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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  B29C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1349668
異議申立番号 異議2018-700395  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-11 
確定日 2019-01-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6231740号発明「成形品とその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6231740号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。 特許第6231740号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6231740号の請求項1ないし3に係る特許(以下、「本件特許1」などという。)についての出願は、平成24年12月7日の出願であり、平成29年10月27日にその特許権の設定登録がされ、同年11月15日にその特許掲載公報が発行され、平成30年5月11日に、その特許について特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年7月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月26日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年11月12日に異議申立人より意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否

1 訂正事項

上記平成30年9月26日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし3について訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂組成物を含むシート状プリプレグ(A)とフィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなり、」とあるのを、「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂組成物を含むシート状プリプレグ(A)とフィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなり、前記シート状プリプレグ(A)と前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であり、」と訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであるシート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、」とあるのを、「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであり、金型内部とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、」と訂正する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであるシート状プリプレグ(A)を積層した後に、」とあるのを、「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであり、前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)を積層した後に、」と訂正する。


2 訂正事項の訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

(1)訂正事項1について

ア 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「シート状プリプレグ(A)」と「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に関し、両者が「ほぼ同じ形状であり」と限定するものであり、特許請求の範囲を限定するものであるから、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0023】の「(実施例1) 内寸が、たて100mm×よこ100mm×高さ3mm、90mmのフィルムゲートである一対の金型のうち、片面に前記参考例1の炭素繊維を40体積%含有するシート状プリプレグをたて99mm×よこ99mmに切断したものを1枚配置し、金型の温度を80℃とし、そこに、ガラス長繊維強化ポリプロピレン(日本ポリプロ製、製品名:ファンクスターLR24A、ガラス繊維の含有量:40質量%)をシリンダー内で、温度230℃に加熱したものを射出し、成形する・・・」との記載に基づくものであり、内寸が、たて100mm×よこ100mm×高さ3mmの金型にシート状プリプレグをたて99mm×よこ99mmに切断したものを1枚配置し、ガラス長繊維強化ポリプロピレンをシリンダー内で、射出し、成形するのであるから、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)はたてとよこがほぼ同じ寸法であり、ほぼ同じ形状であることは明らかであり、また、同【0026】の「(実施例2) 参考例2のシート状プリプレグと、比較例1で得た成形品を重ねて、200℃で2分間加熱し、さらに、200℃、2MPaの圧力で30秒間プレスし、引き続き、40℃、2MPaの圧力で2分間プレスし」との記載、同【0027】の「(実施例3) 参考例2のシート状プリプレグと、比較例2で得られた成形品を重ねて、260℃で2分間加熱し、さらに、260℃、2MPaの圧力で30秒間プレスし、引き続き、40℃、2MPaの圧力で2分間プレスし」との記載から、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)である成形品を重ねる際、両者が全体的に重なるものと理解でき、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であることは明らかであるから、上記訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項1は、訂正前の「シート状プリプレグ(A)」と「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に関し、両者が「ほぼ同じ形状であり」と限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 本件は、訂正前の請求項1?3について特許異議申立てがされているから、訂正事項1に関して、独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項2について

ア 上記訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載された「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであるシート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、」とあるのを、「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであり、金型内部とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、」と、シート状プリプレグ(A)の形状を限定するものであり、特許請求の範囲を限定するものであるから、上記訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0023】の「(実施例1) 内寸が、たて100mm×よこ100mm×高さ3mm、90mmのフィルムゲートである一対の金型のうち、片面に前記参考例1の炭素繊維を40体積%含有するシート状プリプレグをたて99mm×よこ99mmに切断したものを1枚配置し、金型の温度を80℃とし、そこに、ガラス長繊維強化ポリプロピレン(日本ポリプロ製、製品名:ファンクスターLR24A、ガラス繊維の含有量:40質量%)をシリンダー内で、温度230℃に加熱したものを射出し、成形する・・・」との記載に基づくものであり、内寸が、たて100mm×よこ100mm×高さ3mmの金型にシート状プリプレグをたて99mm×よこ99mmに切断したものを1枚配置し、ガラス長繊維強化ポリプロピレンをシリンダー内で、射出し、成形するのであるから、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)はたてとよこがほぼ同じ寸法であり、ほぼ同じ形状であることは明らかであるから、上記訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項2は、訂正前の「シート状プリプレグ(A)」に関し、形状を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 本件は、訂正前の請求項1?3について特許異議申立てがされているから、訂正事項2に関して、独立特許要件は課されない。

(3)訂正事項3について

ア 上記訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載された「シート状プリプレグ(A)」に関し、フィラー強化熱可塑性樹脂と「ほぼ同じ形状である」と限定するものであり、特許請求の範囲を限定するものであるから、上記訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0026】の「(実施例2) 参考例2のシート状プリプレグと、比較例1で得た成形品を重ねて、200℃で2分間加熱し、さらに、200℃、2MPaの圧力で30秒間プレスし、引き続き、40℃、2MPaの圧力で2分間プレスし」との記載、同【0027】の「(実施例3) 参考例2のシート状プリプレグと、比較例2で得られた成形品を重ねて、260℃で2分間加熱し、さらに、260℃、2MPaの圧力で30秒間プレスし、引き続き、40℃、2MPaの圧力で2分間プレスし」との記載から、シート状プリプレグとフィラー強化熱可塑性樹脂である成形品を重ねる際、両者が全体的に重なるものと理解でき、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であることは明らかであるから、上記訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項3は、訂正前の「シート状プリプレグ(A)」に関し、フィラー強化熱可塑性樹脂と「ほぼ同じ形状である」と限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 本件は、訂正前の請求項1?3について特許異議申立てがされているから、訂正事項3に関して、独立特許要件は課されない。

3 異議申立人の平成30年11月12日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)における主な主張について

異議申立人は、意見書の3頁?4頁において、本件明細書の段落【0023】は、成形品の厚みについても言及するものであり、たてとよこについてのみ言及しているものではなく、「形状」には、厚み方向の形も包含されることから、当該段落の記載から、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)とが同じ形状であると一概にいえず、本件明細書に記載された事項の範囲を超えている旨主張する。

しかしながら、本件発明1の「前記シート状プリプレグ(A)と前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であり、」は、本件明細書の段落【0023】及び【0026】を参酌すれば、当業者は、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)はたてとよこがほぼ同じ寸法であり、ほぼ同じ形状であること、シート状プリプレグとフィラー強化熱可塑性樹脂である成形品を重ねる際、両者が全体的に重なるものと理解でき、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)はたてとよこの寸法がほぼ同じ形状であることを意図していることが明らかであるから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。

よって、異議申立人の主張は採用できない。

4 小括

上記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。


第3 本件発明

上記「第2」のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、各請求項に係る発明を項番に対応して「本件発明1」などといい、併せて「本件発明」ということがある。)は、平成30年9月26日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂組成物を含むシート状プリプレグ(A)と
フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなり、
前記シート状プリプレグ(A)と前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であり、
シート状プリプレグ(A)に含まれる炭素繊維が30?50体積%であり、シート状プリプレグ(A)の厚さが100?200μmであり、シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である成形品。
【請求項2】
一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであり、金型内部とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、金型に、フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)を溶融したものを射出することで、シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である成形品を得る成形品の製造方法。
【請求項3】
フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなる成形品と、一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであり、前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)を積層した後に、圧縮成形することで、シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である成形品を得る成形品の製造方法。」


第4 平成30年7月24日付けで通知した取消理由の概要

標記取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由.本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第6号証及び甲第3号証に記載の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである(以下、「取消理由」という。)。

甲第2号証:特開2012-071595号公報
甲第1号証:特開2012-125948号公報
甲第6号証:'TORAY' Innovation by Chemistry、高性能炭素繊維トレカ、「トレカ糸」、COPYRIGHT 2013 TORAY INDUSTRIES,INC
甲第3号証:特開平6-319791号公報

(甲第1?3,6号証は、平成30年5月11日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に添付されたものである。)

