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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1349637
審判番号 不服2017-18748  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-18 
確定日 2019-03-06 
事件の表示 特願2016-558257「透明OLED素子及びこのOLEDを採用した表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 9日国際公開,WO2015/101258,平成29年 1月12日国内公表,特表2017-501557〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,2014年12月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月31日,中国)を国際出願日とする外国語特許出願であって,平成28年6月14日に国際出願日における明細書,請求の範囲及び図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文が提出され,平成29年2月24日付けで拒絶理由が通知され,同年6月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年8月10日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年12月18日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出された。


2 本件出願の請求項1に係る発明
本件出願の請求項1に係る発明は,平成29年12月18日提出の手続補正書による補正(請求項2の記載を補正するものであって,請求項1については補正されていない。)後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものと認められるところ,請求項1の記載は次のとおりである。

「複数の画素を含み,各画素は有機機能層を含み,前記有機機能層の両側にそれぞれに第1透明電極と第2透明電極が設けられている透明OLED素子であって,前記有機機能層の一側に,さらに面積が前記有機機能層の面積より小さい反射電極が設けられていることを特徴とする透明OLED素子。」(以下,「本件発明」という。)


3 原査定の拒絶の理由の概要
本件発明に対する原査定の拒絶の理由は,概略,次の理由(以下,「査定理由」という。)を含んでいる。

本件発明は,引用文献1(特開2013-117719号公報)に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,又は,当該引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,同条2項の規定により特許を受けることができない。


4 引用例
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
査定理由で引用された引用文献1は,本件出願の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,透過型の表示装置とその駆動方法に関する。特に有機EL(エレクトロルミネセンス)素子が適用された透過型の表示装置とその駆動方法に関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0003】
有機EL素子が適用された発光装置の一つに表示装置がある。このような表示装置としては,単純マトリクス方式(パッシブマトリクス方式ともいう)やアクティブマトリクス方式が適用された表示装置が知られている。・・・(中略)・・・
【0004】
また近年,表示装置の多様化が求められている。その一つに表示部に光透過性を持たせ,その向こう側が視認可能な,いわゆるシースルー機能を持たせた表示装置がある。このようなシースルー機能を有する表示装置は,車両のフロントガラス,家屋やビルなどの建築物の窓ガラス,店舗のショーウィンドウのガラスやケース,または携帯電話やタブレット端末などの情報携帯端末や,ヘッドマウントディスプレイなどのウェアラブルディスプレイ,または航空機などに用いられるヘッドアップディスプレイなど,様々な用途への応用が期待されている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シースルー機能を有する表示装置において,表示する画像の表示品位の向上が求められている。しかしながら従来では,シースルー機能を有する表示装置を介して透過する光(以下,透過光ともいう)と画素部からの発光が混在して視認されてしまうため,明瞭な表示画像を得ることができなかった。
【0007】
また,情報端末機器やウェアラブルディスプレイなどは,バッテリによって駆動電力を供給する必要があるため,駆動可能時間を長くするために表示装置の低消費電力化も求められている。
【0008】
本発明は,このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって本発明の一態様は,有機EL素子が適用され,表示品位が向上した透過型の表示装置,およびその駆動方法を提供することを課題の一とする。また,低消費電力駆動が可能な透過型の表示装置を提供することを課題の一とする。
【0009】
本発明の一態様は,上記課題の少なくとも一を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
・・・(中略)・・・
【0012】
すなわち,本発明の一態様の表示装置は,第1?第nの特定波長帯域の光のうちいずれかを選択的に透過する第1?第nのカラーフィルタと,第1?第nのカラーフィルタのいずれかと重畳し,且つ上記第1?第nの特定波長帯域の光を発光する複数の発光素子と,可視光を透過する透過部と,を有する。また,複数の発光素子のそれぞれは,第1の電極層と,第2の電極層と,これらの間に挟持された発光性の有機化合物を含む層と,を有する。さらに,カラーフィルタ側の第2の電極層は,可視光に対して透光性を有し,第1の電極層は,可視光に対して反射性を有することを特徴とする。
・・・(中略)・・・
【0029】
なお,本明細書中において,表示装置とは複数の画素を備える画像表示装置をいう。また,表示装置にコネクター,例えばFPC(Flexible printed circuit)TCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール,TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール,または画素が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば,有機EL素子が適用され,表示品位が向上した透過型の表示装置,およびその駆動方法を提供できる。また,低消費電力駆動が可能な透過型の表示装置を提供できる。」

