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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B23B
管理番号 1349635
審判番号 不服2017-14863  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-05 
確定日 2019-03-06 
事件の表示 特願2014-561322「ワークピースの特に非円形の凹部をデバリングするためのデバリング工具」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月19日国際公開、WO2013/135383、平成27年4月2日国内公表、特表2015-509859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)3月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年(平成24年)3月14日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 9月12日 :翻訳文提出
平成28年12月12日付け:拒絶理由通知書
平成29年 3月17日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 5月31日付け:拒絶査定
平成29年10月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年10月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項8の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「デバリング工具の少なくとも1つの切断ブレードを用いてワークピースの任意の所望の形状の凹部のエッジをデバリングするための方法であって、
前記切断ブレードは、縦削り及び引抜き操作中に当該デバリング工具の回転を伴わずに縦削り及び引抜き操作として動作することを特徴とする、
方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年3月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項8の記載は次のとおりである。
「デバリング工具の少なくとも1つの切断ブレードを用いてワークピースの任意の所望の形状の凹部のエッジをデバリングするための方法であって、
前記切断ブレードは、縦削り及び引抜き操作として動作することを特徴とする、
方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項8に記載された発明を特定するために必要な事項である、デバリング時における、ワークピースに対するデバリング工具の動きについて、上記の下線部のとおり「縦削り及び引抜き操作中に当該デバリング工具の回転を伴わずに」という限定を付加するものであって、補正前の請求項8に記載された発明と補正後の請求項8に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項8に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2010-515587号公報(平成22年5月13日公表。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(引用発明の認定に用いる箇所に当審で下線を付した。)
「【0046】
燃焼機関用吸引ノズルのノズル中空体内にある側孔の縁のバリ取りをするために、バリ取り工具は、例えば、時計回りに、加圧を行わずに、上記ノズル中空体の主孔内に側孔まで挿入される。これによって、上記主孔の孔壁の破損は回避される。ノズル中空体の主孔の直径は3.6mmであり、該ノズル中空体内にある側孔の直径は1mmである。これら孔は、90度のエッジ角で、つまり互いに直角に配置されている。吸引ノズルは、HRC>50の硬度を有している。側孔の縁に均一のバリ体を生成するために、最初に、事前バリ取り体13がより大きなバリを除去する。これは、バリの変形または折れ曲がりが回避されるという利点を有している。その後、液体状の物質、例えば、0.6MPaの圧力Pを有する掘削エマルジョンが貫通孔7内に押し込まれ、切刃3を備える切刃本体11が外側に孔壁まで動く。切刃3はわずかな圧力しか有しておらず、バリを取るために利用可能な力は最小である。しかしながら、切刃3が側孔内に挿入される際には、切刃3は0.7mmまで飛び出している。圧力およびバリ取りに利用可能な力は大きい。切刃3は、楕円形状のバリの基本プロファイルに作用して、側孔の向かい合った部分的範囲のバリを除去する。最終的に、バリ取り工具は、反時計回りに引き出され、側孔の別の部分的範囲をバリ取りする。」
「【0048】