なお、上記取消理由は、申立理由のうち、甲2を主引例とする訂正前の請求項1ないし3に対する進歩性欠如に関する理由と同趣旨である。


第5 取消理由に関する当審の判断

1 甲号証に記載の事項

(1)甲第2号証(特開2012-071595号公報)(以下、甲第2号証を「甲2」という。他号証についても同様である。)

甲2には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付与したものであり、以下、同様である。

(1-1)「【請求項1】
竪型プレス機のプレス端に、該プレス機の作動に応じて相対移動可能な上型と下型とからなる金型を配置し、該金型のキャビティ内に、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる予備成形体を配置し、該キャビティの残りの空間内に不連続強化繊維を含有する溶融熱可塑性樹脂を射出し、前記竪型プレス機によるプレスで前記キャビティを所定の容積に縮小することによって、前記不連続強化繊維含有溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に充満させつつ前記予備成形体をキャビティの所定の内面に押し付け、該不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂と前記予備成形体を一体化して複合成形体に成形することを特徴とする、複合成形体の製造方法。
【請求項2】
前記予備成形体の強化繊維が連続繊維からなる、請求項1に記載の複合成形体の製造方法。
・・・
【請求項5】
前記予備成形体が、強化繊維が一方向に並行に配列されたシート状またはテープ状の予備成形体、またはその予備成形体を複数枚積層したものからなる、請求項1?4のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
・・・
【請求項7】
前記予備成形体の強化繊維および前記不連続強化繊維の少なくとも一方が炭素繊維を含む、請求項1?6のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。」

(1-2)「【実施例】
【0026】
予備成形体として、一方向に引き揃えた炭素繊維(東レ(株)製、“トレカ”(登録商標)T700S-12K)にナイロン系樹脂を含浸させたテープ状の一方向強化繊維基材(幅:50mm、厚み:0.3mm)を用意した。射出するための不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂としては、内部に強化繊維としての炭素繊維を含有するナイロン系樹脂(東レ(株)製、TLP1060)であり、ペレットの段階における炭素繊維の繊維長が約7mm、炭素繊維重量含有率Wf=約30%のものを用意した。
【0027】
[実施例1]
竪型プレス機(アミノプレス社製、1000tプレス機)に設けた上型および下型を開き、図4(A)および(B)にそれぞれキャビティ31の平面形状にて示すように、予備成形体32の貼り付け位置を変えた2通りの方法で予備成形体32を配置した。図5(A)、(B)、(C)に示すように、キャビティ31を開いた状態で、射出装置におけるシリンダー温度を270℃、上型34、下型35からなる金型の型温80℃で上述の不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂36を射出し、射出完了後に上型34をプレス機で成形圧力150tでプレス(型締め)して、平面寸法にて縦:400mm、横:210mmで厚みが2mmの成形品を成形した。
【0028】
得られた成形品から、図4(A)および(B)中に示した矩形(40mm×25mm)の切り出し位置(41、43は予備成形体32(UDテープ)が配置された部分での切り出し位置、42、44は切り出し位置41、43に隣接する、予備成形体32が配置されていない部分での切り出し位置、45は不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂36をキャビティ31内に射出するためのゲート位置をそれぞれ示している。)に沿って試験片を切り出し、曲げ試験(ISO178に準拠した曲げ試験)を行い、強度、弾性率を測定した。結果を表1に示す。」

(1-3)「【図4】

【図5】



(2)甲1(特開2012-125948号公報)
甲1には、次の記載がある。

(2-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材が接合部で接合された繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、
前記各接合部が、被接合面を含む内側繊維強化樹脂層と、前記内側繊維強化樹脂層の外側に設けられた外側繊維強化樹脂層とからなり、
前記外側繊維強化樹脂層は、少なくとも1層以上からなり、そのうちの少なくとも1層の強化繊維は、前記内側繊維強化樹脂層の強化繊維よりも数平均の繊維長が長い、繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項2】
前記内側繊維強化樹脂層に含有される強化繊維は、ランダムに分布している、請求項1の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
・・・
【請求項4】
前記外側繊維強化樹脂層のうち、前記内側繊維強化樹脂層の強化繊維よりも数平均の繊維長が長い前記少なくとも1層の強化繊維は、連続繊維である、請求項1ないし3のいずれかの記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。
【請求項5】
前記連続繊維は、該連続繊維が一方向に引き揃えられた一方向材、または、該一方向材が織られたクロス材である、請求項4に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品。」

(2-2)「【0015】
外側繊維強化樹脂層23,33中の強化繊維の体積含有率は、10?60%であることが好ましい。強化繊維の体積含有率が10%以上であると、外側繊維強化樹脂層23、33中の強化繊維に由来する物性を発揮させることができる。強化繊維の体積含有率が60%を超えると、強化繊維を十分に樹脂で覆うことができなくなる可能性がある。
また、外側繊維強化樹脂層23と内側繊維強化樹脂層24の厚みの合計100%に対して、外側繊維強化樹脂層23の厚みは5?95%、内側繊維強化樹脂層24の厚みは、95?5%とするのが好ましい。外側繊維強化樹脂層23の厚みを5%以上とすることにより、強化繊維層に由来する物性を発揮させることができる。内側繊維強化樹脂層24の厚みを5%以上とすることにより、第1部材20の被接合面22aと第2部材30の被接合面32aを良好に接合することができる。また、外側繊維強化樹脂層23と内側繊維強化樹脂層24の厚みの合計は0.5mm?10mmが好ましい。外側繊維強化樹脂層23と内側繊維強化樹脂層24の厚みの合計を0.5mm以上とすることにより、物性に優れた繊維強化熱可塑性樹脂の成形品を提供することができる。外側繊維強化樹脂層23と内側繊維強化樹脂層24の厚みの合計が10mmあれば、十分に優れた物性を有する。
同様に、外側繊維強化樹脂層33と内側繊維強化樹脂層34の厚みの合計100%に対して、外側繊維強化樹脂層33の厚みは5?95%、内側繊維強化樹脂層34の厚みは、95?5%とするのが好ましい。その好ましい理由は、上述と同様である。また、外側繊維強化樹脂層33と内側繊維強化樹脂層34の厚みの合計は0.5mm?10mmが好ましい。その好ましい理由は上述と同様である。
【0016】
図1のような繊維強化熱可塑性樹脂成形品10は例えば次のようにして製造できる。
まず、外側繊維強化樹脂層23,33を形成するためのプリプレグを形成する。具体的には、強化繊維として、多数本の強化繊維フィラメントからなる束状の連続繊維を用意し、これを開繊した後、この繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させ、テープ状またはシート状の一方向プリプレグを得る。ここでプリプレグの厚みは、用途、目的とする物性などに応じて適宜設定できるが、例えば30?300μmの範囲である。なお、図2では、外側繊維強化樹脂層23,33を1層のプリプレグ層で構成しているが、2層以上積層して構成してもよい。外側繊維強化樹脂層としての厚みは、例えば30μm?5.0mmの範囲である。」