(イ) 「【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一態様の,表示装置を説明する図。
・・・(中略)・・・
【図3】本発明の一態様の,表示素子及び透過部の配置例を説明する図。
・・・(中略)・・・
【図7】本発明の一態様の,表示装置を説明する図。」

(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0032】
・・・(中略)・・・
【0034】
(実施の形態1)
本実施の形態では,本発明の一態様の表示装置の構成例について,図1?4を参照して説明する。
【0035】
〈構成例〉
図1(A)は,表示装置100の概略図である。
【0036】
表示装置100は複数の画素110を有し,各々の画素110は,赤色の発光を呈する表示素子101R,緑色の発光を呈する表示素子101G,青色の発光を呈する表示素子101B,及び透過部103を有する。ここで,各々の表示素子に共通する特徴を説明する場合には,これらの表示素子をまとめて表示素子101と表記することとする。
【0037】
表示素子101Rは,発光素子111とカラーフィルタ105Rを備える。同様に,表示素子101Gは発光素子111とカラーフィルタ105Gを備え,表示素子101Bは発光素子111とカラーフィルタ105Bを備える。
【0038】
ここで,表示装置100において,カラーフィルタが設けられる側が,表示画像や透過光を視認可能な視認側となる。また,視認側とは反対側のことを裏面側と呼ぶ。
【0039】
発光素子111は,第1の電極層113上にEL層115と第2の電極層117が順に積層されて構成されている。ここで,カラーフィルタ側に設けられた第2の電極層117は,可視光に対して透光性を有する。またカラーフィルタとは反対側に設けられた第1の電極層113は,可視光に対して反射性を有する。したがって,発光素子111からの発光は,カラーフィルタ側に射出される。ここで第1の電極層113が反射性を有するため,EL層115の第1の電極層113側への発光を反射して,第2の電極層117側に射出することができるため,干渉効果を利用すれば発光素子111の発光強度を高めることができる。なお,発光素子111の具体的な構成例については,後の実施の形態で説明する。
【0040】
表示素子101Rに設けられるカラーフィルタ105Rは,赤色の波長帯域の光を選択的に透過する。また表示素子101Gに設けられるカラーフィルタ105Gは,緑色の波長帯域の光を選択的に透過する。また表示素子101Bに設けられるカラーフィルタ105Bは,青色の波長帯域の光を選択的に透過する。
【0041】
発光素子111からの発光は,少なくとも赤色の波長帯域の光と,緑色の波長帯域の光と,青色の波長帯域の光を含む。好ましくは発光素子111として,白色発光を呈する発光素子とする。したがって,カラーフィルタ105Rを介して射出される表示素子101Rからの発光Rは,赤色を呈する。同様に,カラーフィルタ105Gを介して射出される表示素子101Gからの発光Gは緑色を呈し,カラーフィルタ105Bを介して射出される表示素子101Bからの発光Bは,青色を呈する。
【0042】
このように,画素110にそれぞれ赤色,緑色,青色を発光する表示素子を備えることにより,フルカラーの表示装置100とすることができる。
【0043】
透過部103は,可視光を透過する領域である。透過光Tは,当該透過部103を介して表示装置100を透過する。
【0044】
一方,表示素子101が設けられた領域では,透過光Tは第1の電極層113によって反射されて透過しない。なお,第1の電極層113の裏面側に,反射防止層を設け,透過光Tが反射しないようにすることもできる。
【0045】
透過光Tは,画素110内の透過部103が設けられた領域では透過し,また表示素子101が設けられた領域では,第1の電極層113によって反射されて透過しない。したがって,各発光素子からの発光と,外光からの透過光が混在することなく,明瞭な表示画像を得ることができる。
【0046】
また,発光素子111からの発光は,カラーフィルタを介して射出されるため,表示素子101からの発光の色純度を高めることができ,より鮮明な表示画像を得ることができる。
【0047】
