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審決分類 審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1349634
審判番号 不服2017-11314  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-31 
確定日 2019-03-06 
事件の表示 特願2015-238132「変更要求フォームの注釈」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 66368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
(1)本願の経緯
(1-1)本願の分割に至る経緯
本願は、2003年(平成15年)12月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年3月12日、米国)を国際出願日とする特願2004-569430号の一部を数次の分割を経て、平成27年12月7日に新たな特許出願としたものであって、その分割に至る経緯は以下のとおりである。

平成15年12月30日:特願2004-569430号の国際出願(以下、「親出願」という。)
平成21年12月25日:親出願の一部を特願2009-293590号(以下、「子出願」という。)として分割
平成25年 6月 6日:子出願の一部を特願2013-119607号(以下、「孫出願」という。)として分割
平成27年12月 7日:孫出願の一部を特願2015-238132号(本願。以下、「曾孫出願」ともいう。)として分割

(1-2)本願の手続の経緯
本願の出願後の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成27年12月14日:手続補正書の提出
平成28年 4月 4日:拒絶理由通知書
平成28年 9月13日:意見書の提出
平成28年 9月29日:拒絶理由通知書
平成29年 3月30日:意見書、手続補正書の提出
平成29年 4月 6日:拒絶査定
平成29年 4月12日:拒絶査定の謄本の送達
平成29年 7月31日:審判請求書の提出
平成30年 6月 5日:拒絶理由通知書(当審)
平成30年 9月 4日:意見書、手続補正書の提出

(2)子出願の手続の経緯
子出願である特願2009-293590号の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成21年12月25日:親出願の一部を分割して出願
平成24年 2月 7日:拒絶理由通知
平成24年 7月18日:意見書、手続補正書の提出
平成24年 8月 2日:拒絶理由通知(最後)
平成25年 2月 1日:意見書の提出
平成25年 2月18日:拒絶査定
平成25年 6月 6日:審判請求書の提出
平成26年 2月 4日:拒絶理由通知(最後)
(特許法第17条の2第3項第29条第2項第36条第6項第2号)
平成26年 9月24日:審決
平成27年 2月 5日:審決の確定

そして、平成26年2月4日付け拒絶理由通知(最後)の概要は、以下のとおりである。

『理由1
平成24年7月18日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

理由2
この出願の請求項1-27に係る発明は、特表2006-514493号公報に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
備考
本出願は、出願の分割の要件を満たしていないので、出願日は、現実の出願日である平成21年12月25日となる。

理由3
この出願の請求項1-29に係る発明は、特開2000-285135号公報に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由4
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。』

また、平成26年9月24日付け審決は、以下のとおりであり、平成27年2月5日に審決は確定した。

『結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理 由
本願は、平成21年12月25日の出願である。
これに対して、平成26年2月4日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。
そして、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。』

第2 出願日について
(1)子出願の出願日について
子出願に係る発明は、平成24年7月18日付け手続補正書により補正され、平成26年2月4日付け拒絶理由通知(最後)で通知されたように、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「出願当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものといえず、親出願の出願当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないこととなった。
そして、平成26年2月4日付け拒絶理由通知(最後)に対しての補正がされなかったので、当審は、拒絶理由は妥当なものと認め、拒絶すべきものである旨の審決を平成26年9月24日付けで行い、平成27年2月5日に審決が確定した。
そうすると、子出願における平成24年7月18日付け手続補正書により補正された発明は、もはやこれ以上の補正がされる余地はなく、子出願に係る発明は、親出願の出願当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないこととなった。
したがって、子出願が分割の実体的要件を満たさないことは明らかである。
よって、子出願の出願日は、平成26年9月24日付け審決に記載したように、現実の出願日である平成21年12月25日である。

(2)本願(曾孫出願)の出願日について
上記(1)のとおり、子出願が分割の実体的要件を満たさないことは明らかであり、子出願の出願日は、平成21年12月25日であるから、曾孫出願である本願の出願日が親出願の出願日まで遡及する余地はない。
そして、子出願から孫出願への分割、孫出願から曾孫出願への分割は、適法に分割されているといえる。
したがって、曾孫出願である本願の出願日は、子出願の出願日である平成21年12月25日である。

(3)本願の出願日に関する平成30年9月4日付け意見書の主張について
審判請求人は、本願の出願日について、平成30年9月4日付け意見書において、以下のような主張をしている。

