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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 発明同一  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1349666
異議申立番号 異議2018-700301  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-10 
確定日 2019-01-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6218350号発明「帯電防止ハードコート樹脂組成物、及び帯電防止ハードコート層を有するフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6218350号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第6218350号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6218350号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成23年10月27日に出願され、平成29年10月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成30年4月10日に特許異議申立人小林瞳(以下、「申立人A」という。)及び同年4月18日に特許異議申立人加藤加津子(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 7月18日付け:取消理由通知
同年 9月14日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
(同年 同月18日受付)
同年 同月28日付け:訂正請求があった旨の通知
(特許法第120条の5第5項)
同年10月29日 :意見書の提出(申立人B)
同年 同月31日 :意見書の提出(申立人A)

2.訂正請求について
(1)訂正の内容
平成30年9月18日受付の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」ということがある。)の内容は、以下のとおりである。
ア 訂正事項1(請求項1?3に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1に「水酸基含有(メタ)アクリレート」とあるのを、「、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレート」と訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。

イ 訂正事項2(請求項1?3に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1に「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」とあるのを「数平均分子量が5000?500000である4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」と訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。

ウ 訂正事項3(請求項1?3に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1に「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」とあるのを「更にアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」と訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び3も同様に訂正する。

エ 訂正事項4(段落[0007]の訂正)
願書に添付した明細書の段落[0007]に、「すなわち、本発明の第1の要旨は、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しないことを特徴とする帯電防止ハードコート樹脂組成物に存する。」とあるのを「すなわち、本発明の第1の要旨は、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、数平均分子量が5000?500000である4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更にアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しないことを特徴とする帯電防止ハードコート樹脂組成物に存する。」と訂正する。

オ 訂正事項5(段落[0018]の訂正)
願書に添付した明細書の段落[0018]に、「数平均重量分子量」とあるのを「数平均分子量」と訂正する(2箇所)。

カ 訂正事項6(段落[0038]の訂正)
願書に添付した明細書の段落[0038]に、「ペンタリスリトールトリアクリレート反応物」とあるのを「ペンタエリスリトールトリアクリレート反応物」と訂正する(2箇所)。

(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「水酸基含有(メタ)アクリレート」を具体的な化合物名を記載することにより限定するものである。また、請求項2及び3は、請求項1の訂正に連動して訂正される。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」を数平均分子量が5000?500000であるものに限定するものである。また、請求項2及び3は、請求項1の訂正に連動して訂正される。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載されていた「帯電防止ハードコート樹脂組成物」を「更にアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有」するという必須成分の追加により限定するものである。また、請求項2及び3は、請求項1の訂正に連動して訂正される。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(エ)訂正事項4について
訂正事項4は、願書に添付した明細書の段落[0007]に訂正前の請求項1と同様の事項が記載されていたところ、訂正事項1?3により請求項1が訂正されることに伴い、訂正後の請求項1の記載事項と段落[0007]の記載との整合を図るためのものである。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(オ)訂正事項5について
訂正事項5に係る願書に添付した明細書の段落[0018]には、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)の分子量に関して、「数平均重量分子量」という用語が記載されていたが、「数平均分子量」という用語はあっても、「数平均重量分子量」という用語は存在しないことから、「数平均分子量」の誤記であったことは明らかである。
また、願書に添付した明細書の段落[0038]に、「日本化薬社製4級アンモニウム塩基含有ポリマー」の分子量に関して、「(数平均分子量28000)」と記載されており、願書に最初に添付した明細書の段落[0038]にも同じ記載があることから、「数平均重量分子量」という用語は、本来、「数平均分子量」の意であったというべきである。
そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。

(カ)訂正事項6について
訂正事項6に係る願書に添付した明細書の段落[0038]には「共栄化学社製ウレタンアクリレート」の反応成分の一つが「ペンタリスリトールトリアクリレート」と記載されていたが、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」という名称の化合物はあっても、上記のような名称の化合物は存在しないから、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」の誤記であったことは明らかである。
また、願書に添付した明細書の[0013]に、「ウレタン(メタ)アクリレート(A)を得るために用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては・・・特にペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート・・・が好ましい」と記載されており、願書に最初に添付した明細書の段落[0013]にも同じ記載があることから、段落[0038]における「ペンタリスリトールトリアクリレート」は、本来、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」の意であったというべきである。
そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。

新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について
(ア)訂正事項1について
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落[0013]における「ウレタン(メタ)アクリレート(A)を得るために用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては・・・特にペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい」という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、請求項1の訂正に連動する請求項2及び3の訂正も、同様の理由により願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項1が、請求項1?3に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(イ)訂正事項2について
訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落[0018]における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)の分子量は・・・数平均重量分子量として、通常5000?500000」という記載と、及び上記2.(2)ア(オ)「訂正事項5について」に記載したとおり、「数平均重量分子量」は「数平均分子量」の誤記であったことが明らかであることとに基づくものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、請求項1の訂正に連動する請求項2及び3の訂正も、同様の理由により願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項2が、請求項1?3に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(ウ)訂正事項3について
訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落[0037]の[表1]に記載された実施例1及び2が、溶媒成分としてアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することに基づくものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、請求項1の訂正に連動する請求項2及び3の訂正も、同様の理由により願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
さらに、訂正事項3が、請求項1?3に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(エ)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1?3による請求項1の訂正に伴い、請求項1と願書に添付した明細書の記載との間に不整合が生じることを避けるために行うものであるところ、訂正事項1?3については、上記2.(2)イ(ア)「訂正事項1について」?同(ウ)「訂正事項3について」に記載したとおり願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項4も同様の理由により願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項4の訂正を受けて、請求項1?3に係る発明のカテゴリーや対象、目的が変更されるものではないことも明らかである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(オ)訂正事項5について
訂正事項5は、上記2.(2)イ(オ)「訂正事項5について」に記載したとおり、願書に最初に添付した明細書の段落[0038]等の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項5の訂正を受けて、請求項1?3に係る発明のカテゴリーや対象、目的が変更されるものではないことも明らかである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(カ)訂正事項6について
訂正事項6は、上記2.(2)イ(カ)「訂正事項6について」に記載したとおり、願書に最初に添付した明細書の段落[0013]等の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項6の訂正を受けて、請求項1?3に係る発明のカテゴリーや対象、目的が変更されるものではないことも明らかである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 一群の請求項について
訂正事項1?6に係る訂正前の請求項1?3は、請求項2及び3が請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。また、訂正事項1?6により訂正された後の請求項2及び3は、訂正事項1?3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正される。よって、訂正事項1?6は一群の請求項に対して請求されたものといえるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1?3に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?3に係る訂正事項1?6については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

オ 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号?第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。

3.本件発明について
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明3」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1]
トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、数平均分子量が5000?500000である4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更にアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しないことを特徴とする帯電防止ハードコート樹脂組成物。
[請求項2]
イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が帯電防止ハードコート樹脂組成物の固形分中5?98重量%である請求項1に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物。
[請求項3]
請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物を塗布して成ることを特徴とするトリアセチルセルロースフィルム。」

4.取消理由通知に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成30年7月18日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
なお、各引用文献は、下記5.(1)「引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。
(1)理由I(新規性)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)理由II(進歩性 その1)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)理由III(進歩性 その2)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明及び周知の技術的事項(下記の引用文献5?7)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(4)理由IV(進歩性 その3)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献4に記載された発明及び周知の技術的事項(下記の引用文献1?3、5?7)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(5)理由V(拡大先願 その1)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願8の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(6)理由VI(拡大先願 その2)
本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願9?11の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(同法第184条の13参照)。
(7)理由VII(サポート要件)及び理由VIII(実施可能要件)
ア 本件明細書の[0006]等の記載によると、本件発明の課題は、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない帯電防止ハードコート樹脂組成物を提供すること」にあるものと解される。
イ これに対して、本件発明1の樹脂組成物の構成成分とされる(A)成分及び(B)成分については、[0011]?[0014]及び[0015]?[0020]に幅広い例示を含む一般記載があるが、当該例示と上記課題である「干渉縞が発生しない」こととを具体的に関連付ける説明は記載されていない。また、本件発明1における「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」ことと「干渉縞が発生しない」こととの関係も特段読み取れない。
ウ さらに、[0035]?[0044]に記載された実施例1、2及び比較例1の実験データを参酌しても、本件発明1及び上記一般記載に包含される広範な(A)成分及び(B)成分の組合せにより、「干渉縞が発生しない」という課題を解決できる理由を理解することは困難である。
エ 加えて、[0003]?[0004]に記載された干渉縞に関する背景技術を参酌しても、本件発明1の(A)成分及び(B)成分としてどのような種類のものを組み合わせて用いれば、トリアセチルセルロース上において「干渉縞が発生しない」ような屈折率を有する硬化物層が形成されるのかは具体的には理解できないし、また、溶媒が必須成分とされていない本件発明1に基づいて、実際に「干渉縞が発生しない」ようにするためには、どのような成分の組合せを用いればよいのかも具体的には理解することができないし、さらに、溶媒を用いるとしても、広範な(A)成分及び(B)成分等の含有成分を適切に溶解させ、かつ「干渉縞が発生しない」ようにするためには、どのような溶媒及びその他の成分の組合せを用いればよいのか、具体的に理解することは困難である。
オ そうすると、本件明細書の記載及び本件特許に係る出願の出願時における技術常識を参酌しても、当業者が本件発明1の範囲まで拡張された範囲において、上記課題を解決し得るものと認識できるとは認められないし、実際に上記課題を解決し得る成分組成を、実施例1、2以外の組合せで具体的に見出そうとすれば、当業者は過度の試行錯誤を強いられることになるものと認められる。
本件発明1を直接又は間接的に引用して記載されている本件発明2、3についても、本件発明1と同様である。
カ よって、本件発明1?3は、いずれも発明の詳細な説明に上記課題を解決し得るものとして実質的に記載されたものとすることができず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
また、本件の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとすることができず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

5.取消理由通知に記載した取消理由についての判断
(1)引用文献及びその記載事項
<引用文献等一覧>
1.特許第4600605号公報(申立人Aの甲第1号証、申立人Bの甲第2号証)
2.特許第4600606号公報(申立人Aの甲第2号証、申立人Bの甲第1号証)
3.特許第4678451号公報(申立人Aの甲第3号証、申立人Bの甲第3号証)
4.特開2006-213802号公報(申立人Aの甲第4号証)
5.特開2011-81121号公報(申立人Bの甲第4号証)
6.特開2005-186435号公報(申立人Bの甲第5号証)
7.特開2005-43647号公報(申立人Bの甲第6号証)
8.特願2011-213336号(特開2012-215819号)(申立人Bの甲第7号証)
9.PCT/JP2011/060968号(国際公開第2011/142429号)(申立人Bの甲第8号証)
10.PCT/JP2011/065876号(国際公開第2012/008444号)(申立人Bの甲第9号証)
11.特願2011-193523号(国際公開第2013/035627号)(申立人Bの甲第10号証の1及び甲第10号証)
12.特開2011-74232号公報(申立人Bの甲第11号証)

(i)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1]
帯電防止性共重合体(A)、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)及び溶剤(D)を含む帯電防止用コーティング組成物であって、
前記帯電防止性共重合体(A)が、下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩基を有する化合物(a-1)及び下記一般式(2)で表されるアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a-2)を必須の構成成分とする共重合体であり、
前記溶剤(D)が、アルコール系溶剤(d-1)及び炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)を含み、
前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光重合開始剤(C)を0.1?20重量部を含有し、
前記(A)?(D)の合計100重量%中に、溶剤(D)を30?80重量%含有し、
前記溶剤(D)の100重量%中、アルコール系溶剤(d-1)の含有量が5?25重量%、炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)の含有量が55?90重量%である、
ことを特徴とする帯電防止用コーティング組成物。
一般式(1)
CH_(2)=C(R^(1))COZ(CH_(2))_(k)N^(+)(R^(2))(R^(3))R^(4)・X^(-)
(式中、R^(1)はHまたはCH_(3) 、R^(2)?R^(4)は炭素数が1?9の炭化水素基、Zは酸素原子またはNH基、kは1?10の整数、X^(-)は1価のアニオンを表す。)
一般式(2)
CH_(2)=C(R^(5))COO(AO)_(n)R^(6)
(式中、R^(5)はHまたはCH_(3)、R^(6)は水素または炭素数が1?22の炭化水素基、nは2?200の整数、Aは炭素数が2?4のアルキレン基を表す。)
・・・
[請求項4]
トリアセチルセルロース透明支持体の少なくとも一方の面へ、請求項1?3いずれか記載の帯電防止コーティング用組成物を用いた帯電防止層を形成してなる帯電防止フィルム。」

(1-2)「[0007]
本発明は、帯電防止性を有すると共に、ハードコートとして十分な耐擦傷性、透明性を備え、さらには、近年、要求の増加している防水性にも応えることができるような耐久性に優れた光硬化性のコーティング用組成物、およびこのコーティング用組成物を用いた帯電防止層を形成してなる帯電防止フィルムを提供する事を目的とする。」

(1-3)「[0035]
次に、本発明における溶剤(D)について説明する。
従来、帯電防止用コーティング組成物に使用される溶剤は、親水性の高い帯電防止性共重合体と疎水性の高い光硬化性組成物を相溶させるため、アルコール等の高極性溶剤とエーテル、ケトン、エステル、炭化水素等の低極性溶剤を混合するのが一般的であった。
本発明では、帯電防止性共重合体(A)と3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)との相溶性の観点から、高極性溶剤としてアルコール系溶剤(d-1)と、低極性溶剤として炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)を併用することによって、十分な帯電防止性能を保ちつつハードコート性能を大きく向上させることができるようになった。
[0036]
即ち、低極性溶剤として、アセテート以外の溶剤、例えばエステル、エーテル、ケトン、炭化水素系溶剤等を用いると、耐擦傷性が低下したり、温水浸漬試験で帯電防止性が低下したりする場合がある。この現象は特に透明支持体として、トリアセチルセルロースを用いた場合に顕著である。原因は明確ではないが、アセテート以外の上記の低極性溶剤を多量に用いると、乾燥の工程で帯電防止性共重合体(A)が塗膜表面に著しく局在化し、塗膜表面の架橋密度が低下するためと推察される。
また、アセテート系溶剤であっても炭素数6以上のアセテート系溶剤では、アルコール系溶剤(d-1)に比べ、エステルの揮発速度が遅く、帯電防止性共重合体(A)の表面局在化が上手く起こらず、帯電防止性が低下したり、膜が白化したりするなどの不具合が生じる。
・・・
[0040]
本発明の帯電防止用コーティング組成物は、溶剤(D)として、前記アルコール系溶剤(d-1)及び炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)と共に、任意のエーテル、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。具体的には、溶剤100重量%中に、その他の溶剤は20重量%以下であることが好ましい。
例えば、トリアセチルセルロース支持体を溶解し、密着性を付与する溶剤として、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸エステル類等が知られている。これらを、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
[0049]
本発明の帯電防止コーティング剤は透明性、帯電防止性、耐擦傷性に優れ、さらに、浸水後の耐久性にも優れている。
透明性は、HAZEで評価することができ、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
帯電防止性は、表面抵抗値で評価することができ、5×10^(12)Ω/□以下が好ましい。
また、耐擦傷性は傷の本数で評価することができ、5本以下が好ましく、より好ましくは0本である。
また、本発明によれば、温水浸後にこれらの諸物性を保つことが可能である。これらの効果は、支持体としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用した場合に特に耐擦傷性の点で顕著であり、本発明の帯電防止コーティング組成物は、LCDやPDP等の光学ディスプレイ用途、プラスチック成型品の表面コート用途など、帯電防止性に加えてハードコート性と透明性が要求される各種用途に好適に使用できる。」

(1-4)「[0051]
(合成例1)
〈アルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a-2-1)の製造〉
攪拌装置、温度計、アルキレンオキサイド導入管、並びに、窒素ガス導入管を備えたオートクレーブに、ドデカノール352.5部、トルエン713部、および、水酸化カリウム2部を仕込み、系中を窒素ガスにて置換した後、反応容器内圧力8kgf/cm^(2)以下、温度90℃以下でエチレンオキサイド2500部(ドデカノールに対して30倍モル)を4時間かけて圧入し、さらに90℃で5時間反応させた。次に空気を通じて未反応のエチレンオキサイドを除去した後、協和化学工業(株)製キョーワード600[アルカリ(土類)金属水酸化物の吸着除剤]を42.0部加え、乾燥空気5kPa、30℃の条件にて2時間処理後、濾別し、得られた濾液からトルエンを加熱減圧によって除去し、ポリエチレンオキサイド付加アルコールを得た。
得られたポリエチレンオキサイド付加アルコール300.9部を攪拌装置、温度計、空気導入管、液体添加ラインおよび精留塔を取り付けたフラスコに移し、メタクリル酸メチル200部(ポリエチレンオキサイド付加アルコールに対して10倍モル)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.04部仕込み、乾燥空気を吹き込みながら、80℃に加熱した後、オルトチタン酸テトライソプロピル0.2部を1時間毎に加え、エステル交換反応させた。反応中、必要に応じて副生するメタノールとメタクリル酸メチルを共沸混合物として反応系外へ留去させた。4時間後、アルコール転化率が95%になったところで反応を終了した。
得られた溶液を冷却し、水洗、脱水、濃縮を行い、濾過してエチレンオキサイド基数30とドデシル基を有する化合物(a-2-1)を得た。
なお、アルキレンオキサイド基数は、アルキレンオキサイド付加工程において使用したアルキレンオキサイドとアルコールとのモル比(理論値)をもって表す。
[0052]
〈帯電防止性共重合体(A-1)の製造(共重合過程)〉
攪拌翼、還流冷却器、およびガス導入口を供えたフラスコに、前記で合成した(a-2-1)30部、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド50部、メチルメタクリレート20部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部、エタノール233部を仕込み、窒素気流下、70℃で8時間反応した。反応終了後、冷却し、帯電防止性共重合体(A-1)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。」

(1-5)「[0053]
(合成例2)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにオクタノールを246.4部使用し、トルエンの量を393.0部に変更した。また、エチレンオキサイド2500部の代わりに、エチレンオキサイド666.7部(オクタノールに対して8倍モル)を2時間かけて圧入後、続いてプロピレンオキサイド659.2部(オクタノールに対して6倍モル)を2時間かけて圧入した。また、エステル化工程において、前記アルキレンオキサイド付加工程で得られたポリエチレン・ポリプロピレンオキサイド付加アルコールを165.8部用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数8、プロピレンオキサイド基数6とオクチル基を有する化合物(a-2-2)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-2)へ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-2)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0054]
(合成例3)
合成例1の共重合過程において、メチルメタクリレートをラウリルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-3)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0055]
(合成例4)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにオクタノールを246.4部使用し、エチレンオキサイド833.3部(オクタノールに対して10倍モル)、トルエンの量を269.9部に変更、また、エステル化工程において、ポリエチレンオキサイド付加アルコールの量を113.9部とした以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数10とオクチル基を有する化合物(a-2-3)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-3)に、メチルメタクリレートをラウリルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-4)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0056]
(合成例5)
合成例1の共重合過程において、化合物(a-2-1)を合成例4で得られた化合物(a-2-3)に、メチルメタクリレートをシクロヘキシルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-5)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0057]
(合成例6)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにステアリルアルコールを511.7部使用し(ステアリルアルコールに対して30倍モルのエチレンオキサイドを使用)、トルエンの量を752.9部に変更、また、エステル化工程において、ポリエチレンオキサイド付加アルコールの量を317.7部とした以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数30とオクタデシル基を有する化合物(a-2-4)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-4)に、メチルメタクリレートをシクロヘキシルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-6)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0058]
(合成例7)
合成例1の共重合過程において、メチルメタクリレートをベンジルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-7)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0059]
(合成例8)
合成例1の共重合過程において、化合物(a-2-1)を合成例2で得られた化合物(a-2-2)に、メチルメタクリレートをベンジルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-8)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。」

(1-6)「[0060]
(実施例1)
ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)40重量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)10重量部に、合成例1で合成した帯電防止性共重合体のエタノール溶液を、帯電防止性共重合体が固形分で5重量部となるように加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部添加してなる組成物を、酢酸メチル、エタノール及び1-メトキシ-2-プロパノールで希釈し、溶媒組成が酢酸メチル/エタノール/1-メトキシ-2-プロパノール=80/15/5(重量比)の溶剤を50重量%含有する帯電防止組成物を調製した。(溶剤組成中のエタノールの一部は帯電防止性共重合体溶液由来で混入した。)
[0061]
この組成物を厚さ約80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)、あるいは表面易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製:コスモシャインA4100)上にバーコーターを用いて塗布し、熱風オーブンで溶剤を除去した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗布層を硬化させ、膜厚6μmの帯電防止ハードコートフィルムを得た。
[0062]
得られた帯電防止ハードコート層を有するフィルムについて次の評価方法により評価を行い、結果を表1に示した。
・・・
[0071]
(実施例2?12、比較例1?3)
使用する帯電防止性共重合体を、表1および表2に示すように合成例1?8で得られた帯電防止性共重合体(A-1?8)エタノール溶液とし、溶剤組成を表1および表2に示す割合とした以外は実施例1と同様にして帯電防止組成物を得た。さらに同様の評価を行い、その結果を表1および表2に示した。」

(1-7)「[0073]
[表1]



(1-8)「[0076]
表1の結果より、・・・実施例1?12はいずれも、溶剤(D)にアルコール系溶剤(d-1)と炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)を使用しており、透明性・帯電防止性・硬度のバランスの良い膜が得られた。実施例4?6より分かるように、溶剤(D)には、アルコール系溶剤(d-1)及び炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)と共に、エーテル、ケトン、等の溶剤を用いることができる。また、実施例4および6と実施例5の比較から、溶剤(D)中の炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)は55重量%以上が好ましい事が分かる。」

(ii)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-1)「[請求項1]
分子中に4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、水への溶解性が20?25℃において0.2g/L以下の光重合開始剤(c-1)及び水への溶解性が20?25℃において1g/L以上の光重合開始剤(c-2)を含む光重合開始剤(C)、アルコール系溶剤(d-1)を含む溶剤(D)を含み、
前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光重合開始剤(c-1)と(c-2)を合計で0.1?20重量部、(c-1)/(c-2)=2.5/1?1/2.5(重量比)の割合で含有する、
ことを特徴とする帯電防止用コーティング組成物。
・・・
[請求項9]
トリアセチルセルロース透明支持体の少なくとも一方の面へ、請求項1?8いずれかに記載の帯電防止コーティング用組成物を用いた帯電防止層を形成してなる帯電防止フィルム。」