また,表示素子101はカラーフィルタによって発光素子111からの発光の一部の波長帯域の光を透過させるため,各々の表示素子101に設けられる発光素子111を共通の構成とすることができる。そのため各表示素子間で発光素子をつくり分ける工程を省略することができ,作製にかかる歩留まりを向上させることができる。またメタルマスク等を用いて発光素子をつくり分ける場合と比較して,隣接素子間の距離を小さくすることが可能なため,高精細な,または高い開口率を有する表示装置100とすることができる。
【0048】
このような構成の表示装置100とすることにより,表示品位が向上した透過型の表示装置とすることができる。
【0049】
ここで,透過部103には,透光性を有する発光素子を設ける構成とすることができる。以下では,透過部103に透過発光素子を備える表示装置の構成例について説明する。なお,上記と共通する部分については,説明を省略するか,簡略化して説明する。
【0050】
図1(B)は,表示装置120の概略図である。
【0051】
表示装置120は,複数の画素110を有する。画素110は,表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B,及び透過部103を有する。ここで表示装置120は,透過部103の構成以外は表示装置100と同様の構成である。
【0052】
透過部103は,透過発光素子131を備える。透過発光素子131は,第3の電極層133上に,EL層115,第2の電極層117が順に積層されて構成される。
【0053】
透過発光素子131を構成するEL層115及び第2の電極層117は,発光素子111と同一の層を適用する。一方,第3の電極層133は,可視光に対して透光性を有する。
【0054】
したがって,透過発光素子131からの発光Wは,少なくとも赤色の波長帯域の光と,緑色の波長帯域の光と,青色の波長帯域の光を含む発光,好ましくは白色発光となる。また第3の電極層133及び第2の電極層117が共に透光性を有するため,透過発光素子131からの発光は,視認側及び裏面側の両面に射出される。
【0055】
また,透過発光素子131の第3の電極層133及び第2の電極層117が共に透光性を有するため,透過発光素子131は光を透過する。したがって透過部103において,透過発光素子131が設けられた領域を透過した光と,それ以外の領域から透過した光が,透過光Tとして視認側から視認される。
【0056】
このように,透過発光素子131は,第3の電極層133以外を発光素子111と同様の構成とすることができるため,容易に形成することができる。また,画像表示時には,各表示素子と透過発光素子131とを同時に駆動させて画像を表示することにより,表示素子のみを駆動させた場合よりも低電力で駆動させることができる。
【0057】
また,このような構成とすることにより,視認側に対してはフルカラーの表示装置として機能し,裏面側からは単色(白色)発光の表示装置として機能するため,両面射出型の表示装置として用いることもできる。
【0058】
また,透過発光素子131を非発光状態としたまま,表示素子101のみを駆動して画像を表示すると,透過発光素子131からは透過光のみが視認され,透過光Tの光量を大きくすることができる。このような駆動方法は背景が暗い場合などには特に有効である。また,裏面に画像を表示させたくない場合などでも,このような駆動方法を用いることもできる。
【0059】
このように,背景の輝度に応じて,または用途に応じてその駆動方法を制御することができる。このように状況に応じて駆動方法を制御することで,消費電力を低減することができる。
・・・(中略)・・・
【0061】
また,本実施の形態では,画素が赤色,緑色,青色の3色のそれぞれの発光を呈する3つの表示素子を有する構成としたが,画素の構成はこれに限られず,1つ以上の表示素子を有する構成とすればよい。
【0062】
画素に表示素子を1つだけ設ける場合は,その発光素子がある波長帯域の光を発光する構成とし,当該光を選択して透過するカラーフィルタを設ければよい。このような構成とすることにより,色純度が高められた単色の表示装置として用いることができる。またこのとき透過部に透過発光素子を設ける場合には,視認側及び裏面側には上記の波長帯域の光で画像を表示させることができる。」

