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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J
管理番号 1349632
審判番号 不服2017-8205  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-07 
確定日 2019-03-06 
事件の表示 特願2013-527680「触媒製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月15日国際公開、WO2012/032325、平成25年10月 7日国内公表、特表2013-537847〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2011年8月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2010年9月8日、英国)を国際出願日とする出願であって、原審にて平成29年1月31日付けで拒絶査定がされ、同年6月7日にこの査定を不服とする本件審判の請求がされると同時に手続補正がされ、これに対し、当審にて平成30年1月17日付けで拒絶理由を通知したところ、同年7月19日付けで意見書の提出と共に手続補正がされたものである。

第2.本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年7月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。

「3Dプリンティング添加剤層法を使用する断面サイズ範囲1-50mmでアスペクト比範囲0.5から5の粒子触媒の製造方法であって、
(i)アルミナ、金属-アルミネート、シリカ、アルミノ-シリケート、チタニア、ジルコニア、亜鉛酸化物、又はそれらの混合物から選択される粉末化触媒担体材料の層を形成し、
(ii)予め定められたパターンに従って上記層中の粉末を結合させ、各層の粉末がバインダーと共に結合され、得られる成形ユニットの細孔度を制御するためにバインダー中にバーンアウト添加剤が含まれ、
(iii)(i)及び(ii)を繰り返して何層も重ねて成形ユニットを形成し、
(iv)成形ユニットを加熱工程に供し、
(v)上記成形ユニットに金属、金属化合物又はゼオライトを含む触媒材料の分散体を適用する、
ことを含み、
成形ユニットが、複数の内部強化ロッドを有しうる空隙空間を含むワイヤフレーム構造又は骨格フレームワークであり、
成形ユニットが貫通孔を有する中実ユニットである、
方法。」

第3.当審拒絶の理由

当審にて通知した拒絶理由の一つは、
国際公開第2009/047141号(以下、「引用例1」という。)
特許第2862674号公報 (以下、「引用例2」という。)
国際公開第1995/011752号(以下、「引用例3」という。)
を引用し、
「本願発明は、その(優先権主張の基礎とされた先の)出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その(優先権主張の基礎とされた先の)出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものである。

第4.引用例の記載

引用例1

摘示1-1(3頁33行-4頁2行)

(当審訳)
「R. Knitter et al.は、特に、Galvanotechnik 1/2004, p. 196 - 204にマイクロリアクター技術に使用するためのセラミック反応器を記載している。この成形は、この場合、ラピッドプロトタイピングプロセス系列によって行い、その際、ただし付加的中間工程として、1.)ステレオリソグラフィーにより得られたプラスチックからなるマスターモデルをシリコーン型に複写し、これを次いで、2.)充填用の型として、セラミックスリップを用いた低圧射出成形を行う。得られたセラミックマイクロリアクターは特に触媒担体として用いられ、この触媒担体上に本来の触媒が例えば懸濁液として塗布される。この製造方法の欠点は、注型の形で最終的な生産を行う前に、まず雌型を製造する付加的な方法工程を行うことである。」

摘示1-2(6頁26-39行)

(当審訳)
「製造
本発明により使用されるべきラピッドプロトタイピング法は、周知のように、個々の層から所望の成形体が完全に構築されるまでしばしば繰り返される後続の工程からなる。粉末状の出発材料又は出発材料混合物は、支持体上に薄い層の形で設けられ、引き続き前記層の選択された箇所に結合剤及び場合により必要な助剤が添加されるか、又は照射されるか又は他の方法で処理されるため、前記粉末は前記箇所で結合し、それにより前記粉末は前記層内でも、隣接する層とでも結合する。この手順を繰り返して、加工品の所望の形を形成された粉末床中に完全に写し取った後に、前記結合剤により結合されていない粉末を除去し、所望の形に結合した粉末が残留する。」

摘示1-3(7頁25-31行)

