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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E01D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E01D
審判 全部申し立て 2項進歩性  E01D
管理番号 1349699
異議申立番号 異議2018-700915  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-14 
確定日 2019-02-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6323776号発明「高架道路用コンクリート床版の架け替え方法及び同方法による架け替えPC床版」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6323776号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6323776号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年2月14日に出願され、平成30年4月20日にその特許権の設定登録がされ、平成30年5月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年11月14日に異議申立人浜俊彦(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。


2 本件発明
特許第6323776号の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
道路長さ方向に設置した複数の橋桁に支持させた複数車線用の既設コンクリート床版の道路幅員方向を一次施工部と二次施工部に分割した架け替え区画を設定し、前記二次施工部を道路として共用可能な状態で残してこれと隣接する一次施工部の架け替えを行い、架け替え後の一次施工部を道路として共用させた後、前記二次施工部の架け替えを行い、前記一次施工部と一体化させて全体を道路として共用させる高架道路用コンクリート床版の架け替え方法において、
前記一次施工部の架け替えは、該一次施工部の既設コンクリート床版を除去し、その除去された一次施工部に、幅員方向にプレストレスを付与したプレテンションプレキャストPC版を架設して一次施工部の新コンクリート床版を構築し、該一次施工部の新コンクリート床版上を道路として共用させた後、前記二次施工部の既設コンクリート床版を除去し、その除去した部分に二次施工部の新コンクリート床版を架設し、
該二次施工部の新コンクリート床版の前記一次施工部側とは反対側の端部から先に架設されているプレテンションプレキャストPC版の前記二次施工部側の端部に連続させてポストテンション用PC緊張材を挿通し、
該PC緊張材を緊張することにより、前記二次施工部の新コンクリート床版にプレストレスを付与して必要な応力が導入されたポストテンションPC床版とするとともに、該ポストテンションPC床版と前記プレテンションプレキャストPC版との連結部分とにプレストレスを導入させた架け替えPC床版とすることを特徴としてなる高架道路用コンクリート床版の架け替え方法。
【請求項2】
前記ポストテンションPC床版は、前記二次施工部の既設コンクリート床版を除去した鋼桁上にプレキャストの鉄筋コンクリート版を並べて架設することにより二次施工部の新コンクリート床版とし、しかる後、前記ポストテンション用PC緊張材によるプレストレスを付与することにより構成される請求項1に記載の高架道路用コンクリート床版の架け替え方法。
【請求項3】
ポストテンションPC床版は、場所打ちの鉄筋コンクリート版を、前記二次施工部の既設コンクリート床版を除去した鋼桁上に二次施工部の新コンクリート床版を構築し、しかる後、前記ポストテンション用PC緊張材によるプレストレスを付与することにより構成される請求項1に記載の高架道路用コンクリート床版の架け替え方法。
【請求項4】
高架道路用コンクリート床版の全幅員方向にプレストレスが導入されており、該幅員方向を2分割した一次施工部と二次施工部とから構成され、
前記一次施工部は、プレテンション方式によってプレストレスが付与されたプレテンションプレキャストPC版を鋼桁の長さ方向に多数並べて支持させることによって構成され、
該プレテンションプレキャストPC版の裏面に突出させた緊張支圧部が備えられ、
前記二次施工部は、ポストテンション方式によるポストテンションPC床版をもって構成され、
前記プレテンションプレキャストPC版には、その前記ポストテンションPC床版側の端面と前記緊張支圧部に連通開口するPC緊張材挿通孔が形成されているとともに、前記ポストテンションPC床版には、前記プレテンションプレキャストPC版側の端面とその反対側の端面に連通開口させたPC緊張材挿通孔を備え、
前記両PC緊張材挿通孔に連続して挿通されたポストテンション用PC緊張材を緊張することによって、前記ポストテンションPC床版にプレストレスを導入させるとともに、前記プレテンションプレキャストPC版と前記ポストテンションPC床版とを一体化させてなる高架道路用架け替えPC床版。」