(エ) 「【0080】
〈表示素子,透過部の配置例〉
以下では,画素に含まれる表示素子や透過部の配置例について説明する。
【0081】
図3及び図4は,画素の配置例を示す上面概略図である。図3及び図4には,少なくとも一つの画素を含む領域について示している。
【0082】
図3(A)に示す配置例では,表示素子101R,101G,101Bのそれぞれが縦方向にストライプ状に配置されている。また,隣接する表示素子間に,透過部103が設けられている。
【0083】
ここで,図3(A)には,同色の表示素子間(例えば2つの表示素子101Rの間)には,例えば配線等が設けられ,光を透過しない非透過部107を有する。なお,配線材料として透光性を有する材料を用いる場合には,非透過部107を設置する必要が無く,極めて開口率の高い表示装置とすることができる。」

(オ) 「【0126】
〈表示装置の断面構成例〉
以下では,本発明の一態様の表示装置について,断面構成の例を挙げて詳細に説明する。
・・・(中略)・・・
【0146】
図7(A)には,表示部201の一例として,一つの画素110内の表示素子101と,透過部103の断面構造を示している。また,表示素子101及び透過部103には,駆動用のトランジスタ221bを含む領域を示している。
【0147】
表示素子101は,第1の電極層113上にEL層115と第2の電極層117が順に積層された発光素子111を有する。第1の電極層113は,後に説明する絶縁層237及び絶縁層238に設けられた開口部を介して駆動用のトランジスタ221bの一方の電極(ソース電極またはドレイン電極)と電気的に接続される。
【0148】
透過部103は,第3の電極層133上にEL層115と第2の電極層117が順に積層された透過発光素子131を有する。第3の電極層133は,上記第1の電極層113と同様に駆動用のトランジスタ221bの一方の電極(ソース電極またはドレイン電極)と電気的に接続される。
・・・(中略)・・・
【0155】
絶縁層233は,第1の電極層113または第3の電極層133の端部を覆って設けられている。そして,絶縁層233上に形成される第2の電極層117の被覆性を良好なものとするため,絶縁層233の上端または下端部に曲率半径(0.2μm?3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また,絶縁層233の材料としては,光の照射によってエッチャントに対する溶解性が変化するネガ型またはポジ型の感光性樹脂などの有機化合物や,酸化シリコン,酸化窒化シリコンなどの無機化合物を用いることができる。
・・・(中略)・・・
【0158】
第2の基板212には,発光素子111と重なる位置にカラーフィルタ105が設けられている。カラーフィルタ105は,赤色,緑色,青色(または黄色)の光を透過する有機樹脂を用いることができる。」

(カ) 「【0176】
(実施の形態3)
本実施の形態では,本発明の一態様に適用できるEL層の一例について,図8を用いて説明する。
・・・(中略)・・・
【0178】
本実施の形態で例示するEL層405を有する発光素子は,上記実施の形態で例示した表示装置に適用可能である。
【0179】
EL層405は,少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層が含まれていればよい。そのほか,電子輸送性の高い物質を含む層,正孔輸送性の高い物質を含む層,電子注入性の高い物質を含む層,正孔注入性の高い物質を含む層,バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。本実施の形態において,EL層405は,第1の電極403側から,正孔注入層701,正孔輸送層702,発光性の有機化合物を含む層703,電子輸送層704,及び電子注入層705の順で積層されている。なお,これらを反転させた積層構造としてもよい。」

(キ) 「【図1】

・・・(中略)・・・
【図3】

・・・(中略)・・・
【図7】



イ 引用文献1に記載された発明
図1(B)等に示された表示装置120が,「透過発光素子131を非発光状態としたまま,表示素子101のみを駆動」(【0058】)したときに,視認側に対するフルカラーの表示装置として機能することは明らかであるから,前記ア(ア)ないし(キ)で摘記した記載を含む引用文献1の全記載から,引用文献1に,図1(B)等に示された表示装置120に関する発明として,次の発明が記載されていると認められる。