(当審訳)
「前記結合剤の適用は、例えば、できる限り小さな液滴の結合剤の粉末層上での正確な位置決めが可能であるノズル、印刷ヘッド又は他の装置を介して行われる。粉末量対結合剤量の比率は、使用された物質に依存して可変であり、一般に約40:60?約99:1質量部の範囲内、有利に約70:30?約99:1質量部の範囲内、特に有利に約85:15?約98:2質量部の範囲内にある。」

摘示1-4(11頁41行-12頁18行)

(当審訳)
「成形体の作成後に、この成形体は場合により熱処理にかけられ、これは、多段階で又は温度プログラムもしくは温度プロフィールによって行うこともできる。一般に、この熱処理は、約300?2100℃の範囲内で行われる。例えば、粉末床を、その中に存在する成形体と共にまず300?700℃、有利に300?550℃の範囲内の温度に加熱することができる。その際、結合剤の架橋が、加水分解及び/又は例えば水又はアルコールの脱離下での縮合により完全にされ、及び有機成分は、少なくとも部分的に酸化により除去することができる。その後に、一般に900?2100℃、有利に1100?1800℃の温度への加熱を有する第2の温度段階が引き続くことができる。この場合、粉末粒子を相互に結合させ、かつ前記成形体の機械的強度を高める焼結の範囲内である。焼結プロセスにおいて所定の収縮が生じることがあり、これはCADモデルにより印刷の際に考慮されるべきである。結合剤により結合されていない粉末は、遅くともこの焼結プロセスの前に除去しなければならず、この除去は例えば圧縮空気又は吹き飛ばしにより行うことができる。次いで、結合された粉末が所望の形状で残留する。第2の温度段階は、生じる材料が高い気孔率又は低い気孔率を有するように選択することができる。接触反応の必要性に応じて、材料の機械的安定性、構造及び気孔率はこの段階により最適化することができる。」

摘示1-5(12頁20行-13頁20行)

(当審訳)
「本発明の実施態様の場合に、製造された成形体自身が触媒活性である。本発明の他の実施態様の場合に、製造された成形体は触媒用の担体として利用される。
前記成形体の本発明による作成の後に、前記成形体を場合により少なくとも1種の(他の)触媒活性成分の塗布により変性することができる。前記成分は、例えば、金属塩、例えば鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、クロム、バナジウム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、マンガン、亜鉛、パラジウム、ロジウム、銀、金、タングステン、白金、ビスマス、スズ、カリウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、セレン、アンチモン、ランタン、セリウム、イットリウム等のような元素の水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩又は炭酸塩である。前記塩の混合物を使用することもできる。アルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、タングステン酸アルミニウム又はバナジン酸アルミニウムも、ヘテロポリ酸又はその塩、例えばタングステン酸リン酸、モリブドケイ酸等も変性のために使用することができる。この触媒活性成分は、例えば成形体を前記金属塩の水溶液及び/又は有機溶液で含浸させることによって塗布することができる。必要な場合に、前記含浸に引き続き、熱処理を行うことができ、その際に、塗布された金属塩は活性化もしくは分解される。前記成形体の作成後にも、ウォッシュコートを当業者に公知の組成及び方法で塗布することができる。
触媒としての使用
こうして得られた触媒特性を有する成形体は、多くの化学反応のための反応器内部構造として使用することができる。この場合、一般に、不均一系触媒を用いて運転する全ての反応器、例えば固定層反応器、移動層反応器、管束型反応器、塩浴反応器又は流動層反応器を使用することができ、もしくは反応蒸留又は反応抽出において使用することもできる。一般に、触媒による反応を必要とする全ての方法技術的操作も可能である。連続的反応用の反応器が有利である。」

摘示1-6(17頁15-44行)