『子出願(特願2009-293590)の平成24年7月18日付け手続補正書で「前記文書は前記ユーザ以外の者によって作成された完成文書である」との事項が追加され、平成26年2月4日付け拒絶理由通知書でこの事項が原出願の出願当初の明細書等の範囲内でない等の指摘がされましたが、請求人は応答せず、拒絶審決が確定しました。拒絶審決は、「上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。」と述べていました。
一般論として、出願人や審判請求人が拒絶理由に応答しないことは、必ずしも拒絶理由が妥当であることを認めたものではありません。
また、特許出願の拒絶が確定したということは、必ずしも拒絶理由に書かれていたことがすべて事実として確定したことを意味するものでもありません。「事実」に反する内容が書かれていた拒絶理由による拒絶が確定したとしても、「事実」が否定されるわけではありません。

当該子出願の場合、請求人は子出願の審査過程で述べたように「前記文書は前記ユーザ以外の者によって作成された完成文書である」ことが原出願の出願当初の明細書等の範囲内であることは事実であると考えています。よって、子出願の拒絶が確定したこと自体をもって、その事実を変えることはできないと考えます。よって、子出願の拒絶を覆すことはできませんが、子出願は分割の実体的要件を満たしていました。そして、拒絶理由通知書でも認められているように、子出願から孫出願への分割、孫出願から曾孫出願への分割は適法になされているので、本願の出願日は親出願の出願日まで遡及します。』

しかしながら、子出願の審理を行った合議体(以下、「当該合議体」という。)は、平成26年2月4日付け拒絶理由通知書で、子出願が親出願に対し分割要件を満たさないとの判断を示し、請求人に意見書を提出する機会を与えたが、請求人からの応答はなかった。そこで、当該合議体は、平成26年2月4日付け拒絶理由通知書に記載した、子出願が親出願に対し分割要件を満たさないとの判断が妥当なものと認め、子出願が親出願に対し分割要件を満たさないとの判断の下で子出願の審決を行った。そして、その後、子出願の審決は確定した。
したがって、子出願においては、子出願が親出願に対し分割要件を満たさないことが確定しているものである。

よって、本願の出願日に関する平成30年9月4日付け意見書の主張は、理由がなく、上記(2)で検討したように、本願の出願日は、子出願の出願日である平成21年12月25日である。

第3 本願発明
本願の請求項1?21に係る発明は、平成29年3月30日付け、平成30年9月4日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて(平成30年9月4日付け手続補正は、明細書の記載を補正したのみであり、特許請求の範囲の補正はない。)、その特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、A?Fについては、説明のために当審にて付したものであり、以下、「構成A」?「構成F」という。

「A ハンドヘルド装置用のエラー通知方法であって、
B ユーザが、ユーザにより識別された起こり得るエラーに注釈を付けるテキストを入力して変更要求フォーム内に含ませることができるようにするための変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックスを表示することと、
C 前記ハンドヘルド装置に表示されている文書中の前記ユーザにより識別された起こり得るエラーを明示し、かつ前記ユーザにより識別された起こり得るエラーの重要度レベルを前記ユーザが設定することを可能にする変更要求フォームを生成することと、
D 前記注釈を付けているテキストと前記ユーザにより識別された起こり得るエラーとを、前記変更要求フォームに関連した別個のファイルとして前記変更要求フォームに関連付けることと、
E 前記文書の管理者に前記変更要求フォームを送信することと、
F 前記管理者から前記変更要求フォームを受信することであって、該受信した変更要求フォームは前記ユーザにより識別された起こり得るエラーについて前記管理者によって追加された情報を含んでいる、前記受信することと、
A を含む、前記エラー通知方法。」

第4 平成30年6月5日付け拒絶理由
当審が通知した平成30年6月5日付け拒絶理由のうちの理由1は、以下のとおりである。

『この出願の請求項1?21に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

引用文献1:特表2006-514493号公報』

なお、引用文献1は、本願の親出願の公表公報であるが、上記第2(1)、(2)で検討したように、本願の出願日は、子出願の出願日である平成21年12月25日であり、引用文献1は、平成18年4月27日に公表された文献であるので、出願前に日本国内で頒布された文献である。

第5 引用文献1の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある。
なお、下線は、説明のために当審にて付したものである。

【0004】
(発明の概要)
本発明は、上述の課題と、それに関連したその他の従来技術の課題を解決する。本発明は、ハンドヘルド装置のユーザが、ハンドヘルド装置に格納された文書中のエラーにマークを付けて、変更要求を文書管理者に送信できるようにする方法と装置を提供する。
【0005】
本発明の一実施形態に従えば、ネットワークと同期可能なハンドヘルド装置用のエラー通知方法が提供される。ハンドヘルド装置に表示されている文書中のユーザにより識別された起こり得るエラーを明示する変更要求フォームが生成される。文書の管理者に変更要求フォームが送信される。