(2-2)「[0007]
本発明は、帯電防止性を有すると共に、ハードコートとして十分な耐擦傷性、透明性を備え、さらには、近年、要求の増加している防水性にも応えることができるような耐久性に優れた光硬化性のコーティング用組成物、およびこのコーティング用組成物を用いた帯電防止層を形成してなる帯電防止フィルムを提供する事を目的とする。」

(2-3)「[0047]
次に、本発明における溶剤(D)について説明する。
本発明で使用する溶剤(D)としては、帯電防止性共重合体(A)を溶解するためにアルコール系溶剤(d-1)を用いる。
[0048]
本発明におけるアルコール系溶剤(d-1)としては、帯電防止性共重合体(A)を得る際に用い得る溶剤として例示したものが同様に例示でき、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0049]
本発明では、溶剤(D)としてさらに、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)を相溶させるために、エーテル、ケトン、エステル、炭化水素等の低極性溶剤を含むことが好ましい。特に低極性溶剤として、炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)を、アルコール系溶剤(d-1)と併用すると、十分な帯電防止性能を保ちつつハードコート性能が大きく向上し、耐擦傷性、温水への浸漬試験への耐久性が向上するため、好ましい。
[0050]
炭素数3?5のアセテート(d-2)としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピルが挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0051]
低極性溶剤として、アセテート以外の溶剤、例えばエステル、エーテル、ケトン、炭化水素系溶剤等を用いると、耐擦傷性が低下したり、温水浸漬試験で帯電防止性が低下したりする場合がある。この現象は特に透明支持体として、トリアセチルセルロースを用いた場合に顕著である。原因は明確ではないが、アセテート以外の前記の低極性溶剤を多量に用いると、乾燥の工程で帯電防止性共重合体(A)が塗膜表面に著しく局在化し、塗膜表面の架橋密度が低下するためと推察される。
また、アセテート系溶剤であっても炭素数6以上のアセテート系溶剤では、アルコール系溶剤(d-1)に比べ、エステルの揮発速度が遅く、帯電防止性共重合体(A)の表面局在化が上手く起こらず、帯電防止性が低下したり、膜が白化したりするなどの不具合が生じることがある。
[0052]
本発明で用いることができる低極性溶剤のうち、炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)以外のものとしては、例えば、トリアセチルセルロース支持体を溶解し、密着性を付与する溶剤として、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸エステル類等が挙げられる。これらを、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)以外のこれら低極性溶剤を用いる場合には、溶剤100重量%中に、その他の溶剤は20重量%以下であることが好ましい。
・・・
[0062]
本発明の帯電防止コーティング剤は透明性、帯電防止性、耐擦傷性に優れ、さらに、浸水時の耐久性にも優れている。
透明性は、HAZEで評価することができ、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
帯電防止性は、表面抵抗値で評価することができ、5×10^(12)Ω/□以下が好ましい。
また、耐擦傷性は傷の本数で評価することができ、5本以下が好ましく、より好ましくは0本である。
また、本発明によれば、温水浸漬後にこれらの諸物性を保つことが可能である。これらの効果は、基材としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用した場合に特に顕著であり、本発明の帯電防止コーティング組成物は、LCDやPDP等の光学ディスプレイ用途、プラスチック成型品の表面コート用途など、帯電防止性に加えてハードコート性と透明性が要求される各種用途に好適に使用できる。」

(2-4)「[0064]
(合成例1)
〈アルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a-2-1)の製造〉
攪拌装置、温度計、アルキレンオキサイド導入管、並びに、窒素ガス導入管を備えたオートクレーブに、ドデカノール352.5部、トルエン713部、および、水酸化カリウム2部を仕込み、系中を窒素ガスにて置換した後、反応容器内圧力8kgf/cm2以下、温度90℃以下でエチレンオキサイド2500部(ドデカノールに対して30倍モル)を4時間かけて圧入し、さらに90℃で5時間反応させた。次に空気を通じて未反応のエチレンオキサイドを除去した後、協和化学工業(株)製キョーワード600[アルカリ(土類)金属水酸化物の吸着除剤]を42.0部加え、乾燥空気5kPa、30℃の条件にて2時間処理後、濾別し、得られた濾液からトルエンを加熱減圧によって除去し、ポリエチレンオキサイド付加アルコールを得た。
得られたポリエチレンオキサイド付加アルコール300.9部を攪拌装置、温度計、空気導入管、液体添加ラインおよび精留塔を取り付けたフラスコに移し、メタクリル酸メチル200部(ポリエチレンオキサイド付加アルコールに対して10倍モル)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.04部仕込み、乾燥空気を吹き込みながら、80℃に加熱した後、オルトチタン酸テトライソプロピル0.2部を1時間毎に加え、エステル交換反応させた。反応中、必要に応じて副生するメタノールとメタクリル酸メチルを共沸混合物として反応系外へ留去させた。4時間後、アルコール転化率が95%になったところで反応を終了した。
得られた溶液を冷却し、水洗、脱水、濃縮を行い、濾過してエチレンオキサイド基数30とドデシル基を有する化合物(a-2-1)を得た。
なお、アルキレンオキサイド基数は、アルキレンオキサイド付加工程において使用したアルキレンオキサイドとアルコールとのモル比(理論値)をもって表す。
[0065]
〈帯電防止性共重合体(A-1)の製造(共重合過程)〉
攪拌翼、還流冷却器、およびガス導入口を供えたフラスコに、前記で合成した(a-2-1)30部、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド50部、メチルメタクリレート20部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部、エタノール233部を仕込み、窒素気流下、70℃で8時間反応した。反応終了後、冷却し、帯電防止性共重合体(A-1)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0066]
(合成例2)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにオクタノールを246.4部使用し、トルエンの量を393.0部に変更した。また、エチレンオキサイド2500部の代わりに、エチレンオキサイド666.7部(オクタノールに対して8倍モル)を2時間かけて圧入後、続いてプロピレンオキサイド659.2部(オクタノールに対して6倍モル)を2時間かけて圧入した。また、エステル化工程において、前記アルキレンオキサイド付加工程で得られたポリエチレン・ポリプロピレンオキサイド付加アルコールを165.8部用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数8、プロピレンオキサイド基数6とオクチル基を有する化合物(a-2-2)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-2)へ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-2)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0067]
(合成例3)
合成例1の共重合過程において、メチルメタクリレートをラウリルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-3)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0068]
(合成例4)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにオクタノールを246.4部使用し、エチレンオキサイド833.3部(オクタノールに対して10倍モル)、トルエンの量を269.9部に変更、また、エステル化工程において、ポリエチレンオキサイド付加アルコールの量を113.9部とした以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数10とオクチル基を有する化合物(a-2-3)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-3)に、メチルメタクリレートをラウリルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-4)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0069]
(合成例5)
合成例1の共重合過程において、化合物(a-2-1)を合成例4で得られた化合物(a-2-3)に、メチルメタクリレートをシクロヘキシルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-5)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0070]
(合成例6)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにステアリルアルコールを511.7部使用し(ステアリルアルコールに対して30倍モルのエチレンオキサイドを使用)、トルエンの量を752.9部に変更、また、エステル化工程において、ポリエチレンオキサイド付加アルコールの量を317.7部とした以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数30とオクタデシル基を有する化合物(a-2-4)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-4)に、メチルメタクリレートをシクロヘキシルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-6)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0071]
(合成例7)
合成例1の共重合過程において、メチルメタクリレートをベンジルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-7)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0072]
(合成例8)
合成例1の共重合過程において、化合物(a-2-1)を合成例2で得られた化合物(a-2-2)に、メチルメタクリレートをベンジルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-8)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。」

(2-5)「[0073]
(実施例1)
ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)40重量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)10重量部に、4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体のメタノール溶液(綜研化学(株)製:エレコンド PQ-10、固形分50%)を、帯電防止性共重合体の含有量が5重量部となるように加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部とイルガキュアー2959(チバスペシャリティケミカルズ製)を添加してなる組成物を、メチルエチルケトン、メタノール、1-メトキシ-2-プロパノールで希釈し、溶媒組成がメチルエチルケトン/メタノール/1-メトキシ-2-プロパノール=80/5/15(重量比)の溶剤を50重量%含有する帯電防止組成物を調製した。(溶剤組成中のメタノールの一部は高分子帯電防止剤溶液由来で混入した。)
[0074]
この組成物を厚さ約80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)社製)、あるいは表面易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製:コスモシャインA4100)上にバーコーターを用いて塗布し、熱風オーブンで溶剤を除去した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗布層を硬化させ、膜厚6μmの帯電防止ハードコートフィルムを得た。
・・・
[0084]
(実施例2?18(当審注:摘記2-6の表1?表3の記載を参酌すると、「実施例2?24」の誤記と認められる。)、比較例1?4)
使用する高分子帯電防止剤を、表1(当審注:「表1」は、「表1?表4」の誤記と認められる。同段落の以下の「表1」という記載も同様。)に示すように合成例1?8で得られた高分子帯電防止剤(A-1?8)エタノール溶液とし、溶剤組成と光重合開始剤量を表1に示す割合とした以外は実施例1と同様にして帯電防止組成物を得た。さらに同様の評価を行い、その結果を表1に示した。」

(2-6)「[0085]
[表1]

[0086]
[表2]

[0087]
[表3]



(iii)引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3-1)「[請求項1]
帯電防止性共重合体(A)、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)及び溶剤(D)を含む帯電防止用コーティング組成物であって、
前記帯電防止性共重合体(A)が、下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩基を有する化合物(a-1)及び下記一般式(2)で表されるアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a-2)を必須の構成成分とする共重合体であり、
前記溶剤(D)が、アルコール系溶剤(d-1)及び炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)を含み、
前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光開始剤(C)を0.1?20重量部含有し、
前記(A)?(D)の合計100重量%中に、溶剤(D)を20?80重量%含有し、前記溶剤(D)の100重量%中、アルコール系溶剤(d-1)の含有量が5?30重量%、炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)の含有量が20?95%であることを特徴とする帯電防止用コーティング組成物。
一般式(1)
CH_(2)=C(R^(1))COZ(CH_(2))_(k)N^(+)(R^(2))(R^(3))R^(4)・X^(-)
(式中、R^(1)はHまたはCH_(3) 、R^(2)?R^(4)は炭素数が1?9の炭化水素基、Zは酸素原子またはNH基、kは1?10の整数、X^(-)は1価のアニオンを表す。)
一般式(2)
CH_(2)=C(R^(5))COO(AO)_(n)R^(6)
(式中、R^(5)はHまたはCH_(3)、R^(6)は水素または炭素数が1?22の炭化水素基、nは2?200の整数、Aは炭素数が2?4のアルキレン基を表す。)
・・・
[請求項5]
トリアセチルセルロース透明支持体の少なくとも一方の面へ、請求項1?4いずれか記載の帯電防止コーティング用組成物を用いた帯電防止層を形成してなる帯電防止フィルム。」

(3-2)「[0008]
本発明は、帯電防止性を有すると共に、ハードコートとして十分な耐擦傷性、透明性を備え、さらには、近年、要求の増加している防水性にも応えることができるような耐久性に優れた光硬化性のコーティング用組成物、およびこのコーティング用組成物を用いた帯電防止層を形成してなる帯電防止フィルムを提供する事を目的とする。」

(3-3)「[0036]
次に、本発明における溶剤(D)について説明する。
従来、帯電防止用コーティング組成物に使用される溶剤は、親水性の高い帯電防止性共重合体と疎水性の高い光硬化性組成物を相溶させるため、アルコール等の高極性溶剤とエーテル、ケトン、エステル、炭化水素等の低極性溶剤を混合するのが一般的であった。
本発明では、帯電防止性共重合体(A)と3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)との相溶性の観点から、高極性溶剤としてアルコール系溶剤(d-1)と、低極性溶剤として炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)を併用することによって、十分な帯電防止性能を保ちつつハードコート性能を大きく向上させることができるようになった。
[0037]
即ち、低極性溶剤として、炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類以外の溶剤、例えばエステル、ケトン、炭化水素系溶剤等を用いると、帯電防止性能の発現が不十分であったり、耐擦傷性が低下したり、温水浸漬試験で帯電防止性が低下したりする場合がある。原因は明確ではないが、炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類以外の上記の低極性溶剤を多量に用いると、乾燥の工程で帯電防止性共重合体(A)が塗膜表面付近に全く配向せず帯電防止性能が不十分となったり、逆に表面付近に帯電防止性共重合体(A)が著しく局在化し塗膜表面の架橋密度が低下するためであると推察される。
・・・
[0041]
本発明の帯電防止用コーティング組成物は、溶剤(D)として、前記アルコール系溶剤(d-1)及び炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類の溶剤(d-2)と共に、任意のエーテル、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。具体的には、溶剤100重量%中に、その他の溶剤は60重量%未満であることが好ましい。
例えば、トリアセチルセルロース支持体を溶解し、密着性を付与する溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等が知られている。これらを、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・
[0050]
本発明の帯電防止コーティング剤は透明性、帯電防止性、耐擦傷性に優れ、さらに、浸水後の耐久性にも優れている。
透明性は、HAZEで評価することができ、5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。
帯電防止性は、表面抵抗値で評価することができ、5×10^(12)Ω/□以下が好ましい。
また、耐擦傷性は傷の本数で評価することができ、5本以下が好ましく、より好ましくは0本である。
また、本発明によれば、温水浸後にこれらの諸物性を保つことが可能である。これらの効果は、支持体としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用した場合に特に耐擦傷性の点で顕著であり、本発明の帯電防止コーティング組成物は、LCDやPDP等の光学ディスプレイ用途、プラスチック成型品の表面コート用途など、帯電防止性に加えてハードコート性と透明性が要求される各種用途に好適に使用できる。」

(3-4)「[0052]
(合成例1)
〈アルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a-2-1)の製造〉
攪拌装置、温度計、アルキレンオキサイド導入管、並びに、窒素ガス導入管を備えたオートクレーブに、ドデカノール352.5部、トルエン713部、および、水酸化カリウム2部を仕込み、系中を窒素ガスにて置換した後、反応容器内圧力8kgf/cm^(2)以下、温度90℃以下でエチレンオキサイド2500部(ドデカノールに対して30倍モル)を4時間かけて圧入し、さらに90℃で5時間反応させた。次に空気を通じて未反応のエチレンオキサイドを除去した後、協和化学工業(株)製キョーワード600[アルカリ(土類)金属水酸化物の吸着除剤]を42.0部加え、乾燥空気5kPa、30℃の条件にて2時間処理後、濾別し、得られた濾液からトルエンを加熱減圧によって除去し、ポリエチレンオキサイド付加アルコールを得た。
得られたポリエチレンオキサイド付加アルコール300.9部を攪拌装置、温度計、空気導入管、液体添加ラインおよび精留塔を取り付けたフラスコに移し、メタクリル酸メチル200部(ポリエチレンオキサイド付加アルコールに対して10倍モル)、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.04部仕込み、乾燥空気を吹き込みながら、80℃に加熱した後、オルトチタン酸テトライソプロピル0.2部を1時間毎に加え、エステル交換反応さ
せた。反応中、必要に応じて副生するメタノールとメタクリル酸メチルを共沸混合物として反応系外へ留去させた。4時間後、アルコール転化率が95%になったところで反応を終了した。
得られた溶液を冷却し、水洗、脱水、濃縮を行い、濾過してエチレンオキサイド基数30とドデシル基を有する化合物(a-2-1)を得た。
なお、アルキレンオキサイド基数は、アルキレンオキサイド付加工程において使用したアルキレンオキサイドとアルコールとのモル比(理論値)をもって表す。
[0053]
〈帯電防止性共重合体(A-1)の製造(共重合過程)〉
攪拌翼、還流冷却器、およびガス導入口を供えたフラスコに、前記で合成した(a-2-1)30部、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド50部、メチルメタクリレート20部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部、エタノール233部を仕込み、窒素気流下、70℃で8時間反応した。反応終了後、冷却し、帯電防止性共重合体(A-1)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0054]
(合成例2)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにオクタノールを246.4部使用し、トルエンの量を393.0部に変更した。また、エチレンオキサイド2500部の代わりに、エチレンオキサイド666.7部(オクタノールに対して8倍モル)を2時間かけて圧入後、続いてプロピレンオキサイド659.2部(オクタノールに対して6倍モル)を2時間かけて圧入した。また、エステル化工程において、前記アルキレンオキサイド付加工程で得られたポリエチレン・ポリプロピレンオキサイド付加アルコールを165.8部用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数8、プロピレンオキサイド基数6とオクチル基を有する化合物(a-2-2)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-2)へ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-2)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0055]
(合成例3)
合成例1の共重合過程において、メチルメタクリレートをラウリルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-3)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0056]
(合成例4)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにオクタノールを246.4部使用し、エチレンオキサイド833.3部(オクタノールに対して10倍モル)、トルエンの量を269.9部に変更、また、エステル化工程において、ポリエチレンオキサイド付加アルコールの量を113.9部とした以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数10とオクチル基を有する化合物(a-2-3)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-3)に、メチルメタクリレートをラウリルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-4)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0057]
(合成例5)
合成例1の共重合過程において、化合物(a-2-1)を合成例4で得られた化合物(a-2-3)に、メチルメタクリレートをシクロヘキシルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-5)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0058]
(合成例6)
合成例1のアルキレンオキサイド付加工程において、ドデカノールの代わりにステアリルアルコールを511.7部使用し(ステアリルアルコールに対して30倍モルのエチレンオキサイドを使用)、トルエンの量を752.9部に変更、また、エステル化工程において、ポリエチレンオキサイド付加アルコールの量を317.7部とした以外は合成例1と同様の操作を行い、エチレンオキサイド基数30とオクタデシル基を有する化合物(a-2-4)を得た。さらに共重合過程において、化合物(a-2-1)を前記化合物(a-2-4)に、メチルメタクリレートをシクロヘキシルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-6)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0059]
(合成例7)
合成例1の共重合過程において、メチルメタクリレートをベンジルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-7)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。
[0060]
(合成例8)
合成例1の共重合過程において、化合物(a-2-1)を合成例2で得られた化合物(a-2-2)に、メチルメタクリレートをベンジルメタクリレートへ変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、帯電防止性共重合体(A-8)のエタノール溶液(固形分30重量%)を得た。」

(3-5)「[0061]
(実施例1)
ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)40重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)10重量部に、合成例1で合成した帯電防止性共重合体のエタノール溶液を、帯電防止性共重合体が固形分で5重量部となるように加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部添加してなる組成物を、酢酸メチル、エタノール及び1-メトキシ-2-プロパノールで希釈し、溶媒組成が炭酸ジメチル/エタノール/1-メトキシ-2-プロパノール=80/15/5(重量比)の溶剤を50重量%含有する帯電防止組成物を調製した。(溶剤組成中のエタノールの一部は帯電防止性共重合体溶液由来で混入した。)
[0062]
この組成物を厚さ約80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製)、あるいは厚さ約100μmの表面易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製:ルミラーU48)上にバーコーターを用いて塗布し、熱風オーブンで溶剤を除去した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗布層を硬化させ、膜厚6μmの帯電防止ハードコートフィルムを得た。
[0063]
得られた帯電防止ハードコート層を有するフィルムについて次の評価方法により評価を行い、結果を表1に示した。
・・・
[0072]
(実施例2?12、比較例1?3)
使用する帯電防止性共重合体を、表1および表2に示すように合成例1?8で得られた帯電防止性共重合体(A-1?8)エタノール溶液とし、溶剤組成を表1および表2に示す割合とした以外は実施例1と同様にして帯電防止組成物を得た。さらに同様の評価を行い、その結果を表1および表2に示した。」

(3-6)「[0074]
[表1]



(3-7)「[0077]
表1、表2の結果より、・・・実施例1?13はいずれも、溶剤(D)にアルコール系溶剤(d-1)と炭酸エステル類又は環状エーテル類(d-2)を好適な配合比で使用しており、透明性・帯電防止性・硬度のバランスの良い膜が得られた。」

(iv)引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(4-1)「[請求項1]
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]と第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]と微粒子[III]を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。」

(4-2)「[0002]
ウレタンアクリレート系化合物は高い可とう性と耐摩耗性を有することから、光学フィルムのハードコート層として用いられることが多いが、フィルムに供する場合には、電気伝導性が低く、静電気を蓄積させ易く塵や埃が付着し易いため、帯電防止能が要求される。・・・
[0003]
・・・一方、光学フィルムにおいては、ディスプレイ画面への写り込みや反射などによる視認性の低下を防止するため、防眩性を付与する要求も高いが、上記特許文献1の開示技術においては、かかる樹脂組成物から得られる硬化塗膜では、防眩性が得られないものであった。
[0004]
また、特許文献1において、防眩性を付与すべく、微粒子を配合することが考えられるが、かかる方法においては、硬化塗膜へ防眩性を付与した場合、シロモヤが発生し、ディスプレイの視認性が低下する点でコーティング剤として実用性に劣るものであった。
[0005]
そこで、本発明ではこのような背景下において、塗膜物性に優れると共に、帯電防止性と光学特性にも優れたコーティング層を形成するのに有用な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
[課題を解決するための手段]
[0006]
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]と第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]と微粒子[III]を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
中でも、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[i]が、第4級アンモニウム塩基を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることが帯電防止性の点で好ましく、更には光沢度やディスプレイ視認性(シロモヤ)の点でも好ましい。」

(4-3)「[0086]
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、これを対象物に適用した後、活性エネルギー線を照射することにより硬化される。
かかる対象物としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS樹脂、アクリル系樹脂等やその成形品(フィルム、シート、カップ、等)、金属、ガラス等が挙げられる。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アクリル樹脂フィルム、日本ゼオン社製「ゼオノア」やJSR社製「アートン」等の脂環式構造含有樹脂フィルム等の光学フィルムに適用することが、本発明においては有用である。」

(4-4)「[0089]
かくして本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]と第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]と微粒子[III]を含有してなるため、帯電防止性や光学特性、塗膜硬度や耐擦傷性などの塗膜物性に優れた効果を示すものであり、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、インク、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材など、各種の被膜形成材料として有用である。中でも、光学フィルムのコーティング剤として用いるのが非常に有用である。」

(4-5)「[0094]
〔ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-a]〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート199.0g(0.90モル)と2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール2.0g、ジブチルスズジラウレート0.02gを仕込み、60℃以下でペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基価125.4mgKOH/g)(大阪有機化学工業社製、「ビスコート#300」)801.0g(1.79モル)を約1時間で滴下し、60℃で8時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-a]を得た(樹脂分濃度100%)。
得られたウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-a]の重量平均分子量は1400であった。」

