沿った断面図を示す。第5図及び第6図を参照しながら、この表示装置を製造工程に従って説明する。前述のガラス基板11上の全面に、後に半導体層12及び容量用下部電極5となる多結晶シリコン薄膜がCVD法、スパッタリング法等によって形成される。多結晶シリコン薄膜のパターニングを行い、半導体層12及び容量用下部電極5が形成される。次に、CVD法、この多結晶シリコン薄膜上面の熱酸化等により、ゲート絶縁膜13が形成される。次に、容量用下部電極5の部分にイオン注入法によってドーピングを行い、低抵抗の容量用下部電極5が得られる。
次に、n^(+)又はp^(+)型の多結晶シリコンによってゲートバス配線1、ゲート電極3a及び3b、並びに容量用上部電極6が形成される。容量用上部電極6と前述の容量用下部電極5との間で、付加容量27が形成される。このゲート電極3a及び3bをマスクとし、且つ、フォトリソグラフィ法によって形成されたレジストをマスクとして、半導体層12のゲート電極3a及び3bの下方以外の部分にイオン注入が行なわれる。これにより、TFTのソース・ドレイン領域が自己整合的に形成される。
この基板上の全面に絶縁層14が形成される。次に、第5図に示すように3つのコンタクトホール7a、7b及び7cが形成される。コンタクトホール7a及び7bは、絶縁層14及び前述のゲート絶縁膜13を貫いて、半導体層12及び容量用下部電極5上にそれぞれ形成される。コンタクトホール7cは、絶縁層14を貫いて容量用上部電極6の端部の上に形成される。
次に、ソースバス配線2及び付加容量共通配線8が、Al金属等の低抵抗の金属を用いて同時に形成される。第5図に示すように、ソースバス配線2はコンタクトホール7a上で幅が広くなった形状に形成されている。また、付加容量共通配線8はコンタクトホール7c上で幅が広くなった形状に形成されている。従って、ソースバス配線2はコンタクトホール7aを介して半導体層12に接続され、付加容量共通配線8はコンタクトホール7cを介して容量用上部電極6に接続されることになる。付加容量共通配線8は表示装置として完成した後には、対向基板上の対向電極と同じ電位の電極に接続される。
更に、ITOから成る絵素電極4がパターン形成される。第5図に示すように、絵素電極4の一部はコンタクトホール7b上に延びている。従って、絵素電極4はコンタクトホール7bを介して半導体層12に接続される。さらにこの基板の全面に保護膜15が形成される。
このアクティブマトリクス表示装置の付加容量27は、容量用上部電極6と容量用下部電極5との間に、薄いゲート絶縁膜13を有しているので、付加容量27の単位面積当りの容量を大きくすることができる。従って、表示画面上に占める付加容量27の面積を小さくすることができ、表示画面の開口率の低下を防止することができる。」(第2頁右下欄第14行-第3頁右下欄第1行)

よって、引用文献3には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「液晶等を表示媒体として用いたアクティブマトリクス表示装置(「ア」より。)であって、
ガラス基板11上に、多結晶シリコン薄膜が形成され、多結晶シリコン薄膜のパターニングを行い、半導体層12及び容量用下部電極5が形成され、次に、この多結晶シリコン薄膜上面の熱酸化等により、ゲート絶縁膜13が形成され、次に、容量用下部電極5の部分にイオン注入法によってドーピングを行い、低抵抗の容量用下部電極5が得られ、
次に、n^(+)又はp^(+)型の多結晶シリコンによって、容量用上部電極6が形成され、容量用上部電極6と前述の容量用下部電極5との間で、付加容量27が形成され、半導体層12のゲート電極3a及び3bの下方以外の部分に、TFTのソース・ドレイン領域が形成され、
この基板上の全面に絶縁層14が形成され、次に、3つのコンタクトホール7a、7b及び7cが形成され、コンタクトホール7a及び7bは、絶縁層14及び前述のゲート絶縁膜13を貫いて、半導体層12及び容量用下部電極5上にそれぞれ形成され、コンタクトホール7cは、絶縁層14を貫いて容量用上部電極6の端部の上に形成され、
次に、付加容量共通配線8が、金属を用いて形成され、付加容量共通配線8はコンタクトホール7c上で幅が広くなった形状に形成され、従って、付加容量共通配線8はコンタクトホール7cを介して容量用上部電極6に接続されることになり、
付加容量共通配線8は表示装置として完成した後には、対向基板上の対向電極と同じ電位の電極に接続され、
付加容量27は、容量用上部電極6と容量用下部電極5との間に、薄いゲート絶縁膜13を有している(「イ」より。)、
アクティブマトリクス表示装置。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由において、周知技術を示す文献として引用された、引用文献4(特開平2-44317号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「〔産業上の利用分野〕
本発明は液晶表示装置の補助容量に係り、特に大きな容量を得るのに好適な補助容量を有する液晶表示装置に関する。」(第1頁右下欄第3-6行)