(2-3)「【実施例】
【0027】
以下本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
(1)外側繊維強化樹脂層23,33用のプリプレグの製造
外側繊維強化樹脂層23,33用の強化繊維として、連続繊維である炭素繊維(三菱レイヨン社製、品番:TR50S)を使用した。この炭素繊維は、1本の直径が約7μmであるフィラメントが12000本集束した束状のものである。
この炭素繊維束を開繊し、熱可塑性樹脂として無水マレイン酸変性のポリプロピレン(三洋化成工業社製、ユーメックス 1001)を含浸させ、強化繊維の体積含有率(JIS K 7052に準拠。)58%、幅12mm、厚み100μmの連続炭素繊維強化熱可塑樹脂テープを製造した。
ついで、このテープを平織して、クロス材からなる強化繊維に無水マレイン酸変性のポリプロピレンが含浸した平均厚み約150μmのプリプレグを製造した。
【0028】
(2)内側繊維強化樹脂層24,34用のランダムシート40の製造
上記(1)と同様にして連続炭素繊維強化熱可塑樹脂テープを製造し、これを30mmの長さ(繊維長)にカットして、一対の平板状の金型中に、面方向にランダム(無方向的)に分散させ、堆積させた。ついで、この金型を型締めし、成形温度220℃、成形圧力1.0MPa、保持時間10分で加熱加圧成形し、金型を冷却することにより、厚み1.85mmのランダムシート40を得た。このランダムシート40の強化繊維の体積含有率(JIS K 7052に準拠。)は、58%とした。
【0029】
(3)成形
上記(1)で製造されたプリプレグ(横150mm、縦400mm、厚み約150μm)と、上記(2)で製造されたランダムシート(横150mm、縦400mm、厚み約1.85mm)とを重ねて図6に示す積層シート60とした。図6中、符号61がプリプレグ層で、符号62がランダムシート層である。この積層シート60を270℃に加熱された赤外線ヒーター(日本ガイシ社製)により5分間予備加熱した。
ついで、この積層シートを図4に示す成形用金型50内に配置し、成形温度110℃(上金型51の温度110℃、下金型52の温度110℃)、成形圧力15MPa、保持時間1分間の条件で加熱、加圧し、該金型50を冷却して、図5の成形品を製造した。同様の方法を繰り返し、計2つの成形品(第1部材20、第2部材30)を得た。
【0030】
(4)接合(振動溶着法)
上記(3)で得られた成形品、すなわち、第1部材20と第2部材30とを凹状部21,31同士、縁部22,32同士が対向するように配置した。そして、振動溶着機(日本エマソン社製)を用いて、対向する縁部22,32の表面、すなわち被接合面22a,32a同士を接触させた状態で振動させ、接合(溶着)させ、図1の中空形状の繊維強化熱可塑性樹脂成形品10を得た。
接合の条件は、荷重16kN、振幅1.5mm、周波数230Hz、時間30秒とした。
この繊維強化熱可塑樹脂成形品10の長手方向の両端の2点を下部から支え、中央付近に上部から8kNの荷重をかけたが、この成形品10の接合部は破壊も分離もせず、良好な接合状態を保っていた。
なお、外側繊維強化樹脂層23,33の厚みはプリプレグの厚みと同じで、内側繊維強化樹脂層24,34の厚みは、ランダムシート40の厚みと同じである。
・・・
【0032】
[実施例2]
厚みが1.5mmであるランダムシート40を実施例1と同様の方法で製造した。
一方、実施例1の(1)と同様の連続炭素繊維強化熱可塑樹脂テープを製造し、これを一方向に並べることによって、一方向材からなる強化繊維に無水マレイン酸変性のポリプロピレンが含浸した厚み100μmのプリプレグを製造した。そして、図7に示すように、このプリプレグ71を5枚重ねて、総厚み500μmのプリプレグ積層シート70を製造した。この際、各プリプレグ71中の強化繊維の繊維方向が隣り合う層で直交するように、互い違いに積層した。
そして、図7の5層構造のプリプレグ積層シート70と、厚みが1.5mmであるランダムシート40とを積層したものを図4に示す成形用金型50内に配置して、実施例1と同様に成形して、第1部材と第2部材を製造した。そして、振動溶着法により、実施例1と同様にして、第1部材と第2部材とを接合させ、中空形状の繊維強化熱可塑性樹脂成形品を得た。
この成形品は、外側繊維強化樹脂層を構成する5層全層の強化繊維が、内側繊維強化樹脂層の強化繊維よりも数平均の繊維長が長いものである。」

(3)甲6('TORAY' Innovation by Chemistry、高性能炭素繊維トレカ、「トレカ糸」、COPYRIGHT 2013 TORAY INDUSTRIES,INC)
甲6には、次の記載がある。

(3-1)「



(3-2)「



(4)甲3(特開平6-319791号公報)
甲3には、次の記載がある。

(4-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化プラスチックであって、長手方向の曲げ剛性が1×10^(4)?1×10^(7)kg・mm^(2) 、ねじり剛性が1×10^(4)?1×10^(7)kg・mm^(2)であり、繊維強化プラスチックの表面層に強化繊維が導入されており、繊維強化プラスチックは強化繊維の体積含有率が0.1?30%で、且つ60?300℃の範囲に加熱することにより後加工可能であることを特徴とする医療用支持材。」

(4-2)「【0009】以下、本発明を詳細に説明する。強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化プラスチックにおいて、長手方向の曲げ剛性が1×10^(4)?1×10^(7)kg・mm^(2)の範囲内にあり且つねじり剛性が1×10^(4)?1×10^(7)kg・mm^(2)の範囲にあり、繊維体積含有率が0.1?30%で、繊維強化プラスチックの表面層に強化繊維が導入されているためには種々な構造がある。例えば板状物であれば板の上下の表面に強化繊維を配向させたサンドイッチ構造体が考えられ、曲げ構造およびねじり剛性を発現させるのに適している。更に幅が小さい場合には、断面の外周に強化繊維を配置させたモノコック構造体にすれば厚み方向にも繊維補強がなされるためサンドイッチ構造体以上に強化され、剛性を効果的に発現するため有利である。
・・・
【0012】通常の複合材料では強化繊維体積含有率は30?70%で使用することが多い。これは構造材料に使用する際、剛性と同時に強度が要求されるためにこの様な高い含有率になっている。しかし大きな荷重がかからない様なところで使うときには繊維含有率を多くする必要はない。本発明においては繊維体積含有率は0.1?30%とするのが好ましい。繊維体積含有率が30%以上であると医療用支持材としては過剰仕様となり、材料費が高くなるし製造コストも上昇する。また、加工や熱変形が難しくなる。モノコック構造体やサンドイッチ構造体にすれば繊維体積含有率を30%以下の範囲で効果的に剛性を発現できる。さらに強化繊維は繊維強化プラスチックの表面付近に配向させると曲げやねじり変形に対して有効である。しかも変形の方向に適合した繊維配向をとると更に有効である。
【0013】繊維強化プラスチックの強化繊維としては、高弾性、高強度の繊維からなる一方向配向材、織物、編物、チョップ、ランダムマットでこれらを2種以上組み合わせたものでもよい。また、繊維の素材としては、炭素繊維、ガラス繊維が好ましいが炭化珪素繊維、アルミナ繊維、金属繊維等の無機繊維、およびアラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリイミド繊維等の有機繊維が使用できる。また、これらの2種以上の繊維を組み合わせて使用することもできる。これらの繊維の中でも炭素繊維を用いると比剛性が高く、高い剛性を発現させるのに適している。
【0014】炭素繊維の引張り弾性率は、汎用タイプが24×10^(3) kg/mm^(2) で本発明の剛性は充分に得られる。より好ましくは、高弾性の炭素繊維である引張り弾性率40×10^(3) kg/mm^(2) 以上のものを使用すると、より剛性の高い支持材が得られる。更にこれらの炭素繊維は一方向配向材、チョップ、ランダムマット、編物、織物等に加工して使用することができる。また後加工性を重視する場合は、医療用支持材の長さ方向に強化繊維を配置することは避け、幅方向又は斜め方向に配置することが好ましい。」

(4-3) 「【0023】実施例1 [繊維強化プラスチックの作製]
本発明の繊維強化プラスチックはアクリル樹脂を炭素繊維として三菱レイヨン(株)製TR3110(商品名)炭素繊維クロスに含浸し、厚さ0.3mm、繊維体積含有率40%シートの熱可塑性樹脂マトリックスクロスシート(クロスシート)1(当審注:「1」は丸1である。)を作製した。また炭素繊維として三菱レイヨン(株)TR30 12kf(商品名)を引き揃えた一方向炭素繊維シートにアクリル樹脂を含浸し、厚み0.16mm繊維体積含有率51%の熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シート(UDシート)2(当審注:「2」は丸2である。)を得た。
【0024】以上2種類のシートをサンドイッチ構造体の表面材として25mm幅、長さ200mmの形状に切り抜き、また芯材としては三菱レイヨン(株)製アクリライト(アクリル樹脂、登録商標)S3mm厚板をルーターで25mm幅、長さ200mmの形状に切り抜いた。シートの繊維配向はクロスシート1を±45°に、UDシート2を0°に組み合わせて積層した。これら1,2間に芯材を挟み込み、150℃に加熱した金型に入れた後、プレスし冷却するのを待って取りだし繊維強化プラスチックを作製した。
・・・
【0033】実施例10
ポリアミド樹脂ナイロン12のペレットを粉砕して平均粒径30μmの粉末状にし、これを炭素繊維TR3110とTR30一方向繊維束にまぶした後、それぞれプレス成形して繊維体積含有率40%、厚さ0.30mmのクロスシート7(当審注:「7」は丸7である。)と、繊維体積含有率45%、厚さ0.18mmのUDシート8(当審注:「8」は丸8である。)を作製した。プレスの温度は250℃、圧力20kg/cm^(2) で1時間保持してマトリックス樹脂を含浸させた。このシート7,8を実施例10と同じ積層構成、同じ製造法で繊維強化プラスチックサンドイッチ構造体を作製した。シリンダー温度は280℃、射出圧は800kg/cm^(2) 、型内保持時間は20秒で成形した。またこの繊維強化プラスチックの後加工性の検討は250℃、50℃で実施例1?9と同様に行なった。」