(当審訳)
「実施例
実施例1:
図1による三次元的に構造化された形「クロスチャンネル構造」を、α-Al_(2)O_(3)から製造した。この長さは50mmであり、直径は14mmである。
基本的に、酸化アルミニウム顆粒CT 3000 SDP(Almatis社、67065 Ludwigshafen)を、Turbulaミキサ(Willy A. Bachofen AG, 4058 Basel,スイス国)を用いて、固体結合剤キサンタン、200メッシュ(Koenig & Wiegand, 40472 Duesseldorf)と混合する。この固体結合剤の割合は、酸化アルミニウムに対して10質量%である。この三次元的印刷を、Zプリンター310(Z-Corporation, Burlington, MA 01803, USA)を用いて、水ベースの結合剤溶液ZB54(Z-Corporation, Burlington, MA 01803, USA)の使用下で実施した。この液状の結合剤の2%を使用した。印刷後に、この部材をまず60℃で8時間乾燥し、次いで圧縮空気で吹き飛ばした。このセラミック焼成を1600℃で2時間の保持時間で行った。
実施例2:
ビーカーガラス中で、Bi(NO_(3))_(3)・5H_(2)O 3.12gをPd(NO_(3))_(2)・2H_(2)O 3.36g及びCo(NO_(3))_(2)・6H_(2)O 48.6mgを装入する。これに蒸留水18.17g並びに濃硝酸9.08gを添加し、全てを1時間撹拌する。ペトリ皿中に、実施例1でラピッドプロトタイピングにより作成された、全体で42.8gの質量を有するAl_(2)O_(3)成形体の7個を装入し、金属硝酸塩の溶液を添加する。この成形体を溶剤中で全て30分間回転させ、3時間後に前記溶液から取り出す。引き続き、この成形体を乾燥し(120℃で4時間)及びか焼する(2K/minの加熱時間で500℃まで、500℃で10時間維持する)。総質量44.0gの7個の成形体が得られ、これらはBi 1.4%、Pd 1.4%及びCo 0.01%を有する。」

摘示1-7(図1)


引用例2

摘示2-1(21欄38行?22欄13行)
「適当な補強はたとえば、印刷プロセス自体によって実施される結合機構よりも弱く、あるいは永久的でない何らかの機構を使用して、押し広げられた層で粒子を連結することによって得ることができる。そのような連結を確立する1つの方法は、層中の粒子間にボンドを形成するためのエネルギーを与えることによるものである。たとえば、粉体層がアルミナとワックスの複合材料から成る場合、フラッシュ加熱を使用して1番上の層中のワックスを融解して多孔性マトリックスを形成することができる。前の例のように、コロイド・シリカの結合剤による印刷によって部品が形成され、印刷後の焼成による蒸発または熱分解によってワックスが除去され、それによって、余分の材料粒子を容易に除去することができる。しかし、選択された領域にシリカが存在するので、印刷された部品は残る。印刷すべき層の凝集性は、わずかな湿潤によって得ることもできる。少量の液体で粒子表面が湿潤し、液体は、粒子間の次の接触点に優先的に偏折する。液体の表面張力によって発生する毛管応力は、粒子を分離するのに必要とされる応力を増大する。したがって、少量、すなわち、層の基本的に多孔性の性質を破壊しない量の液体のみを添加することによって、層の凝集力は大幅に増加する。たとえば、流動性の高い球形金属粒子層は、単なる水のミスチングによってかなり補強することができる。したがって、印刷はラテックスを使用して実施できる。印刷されていない領域を除去した後、加熱によって部品を焼結することができる。」

引用例3

摘示3-1(8頁2-3行)
「Fig. 1. An illustrative representation of the localized microstructure of an open cell foam structure.」
(当審訳)
「図1.オープンセル発泡体構造の局所的微細構造の図示。」

摘示3-2(18頁34行-20頁14行)
「Example 1
Polyurethane foam having an average cell diameter of 2.5- 3 mm was cut to prepare blanks with dimensions of 35 x 35 x 25 mm. A porcelain compound obtained from Kamcable Co. (Perm, Russia) and comprising 66.52% Si0_(2), 27.15% A1_(2)0_(3), 0.37% Fe0_(3), 0.17% Ti0_(2) 1.44% CaO, 0.73% MgO, 2.42% K_(2)0 and 1.20% Na_(2)0 was mixed with water and a binding agent, in this case, polyvinyl alcohol, to form a slip composition. The polyvinyl alcohol had an average molecular weight of 500 and was obtained from Fluka Chemie A.G. (Switzerland) .

