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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B |
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管理番号 | 1349601 |
審判番号 | 不服2017-17534 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-28 |
確定日 | 2019-03-07 |
事件の表示 | 特願2016- 66942「システム、電子機器及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月 6日出願公開、特開2016-174906〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年10月28日に出願した特願2011-236748号の一部を平成28年3月29日に新たな特許出願としたものであって、平成29年5月30日付けで拒絶理由通知がなされ、これに応答して同年7月24日付けで手続補正がなされ、同年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月28日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に、手続補正がなされ、その後、当審において、平成30年4月20日付けで拒絶の理由(以下「第1回当審拒絶理由通知」という。)を通知したところ、これに対し、同年6月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月24日付けで拒絶の理由(以下「第2回当審拒絶理由通知」という。)を通知したところ、これに対し、同年10月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成30年10月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の【請求項1】に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 トレーニング中の運動中に使用者の現在の運動状態の情報である運動情報を取得し、取得した運動情報に基づく情報を前記トレーニング中の運動中に当該トレーニング中の運動中の使用者に対して出力する機能を有する制御手段を備え、 前記制御手段は、前記使用者の前記トレーニング中の運動中の所定時間毎の前記運動情報のログ情報に基づき対応する乳酸値の情報を前記トレーニング中の運動中に当該トレーニング中の運動中の使用者に対して出力する機能を備えることを特徴とするシステム。」(以下、「本願発明」という。) 第3 当審における拒絶の理由(第2回当審拒絶理由通知) 1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 ・請求項1?11に対する実施可能要件について 本願明細書の発明の詳細な説明には、請求項1?11に係る発明における「経過時間および運動情報(心拍)に基づき乳酸値の情報を出力する」ことについて、「計算式で算出する」、「テーブル等で決定する」とだけしか記載されておらず(【0094】参照。)、乳酸値の情報の出力に経過時間をどの様に用いているのかが不明であり、当業者が容易に実施し得る程度に記載されているものとは認められない。 「経過時間および運動情報(心拍)に基づき乳酸値の情報を出力する」ことが技術常識であるのであれば、公知文献等を示した上で、立証されたい。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 :1?11 ・引用文献等:特開2001-299709号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1.引用刊行物の記載 当審拒絶理由通知で引用し、本願の原出願の出願日前である平成13年10月30日に頒布された刊行物である特開2001-299709号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (1)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 防水性を有する本体と、この本体の表面に形成されたパネルから外部に臨むようにして本体内に設けられた脈拍センサと、この脈拍センサによって検知した脈拍データを取得して表示部に表示するよう制御する制御部と、 外部装置との間で通信を行うための通信部とを備え、 上記制御部は、上記脈拍センサによって検知された脈拍データを、上記通信部を介して上記外部装置に送信することを特徴とする、脈拍計。 … 【請求項6】 外部装置としての中央管理装置と、この中央管理装置に接続された複数の、請求項1ないし5のいずれかに記載の脈拍計とを備えた脈拍計測システムであって、 上記中央管理装置は、上記複数の脈拍計から送信される脈拍データおよびデータを受信し、受信したこれらのデータに基づいてデータ処理を行うデータ処理部を備えることを特徴とする、脈拍計測システム。」 (2)「【0001】 【発明の属する技術分野】本願発明は、脈拍計およびこれを用いた脈拍計測システムに関する。」 (3)「【0021】図1は、本願発明に係る脈拍計を用いた脈拍計測システムの概略構成図である。この脈拍計測システムは、中央管理装置としてのホスト1と、このホスト1に対して通信可能に接続された複数の脈拍計2とによって構成されている。上記ホスト1および各脈拍計2は、たとえば無線によって一対多接続の通信が可能とされている。」 (4)「【0049】次に、CPU35は、脈拍データが入力されたか否かの判別処理を行う(ステップS3)。すなわち、脈拍センサ26によって脈拍データが検知され、脈拍センサ26からアナログ回路部37を介してCPU35に対して上記脈拍データが送られたか否かの判別処理が行われる。ここで、使用者が指先を第1パネル21に対して所定時間押し当てると、脈拍センサ26によって脈拍が検知される。この検知信号は、アナログ回路部37に送られ、アナログ回路部37においてCPU35で処理できる処理信号に変換され、その後CPU35に送られる。脈拍データがCPU35に送られると、CPU35は、脈拍データが入力されたと判別し(ステップS3:YES)、その脈拍データから所定時間における脈拍計を求め、一旦、メモリ36に記憶させる(ステップS4)。」 (4)「【0055】また、脈拍計2では、上記のように、取得した脈拍データをその都度、ホスト1に送るようにしてもよく、所定数の脈拍データをある程度メモリ36に記憶させておき、その後、一度に所定数の脈拍データをホスト1に送るようにしてもよい。これにより、通信の効率化を図ることができる。 【0056】上記データを受信したホスト1では、上記IDデータを認識することにより、送られた脈拍データがどの使用者の脈拍データであることが判別できる。また、ホスト1では、この脈拍データから推定乳酸値を算出する等の処理を行う。そして、たとえば図8に示すように、使用者ごとの脈拍値、推定乳酸値等をディスプレイ16に表示させる。あるいは上記値をグラフ化した図等を表示させるようにしてもよい。… 【0057】このように、各脈拍計2によって計測された脈拍データは、無線通信によってホスト1に送られ、ホスト1では、上記脈拍データに基づいて所定のデータ処理を行い、その結果を表示あるいは印刷する。したがって、この表示あるいは印刷により、指導者等は、たとえばトレーニング中の使用者に対してアドバイスや指導をリアルタイムで行うことができる。」 (5)上記(1)及び(4)より、【請求項6】の「中央管理装置は、上記複数の脈拍計から送信される脈拍データおよびデータを受信し、受信したこれらのデータに基づいてデータ処理を行う」は、発明の詳細な説明の【0056】における、ホスト1では、この脈拍データから推定乳酸値を算出する等の処理を行うに対応する。 上記記載から、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「外部装置としての中央管理装置と、この中央管理装置に接続された脈拍計とを備えた脈拍計測システムであって、 脈拍計は、防水性を有する本体と、この本体の表面に形成されたパネルから外部に臨むようにして本体内に設けられた脈拍センサと、この脈拍センサによって検知した脈拍データを取得して表示部に表示するよう制御する制御部と、中央管理装置との間で通信を行うための通信部とを備え、上記制御部は、上記脈拍センサによって検知された所定数の脈拍データをある程度メモリに記憶させておき、その後、一度に所定数の脈拍データを上記通信部を介して上記中央管理装置に送信するものであって、 中央管理装置では、この脈拍データから推定乳酸値を算出する等の処理を行い、使用者ごとの脈拍値、推定乳酸値等をディスプレイに表示させ、あるいは上記値をグラフ化した図等を表示させるようにし、 指導者等は、トレーニング中の使用者に対してアドバイスや指導をリアルタイムで行うことができる、脈拍計測システム。」 第5 対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 1.本願発明の「運動中」について、本願明細書には、トレーニング中との差異を含めた定義がなされているものではないから、本願発明の「トレーニング中の運動中」とは、実質的に「トレーニング中」と解し得る。そうすると、後者の「トレーニング中の使用者」は、前者の「トレーニング中の運動中の使用者」に相当する。 2.後者の「脈拍データ」は、トレーニング中の使用者からのものであるから、後者の「脈拍データ」自体は、前者の「運動状態の情報である運動情報」に相当する。また、後者の「脈拍データ」は、トレーニング中の使用者から脈拍センサによって検知したものという、その入手手法の観点に立てば、「取得した運動情報」ともいえる。 3.