図2は、バルブブロックにおいて、60度の交差角αで交差する孔HB;QBの縁をバリ取りするための本発明に係るバリ取り工具を側面から示す断面図である。エッジ角α2も60度であり、エッジ角α1は120度である。エッジ角α1、α2は、縁24の全円周で一定というわけでない。バリ取り工具は工具主軸1から成る。工具主軸1は、物質導入部4を備えるクランプ端部2と、パイプ状軸部5として先に延びる軸端部とを有している。パイプ状軸部5内に押し込み可能な、閉塞部12を備える切刃軸受け6は、切刃本体11を軸受け遊び8で支えている。閉塞部12を備える切刃軸受け6は、パイプ状軸部5に、ピン9によって位置が安定されている。物質導入部4を備える貫通孔7は、該貫通孔7内に加圧下で押し込まれた液体状の物質、例えば切削油が、開口部10内において切刃3を後方に向けて動かすことによって外向きに移動可能に搭載された切刃本体11の移動を確実にしている。」
「【0049】
バリを取るために、バリ取り工具は、切刃3と共に、加圧を行うことなく主孔HBを通ってバリ22の後方の縁24まで並進して動く。その後、バリ取り工具は、切断力を生成するために、0.015MPaの圧力Pで8秒間の加圧が与えられ、同時に速度6m/minで、並進、または、時計回りもしくは反時計回りの回転移動で逆方向に動く。これによって、縁24のバリ22は、破壊されるか、または、分離される。例えば42CrMo4のような高強度材料から成る自動車工業の構成部材内の、斜めに延びる側孔の縁のバリ取りにおいて、バリ22は、バリ取り工具が後方に移動する際に変形される。主孔HB内にバリ取り工具を再度挿入することによって、または、第2のバリ取り工具を挿入することによって、該バリは、短時間で、良質な基準に従って除去される。構成部材の処理技術によっては、同様に、このツールを側孔QB内に挿入することによって、該バリを縁から除去することも可能である。」
「【0050】
図3は、2つの側孔QB1;QB2の縁をバリ取りするバリ取り工具を側面から示す断面図である。工具側の軸端部は、周知のように、固定軸受けとして配置された支持体6を有し、ピン9によってパイプ状軸部5と共に工具主軸1に接続されていることが分かる。パイプ状軸部5には、開口部10内に移動可能に支持され、前方及び後方に動く切刃27を有する切刃本体11が配置されている。必要な切断力は、物質導入部4によって、および、縦軸25の中央に配置された貫通孔7によって確保される。すなわち、液体状もしくは気体状の物質、または、気体と液体との混合物から成る物質が、貫通孔7内に加圧下で押し込まれ、切刃27が外側に移動することによって、必要な切断力が確保される。パイプ状軸部5には、移動可能に搭載された切刃本体11が備えられる少なくとも2つの開口部10が配置されていてもよい。該各開口部10は、後方に動く切刃3と前方および後方に動く切刃27とを有するか、または、少なくとも2つの後方に動く切刃3、もしくは、少なくとも2つの前方および後方に動く切刃27を有する。例えばクランクシャフト内のような2つの側孔QB1およびQB2の縁のバリ22;22aは、切刃27を備えるバリ取り工具が、早送り装置vE内で、主孔HBを通って縁24の後方に無加圧で並進して動き、その後、0.02MPaの圧力が、4秒間、バリ取り工具に与えられ、そして、同時に、速度vEで(回転を伴って、又は伴わずに)更に移動することによって除去される。これによって、側孔QB1のバリ22aは変形する。その後、側孔をバリ取りするための加圧されないバリ取り工具が、位置決めのため側孔QB2において180度回転され、側孔QB1に従って方法ステップが実行される。これは、ここでは切刃27がバリ22に直接接しており、再び0.02MPaの圧力がバリ取り工具に与えられ、同時に、回転を伴って又は伴わずに、バリ22に向けて後方に動くことを意味している。これによって、側孔QB2のバリ22も変形する。バリ22;22aを除去するために、主孔HB内で、再びバリ取り工具を押し込みおよび取り出すか、または、別の工具を用いる必要がある。」

イ 上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「バリ取り工具の、切刃27を有する切刃本体11を用いて、バルブブロックの2つの側孔QB1及びQB2の縁に形成されたバリ22及び22aをバリ取りする方法であって、
前記切刃本体11は、バリ取り工具が速度vEで回転を伴わずに移動することによってバリ22aを除去し、バリ取り工具が回転を伴わずに後方に移動することによってバリ22を除去する、
方法。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、バルブブロック等の部材内の、直角および斜めに伸びる側孔の縁をバリ取りするバリ取り工具に係る技術であり、本件補正発明と、技術分野及び課題が共通する。
(イ)引用発明の「バリ取り」すること、具体的には「バリ22及び22aを除去」することは、本件補正発明の「デバリング」することに相当するから、引用発明の「バリ取り工具」は本件補正発明の「デバリング工具」に相当する。
(ウ)引用発明の「切刃27を有する切刃本体11」は、バルブブロックの2つの側孔QB1及びQB2の縁に形成されたバリ22及び22aをバリ取りするためのものである。また、本件補正発明の「切断ブレード」は、ワークピースの任意の所望の形状の凹部のエッジをデバリングするためのものである。よって、引用発明の「切刃27を有する切刃本体11」は、本件補正発明の「切断ブレード」に相当する。