「有機EL素子が適用された,表示部の向こう側が視認可能なシースルー機能を有する表示装置120であって,
各々が表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B,及び透過部103を有する複数の画素110を有し,
前記表示素子101Rは,発光素子111と赤色の波長帯域の光を選択的に透過するカラーフィルタ105Rとを備え,前記表示素子101Gは,発光素子111と緑色の波長帯域の光を選択的に透過するカラーフィルタ105Gとを備え,前記表示素子101Bは,発光素子111と青色の波長帯域の光を選択的に透過するカラーフィルタ105Bとを備え,
前記発光素子111は,第1の電極層113上に,EL層115と第2の電極層117が順に積層された,白色発光を呈する発光素子であり,
カラーフィルタ側に設けられた前記第2の電極層117は,可視光に対して透光性を有し,カラーフィルタとは反対側に設けられた前記第1の電極層113は,可視光に対して反射性を有していて,前記発光素子111からの発光が,カラーフィルタ側に射出されるよう構成されており,
前記透過部103は,透過発光素子131を備え,当該透過部103において,前記透過発光素子131が設けられた領域を透過した光と,それ以外の領域から透過した光が,透過光Tとして,カラーフィルタが設けられる側である視認側から視認されるよう構成されており,
前記透過発光素子131は,第3の電極層133上に,EL層115,第2の電極層117が順に積層されて構成され,
前記透過発光素子131を構成する前記EL層115及び前記第2の電極層117には,前記発光素子111と同一の層が適用され,前記第3の電極層133は,可視光に対して透光性を有していて,前記透過発光素子131からの発光は,視認側及び裏面側の両面に射出されるよう構成されており,
画像表示時には,前記各表示素子101R,101G,101Bと前記透過発光素子131とを同時に駆動させて画像を表示することにより,視認側に対してはフルカラーの表示装置として機能し,裏面側からは白色発光の表示装置として機能する両面射出型の表示装置として用いることができ,前記透過発光素子131を非発光状態としたまま,前記各表示素子101R,101G,101Bのみを駆動して画像を表示することにより,視認側に対するフルカラーの表示装置として機能するとともに,視認される前記透過光Tの光量を大きくすることができる,
表示装置120。」(以下,「引用発明」という。)


5 判断
(1)対比・判断
ア 引用発明の「画素110」は,技術的にみて(また,文言上も),本件発明の「画素」に対応する。
しかるに,引用発明は,複数の「画素110」(本件発明の「画素」に対応する。以下,「(1)対比・判断」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件発明の発明特定事項を表す。)を有しているから,本件発明の「複数の画素を含」むという発明特定事項に相当する構成を具備している。

イ(ア) 引用発明は有機EL素子が適用された表示装置であるから,各発光素子111及び透過発光素子131中の「EL層115」が,有機発光層単独で構成されるか,又は,有機発光層と各種機能層(電子注入層,電子輸送層,正孔注入層,正孔輸送層等)が積層されて構成されていることは,技術的にみて明らかである。このことは,前記4(1)ア(カ)で摘記した記載や,当該記載に続く引用文献1の【0180】ないし【0198】等からも確認できることである。
ここで,本件発明の「有機機能層」について,本件明細書には,明確な定義が記載されているわけではないものの,その【0018】には,実施例1が具備する「有機機能層」について,「各画素は,有機機能層5を含み,有機機構層5(有機機能層5の誤記と解される。)は従来技術の有機機能層と同じであり,正孔注入層,有機発光層及び電子注入層などを含み」と説明されている。
そうすると,引用発明の「EL層115」は,本件発明の「有機機能層」に対応すると解される。

(イ) 引用発明は,「透過発光素子131を構成するEL層115及び第2の電極層117には,発光素子111と同一の層が適用され」ているとの構成を有している。ここで,当該構成が,EL層115及び第2の電極層117が,表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B及び透過部103を覆うように形成された単一の層として構成されていること(言い換えると,EL層115及び第2の電極層117が,表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B及び透過部103ごとにパターニングされていないこと)を意味していることは,引用文献1の【0155】に,「絶縁層233は,第1の電極層113または第3の電極層133の端部を覆って設けられている。そして,絶縁層233上に形成される第2の電極層117の被覆性を良好なものとする」と記載されており,第2の電極層117が,表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B及び透過部103の境界位置に設けられた絶縁層233を被覆していて,表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B及び透過部103の境界位置で途切れていないことが示唆されていることや,図7において,EL層115及び第2の電極層117が発光素子111と透過発光素子131の間で連続しているように描かれていること等から明らかである。
しかるに,引用発明の「EL層115」には,各「画素110」に対応する領域が存在しており,各「画素110」(画素)が「EL層115」(有機機能層)を含んでいるといえるから,引用発明は,本件発明の「各画素は有機機能層を含」むという発明特定事項に相当する構成を具備している。

ウ 引用発明の各画素110が有する透過発光素子131は,「第3の電極層133」上に,「EL層115」,「第2の電極層117」が順に積層されて構成されたものであるから,「EL層115」(有機機能層)の両側にはそれぞれ「第3の電極層133」と「第2の電極層117」が設けられている。
しかるに,当該「第3の電極層133」及び「第2の電極層117」はいずれも可視光に対して透光性を有しているから,「透明電極」といえる。
したがって,引用発明は,本件発明の「有機機能層の両側にそれぞれに第1透明電極と第2透明電極が設けられている」という発明特定事項に相当する構成を具備している。