イ 「〔実施例〕
以下本発明の実施例を第1図、第2図により説明する。
第1図は本発明によるアクライブマトリクス(当審注:「アクティブマトリクス」の誤記である。)の部分構成を示す。信号線1、走査線2の交点にスイッチング素子3が設けられており、ソース側には液晶セル4、補助容量5が並列に接続されている。液晶セル4は対向基板共通電極6とで構成されている。補助容量5は、ソース側が2個の電極が並列された形で配置されており、他方の共通電極は補助導体7で接続され、電位が固定されている。
第2図はスイッチング素子3及び補助容量5の部分の断面図を示す。ガラス基板8に多結晶シリコン9を形成する。この後、補助容量5を形成する部分にはリンをドープしておく。次にゲート絶縁膜11、ゲート電極12を形成する。この過程で、補助容量5には、補助容量用透明電極10、補助容量用絶縁膜13、補助容量用共通電極14が形成され、ここで、ひとつの容量が形成される。次に層間絶縁膜15を形成し、コンタクト窓を開けて、画素用透明電極17を形成する。同一材料で信号電極1(ドレイン電極)、ソース電極16、補助容量用の補助導体7が形成される。この過程で、第2の容量が形成され、下に埋め込まれた容量と並列に接続される。このプロセスで特に必要とされるのは、補助容量用透明電極10にドーピングするプロセスのみであり、他はスイッチング素子と同一のプロセスで構成できる。」(第2頁右上欄第9行-同頁左下欄第17行)

よって、引用文献4には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「補助容量を有する液晶表示装置であって(「ア」より。)、
アクティブマトリクスの信号線1、走査線2の交点にスイッチング素子3が設けられており、ソース側には液晶セル4、補助容量5が並列に接続され、補助容量5は、ソース側が2個の電極が並列された形で配置されており、他方の共通電極は補助導体7で接続され、電位が固定され、
ガラス基板8に多結晶シリコン9を形成し、次にゲート絶縁膜11、ゲート電極12を形成し、この過程で、補助容量5には、補助容量用透明電極10、補助容量用絶縁膜13、補助容量用共通電極14が形成され、ここで、ひとつの容量が形成され、次に層間絶縁膜15を形成し、コンタクト窓を開けて、画素用透明電極17を形成し、同一材料で信号電極1(ドレイン電極)、ソース電極16、補助容量用の補助導体7が形成され、この過程で、第2の容量が形成され、下に埋め込まれた容量と並列に接続される(「イ」より。)、
液晶表示装置(「ア」より。)。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由において、周知技術を示す文献として引用された、引用文献5(特開平3-6974号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「第6図は、シャッターメガネ9の構成を示す概略部分拡大断面図である。
シャッターメガネ9は、それぞれ薄板状の、ガラス基板17、透明電極18、液晶19、透明電極18、カバーガラス20が、順に層状に重なって構成されている。
2つの透明電極18には、それぞれ陽極側の接続線と、陰極側の接続線とが、接続されている。
また1本実施例においては、極の異なる2つの透明電極18に挟まれた液晶19には、電界が印加されない通常の状態では、光を透過し、電界がかかると光を遮蔽する性質を持っているものが、用いられる。勿論、逆の性質を持つものを用いてもよい。
なお、ガラス基板17やカバーガラス20の代りに、薄板状の透明なプラスチック素材を用いてもよい。」(第7頁左上欄第10行-同頁右上欄第6行)

したがって、引用文献5には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「シャッターメガネ9は、それぞれ薄板状の、ガラス基板17、透明電極18、液晶19、透明電極18、カバーガラス20が、順に層状に重なって構成されているが、ガラス基板17やカバーガラス20の代りに、薄板状の透明なプラスチック素材を用いてもよい。」