(4-6)「[0095]
第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]の合成
〔第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II-1]〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学社製、「ライトエステルDM」)48.1g(0.34モル)とN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物(共栄社化学社製、「ライトエステルDQ-100」)158.6g(0.48モル)、2-エチルヘキシルメタクリレート72.1g(0.39モル)、アゾビスイソブチロニトリル2.38g、イソプロピルアルコール480.8g、メチルエチルケトン240.4gを仕込み、撹拌開始後に窒素置換し、80℃に昇温し、8時間反応して重合体[II-1]を得た(樹脂分濃度28%)。」

(4-7)「[0096]
微粒子[III]
〔微粒子[III-1]〕
ポリエチレン微粒子の分散物(粒子系は約3μm)「T-10P-3」(岐阜セラック社製)を用いた。
[0097]
エチレン性不飽和モノマー[V]の例
〔エチレン性不飽和モノマー[V-1]〕
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学社製、「ライトアクリレートPE-4A」)を用いた。
〔エチレン性不飽和モノマー[V-2]〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、「カヤラッドDPHA」)
を用いた。」

(4-8)「[0098]
実施例1?4及び比較例1?2
〔活性エネルギー線硬化型樹脂組成物〕
上記のウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]〔(A-1)、(B-2)〕又は[I-a]、第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]〔[II-1]〕、微粒子[III]、〔[III-1]〕、エチレン性不飽和モノマー[V]〔[V-1]、[V-2]〕、及び光重合開始剤[IV]〔1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア184」)〕を固形分換算で、表1に示す割合で配合し、プロピレングリコールモノメチルエーテルで光重合開始剤を除いた樹脂分が20%になるように希釈し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
[0099]
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターNo.8を用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥した後、高圧水銀灯ランプ80W、1灯を用いて、18cmの高さから5.1m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量450mJ/cm^(2))を行い、硬化塗膜を形成し、以下の評価を行った。」

(4-9)「[0108]
[表1]

( )内の数値は固形分比を、「-」は添加しなかったことを表す
[0109]
[表2]



(v)引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(5-1)「[請求項1]
透明基材の少なくとも片面に、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に有する多官能性モノマーを含有する電離放射線硬化型樹脂と、
ATO、ITO、Sb_(2)O_(5)、TiO_(2)、ZnO_(2)、Ce_(2)O_(3)の金属酸化物粒子のうち少なくとも1種類以上を含有する導電性材料に、
透明基材を溶解または膨潤させる一種類以上の溶剤1と、導電性材料が安定に分散される溶剤2により混合調液された塗布液を用いて形成されるハードコート層と、低屈折率層を順次積層されていることを特徴とする光学積層体。
・・・
[請求項5]
前記透明基材が、セルロース系フィルムであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光学積層体。」

(5-2)「[0002]
従来、各種ディスプレイに用いられるプラスチックフィルムに硬度を付帯させる為にアクリル系UV樹脂等をコーティングし、ハードコート性を付帯させる方法が用いられてきた。しかし、これらの方法によってプラスチックフィルムの硬度は改善されるものの、プラスチックフィルムおよびアクリル系UV樹脂が帯電しやすく、作業時あるいは使用時に塵やほこりが付着するという問題があり、帯電性の改善が強く要求されている。
[0003]
そこでこれらの問題点を改良するために各種導電性材料を添加することが行われているが、導電性材料を添加することで基材とハードコートの屈折率差が生じ、干渉縞が発生してしまう。
・・・
[0010]
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、優れたハードコート層と反射防止層を備え、干渉縞の発生を抑え、帯電防止性、透明性及び密着性に優れる光学積層体を提供するものである。」

(5-3)「[0019]
そこで、本発明の光学積層体は、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルムからなる透明基材を溶解または膨潤させる溶剤を用いることにより、透明基材とハードコート層界面に屈折率界面を解消し、透明基材とハードコート層の界面からの反射がなく、干渉縞のない積層体を提供することができる。」

(vi)引用文献6には、以下の事項が記載されている。
(6-1)「[請求項1]
基材と、基材上に形成されたハードコート膜とからなり、
該ハードコート膜がマトリックス成分と無機酸化物粒子が平均連結数で2?30個鎖状に連結した無機酸化物粒子群とを含んでなることを特徴とするハードコート膜付基材。」

(6-2)「[0008]
また、近年、携帯電話、PDA、ノートパソコン、液晶テレビなど、小型で軽量のものが
使用されるようになってきている。このために、使用される基材として、樹脂系基材が使用されるようになってきている。具体的には、たとえばアクリル樹脂基材、ポリカーボネート樹脂基材、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂基材などが使用されるようになってい
る。しかしながら、従来、形成されてきたハードコート膜では、これらの基材との屈折率差が大きく、光の反射する際に干渉縞が発生し、チラつき、ギラつきや、色むらなどの表示ムラが発生するなどという問題点があり、さらに、これらの樹脂基材との密着性が不充分であるという問題点もあった。」

(6-3)「[0012]
本発明では、基材表面に設けられたハードコート膜中に鎖状の無機化合物粒子群を含んでいるので、基材との密着性に優れるとともに、耐擦傷性、膜硬度等にも優れたハードコート膜付基材を提供することができる。さらに、ハードコート膜が無機化合物粒子群と五酸化アンチモン粒子を含んでいる場合には、薄膜であっても基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度等がさらに向上するとともに帯電防止性能や経済性に優れ、干渉縞が抑制されたハードコート膜付基材を提供することができる。」

(6-4)「[0043]
ハードコート膜中の五酸化アンチモン粒子の含有量がSb_(2)O_(5)として上記範囲にあれば
、基材との密着性、耐擦傷性、膜硬度の向上効果、膜硬化の促進効果等が得られる。また、五酸化アンチモンを加えることで屈折率を調整できるので、干渉縞の発生も抑制できる。なお、干渉縞は、その膜厚が光の波長以上であり、ハードコート膜と基材との屈折率差が、0.1以上になると発生する。このため、透明基材の場合、アンチモン酸化物を配合す
ることで、屈折率の調整が容易となり、干渉縞を抑制することができる。」

(vii)引用文献7には、以下の事項が記載されている。
(7-1)「[請求項1]
基材(A)の少なくとも一方の表面に、平均粒子径1?100nmの金属酸化物微粒子(B)10?60重量部と、(メタ)アクリロイル基を分子中に有する化合物(C)40?90重量部を含む帯電防止性ハードコート層を積層したことを特徴とする帯電防止性ハードコートフィルム。」

(7-2)「[0004]
用いられる帯電防止剤としては、金属酸化物微粒子や、導電性ポリマー、各種活性剤、親水性モノマー、イオン伝導性モノマーがあげられる。ハードコート層に練り混む方式において、活性剤を使用する技術(特許文献1参照)では帯電防止層が最表面にないとイオン伝導が円滑に行われないため帯電防止機能が低下してしまうという問題がある。このため、帯電防止層の上層に新たな層を形成することが困難となる。さらにイオン伝導を行うには外気中の水分が媒体となるため、湿度依存性が大きく、性能が安定しないという問題がある。イオン伝導タイプであるモノマー、親水性モノマーなどは同様の問題を抱えている。電子伝導性の金属酸化物微粒子を使用する技術(特許文献2参照)では、湿度環境による影響は見られないが、通常微粒子の屈折率が高いことや、電子伝導性であるために微粒子の配合量が決まってしまうことにより、干渉縞の低減と帯電防止機能を両立させることが困難となる。配合量が少なすぎると帯電防止機能が発現しなく、また逆に多い場合には光線透過率が低下してしまうという問題が発生し、透過率をあげるために膜厚を薄くするとフィルム保護の機能が低下してしまう問題がある。導電性ポリマーも同様の問題を抱えている。
[0005]
帯電防止層を設ける方式(特許文献3、4参照)では、新たな層を設けるためのランニングコストが上昇する上、ハードコート層と帯電防止層の界面での密着性が低下し剥離現象が生じることや屈折率の違いによる光干渉の制御が必要となるなどが新たに問題となる。
・・・
[0006]
本発明は前記課題を解消し、特に高い永久帯電防止性を示し、干渉縞の発生を抑え、基材との密着性に優れ、且つ透明性、表面硬度、擦傷性に優れた帯電防止性ハードコートフィルムを提供することを課題とする。」

(7-3)「[0016]
特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。」

(7-4)「[0020]
通常、高い屈折率を有する金属酸化物を樹脂に配合した帯電防止層は、層の屈折率も高くなり、そのため基材となるプラスチックフィルムとの層間の光干渉による干渉縞が観察される。そこで本発明では、他の金属酸化物よりも比較的屈折率の低い材料である五酸化アンチモン微粒子(屈折率:n=1.63?1.64)を用い、配合量を調整することにより、干渉縞のない帯電防止性ハードコートフィルムを提供することが出来る。」

(viii)本件特許に係る出願の出願日前の特許出願(出願日:平成23年9月28日)であって、本件特許に係る出願の出願後に出願公開(特開2012-215819号公報)された特願2011-213336号(以下、「先願8」という。)の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲(以下、「先願8明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、先願8の発明者は朝日美帆、外3名であり、本件特許に係る出願の出願日における先願8の出願人は富士フイルム株式会社であり、いずれも本件特許に係る出願の発明者及び出願人と同一ではない。

(8-1)「[請求項1]
下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有する帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
(a)イオン伝導性化合物
(b)光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ-(CH_(2)CH_(2)O)_(k)-構造を有するポリエチレンオキシド化合物(kは1?50の数を表す)
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤
・・・
[請求項6]
前記(a)イオン伝導性化合物が4級アンモニウム塩基含有ポリマーである、請求項1?5のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。
・・・
[請求項8]
透明基材上に、請求項1?7のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物から形成された帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルム。
[請求項9]
前記透明基材がセルロースアシレートフィルムである請求項8に記載の光学フィルム。」

(8-2)「[0007]
本発明の目的は、帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムを提供し得る帯電防止性ハードコート層形成用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、帯電防止性に優れたハードコート層を有する光学フィルムを提供することである。
本発明の更なる別の目的は、該光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供することである。」

(8-3)「[0065]
(溶剤)
帯電防止性ハードコート層形成用組成物は種々の有機溶剤を含有してもよい。
本発明においては、イオン伝導性化合物との相溶性得る観点で、親水性溶媒を含んでいることが好ましい。親水性溶媒としては、アルコール系溶媒、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒などが挙げられ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メチル-1ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、ジメチルカーボーネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルn-プロピルカーボネート、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-メトキシ酢酸メチル、2-エトキシ酢酸メチル、2-エトキシ酢酸エチル、アセトン、1,2-ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0066]
また、上記以外の溶剤を用いてもよい。例えば、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。例えばジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0067]
本発明の帯電防止性ハードコート層形成用組成物中の固形分の濃度は20?80質量%の範囲となるように溶媒を用いるのが好ましく、より好ましくは30?75質量%であり、最も好ましくは40?70質量%である。
・・・
[0110]
[実施例1]
〔光学フィルムの作製〕
下記に示す通りに、帯電防止性ハードコート層形成用の塗布液を調製し、透明基材上に帯電防止性ハードコート層を形成して、光学フィルム試料No.1?52を作製した。
[0111]
((a)イオン伝導性化合物の合成)
イオン伝導性化合物を、特許第4600605号公報の合成例1?8と同様に実施し、それぞれ対応する化合物として、IP-14?21(30%エタノール溶液)を合成した。
[0112]
(帯電防止性ハードコート層用塗布液の調製)
下記表1に記載の帯電防止性ハードコート層用塗布液A-1の組成となるように各成分を添加し、得られた組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して帯電防止性ハードコート層塗布液A-1(固形分濃度50質量%)とした。
帯電防止性ハードコート層用塗布液A-1と同様の方法で、各成分を下記表1及び2のように混合して溶剤に溶解して表1及び2記載の組成比率になるように調整し、固形分濃度50質量%の帯電防止性ハードコート層用塗布液A-2?A-52を作製した。」

(8-4)「[0113]
[表1]



(8-5)「[0115]
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
IP-9:前記イオン伝導性化合物IP-9
PET30:ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
Irg.184:光重合開始剤、イルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
A-TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)NKエステル)
ライトエステルDQ-100:四級アンモニウム塩系化合物、多官能モノマー含有、光重合開始剤含有ハードコート剤(共栄社化学(株)製)
リオデュラスLAS-1211:四級アンモニウム塩系化合物、多官能モノマー含有、光重合開始剤含有ハードコート剤(東洋インキ製造(株)製)
紫光UV-AS-102:四級アンモニウム塩系化合物、多官能モノマー含有、光重合開始剤含有ハードコート剤(日本合成化薬(株)製)
UA-306H:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製)
[0116]
[表3]



(8-6)「[0117]
(帯電防止性ハードコート層の作製)
層厚60μmの透明支持体としてのセルローストリアセテートフィルム(TDH60UF、富士フイルム(株)製、屈折率1.48)上に、前記帯電防止性ハードコート層用塗布液A-1をグラビアコーターを用いて塗布した。60℃で約2分間乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量150mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmの帯電防止性ハードコート層A-1を形成し、光学フィルム試料No.1を作製した。
[0118]
同様の方法で帯電防止性ハードコート層用塗布液A-2?52を用いて帯電防止性ハードコート層A-2?52を作製し、光学フィルム試料No.2?52を作製した。
[0119]
(光学フィルムの評価)
以下の方法により光学フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表4に示す。」

(8-7)「[0123]
[表4]



(8-8)「[0124]
表4に示すように、本発明の帯電防止性ハードコート層形形成用組成物を用いて形成した帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムは、表面抵抗が低く良好な帯電防止性を示した。また、本発明の帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムはゴミ付防止性及び膜硬度に優れていた。
(a)イオン伝導性化合物としてIP-14?21を使用した場合は、表面抵抗が特に低く、b)ポリアルキレンオキシド化合物としてATM-35Eを用いた場合には、鉛筆硬度に優れていた。」

(ix)本件特許に係る出願の出願日前の国際特許出願(PCT/JP2011/060968号(以下、「先願9」という。)、出願日:2011年(平成23年)5月12日)であって、本件特許に係る出願の出願後に国際公開され(国際公開第2011/142429号、国際公開日2011年11月17日)、その後特許法第184条の5第1項に規定する手続がされた(特願2012-514833号、国内書面提出日平成24年11月9日)、先願9の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲及び図面(以下、「先願9明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、先願9の発明者は吉原俊夫、外2名であり、本件特許に係る出願の出願日における先願9の出願人は大日本印刷株式会社であり、いずれも本件特許に係る出願の発明者及び出願人と同一ではない。

(9-1)「[請求項1]
トリアセチルセルロース基材上に設けられたハードコート層を有する光学積層体であって、
前記ハードコート層の形成に用いられる樹脂組成物が、4級アンモニウム塩含有重合体、バインダー樹脂及び溶剤を含有し、前記4級アンモニウム塩含有重合体は、前記バインダー樹脂よりも親水性の度合いが高いものであり、
前記バインダー樹脂は、親水性の度合いの異なる2種以上の樹脂成分を含有する
ことを特徴とする光学積層体。
・・・
[請求項4]
親水性の度合いの異なる2種以上の樹脂成分は、重量平均分子量600以下のモノマー及び重量平均分子量1000?1万のオリゴマーであり、かつ、前記モノマーの親水性の度合いが前記オリゴマーの親水性の度合いよりも高い請求項1、2又は3記載の光学積層体。
[請求項5]
重量平均分子量600以下のモノマーは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)トリアクリレート、ポリエステル(メタ)ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、及び、プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み、重量平均分子量1000?1万のオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートである請求項4記載の光学積層体。」

(9-2)「[0007]
本発明は、上記現状に鑑みて、帯電防止性、光学特性、硬度、密着性及び干渉縞防止性に優れ、更に、製造時のコストを抑制できる光学積層体、偏光板、並びに、画像表示装置を提供することを目的とする。」

(9-3)「[0036]
更に、上記樹脂組成物において、上記溶剤は、トリアセチルセルロース基材に対して浸透性を有する浸透性溶剤を含有することが好ましい。本発明において、上記浸透性溶剤の「浸透性」とは、トリアセチルセルロース基材に対する浸透性、膨潤性、湿潤性等のすべての概念を包含する意である。このような浸透性溶剤がトリアセチルセルロース基材を膨潤、湿潤することによって、上記樹脂組成物の一部がトリアセチルセルロース基材まで浸透する挙動をとる。これによって、高い強度を得ることができる。
[0037]
上記浸透性溶剤としては、ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、エステル類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、含窒素化合物;ニトロメタン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルグリコールアセテート、エーテル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテル、ハロゲン化炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン、グリコールエーテル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、その他、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンが挙げられ、またはこれらの混合物が挙げられる。なかでも、好ましくはエステル類、ケトン類が挙げられる。なお、上記疎水性溶剤と上記浸透性溶剤とは同じ溶剤であってもよい。上記疎水性溶剤と浸透性溶剤とを兼ねる溶剤としては、例えば、ケトン類やエステル類等が好適に用いられる。
[0038]
上記浸透性溶剤は、その他の溶剤、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジアセトンアルコール等のアルコール類や、メチルグリコール等のグリコール類や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等と混合して使用してもよい。なかでも、上記その他の溶剤としては、アルコール類が好ましい。
[0039]
上記浸透性溶剤と上記その他の溶剤とを併用する場合は、これらの溶剤の合計量に対する上記その他の溶剤の含有割合が10?30質量%であることが好ましい。上記含有割合が10質量%未満であると、上記4級アンモニウム塩含有重合体の溶解性が低下し、貯蔵安定性が低下して、沈降、白濁又はゲル化するおそれがある。上記含有割合が30質量%を超えると、上記樹脂組成物を用いて得られた本発明の光学積層体において干渉縞が発生するおそれがある。
・・・
[0051]
・・・
本発明では、上記樹脂組成物をトリアセチルセルロース基材上に塗布し塗膜を形成することで、中継ぎ的な役割を果たす親水性のモノマーをトリアセチルセルロース基材に浸透させ、上記塗膜の非浸透部に、親水性のモノマーよりもトリアセチルセルロース基材に対する溶解性の少し悪い、4級アンモニウム塩含有重合体と親水性のオリゴマーとを存在させる。これにより、本発明では、見かけ上、上記塗膜の非浸透部における4級アンモニウム塩含有重合体の割合が高くなり、少量の4級アンモニウム塩含有重合体でも、形成するハードコート層に充分な帯電防止性能を発現させることができる。
・・・
更に、上記親水性のモノマーとして、2官能以上の親水性のアクリレートモノマーを用い、上記親水性のオリゴマーとして、親水性の多官能アクリレートオリゴマーを用いた場合、上記トリアセチルセルロース基材へは、上記2官能以上で親水性のアクリレートモノマーが浸透し、トリアセチルセルロース基材を構成する組成物と2官能以上で親水性のアクリレートモノマーとが混合した渾然一体層となるため、干渉縞が消え視認性が良好な光学積層体となる。また、上記2官能以上で親水性のアクリレートモノマーは、紫外線で架橋反応するため、密着性に優れた光学積層体となる。
更に、上記塗膜の非浸透部分には、上記親水性の多官能アクリレートオリゴマーが存在するため、上層に積層する別の層との密着性も良好となる。また、多官能アクリレートオリゴマー自体硬度に優れるため、光学積層体としての硬度にも優れるものになる。」

(9-4)「[0081]
(実施例1)
下記組成を配合して樹脂組成物を調製した。
4級アンモニウム塩含有重合体A(ACRIT 1SX#3000、重量平均分子量(Mw)1?4万、大成ファインケミカル社製)
固形分換算で3質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(6官能、重量平均分子量(Mw)524、日本化薬社製) 27質量部
BS577(ビームセット577、ウレタンアクリレート、Mw1000、荒川化学工業社製) 70質量部
光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製) 4質量部
メチルエチルケトン(MEK) 85質量部
n-ブタノール 15質量部
[0082]
得られた樹脂組成物を、トリアセチルセルロース(TAC)基材(厚み80μm、TD80ULN(製品名)、富士フィルム社製)上に、塗布量(Dry量)15g/m^(2)(乾燥膜厚12μm)で塗布し、70℃で60秒間乾燥させて塗膜を形成後、該塗膜に200mJ/cm^(2)の紫外線を照射して該塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成し、光学積層体を得た。
[0083]
(実施例2?10、12?15、比較例1?6、参考例1?10)
ハードコート層用樹脂組成物の組成を表1に記載のように、基材については表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして光学積層体を製造した。
なお、表1に示す、上述以外の4級アンモニウム塩含有重合体、樹脂、基材等は、具体的には以下の通りである。
また、表1中のバインダー樹脂の質量部の欄に記載された数値は、各樹脂の混合比を示す。
<4級アンモニウム塩含有重合体>
B:H6500(固形分中の約10%が4級アンモニウム塩含有重合体、約90%がDPHA)、Mw1万、三菱化学社製、固形分50%(溶剤MEK、アルコール)
C:H6500のMwを22000とした4級アンモニウム塩含有重合体
D:H6500のMwを4500とした4級アンモニウム塩含有重合体
<バインダー樹脂>PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート、Mw298
UV1700B:紫光UV1700B、ウレタンアクリレート、Mw2000、日本合成化学社製
DPHA40H:DPHA40H、ウレタンアクリレート、Mw7000、日本化薬化学社製
HOP:ライトエステルHOP、1官能モノマー、Mw144、共栄社化学社製
DCPA:ライトエステルDCPA、2官能モノマー、Mw303、共栄社化学社製
M9050:ポリエステルエチレンオキサイド(EO)変性トリアクリレートとイソシアヌル酸EO変性トリアクリレートとの混合樹脂、Mw約420、東亜合成社製
M8030:ポリエステルトリアクリレート、Mw約400、東亜合成社製、3官能
UN904:アートレジンUN904、ウレタンアクリレート、Mw4900、根上工業社製、10官能
V802:V802、9官能モノマー、Mw1000、大阪有機化学社製
EBECRYL 8210:ウレタンアクリレート、Mw600、官能基数4、ダイセル・サイテック社製
UX-3204:ウレタンアクリレート、Mw13000、官能基数2、日本化薬社製
EBECRYL 885:ポリエステルアクリレート、Mw6000、官能基数5、ダイセル・サイテック社製
<基材>
PET基材:東洋紡社製A4300、厚み188μm
・・・
[0086]
得られた光学積層体について、下記の項目において評価した。結果を表2に示す。」

(9-5)「[0092][表1]



(9-6)「[0093][表2]