3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として甲第1号証を、従たる証拠として甲第2号証?甲第19号証を提出して、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、請求項1?4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、さらに、本件発明1?4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて請求するものであるから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから、請求項1?4に係る特許を取り消すべきものである旨、主張している。
〔証拠〕
甲第1号証:「高強度軽量プレキャストPC床版接合部における連結鋼材のPCグラウトの施工」、仲住明展 外3名、第15回プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム論文集、社団法人プレストレストコンクリート技術協会、平成18年9月20日、471-474頁
甲第2号証:「第二東名高速道路 内牧高架橋の設計・施工-断面を分割架設するストラット付PC箱桁橋-」、源島良一 外3名、プレストレストコンクリート-PCとコンクリート構造-、社団法人プレストレストコンクリート技術協会、平成18年9月25日、第48巻第5号(通巻285号)、10-18頁
甲第3号証:特開2003-138521号公報
甲第4号証:特開2005-90124号公報
甲第5号証:特開平8-333723号公報
甲第6号証:「千仭(せんじん)橋半断面施工によるプレキャスト床版工事」、山下正行 外3名、第6回プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム論文集、社団法人プレストレストコンクリート技術協会、平成8年10月7日、177-180頁
甲第7号証:「高強度軽量プレキャストPC床版を用いた床版取換工事」、仲住明展 外2名、コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集第6巻、社団法人日本材料学会、2006年10月27日、351-354頁
甲第8号証:「道路橋のRC床版取換え工事にみる新技術-プレキャストPC床版による取組み-」、渡辺浩志 外3名、プレストレストコンクリート-PCとコンクリート構造-、社団法人プレストレストコンクリート技術協会、平成19年3月30日、第49巻第2号(通巻288号)、75-82頁
甲第9号証:特開2013-28954号公報
甲第10号証:特開2013-60768号公報
甲第11号証:特開2001-164513号公報
甲第12号証:特公昭52-4086号公報
甲第13号証:2012年制定 コンクリート標準示方書[設計編]、土木学会コンクリート委員会 コンクリート標準示方書改訂小委員会、公益社団法人土木学会、平成25年3月、323-325頁
甲第14号証:道路橋示方書・同解説 I共通編 IIIコンクリート橋編、社団法人日本道路協会、平成24年6月11日、第2刷、183-184頁
甲第15号証:特開2007-231683号公報
甲第16号証:コンクリート道路橋設計便覧、社団法人日本道路協会、昭和60年10月20日、156-171頁
甲第17号証:特開平9-273117号公報
甲第18号証:特開平7-268808号公報
甲第19号証:特開2001-146713号公報


4 証拠の記載事項
(1)甲第1号証
(下線は本決定で付した。以下同様。)
ア 「高強度プレキャストPC床版接合部における連結鋼材のPCグラウトの施工」(471頁1行)

イ 「1.はじめに
近年,車両の大型化や交通量の増加によって,既設道路橋の鉄筋コンクリート床版(以下,RC床版)の損傷事例が報告されている。このような背景のもと,損傷を受けたRC床版の補修・補強工として,高強度軽量コンクリートを用いたプレキャストPC床版による床版取換え工法を実施工において採用している。」(471頁6?9行)

ウ 「また,片側一車線を交通開放した状態での床版取換え工法の開発として,橋軸方向に継手部を設けた床版での移動式輪荷重走行試験により床版接合部の疲労耐久性の確認を行っている。
今回,片側一車線を交通解放した状態での床版の取換えにおいて,場所打ちコンクリートとなる床版接合部の耐久性の向上を目的として,ポストテンション方式により,付加的にプレストレスを導入することを提案した。
本稿では,実橋で想定される供用状態での床版下面からの,PCグラウトの施工の充填性確認実験を行い,その結果から得た施工時の留意点について報告する。」(471頁14?25行)

エ 「2.本実験の目的
プレキャストPC床版を採用する利点として,交通解放を行いながらの施工を可能とすることが挙げられる。2車線以上の幅員を有する既設RC床版を,片側一車線を交通開放した状態でプレキャストPC床版に取り換える場合,床版間に橋軸方向の接合部が必要となる(図-1)。本接合部は基本的に鉄筋の重ね継手によるRC構造としているが,耐久性の向上を目的としてコンクリートの平均圧縮応力で約1N/mm^(2)程度の付加的なプレストレスの導入を提案している。このプレストレスは接合部のコンクリート打込み後,現場で導入されるポストテンション方式となるため,導入後にPCグラウトの充填が必要である。(図-2)」(471頁26?末行)

オ 図-1は以下のとおり。


カ 図-2は以下のとおり。


キ 「・橋軸直角方向
プレテンション方式によるPC構造」(471頁図-2最上段右)

ク 「高強度軽量
プレキャストPC床版」(471頁図-2中段左)

ケ 「今回,床版下面からのPCグラウトの施工を想定し,実施工における定着部近傍を模擬した試験体にPCグラウト注入実験を行い,PCグラウト充填状況の確認および実施工への適用性,作業における留意点について検討を行った。」(472頁6?8行)

