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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
管理番号 1349696
異議申立番号 異議2018-700586  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-17 
確定日 2019-02-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6267386号発明「燃料電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6267386号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1?2〕について訂正することを認める。 特許第6267386号の請求項2に係る特許を維持する。 特許第6267386号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6267386号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成28年7月5日(優先権主張 平成27年7月7日)に出願された特願2016-133297号の一部を平成29年4月14日に新たな特許出願としたものであって、平成30年1月5日に特許権の設定登録がされ、同年1月24日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月17日付けで請求項1?2(全請求項)に係る本件特許に対し、特許異議申立人である稲垣仁美(以下、「申立人」という。)によって特許異議の申立てがされ、同年9月27日付けで当審から取消理由が通知され、同年11月19日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年12月12日付けで当審から申立人に対し訂正請求があった旨を通知するとともに相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたところ、平成31年1月16日付けで申立人から意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正の適否

1 本件訂正請求の趣旨

本件訂正請求の趣旨は「特許第6267386号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?2について訂正することを求める。」というものである。

2 訂正事項

本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項のとおりである。

(1)訂正事項1

請求項1を削除する。

(2)訂正事項2

請求項2を請求項1の記載を引用しない独立形式に訂正する。

3 一群の請求項について

本件訂正前の請求項1?2は、請求項2が、本件訂正請求の対象である請求項1を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1?2について請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

4 訂正要件の検討

(1)訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否,新規事項追加の有無

ア 訂正事項1について

訂正事項1に係る本件訂正は、請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合し、本件特許の願書に添付された明細書及び図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

イ 訂正事項2について

訂正事項2に係る本件訂正は、本件訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する形式で記載されていたところ、訂正事項1に係る本件訂正によって請求項1が削除されたことに伴い、請求項2を請求項1の記載を引用しない独立形式に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合し、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)独立特許要件

特許異議の申立ては、本件訂正前の請求項1?2の全請求項に対してされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

5 小括

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第4項並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1?2〕について訂正することを認める。

第3 当審の判断

1 本件発明

本件訂正が認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明2」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、下線は訂正箇所を示すために当審が付したものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
燃料極と、
一般式ABO_(3)で表され、AサイトにLa及びSrを含むペロブスカイト型酸化物を主成分として含有する空気極と、
前記燃料極および前記空気極の間に配置される固体電解質層と、
を備え、
前記空気極は、前記固体電解質層と反対側の表面を有し、
前記空気極の前記表面におけるX線光電子分光分析で検出されるLa濃度に対するSr濃度の第1の比は、前記表面に表面処理を施して露出した露出面におけるX線光電子分光分析で検出されるLa濃度に対するSr濃度の第2の比の1倍以上4倍以下であり、
前記露出面は、厚み方向において前記表面から5nm内部に位置し、
前記ペロブスカイト型酸化物のAサイトにおけるBa、Ca、Na及びKの総量は、2000ppm以下である、
燃料電池。」

2 取消理由通知に記載した取消理由について

(1)取消理由通知の概要

本件訂正前の請求項1に対し、平成30年9月27日付けで当審から特許権者に通知した取消理由の内容は以下のとおりである。

取消理由1(新規性欠如・進歩性欠如)

本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
仮にそうではないとしても、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
その理由は、特許異議申立書の第7頁第9行?第16頁下から第11行,第24頁第8行?第26頁下から第7行に記載されたとおりである。

[証拠方法]
甲第1号証:Edith Bucher et al.,“Impact of humid atmospheres on oxygen exchange properties, surface-near elemental composition, and surface morphology of La_(0.6)Sr_(0.4)CoO_(3-δ)”, Solid State Ionics, vol.208(2012), pp.43-51
甲第2号証:特開2013-191569号公報

取消理由2(進歩性欠如)