(9-7)「[0094]
表2より、本発明の実施例の光学積層体は、優れた帯電防止性を有し、かつ、光学特性、硬度、密着性及び干渉縞防止性に優れたものであった。一方、比較例の光学積層体においては、帯電防止性、光学特性、硬度、密着性及び干渉縞防止性のすべてにおいて良好であったものはなかった。」

(x)本件特許に係る出願の出願日前の国際特許出願(PCT/JP2011/065876号(以下、「先願10」という。)、出願日:2011年(平成23年)7月12日)であって、本件特許に係る出願の出願後に国際公開され(国際公開第2012/008444号、国際公開日2012年1月19日)、その後特許法第184条の5第1項に規定する手続がされた(特願2012-524557号、国内書面提出日平成24年9月10日)、先願10の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲及び図面(以下、「先願10明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、先願10の発明者は山本佳奈、外1名であり、本件特許に係る出願の出願日における先願10の出願人は大日本印刷株式会社であり、いずれも本件特許に係る出願の発明者及び出願人と同一ではない。

(10-1)「[請求項1]
(A)帯電防止剤、
(B)1分子中に光硬化性基を2個以上有し、分子量900以下の多官能モノマー及び
(C)1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を6個以上有し、重量平均分子量1000?11000のウレタンアクリレートを含み、
当該(A)、(B)及び(C)の総量に対する当該(A)の割合が、1?30質量%、かつ、
当該(B)及び(C)の総量に対する当該(C)の割合が1?40質量%であることを特徴とする、帯電防止層用硬化性樹脂組成物。
[請求項2]
前記(A)が、重量平均分子量1000?50000の4級アンモニウム塩であることを特徴とする、請求項1に記載の帯電防止層用硬化性樹脂組成物。
・・・
[請求項5]
トリアセチルセルロース基材の一面側に、当該トリアセチルセルロース基材側から膜厚1?5μmの帯電防止層、及びハードコート層が隣接して設けられている光学フィルムであって、
当該帯電防止層が前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の帯電防止層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該トリアセチルセルロース基材の帯電防止層側の界面近傍の領域には前記多官能モノマー(B)が浸透して硬化していることを特徴とする、光学フィルム。」

(10-2)「[0013]
また、従来、浸透性溶剤を用いることで干渉縞防止が可能であり、外観を良好にできる技術が知られているが、浸透性溶剤を用いると、基材内に新たな界面が出来ることもあり、上述した密着性の悪化に加えて、干渉縞を生じ外観も悪くなる問題がある。
・・・
[0015]
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、光学特性や外観が良好で、十分な帯電防止性及び隣接するHC層及びTAC基材との密着性に優れた帯電防止層を形成することができる帯電防止層用硬化性樹脂組成物を提供することを第一の目的とする。
また、本発明は、そのような組成物を用いて形成された帯電防止層を有するホコリ付着防止性に優れた光学フィルムを提供することを第二の目的とする。
また、本発明は、そのような光学フィルムを有する偏光板を提供することを第三の目的とする。
また、本発明は、そのような光学フィルムを有するディスプレイパネルを提供することを第四の目的とする。
・・・
[0016]
本発明者らが鋭意検討した結果、帯電防止層の組成物に含まれるバインダー成分であって、隣接するHC層との架橋密度を高め、密着性を得るために用いていたPETAやDPHAのような分子量が900以下の比較的分子量の小さいバインダー成分がTAC基材にほぼ全て浸透してしまったり、TAC基材の、HC層との界面である表面からTAC基材のHC層のない裏面への深さ方向にバインダー成分の浸透の度合いによって、結果、バインダー成分が基材の中に偏在してしまうと、基材上の帯電防止層中に含まれるバインダー成分が少なくなって、HC層と帯電防止層との界面で反応する成分が不足するため、帯電防止層とHC層との密着性が十分に得られなくなることがあることがわかった。また、TAC基材内部に浸透した部分が、グラデーションで浸透せずに、浸透する材料全てが一様に同じ深さまでTAC基材に浸透してしまうと、TAC基材内にバインダー浸透層ができて、基材内に新たな界面が生じ、干渉縞が発生するなど外観が悪化することも分かった。
[0017]
そこで本発明者らは、組成物に含まれる帯電防止剤、TAC基材に浸透し難い又は浸透しないバインダー成分である特定分子量のウレタンアクリレート及びTAC基材に浸透するバインダー成分(多官能モノマー)を特定の割合とすることで、十分な帯電防止性を有しながら、HC層及びTAC基材との密着性に優れた帯電防止層を形成することができ、光学フィルム全体としては、優れたホコリ付着防止性能が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。」

(10-3)「[0054]
(B:多官能モノマー)
多官能モノマー(B)は、硬化して帯電防止層のマトリクスとなるバインダー成分の一つであり、1分子中に光硬化性基を2個以上有する分子量900以下の単量体である。分子量が小さく、かつ、多官能であることにより帯電防止層内や帯電防止層に隣接するHC層との架橋密度を高め、密着性向上に寄与する成分である。」

(10-4)「[0058]
(C:ウレタンアクリレート)
ウレタンアクリレート(C)は、硬化して帯電防止層のマトリクスとなるバインダー成分の一つであり、1分子中に(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、重量平均分子量が1000?11000であり、好ましくは1000?10000、より好ましくは1000?5000である。
重量平均分子量が1000?11000であることにより、塗工性が良好で、TAC基材に浸透しない又は多官能モノマー(B)よりも浸透し難く、浸透の制御がしやすく、確実に帯電防止層中全体に存在する。
・・・
[0061]
そして、(メタ)アクリロイル基を6個以上有することにより帯電防止層内や帯電防止層に隣接するHC層中の反応性基との架橋密度を高め、帯電防止層とHC層の密着性の向上に寄与する。
・・・
[0068]
帯電防止層用組成物には、上記(A)、(B)及び(C)成分の他、必要に応じて適宜溶剤及び重合開始剤が含まれていても良い。以下、これらのその他の成分について説明する。
[0069]
(溶剤)
溶剤としては、特許文献1に記載のアセトン等のケトン系溶剤、酢酸メチル等のエステル系溶剤、アセトニトリル等の含窒素系溶剤、メチルグリコール等のグリコール系溶剤、THF等のエーテル系溶剤、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶剤及びメチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤等の浸透性溶剤を用いることができる。
[0070]
浸透性溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)及びシクロヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
[0071]
また、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール及びtert-ブタノール等の非浸透性溶剤を用いても良い。
[0072]
上記溶剤は1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。 本発明の帯電防止層用組成物においては、浸透性溶剤を用いることにより、上記多官能モノマー(B)のTAC基材への浸透が促進され、帯電防止層とTAC基材の密着性が向上すると推測されることから浸透性溶剤を用いることが好ましい。
[0073]
また、本発明の帯電防止層用組成物においては、非浸透性溶剤を用いることにより、上記ウレタンアクリレート(C)のTAC基材への浸透が抑制され、帯電防止層とHC層の密着性が向上すると推測されることから非浸透性溶剤を用いることが好ましい。
[0074]
そのため、本発明の帯電防止層用組成物においては、溶剤が1種の場合は浸透溶剤を用いることが好ましいが、2種類以上の溶剤の場合に、浸透性溶剤と非浸透性溶剤を組み合わせて用いることが最も好ましい。1種類(浸透溶剤のみ)でもウレタンアクリレート(C)の分子量で浸透の制御はできるが、浸透性溶剤と非浸透性溶剤を組み合わせて用いた方がより浸透の制御がしやすく、組成物を用いた帯電防止層の安定した性能を得ることができるからである。 浸透性溶剤と非浸透性溶剤を組み合わせて用いる場合、その質量比が、浸透性溶剤:非浸透性溶剤=100:0?、好ましくは90:10?50:50であり、かつ、帯電防止層用組成物の全固形分100質量部に対して、30?500質量部であることが好ましい。」

(10-5)「[0139]
以下の組成を有する帯電防止層用組成物1及びHC層用組成物1を調製した。
(帯電防止層用組成物1)
帯電防止剤(A):日本化成(株)製の商品名UV-ASHC-01(重量平均分子量20000、固形分70%、4級アンモニウム塩成分は固形分中15%):固形分換算1質量部
多官能モノマー(B):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製、6官能、分子量578):64質量部
ウレタンアクリレート(C):荒川化学工業(株)製の商品名BS577(6官能、重量平均分子量1000):35質量部 重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン):1質量部
メチルエチルケトン:100質量部
[0140]
(HC層用組成物1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製、6官能、分子量578):98質量部
重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン):4質量部
メチルエチルケトン:100質量部」

(10-6)「[0141]
(実施例1)
厚さ80μmのTAC基材(富士フィルム(株)製の商品名TF80UL)を準備し、TAC基材の片面に、調製した上記帯電防止層用組成物1を塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が50mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、乾燥時の厚さ2.5μmの帯電防止層を形成した。
[0142]
次いで、得られた帯電防止層上に調製した上記ハードコート層用組成物1を塗布し、帯電防止層と同様に乾燥し、紫外線を積算光量が150mJになるように照射して塗膜を硬化させ乾燥時の厚さ12μmのハードコート層を形成し、これによりTAC基材の一面側にTAC基材側から帯電防止層及びハードコート層を順に有する光学フィルムを作製した。
[0143]
また、帯電防止層の表面抵抗値を測定するために、上記光学フィルムと同様にTAC基材(TF80UL)上に帯電防止層の形成までを行い、TAC基材の一面側に帯電防止層のみを有する積層体も作製した。
[0144]
(実施例2?7)
実施例1において、帯電防止層用組成物1に含まれる帯電防止剤(A)、多官能モノマー(B)及びウレタンアクリレート(C)の量又は種類を、それぞれ、表1に示すように代えた以外は実施例1と同様に光学フィルム及び積層体を作製した。尚、実施例7で用いたウレタンアクレート(C)は、商品名UV#7610B(日本合成製)である。」

(10-7)「[0159]
[表1]



(10-8)「[0160]
(結果のまとめ)
表1より、実施例1?7では、いずれも良好な積層体(帯電防止層)の表面抵抗値が得られ、光学フィルムの密着性も良好であった。また、光学特性や外観も良好であった。」

(xi)本件特許に係る出願の出願日前に出願され(特願2011-193523号(以下、「先願11」という。)、出願日:2011年(平成23年)9月6日)、その後、国際特許出願(PCT/JP2012/072055号、出願日:2012年(平成24年)8月30日)の、特許法第41条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされ、本件特許に係る出願の出願後に国際公開され(国際公開第2013/035627号、国際公開日2013年3月14日)、その後、同法第184条の5第1項に規定する手続がされ(特願2013-532561号、国内書面提出日平成25年9月9日)、同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされる先願11の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「先願11明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、先願11の発明者は正木麻友、外2名であり、本件特許に係る出願の出願日における先願11の出願人は大日本印刷株式会社であり、いずれも本件特許に係る出願の発明者及び出願人と同一ではない。

(11-1)「[請求項1]
トリアセチルセルロースからなる透明基材フィルムの一方の面に、第四級アンモニウム塩を含有する帯電防止剤と多官能重合性化合物とを含む電離放射線硬化性樹脂の硬化物層からなるハードコート層を有する、帯電防止性ハードコートフィルムにおいて、
上記第四級アンモニウム塩が、第四級アンモニウム塩基を有し重量平均分子量が1,000?50,000の高分子型の帯電防止剤であり、
上記多官能重合性化合物が、下記式[1]で表わされる、イソシアヌル酸骨格を有し(メタ)アクリロイル基が15官能のウレタン系多官能アクリレート系化合物である、帯電防止性ハードコートフィルム。
[化1]

(式1中、Acは(メタ)アクリロイル基であり、R-(Ac)5はジペンタエリスリトールが有する6個のヒドロキシル基のうち5個のヒドロキシル基の水素原子が(メタ)アクリロイル基Acで置き換わった5官能(メタ)アクリレート基である。)」(先願11明細書等の[請求項1]、国際公開公報の[請求項1])

(11-2)「[0006]
そこで、本発明の課題は、アルカリ水溶液によって鹸化処理をしても、帯電防止剤を添加したハードコート層の帯電防止性能が損なわれない様にして、ハードコート層による耐擦傷性及び帯電防止性の機能を維持できる耐鹸化性を有する、帯電防止性ハードコートフィルムを提供することである。
また、この様な帯電防止性ハードコートフィルムを用いた、偏光板及び画像表示装置を提供することである。」(先願11明細書等の[0006]、国際公開公報の[0007])

(11-3)「[0039]
(溶剤)
電離放射線硬化性樹脂の樹脂組成物には、透明基材フィルム上への塗工適性等の物性調整の為に、溶剤を含ませることができる。また、溶剤は、透明基材フィルムとハードコート層との界面の干渉縞防止の為に、透明基材フィルムに対して浸透性を有する浸透性溶剤とすることができる。
溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)等のグリコールエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類である。溶剤は、これらの単独又は混合物として用いる。なかでも、好ましいのは、塗工適性、分散安定性、透明基材フィルムに対する浸透性等の点で、メチルイソブチルケトン(MIBK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、等である。」(先願11明細書等の[0039]、国際公開公報の[0056]?[0057])

(11-4)「[0077]
[帯電防止剤]
・UV-ASHC-01:第四級アンモニウム塩基を有する分子量Mw10,000の高分子型の帯電防止剤(日本化成株式会社製、第四級アンモニウム塩基を有する共重合体を、固形分中15質量%含む)。
・H6500:分子量Mw10,000の高分子型の第四級アンモニウム塩を含む帯電防止剤(三菱化学株式会社製、第四級アンモニウム塩基を有する共重合体を、固形分中7質量%含む)。
・ASNo1:分子量Mw20,000の高分子型の第四級アンモニウム塩を含む帯電防止剤。
・ASNo2:第四級アンモニウム塩基を有する分子量Mw100,000の高分子型
の帯電防止剤(三菱化学株式会社製、第四級アンモニウム塩基を有する重合体を、固形分中7質量%含む)。
・ASNo3:第四級アンモニウム塩基を有する分子量Mw500の低分子型の帯電防止剤(三菱化学株式会社製、第四級アンモニウム塩基を有する化合物を、固形分中7質量%含む)。
[0078]
[多官能重合性化合物(電離放射線硬化性樹脂)]
なお、以下の多官能重合性化合物はDPPA以外は、何れも分子中にヒドロキシル基は有さない化合物である。
・U15HA:HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)の三量体のイソシアヌル骨格から延びる3個のイソシアネート基にDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)を反応させた、Mw約2300の15官能のウレタン系多官能アクリレート系化合物(新中村化学工業株式会社製)。このU15HAは、前記式[1]で示される化合物であり、式中、Acはアクリロイル基で、R-(Ac)5はジペンタエリスリトールが有する6個のヒドロキシル基のうち5個のヒドロキシル基の水素原子がアクリロイル基Acで置き換わった5官能アクリレート基である化合物である。
・UV1700B:2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)を反応させた、Mw約2000の10官能のウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製)。
・BS577:2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を反応させた、分子量Mw約300の6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(荒川化学工業株式会社製)。
・M9050:3官能のポリエステル系アクリレートオリゴマー(分子量Mw428、東亞合成株式会社製)。
・M8030:3官能以上のポリエステル系アクリレートオリゴマー(分子量Mw400、東亞合成株式会社製)。
・DPPA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート。
・TMPTA:3官能、Mw296、トリメチロールプロパントリアクリレート。」(先願11明細書等の[0077]?[0078]、国際公開公報の[0113]?[0114])

(11-5)「[0087]
〔実施例1〕
透明基材フィルムとして厚み80μmの透明なトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム、屈折率1.48)の片面に、下記の電離放射線硬化性樹脂を含むハードコート層用組成物(1)を塗布した後、紫外線照射で樹脂を(半)硬化させて、厚み10μmのハードコート層を形成した。
次に、形成したハードコート層の上に、下記の低屈折率層用組成物(A)を塗布した後、紫外線照射で樹脂を硬化させて、厚み100nmの低屈折率層を形成すると共に、ハードコート層も完全に硬化させて、帯電防止性ハードコートフィルムを作製した。次いで、鹸化処理条件Aで鹸化処理をした。
[0088]
[ハードコート層用組成物(1)]
帯電防止剤;UV-ASHC-01 25部
樹脂;U15HA 25部
樹脂;UV1700B 50部
溶剤;MEK 100部
光重合開始剤;イルガキュア184 4部」(先願11明細書等の[0087]?[0088]、国際公開公報の[0125]?[0127])

(11-6)「[0091]
〔実施例3〕
実施例1において、ハードコート層の形成に、樹脂成分が異なる下記のハードコート層用組成物(3)を用いた他は、実施例1同様にして、帯電防止性ハードコートフィルムを作製し、実施例1と同じ条件で鹸化処理した。
[ハードコート層用組成物(3)]
帯電防止剤;UV-ASHC-01 25部
樹脂;U15HA 25部
樹脂;BS577 50部
溶剤;MEK 100部
光重合開始剤;イルガキュア184 4部」(先願11明細書等の[0091]、国際公開公報の[0130])

(11-7)「[0094]
〔実施例6〕
実施例1において作製し帯電防止性ハードコートフィルムを、鹸化処理条件Bで鹸化処理した。
[0095]
〔実施例7〕
実施例1において、ハードコート層の形成に、帯電防止剤の割合が異なる下記のハードコート層用組成物(6)を用いた他は、実施例1同様にして、帯電防止性ハードコートフィルムを作製し、実施例1と同じ条件で鹸化処理した。
[ハードコート層用組成物(6)]
帯電防止剤;UV-ASHC-01 20部
樹脂;U15HA 27.5部
樹脂;UV1700B 52.5部
溶剤;MEK 100部
光重合開始剤;イルガキュア184 4部」(先願11明細書等の[0094]?[0095]、国際公開公報の[0133]?[0134])

(11-8)「[0101]
〔実施例8〕
実施例1において、ハードコート層の形成に、帯電防止剤が異なる下記のハードコート層用組成物(12)を用いた他は、実施例1同様にして、帯電防止性ハードコートフィルムを作製し、実施例1と同じ条件で鹸化処理した。
[ハードコート層用組成物(12)]
帯電防止剤;H6500 25部
樹脂;U15HA 25部
樹脂;UV1700B 50部
溶剤;MEK 100部
光重合開始剤;イルガキュア184 4部
[0102]
〔実施例9〕
実施例1において、ハードコート層の形成に、帯電防止剤が異なる下記のハードコート層用組成物(13)を用いた他は、実施例1同様にして、帯電防止性ハードコートフィルムを作製し、実施例1と同じ条件で鹸化処理した。
[ハードコート層用組成物(13)]
帯電防止剤;ASNo1 25部
樹脂;U15HA 25部
樹脂;UV1700B 50部
溶剤;MEK 100部
光重合開始剤;イルガキュア184 4部
[0103]
〔実施例10〕
実施例1において、ハードコート層の形成に、帯電防止剤の割合が異なる下記のハードコート層用組成物(14)を用いた他は、実施例1同様にして、帯電防止性ハードコートフィルムを作製し、実施例1と同じ条件で鹸化処理した。
[ハードコート層用組成物(14)]
帯電防止剤;UV-ASHC-01 71部
樹脂;U15H 9.6部
樹脂;UV1700B 19.3部
溶剤;MEK 100部
光重合開始剤;イルガキュア184 4部
[0104]
〔実施例11〕
実施例1において、ハードコート層の形成に、帯電防止剤の割合が異なる下記のハードコート層用組成物(15)を用いた他は、実施例1同様にして、帯電防止性ハードコートフィルムを作製し、実施例1と同じ条件で鹸化処理した。
[ハードコート層用組成物(15)]
帯電防止剤;UV-ASHC-01 7部
樹脂;U15HA 31部
樹脂;UV1700B 62部
溶剤;MEK 100部
光重合開始剤;イルガキュア184 4部」(先願11明細書等の[0101]?[0104]、国際公開公報の[0140]?[0143])

(11-9)「[0110]
[表1]

」(先願11明細書等の[0110][表1]、国際公開公報の[0149][表1])

(11-10)「[0111]
[表2]

」(先願11明細書等の[0111][表2]、国際公開公報の[0150][表2])

(11-11)「[0112]
表1-1及び表1-2に示す様に、ハードコート層の電離放射線硬化性樹脂を構成する多官能重合性化合物に、前記式[1]で表わされる、イソシアヌル酸骨格を有しアクリロイル基が15官能のウレタン系多官能アクリレート系化合物(オリゴマー)である15官能重合性化合物(U15HA)を用いた実施例1?12(但し実施例6は鹸化処理条件が異なる)は、いずれも、帯電防止性、透明性(耐白化、ヘイズ)、及び硬度の全てが良好で、耐鹸化性が満足できるものであった。
また、多官能重合性化合物を上記15官能重合性化合物単独(実施例2)ではなく、他の多官能重合性化合物のオリゴマーも併用した場合(実施例1、及び実施例3?実施例12)でも、耐鹸化性は満足できるものであった。
また、帯電防止剤に別の高分子型の第四級アンモニウム塩で分子量1,000以上で50,000以下の物を用いた実施例8及び実施例9でも、耐鹸化性は満足できるものであった。」(先願11明細書等の[0112]、国際公開公報の[0151]?[0153])

(xii)引用文献12には、以下の事項が記載されている。
(12-1)「[0078]
比較用の非PETA由来ウレタンアクリレート(4)として、日本化薬(株)製の商品名DPHA40H(アルコールとしてジペンタエリスリトールペンタアクリレート、イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネートの反応物、分子量7000、10官能)を用いた。
比較用の非PETA由来ウレタンアクリレート(5)として、日本合成化学工業(株)製の商品名UV1700B(アルコールとしてジペンタエリスリトールペンタアクリレート、イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートの反応物、分子量2000、10官能)を用いた。
比較用の非PETA由来ウレタンアクリレート(6)として、根上工業(株)製の商品名UN904(アルコールとしてジペンタエリスリトールペンタアクリレート、イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネートの反応物、分子量4900、10官能)を用いた。」