(エ)引用発明の「バルブブロックの2つの側孔QB1及びQB2の縁に形成されたバリ22及び22a」は、バリ取り工具の、切刃27を有する切刃本体11を用いてバリ取りされるものである。また、本件補正発明の「ワークピースの任意の所望の形状の凹部のエッジ」は、デバリング工具の少なくとも1つの切断ブレードを用いてデバリングされるものである。よって、引用発明の「バルブブロックの2つの側孔QB1及びQB2の縁に形成されたバリ22及び22a」は、本件補正発明の「ワークピースの任意の所望の形状の凹部のエッジ」に相当する。
(オ)引用発明は「切刃本体11は、バリ取り工具が速度vEで回転を伴わずに移動することによってバリ22aを除去し、バリ取り工具が回転を伴わずに後方に移動することによってバリ22を変形する」ものであるから、引用発明のバリ取り工具の回転を伴わない移動及び同後方への移動が、工具主軸1方向に沿った、切刃本体11の往復運動であり、当該往復運動の際に切刃本体11によって、バリ22及び22aが除去又は変形されることは明らかである。また、本願明細書の段落0074ないし0091及び図面の図8ないし12を参酌すれば、本件補正発明の「縦削り」及び「引き抜き操作」とは、デバリング工具の長手軸方向に沿った、切断ブレードの往復運動であると認められる。よって、引用発明の「移動」及び「後方への移動」は、本件補正発明の「縦削り」及び「引き抜き操作」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「切刃本体11は、バリ取り工具が速度vEで回転を伴わずに移動することによってバリ22aを除去し、バリ取り工具が回転を伴わずに後方に移動することによってバリ22を変形する」事項は、本件補正発明の「切断ブレードは、縦削り及び引抜き操作中に当該デバリング工具の回転を伴わずに縦削り及び引抜き操作として動作する」事項に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明とは次の一致点で一致し、相違する点はない。
【一致点】
「デバリング工具の切断ブレードを用いてワークピースの任意の所望の形状の凹部のエッジをデバリングするための方法であって、
前記切断ブレードは、縦削り及び引抜き操作中に当該デバリング工具の回転を伴わずに縦削り及び引抜き操作として動作する、
方法。」

(4)判断
本件補正発明と引用発明は相違する点が存在しないから、本件補正発明は引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は審判請求書の「5.5.1(2)」(第4ページ第11行ないし第15行)で「引用文献1及び2は、単独でも、組み合わせにおいても、少なくとも、『前記ワークピースは、前進及び/又は逆進ストローク動作中に当該デバリング工具の回転を伴わずに前記前進及び/又は前記逆進ストローク動作によってデバリングされ』(下線は強調)という請求項1に係る発明の特徴的な構成を何ら開示も示唆もしていません。」と主張している。
しかしながら、(2)アに示したように、引用文献1の段落【0050】中の記載「0.02MPaの圧力が、4秒間、バリ取り工具に与えられ、そして、同時に、速度vEで(回転を伴って、又は伴わずに)更に移動することによって除去される。これによって、側孔QB1のバリ22aは変形する。…(中略)…再び0.02MPaの圧力がバリ取り工具に与えられ、同時に、回転を伴って又は伴わずに、バリ22に向けて後方に動くことを意味している。これによって、側孔QB2のバリ22も変形する。」によれば、引用文献1には、バリ取り工具が回転を伴わずに移動することによってバリが除去される事項が記載されていると認められるから、上記主張は採用できない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成29年3月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項8に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2010-515587号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、デバリング時における、ワークピースに対するデバリング工具の動きについて、上記の下線部のとおり「縦削り及び引抜き操作中に当該デバリング工具の回転を伴わずに」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明である以上、本願発明も引用発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-03 
結審通知日 2018-10-09 
審決日 2018-10-24 
出願番号 特願2014-561322(P2014-561322)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B23B)
P 1 8・ 575- Z (B23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 大紀永石 哲也  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 篠原 将之
栗田 雅弘
発明の名称 ワークピースの特に非円形の凹部をデバリングするためのデバリング工具  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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