2 甲2発明A又は甲2発明B

(1)甲2発明A
甲2には、上記1(1)(1-2)の実施例1に、プレス機のキャビティに、予備成形体である、一方向に引き揃えた炭素繊維(東レ(株)製、T700S-12K)にナイロン系樹脂を含浸させたテープ状の一方向強化繊維基材(幅:50mm、厚み:0.3mm)を図4(A)のように配置し、キャビティを開いた状態で、内部に強化繊維としての炭素繊維を含有するナイロン系樹脂(東レ(株)製、TLP1060)である不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂を射出し、プレスして、縦:400mm、横:210mmで厚みが2mmの成形品を成形する方法が記載されている。ここで、一方向強化繊維基材は、図4(A)のように配置されていれば、成形体の横の長さが210mmであることから、その長さは210mmであるといえる。
そうすると、甲2には、「一方向に引き揃えられた炭素繊維とナイロン系樹脂を含むテープ状一方向強化繊維基材と
炭素繊維とナイロン系樹脂を含む不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂からなり、
テープ状一方向強化繊維基材の幅が50mm、長さが210mm、厚さが300μmであり、
縦400mm、横210mm、厚みが2mmである成形品。」(以下、「甲2発明A」という。)が記載されているといえる。

(2)甲2発明B
甲2には、上記(1)で記載した事項が記載されている。
そうすると、甲2には、「一方向に引き揃えられた炭素繊維とナイロン系樹脂とを含み、幅が50mm、長さが210mm、厚みが300μmであるテープ状一方向強化繊維基材をキャビティ内に配置し、キャビティに、炭素繊維とナイロン系樹脂を含む不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂を溶融したものを射出することで、縦400mm、横210mm、厚みが2mmである成形品を得る成形品の製造方法。」(以下、「甲2発明B」という。)が記載されているといえる。

3 本件発明と甲2発明A又は甲2発明Bとの対比・判断

(1)本件発明1について

ア 本件発明1と甲2発明Aとの一致点・相違点

本件発明1と甲2発明Aを対比する。
甲2発明Aの「ナイロン系樹脂」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂」に相当し、甲2発明Aの「ナイロン系樹脂」は、甲2の段落【0014】の記載からみて、他の添加剤を含んでもよいことから、本件発明1の「熱可塑性樹脂組成物」にも相当するといえる。また、甲2の上記(1-2)の段落【0026】の記載からみて、一方向強化繊維基材は、テープ状であることから、一方向に引き揃えられた炭素繊維は、実質的にシート状であり、平面状に配列されているといえ、甲2発明Aの「一方向強化繊維基材」は、同段落【0026】の記載から、予備成形体であることから、本件発明1の「プリプレグ(A)」に相当するといえる。さらに、甲2発明Aの不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂に添加される「炭素繊維」は、同段落【0026】から、短い繊維長を有することから、本件発明1の「フィラー」に相当するといえ、甲2発明Aの「不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂」は、本件発明1の「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に相当するといえる。
そうすると、本件発明1と甲2発明Aは、「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂組成物を含むシート状プリプレグ(A)と
フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなる成形品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)本件発明1は、「前記シート状プリプレグ(A)と前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であ」るのに対して、甲2発明Aは、そのような特定がない点。

(相違点2)シート状プリプレグ(A)において、本件発明1は、「炭素繊維が30?50体積%であ」るのに対して、甲2発明Aは、そのように特定されていない点。

(相違点3)シート状プリプレグ(A)において、本件発明1は、「厚さが100?200μmであ」るのに対して、甲2発明Aは、厚みが300μmである点。

(相違点4)成形品において、本件発明1は、「シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である」のに対して、甲2発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、(相違点1)及び(相違点4)について検討する。

まず、甲2発明Aの一方向強化繊維基材(本件発明1の「シート状プリプレグ(A)」に相当する。)の形状は50mm×210mmであるのに対し、甲2発明Aの不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂(本件発明1の「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に相当する。)は400mm×210mmであるから、上記(相違点1)は、実質的な相違点となるものである。

次に、上記(相違点1)が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。

甲2の段落【0010】には、「とくに本発明において好ましい形態の予備成形体として、上記連続繊維または上記長繊維からなる強化繊維が一方向に並行に配列されたシート状またはテープ状の予備成形体、またはその予備成形体を複数枚積層したものを挙げることができる。このような形態の予備成形体を使用すれば、該予備成形体をキャビティ内で、ひいては最終成形体に対して、容易に所望の位置に配置することができる。」旨記載され、そして具体的な実施の形態である実施例1及び図4には、キャビティ内において前記予備成形体(甲2発明Aの「一方向強化繊維基材」に相当。)の貼り付け位置の異なる2通りの方法で配置された例が記載されている。

そこで、甲2発明Aにおいて、これらの記載から前記一方向強化繊維基材(予備成形体)を不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂を成形した最終形態と同じ寸法とすることを選択することができるかを検討するに、甲2を参酌しても、積極的に一方向強化繊維基材(予備成形体)を最終的な成形品と同じ大きさとすることは記載されていないものの、甲2発明Aにおいて、前記一方向強化繊維基材(予備成形体)が不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂を成形した最終形態と同じ寸法とすることに阻害される事項は存在しないといえる。
ゆえに、甲2発明Aにおいて、前記一方向強化繊維基材(予備成形体)を不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂を成形した最終形態と同じ寸法とすることを選択することは、当業者が容易になし得ることである。

次に、甲2発明Aにおいて、前記一方向強化繊維基材(予備成形体)が不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂を成形した最終形態と同じ寸法とすることを選択した場合に、上記(相違点4)について検討する。
甲2の実施例1に記載の一方向強化繊維基材及び不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂からなる成形品を、以下のとおり計算すると、本件発明1で定義される連続繊維比率は、6.25質量%となるから、上記(相違点4)の構成を満たさなくなる。

本件明細書の実施例1と同様に、縦99%、横99%の一方向強化繊維基材を配置したとする。
一方向強化繊維基材の縦 208mm(=210mm×99%/100)
一方向強化繊維基材の横 396mm(=400mm×99%/100)
一方向強化繊維基材中の強化繊維の重量 13.34g(=(縦208mm×横396mm×厚み0.3mm)/1000×30%(甲3の体積含有率より)/100×1.8g/cm^(3)(甲6のT700S-12Kの比重より))、
一方向強化繊維基材の重量 33.06g(=(縦208mm×横396mm×厚み0.3mm)/1000×(100-30%)/100×1.14g/cm^(3)+13.34g)
一方向強化繊維基材の体積 24.71cm^(3)(=(縦208mm×横396mm×厚み0.3mm)/1000)
不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂の重量 180.54g(=(縦400mm×横210mm×厚み2mm)/1000-24.71cm^(3))×1.26g/cm^(3)(甲6のTLP1060の比重より))
連続繊維比率 6.25%(=13.34g/(33.06g+180.54g))

一方、本件明細書の段落【0019】?段落【0030】の実施例、特に段落【0029】の【表1】には、本件発明の連続繊維比率として、2.3質量%、2.0質量%を採用すると、本願効果である曲げ強さに優れた結果が得られていることが理解でき、本件発明1は(相違点4)の発明特定事項を有することにより【表1】に記載された曲げ強さという本件発明1の効果を奏するものと認められる。