【0008】
本発明は、ハンドヘルド装置のユーザが、該ハンドヘルド装置に格納された文書中のエラーにマークを付けて、文書管理者に変更要求を送信できるようにする方法と装置に向けられたものである。本発明の推奨実施例に於いて、1つ以上の表示構成(例えば、メニュー、ダイアログ・ボックス、バナー等)によって、ユーザは、1つ以上の問題のあるデータ要素(例えば、テキスト、イメージ等)に注釈を付けること、或いは、そのデータ要素を識別することができる。更に、変更要求フォーム(Change Request Form)によって、ユーザは、選択したデータ要素について、解決すべき問題を明示することができる。変更要求フォームは、ハンドヘルド装置が対応ネットワークと同期するまで格納されており、その同期時に文書管理者へ自動的に転送される。

【0021】
ハンドヘルド装置のユーザが、或る文書の1つ以上の要素について潜在的なエラー(例えば、ユーザが不正確と信じるテキスト或いはイメージ、必要または有益と信じるテキスト・データおよび/またはイメージ・データの脱落等)を見つけた際に、注釈メニュー(Annotations Menu)にアクセスする第1のユーザ入力が受け付けられ、注釈メニューから変更要求付加オプションを選択する第2のユーザ入力が受け付けられる(ステップ305)。図4は、本発明の一実施例に従う、変更要求付加オプション410を有する注釈メニュー400の画面である。
【0022】
ユーザに変更要求フォームの主題となるべき不正確なテキストを選択するように促す変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックスが、生成されて、ユーザに対して表示される(ステップ310)。図5は、本発明の一実施例に従う、変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックス500の画面である。不正確なテキストを明示する第3のユーザ入力が、受け付けられる(ステップ315)。
【0023】
変更要求フォームが、生成されて、ユーザに対して表示される(ステップ320)。ユーザによって既に識別されたエラー/注釈を付けられたエラーは、全て、(記述フィールド内、或いは、図示または不図示のその他のフィールド内の)変更要求フォームの一部として、或いは、変更要求フォームと関連した別個のファイルとして、変更要求フォームと関連付けられる。後者の場合の関連付けは、例えば、変更要求フォーム内に別個のファイルの名前(或いは、その他のポインタ)を含ませることにより、或いは、当業者が容易に考え付くようなその他の任意の方法によって、行うことができる。尚、ステップ315に於いてユーザが不正確なテキストを選択した後に変更要求フォームがユーザに対して表示されるが、若しユーザが上述のステップ305と310の前に不正確なテキストを選択していた場合、ユーザが、ステップ305と310に於ける如く注釈メニューにアクセスして変更要求付加オプションを選択すると直ぐに、変更要求フォームがユーザに対して表示されるようにしてもよい。
【0024】
図6は、本発明の一実施例に従う、変更要求フォーム600の画面である。変更要求フォーム600によって、ユーザは、選択したデータ要素について、エラーであると信じるものを明示できる。以下に示す例に従って、ユーザは、変更要求についてのタイトルと説明文とを入力でき、更に、インパクト・レベル即ち重要度レベルを選択して変更要求フォーム内で識別されるエラーを分類でき、更に、変更要求フォームの送信者として自分を知らせることができる。送信ボタンを含む別の各フィールドは、変更要求ウィンドウ内をスクロール・ダウンすることにより、アクセスできる。
【0025】
尚、図3に例示された方法について図示された各フィールドは、当業者が容易に決定して実施できるようなクライアントのタイプ、文書のタイプ、文書のコンテンツ、文書のフォーマット、および、その他の事項に容易に適合できる。例えば、特定のアプリケーションに従って、各フィールドを付加、削除、および/または、修正できる。
【0026】
図7は、本発明の一実施例に従う、手書き認識についての変更要求フォーム700の画面である。尚、図7に示された変更要求フォームによって、ハンドヘルド装置の手書き認識領域にスクリーン・スペースが与えられ、スクロール可能な記述が行える。
【0027】
必要に応じて、変更要求フォームに含まれるべき任意の付加的情報を明示する第4のユーザ入力が受け付けられる(ステップ325)。前述の如く、この付加的情報には、例えば、変更要求フォームおよび/またはエラーのタイトル、エラーの説明文、エラーのインパクト・レベル即ち重要度レベル、分類、変更要求フォームの送信者の個人情報等が含まれるようにしてもよい。第4のユーザ入力によって明示される付加的情報は、変更要求フォーム内に収められる(ステップ327)。ユーザから受け付けられた付加的情報またはその他の任意の情報/入力が、手書きテキストとして提供された場合、その手書きテキストは、解読されて変更要求フォーム内に収められる。尚、手書きテキストは、例えば、ユーザが手書き入力機能を有するディスプレイ上に書くことにより提供できる。
【0028】
エラーの識別/注釈と付加的情報とが仕上げられた変更要求フォームは、ハンドヘルド装置に保存される(ステップ330)。ハンドヘルド装置がネットワークと同期すると、この仕上げられた変更要求フォームは、ネットワークにアップロードされ、文書の管理者に転送される(ステップ335)。この仕上げられた変更要求フォームは、ハンドヘルド装置が次にネットワークと同期した時に、アップロードされることが望ましいが、このようなアップロードは、予め決められたタイミングで行うことができる。
【0029】
必要に応じて、文書の管理者は、変更要求フォームにその他の情報(例えば、変更要求を受け入れることが出来ない理由、どのような処理を行ったか、或いは、どのような処理をこれから行う予定か等)および/またはその他のフィールドを収める機能を有するようにしてもよい。従って、文書管理者が「アップデート(更新)」した変更要求フォームが、その後、送信者の装置にダウンロードされるようにしてもよい。
【0030】
従って、文書管理者は、変更要求フォームを受信すると(ステップ340)、その他の情報(例えば、拒絶の理由)を変更要求フォームに新たに付加して(ステップ345)、その変更要求フォームを、その付加したその他の情報と共に、ネットワークに送り、それが、ハンドヘルド装置に転送される(ステップ350)。
【0031】
この変更要求フォームは、文書管理者が新たに付加した情報と共に、ネットワークからハンドヘルド装置によってダウンロードされ、ユーザに対して表示される(ステップ355)。従って、ユーザは、その新たに付加された情報を見て、変更要求フォーム内で識別されたエラーについて文書管理者が行った処理、或いは、これから行う処理が有れば、その処理を特定でき、および/または、その処理の理由(または処理しない理由)を特定できる。