第5 引用文献1を主引用文献とした場合の対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「基体たる透明基板10」が、本願発明1における「基板」に相当する。

イ 引用発明1における「第2のTFT30」、「第1のTFT20」、「保持容量cap」及び「エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)などの薄膜発光素子40」が、それぞれ、本願発明1における「第1のトランジスタ」、「第2のトランジスタ」、「容量素子」及び「EL素子」に相当する。

ウ 引用発明1における「画素7」は、「導通制御回路50と、」「エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)などの薄膜発光素子40とが構成され、導通制御回路50は、第1のTFT20と、保持容量capと、第2のTFT30とから構成され」ているから、本願発明1における「前記基板上の、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、EL素子と、を有する画素」に相当する。

エ 引用発明1における「薄膜発光素子40」の「画素電極41」が、「中継電極35」を中継して「第2のTFT30のソース・ドレイン領域の一方」と「接続」されることが、本願発明1における「前記EL素子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され」ることに相当する。

オ 引用発明1における「第2のTFT30のソース・ ドレイン領域のもう一方」に「共通給電線comが電気的に接続」されることが、本願発明1における「前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、電流供給線と電気的に接続され」ることに相当する。

カ 引用発明1における「第1のTFT20」の「ドレイン電極22」の「延設部分には第2のTFT30のゲート電極31」が「電気的に接続」されることが、本願発明1における「前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され」ることに相当する。

キ 引用発明1では、「共通給電線comの延設部分39は、第2のTFT30のゲート電極31の延設部分36に対して、第1の層間絶縁膜51を誘電体膜として挟んで対向し、保持容量capを構成し」ている。よって、引用発明1において「保持容量cap」の「誘電体膜」を「挟んで対向」している、「第2のTFT30のゲート電極31の延設部分36」と「共通給電線comの延設部分39」が、それぞれ、本願発明1における「前記容量の一方の端子」と「前記容量の他方の端子」に相当する。

ク 引用発明1において、「第2のTFT30のゲート電極31の延設部分36」(本願発明1における「容量の一方の端子」)が、「第1のTFT20」の「ドレイン電極22」を「第2のTFT30の形成領域に向けて延設」したものであることが、本願発明1における 「前記容量の一方の端子は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され」ることに相当する。

ケ 引用発明1における「共通給電線comの延設部分39」(本願発明1における「容量の他方の端子」)が「共通給電線com」と電気的に接続されていることは明らかであって、このことが、本願発明1における「前記容量の他方の端子は、前記電流供給線と電気的に接続され」ることに相当する。

コ 引用発明1における「第1のTFT20」は、「島状の半導体膜(シリコン膜)を利用して」「形成され」、「半導体膜はポリシリコン膜であり、島状の半導体膜の表面にゲート絶縁膜37を形成し、次に金属膜からなる導電膜を形成した後、パターニングし」て「ゲート電極21」を形成したものであるから、「島状」の「ポリシリコン膜」と、前記「ポリシリコン膜」上の「ゲート絶縁膜37」と、前記「ゲート絶縁膜37」上の「金属膜からなる導電膜」(つまり、ゲート)と、を有していることは明らかであって、このことが、本願発明1における「前記第2のトランジスタは、第1の多結晶シリコン領域と、前記第1の多結晶シリコン領域上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上のゲートと、を有」することに相当する。

サ 引用発明1における「共通給電線comの延設部分39」は、導電膜から形成されていることは明らかであって、本願発明1における「第1の導電膜」に相当する。
また、引用発明1における「共通給電線comの延設部分39」が、「『第1のTFT20』の『ドレイン電極22』を『第2のTFT30の形成領域に向けて延設』した『延設部分』と『電気的に接続』されている『第2のTFT30のゲート電極31の延設部分36』」に対して、「第1の層間絶縁膜51を誘電体膜として挟んで対向」していることと、本願発明1における「前記第1の多結晶シリコン領域は、第2の多結晶シリコン領域と同一の半導体膜に含まれ」、「前記第2の多結晶シリコン領域は、前記第1の絶縁膜を介して、第1の導電膜と重な」ることとは、「前記第1の多結晶シリコン領域と接続された領域は、絶縁膜を介して、第1の導電膜と重な」る点で共通する。