これを踏まえると、甲2発明Aにおいて、前記一方向強化繊維基材(予備成形体)が不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂を成形した最終形態と同じ寸法とすることについて着目したとしても、連続繊維比率を本件発明1の範囲のものとすることは開示されておらず、甲1,3にも当該事項は記載されていないことから、これらの公知文献を踏まえても、甲2発明Aにおいて、(相違点4)の発明特定事項を満たすようにする動機付けがあるとはいえない。

そうすると、本件発明1は、他の(相違点2)、(相違点3)を検討するまでもなく、甲2発明A、甲2に記載の事項及び甲1,3,6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2について

ア 本件発明2と甲2発明Bとの一致点・相違点

本件発明2と甲2発明Bを対比する。

甲2発明Bの「キャビティ」、「ナイロン系樹脂」は、それぞれ、本件発明2の「金型」、「熱可塑性樹脂」に相当するとともに、甲2発明Bの「ナイロン系樹脂」は、甲2の段落【0014】の記載からみて、他の添加剤を含んでもよいことから、本件発明2の「熱可塑性樹脂組成物」にも相当するといえる。また、甲2の上記(1-2)の段落【0026】の記載からみて、一方向強化繊維基材は、テープ状であることから、一方向に引き揃えられた炭素繊維は、実質的にシート状であり、平面状に配列されているといえ、甲2発明Bの「一方向強化繊維基材」は、同段落【0026】の記載から、予備成形体であることから、本件発明2の「プリプレグ(A)」に相当するといえる。さらに、甲2発明Bの不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂に添加される「炭素繊維」は、同段落【0026】から、短い繊維長を有することから、本件発明2の「フィラー」に相当するといえ、甲2発明Bの「不連続強化繊維含有熱可塑性樹脂」は、本件発明2の「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に相当するといえる。
そうすると、本件発明2と甲2発明Bは、「一方向に引き揃えられて平面上に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、シート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、金型に、フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)を溶融したものを射出することで、成形品を得る成形品の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点5)シート状プリプレグ(A)が、本件発明2は、「金型内部とほぼ同じ形状であ」るのに対して、甲2発明Bは、そのような特定がない点。

(相違点6)シート状プリプレグ(A)において、本件発明2は、「炭素繊維が30?50体積%であ」るのに対して、甲2発明Bは、そのように特定されていない点。

(相違点7)シート状プリプレグ(A)において、本件発明2は、「厚さが100?200μmであ」るのに対して、甲2発明Bは、厚みが300μmである点。

(相違点8)成形品において、本件発明2は、「シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である」のに対して、甲2発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、(相違点5)及び(相違点8)について検討する。

(相違点5)及び(相違点8)は、シート状プリプレグ(A)及びフィラー強化熱可塑性樹脂(B)の形状及び連続繊維比率において、(相違点1)及び(相違点4)と実質的に同一であるから、上記(1)で検討したとおりである。

そうすると、本件発明2は、他の(相違点6)、(相違点7)を検討するまでもなく、甲2発明B、甲2に記載の事項及び甲1,3,6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 異議申立人の平成30年11月12日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)における主な主張について

(1)異議申立人の主張(取消理由(進歩性欠如)について)

標記意見書における、取消理由(進歩性欠如)についての異議申立人の主張は、概ね以下のとおりである(意見書第7?9頁)。

甲2の段落【0015】には、「不連続繊維強化樹脂成形体と長繊維あるいは連続繊維強化樹脂成形体とを格別の工夫を要することなく精度よく一体成形でき、大きな面積を有する成形品に対しても、さらにはその肉厚が薄い成形品に対しても、目標とする剛性等の機械特性を均一に発現でき、本来の特性である軽量性も併せ備えた所望の繊維強化熱可塑性樹脂の複合成形体を効率よく製造することができる。」と開示されているとおり、形状等を問わず機械特性を均一に発現できる等といった効果が発揮できる旨記載されているし、段落【0010】には、テープ状の一方向強化繊維基材を配置する位置を制限していないこと、甲1の段落【0029】及び【図6】や甲3の段落【0023】、【0024】及び【図1】には、縦横長さを同じ形状にして一方向炭素繊維シートと他の樹脂材料とを積層して一体化することが開示されていることから、甲2に記載の発明において、甲1及び甲6に記載された技術的事項を採用することは当業者が容易になし得ることである。

(2)当該主張についての検討

上記第5 3で検討したとおり、本件発明1,2は、甲2発明A、甲2に記載の事項及び甲1,3,6に記載の技術的事項、又は、甲2発明B、甲2に記載の事項及び甲1,3,6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、本件発明1,2の優れた効果についても、本件明細書より看取できるといえるから、異議申立人の上記の主張は、採用できない。
また、本件発明3においても、甲2発明A又は甲2発明Bと、本件発明3とは、実質的に(相違点1)及び(相違点4)、(相違点5)及び(相違点8)と同じ相違点を有することから、本件発明1,2と同様に、甲2発明A、甲2に記載の事項及び甲1,3,6に記載の技術的事項、又は、甲2発明B、甲2に記載の事項及び甲1,3,6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 取消理由で採用しなかった申立理由

異議申立人は、申立理由として、本件発明1,3に対して、甲4及び甲5の記載内容を参酌すると甲1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当すること、本件発明1,3に対して、甲1に記載された発明により単独で同条第2項違反であること、本件発明2に対して、甲1を主引例として甲2に記載の周知技術を組み合わせることにより同条第2項違反であること、本件発明1?3に対して、甲3を主引例として甲7及び甲8の周知技術を組み合わせることにより同条第2項違反であることを、それぞれ主張する。
また、異議申立人は、平成30年11月12日付け意見書において、訂正後の本件発明1?3について特許法第36条第6項第1号、同条第6項第2号、同条第4項第1号の取消理由がある旨主張する。

甲第4号証:だれでも使えるFRP-FRP入門-、社団法人 強化プラスチック協会、平成14年9月12日初版、61頁、表紙、奥付
甲第5号証:特開平9-111095号公報
甲第7号証:井上俊英他、高分子先端材料OnePoint8 エンジニアリングプラスチック、高分子学会、共立出版株式会社、2004年9月20日、初版第1刷、10?11頁、115頁
甲第8号証:FRPポケットブック、社団法人強化プラスチック協会、平成9年3月31日、143頁

(甲第4,5,7,8号証は、特許異議申立書に添付されたものである。)

1 特許法第29条第1項第3号に該当することについて

(1)本件発明1

甲1には、上記1(1)(2-1)の請求項1,2に、強化繊維がランダムに分布している内側繊維強化樹脂層と、その外側に設けられた繊維長の長い強化繊維を含む外側繊維強化樹脂層とからなる接合部で接合された繊維強化熱可塑性樹脂成形品であって、同(2-1)の請求項4には、外側繊維強化樹脂層に含まれる強化繊維は連続繊維であること、請求項5には、当該連続繊維が一方向に引き揃えられた一方向材であることが記載されている。また、同(2-2)の段落【0015】には、外側繊維強化樹脂層の強化繊維の体積含有率が10?60%であること、外側繊維強化樹脂層と内側繊維強化樹脂層の厚みにおいて、外側繊維強化樹脂層の厚みは5?95%であること、内側繊維強化樹脂層の厚みは95?5%であること、両層の厚みの合計は0.5?10mmであることが記載され、同段落【0016】には、外側繊維強化樹脂層はシート状の一方向プリプレグであること、その厚みは、30?300μmの範囲であることが記載されている。さらに、甲1の同(2-3)の段落【0027】?【0029】、【0032】の実施例2には、実施例1の外側繊維強化樹脂層用のプリプレグを5枚重ねて製造した一方向材からなるプリプレグ積層シート(本件発明1の「シート状プリプレグ(A)」に相当する。)と実施例1と同様に製造した厚みが1.5mmであるランダムシート(本件発明1の「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に相当する。)からなる成形品が記載されている。
そうすると、甲1には、「一方向に引き揃えられた強化繊維と熱可塑性樹脂を含むシート状一方向プリプレグと
強化繊維と熱可塑性樹脂を含む内側繊維強化樹脂層からなり、
シート状一方向プリプレグに含まれる強化繊維が58体積%であり、シート状一方向プリプレグの厚さが500μmであり、
シート状一方向プリプレグは、炭素繊維束を開繊し、熱可塑性樹脂として無水マレイン酸変性のポリプロピレン(三洋化成工業社製、ユーメックス 1001)を含浸させて得られた強化繊維の体積含有率(JIS K 7052に準拠。)58%、幅12mm、厚み100μmのプリプレグを5枚重ねて製造したものであり、
内側繊維強化樹脂層を形成するランダムシートは、前記強化繊維の体積含有率(JIS K 7052に準拠。)58%、幅12mm、厚み100μmのプリプレグを30mmの長さ(繊維長)にカットして、一対の平板状の金型中に、面方向にランダム(無方向的)に分散させ、堆積させた後、この金型を型締めして加熱加圧成形し、金型を冷却することにより得られた、強化繊維の体積含有率(JIS K 7052に準拠。)58%、厚み1.5mmのランダムシートである成形品。」(以下、「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。