エ 引用発明は,表示部の向こう側が視認可能なシースルー機能を有しているから,「透明」といえる。
また,引用発明は,有機EL素子が適用された表示装置120であるところ,「有機EL」とは,「OLED」の別称である。
したがって,引用発明の「有機EL素子が適用された,表示部の向こう側が視認可能なシースルー機能を有する表示装置120」は,本件発明の「透明OLED素子」に対応する。

オ 引用発明の各画素110が有する各発光素子111は,「第1の電極層113」上に,「EL層115」と「第2の電極層117」が順に積層されたものであるから,「EL層115」(有機機能層)の一側には「第1の電極層113」が設けられている。
しかるに,当該「第1の電極層113」は可視光に対して反射性を有しているから,「反射電極」といえる。
したがって,引用発明は,本件発明の「有機機能層の一側に」,「反射電極が設けられている」という発明特定事項に相当する構成を具備している。

カ 前記イ(イ)で述べたように,引用発明の「EL層115」(有機機能層)は,表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B及び透過部103を覆うように形成された単一の層として構成されたものである。
一方,引用発明の「第1の電極層113」(反射電極)は,表示素子101R,表示素子101G及び表示素子101Bがそれぞれ有する発光素子111ごとに設けられていることは,技術常識から自明である。(第2の電極層117が表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B及び透過部103を覆うように形成された単一の層として構成されている以上,第1の電極層113が,表示素子101R,表示素子101G及び表示素子101Bがそれぞれ有する発光素子111ごとに設けられていなければ,表示素子101R,表示素子101G及び表示素子101Bを個別に駆動することができない。)
そうすると,引用発明の「第1の電極層113」(反射電極)の面積が,「EL層115」(有機機能層)の面積よりも小さいことは明らかである。
したがって,引用発明の「第1の電極層113」は,本件発明の「反射電極」に係る「面積が有機機能層の面積より小さい」という発明特定事項に相当する構成を具備している。

キ 前記アないしカに照らせば,本件発明と引用発明は,
「複数の画素を含み,各画素は有機機能層を含み,前記有機機能層の両側にそれぞれに第1透明電極と第2透明電極が設けられている透明OLED素子であって,前記有機機能層の一側に,さらに面積が前記有機機能層の面積より小さい反射電極が設けられている透明OLED素子。」
である点で一致し,相違するところはない。
したがって,本件発明は,引用発明と同一である。

(2)請求人の主張に対する予備的判断
ア 審判請求書において,請求人は,
「引用文献1に開示された表示素子又は光を透過できる発光素子は(第2の透明電極,有機機能層,反射電極)の積層構造だけ持つか,又は(第2の透明電極,有機機能層,第1の透明電極)の積層構造だけを持つが,本願の請求項1に限定した画素毎に,第2の透明電極,有機機能層,反射層,第1の透明電極)を持つというものではない。つまり,拒絶査定で指摘された引用文献1の画素構成にRGBWを含む,本願に記載された画素は一つの画素(R又はG又はB)を含む,本願の画素のそれぞれの構成は共に,反射電極2と第1透明電極4と第2透明電極6を含む。この一つの画素の構成の中で,反射電極2の面積が該画素構成の発光層より小さい。引用文献1の単一画素(R又はG又はB)は反射電極だけを有し,この一つの画素の中で片側発光を呈している。引用文献1に基づいて分かるように,単一画素は片側発光を実現し,その単一画素(R又はG又はB)の中での反射電極133の反射面積は少なくとも発光層115の面積と同じである。(引用文献1の図面及び明細書の記載から得られる。)これは本願の画素の構成において反射電極の面積が該画素の構成における発光層の面積より小さいとは明らかに異なる。」
などと主張する。
当該主張は,要するに,引用発明において,本件発明の「画素」に対応するのは,「画素110」ではなく,「表示素子101R」,「表示素子101G」,「表示素子101B」及び「透過発光素子131」のそれぞれであり,これら「表示素子101R」,「表示素子101G」,「表示素子101B」及び「透過発光素子131」のいずれもが,「第1透明電極」と「第2透明電極」と「反射電極」とを有するという本件発明の構成を備えていないし,「透過発光素子131」が有する「反射電極」は,面積が有機機能層の面積と同じであって,「面積が有機機能層の面積より小さい反射電極」という本件発明の構成のものではないということと解される。