(2)引用文献等に記載された発明
ア 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「帯電防止性共重合体(A)、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)及び溶剤(D)を含む帯電防止用コーティング組成物であって、前記帯電防止性共重合体(A)が、下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩基を有する化合物(a-1)及び下記一般式(2)で表されるアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a-2)を必須の構成成分とする共重合体であり、前記溶剤(D)が、アルコール系溶剤(d-1)及び炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)を含み、前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光重合開始剤(C)を0.1?20重量部を含有し、前記(A)?(D)の合計100重量%中に、溶剤(D)を30?80重量%含有し、前記溶剤(D)の100重量%中、アルコール系溶剤(d-1)の含有量が5?25重量%、炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)の含有量が55?90重量%である、ことを特徴とする帯電防止用コーティング組成物。(一般式(1)及び(2)の定義は、摘記1-1を参照。)」が記載されており(摘記1-1)、当該コーティング組成物は、「帯電防止性を有すると共に、ハードコートとして十分な耐擦傷性、透明性を備え、さらには、近年、要求の増加している防水性にも応えることができるような耐久性に優れた光硬化性のコーティング用組成物」を提供するという課題を解決するものであること(摘記1-2)が記載されている。
また、上記コーティング組成物に含まれる「帯電防止性共重合体(A)」の具体例として、摘記1-4には「アルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a-2-1)」の製造例、及び当該(a-2-1)と、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドと、メチルメタクリレートとを所定の条件で重合反応させることによる「帯電防止性共重合体(A-1)」のエタノール溶液(固形分30重量%)の製造例が記載され、摘記1-5には、同様の方法で共重合成分を変更した帯電防止剤(A-2)?(A-8)の製造例が記載されている。
さらに、摘記1-6には、上記コーティング用組成物の具体例である実施例1として、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)40重量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)10重量部に、合成例1で合成した帯電防止性共重合体のエタノール溶液を、帯電防止性共重合体が固形分で5重量部となるように加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部添加してなる組成物を、酢酸メチル、エタノール及び1-メトキシ-2-プロパノールで希釈し、溶媒組成が酢酸メチル/エタノール/1-メトキシ-2-プロパノール=80/15/5(重量比)の溶剤を50重量%含有する帯電防止組成物を調製した」こと、及び実施例2?12においては、使用する帯電防止性共重合体を表1(摘記1-7)に示すように合成例1?8で得られた帯電防止性共重合体(A-1?8)エタノール溶液とし、溶剤組成を表1に示す割合とした以外は実施例1と同様にして帯電防止組成物を得たことが記載されている。
加えて、上記実施例1?12のコーティング組成物を、「厚さ約80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)・・・上にバーコーターを用いて塗布し、熱風オーブンで溶剤を除去した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗布層を硬化させ、膜厚6μmの帯電防止ハードコートフィルムを得た」こと、及び 得られたフィルムについて評価を行い、表1(摘記1-7)のとおり、「実施例1?12はいずれも、・・・透明性・帯電防止性・硬度のバランスの良い膜が得られた」ことが記載されている(摘記1-8)。
ここで、上記実施例1に配合された重合性成分は、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」及び「ペンタエリスリトールテトラアクリレート」であるところ、これらはいずれも化学構造中にアミド基を有さないことが明らかである。
また、表1に記載された評価結果を参酌すると、引用文献1に記載されたコーティング組成物は、実際に上記の課題を解決し得るものであり、摘記1-3に記載されたように、「透明性、帯電防止性、耐擦傷性に優れ、さらに、浸水後の耐久性にも優れ」た塗膜を形成することができ、「これらの効果は、支持体としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用した場合に特に耐擦傷性の点で顕著」なものであるから、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」であるといえる。
そうすると、引用文献1には次の発明が記載されている。
「一般式(1)及び(2)(各式の定義は摘記1-1を参照。)を必須の構成成分とする4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーを含む、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)及び溶剤(D)を含み、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止用ハードコート樹脂組成物であって、前記溶剤(D)が、アルコール系溶剤(d-1)及び炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)を含み、前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光重合開始剤(C)を0.1?20重量部を含有し、前記(A)?(D)の合計100重量%中に、溶剤(D)を30?80重量%含有し、前記溶剤(D)の100重量%中、アルコール系溶剤(d-1)の含有量が5?25重量%、炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)の含有量が55?90重量%である、帯電防止用ハードコート樹脂組成物。」(以下、「引用発明1」という。)

また、上記の記載から明らかに、引用文献1には次の発明も記載されている。
「引用発明1の帯電防止用ハードコート樹脂組成物を塗布してなるトリアセチルセルロースフィルム。」(以下、「引用発明1f」という。)

イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2には、「分子中に4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、水への溶解性が20?25℃において0.2g/L以下の光重合開始剤(c-1)及び水への溶解性が20?25℃において1g/L以上の光重合開始剤(c-2)を含む光重合開始剤(C)、アルコール系溶剤(d-1)を含む溶剤(D)を含み、前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光重合開始剤(c-1)と(c-2)を合計で0.1?20重量部、(c-1)/(c-2)=2.5/1?1/2.5(重量比)の割合で含有する、ことを特徴とする帯電防止用コーティング組成物」が記載されており(摘記2-1)、当該コーティング組成物は、「帯電防止性を有すると共に、ハードコートとして十分な耐擦傷性、透明性を備え、さらには、近年、要求の増加している防水性にも応えることができるような耐久性に優れた光硬化性のコーティング用組成物」を提供するという課題を解決するものであること(摘記2-2)が記載されている。
また、上記コーティング組成物に含まれる「分子中に4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)」の具体例として、摘記2-4には、上記引用文献1(摘記1-4?摘記1-5)と同様の帯電防止性共重合体(A-1)?(A-8)の製造例が記載されている。
さらに、摘記2-5には、上記コーティング用組成物の具体例である実施例1として、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD DPHA)40重量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)10重量部に、4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体のメタノール溶液(綜研化学(株)製:エレコンド PQ-10、固形分50%)を、帯電防止性共重合体の含有量が5重量部となるように加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部とイルガキュアー2959(チバスペシャリティケミカルズ製)を添加してなる組成物を、メチルエチルケトン、メタノール、1-メトキシ-2-プロパノールで希釈し、溶媒組成がメチルエチルケトン/メタノール/1-メトキシ-2-プロパノール=80/5/15(重量比)の溶剤を50重量%含有する帯電防止組成物を調製した」こと、及び実施例2?24においては、使用する高分子帯電防止剤を、表1?表3に示すように合成例1?8で得られた高分子帯電防止剤(A-1?8)エタノール溶液とし、溶剤組成と光重合開始剤量を表1?表3に示す割合とした以外は実施例1と同様にして帯電防止組成物を得たことが記載されている。
加えて、上記実施例1?24のコーティング組成物を、「厚さ約80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)・・・上にバーコーターを用いて塗布し、熱風オーブンで溶剤を除去した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗布層を硬化させ、膜厚6μmの帯電防止ハードコートフィルムを得た」こと、及び 得られたフィルムについて評価を行い、表1?3(摘記2-6)のとおりの評価結果が得られたことが記載されている。
ここで、上記実施例1に配合された重合性成分は、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」及び「ペンタエリスリトールテトラアクリレート」であるところ、これらはいずれも化学構造中にアミド基を有さないことが明らかである。
また、表1?3に記載された評価結果を参酌すると、引用文献2に記載されたコーティング組成物は、実際に上記の課題を解決し得るものであり、摘記2-3に記載されたように、「透明性、帯電防止性、耐擦傷性に優れ、さらに、浸水後の耐久性にも優れ」た塗膜を形成することができ、「これらの効果は、基材としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用した場合に特に顕著」なものであるから、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」であるといえる。
そうすると、引用文献2には次の発明が記載されている。
「分子中に4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーを含む、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、水への溶解性が20?25℃において0.2g/L以下の光重合開始剤(c-1)及び水への溶解性が20?25℃において1g/L以上の光重合開始剤(c-2)を含む光重合開始剤(C)、アルコール系溶剤(d-1)を含む溶剤(D)を含み、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止用ハードコート樹脂組成物であって、前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光重合開始剤(c-1)と(c-2)を合計で0.1?20重量部、(c-1)/(c-2)=2.5/1?1/2.5(重量比)の割合で含有する、帯電防止用ハードコート樹脂組成物。」(以下、「引用発明2」という。)

また、上記の記載から明らかに、引用文献2には次の発明も記載されている。
「引用発明2の帯電防止用ハードコート樹脂組成物を塗布してなるトリアセチルセルロースフィルム。」(以下、「引用発明2f」という。)

ウ 引用文献3に記載された発明
引用文献3には、「帯電防止性共重合体(A)、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)及び溶剤(D)を含む帯電防止用コーティング組成物であって、前記帯電防止性共重合体(A)が、下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩基を有する化合物(a-1)及び下記一般式(2)で表されるアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(a-2)を必須の構成成分とする共重合体であり、前記溶剤(D)が、アルコール系溶剤(d-1)及び炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)を含み、前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光開始剤(C)を0.1?20重量部含有し、前記(A)?(D)の合計100重量%中に、溶剤(D)を20?80重量%含有し、前記溶剤(D)の100重量%中、アルコール系溶剤(d-1)の含有量が5?30重量%、炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)の含有量が20?95%であることを特徴とする帯電防止用コーティング組成物。(一般式(1)及び(2)の定義は、摘記3-1を参照。)」が記載されており(摘記3-1)、当該コーティング組成物は、「帯電防止性を有すると共に、ハードコートとして十分な耐擦傷性、透明性を備え、さらには、近年、要求の増加している防水性にも応えることができるような耐久性に優れた光硬化性のコーティング用組成物」を提供するという課題を解決するものであること(摘記3-2)が記載されている。
また、上記コーティング組成物に含まれる「帯電防止性共重合体(A)」の具体例として、摘記3-4には、上記引用文献1(摘記1-4?摘記1-5)と同様の帯電防止性共重合体(A-1)?(A-8)の製造例が記載されている。
さらに、摘記3-5には、上記コーティング用組成物の具体例である実施例1として、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製:UA-306H)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製:アロニックスM405)40重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製:KAYARAD PET30)10重量部に、合成例1で合成した帯電防止性共重合体のエタノール溶液を、帯電防止性共重合体が固形分で5重量部となるように加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部添加してなる組成物を、酢酸メチル、エタノール及び1-メトキシ-2-プロパノールで希釈し、溶媒組成が炭酸ジメチル/エタノール/1-メトキシ-2-プロパノール=80/15/5(重量比)の溶剤を50重量%含有する帯電防止組成物を調製した」こと、及び実施例2?12においては、使用する帯電防止性共重合体を表1(摘記3-6)に示すように合成例1?8で得られた帯電防止性共重合体(A-1?8)エタノール溶液とし、溶剤組成を表1に示す割合とした以外は実施例1と同様にして帯電防止組成物を得たことが記載されている。
加えて、上記実施例1?12のコーティング組成物を、「厚さ約80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製)・・・上にバーコーターを用いて塗布し、熱風オーブンで溶剤を除去した後、出力80w/cmの高圧水銀ランプで紫外線を照射し、塗布層を硬化させ、膜厚6μmの帯電防止ハードコートフィルムを得た」こと、及び 得られたフィルムについて評価を行い、表1(摘記3-6)のとおり、「実施例1?13はいずれも、・・・透明性・帯電防止性・硬度のバランスの良い膜が得られた」ことが記載されている(摘記3-7)。
ここで、上記実施例1に配合された重合性成分は、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー」、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」及び「ペンタエリスリトールトリアクリレート」であるところ、これらはいずれも化学構造中にアミド基を有さないことが明らかである。
また、表1に記載された評価結果を参酌すると、引用文献3に記載されたコーティング組成物は、実際に上記の課題を解決し得るものであり、摘記3-3に記載されたように、「透明性、帯電防止性、耐擦傷性に優れ、さらに、浸水後の耐久性にも優れ」た塗膜を形成することができ、「これらの効果は、支持体としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用した場合に特に耐擦傷性の点で顕著」なものであるから、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」であるといえる。
そうすると、引用文献3には次の発明が記載されている。
「一般式(1)及び(2)(各式の定義は摘記3-1を参照。)を必須の構成成分とする4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーを含む、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、光重合開始剤(C)及び溶剤(D)を含み、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止用ハードコート樹脂組成物であって、前記溶剤(D)が、アルコール系溶剤(d-1)及び炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)を含み、前記化合物(B)100重量部に対して、前記帯電防止性共重合体(A)を1?20重量部、前記光開始剤(C)を0.1?20重量部含有し、前記(A)?(D)の合計100重量%中に、溶剤(D)を20?80重量%含有し、前記溶剤(D)の100重量%中、アルコール系溶剤(d-1)の含有量が5?30重量%、炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)の含有量が20?95重量%である、帯電防止用ハードコート樹脂組成物。」(以下、「引用発明3」という。)

また、上記の記載から明らかに、引用文献3には次の発明も記載されている。
「引用発明3の帯電防止用ハードコート樹脂組成物を塗布してなるトリアセチルセルロースフィルム。」(以下、「引用発明3f」という。)

エ 引用文献4に記載された発明
引用文献4には、「ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]と第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]と微粒子[III]を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。」が記載されており(摘記4-1)、「この組成物は必要に応じて、有機溶剤を配合し、粘度を調整して使用することも可能である」こと(摘記4-3)、及び当該組成物は「塗膜物性に優れると共に、帯電防止性と光学特性にも優れたコーティング層を形成するのに有用な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供すること」を課題とするものであること(摘記4-2)が記載されている。
また、上記組成物に含まれる「ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]」の具体例の一つとして、摘記4-5には「ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-a]」の製造例が記載されており、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとを所定の条件で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了した旨が記載されている。
さらに、上記組成物に含まれる「第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]」の具体例の一つとして、摘記4-6には「第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II-1]」の製造例が記載されており、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートと、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物と、2-エチルヘキシルメタクリレートとを処置の条件で反応させた旨が記載されている。
加えて、上記組成物に含まれる「微粒子[III]」の具体例として、摘記4-7にはポリエチレン微粒子の分散物(粒子径は約3μm)である「微粒子[III-1]」が記載され、上記組成物の具体例の一つとして、摘記4-8及び摘記4-9には、上記の[I-a]、[II-1]、[III-1]、光重合開始剤[IV](1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア184」)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを所定の割合で含有する実施例4の組成物が記載されている。
そして、得られた組成物を、「易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターNo.8を用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥した後、高圧水銀灯ランプ80W、1灯を用いて、18cmの高さから5.1m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量450mJ/cm^(2))を行い、硬化塗膜を形成し、以下の評価を行った」(摘記4-8)ところ、表2(摘記4-9)の結果が得られ、実施例4の組成物は密着性、塗膜硬度、耐擦傷性、表面抵抗率、光沢度、写り込み、ギラツキの各項目で良好と評価されたことが読み取れる。
ここで、上記実施例4に配合された重合性成分は「ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-a]」だけであるところ、摘記4-5の記載からみて当該化合物は、化学構造中にアミド基を有さないことが明らかである。
また、表2に記載された評価結果を参酌すると、引用文献4に記載された組成物は、実際に上記の課題を解決し得るものであり、摘記4-4に記載されたように、「帯電防止性や光学特性、塗膜硬度や耐擦傷性などの塗膜物性に優れた効果を示すものであり、・・・各種の被膜形成材料として有用」であり、「中でも、光学フィルムのコーティング剤として用いるのが非常に有用」なものであるから、「光学フィルム上に塗布される」「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」であるといえる。
そうすると、引用文献4には次の発明が記載されている。
「イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-a]と、第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]と、微粒子[III]とを含有し、更に有機溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、光学フィルム上に塗布される帯電防止用ハードコート樹脂組成物。」(以下、「引用発明4」という。)

また、上記の記載から明らかに、引用文献4には次の発明も記載されている。
「引用発明4の帯電防止用ハードコート樹脂組成物を塗布してなる光学フィルム。」(以下、「引用発明4f」という。)

オ 先願8明細書等に記載された発明
先願8明細書等には、「下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有する帯電防止性ハードコート層形成用組成物。(a)イオン伝導性化合物、(b)光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ-(CH_(2)CH_(2)O)_(k)-構造を有するポリエチレンオキシド化合物(kは1?50の数を表す)、(c)不飽和二重結合を有する化合物、(d)光重合開始剤」(摘記8-1の請求項1)及び「前記(a)イオン伝導性化合物が4級アンモニウム塩基含有ポリマーである、請求項1?5のいずれか1項に記載の帯電防止性ハードコート層形成用組成物。」(摘記8-1の請求項6)が記載されており、「帯電防止性ハードコート層形成用組成物は種々の有機溶剤を含有してもよい」こと(摘記8-3の[0065])、及び当該組成物は、「帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムを提供し得る帯電防止性ハードコート層形成用組成物を提供する」という課題を解決するものであること(摘記8-2)が記載されている。
また、上記組成物に含まれる「(a)イオン伝導性化合物」の具体例として、摘記8-3には「イオン伝導性化合物を、特許第4600605号公報の合成例1?8と同様に実施し、それぞれ対応する化合物として、IP-14?21(30%エタノール溶液)を合成した」と記載されているところ、当該「特許第4600605号公報」は引用文献1に当たる文献であり、その「合成例1?8」は摘記1-4?1-5に当たるから、上記「IP-14?21」は、それぞれ摘記1-4?1-5に記載された、分子中に4級アンモニウム塩基を有する「帯電防止性共重合体(A-1)」?「同(A-8)」に相当するものと認められる。
さらに、摘記8-3には、上記組成物の具体例として、表1(摘記8-4)及び表2(省略)に記載の組成となるように各成分を添加し、得られた組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して帯電防止性ハードコート層塗布液A-1(固形分濃度50質量%)?A-52(同)を作製した旨が記載され、摘記8-5には、表1に記載された化合物の略称の意味する具体的な化合物名が記載されている。
加えて、摘記8-6には、上記塗布液A-1?A52を、「層厚60μmの透明支持体としてのセルローストリアセテートフィルム・・・上に・・・グラビアコーターを用いて塗布した。60℃で約2分間乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量150mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmの帯電防止性ハードコート層A-1を形成し」、光学フィルム試料No.1?52を作製したこと、得られた光学フィルムの諸特性の評価を行ったところ、表4(摘記8-7)の結果が得られ、「本発明の帯電防止性ハードコート層形形成用組成物を用いて形成した帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムは、表面抵抗が低く良好な帯電防止性を示した。また、本発明の帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムはゴミ付防止性及び膜硬度に優れていた。(a)イオン伝導性化合物としてIP-14?21を使用した場合は、表面抵抗が特に低く、b)ポリアルキレンオキシド化合物としてATM-35Eを用いた場合には、鉛筆硬度に優れていた」ことが記載されている(摘記8-8)。
ここで、上記「(a)イオン伝導性化合物としてIP-14?21を使用した場合」、すなわち摘記1-4?1-5に記載された、分子中に4級アンモニウム塩基を有する「帯電防止性共重合体(A-1)」?「同(A-8)」に相当するものを使用した具体例は、表1(摘記8-4)に記載された試料No.27?41に当たるところ、このうち試料No.27?30、33?38、40及び41においては、溶剤として「MEK/酢酸メチル」又は「酢酸メチル」が使用され、さらに「(c)多官能モノマー」の成分の一つとして「UA-306H」が使用されていることが読み取れ、摘記8-5によると、当該「UA-306H」は、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)製)」である。
また、表1(摘記8-4)及び摘記8-5の記載を参酌すると、上記「UA-306H」が使用された具体例においては、「(c)多官能モノマー」として「PET30」(ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)、「A-TMMT」(ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)NKエステル)及び/又は「DPHA」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製))が使用され、さらに、「(b)ポリアルキレンオキシド化合物」として「ATM-35E」、「DGE-4A」又は「A-400」(各製品の化学構造式は摘記8-5の表3のとおり。)が使用されるか、「(b)」成分が使用されなかったことが読み取れるところ、これらの具体例は、いずれも「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」ことが明らかである。
さらに、表4(摘記8-7)に記載された評価結果を参酌すると、先願8明細書等に記載された実施例の組成物は、セルローストリアセテートフィルムに塗布されたときに実際に上記の課題を解決し得るものであり、摘記8-8における「(a)イオン伝導性化合物としてIP-14?21を使用した場合は、表面抵抗が特に低く、b)ポリアルキレンオキシド化合物としてATM-35Eを用いた場合には、鉛筆硬度に優れていた」という記載を参酌すると、特に両成分を含有する実施例27?30、33及び34は、表面抵抗性が低く、鉛筆硬度にも優れたものであるといえる。
そうすると、先願8明細書等には次の発明が記載されている。
「(a)4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体、(b)光重合可能な基を1つ以上有し、水酸基を有さず、かつ-(CH_(2)CH_(2)O)_(k)-構造を有するポリエチレンオキシド化合物(kは1?50の数を表す)、(c)ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーを含む、不飽和二重結合を有する化合物、(d)光重合開始剤を含有し、更に有機溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止性ハードコート層形成用組成物。」(以下、「引用発明8」という。)

また、上記の記載から明らかに、先願8明細書等には次の発明も記載されている。
「引用発明8の帯電防止性ハードコート層形成用組成物を塗布してなるトリアセチルセルロースフィルム。」(以下、「引用発明8f」という。)