シ 引用発明1における上記「共通給電線comの延設部分39」を形成する導電膜が、「保持容量cap」の端子として機能していることは明らかであって、このことが、本願発明1における「前記第1の導電膜は、前記容量の他方の端子として機能」することに相当する。

ス 引用発明1における「共通給電線comの延設部分39」は、「保持容量capを構成し」ているから、「画素」内に延設されていることは明らかであって、本願発明1における 「前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上に位置する前記電流供給線と重なる領域を有し、前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記電流供給線と接する領域を有すること」とは、「前記画素内において、前記第1の導電膜は電流供給線と導通している」点で共通する。

セ 引用発明1における「アクティブマトリクス型表示装置1」は「エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)などの薄膜発光素子40」を用いた表示装置であるから、本願発明1における「EL表示装置」に相当する。

よって、引用発明1と本願発明1とは、次の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「基板と、
前記基板上の、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、EL素子と、を有する画素と、を有し、
前記EL素子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、電流供給線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記容量の一方の端子は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記容量の他方の端子は、前記電流供給線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタは、第1の多結晶シリコン領域と、前記第1の多結晶シリコン領域上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上のゲートと、を有し、
前記第1の多結晶シリコン領域と接続された領域は、絶縁膜を介して、第1の導電膜と重なり、
前記第1の導電膜は、前記容量の他方の端子として機能し、
前記画素内において、前記第1の導電膜は電流供給線と導通していることを特徴とするEL表示装置。」

(相違点1)
本願発明1では、「前記第1の多結晶シリコン領域は、第2の多結晶シリコン領域と同一の半導体膜に含まれ」、「前記第2の多結晶シリコン領域は、前記第1の絶縁膜を介して、第1の導電膜と重な」っているのに対し、引用発明1では、「共通給電線comの延設部分39」が、「『第1のTFT20』の『ドレイン電極22』を『第2のTFT30の形成領域に向けて延設』した『延設部分』と『電気的に接続』されている『第2のTFT30のゲート電極31の延設部分36』」に対して、「第1の層間絶縁膜51を誘電体膜として挟んで対向」している点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上に位置する前記電流供給線と重なる領域を有し」、「前記第1の導電膜は、前記電流供給線と接する領域を有する」のに対し、引用発明1では、「共通給電線comの延設部分39」は、「共通給電線com」と重なるものではなく、「共通給電線com」を「延設」して形成したものである点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記画素を挟んで前記基板と対向するカバー材」を有しているのに対し、引用発明1では、基板と対向する部材は示されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
ア 引用文献3には、「付加容量共通配線8」が「コンタクトホール7cを介して」「付加容量27」の「容量用上部電極6に接続される」構成が記載されている。
しかし、引用文献3に記載された技術は、「液晶」等を表示媒体として用いたアクティブマトリクス表示装置に関するものであって、その「付加容量共通配線8」は、「付加容量27」の「電極」を、「対向基板上の対向電極」と「同じ電位」にするための配線である。
これに対し、引用発明1は、「駆動電流が流れることによって発光するエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)」などの薄膜発光素子40を用いたアクティブマトリクス型表示装置1に関する発明であるから、その「保持容量cap」に接続される「共通給電線com」は、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)に「駆動電流」を流すための給電線であって、引用文献3に記載された「付加容量共通配線8」とは、機能・用途が全く異なる線である。
従って、引用文献3に記載された上記構成を引用発明1に適用することは、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。

イ また、引用文献4には、「補助容量用共通電極14が形成され」、「次に層間絶縁膜15を形成し、コンタクト窓を開けて」、「補助容量用の補助導体7が形成され」る技術が記載されている。
しかし、引用文献4に記載された技術も、「液晶表示装置」に関する技術であって、その「補助容量用の補助導体7」は、「補助容量5」の「電位」を「固定」するための導体であって、引用発明1における、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)に「駆動電流」を流すための「共通給電線com」とは、機能・用途が全く異なる導体である。
従って、引用文献4に記載された構成を引用発明1に適用することも、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。

ウ さらに、引用文献5にも、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、記載されていない。

エ よって、相違点1、3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者といえども、引用発明1及び引用文献3-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