本件特許の請求項1に係る発明は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
その理由は、特許異議申立書の第16頁下から第10行?第21頁第12行,第26頁下から第6行?第29頁最下行に記載されたとおりである。

[証拠方法]
甲第3号証:特開平7-118076号公報
甲第4号証:特開平7-277848号公報

(2)取消理由1(新規性欠如・進歩性欠如),取消理由2(進歩性欠如)について

本件訂正によって、請求項1は削除されたから、取消理由1,2の対象となる請求項は存在しないものとなった。
したがって、本件訂正によって、取消理由1,2は解消した。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

本件訂正前の請求項1?2に対する特許異議申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかったものの概要は、以下のとおりである。

(1)取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由の概要

ア 申立理由1(進歩性欠如)(特許異議申立書第30頁第1行?第31頁第2行)

本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明、又は、甲第1号証,甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ 申立理由2(進歩性欠如)(特許異議申立書第31頁第3?19行)

本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第6号証に記載された発明、又は、甲第1号証,甲第2号証及び甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

[証拠方法]
甲第1号証:Edith Bucher et al.,“Impact of humid atmospheres on oxygen exchange properties, surface-near elemental composition, and surface morphology of La_(0.6)Sr_(0.4)CoO_(3-δ)”, Solid State Ionics, vol.208(2012), pp.43-51
甲第2号証:特開2013-191569号公報
甲第5号証:「『固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発』中間報告書」,平成22年11月,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会,第vi頁,第III-42?III-44頁
甲第6号証:堀田照久 外5名,「SOFCの耐久性向上のための劣化機構解明」,水素エネルギーシステム,Vol.37 No.2(2012),第107(19)?114(26)頁

(2)申立理由1(進歩性欠如),申立理由2(進歩性欠如)について

本件発明2の「ペロブスカイト型酸化物のAサイトにおけるBa、Ca、Na及びKの総量は、2000ppm以下である」点に相当する事項は、甲第1号証,甲第2号証,甲第5号証,甲第6号証のいずれにも記載されていない。
具体的には、甲第1号証及び甲第2号証には、不可避的不純物についての記載はなく、甲第5号証には、ペロブスカイト型複合酸化物(LSCF:(La,Sr)(Co,Fe)O_(3))を空気極材料に用いた場合の微量成分としてBa及びCaについての記載はあるが、Na及びKについての記載はなく、甲第6号証には、空気極の不純物としてNa及びKについての記載はあるが、Ba及びCaについての記載はない。
また、上記の事項は当業者にとって周知の事項であるともいえない。
したがって、本件発明2は、甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明、又は、甲第1号証,甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また、甲第1号証及び甲第6号証に記載された発明、又は、甲第1号証,甲第2号証及び甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

第4 むすび

以上のとおり、請求項2に係る本件特許については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、請求項1は本件訂正により削除され、請求項1に係る本件特許に対する特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
燃料極と、
一般式ABO_(3)で表され、AサイトにLa及びSrを含むペロブスカイト型酸化物を主成分として含有する空気極と、
前記燃料極および前記空気極の間に配置される固体電解質層と、
を備え、
前記空気極は、前記固体電解質層と反対側の表面を有し、
前記空気極の前記表面におけるX線光電子分光分析で検出されるLa濃度に対するSr濃度の第1の比は、前記表面に表面処理を施して露出した露出面におけるX線光電子分光分析で検出されるLa濃度に対するSr濃度の第2の比の1倍以上4倍以下であり、
前記露出面は、厚み方向において前記表面から5nm内部に位置し、
前記ペロブスカイト型酸化物のAサイトにおけるBa、Ca、Na及びKの総量は、2000ppm以下である、
燃料電池。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-01-28 
出願番号 特願2017-80448(P2017-80448)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 康晴  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 長谷山 健
▲辻▼ 弘輔
登録日 2018-01-05 
登録番号 特許第6267386号(P6267386)
権利者 日本碍子株式会社
発明の名称 燃料電池  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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