カ 先願9明細書等に記載された発明
先願9明細書等には、「トリアセチルセルロース基材上に設けられたハードコート層を有する光学積層体であって、前記ハードコート層の形成に用いられる樹脂組成物が、4級アンモニウム塩含有重合体、バインダー樹脂及び溶剤を含有し、前記4級アンモニウム塩含有重合体は、前記バインダー樹脂よりも親水性の度合いが高いものであり、前記バインダー樹脂は、親水性の度合いの異なる2種以上の樹脂成分を含有することを特徴とする光学積層体。」(摘記9-1の請求項1)、「親水性の度合いの異なる2種以上の樹脂成分は、重量平均分子量600以下のモノマー及び重量平均分子量1000?1万のオリゴマーであり、かつ、前記モノマーの親水性の度合いが前記オリゴマーの親水性の度合いよりも高い請求項1、2又は3記載の光学積層体。」(摘記9-1の請求項4)、及び「重量平均分子量600以下のモノマーは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)トリアクリレート、ポリエステル(メタ)ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、及び、プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み、重量平均分子量1000?1万のオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートである請求項4記載の光学積層体。」(摘記9-1の請求項5)が記載されており、当該光学積層体及び樹脂組成物は、「帯電防止性、光学特性、硬度、密着性及び干渉縞防止性に優れ、更に、製造時のコストを抑制できる光学積層体、偏光板、並びに、画像表示装置を提供する」という課題を解決するものであること(摘記9-2)が記載されている。
また、摘記9-4には、上記樹脂組成物の具体例として、表1(摘記9-5)に記載の組成となるように所定の成分を配合して実施例1?10、12?15の樹脂組成物を調製したこと、得られた樹脂組成物を、トリアセチルセルロース(TAC)基材・・・上に、塗布量(Dry量)15g/m^(2)(乾燥膜厚12μm)で塗布し、70℃で60秒間乾燥させて塗膜を形成後、該塗膜に200mJ/cm^(2)の紫外線を照射して該塗膜を硬化させて、ハードコート層を形成し、光学積層体を得た」こと、及び得られた光学積層体について評価を行ったところ、表2(摘記9-6)の結果が得られ、「表2より、本発明の実施例の光学積層体は、優れた帯電防止性を有し、かつ、光学特性、硬度、密着性及び干渉縞防止性に優れたものであった」ことが記載されている(摘記9-7)。
ここで、摘記9-4及び9-5(表1)には、上記実施例1?10、12?15において「バインダー樹脂(オリゴマー成分)」として配合された成分が「BS577(ビームセット577、ウレタンアクリレート、Mw1000、荒川化学工業社製)」又は「UV1700B(紫光UV1700B、ウレタンアクリレート、Mw2000、日本合成化学社製)」であることが記載されているところ、より具体的には、上記「BS577」は、先願11明細書等(摘記11-4)の記載を参酌すると、「2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を反応させた、分子量Mw約300の6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(荒川化学工業株式会社製)」であり、上記「UV1700B」は、先願11明細書等(摘記11-4)及び引用文献12(摘記12-1)の記載を参酌すると、「2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)を反応させた、Mw約2000の10官能のウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製)」であると認められる。
また、摘記9-4及び9-5(表1)には、上記実施例1?10、12?15において「バインダー樹脂(モノマー成分)」として配合された成分が、「DPHA」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6官能、重量平均分子量(Mw)524、日本化薬社製)、又は当該「DPHA」と「M9050」(ポリエステルエチレンオキサイド(EO)変性トリアクリレートとイソシアヌル酸EO変性トリアクリレートとの混合樹脂、Mw約420、東亜合成社製)若しくは「M8030」(ポリエステルトリアクリレート、Mw約400、東亜合成社製、3官能)であることが記載されており、その他の成分をみても、上記樹脂組成物の実施例が、いずれも「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」ことが明らかである。
さらに、摘記9-6(表2)及び摘記9-7に記載された評価結果を参酌すると、先願9明細書等に記載された樹脂組成物は、トリアセチルセルロース(TAC)基材に塗布されたときに実際に上記の課題を解決し得るものであり、摘記9-3に記載されたように、「見かけ上、上記塗膜の非浸透部における4級アンモニウム塩含有重合体の割合が高くなり、少量の4級アンモニウム塩含有重合体でも、形成するハードコート層に充分な帯電防止性能を発現させることができる。・・・トリアセチルセルロース基材を構成する組成物と2官能以上で親水性のアクリレートモノマーとが混合した渾然一体層となるため、干渉縞が消え視認性が良好な光学積層体となる。・・・2官能以上で親水性のアクリレートモノマーは、紫外線で架橋反応するため、密着性に優れた光学積層体となる。・・・多官能アクリレートオリゴマー自体硬度に優れるため、光学積層体としての硬度にも優れるものになる」等の効果が得られるものと認められる。
そうすると、先願9明細書等には、先願11明細書等及び引用文献12の記載を参酌すると、次の発明が記載されている。
「4級アンモニウム塩含有重合体、バインダー樹脂及び溶剤を含有し、前記4級アンモニウム塩含有重合体は、前記バインダー樹脂よりも親水性の度合いが高いものであり、前記バインダー樹脂は、重量平均分子量600以下のモノマー及び重量平均分子量1000?1万のオリゴマーであり、前記モノマーの親水性の度合いが前記オリゴマーの親水性の度合いよりも高いものであり、前記オリゴマーは2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)又はDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)を反応させたウレタンアクリレートオリゴマーであり、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、トリアセチルセルロース基材上に塗布される帯電防止性ハードコート層形成用樹脂組成物。」(以下、「引用発明9」という。)

また、上記の記載から明らかに、先願9明細書等には次の発明も記載されている。
「引用発明9の帯電防止性ハードコート層形成用樹脂組成物を塗布してなるトリアセチルセルロース基材。」(以下、「引用発明9f」という。)

キ 先願10明細書等に記載された発明
先願10明細書等には、「(A)帯電防止剤、(B)1分子中に光硬化性基を2個以上有し、分子量900以下の多官能モノマー及び(C)1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を6個以上有し、重量平均分子量1000?11000のウレタンアクリレートを含み、当該(A)、(B)及び(C)の総量に対する当該(A)の割合が、1?30質量%、かつ、当該(B)及び(C)の総量に対する当該(C)の割合が1?40質量%であることを特徴とする、帯電防止層用硬化性樹脂組成物。」(摘記10-1の請求項1)及び「前記(A)が、重量平均分子量1000?50000の4級アンモニウム塩であることを特徴とする、請求項1に記載の帯電防止層用硬化性樹脂組成物。」(摘記10-1の請求項2)が記載されており、「帯電防止層用組成物には、上記(A)、(B)及び(C)成分の他、必要に応じて適宜溶剤・・・が含まれていても良い」こと(摘記10-4の[0068])、当該樹脂組成物は、「光学特性や外観が良好で、十分な帯電防止性及び隣接するHC層及びTAC基材との密着性に優れた帯電防止層を形成することができる帯電防止層用硬化性樹脂組成物を提供する」という課題を解決するものであること(摘記10-2)が記載されている。
また、摘記10-5には、上記樹脂組成物の具体例である「帯電防止層用組成物1」として、「帯電防止剤(A):日本化成(株)製の商品名UV-ASHC-01(重量平均分子量20000、固形分70%、4級アンモニウム塩成分は固形分中15%):固形分換算1質量部、多官能モノマー(B):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製、6官能、分子量578):64質量部、ウレタンアクリレート(C):荒川化学工業(株)製の商品名BS577(6官能、重量平均分子量1000):35質量部、重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン):1質量部、メチルエチルケトン:100質量部」の組成を有する組成物を調製したこと、及びこれとは別に「HC層用組成物1」を調製したことが記載され、摘記10-6には、実施例1として、「厚さ80μmのTAC基材・・・を準備し、TAC基材の片面に、調製した上記帯電防止層用組成物1を塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が50mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、乾燥時の厚さ2.5μmの帯電防止層を形成した」こと、「次いで、得られた帯電防止層上に調製した上記ハードコート層用組成物1を塗布し、帯電防止層と同様に乾燥し、紫外線を積算光量が150mJになるように照射して塗膜を硬化させ乾燥時の厚さ12μmのハードコート層を形成し、これによりTAC基材の一面側にTAC基材側から帯電防止層及びハードコート層を順に有する光学フィルムを作製した」こと、及び「帯電防止層の表面抵抗値を測定するために、上記光学フィルムと同様にTAC基材(TF80UL)上に帯電防止層の形成までを行い、TAC基材の一面側に帯電防止層のみを有する積層体も作製した」ことが記載されている。
さらに、摘記10-6には、実施例2?7として、「実施例1において、帯電防止層用組成物1に含まれる帯電防止剤(A)、多官能モノマー(B)及びウレタンアクリレート(C)の量・・・を、それぞれ、表1に示すように代えた以外は実施例1と同様に光学フィルム及び積層体を作製した」ことが記載され、表1(摘記10-7)を参照すると、実施例2?6は、実施例1と同じ(A)?(C)成分が使用され、その配合割合のみが変更された例であることが読み取れる。
加えて、表1(摘記10-7)には、各実施例の光学フィルムの評価結果も記載されレているところ、「表1より、実施例1?7では、いずれも良好な積層体(帯電防止層)の表面抵抗値が得られ、光学フィルムの密着性も良好であった。また、光学特性や外観も良好であった」ことが記載されている(摘記10-8)。
ここで、摘記10-5には、上記帯電防止層用組成物1に配合された「帯電防止剤(A)」が、「日本化成(株)製の商品名UV-ASHC-01(重量平均分子量20000、固形分70%、4級アンモニウム塩成分は固形分中15%)」であることが記載されているところ、より具体的には、上記「商品名UV-ASHC-01」は、先願11明細書等(摘記11-4)の記載を参酌すると、「第四級アンモニウム塩基を有する分子量Mw10,000の高分子型の帯電防止剤(日本化成株式会社製、第四級アンモニウム塩基を有する共重合体を、固形分中15質量%含む)。」であると認められる。
また、摘記10-5には、上記帯電防止層用組成物1に配合された「ウレタンアクリレート(C)」が「荒川化学工業(株)製の商品名BS577(6官能、重量平均分子量1000)」であることが記載されているところ、より具体的には、上記「BS577」は、先願11明細書等(摘記11-4)の記載を参酌すると、「2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を反応させた、分子量Mw約300の6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(荒川化学工業株式会社製)」であると認められる。
さらに、摘記10-5には、上記帯電防止層用組成物1に配合された「多官能モノマー(B)」が、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(商品名:KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製、6官能、分子量578)」であることが記載されているところ、摘記10-5?10-7(表1)の記載からみて、実施例1?6における「帯電防止層用組成物」は、いずれも「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」ことが明らかである。
加えて、摘記10-7(表1)及び摘記10-8に記載された評価結果を参酌すると、先願10明細書等に記載された帯電防止層用組成物は、TAC基材に塗布されたときに実際に上記の課題を解決し得るものであり、摘記10-2に記載されたように、「干渉縞が発生するなど外観が悪化する」ようなことがなく、「十分な帯電防止性を有しながら、HC層及びTAC基材との密着性に優れた帯電防止層を形成することができ、光学フィルム全体としては、優れたホコリ付着防止性能が得られる」等の効果が得られるものと認められる。
そうすると、先願10明細書等には、先願11明細書等の記載を参酌すると、次の発明が記載されている。
「(A)第四級アンモニウム塩基を有する共重合体を含む帯電防止剤、(B)1分子中に光硬化性基を2個以上有し、分子量900以下の多官能モノマー及び(C)1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を6個以上有し、重量平均分子量1000?11000である、2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を反応させたウレタンアクリレートを含み、更に溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、トリアセチルセルロース基材上に塗布される帯電防止層用硬化性樹脂組成物。」(以下、「引用発明10」という。)

また、上記の記載から明らかに、先願10明細書等には次の発明も記載されている。
「引用発明10の帯電防止層用硬化性樹脂組成物を塗布してなるトリアセチルセルロース基材。」(以下、「引用発明10f」という。)

ク 先願11明細書等に記載された発明
先願11明細書等には、「トリアセチルセルロースからなる透明基材フィルムの一方の面に、第四級アンモニウム塩を含有する帯電防止剤と多官能重合性化合物とを含む電離放射線硬化性樹脂の硬化物層からなるハードコート層を有する、帯電防止性ハードコートフィルムにおいて、上記第四級アンモニウム塩が、第四級アンモニウム塩基を有し重量平均分子量が1,000?50,000の高分子型の帯電防止剤であり、上記多官能重合性化合物が、下記式[1]で表わされる、イソシアヌル酸骨格を有し(メタ)アクリロイル基が15官能のウレタン系多官能アクリレート系化合物である、帯電防止性ハードコートフィルム。(式[1]は摘記11-1を参照。)」が記載されており(摘記11-1)、「電離放射線硬化性樹脂の樹脂組成物には、透明基材フィルム上への塗工適性等の物性調整の為に、溶剤を含ませることができる。また、溶剤は、透明基材フィルムとハードコート層との界面の干渉縞防止の為に、透明基材フィルムに対して浸透性を有する浸透性溶剤とすることができる」こと(摘記11-3)、上記電離放射線硬化性樹脂は、「アルカリ水溶液によって鹸化処理をしても、帯電防止剤を添加したハードコート層の帯電防止性能が損なわれない様にして、ハードコート層による耐擦傷性及び帯電防止性の機能を維持できる耐鹸化性を有する、帯電防止性ハードコートフィルムを提供する」という課題を解決するものであること(摘記11-2)が記載されている。
また、摘記11-5には、上記電離放射線硬化性樹脂の具体例である「ハードコート層用組成物(1)」として、「帯電防止剤;UV-ASHC-01 25部、樹脂;U15HA 25部、樹脂;UV1700B 50部、溶剤;MEK 100部、及び光重合開始剤;イルガキュア184 4部」の組成を有する組成物が調製されたこと、及び実施例1として、「透明基材フィルムとして厚み80μmの透明なトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム、屈折率1.48)の片面に、・・・ハードコート層用組成物(1)を塗布した後、紫外線照射で樹脂を(半)硬化させて、厚み10μmのハードコート層を形成し」、「次に、形成したハードコート層の上に、・・・低屈折率層用組成物(A)を塗布した後、紫外線照射で樹脂を硬化させて、厚み100nmの低屈折率層を形成すると共に、ハードコート層も完全に硬化させて、帯電防止性ハードコートフィルムを作製し」、「次いで、鹸化処理条件Aで鹸化処理をした」ことが記載されている。
同様に、摘記11-6には「ハードコート層用組成物(3)」、摘記11-7には「ハードコート層用組成物(6)」、摘記11-8には「ハードコート層用組成物(12)」?「同(15)」の配合成分が記載され、それぞれ実施例1と同様の方法で帯電防止性ハードコートフィルムが作製されたことが記載されている。
さらに、摘記11-9(表1)及び11-10(表2)には、各実施例で用いられたハードコート層用組成物に含まれる帯電防止剤及び樹脂の名称と配合割合、及び各実施例の帯電防止性ハードコートフィルムの性能評価結果が記載されているところ、「実施例1?12(但し実施例6は鹸化処理条件が異なる)は、いずれも、帯電防止性、透明性(耐白化、ヘイズ)、及び硬度の全てが良好で、耐鹸化性が満足できるものであった。また、多官能重合性化合物を上記15官能重合性化合物単独(実施例2)ではなく、他の多官能重合性化合物のオリゴマーも併用した場合(実施例1、及び実施例3?実施例12)でも、耐鹸化性は満足できるものであった」ことが記載されている(摘記11-11)。
ここで、摘記11-4及び11-5?11-10の記載を参酌すると、上記ハードコート層用組成物(1)、(3)、(6)、(12)?(15)に配合された帯電防止剤は、「UV-ASHC-01」(第四級アンモニウム塩基を有する分子量Mw10,000の高分子型の帯電防止剤(日本化成株式会社製、第四級アンモニウム塩基を有する共重合体を、固形分中15質量%含む))、「H6500」(分子量Mw10,000の高分子型の第四級アンモニウム塩を含む帯電防止剤(三菱化学株式会社製、第四級アンモニウム塩基を有する共重合体を、固形分中7質量%含む))、又は「ASNo1」(分子量Mw20,000の高分子型の第四級アンモニウム塩を含む帯電防止剤)である。
また、上記ハードコート層用組成物(1)、(3)、(6)、(12)?(15)は、「樹脂」(多官能重合性化合物)として「U15HA」(HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)の三量体のイソシアヌル骨格から延びる3個のイソシアネート基にDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)を反応させた、Mw約2300の15官能のウレタン系多官能アクリレート系化合物(新中村化学工業株式会社製)。)と、「UV1700B」(2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)を反応させた、Mw約2000の10官能のウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製))又は「BS577」(2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を反応させた、分子量Mw約300の6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(荒川化学工業株式会社製))のいずれかとを含むものである。
さらに、上記ハードコート層用組成物(1)、(3)、(6)、(12)?(15)は、いずれも上記「樹脂」(多官能性化合物)以外の重合性成分を含有しないから、「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」ことが明らかである。
加えて、摘記11-9(表1)、11-10(表2)及び摘記11-11に記載された評価結果を参酌すると、先願11明細書等に記載されたハードコート層用組成物は、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布されたときに実際に上記の課題を解決し得るものであり、摘記11-11に記載されたように「帯電防止性、透明性(耐白化、ヘイズ)、及び硬度の全てが良好で、耐鹸化性が満足できる」光学フィルムを提供することができ、また、摘記11-3に記載されたように、適切な溶剤を用いることにより「透明基材フィルムとハードコート層との界面の干渉縞防止」を図れるものと認められる。
そうすると、先願11明細書等には次の発明が記載されている。
「第四級アンモニウム塩基を有し重量平均分子量が1,000?50,000の高分子型の帯電防止剤と、式[1](定義は摘記11-1を参照。)で表わされる、イソシアヌル酸骨格を有し(メタ)アクリロイル基が15官能のウレタン系多官能アクリレート系化合物と、2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)又はPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を反応させたウレタンアクリレートオリゴマーを含み、更に溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止性ハードコート層用組成物。」(以下、「引用発明11」という。)

また、上記の記載から明らかに、先願11明細書等には次の発明も記載されている。
「引用発明11の帯電防止性ハードコート層用組成物を塗布してなるトリアセチルセルロースフィルム。」(以下、「引用発明11f」という。)

(3)理由I(新規性)及び理由II(進歩性 その1)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明1との対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、後者における「一般式(1)及び(2)(各式の定義は摘記1-1を参照。)を必須の構成成分とする4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)」、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー)」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」は、それぞれ本件発明1における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」、「ヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート・・・の水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止ハードコート樹脂組成物」に相当し、両者は「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」点でも一致する。また、前者における「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」はいずれも溶剤であるから、両者は溶剤を含有する点で共通する。
そうすると、両者は、
「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、ヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更に溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、帯電防止ハードコート樹脂組成物。」の点で一致し、
相違点A-1:4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)が、本件発明1においては「数平均分子量が5000?500000である」のに対し、引用発明1においてはそのようなことが明らかでない点
相違点B-1:溶剤として、本件発明1は「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」を含有するのに対し、引用発明1は「アルコール系溶剤(d-1)及び炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)」を含み、「溶剤(D)の100重量%中、アルコール系溶剤(d-1)の含有量が5?25重量%、炭素数3?5のアセテート系溶剤(d-2)の含有量が55?90重量%」である点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点B-1について
事案に鑑みて、まず、相違点B-1について検討する。
トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物において、含まれる溶剤の組成によって、塗布されたトリアセチルセルロースフィルムの表面の状態が変化し、トリアセチルセルロースフィルムと帯電防止ハードコート樹脂組成物による塗膜との間で生じる干渉縞の発生する程度が変わることは技術常識であるところ、引用発明1は、そのような干渉縞の発生について考慮されたものではなく、しかも、引用文献1には、上記の溶剤(d-1)及び(d-2)とともに、「任意のエーテル、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。具体的には、溶剤100重量%中に、その他の溶剤は20重量%以下であることが好ましい」ことが記載され、「トリアセチルセルロース支持体を溶解し、密着性を付与する溶剤」として多数の溶剤が例示される中に「アセトン」も記載されているものの(摘記1-3の[0040])、溶剤として「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という特定の溶剤を組み合わせたものについては記載も示唆もされておらず、引用発明1において、そのような特定の溶剤を組み合わせたものを採用する、動機付けを見出すことはできない。
そして、本件発明1では、溶剤として「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という特定の溶剤を組み合わせたものを採用することによって、トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しないという、引用発明1からは予測し得ない顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、上記相違点B-1は実質的な相違点であり、相違点A-1について検討するまでもなく、本件発明1は引用文献1に記載された発明とはいえない。また、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)本件発明1と引用発明2との対比
本件発明1と引用発明2とを対比すると、後者における「分子中に4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)」、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」は、それぞれ本件発明1における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」、「ヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート・・・の水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止ハードコート樹脂組成物」に相当し、両者は「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」点でも一致する。また、前者における「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」はいずれも溶剤であるから、両者は溶剤を含有する点で共通する。
そうすると、両者は、
「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、ヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更に溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、帯電防止ハードコート樹脂組成物。」の点で一致し、
相違点A-2:4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)が、本件発明1においては「数平均分子量が5000?500000である」のに対し、引用発明2においてはそのようなことが明らかでない点
相違点B-2:溶剤として、本件発明1は「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」を含有するのに対し、引用発明2は「アルコール系溶剤(d-1)」を含む点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(エ)相違点B-2について
事案に鑑みて、まず、相違点B-2について検討する。
トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物において、含まれる溶剤の組成によって、塗布されたトリアセチルセルロースフィルムの表面の状態が変化し、トリアセチルセルロースフィルムと帯電防止ハードコート樹脂組成物による塗膜との間で生じる干渉縞の発生する程度が変わることは技術常識であるところ、引用発明2は、そのような干渉縞の発生について考慮されたものではなく、しかも、引用文献2には、引用発明2で用いることができる上記(d-2)以外の溶剤として、「例えば、トリアセチルセルロース支持体を溶解し、密着性を付与する溶剤」が多数例示されており、その中に「アセトン」も記載されているものの(摘記2-3の[0052])、溶剤として「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という特定の溶剤を組み合わせたものについては記載も示唆もされておらず、引用発明2において、そのような特定の溶剤を組み合わせたものを採用する、動機付けを見出すことはできない。
そして、本件発明1では、溶剤として「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という特定の溶剤を組み合わせたものを採用することによって、トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しないという、引用発明2からは予測し得ない顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、上記相違点B-2は実質的な相違点であり、相違点A-2について検討するまでもなく、本件発明1は引用文献2に記載された発明とはいえない。また、本件発明1は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(オ)本件発明1と引用発明3との対比
本件発明1と引用発明3とを対比すると、後者における「一般式(1)及び(2)(各式の定義は摘記3-1を参照。)を必須の構成成分とする4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)」、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」は、それぞれ本件発明1における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」、「ヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート・・・の水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止ハードコート樹脂組成物」に相当し、両者は「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」点でも一致する。また、前者における「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」はいずれも溶剤であるから、両者は溶剤を含有する点で共通する。
そうすると、両者は、
「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、ヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更に溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、帯電防止ハードコート樹脂組成物。」の点で一致し、
相違点A-3:4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)が、本件発明1においては「数平均分子量が5000?500000である」のに対し、引用発明3においてはそのようなことが明らかでない点
相違点B-3:溶剤として、本件発明1は「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」を含有するのに対し、引用発明3は「アルコール系溶剤(d-1)及び炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)」を含み、「溶剤(D)の100重量%中、アルコール系溶剤(d-1)の含有量が5?30重量%、炭酸エステル類、若しくは環状エーテル類から選ばれる溶剤(d-2)の含有量が20?95重量%」である点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(カ)相違点B-3について
事案に鑑みて、まず、相違点B-3について検討する。
トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物において、含まれる溶剤の組成によって、塗布されたトリアセチルセルロースフィルムの表面の状態が変化し、トリアセチルセルロースフィルムと帯電防止ハードコート樹脂組成物による塗膜との間で生じる干渉縞の発生する程度が変わることは技術常識であるところ、引用発明3は、そのような干渉縞の発生について考慮されたものではなく、しかも、引用文献3には、上記の溶剤(d-1)及び(d-2)とともに、「任意のエーテル、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。具体的には、溶剤100重量%中に、その他の溶剤は60重量未満であることが好ましい」ことが記載され、「トリアセチルセルロース支持体を溶解し、密着性を付与する溶剤」として多数の溶剤が例示される中に「アセトン」も記載されているものの(摘記3-3の[0041])、溶剤として「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という特定の溶剤を組み合わせたものについては記載も示唆もされておらず、引用発明3において、そのような特定の溶剤を組み合わせたものを採用する、動機付けを見出すことはできない。
そして、本件発明1では、溶剤として「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という特定の溶剤を組み合わせたものを採用することによって、トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しないという、引用発明3からは予測し得ない顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、上記相違点B-3は実質的な相違点であり、相違点A-3について検討するまでもなく、本件発明1は引用文献3に記載された発明とはいえない。また、本件発明1は、引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用発明1?3との対比、判断
本件発明2は、本件発明1の構成要件をすべて備え、さらに、本件発明1における(A)成分(ウレタン(メタ)アクリレート)の含有量が帯電防止ハードコート樹脂組成物の固形分中5?98重量%であることが特定された発明である。
そこで、上記5.(3)ア「本件発明1について」における検討を踏まえて、本件発明2と引用発明1?3とを対比、検討すると、両者は少なくとも上記相違点B-1、B-2又はB-3の点で実質的に相違し、また、引用文献1?3のそれぞれの記載に基づいて当業者がこれらの相違点に係る構成に容易に想到することができたとはいえない。