2.本願発明2について
本願発明2は、上記「1.」「(1)」で述べた「(相違点2)」に係る本願発明1の構成について、さらに「前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上の第2の絶縁膜を介して、前記電流供給線と重なる領域を有し、前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有するコンタクトホールを介して、前記電流供給線と接する領域を有する」と減縮したものであるから、上記「1.」「(2)」で述べたのと同じ理由により、本願発明2は、当業者といえども、引用発明1及び引用文献3-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

第6 引用文献2を主引用文献とした場合の対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2における「透明の表示基板」が、本願発明1における「基板」に相当する。

イ 引用発明2における「カレント薄膜トランジスタ132」、「スイッチング薄膜トランジスタ131」、「保持容量151」、及び、「『画素電極152』と『有機蛍光材料164及び対向電極165』」からなる素子が、それぞれ、本願発明1における「第1のトランジスタ」、「第2のトランジスタ」、「容量素子」、及び、「EL素子」に相当する。

ウ 引用発明2における「画素領域1A」は、「カレント薄膜トランジスタ132」、「スイッチング薄膜トランジスタ131」、「保持容量151」、及び、「『画素電極152』と『有機蛍光材料164及び対向電極165』」からなる素子が設けられているから、本願発明1における「前記基板上の、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、EL素子と、を有する画素」に相当する。

エ 引用発明2における「有機蛍光材料164」の「画素電極152」には、「カレント薄膜トランジスタ132を介して共通給電線123に電気的に接続したときに共通給電線123 から駆動電流が流れ込む」から、引用発明2における「有機蛍光材料164」の「画素電極152」がカレント薄膜トランジスタ132のソース又はドレインの一方と電気的に接続されていることは明らかであって、このことが、本願発明1における「前記EL素子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され」ることに相当する。

オ 引用発明2における「共通給電線123」は、「駆動電流」の給電線であるから、本願発明1における「電流供給線」に相当する。

カ 引用発明2における「有機蛍光材料164」の「画素電極152」が、「カレント薄膜トランジスタ132を介して共通給電線123に電気的に接続」されていることから、引用発明2における「カレント薄膜トランジスタ132」のソース又はドレインの他方が、「共通給電線123」と電気的に接続されていることは明らかであって、このことが、本願発明1における「前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、電流供給線と電気的に接続され」ることに相当する。

キ 引用発明2における「スイッチング薄膜トランジスタ131の高濃度不純物領域142の一方」(すなわち「スイッチング薄膜トランジスタ131」の「ソース・ドレイン領域」の一方)「と接続され」た「中継配線146」が、「カレント薄膜トランジスタ132のゲート電極を形成し」ていることが、本願発明1における「前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され」ることに相当する。

ク 引用発明2における「保持容量151の上部(他方)の電極」を「形成」する「中継配線146」は、「スイッチング薄膜トランジスタ131の高濃度不純物領域142の一方と接続されている」から、「保持容量151の上部(他方)の電極」が「スイッチング薄膜トランジスタ131」のソース又はドレインの一方と電気的に接続されていることは明らかであって(引用文献2の第2図、第3図参照。)、このことと、本願発明1における「前記容量の一方の端子は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され」ることとは、「前記容量の第1または第2の端子のどちらかの端子は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され」る点で共通する。

ケ 引用発明2における「保持容量151の一方の電極となる半導体膜と共通給電線123とが」「接続され」ることと、本願発明1における「前記容量の他方の端子は、前記電流供給線と電気的に接続され」ることとは、「前記容量の第1または第2のどちらかの端子は、前記電流供給線と電気的に接続され」る点で共通する。

コ 引用発明2における「スイッチング薄膜トランジスタ131」が、「半導体膜を成膜しこれをパターニングして、島状の半導体膜140を形成し、それら半導体膜140を覆うようにゲート絶縁膜161を形成し」て形成されていることから、引用発明2における「スイッチング薄膜トランジスタ131」が、「島状の半導体膜140」と、前記「島状の半導体膜140」上の「ゲート絶縁膜161」と、前記「ゲート絶縁膜161」上の「ゲート電極」と、を有していることは明らかであって、このことと、本願発明1における「前記第2のトランジスタは、第1の多結晶シリコン領域と、前記第1の多結晶シリコン領域上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上のゲートと、を有」することとは、「前記第2のトランジスタは、第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上のゲートと、を有」する点で共通する。