後者の「推定乳酸値」は、脈拍データから算出するものであるから、前者の「運動情報に基づき対応する乳酸値の情報」に相当する。また、前者の「取得した運動情報に基づく情報」に包含されるものともいえる。 4.後者の「中央管理装置」は、「脈拍データから推定乳酸値を算出する等の処理を行い、使用者ごとの脈拍値、推定乳酸値等をディスプレイに表示させ、あるいは上記値をグラフ化した図等を表示させ」るようにし、「指導者等は、トレーニング中の使用者に対してアドバイスや指導をリアルタイムで行うことができる」ものであるから、前者の「取得した運動情報に基づく情報を前記トレーニング中の運動中に出力する機能を有する制御手段」に相当する。そして、後者の「脈拍計測システム」は、「中央管理装置」と「中央管理装置に接続された脈拍計」とを備えたものであるから、前者の「システム」に相当する。 したがって、両者は、 「トレーニング中の運動中に使用者の現在の運動状態の情報である運動情報を取得し、取得した運動情報に基づく情報を前記トレーニング中の運動中に出力する機能を有する制御手段を備え、 前記制御手段は、前記使用者の前記トレーニング中の運動中の前記運動情報に基づき対応する乳酸値の情報を前記トレーニング中の運動中に出力する機能を備えるシステム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明が、取得した運動情報に基づく情報を前記トレーニング中の運動中に「当該トレーニング中の運動中の使用者に対して」出力するものであるのに対し、引用発明は、指導者等に表示させるものである点。 [相違点2] 本願発明の乳酸値が、「所定時間毎の前記運動情報のログ情報」に対応するものであるのに対して、引用発明の乳酸値は、脈拍データから算出したものである点。 第6 判断 上記各相違点について検討する。 1.[相違点1]について 引用発明のディスプレイの表示は、脈拍計に接続された中央管理装置のディスプレイで指導者等に対して表示させるものであるところ、使用者に対して表示させることを妨げるものではないことは明らかであって、本願の原出願の出願日時点で、自転車を走行させる者の現在の脈拍数を測定する脈拍測定手段と、前記脈拍数測定手段により測定された現在の脈拍数を記憶するとともに自転車を走行させている者に表示する表示手段とを備えた装置が周知の技術手段(例えば、本願の先行技術文献である特開平7-17461号公報(【0014】)参照。以下「周知の技術手段」という。)であるから、引用発明において、前記周知の技術手段を参酌し、ディスプレイの表示をトレーニング中の運動中の使用者に対して表示させるようにし、前記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そうすると、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び上記周知の技術手段から、当業者が容易に想到し得るものである。 2.[相違点2]について 引用発明は、検知された所定数の脈拍データをある程度メモリに記憶させておくものであるから、引用発明の脈拍データは「ログ情報」といえる。 ここで、引用発明は、所定数の脈拍データから算出した推定乳酸値をグラフ化した図等で表示させるものであるから、引用発明の所定数の脈拍データは、複数のデータであって、所定数の脈拍データから算出した推定乳酸値も複数の値であることは明らかである。 そして、運動量測定装置の技術分野において、複数の値をグラフ化した図等で表示させる際に、複数の値を所定時間毎に取得したものとすることは、通常行われていることであるから、推定乳酸値を算出するための脈拍データが所定時間毎に取得したものとすることは、運動量測定装置の技術分野において、自明の事項であるか、少なくとも、当業者が容易になし得るものである。 そうすると、上記相違点2に係る本願発明の「所定時間毎の運動情報のログ情報」は、引用発明に実質的に記載されているか、引用発明から当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明及び上記周知の技術手段から、当業者が予測しうる範囲内のものである。 よって、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-01-07 |
結審通知日 | 2019-01-08 |
審決日 | 2019-01-22 |
出願番号 | 特願2016-66942(P2016-66942) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(A63B)
P 1 8・ 121- WZ (A63B) P 1 8・ 113- WZ (A63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤井 達也 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 森次 顕 |
発明の名称 | システム、電子機器及びプログラム |