本件発明1と甲1発明Aを対比する。
甲1発明Aの「熱可塑性樹脂」、「一方向プリプレグ」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂組成物」、「プリプレグ」に相当し、当該プリプレグは、段落【0016】から、シート状であることから、強化繊維は平面状に配列されているといえる。また、甲1の段落【0011】の記載からみて、強化繊維として炭素繊維が挙げられているから、甲1発明Aの「強化繊維」は、本件発明1の「炭素繊維」に相当するといえる。さらに、甲1発明Aの内側繊維強化樹脂層に添加される「強化繊維」は、請求項2から、ランダムに分布する強化繊維であることから、本件発明1の「フィラー」に相当するといえ、甲1発明Aの「内側繊維強化樹脂層」は、本件発明1の「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に相当するといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明Aは、「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂組成物を含むシート状プリプレグ(A)と
フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなる成形品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点9)本件発明1は、「前記シート状プリプレグ(A)と前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であ」るのに対して、甲1発明Aは、そのような特定がない点。

(相違点10)シート状プリプレグ(A)において、本件発明1は、「炭素繊維が30?50体積%であ」るのに対して、甲1発明Aは、58体積%である点。

(相違点11)シート状プリプレグ(A)において、本件発明1は、「厚さが100?200μmであ」るのに対して、甲1発明Aは、厚みが500μmである点。

(相違点12)成形品において、本件発明1は、「シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である」のに対して、甲1発明Aは、そのように特定されていない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、(相違点12)について検討する。

甲1発明Aは、本件発明1の連続繊維比率について特定されていないことから、甲1発明Aを認定した具体例(実施例2)を用いて、甲1発明における連続繊維比率を算出する。
甲1の同(2-3)の段落【0027】?【0029】、【0032】の実施例2において、以下のとおり連続繊維比率を計算すると、本件発明1で定義される連続繊維比率は、18.14質量%となるから、上記(相違点12)の構成を満たさない。

一方向材からなるプリプレグ積層シートの縦 150mm
一方向材からなるプリプレグ積層シートの横 400mm
一方向材からなるプリプレグ積層シート中の炭素繊維の重量 31.668g(=(縦150mm×横400mm×厚み0.5mm)/1000×58%(甲1の実施例1の段落【0027】体積含有率より)/100×1.82g/cm^(3)(甲4のTR50Sの比重より))、
一方向材からなるプリプレグ積層シートの重量 43.638g(=(縦150mm×横400mm×厚み0.5mm)/1000×(100-58%)/100×0.95g/cm^(3)(甲5のユーメックス1001の比重より)+31.668g)
ランダムシートの縦 150mm
ランダムシートの横 400mm
ランダムシート中の炭素繊維の重量 95.004g(=(縦150mm×横400mm×厚み1.5mm)/1000×58%(甲1の実施例1の段落【0028】体積含有率より)/100×1.82g/cm^(3)(甲4のTR50Sの比重より))、
ランダムシートの重量 130.914g(=(縦150mm×横400mm×厚み2mm)/1000×(100-58%)/100×0.95g/cm^(3)(甲5のユーメックス1001の比重より)+95.004g)
連続繊維比率 18.14%(=31.668g/(43.668g+130.914g))

したがって、(相違点12)は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1発明Aではない。

(2)本件発明3

甲1には、上記1(1)アに記載された内容に加えて、上記(2-3)の段落【0032】には、厚みが1.5mmであるランダムシートを実施例1と同様の方法で製造したこと、同段落【0028】には、実施例1で製造した連続炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープをカットして、金型に面方向にランダムに分散させて堆積し、加熱加圧成型して得られた旨記載されていることから、甲1の内側繊維強化樹脂層は、「成形品」といえる。さらに、同段落【0032】には、5層構造のプリプレグ積層シートとランダムシートとを積層して、成形用金型内に配置して、加熱加圧し成形することが記載されている。

そうすると、甲1には、「強化繊維と熱可塑性樹脂を含む内側繊維強化樹脂層からなる成形品と、一方向に引き揃えられた強化繊維と熱可塑性樹脂とを含み、強化繊維が58体積%であり、厚さが500μmであるシート状一方向プリプレグを積層した後に、加熱加圧成形することで、成形品を得る、
シート状一方向プリプレグは、炭素繊維束を開繊し、熱可塑性樹脂として無水マレイン酸変性のポリプロピレン(三洋化成工業社製、ユーメックス 1001)を含浸させて得られた強化繊維の体積含有率(JIS K 7052に準拠。)58%、幅12mm、厚み100μmのプリプレグを5枚重ねて製造したものであり、
内側繊維強化樹脂層を形成するランダムシートは、前記強化繊維の体積含有率(JIS K 7052に準拠。)58%、幅12mm、厚み100μmのプリプレグを30mmの長さ(繊維長)にカットして、一対の平板状の金型中に、面方向にランダム(無方向的)に分散させ、堆積させた後、この金型を型締めして加熱加圧成形し、金型を冷却することにより得られた、強化繊維の体積含有率(JIS K 7052に準拠。)58%、厚み1.5mmのランダムシートである成形品の製造方法。」(以下、「甲1発明B」という。)が記載されているといえる。

本件発明3と甲1発明Bを対比する。
甲1発明Bの「熱可塑性樹脂」、「一方向プリプレグ」は、本件発明3の「熱可塑性樹脂組成物」、「プリプレグ」に相当し、当該プリプレグは、段落【0016】から、シート状であることから、強化繊維は平面状に配列されているといえる。また、甲1の段落【0011】の記載からみて、強化繊維として炭素繊維が挙げられているから、甲1発明Bの「強化繊維」は、本件発明3の「炭素繊維」に相当するといえる。さらに、甲1発明Bの内側繊維強化樹脂層に添加される「強化繊維」は、請求項2から、ランダムに分布する強化繊維であることから、本件発明3の「フィラー」に相当するといえ、甲1発明Bの「内側繊維強化樹脂層」は、本件発明3の「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に相当するといえる。最後に、甲1発明Bは、積層後、加熱加圧成形をすることから、本件発明3の「圧縮成形」に相当するといえる。
そうすると、本件発明3と甲1発明Bは、「フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなる成形品と、一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含むシート状一方向プリプレグ(A)を積層した後に、圧縮成形することで、成形品を得る成形品の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点13)シート状プリプレグ(A)において、本件発明3は、「前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)とほぼ同じ形状であ」るのに対して、甲1発明Bは、そのような特定がない点。

(相違点14)シート状プリプレグ(A)において、本件発明3は、「炭素繊維が30?50体積%であ」るのに対して、甲1発明Bは、58体積%である点。

(相違点15)シート状プリプレグ(A)において、本件発明3は、「厚さが100?200μmであ」るのに対して、甲1発明Bは、厚みが500μmである点。

(相違点16)成形品において、本件発明3は、「シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である」のに対して、甲1発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、(相違点16)について検討する。