イ そこで,当該請求人の主張について判断すると,本件出願の明細書の翻訳文(以下,「本件明細書」という。)には,「画素」という文言の定義については記載も示唆もされていない。そして,本件発明の「画素」と引用発明の「画素110」は,「画素」という同一の文言が付された部位であり,本件出願の請求項1の記載上,両者の間に構成上の違いは存在しない。また,技術的にみても,引用発明の「画素110」を,本件発明の「画素」に対応させるのが自然である。
また,そもそも,引用発明において,「透過発光素子131」が,「表示素子101R」,「表示素子101G」,「表示素子101B」とは別の「画素」に該当するというのであれば,本件発明において,「有機機能層」の両側に「第1透明電極」及び「第2透明電極」が設けられた部位(両面に光を射出する部位)と「有機機能層」の一側に「反射電極」が設けられた部位(一方の側のみに光を射出する部位)もそれぞれ別の「画素」というべきである。しかしながら,このような解釈をすると,本件発明の構成(各画素に,「第1透明電極」,「第2透明電極」及び「反射電極」が設けられていること)と矛盾することとなる。
したがって,前記請求人の主張には,根拠がない。

ウ 前記請求人の主張が,本件発明が,各画素に,透明電極及び反射電極により駆動される表示領域が1つと,2つの透明電極により駆動される表示領域が1つしかないのに対して,引用発明は,各画素に,透明電極及び反射電極により駆動される表示領域が3つと,2つの透明電極により駆動される表示領域が1つ存在するものである点で相違しているとの趣旨である可能性があるから,(本件出願の請求項1には,反射電極と同じ側にある透明電極の数を特定する記載はないから,本件発明には,一つの画素に,透明電極及び反射電極により駆動される表示領域が複数存在する形態も包含されると解するのが自然ではあるものの)一応,本件発明の構成が,そのような構成のものであるとの解釈を前提とした場合の判断についても,以下で述べておく。

(ア) 引用文献1の【0062】(前記4(1)ア(ウ)を参照。)には,画素に表示素子を一つだけ設けた単色の表示装置とすることができることが記載されているところ,引用発明において,各画素に,表示素子101R,表示素子101G,表示素子101B,及び透過部103を設けるという構成に代えて,ある波長帯域の光を発光する構成の発光素子を有する表示素子と透過部103とを設けるという構成を採用することは,当該引用文献1の【0062】の記載に基づいて,当業者が容易になし得たことである。
また,本件発明が有する効果は,引用文献1の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。
したがって,本件発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ) また,引用文献1の【0082】及び図3(A)には,画素の配置例として,表示素子101R,101G,101Bのそれぞれを縦方向にストライプ状に配置し,隣接する表示素子間に透過部103を設けた画素が記載されている。
引用発明において,各画素の配置として,表示素子101R,101G,101Bのそれぞれを縦方向にストライプ状に配置し,隣接する表示素子間にそれぞれ透過発光素子131を有する透過部103を設けることは,当該引用文献1の【0082】及び図3(A)の記載に基づいて,当業者が容易になし得たことである。
しかるに,当該画素の配置を採用した引用発明において,表示素子101Rとこれに隣接する透過部103とから構成される単位,表示素子101Gとこれに隣接する透過部103とから構成される単位,及び,表示素子101Bとこれに隣接する透過部103とから構成される単位が,それぞれ,本件発明における「画素」に相当する。
また,本件発明が有する効果は,引用文献1の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。
したがって,当該理由からも,本件発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本件発明は,引用発明と同一であるか,少なくとも引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 むすび
本件発明は,引用発明と同一であるか,少なくとも引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許法29条1項又は2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-02 
結審通知日 2018-10-09 
審決日 2018-10-22 
出願番号 特願2016-558257(P2016-558257)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大竹 秀紀  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 清水 康司
関根 洋之
発明の名称 透明OLED素子及びこのOLEDを採用した表示装置  
代理人 特許業務法人 日峯国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 日峯国際特許事務所  
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