コ 図-3は以下のとおり。


サ 「3.実験概要
3.1 プレストレスの導入
本実験において,接合部に付加するプレストレスの導入には,SWPR7BL 1S12.7mmを使用し,以下の配置とした。図-4にプレストレス導入の概略図を,写真-2に実製品における連結PC鋼材の配置状況をそれぞれ示す。
1)I期施工側の床版製作時に連結PC鋼材およびカップラーを設置。
2)II期施工側の床版製作時にはシースのみを設置。
3)現地でII期施工部架設後にシース内に連結PC鋼材を配置し,カップラーにて接続。
4)緊張・PCグラウト注入作業。」(472頁9?20行)

シ 図-4は以下のとおり。


ス 「3.2 定着具
定着具は,定着部近傍のPCグラウトの充填性向上を目的として写真-3に示すように注入・排気孔を有する埋込型支圧板を使用し,実験により排気孔の有無や注入位置によるPCグラウト充填状況への影響について確認・検討を行った。」(472頁21?25行)

セ 上記キ及びクの記載を勘案して、図-1、図-2を参照すると、床版取換え後のプレキャストPC床版は、2車線ともに、橋軸直角方向のプレテンション方式によるPC構造であることが看取できる。

ソ 図-3を前提に図-4を参照すると、II期施工側の床版には、I期施工側の床版とは反対側の端部から、I期施工側の床版のII期施工側の床版側の端部に連続させてPC鋼材が挿通され、I期施工側の床版のII期施工側の床版側の端部には、カップラーが設置されていることが看取できる。

タ 上記アないしソからみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「2車線以上の幅員を有する既設道路橋の鉄筋コンクリート床版の補修・補強工として、片側一車線を交通開放した状態でのプレキャストPC床版による床版取換え工法において、
鉄筋の重ね継手によるRC構造である床版間の接合部に、耐久性の向上を目的として、コンクリート打込み後、現場で導入されるポストテンション方式となる、コンクリートの平均圧縮応力で約1N/mm^(2)程度の付加的なプレストレスを導入するものであって、
上記プレキャストPC床版は、2車線ともに、橋軸直角方向のプレテンション方式によるPC構造であり、
I期施工側の床版製作時に連結PC鋼材およびII期施工側の床版側の端部にカップラーを設置し、
II期施工側の床版製作時にはシースのみを設置し、
現地でII期施工部架設後にシース内に、I期施工側の床版とは反対側の端部から、I期施工側の床版のII期施工側の床版側の端部に連続させてPC鋼材を挿通し配置して、カップラーにて接続し、
緊張・PCグラウト注入作業を行う、床版取換え工法。」


5 当審の判断
(1)29条1項3号、2項について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明を対比すると、少なくとも、ポストテンション用PC緊張材を緊張する二次施工部の新コンクリート床版について、本件発明1は、プレストレスを付与して必要な応力が導入されたポストテンションPC床版とするのに対し、甲1発明は、現場でポストテンション方式となる、コンクリートの平均圧縮応力で約1N/mm^(2)程度の付加的なプレストレスを導入するものの、必要な応力を導入してポストテンションPC床版としたかどうか不明な点。

(イ)上記相違点について検討する。
a まず、本件発明1において、二次施工部の新コンクリート床版には、プレストレスを付与して必要な応力が導入されたポストテンションPC床版とするものであるから、ポストテンション用PC緊張材を緊張するためのプレストレスに必要な応力とは、該緊張によってポストテンションPC床版とするための応力を意味するといえる。
これに対し、甲1発明は、(a)II期施工側の新コンクリート床版は、橋軸直角方向のプレテンション方式によるPC構造であること、(b)甲第1号証の記載によれば、プレキャストPC床版の接合部に関する発明であること、(c)ポストテンション方式によるプレストレスは、コンクリートの平均圧縮応力で約1N/mm^(2)程度の付加的なものであるから、主に両PC床版の接合のために導入されるものである。上記(a)ないし(c)からみて、II期施工部の新コンクリート床版は、プレテンション方式によるプレストレスが付与されて、既に道路橋の鉄筋コンクリート床版としての強度が備わっており、ポストテンション方式によるプレストレスの応力は、II期施工部の新コンクリート床版をポストテンションPC床板とするために必要な応力となるものではない。
よって、上記相違点は実質的な相違点であるから、甲1発明は、上記相違点に係る本件発明1の構成を備えていない。