サ 引用発明2における「保持容量151の一方の電極となる半導体膜」と、本願発明1における「第2の多結晶シリコン領域」とは、「第2の半導体領域」の点で共通する。

シ 引用発明2における「スイッチング薄膜トランジスタ131」「のチャネル領域141やソース・ドレイン領域、並びに、保持容量151の一方の電極となる半導体膜を成膜しこれをパターニングして、島状の半導体膜140を形成」することは、本願発明1における「前記第1の多結晶シリコン領域は、第2の多結晶シリコン領域と同一の半導体膜に含まれ」ることと、「前記第1半導体領域は、第2の半導体領域と同一の半導体膜から形成されたものである」点で共通する。

ス 引用発明2における「保持容量151の一方の電極となる半導体膜」(「島状の半導体膜140」)が、「保持容量151の一方の電極」であり、「中継配線146」が、「ゲート絶縁膜161を利用して形成し」て形成される「保持容量151の上部(他方)の電極」であることと、本願発明1における「前記第2の多結晶シリコン領域は、前記第1の絶縁膜を介して、第1の導電膜と重な」ることとは、「前記第2の半導体領域は、前記第1の絶縁膜を介して、第1の導電膜と重な」る点で共通する。

セ 引用発明2における「中継配線146」が「保持容量151の上部(他方)の電極」「を形成」することと、本願発明1における「前記第1の導電膜は、前記容量の他方の端子として機能」することとは、「前記第1の導電膜は、前記容量の第1または第2のどちらかの端子として機能」する点で共通する。

ソ 引用発明2における「画素領域1A」において、引用発明2における「保持容量151の一方の電極となる半導体膜と共通給電線123とが、層間絶縁膜162及びゲート絶縁膜161に形成されたコンタクトホールを介して接続され」ることと、本願発明1における「前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上に位置する前記電流供給線と重なる領域を有し、前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記電流供給線と接する領域を有すること」とは、「前記画素内において、前記容量の第1または第2のどちらかの端子は、前記端子上に位置する前記電流供給線と重なる領域を有し、前記画素内において、前記容量の第1または第2のどちらかの端子は、前記電流供給線と接する領域を有する」点で共通する。

タ 引用発明2における「EL表示素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置」が、本願発明1における「EL表示装置」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明2とは、次の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「基板と、
前記基板上の、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、EL素子と、を有する画素と、
前記EL素子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、電流供給線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記容量の第1または第2のどちらかの端子は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記容量の第1または第2のどちらかの端子は、前記電流供給線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタは、第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上のゲートと、を有し、
前記第1半導体領域は、第2の半導体領域と同一の半導体膜から形成されたものであり、
前記第2の半導体領域は、前記第1の絶縁膜を介して、第1の導電膜と重なり、
前記第1の導電膜は、前記容量の第1または第2のどちらかの端子として機能し、
前記画素内において、前記容量の第1または第2のどちらかの端子は、前記端子上に位置する前記電流供給線と重なる領域を有し、前記画素内において、前記容量の第1または第2のどちらかの端子は、前記電流供給線と接する領域を有することを特徴とするEL表示装置。」

(相違点1)
本願発明1では、第1の半導体領域及び第2の半導体領域が、それぞれ「第1の多結晶シリコン領域」、及び「第2の多結晶シリコン領域」であって、「前記第1の多結晶シリコン領域は、第2の多結晶シリコン領域と同一の半導体膜に含まれ」ているのに対し、
引用発明2では、それぞれ「スイッチング薄膜トランジスタ131」となる「半導体膜」、及び「保持容量151の一方の電極」となる「半導体膜」であって、両者は、「半導体膜」を「パターニングして、島状の半導体膜140を形成し」たもの、つまり、別々の半導体膜140である点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記容量の一方の端子は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され」、「前記容量の他方の端子は、前記電流供給線と電気的に接続され」、「前記第1の導電膜は、前記容量の他方の端子として機能」し、「前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上に位置する前記電流供給線と重なる領域を有し」ているのに対し、
引用発明2では、「保持容量151の上部(他方)の電極」が「中継配線146」(本願発明1における「第1の導電膜」に相当する。)で形成され、「スイッチング薄膜トランジスタ131」のソース又はドレインの一方と電気的に接続されていることは明らかであり、「保持容量151の一方の電極」が「共通給電線123」と「接続され」、「保持容量151の一方の電極」と「共通給電線123」とが、「層間絶縁膜162及びゲート絶縁膜161に形成されたコンタクトホールを介して接続され」ているため、引用発明2における保持容量151の「上部(他方)の電極」及び「一方の電極」は、本願発明1における「容量」の「一方の端子」及び「他方の端子」と比較すると、トランジスタ(のソース又はドレインの一方)及び共通給電線(電流供給線)に対する接続関係が逆となっている点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記画素を挟んで前記基板と対向するカバー材」を有しているのに対し、引用発明2では、「透明の表示基板上」に「画素領域1A」を設けることは示されているものの、「画素領域1A」を挟んで、「透明の表示基板」と対向するカバー材を有することは示されていない点。