(イ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は引用文献1?3に記載された発明とはいえない。
また、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と引用発明1fとの対比
本件発明3と引用発明1fとを対比すると、後者における「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」、「塗布してなる」及び「トリアセチルセルロースフィルム」は、それぞれ本件発明3における「帯電防止ハードコート樹脂組成物」、「塗布して成る」及び「トリアセチルセルロースフィルム」に相当する。また、後者における「引用発明1の帯電防止用ハードコート樹脂組成物」と、前者における「請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物」との対比及び判断は、上記5.(3)ア(ア)「本件発明1と引用発明1との対比」?同ア(イ)「相違点B-1について」及び同イ「本件発明2について」に記載したとおりである。

(イ)小括
よって、本件発明3は引用文献1に記載された発明とはいえない。
また、本件発明3は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件発明3と引用発明2fとの対比
本件発明3と引用発明2fとを対比すると、後者における「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」、「塗布してなる」及び「トリアセチルセルロースフィルム」は、それぞれ本件発明3における「帯電防止ハードコート樹脂組成物」、「塗布して成る」及び「トリアセチルセルロースフィルム」に相当する。また、後者における「引用発明2の帯電防止用ハードコート樹脂組成物」と、前者における「請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物」との対比及び判断は、上記5.(3)ア(エ)「相違点B-2について」及び同イ「本件発明2について」に記載したとおりである。

(エ)小括
よって、本件発明3は引用文献2に記載された発明とはいえない。
また、本件発明3は引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ)本件発明3と引用発明3fとの対比
本件発明3と引用発明3fとを対比すると、後者における「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」、「塗布してなる」及び「トリアセチルセルロースフィルム」は、それぞれ本件発明3における「帯電防止ハードコート樹脂組成物」、「塗布して成る」及び「トリアセチルセルロースフィルム」に相当する。また、後者における「引用発明3の帯電防止用ハードコート樹脂組成物」と、前者における「請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物」との対比及び判断は、上記5.(3)ア(カ)「相違点B-3について」及び同イ「本件発明2について」に記載したとおりである。

(カ)小括
よって、本件発明3は引用文献3に記載された発明とはいえない。
また、本件発明3は引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 理由I(新規性)及び理由II(進歩性 その1)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも引用文献1?3のそれぞれに記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明1?3は、いずれも引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
よって、取消理由通知に記載した理由I(新規性)及び理由II(進歩性 その1)の理由によって、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

(4)理由III(進歩性 その2)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明1との対比
本件発明1と引用発明1との対比は、上記5.(3)ア(ア)「本件発明1と引用発明1との対比」に記載したとおりである。
そこで、まず、上記相違点B-1について検討する。

(イ)相違点B-1について
引用文献5?7(摘記5-1?7-4)に記載されたように、トリアセチルセルロースフィルム等の光学用透明基材に帯電防止性ハードコート層を設けるための塗工用組成物において、干渉縞の発生防止は課題の一つとして周知であったから、引用発明1の課題として、暗に同様の課題が内包されていたと仮定して検討する。
ここで、引用文献5?7には、干渉縞の発生を防止するための周知の手段として、溶剤の選択(摘記5-3)や、添加剤による屈折率の調整(摘記6-4、7-4)が記載されている。
しかし、引用文献5?7を参照しても、上記相違点B-1に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶媒の具体的な組合せは記載されていない。また、引用文献5?7の記載を参酌しても、当業者が引用文献1の記載に基づいて、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない」ことを意図して、特に「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶媒の具体的な組合せを採用することに容易に想到することができたとはいえない。

(ウ)小括
よって、相違点A-1について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明1、引用文献1に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件発明1と引用発明2、3との対比
本件発明1と引用発明2、3との対比は、それぞれ上記5.(3)ア(ウ)「本件発明1と引用発明2との対比」及び同(オ)「本件発明1と引用発明3との対比」に記載したとおりである。
そこで、まず、上記相違点B-2及びB-3について検討する。

(オ)相違点B-2及びB-3について
上記5.(4)ア(イ)「相違点B-1について」と同様に、引用文献5?7の記載を参酌しても、当業者が引用文献2、3の記載に基づいて、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない」ことを意図して、特に「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶媒の具体的な組合せを採用することに容易に想到することができたとはいえない。

(カ)小括
よって、相違点A-2について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明2、引用文献2に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、相違点A-3について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明3、引用文献3に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2、3について
本件発明2と引用発明1?3との対比は、上記5.(3)イ「本件発明2について」に記載したとおりであり、本件発明3と引用発明1f?3fとの対比は、上記5.(3)ウ「本件発明3について」に記載したとおりである。
そして、上記5.(4)ア「本件発明1について」における検討を踏まえると、本件発明2、3についても同様のことがいえる。
よって、本件発明2、3は引用発明1?3又は引用発明1f?3fと、引用文献1?3に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 理由III(進歩性 その2)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも引用発明1?3又は引用発明1f?3fと、引用文献1?3に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
よって、取消理由通知に記載した理由III(進歩性 その2)の理由によって、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

(5)理由IV(進歩性 その3)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明4との対比
本件発明1と引用発明4とを対比すると、後者における「第4級アンモニウム塩基を有する重合体[II]」、「イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-a]」、「フィルム」及び「帯電防止用ハードコート樹脂組成物物」は、それぞれ本件発明1における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」、「イソホロンジイソシアネート・・・と、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート・・・の水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)」、「フィルム」及び「帯電防止ハードコート樹脂組成物」に相当し、両者は「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」点でも一致する。また、前者における「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」はいずれも有機溶剤であるから、両者は有機溶剤を含有する点で共通する。
そうすると、両者は、
「フィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更に有機溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、帯電防止ハードコート樹脂組成物。」の点で一致し、
相違点A-4:4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)が、本件発明1においては「数平均分子量が5000?500000である」のに対し、引用発明4においてはそのようなことが明らかでない点
相違点B-4:有機溶剤として、本件発明1は「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」を含有するのに対し、引用発明4はそのようなことが明らかでない点
相違点C-4:フィルムが、本件発明1においては「トリアセチルセルロースフィルム」であるのに対して、引用発明4においては「光学フィルム」である点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点B-4について
事案に鑑みて、まず、相違点B-4について検討する。
トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物において、含まれる有機溶剤の組成によって、塗布されたトリアセチルセルロースフィルムの表面の状態が変化し、トリアセチルセルロースフィルムと帯電防止ハードコート樹脂組成物による塗膜との間で生じる干渉縞の発生する程度が変わることは技術常識であるところ、引用発明4は、そのような干渉縞の発生について考慮されたものではなく、しかも、引用文献4には、「この組成物は必要に応じて、有機溶剤を配合し、粘度を調整して使用することも可能である」ことが記載され、多数の有機溶剤が例示される中に「アセトン」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテル」も記載されているものの(摘記4-3)、有機溶剤として「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という特定の有機溶剤を組み合わせたものについては記載も示唆もされておらず、引用発明4において、そのような特定の有機溶剤を組み合わせたものを採用する、動機付けを見出すことはできない。
また、引用文献5?7(摘記5-1?7-4)に記載されたように、トリアセチルセルロースフィルム等の光学用透明基材に帯電防止性ハードコート層を設けるための塗工用組成物において、干渉縞の発生防止は課題の一つとして周知であったから、引用発明4の課題として、暗に同様の課題が内包されていたと仮定して検討しても、引用文献5?7には、上記相違点B-4に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という有機溶剤の具体的な組合せは記載されていないし、引用文献5?7の記載を参酌しても、当業者が引用文献4の記載に基づいて、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない」ことを意図して、特に「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という有機溶剤の具体的な組合せを採用することに容易に想到することができたとはいえない。
そして、本件発明1では、有機溶剤として「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という特定の有機溶剤を組み合わせたものを採用することによって、トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しないという、引用発明4からは予測し得ない顕著な作用効果を奏するものである。

(ウ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明4、引用文献4に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献1?3、5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用発明4との対比、判断
本件発明2は、本件発明1の構成要件をすべて備え、さらに、本件発明1における(A)成分(ウレタン(メタ)アクリレート)の含有量が帯電防止ハードコート樹脂組成物の固形分中5?98重量%であることが特定された発明である。
そこで、上記5.(5)ア「本件発明1について」における検討を踏まえて、本件発明2と引用発明4とを対比、検討すると、両者は少なくとも上記相違点B-4の点で実質的に相違し、また、引用文献4の記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献1?3、5?7)に基づいて当業者が相違点B-4に係る構成に容易に想到することができたとはいえない。

(イ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は引用発明4、引用文献4に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献1?3、5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と引用発明4fとの対比
本件発明3と引用発明4fとを対比すると、後者における「帯電防止用ハードコート樹脂組成物」、「塗布してなる」及び「フィルム」は、それぞれ本件発明3における「帯電防止ハードコート樹脂組成物」、「塗布して成る」及び「フィルム」に相当する。また、後者における「引用発明4の帯電防止用ハードコート樹脂組成物」と、前者における「請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物」との対比及び判断は、上記5.(5)ア「本件発明1について」及び同イ「本件発明2について」に記載したとおりである。

(イ)小括
よって、本件発明3は引用発明4、引用文献4に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献1?3、5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 理由IV(進歩性 その3)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも引用発明4、引用文献4に記載された事項及び周知の技術的事項(引用文献1?3、5?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
よって、取消理由通知に記載した理由IV(進歩性 その3)の理由によって、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

(6)理由V(拡大先願 その1)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明8との対比
本件発明1と引用発明8とを対比すると、後者における「(a)4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体」、「ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止性ハードコート層形成用組成物」は、それぞれ前者における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」、「ヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート・・・の水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止ハードコート樹脂組成物」に相当し、両者は「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」点でも一致する。また、前者における「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」はいずれも有機溶剤であるから、両者は有機溶剤を含有する点で共通する。
そうすると、両者は、
「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、ヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更に有機溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、帯電防止ハードコート樹脂組成物。」の点で一致し、
相違点A-8:4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)が、本件発明1においては「数平均分子量が5000?500000である」のに対し、引用発明8においてはそのようなことが明らかでない点
相違点B-8:有機溶剤として、本件発明1は「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」を含有するのに対し、引用発明8はそのようなことが明らかでない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点B-8について
事案に鑑みて、まず、相違点B-8について検討する。
先願8明細書等には、「帯電防止性ハードコート層形成用組成物は種々の有機溶剤を含有してもよい」ことが記載され、多数の有機溶剤が例示される中に「アセトン」及び「プロピレングリコールメチルエーテル」も記載されているが(摘記8-3の[0065]?[0066])、上記相違点B-8に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という有機溶剤の具体的な組合せが記載されているとまではいえず、実際、先願8明細書等に記載された実施例(摘記8-3の「0110」?8-8)を参照しても、「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という有機溶剤の組合せは用いられていない。
また、先願8明細書等には、引用発明8が「帯電防止性に優れた帯電防止性ハードコート層を有する光学フィルムを提供し得る帯電防止性ハードコート層形成用組成物を提供すること」を課題とする発明であること(摘記8-2)が記載されているところ、当該課題は本件発明の解決しようとする課題である「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない帯電防止ハードコート樹脂組成物を提供すること」(本件明細書の[0006])とは異なるものであり、さらに、先願8明細書等には、有機溶剤と本件発明の課題とするところである「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない」こととを結び付ける記載は見出せない。
そうすると、先願8明細書等において、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない」ことを意図して、特に「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という有機溶剤の具体的な組合せを採用することが記載されているとはいえない。
さらに、本件特許に係る出願の出願時における技術常識として、引用文献5?7(摘記5-1?7-4)に記載されたように、トリアセチルセルロースフィルム等の光学用透明基材に帯電防止性ハードコート層を設けるための塗工用組成物において、干渉縞の発生防止が課題の一つとして周知であったことを参酌することができるとしても、引用文献5?7には、上記相違点B-8に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という有機溶剤の具体的な組合せは記載されておらず、そのような有機溶剤の具体的な組合せまでもが周知の技術的事項であったとはいえないから、出願時の技術常識を参酌しても、上記相違点B-8が先願8明細書等に実質的に記載された事項であるとはいえない。
そうすると、上記相違点B-8は実質的な相違点である。

(ウ)小括
よって、相違点A-8について検討するまでもなく、本件発明1は先願8明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用発明8との対比、判断
本件発明2は、本件発明1の構成要件をすべて備え、さらに、本件発明1における(A)成分(ウレタン(メタ)アクリレート)の含有量が帯電防止ハードコート樹脂組成物の固形分中5?98重量%であることが特定された発明である。
そこで、上記5.(6)ア「本件発明1について」における検討を踏まえて、本件発明2と引用発明8とを対比、検討すると、両者は少なくとも上記相違点B-8の点で実質的に相違するものである。

(イ)小括
よって、相違点A-8について検討するまでもなく、本件発明2は先願8明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と引用発明8fとの対比
本件発明3と引用発明8fとを対比すると、後者における「帯電防止性ハードコート層形成用組成物」、「塗布してなる」及び「トリアセチルセルロースフィルム」は、それぞれ本件発明3における「帯電防止ハードコート樹脂組成物」、「塗布して成る」及び「トリアセチルセルロースフィルム」に相当する。また、後者における「引用発明8の帯電防止性ハードコート層形成用組成物」と、前者における「請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物」との対比及び判断は、上記5.(6)ア「本件発明1について」及び同イ「本件発明2について」に記載したとおりである。

(イ)小括
よって、本件発明3は先願8明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

エ 理由V(拡大先願 その1)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも先願8明細書等に記載された発明と同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。
よって、取消理由通知に記載した理由V(拡大先願 その1)の理由によって、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

(7)理由VI(拡大先願 その2)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明9との対比
本件発明1と引用発明9とを対比すると、後者における「4級アンモニウム塩含有重合体」、「2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)又はDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)を反応させたウレタンアクリレートオリゴマー」、「トリアセチルセルロース基材上に塗布される」及び「帯電防止性ハードコート層形成用樹脂組成物」は、それぞれ本件発明1における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」、「イソホロンジイソシアネート・・・と、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止ハードコート樹脂組成物」に相当し、両者は「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」点でも一致する。また、前者における「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」はいずれも溶剤であるから、両者は溶剤を含有する点で共通する。
そうすると、両者は、
「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はジペンタエリスリトールペンタアクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更に溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、帯電防止ハードコート樹脂組成物。」の点で一致し、
相違点A-9:4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)が、本件発明1においては「数平均分子量が5000?500000である」のに対し、引用発明9においてはそのようなことが明らかでない点
相違点B-9:溶剤として、本件発明1は「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」を含有するのに対し、引用発明9はそのようなことが明らかでない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点B-9について
事案に鑑みて、まず、相違点B-9について検討する。
先願9明細書等には、「溶剤は、トリアセチルセルロース基材に対して浸透性を有する浸透性溶剤を含有することが好ましい」こと、及び「上記浸透性溶剤は、その他の溶剤・・・と混合して使用してもよい」ことが記載され、それぞれ多数の溶剤が例示される中に「アセトン」及び「プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)」も記載されているが(摘記9-3の[0036]?[0038])、上記相違点B-9に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の具体的な組合せが記載されているとまではいえず、実際、先願9明細書等に記載された実施例(摘記9-4?9-7)を参照しても、「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の組合せは用いられていない。
また、先願9明細書等には、引用発明9が「帯電防止性、光学特性、硬度、密着性及び干渉縞防止性に優れ、更に、製造時のコストを抑制できる光学積層体、偏光板、並びに、画像表示装置を提供することを目的とする」発明であること(摘記9-2)が記載されているから、本件発明の解決しようとする課題である「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない帯電防止ハードコート樹脂組成物を提供すること」(本件明細書の[0006])と共通する「干渉縞防止性」を課題の一つとするものと解されるが、先願9明細書等には、当該課題を解決する手段の一つとして、特に「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の具体的な組合せを採用することが記載されているとはいえない。
さらに、本件特許に係る出願の出願時における技術常識として、引用文献5?7(摘記5-1?7-4)に記載されたように、トリアセチルセルロースフィルム等の光学用透明基材に帯電防止性ハードコート層を設けるための塗工用組成物において、干渉縞の発生防止が課題の一つとして周知であったことを参酌することができるとしても、引用文献5?7には、上記相違点B-9に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の具体的な組合せは記載されておらず、そのような溶剤の具体的な組合せまでもが周知の技術的事項であったとはいえないから、出願時の技術常識を参酌しても、上記相違点B-9が先願9明細書等に実質的に記載された事項であるとはいえない。
そうすると、上記相違点B-9は実質的な相違点である。

(ウ)小括
よって、相違点A-9について検討するまでもなく、本件発明1は先願9明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

(エ)本件発明1と引用発明10との対比
本件発明1と引用発明10とを対比すると、後者における「(A)第四級アンモニウム塩基を有する共重合体を含む帯電防止剤」、「(C)1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を6個以上有し、重量平均分子量1000?11000である、2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を反応させたウレタンアクリレート」、「トリアセチルセルロース基材上に塗布される」及び「帯電防止層用硬化性樹脂組成物」は、それぞれ本件発明1における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」、「イソホロンジイソシアネート・・・と、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート・・・の水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止樹脂組成物」に相当し、両者は「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」点でも一致する。また、前者における「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」はいずれも溶剤であるから、両者は溶剤を含有する点で共通する。
そうすると、両者は、
「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更に溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、帯電防止樹脂組成物。」の点で一致し、
相違点A-10:4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)が、本件発明1においては「数平均分子量が5000?500000である」のに対し、引用発明10においてはそのようなことが明らかでない点
相違点B-10:溶剤として、本件発明1は「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」を含有するのに対し、引用発明10はそのようなことが明らかでない点
相違点C-10:樹脂組成物が、本件発明1においては「ハードコート」であるのに対して、引用発明10においては「ハードコート」であるか否かが明らかでない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(オ)相違点B-10について
事案に鑑みて、まず、相違点B-10について検討する。
先願10明細書等には、「本発明の帯電防止層用組成物においては、浸透性溶剤を用いることにより、上記多官能モノマー(B)のTAC基材への浸透が促進され、帯電防止層とTAC基材の密着性が向上すると推測されることから浸透性溶剤を用いることが好ましい。・・・また、本発明の帯電防止層用組成物においては、非浸透性溶剤を用いることにより、上記ウレタンアクリレート(C)のTAC基材への浸透が抑制され、帯電防止層とHC層の密着性が向上すると推測されることから非浸透性溶剤を用いることが好ましい。・・・そのため、本発明の帯電防止層用組成物においては、溶剤が1種の場合は浸透溶剤を用いることが好ましいが、2種類以上の溶剤の場合に、浸透性溶剤と非浸透性溶剤を組み合わせて用いることが最も好ましい」ことが記載され、それぞれ多数の溶剤が例示される中に「アセトン」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)」も記載されているが(摘記10-4の[0069]?[0074])、上記相違点B-10に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の具体的な組合せが記載されているとまではいえず、実際、先願10明細書等に記載された実施例(摘記10-5?10-8)を参照しても、「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の組合せは用いられていない。
また、先願10明細書等には、「従来、浸透性溶剤を用いることで干渉縞防止が可能であり、外観を良好にできる技術が知られているが、浸透性溶剤を用いると、基材内に新たな界面が出来ることもあり・・・密着性の悪化に加えて、干渉縞を生じ外観も悪くなる問題」があったところ、引用発明10は「光学特性や外観が良好で、十分な帯電防止性及び隣接するHC層及びTAC基材との密着性に優れた帯電防止層を形成することができる帯電防止層用硬化性樹脂組成物を提供することを第一の目的とする」発明であること(摘記10-2)が記載されているから、本件発明の解決しようとする課題である「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない帯電防止ハードコート樹脂組成物を提供すること」(本件明細書の[0006])と共通する「干渉縞が発生しない」ことを課題の一つとするものと解されるが、先願10明細書等には、当該課題を解決する手段の一つとして、特に「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の具体的な組合せを採用することが記載されているとはいえない。
さらに、本件特許に係る出願の出願時における技術常識として、引用文献5?7(摘記5-1?7-4)に記載されたように、トリアセチルセルロースフィルム等の光学用透明基材に帯電防止性ハードコート層を設けるための塗工用組成物において、干渉縞の発生防止が課題の一つとして周知であったことを参酌することができるとしても、引用文献5?7には、上記相違点B-10に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の具体的な組合せは記載されておらず、そのような溶剤の具体的な組合せまでもが周知の技術的事項であったとはいえないから、出願時の技術常識を参酌しても、上記相違点B-10が先願10明細書等に実質的に記載された事項であるとはいえない。
そうすると、上記相違点B-10は実質的な相違点である。

(カ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は先願10明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