b また、申立人が提示した甲第2号証ないし甲第19号証には、複数車線用の既設コンクリート床版の道路幅員方向を一次・二次施工部に分割し、一方を供用状態として他方の掛け替えを行った後、他方を供用状態として一方の掛け替えを行うことや、PC版として、部分的にプレテンションやポストテンションの導入を行うことが記載されているとしても、高架道路用コンクリート床版において、一方の車線をプレテンションPC床版とし、他方の車線をポストテンションPC床版とすることは記載されておらず、そして、上記相違点に係る構成を備えることにより、本件発明1は、本件明細書に記載された作用・効果を奏するものであるから、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第19号証に記載された事項に基いて、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

c 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、かつ、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第19号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに構成を限定したものであるから、上記アに示した理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、かつ、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第19号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに構成を限定したものであるから、上記アに示した理由と同様の理由により、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第19号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 本件発明4について
本件発明4と甲1発明を対比すると、少なくとも、二次施工部について、本件発明4は、ポストテンション方式によるポストテンションPC床版をもって構成されるのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点で相違している。
ここで、甲1発明のプレキャストPC床版についてさらにみてみると、現場で導入されるポストテンション方式となる、コンクリートの平均圧縮応力で約1N/mm^(2)程度の付加的なプレストレスを導入するものではあるが、上記ア(イ)の(a)?(c)の点を勘案すると、該プレストレスは、主に両PC床版の接合のために導入されるものといえるから、甲1発明のプレキャストPC床版は、ポストテンション方式によるものではなく、プレテンション方式によるPC構造である。
そして、上記ア(イ)bで説示したとおり、甲第2号証ないし甲第19号証には、高架道路用コンクリート床版において、一方の車線をプレテンションPC床版とし、他方の車線をポストテンションPC床版とすることは記載されておらず、そして、上記相違点に係る構成を備えることにより、本件発明4は、本件明細書に記載された作用・効果を奏するものであるから、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第19号証に記載された事項に基いて、上記相違点に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第19号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)36条6項1号について
ア 申立人は、サポート要件について、概略、以下のとおり主張している。
「本件発明1の『二次施工部』に架設される『コンクリート床版』は、請求項1に特に限定が無いため、『一次施工部』に架設される『プレテンションプレキャストPC版』も含まれるが、『一次施工部』及び『二次施工部』の両方に「プレテンションプレキャストPC版」が架設される発明では、プレストレスが重複して導入される部分が少なくとも二次施工部のコンクリート床版の全面に亘って発生し、不経済となるため、本件発明の効果を奏しないことは明らかである。
図5(c)に記載されたような応力分布とするには、少なくとも、二次施工部20bはポストテンション方式によるポストテンションPC版をもって構成され、加えて二次施工部20bを構成する床版からプレテンションプレキャストPC版は除外される必要がある。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる。」

イ 上記アの主張について検討する。
本件発明1において、二次施工部に設けられるPC床版は、「ポストテンションPC床版」と明確に特定されており、また、明細書及び図面においても、二次施工部には、ポストテンション用PC緊張材が設けられているものの、プレテンション用のPC緊張材は記載されていない。そして、この二次施工部に対して一次施工部に架設されるPC版は、「プレテンションプレキャストPC版」と明確に特定されている。
よって、本件発明1において、二次施工部の「ポストテンションPC床版」は、導入されるプレストレスがプレテンション方式のものを含まないとの文言上の特定がないものの、「プレテンション」か「ポストテンション」かの名称の相違や、それらの実施例からみて、本件発明1における、二次施工部の「ポストテンションPC床版」に導入されるプレストレスは、ポストテンション方式のもののみであって、その他のプレストレスは導入されていないといえる。
してみると、本件発明1において、PC緊張材によるプレストレスが重複して導入される部分は、一次施工部に架設されたプレテンションプレキャストPC版の二次施工部側の端部のみであるから、明細書(段落【0017】)に記載された「従来例に示したような一次施工部と二次施工部の接合部分におけるPC緊張材の重なり部分が少なくなり、経済性が高い。」との効果を奏することができるものである。
また、本件発明2ないし本件発明4も同様であるから、本件発明1ないし本件発明4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて請求するものではなく、特許法36条第6項第1号の要件を満たすものである。


6 むすび、
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によって、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-02-01 
出願番号 特願2014-26829(P2014-26829)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (E01D)
P 1 651・ 121- Y (E01D)
P 1 651・ 113- Y (E01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西田 光宏  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 須永 聡
住田 秀弘
登録日 2018-04-20 
登録番号 特許第6323776号(P6323776)
権利者 東日本高速道路株式会社 株式会社高速道路総合技術研究所 株式会社ピーエス三菱 中日本高速道路株式会社 西日本高速道路株式会社
発明の名称 高架道路用コンクリート床版の架け替え方法及び同方法による架け替えPC床版  

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