The polyurethane foam blanks were soaked in the slip composition to coat the exposed surfaces of the polyurethane foam with slip. The excess slip was removed by squeezing and the blanks were allowed to dry to form dried blanks having a density of 0.1, 0.2, 0.3, 0.4 and 0.5 g/cm^(3), respectively.

This process was followed by the preparation of a second slip composition containing substantially the same composition as the first slip composition, that is, a porcelain compound mixed in a water solution containing polyvinyl alcohol, but which, in addition, also included a pore-forming additive, polymethyl methacrylate (PMMA) . The particles of PMMA were 10 to 100 microns in size, predominantly 20 to 30 microns in size, and amounted to 15, 30, 50, 80 and 85 weight percent of the total quantity of ceramic powder.

Slip from the second slip composition was deposited on the dried blanks by dipping or spraying and the coated blanks were provided with a heat treatment that sintered the materials to produce the highly porous open cell foam structures to be used as catalysts or catalyst supports. The heat treatment conditions were selected so as to provide a gradual burn-out of the polyurethane foam blanks and of the particles of PMMA used as the pore- forming additive. The heat treatment was also intended to insure that the shape and permeability remained unchanged. To achieve these objectives, the highly porous open cell foam structures prepared from the porcelain mixture were sintered at temperatures from 1320 to 1420 °C.

Analyses of the highly porous open cell foam structures with a scanning election microscope demonstrated that the highly porous open cell foam structures produced by this method have a micro-rod structure without a visually detectable boundary interface between the low porosity inner core and the high porosity outer layer.

To test the suitability of using these sintered materials as catalyst supports, they were measured for compression strength and for water absorption, as shown in Table 1. 」

(当審訳)
「実施例1
平均セル径2.5- 3mmを備えたポリウレタン発泡体を切断して、35×35×25mmの寸法を有するブランクを調製した。Kamcable Co. (Perm, ロシア)から入手した、66.52%のSiO_(2)、27.15%のAl_(2)O_(3)、0.37%のFe0_(3)、0.17%のTiO_(2) 1.44%のCaO、0.73%のMgO、2.42%のK_(2)0及び1.20%のNa_(2)0を含む磁器組成物を、水と、この場合、ポリビニルアルコールである結合剤と混合し、スリップ組成物を形成した。ポリビニルアルコールの平均分子量は500であり、Fluka Chemie社(スイス)から入手した。

ポリウレタン発泡体ブランクはスリップ組成物に浸漬して、ポリウレタン発泡体の露出面をスリップで覆った。脱水によって過剰なスリップを除去し、ブランクを、密度がそれぞれ0.1、0.2、0.3、0.4、および0.5g/cm^(3)の乾燥したブランクとなるように乾燥させた。

このプロセスに続いて、第1のスリップ組成物と実質的に同じ組成を含む第2のスリップ組成物、すなわちポリビニルアルコールを含む水溶液中に混合された磁器組成物を調製したが、それに加えて、細孔形成添加物となるポリメチルメタクリレート(PMMA)も含む。PMMAの粒子サイズは、10?100ミクロンであり、主たるサイズが20?30μm、セラミック粉末の合計量の15,30, 50, 80,85質量%であった。

第2のスリップ組成物からのスリップは、浸漬または噴霧によって乾燥ブランク上に堆積され、コーティングされたブランクは、触媒または触媒支持体として使用される高多孔質オープンセル発泡体を製造するために材料を焼結する熱処理を施された。熱処理条件は、ポリウレタン発泡体ブランクおよび細孔形成添加物として使用されるPMMAの粒子の漸進的な燃焼を提供するように選択された。熱処理は、形状と透磁率が変化しなかったことを保証するために意図されたものである。これら目的を達成するために、高多孔質オープンセル発泡体構造は、1320?1420℃の温度で焼成された磁器組成物から調製された。

走査型電子顕微鏡による高多孔質オープンセル発泡体構造の分析は、この方法によって製造された高多孔質オープンセル発泡体構造が、低多孔質内側コアと高多孔質外側層との間に視覚的に検出可能な境界界面を有さないマイクロロッド構造を有することを実証した。