(2)引用発明
上記記載、並びにこの分野における技術常識を考慮し、引用文献1に記載される発明を以下に検討する。

(a)段落0005の記載から、引用文献1には、ハンドヘルド装置用のエラー通知方法が記載されている。

(b)段落0008には、ユーザは、問題のあるデータ要素に注釈を付け、変更要求フォームによって、データ要素について解決すべき問題を明示することが記載されている。
また、段落0027には、変更要求フォームにエラーの説明文が含まれ、手書きテキストとして提供されることが記載されている。
そうすると、データ要素について解決すべき問題を明示することは、問題のあるデータ要素に注釈を付けることであり、当該注釈は、エラーの説明文であり、手書きテキストであるといえる。
したがって、引用文献1のエラー通知方法の変更要求フォームは、問題のあるデータ要素に注釈を付ける手書きテキストを含むものといえる。

さらに、段落0022、0023には、変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックスを表示し、不正確なテキストを明示するユーザ入力が受け付けられると、変更要求フォームが生成されることが記載されている。
そうすると、引用文献1のエラー通知方法の変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックスは、変更要求フォームを生成するためのものといえる。

すなわち、引用文献1のエラー通知方法は、問題のあるデータ要素に注釈を付ける手書きテキストを含む変更要求フォームを生成するための変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックスを表示するものといえる。

(c)段落0005には、ハンドヘルド装置に表示されている文書中のユーザにより識別された起こり得るエラーを明示する変更要求フォームを生成することが記載されている。
また、段落0024、0027には、ユーザは、エラーの重要度レベルを選択することが記載されている。

したがって、引用文献1のエラー通知方法は、ハンドヘルド装置に表示されている文書中のユーザにより識別された起こり得るエラーを明示し、ユーザがエラーの重要度レベルを選択する変更要求フォームを生成するものである。

(d)段落0023には、ユーザによって既に識別されたエラー/注釈を付けられたエラーは、変更要求フォームと関連した別個のファイルとして、変更要求フォームと関連付けられることが記載されている。
また、段落0008には、ユーザは、問題のあるテキストに注釈を付けるものであり、段落0021の記載から、ユーザは、潜在的なエラー(ユーザが不正確と信じるテキスト)を見つけた際に、注釈メニューにアクセスするものである。

そうすると、エラーは、ユーザが不正確と信じるテキストのような問題のあるテキストといえるので、引用文献1のエラー通知方法は、ユーザによって既に識別されたエラー/注釈を付けられた問題のあるテキストは、変更要求フォームと関連した別個のファイルとして、変更要求フォームと関連付けられるものであるといえる。