(相違点16)は、実質的に(相違点12)と同一であることから、上記1(1)イで検討したとおり、本件発明3も甲1発明Bではない。

2 特許法第29条第2項違反について

(1)甲1を主引例とした場合

ア 本件発明1,3について

上記1で検討したとおり、(相違点12)は実質的な相違点であることから、以下に甲1発明Aにおいて、当該(相違点12)に係る構成を備えることが当業者に容易想到であるかを検討する。

甲1の上記1(2)(2-2)には、外側繊維強化樹脂層の強化繊維の体積含有率は10?60%であることが好ましい旨記載されており、実施例2で開示された具体的な体積含有率(58%)よりも低い体積含有率の開示がなされているものの、外側繊維強化樹脂層と内側繊維強化樹脂層からなる成形品において、外側繊維強化樹脂層(一方向材からなるプリプレグ)に含まれる連続繊維比率を本件発明1の範囲とする動機付けは見当たらない。

一方、本件明細書の段落【0019】?段落【0030】の実施例、特に段落【0029】の【表1】には、本件発明の連続繊維比率として、2.3質量%、2.0質量%を採用すると、本願効果である曲げ強さに優れた結果が得られていることが理解でき、本件発明1は(相違点12)の発明特定事項を有することにより【表1】に記載された曲げ強さという本件発明1の効果を奏するものと認められる。
したがって、(相違点12)は、当業者にとっても容易想到ではない。

そうすると、本件発明1は、他の(相違点10)、(相違点11)を検討するまでもなく、甲1発明A、甲1に記載の事項及び甲2?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

また、本件発明3と甲1発明Bとは、(相違点16)において異なり、当該(相違点16)は実質的に(相違点12)と同一であることから、本件発明3も、甲1発明B、甲1に記載の事項及び甲2?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について

本件発明2と甲1発明Bを対比する。
甲1発明Bの「熱可塑性樹脂」、「一方向プリプレグ」は、本件発明2の「熱可塑性樹脂組成物」、「プリプレグ」に相当し、当該プリプレグは、段落【0016】から、シート状であることから、強化繊維は平面状に配列されているといえる。また、甲1の段落【0011】の記載からみて、強化繊維として炭素繊維が挙げられているから、甲1発明Bの「強化繊維」は、本件発明2の「炭素繊維」に相当するといえる。さらに、甲1発明Bの内側繊維強化樹脂層に添加される「強化繊維」は、請求項2から、ランダムに分布する強化繊維であることから、本件発明2の「フィラー」に相当するといえ、甲1発明Bの「内側繊維強化樹脂層」は、本件発明2の「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)」に相当するといえる。最後に、甲1発明Bは、積層後、加熱加圧成形をすることから、成形品を得る成形品の製造方法であるといえる。
そうすると、本件発明2と甲1発明Bは、「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含むシート状一方向プリプレグ(A)を金型内に配置し、金型にフィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなる成形品を配置した後に、成形することで、成形品を得る成形品の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点17)成形品について、本件発明2は、シート状プリプレグ(A)が「金型内部とほぼ同じ形状であ」り、シート状プリプレグ(A)を金型内に配置した後、「金型に、フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)を溶融したものを射出」して得られるのに対して、甲1発明Bは、シート状プリプレグ(A)の形状についてそのような特定がなく、フィラー強化熱可塑性樹脂(B)は、フィラーと熱可塑性樹脂組成物とで予め成形された成形品であり、金型内に配置したシート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)とを積層し、成形して得られるものである点。

(相違点18)シート状プリプレグ(A)において、本件発明2は、「炭素繊維が30?50体積%であ」るのに対して、甲1発明Bは、58体積%である点。

(相違点19)シート状プリプレグ(A)において、本件発明2は、「厚さが100?200μmであ」るのに対して、甲1発明Bは、厚みが30?300μmである点。

(相違点20)成形品において、本件発明2は、「シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である」のに対して、甲1発明Bは、そのように特定されていない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、(相違点20)について検討する。

当該(相違点20)は実質的に(相違点12)と同一であることから、本件発明2も、甲1発明B、甲1に記載の事項及び甲2?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)甲3を主引例とした場合

ア 本件発明1について

甲3には、上記1(4)(4-1)の請求項1に、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化プラスチックであって、繊維強化プラスチックの表面層に強化繊維が導入されており、繊維強化プラスチックは強化繊維の体積含有率が0.1?30%で、且つ60?300℃の範囲に加熱することにより後加工可能であることが記載されている。また、同(4-3)の実施例10は、熱可塑性樹脂マトリックスクロスシート及び繊維体積含有率45%、厚み0.18mmである熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シートを製造し、これらの間にアクリル樹脂の厚板を芯材として挟み込み、金型で熱プレスをした繊維強化プラスチックサンドイッチ構造体を作製した例であることが記載されている。
そうすると、甲3には、「一方向に引き揃えられた炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シートと熱可塑性樹脂マトリックスクロスシートでアクリル樹脂の厚板を挟み込み、熱プレスをした繊維強化プラスチックサンドイッチ構造体であって、
熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シートに含まれる炭素繊維の繊維体積含有率が45%であり、熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シートの厚さが180μmである繊維強化プラスチックサンドイッチ構造体。」(以下、「甲3発明A」という。)が記載されているといえる。

本件発明1と甲3発明Aを対比する。
甲3発明Aの「熱可塑性樹脂」、「熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シート」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂組成物」、「シート状プリプレグ」に相当し、当該一方向シートは、シート状であることから、強化繊維は平面状に配列されているといえる。また、甲3発明Aの「繊維強化プラスチックサンドイッチ構造体」は、金型に入れて熱プレスを行っていることから、本件発明1の「成形品」に相当するといえる。
そうすると、本件発明1と甲3発明Aは、「一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂組成物を含むシート状プリプレグ(A)を含み、
シート状プリプレグ(A)に含まれる炭素繊維が30?50体積%であり、シート状プリプレグ(A)の厚さが100?200μmである成形品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点21)成形品において、本件発明1は、シート状プリプレグ(A)と「フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からな」るのに対して、甲3発明Aは、シート状プリプレグ(A)と熱可塑性樹脂マトリックスクロスシートでアクリル樹脂の厚板を挟み込み、熱プレスをした繊維強化プラスチックサンドイッチ構造体である点。

(相違点22)成形品において、本件発明1は、「シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である」のに対して、甲3発明Aは、そのように特定されていない点。

事案に鑑みて、はじめに、(相違点21)について検討する。

まず、甲3の上記1(4)(4-1)及び(4-2)、特に、請求項1及び段落【0009】には、サンドイッチ構造体とすることによって、曲げ構造およびねじり剛性を発現させることができることが記載されており、甲3発明Aにおいて、熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シートと熱可塑性樹脂マトリックスクロスシートでアクリル樹脂の厚板を挟み込む構成は、必須の発明特定事項であることが理解でき、甲3発明Aにおいて、熱可塑性樹脂マトリックスクロスシートを配置せず、上記(相違点21)に係る発明の構成とすることは、阻害されるべき事由があると認められる。

そうすると、本件発明1は、(相違点22)を検討するまでもなく、甲3発明A、甲3に記載の事項、甲7,8に記載の技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について

甲3には、上記1(2)アに記載された内容が記載されている。
さらに、上記(4-3)の段落【0033】には、熱可塑性樹脂マトリックスクロスシート及び繊維体積含有率45%、厚み0.18mmである熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シートを製造し、これらの間にアクリル樹脂の厚板を芯材として挟み込み、金型で熱プレスをして繊維強化プラスチックサンドイッチ構造体を得た旨記載されていることから、甲3の繊維強化プラスチックサンドイッチ構造体は、「成形品」といえる。

そうすると、甲3には、「一方向に引き揃えられた炭素繊維と熱可塑性樹脂を含み、炭素繊維の繊維体積含有率が45%であり、厚さが180μmである熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シートと、熱可塑性樹脂マトリックスクロスシートとでアクリル樹脂の厚板を挟み込み、それを金型内に配置し、熱プレスをする成形品を得る成形品の製造方法。」(以下、「甲3発明B」という。)が記載されているといえる。