これらの焼結材料を触媒担体として使用する適性を試験するために、表1に示すように、圧縮強度および吸水性について測定した。」

摘示3-3(図1)


第5.引用発明の認定

引用例1には、実施例1,2として、長さ50mm直径14mmのクロスチャンネル構造成形体(摘示1-7)の三次元印刷を使用した製造方法として、固体結合剤と酸化アルミニウムを混合し、プリンターを用い、水ベースの結合剤溶液を使用して三次元印刷をし、60℃で乾燥し、1600℃で焼成し、得られた成形体にBi,Pd,Coの金属硝酸塩の溶液を添加すること(摘示1-6)が記載されており、この三次元印刷を用いたラピッドプロトタイピング法について、出発材料混合物で層を形成し、選択された箇所に印刷ヘッドで結合剤を添加して粉末を結合する手順を繰り返すこと(摘示1-2,1-3)、また、金属塩の溶液の添加により、成形体を触媒担体として利用し、触媒特性を有する成形体となること(摘示1-5)も記載されている。
以上のことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「三次元印刷ラピッドプロトタイピング法を使用する長さ50mm直径14mmの触媒特性を有するクロスチャンネル構造成形体の製造方法であって、
I)固体結合剤と酸化アルミニウム粉を混合して、触媒担体となる混合物の層を形成し、
II)選択された箇所に、印刷ヘッドで水ベースの結合剤溶液を添加して、粉末を結合し、
III)I)II)を繰り返して成形体を形成し、
IV)得られた成形体を60℃で乾燥し、1600℃で焼成し、
V)焼成後の成形体にBi,Pd,Coの金属硝酸塩の溶液を添加する、
ことを含む方法。」

第6.発明の対比

本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「三次元印刷ラピッドプロトタイピング法」は、本願発明の「3Dプリンティング添加剤層法」に相当し、以下、「固体結合剤」が「バインダー」、「酸化アルミニウム粉」は「アルミナ」、「触媒担体となる混合物の層」は「粉末化触媒担体材料の層」、「選択された箇所に、印刷ヘッドで水ベースの結合剤溶液を添加して、粉末を結合」は「予め定められたパターンに従って上記層中の粉末を結合させ、各層の粉末がバインダーと共に結合」、「I)II)を繰り返して」は「(i)及び(ii)を繰り返して何層も重ねて」、「成形体」は「成形ユニット」、「60℃で乾燥し、1600℃で焼成し」は「加熱工程に供し」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「長さ50mm直径14mmの触媒特性を有するクロスチャンネル構造成形体」は、その長さと直径からアスペクト比約3.6であるから、本願発明の「断面サイズ範囲1-50mmでアスペクト比範囲0.5から5の粒子触媒」に相当する。
してみると、本願発明のうち、
「3Dプリンティング添加剤層法を使用する断面サイズ範囲1-50mmでアスペクト比範囲0.5から5の粒子触媒の製造方法であって、
(i)アルミナから選択される粉末化触媒担体材料の層を形成し、
(ii)予め定められたパターンに従って上記層中の粉末を結合させ、各層の粉末がバインダーと共に結合され、
(iii)(i)及び(ii)を繰り返して何層も重ねて成形ユニットを形成し、
(iv)成形ユニットを加熱工程に供する、
ことを含む
方法。」
の点は引用発明と一致し、次の点で両者は相違する。

相違点1:本願発明が、「得られる成形ユニットの細孔度を制御するためにバインダー中にバーンアウト添加剤を含」むのに対し、引用発明が、当該添加剤を含まない点。

相違点2:本願発明が、「成形ユニットに、金属、金属化合物又はゼオライトを含む触媒材料の分散体を適用する」のに対し、引用発明が、成形体に金属硝酸塩の溶液を添加する点。