(e)段落0005、0028の記載から、引用文献1のエラー通知方法は、文書の管理者に変更要求フォームを送信するものである。

(f)段落0029?0031の記載から、引用文献1のエラー通知方法は、文書管理者がその他の情報(例えば、変更要求を受け入れることが出来ない理由、どのような処理を行ったか、或いは、どのような処理をこれから行う予定か等)を新たに付加した変更要求フォームを、ハンドヘルド装置に転送するものである。

(g)まとめ
上記(a)?(f)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
なお、a?eは、説明のために当審にて付したものであり、以下、「構成a」?「構成e」という。

「a ハンドヘルド装置用のエラー通知方法であって、
b 問題のあるデータ要素に注釈を付ける手書きテキストを含む変更要求フォームを生成するための変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックスを表示することと、
c ハンドヘルド装置に表示されている文書中のユーザにより識別された起こり得るエラーを明示し、ユーザがエラーの重要度レベルを選択する変更要求フォームを生成することと、
d ユーザによって既に識別されたエラー/注釈を付けられた問題のあるテキストは、変更要求フォームと関連した別個のファイルとして、変更要求フォームと関連付けられることと、
e 文書の管理者に変更要求フォームを送信することと、
f 文書管理者がその他の情報(例えば、変更要求を受け入れることが出来ない理由、どのような処理を行ったか、或いは、どのような処理をこれから行う予定か等)を新たに付加した変更要求フォームを、ハンドヘルド装置に転送することと、
a を含む、前記エラー通知方法。」

第6 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(a)構成Aと構成aについて
構成aは、明らかに構成Aに一致する。

(b)構成Bと構成bについて
構成bの「問題のあるデータ要素」は、構成cの「ユーザにより識別された起こり得るエラー」を指すものである。
そして、構成bの「手書きテキストを含む変更要求フォームを生成するための変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックス」に関して、「手書きテキスト」は、問題のあるデータ要素を発見したユーザが入力するものといえる。また、構成bは、「変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックス」によって、「変更要求フォーム」が生成されるものであり、「変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックス」は、手書きテキストを変更要求フォームに含ませるためのものといえる。
以上をまとめると、構成bは、『ユーザが、ユーザにより識別された起こり得るエラーに注釈を付ける手書きテキストを入力して変更要求フォームに含ませることができるようにするための変更要求テキスト選択ダイアログ・ボックスを表示すること』といえ、構成Bに一致する。

(c)構成Cと構成cについて
構成cの「エラーの重要度レベル」における「エラー」は、当該記載の前に記載された「文書中のユーザにより識別された起こり得るエラー」を指すものである。
また、構成cの「重要度レベルを選択」することにおいて、選択するのは、ユーザであるから、構成Cの「重要度レベルを前記ユーザが設定することを可能にする」ことに相当する。

したがって、構成cは、構成Cに一致する。

(d)構成Dと構成dについて
構成dの「ユーザによって既に識別されたエラー」は、構成cの「ユーザにより識別された起こり得るエラー」を指すので、構成Dの「前記ユーザにより識別された起こり得るエラー」に相当する。
また、構成dの「注釈を付けられた問題のあるテキスト」は、構成Dの「前記注釈を付けているテキスト」に相当する。

したがって、構成dは、構成Dに一致する。

(e)構成Eと構成eについて
構成eは、明らかに構成Eに一致する。

(f)構成Fと構成fについて
構成fの、「文書管理者が」「変更要求フォームを、ハンドヘルド装置に転送する」ことは、ハンドヘルド装置からみれば、文書管理者から変更要求フォームを受信することといえる。

また、構成fの「変更要求フォーム」は、構成cの「ユーザにより識別された起こり得るエラーを明示」した「変更要求フォーム」である。

そうすると、構成fは、『文書管理者から変更要求フォームを受信することであって、受信した変更要求フォームはユーザにより識別された起こり得るエラーについて、文書管理者によって新たに付加されたその他の情報(例えば、変更要求を受け入れることが出来ない理由、どのような処理を行ったか、或いは、どのような処理をこれから行う予定か等)を含んでいる、前記受信すること』といえる。

したがって、構成fは、構成Fに一致する。

(g)まとめ
以上より、本願発明と引用発明は、構成A?Fの全てにおいて一致し、相違点はない。
したがって、本願発明は、引用発明である。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-01 
結審通知日 2018-10-09 
審決日 2018-10-22 
出願番号 特願2015-238132(P2015-238132)
審決分類 P 1 8・ 03- WZ (G06F)
P 1 8・ 113- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 隆志  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 小池 正彦
渡辺 努
発明の名称 変更要求フォームの注釈  
代理人 大貫 進介  
代理人 吹田 礼子  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 倉持 誠  
代理人 伊東 忠重  

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