本件発明2と甲3発明Bを対比する。
甲3発明Bの「熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シート」は、本件発明2の「シート状プリプレグ(A)」に相当し、当該プリプレグは、シート状であることから、炭素繊維は平面状に配列されているといえる。
そうすると、本件発明2と甲3発明Bは、「一方向に引き揃えられた炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであるシート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、成形品を得る成形品の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点23)成形品について、本件発明2は、シート状プリプレグ(A)が「金型内部とほぼ同じ形状であ」り、シート状プリプレグ(A)を金型内に配置した後、「金型に、フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)を溶融したものを射出」して得られるのに対して、甲3発明Bは、シート状プリプレグ(A)の形状についてそのような特定がなく、シート状プリプレグ(A)と、熱可塑性樹脂マトリックスクロスシートとでアクリル樹脂の厚板を挟み込み、それを金型内に配置し、熱プレスをして得られるものである点。

(相違点24)成形品において、本件発明2は、「シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である」のに対して、甲3発明Bは、そのように特定されていない点。

事案に鑑みて、はじめに、(相違点23)について検討する。

甲3発明Bは、アクリル樹脂の厚板を使用しており、当該アクリル樹脂は、その樹脂材料からみて熱可塑性樹脂であるといえる。しかしながら、甲3の明細書を参酌するに、段落【0016】には、当該熱可塑性樹脂の選択としては、使用部位、使用目的により剛性、摩擦特性等を考慮することが必要である旨記載されているものの、当該アクリル樹脂にフィラーを添加する旨記載されていない。
一方で、甲1の段落【0020】には、樹脂に短繊維が含まれると短繊維が絡み合い、接合に寄与すること、甲2の段落【0009】には、不連続強化繊維含有溶融熱可塑性樹脂は均一な物性、機械特性の成形体が所望の形態で得られることが記載され、短繊維を配合すると成形体の機械特性に好ましい影響を与えることは公知の事項であるとはいえるが、剛性や耐久性を高める手段として、繊維強化プラスチックの表面層(甲3発明Bの「熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シート」、本件発明1の「シート状プリプレグ(A)」に相当する。)に強化繊維を特定量導入する手段を採用している甲3発明Bにおいて、わざわざ芯材に使用したアクリル樹脂の厚板に短繊維を内添することを想起することは、動機付けがないと言わざるを得ない。

効果についても、本件明細書の【表1】を参酌するに、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)とを組み合わせ、特定の連続繊維比率を有する成形品は、優れた曲げ強さを発揮することが理解できることから、甲3発明Bからは想定し得ない効果を発揮しているといえる。

したがって、甲3発明Bにおいて(相違点23)に係る構成を備えることは、当業者にとって想到容易であるとはいえないから、本件発明2は、甲3発明B、甲3に記載の事項、甲1,2,7,8に記載の技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明3について

本件発明3と甲3発明Bを対比する。
甲3発明Bの「熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維一方向シート」は、本件発明3の「シート状プリプレグ(A)」に相当し、当該プリプレグは、シート状であることから、炭素繊維は平面状に配列されているといえる。また、甲3発明Bは、積層後、熱プレスをすることから、本件発明3の「圧縮成形」に相当するといえる。
そうすると、本件発明3と甲3発明Bは、「一方向に引き揃えられた炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであるシート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、圧縮成形をすることで、成形品を得る成形品の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点25)成形品において、本件発明3は、「フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなる成形品と、」シート状プリプレグ(A)とを積層した後に、圧縮成形するのに対して、甲3発明Bは、シート状プリプレグ(A)と、熱可塑性樹脂マトリックスクロスシートとでアクリル樹脂の厚板を挟み込み、それを金型内に配置し、熱プレスをして得られるものである点。

(相違点26)シート状プリプレグ(A)において、本件発明3は、「前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)とほぼ同じ形状であ」るのに対して、甲3発明Bは、そのような特定がない点。

(相違点27)成形品において、本件発明3は、「シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である」のに対して、甲3発明Bは、そのように特定されていない点。

事案に鑑みて、はじめに、(相違点25)について検討する。

(相違点25)は、実質的に(相違点23)と同一であることから、上記1(2)イで検討したとおり、本件発明3は、他の(相違点26)、(相違点27)を検討するまでもなく、甲3発明B、甲3に記載の事項、甲1,2,7,8に記載の技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 特許法第36条違反(取消理由(実施可能要件違反、サポート要件違反及び明確性要件違反)について)

(1)申立人の主張

標記意見書における、取消理由(実施可能要件違反、サポート要件違反及び明確性要件違反)についての異議申立人の主張は、概ね以下のとおりである(意見書第4?7頁)。

本件明細書の段落【0023】は、成形品の厚みについても言及するものであり、たてとよこについてのみ言及しているものではなく、「形状」には、厚み方向の形も包含されることから、当該段落の記載から、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)とが同じ形状である、又はほぼ同じ形状に成形されたかは到底断定できない。
したがって、本件明細書の記載に基づいて、フィラー強化熱可塑性樹脂(B)をシート状プリプレグ(A)とほぼ同じ形状に成型することができるか明確かつ十分に理解することができないから、実施可能要件違反であり、本件発明1?3は、発明の詳細な説明に開示されておらず、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えているから、サポート要件違反であり、本件発明1?3は、「ほぼ同じ形状」との用語により発明を特定することによってどの程度同じであるか明確でなく、発明の範囲を曖昧にしており、特許を受けようとする発明が明確でないから、明確性要件違反である。

(2)当審の判断

上記第2 3で検討したとおり、本件発明1?3に記載の、それぞれ「シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であ」ること、「金型内部とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)」、「フィラー強化熱可塑性樹脂(B)とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)」とは、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)のたてとよこの寸法が同じであること、これらを重ねるに際し、両者が一体的に重なることを示していることは明らかであり、シート状プリプレグ(A)とフィラー強化熱可塑性樹脂(B)のたてとよこの寸法が同じであるように実施できることも明らかであり、本件発明1?3は、発明の詳細な説明に記載された範囲のものであるから、上記記載要件を満たすといえる。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。


第7 むすび

上記「第5」ないし「第6」で検討したとおり、本件特許1ないし3は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、上記取消理由及び上記申立理由によっては、本件特許1ないし3を取り消すことはできない。
また、異議申立人の意見書における主張を踏まえても、他に本件特許1ないし3を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり、決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂組成物を含むシート状プリプレグ(A)と
フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなり、
前記シート状プリプレグ(A)と前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)はほぼ同じ形状であり、
シート状プリプレグ(A)に含まれる炭素繊維が30?50体積%であり、シート状プリプレグ(A)の厚さが100?200μmであり、シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である成形品。
【請求項2】
一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであり、金型内部とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)を金型内に配置し、金型に、フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)を溶融したものを射出することで、シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である成形品を得る成形品の製造方法。
【請求項3】
フィラーと熱可塑性樹脂組成物を含むフィラー強化熱可塑性樹脂(B)からなる成形品と、一方向に引き揃えられて平面状に配列された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、炭素繊維が30?50体積%であり、厚さが100?200μmであり、前記フィラー強化熱可塑性樹脂(B)とほぼ同じ形状であるシート状プリプレグ(A)を積層した後に、圧縮成形することで、シート状プリプレグ(A)を製造する際に使用した炭素繊維の質量を、成形品の質量で割り返し、100をかけることにより求めた連続繊維比率が2.3質量%以下である成形品を得る成形品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-01-18 
出願番号 特願2012-267787(P2012-267787)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (B29C)
P 1 651・ 121- YAA (B29C)
P 1 651・ 113- YAA (B29C)
P 1 651・ 841- YAA (B29C)
P 1 651・ 537- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長谷部 智寿  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 阪▲崎▼ 裕美
大島 祥吾
登録日 2017-10-27 
登録番号 特許第6231740号(P6231740)
権利者 三菱ケミカル株式会社
発明の名称 成形品とその製造方法  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 大浪 一徳  
代理人 伏見 俊介  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 大浪 一徳  
代理人 伏見 俊介  
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