(キ)本件発明1と引用発明11との対比
本件発明1と引用発明11とを対比すると、後者における「第四級アンモニウム塩基を有し重量平均分子量が1,000?50,000の高分子型の帯電防止剤」、「2官能のIPDI(イソホロンジイソシアネート)のイソシアネート基にDPPA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)又はPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)を反応させたウレタンアクリレートオリゴマー」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止性ハードコート層用組成物」は、それぞれ本件発明1における「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)」、「イソホロンジイソシアネート・・・と、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)」、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される」及び「帯電防止ハードコート樹脂組成物」に相当し、両者は「アミド基を有する重合性モノマーを含有しない」点でも一致する。また、前者における「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」はいずれも溶剤であるから、両者は溶剤を含有する点で共通する。
そうすると、両者は、
「トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はジペンタエリスリトールペンタアクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更に溶剤を含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しない、帯電防止樹脂組成物。」の点で一致し、
相違点A-11:4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)が、本件発明1においては「数平均分子量が5000?500000である」のに対し、引用発明11においてはそのようなことが明らかでない点
相違点B-11:溶剤として、本件発明1は「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」を含有するのに対し、引用発明11はそのようなことが明らかでない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(ク)相違点B-11について
事案に鑑みて、まず、相違点B-11について検討する。
先願11明細書等には、「電離放射線硬化性樹脂の樹脂組成物には、透明基材フィルム上への塗工適性等の物性調整の為に、溶剤を含ませることができる。また、溶剤は、透明基材フィルムとハードコート層との界面の干渉縞防止の為に、透明基材フィルムに対して浸透性を有する浸透性溶剤とすることができる」ことが記載され、多数の溶剤が例示される中に「プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)」も記載されているが(摘記11-3)、上記相違点B-11に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶媒の具体的な組合せが記載されているとまではいえず、実際、先願11明細書等に記載された実施例(摘記11-4?11-11)を参照しても、「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の組合せは用いられていない。
また、先願11明細書等には、引用発明11が「アルカリ水溶液によって鹸化処理をしても、帯電防止剤を添加したハードコート層の帯電防止性能が損なわれない様にして、ハードコート層による耐擦傷性及び帯電防止性の機能を維持できる耐鹸化性を有する、帯電防止性ハードコートフィルムを提供すること」を課題とする発明であること(摘記11-2)、及び「溶剤は、透明基材フィルムとハードコート層との界面の干渉縞防止の為に、透明基材フィルムに対して浸透性を有する浸透性溶剤とすることができる」こと(摘記11-3)が記載されているから、本件発明の解決しようとする課題である「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない帯電防止ハードコート樹脂組成物を提供すること」(本件明細書の[0006])と共通する「干渉縞防止」を課題の一つとするものと解されるが、先願11明細書等には、当該課題を解決する手段の一つとして、特に「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の具体的な組合せを採用することが記載されているとはいえない。
さらに、本件特許に係る出願の出願時における技術常識として、引用文献5?7(摘記5-1?7-4)に記載されたように、トリアセチルセルロースフィルム等の光学用透明基材に帯電防止性ハードコート層を設けるための塗工用組成物において、干渉縞の発生防止が課題の一つとして周知であったことを参酌することができるとしても、引用文献5?7には、上記相違点B-11に係る「アセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテル」という溶剤の具体的な組合せは記載されておらず、そのような溶剤の具体的な組合せまでもが周知の技術的事項であったとはいえないから、出願時の技術常識を参酌しても、上記相違点B-11が先願11明細書等に実質的に記載された事項であるとはいえない。
そうすると、上記相違点B-11は実質的な相違点である。

(ケ)小括
よって、相違点A-11について検討するまでもなく、本件発明1は先願11明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用発明9?11との対比、判断
本件発明2は、本件発明1の構成要件をすべて備え、さらに、本件発明1における(A)成分(ウレタン(メタ)アクリレート)の含有量が帯電防止ハードコート樹脂組成物の固形分中5?98重量%であることが特定された発明である。
そこで、上記5.(7)ア「本件発明1について」における検討を踏まえて、本件発明2と引用発明9?11とを対比、検討すると、両者は少なくとも上記相違点B-9、B-10又はB-11の点で実質的に相違するものである。

(イ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は先願9明細書等?先願11明細書等に記載されたいずれの発明とも同一とはいえない。

ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と引用発明9fとの対比、判断
本件発明3と引用発明9fとを対比すると、後者における「帯電防止性ハードコート層形成用樹脂組成物」、「塗布してなる」及び「トリアセチルセルロース基材」は、それぞれ本件発明3における「帯電防止ハードコート樹脂組成物」、「塗布して成る」及び「トリアセチルセルロースフィルム」に相当する。また、後者における「引用発明9の帯電防止性ハードコート層形成用樹脂組成物」と、前者における「請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物」との対比及び判断は、上記5.(7)ア(ア)「本件発明1と引用発明9との対比」?同ア(イ)「相違点B-9について」及び同イ「本件発明2について」に記載したとおりである。

(イ)小括
よって、本件発明3は先願9明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

(ウ)本件発明3と引用発明10fとの対比、判断
本件発明3と引用発明10fとを対比すると、後者における「帯電防止層用硬化性樹脂組成物」、「塗布してなる」及び「トリアセチルセルロース基材」は、それぞれ本件発明3における「帯電防止樹脂組成物」、「塗布して成る」及び「トリアセチルセルロースフィルム」に相当する。また、後者における「引用発明10の帯電防止層用硬化性樹脂組成物」と、前者における「請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物」との対比及び判断は、上記5.(7)ア(エ)「本件発明1と引用発明10との対比」?同ア(オ)「相違点B-10について」及び同イ「本件発明2について」に記載したとおりである。

(エ)小括
よって、本件発明3は先願10明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

(オ)本件発明3と引用発明11fとの対比、判断
本件発明3と引用発明11fとを対比すると、後者における「帯電防止性ハードコート層用組成物」、「塗布してなる」及び「トリアセチルセルロースフィルム」は、それぞれ本件発明3における「帯電防止ハードコート樹脂組成物」、「塗布して成る」及び「トリアセチルセルロースフィルム」に相当する。また、後者における「引用発明11の帯電防止性ハードコート層用組成物」と、前者における「請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物」との対比及び判断は、上記5.(7)ア(キ)「本件発明1と引用発明11との対比」?同ア(ク)「相違点B-11について」及び同イ「本件発明2について」に記載したとおりである。

(カ)小括
よって、本件発明3は先願11明細書等に記載された発明と同一とはいえない。

エ 理由VI(拡大先願 その2)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも先願9明細書等?先願11明細書等に記載されたいずれの発明とも同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。
よって、取消理由通知に記載した理由VI(拡大先願 その2)の理由によって、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

(8)理由VII(サポート要件)及び理由VIII(実施可能要件)について
本件明細書の[0006]等の記載によると、本件発明の課題は、「トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない帯電防止ハードコート樹脂組成物を提供すること」にあるものと解される。
そして、本件明細書の[0035]?[0044]には実施例1、2及び比較例1が記載されており、実施例1、2は、(A)成分として商品名で特定されている「ヘキサメチレンジイソシアネート/ペンタエリスリトールトリアクリレート反応物」又は「イソホロンジイソシアネート/ペンタエリスリトールトリアクリレート反応物」のいずれか、(B)成分として商品名で特定された「4級アンモニウム塩基含有ポリマー(数平均分子量28000)、さらに2種類の溶媒の組合せ(アセトン35部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル15部)を含有する組成物であること、及び当該実施例1及び2は比較例1より表面抵抗が低く、干渉縞の発生もなく、かつ耐擦傷性にも優れていたことが記載されていることから、実施例1及び2の成分からなる組成物は上記課題を解決し得るものであることを理解できる。
ここで、上述したように、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物において、含まれる溶剤の組成によって、塗布されたトリアセチルセルロースフィルムの表面の状態が変化し、トリアセチルセルロースフィルムと帯電防止ハードコート樹脂組成物による塗膜との間で生じる干渉縞の発生する程度が変わることは技術常識であり、本件明細書の[0004]の記載を参酌すると、干渉縞の発生を防止するという課題の解決にはトリアセチルセルロースフィルムに浸透する溶剤の使用が寄与するものと解されるところ、本件発明1においては、配合割合の特定はないものの、上記課題を解決し得ることが示されている実施例1及び2と同じアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの組合せを使用することが記載されているから、本件発明1における溶剤成分が干渉縞の発生防止に寄与することが理解できる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートを構成する水酸基含有(メタ)アクリレートの特性は、その骨格が寄与するものであることは技術常識であり、その範囲を実施例で用いられた「ペンタエリスリトールトリアクリレート」と同じペンタエリスリトール骨格を有する「ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート」まで一般化し、さらに、技術常識に照らせば、4級アンモニウム塩基含有ポリマーの分子量の大小によって、干渉縞の発生の程度が大きく変わるものとはいえないことから、その分子量を実施例で用いられた28000の上下に延長したものについて、上記課題を解決できることが理解される。
そうすると、当業者は本件明細書及び出願時の技術常識に基づいて、本件発明1が上記課題を解決し得るものと理解することができ、また、本件発明1に相当する組成物を過度の試行錯誤を要することなく製造し、かつ使用することができるといえる。
本件発明1を直接又は間接的に引用して記載されている本件発明2及び3についても同様である。
よって、本件発明1?3は、いずれも特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、取消理由通知に記載した理由VII(サポート要件)及び理由III(実施可能要件)の理由によって、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

6.特許異議申立理由について
(1)申立人Aの特許異議申立て理由について
申立人Aが申し立てた特許異議申立て理由は、特許異議申立書の第6頁等に記載されているとおり、
ア.新規性
請求項1?3
条文 特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
証拠 甲第1号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献1」)
甲第2号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献2」)
甲第3号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献3」)
イ.進歩性
請求項1?3
条文 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
証拠 甲第1号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献1」)
甲第2号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献2」)
甲第3号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献3」)
甲第4号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献4」)
ウ.サポート要件
請求項1?3
条文 特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
であるところ、上記「ア.新規性」の申立て理由は、取消理由通知に記載した理由I(新規性)に相当し、上記「イ.進歩性」の申立て理由は、取消理由通知に記載した理由II(進歩性 その1)及び理由IV(進歩性 その3)に相当し、上記「ウ.サポート要件」の申立て理由は、取消理由通知に記載した理由VII(サポート要件)に相当する。

(2)申立人Bの特許異議申立て理由について
申立人Bが申し立てた特許異議申立て理由は、特許異議申立書の第4頁等に記載されているとおり、
ア.新規性
請求項1?3
条文 特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
証拠 甲第1号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献2」)
甲第2号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献1」)
甲第3号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献3」)
イ.進歩性
請求項1?3
条文 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
証拠 甲第1号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献2」)
甲第2号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献1」)
甲第3号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献3」)
甲第4号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献5」)
甲第5号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献6」)
甲第6号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献7」)
ウ.拡大先願
請求項1?3
条文 特許法第29条の2(同法第113条第2号)
証拠 甲第7号証(当審注:取消理由通知に記載した「先願8明細書等」)
甲第8号証(当審注:取消理由通知に記載した「先願9明細書等」)
甲第9号証(当審注:取消理由通知に記載した「先願10明細書等」)
甲第10号証(当審注:取消理由通知に記載した「先願11明細書等」)
甲第10号証の1(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献5」)
甲第11号証(当審注:取消理由通知に記載した「引用文献12」)
であるところ、上記「ア.新規性」の申立て理由は、取消理由通知に記載した理由I(新規性)に相当し、上記「イ.進歩性」の申立て理由は、取消理由通知に記載した理由III(進歩性 その2)に相当し、上記「ウ.拡大先願」の申立て理由は、取消理由通知に記載した理由V(拡大先願 その1)及び理由VI(拡大先願 その2)に相当する。

(3)小括
よって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由はない。

7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
帯電防止ハードコート樹脂組成物、及び帯電防止ハードコート層を有するフィルム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止ハードコート樹脂組成物、及び帯電防止ハードコート層を有するトリアセチルセルロースフィルムに関し、詳しくは、トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない帯電防止ハードコート樹脂組成物、及び干渉縞のない帯電防止ハードコート層を有するトリアセチルセルロースフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ等の表示装置には、透明性などの光学特性の観点から、トリアセチルセルロースフィルムが多く使用されている。ところが、トリアセチルセルロースフィルムは、高い電気絶縁性を示すために帯電が起き易く、表面にゴミが付着し易い。更に硬度が低いために傷がつきやすく視認性が低下するといった問題がある。
【0003】
このため、帯電訪止性、耐擦傷性を兼ね備えたコート膜を設ける検討が行われている。例えば、4級アンモニウム塩基合有ポリマーを添加した帯電防止ハードコート樹脂組成物を使用した帯電防止ハードコート層を形成する試みがなされている(特許文献1、2、3)。しかしながら、これら帯電防止ハードコート層は、トリアセチルセルロースフィルムとの屈折率差があるために干渉縞が発生し、映像の視認性が低下するといった問題がある。
【0004】
干渉縞の発生を防止するために、種々の検討が行われている。例えばトリアセチルセルロースフィルムに浸透する溶剤を使用し、帯電防止ハードコート膜を形成する試みがなされているが(特許文献4、5)十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-268316号公報
【特許文献2】WO2003/055950号公報
【特許文献3】特開2008-255301号公報
【特許文献4】特開2006-988666号公報
【特許文献5】特開2011-81121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、トリアセチルセルロースフィルム上に塗膜を形成した際に干渉縞が発生しない帯電防止ハードコート樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、干渉縞のない帯電防止ハードコート層を有するトリアセチルセルロースフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の要旨は、トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、数平均分子量が5000?500000である4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更にアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しないことを特徴とする帯電防止ハードコート樹脂組成物に存する。
【0008】
そして、本発明の第2の要旨は、トリアセチルセルロースフィルム上に上記の帯電防止ハードコート樹脂組成物を塗布して成ることを特徴とするトリアセチルセルロースフィルムに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば前記の課題が解決される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の電防止ハードコート樹脂組成物は、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有する。なお、以下の説明において、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)を単に「ウレタン(メタ)アクリレート(A)」と称する。
【0012】
上記のウレタン(メタ)アクリレート(A)は、(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物を意味する。本発明では、アクリロイル基とメタアタリロイル基を総称して、(メタ)アクリロイル基という。すなわち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物とは、アクリロイル基のみを有する他合物であってもよく、メタアクリロイル基のみを有する化合物であってもよく、アタリロイル基とメタアクリロイル基とを有する化合物であってもよい。また、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステルについても同様である。
【0013】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を得るために用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量は、帯電防止ハードコート組成物の固形分中、通常5?98重量%、好ましくは10?98重量%である。ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が少な過ぎると塗膜の耐擦傷性が悪くなり、多過ぎると4級アンモニウム塩基合有ポリマー(B)の濃度が低下し帯電防止性が低下する。
【0015】
4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)は、4級アンモニウム塩基を1以上有するポリマーである。4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)は、例えば、4級アンモニウム塩基を合有する不飽和基を有するモノマーと、他の不飽和基を有する化合物(例えば、モノマー、オリゴマー)との共重合によって得ることが出来る。このような4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)の具体例としては、以下の(i)?(v)が挙げられる。
【0016】
(i)4級アンモニウム塩基を含有した重合性基を有するモノマーと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体
(ii)4級アンモニウム塩基を合有した重合性基を有するオリゴマーと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体
(iii)4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリル酸エステルと、他の(メタ)アクリル酸エステル及び/又はスチレン系モノマーとの共重合体
(iv)4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリル酸エステルと、他の(メタ)アクリル酸エステル及び/又はスチレン系オリゴマーとの共重合体
(v)4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリル酸エステルと、他の(メタ)アクリル酸エステル及び/又は他の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとの共重合体
【0017】
4級アンモニウム塩基を含有した重合性基を有するモノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級塩の如きエステル結合を有する化合物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの4級塩の如きアミド結合を有する化合物などが挙げられる。
【0018】
4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用したポリスチレン標準により求められる数平均分子量として、通常5000?500000、好ましくは7000?300000である。4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)の数平均分子量がこの下限を下回ると、硬化塗膜表面へのブリードが起こり易くなる恐れがあり、また、上限を上回ると、帯電防止ハードコート樹脂組成物における相溶性が低下する恐れがある。
【0019】
上記の4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)は2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)の含有量は、帯電防止組成物の固形分中、通常0.5?30重量%、好ましくは1?20重量%である。4級アンモニウム塩基合有ポリマー(B)の含有量が少な過ぎると4級アンモニウム塩基含有ポリマーによる十分な帯電防止性能を得ることが出来ず、多過ぎると硬化塗膜の透明性が低下する恐れがある。
【0021】
本発明の帯電防止ハードコート組成物には、塗膜の硬度などを調整するために、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の他に、(メタ)アクロイル基を有する化合物を含有させて使用することができる。
【0022】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、以下に記載する多官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリレートのモノマーやオリゴマー又はポリマーが挙げられる。
【0023】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2,2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルコハク酸、2,2,2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルフタル酸、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、1分子中に(メタ)アクリレートが2個以上のエポキシ(メタ)アタリレート、1分子中に(メタ)アクリレートが2個以上のウレタン(メタ)アクリレート、1分子中に(メタ)アクリレートが2個以上のポリエステルアクリレート、グリシジルメタアクリレートの単独または共重合体の(メタ)アクリル酸付加物、(メタ)アクリル酸の単独または共重合体のグリシジルメタアクリレート付加物、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルの単独または共重合体の(メタ)アクリル酸付加物、(メタ)アクリル酸の単独または共重合体の4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル付加物、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートの単独または共重合体の水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物の付加物、水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物の単独または共重合体の2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート付加物が挙げられる。ここで、水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0024】
単官能(メタ)アタリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アタリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フエノキシプロピル(メタ)アタリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アタリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アタリレート、ヒドロキシエチル化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル等が挙げられる。
【0025】
これらの(メタ)アクリロイル基を有する他合物は、2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
本発明の帯電防止樹脂組成物は溶剤を含有させて使用することが出来る。硬化後に得られる帯電防止層が所望の厚さとなるよう任意の量の溶剤を含有させることが出来る。
【0027】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-ペンチル、およびγ-ブチロラクトン等のエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶剤は2種以上を組み合わせて使用しでもよい。
【0028】
溶剤の含有量は、本発明の帯電防止ハードコート組成物中の固形分100重量部に対し、通常1?10000重量部、好ましくは20?5000重量部、更に好ましくは40?1000重量部の範囲である。
【0029】
本発明の帯電防止ハードコート樹脂組成物は、通常、ガンマ線、電子線、紫外線などの活性エネルギー線や熱よって硬化することが出来る。紫外線で硬化させる場合、本発明の帯電防止ハードコート樹脂組成物には光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系開始剤、ジケトン系開始剤、アセトフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、チオキサントン系開始剤、キノン系開始剤などの公知の重合開始剤を使用しでもよい。熱で硬化する場合、本発明の帯電防止ハードコート樹脂組成物には有機過酸化物を添加することが好ましい。有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等が挙げられる。
【0030】
重合開始剤の使用量は、帯電防止ハードコート樹脂組成物中の固形分に対し、通常0.1?20重量%の範囲である。
【0031】
本発明の帯電防止ハードコート樹脂組成物には、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤、N-ビニルホルムアミドのようなアミド結合を有する重合性モノマー等を添加することも可能である。上記以外にも必要に応じてその他の添加剤を含有させてもよい。
【0032】
本発明の帯電防止ハードコート樹脂組成物は、通常、公知の塗工装置を使用して基材上に塗布した後、溶剤を除去して乾燥し、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、帯電防止ハードコート層を形成する用途に使用される。
【0033】
公知の塗工装置としては、マイクログラビアコーター、グラビアコーター、マイヤーバーコーター、ダイコーター、スプレー塗装などの塗エ装置を使用することが出来る。
【0034】
本発明の帯電防止ハードコート樹脂組成物を塗布したトリアセチルセルロースフィルムは、干渉縞がないためにディスプレイ等の表示素子の光学フィルムとして有用である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1?2及び比較例1:
各構成成分を表1に示す割合で配合した組成物を、トリアセチルセルロースフィルム(40μm)上に#12バーコーターにて塗布し、約60℃で1分間乾燥後、80W/cmの高圧水銀ランプを使用し、積算光量400mJ/cm^(2)、ピーク強度140mW/cm^(2)の条件で硬化させた。
【0037】
【表1】

【0038】
(※1):共栄社化学社製ウレタンアクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネート/ペンタエリスリトールトリアクリレート反応物)
(※2):共栄社化学社製ウレタンアクリレート(イソホロンジイソシアネート/ペンタエリスリトールトリアクリレート反応物)
(※3):東亞合成社製ペンタエリスリトールトリアクリレート
(※4):東亞合成社製ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ヘキサアクリレート混合物
(※5):日本化成社製4級アンモニウム塩基含有ポリマー(数平均分子量28000)
(※6):チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0039】
実施例1?2及び比較例1で得られた帯電防止層を有するフィルムについて下記項目を評価し、評価結果を表2に示した。
【0040】
(1)表面抵抗:
23℃、50%RHの環境下、三菱化学アナリテック社製ハイレスタUP/URSプロープを使用し、印加電圧500Vで測定した。
【0041】
(2)干渉縞:
(株)アイ・グラフィックス社製の干渉縞検査ランプ(Naランプ)を用い、目視にて検査し、干渉縞の発生がほとんど見られない場合を良好として○、ぼんやり見えるものを普通として△、はっきり見えるものを不良として×とした。
【0042】
(3)耐擦傷性:
500g/cm^(2)の荷重をかけた#0000スチールウールを用い、10往復し、キズによる外観の変化を目視で評価した。キズが確認できないものを○、キズが確認できるものを×とした。
【0043】
【表2】

【0044】
表2の結果から、本発明の帯電防止ハードコート樹脂組成物を使用することにより、干渉縞の発生のない帯電防止ハードコート層を持つトリアセチルセルロースフィルムを提供することが可能となった。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロースフィルム上に塗布される帯電防止ハードコート樹脂組成物であって、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、数平均分子量が5000?500000である4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)を含有し、更にアセトン及びプロピレングリコ-ルモノメチルエーテルを含有し、アミド基を有する重合性モノマーを含有しないことを特徴とする帯電防止ハードコート樹脂組成物。
【請求項2】
イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が帯電防止ハードコート樹脂組成物の固形分中5?98重量%である請求項1に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の帯電防止ハードコート樹脂組成物を塗布して成ることを特徴とするトリアセチルセルロースフィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-01-09 
出願番号 特願2011-236113(P2011-236113)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09D)
P 1 651・ 161- YAA (C09D)
P 1 651・ 121- YAA (C09D)
P 1 651・ 113- YAA (C09D)
P 1 651・ 536- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安藤 達也  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 天野 宏樹
日比野 隆治
登録日 2017-10-06 
登録番号 特許第6218350号(P6218350)
権利者 三菱ケミカル株式会社
発明の名称 帯電防止ハードコート樹脂組成物、及び帯電防止ハードコート層を有するフィルム  
代理人 岡田 数彦  
代理人 岡田 数彦  
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