(2)判断
事案に鑑みて、先ず、相違点2について検討する。
ア 相違点2で述べた引用発明2の構成を、相違点2に係る本願発明1の構成とするためには、引用発明2における保持容量151の「上部(他方)の電極」及び「一方の電極」と、「スイッチング薄膜トランジスタ131」(のソース又はドレインの一方)及び「共通給電線123」との接続関係を逆にする必要がある。
しかし、引用発明2において、保持容量151の「上部(他方)の電極」に「共通給電線123」を接続し、保持容量151の「一方の電極」に「スイッチング薄膜トランジスタ131」(のソース又はドレインの一方)を接続するようにして上記相違点2に係る本願発明1の構成とするためには、製造工程を含め、引用発明2の画素領域1Aにおける大幅なレイアウトの変更が必要になることは明らかであって、そのような変更を引用発明2に施すことは、当業者に動機付けられないことである。

イ また、引用文献3には、「付加容量27」の「容量用上部電極6」が「コンタクトホール7cを介して」「付加容量共通配線8」に「接続され」、「TFTのソース・ドレイン領域が形成され」る「半導体層12」で「容量用下部電極5」が形成される(つまり「TFTのソース・ドレイン領域」が「容量用下部電極5」と接続される)構成が記載されている。
しかし、引用文献3に記載された技術は、「液晶」等を表示媒体として用いたアクティブマトリクス表示装置に関するものであって、その「付加容量共通配線8」は、「付加容量27」の「電極」を、「対向基板上の対向電極」と「同じ電位」にするための配線である。
これに対し、引用発明2は「EL表示素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置」であって、その「EL表示素子」は、「有機蛍光材料164」に「共通給電線123から駆動電流が流れ込む」ことで発光(Luminescence)する素子であるから、引用発明2の「保持容量151」に接続される「共通給電線123」は、「有機蛍光材料164」に「駆動電流」を流れ込ませるための給電線であって、引用文献3に記載された「付加容量共通配線8」とは、機能・用途が全く異なる線である。
従って、引用文献3に記載された上記構成を引用発明2に適用することは、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。

ウ また、引用文献4にも、「スイッチング素子3」の「ソース」が、「ガラス基板8」に「多結晶シリコン9」で「形成」された「補助容量用透明電極10」に「接続」され、「補助容量用共通電極14」が「層間絶縁膜15」に「コンタクト窓を開けて」「形成」した「補助容量用の補助導体7」に接続される構成が記載されている。
しかし、引用文献4に記載された技術も、「液晶表示装置」に関する技術であって、その「補助容量用の補助導体7」は、「補助容量5」の「電位」を「固定」するための導体であって、引用発明2における、「有機蛍光材料164」に「駆動電流」を流れ込ませるための「共通給電線123」とは、機能・用途が全く異なる導体である。
従って、引用文献4に記載された構成を引用発明2に適用することも、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。

エ さらに、引用文献5にも、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、記載されていない。

オ よって、相違点1、3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者といえども、引用発明2及び引用文献3-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

2.本願発明2について
本願発明2は、上記「1.」「(1)」で述べた「(相違点2)」に係る本願発明1の構成について、「前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上に位置する前記電流供給線と重なる領域を有し」とあったところを「前記第1の導電膜は、前記第1の導電膜上の第2の絶縁膜を介して、前記電流供給線と重なる領域を有し、前記画素内において、前記第1の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有するコンタクトホールを介して、前記電流供給線と接する領域を有する」と減縮した構成を有するものであるから、上記「1.」「(2)」で述べたのと同じ理由により、本願発明2は、当業者といえども、引用発明2及び引用文献3-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-07 
出願番号 特願2017-51578(P2017-51578)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 櫻井 健太
清水 稔
発明の名称 EL表示装置  

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