相違点3:本願発明の「成形ユニットが、複数の内部強化ロッドを有しうる空隙空間を含むワイヤフレーム構造又は骨格フレームワークであり、成形ユニットが貫通孔を有する中実ユニットである」のに対し、引用発明の成形体がクロスチャンネル構造である点。

第7.相違点の判断

相違点1について
引用例1には、引用発明において、焼成温度によって成形体の気孔率を選択していること(摘示1-4)が記載されている。これに対し、引用例2には、三次元印刷法において、粉体層に焼成中に蒸発するワックスを複合することで多孔質マトリックスを形成できること(摘示2-1)が記載され、引用例3には、触媒担体の製造方法において、結合剤であるポリビニルアルコールに焼成中に燃焼するポリメチルメタクリレート(PMMA)を細孔形成添加物として添加することで高多孔質の外側層が形成できること(摘示3-2)が記載されている。
してみると、三次元印刷を用いた触媒担体の製造方法である引用発明において、焼成温度だけでなく、焼成時に燃焼や蒸発する添加剤も用いて気孔率を調製することは、引用例2,3等の記載から、当業者が容易になし得たことといえる。

相違点2について
引用例1には、従来技術として、触媒担体に触媒を懸濁液として塗布すること(摘示1-1)も記載されており、金属硝酸塩の溶液に代え、触媒となる金属の分散体を懸濁液として適用することは、当業者が適宜なし得たことといえる。

相違点3について
本願明細書の【0017】には、成形ユニットの構造について、
「・・・例えば、成形ユニットは、内部に空間を含むワイヤフレーム又は骨格フレームワーク構造の形態であり得、あるいは成形ユニットは任意の形態のハニカム又は中実のユニット、例えばドーム状端部、複数の突出部(ローブ)及び/又は貫通孔を伴って構成されうるシリンダーでありうる。」
と記載されている(下線は当審にて付記)から、本願発明において、「複数の内部強化ロッドを有しうる空隙空間を含むワイヤフレーム構造又は骨格フレームワーク」と「貫通孔を有する中実ユニット」は、成形ユニットの構造を選択的に特定したものと解される。
してみると、引用発明のクロスチャンネル構造(摘示1-7)が、貫通孔を有する中実ユニット(ハニカム)に相当することは明らかだから、相違点3は実質的な差異ではない。

そして、引用発明において、相違点1,2を共に解消することに格別の困難性はないし、本願発明において、相違点1,2により顕著な効果があるとは認められない。
したがって、本願発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

請求人の主張について
請求人は意見書で、本願明細書の【0040】に記載されている、成形ユニットがワイヤフレーム構造をもつ実施例1の効果を根拠に、本願発明の進歩性を主張しているが、相違点3で検討したように、本願発明の成形ユニットはワイヤーフレーム構造に限定されているわけではない。さらに、当該効果は、ペレットと比較しての効果にすぎず、引用発明のクロスチャンネル構造成形体と比較して顕著な効果があることを意味するわけではない。
また、引用例3に記載されたオープンセル発泡体構造(摘示3-1,3-3)について、マイクロレベルのサイズを有するから、本願発明のワイヤーフレーム構造とは異なるとも主張しているが、引用例3には、オープンセル発泡体構造を35×35×25mmの寸法を有する発泡体ブランクを型にして製造したこと(摘示3-2)が記載されているから、該構造は、ミリレベルのサイズをもつ触媒担体構造であって、本願発明のワイヤーフレーム構造に相当するものといえる。
してみると、雌型なしに所望の成形が可能な三次元印刷(摘示1-1,1-2)を用いた触媒担体の製造方法である引用発明において、クロスチャンネル構造と同様にミリレベルのサイズを有するオープンセル発泡体構造の触媒担体を製造することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。すなわち、仮に、本願発明の成形ユニットがワイヤフレーム構造に限定されていたとしても進歩性を有するとはいえない。
したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。

第8.むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、当審拒絶の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-04 
結審通知日 2018-10-09 
審決日 2018-10-22 
出願番号 特願2013-527680(P2013-527680)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大城 公孝後藤 政博  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 大橋 賢一
山崎 直也
発明の名称 触媒製造方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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