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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1349710
異議申立番号 異議2018-701031  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-20 
確定日 2019-03-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6346708号発明「サーバ装置、遊興提供システム、遊興提供方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6346708号の請求項1、2、3、5、6、10,13、14及び15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6346708号の請求項1、2、3、5、6、10,13、14及び15に係る特許についての出願は、平成29年12月28日に出願され、平成30年6月1日にその特許権の設定登録がされ、同年6月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年12月20日に特許異議申立人新井誠一(以下、単に「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6346708号の請求項1、2、3、5、6、10,13、14及び15の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、3、5、6、10,13、14及び15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の消費者の支払い関連情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額に基づいて、複数の前記消費者のいずれか一人以上にベット権を設定するベット権設定部と、
前記消費者が前記ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付部と、
前記支払い相当額の合計値に基づいて、賞金の合計値の上限値を算出し、該支払い相当額の個別値に基づいて、前記ベットを行った前記消費者ごとに該ベットが当たった場合に支払われる賞金の個別値の上限値を算出し、算出した該賞金の合計値の上限値及び該賞金の個別値の上限値に基づいて、前記消費者ごとの前記賞金を設定する賞金設定部と、
当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定部が設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与部と、
を備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項2】
前記賞金設定部は、
前記支払い相当額の合計値に予め定められた比率を乗算することによって前記賞金の合計値の上限値を算出し、
前記支払い相当額の個別値に予め定められた係数を乗算することによって前記賞金の個別値の上限値を算出し、
前記賞金の合計値が該賞金の合計値の上限値以下となり、前記賞金の個別値が該賞金の個別値の上限値以下かつ予め定められた金額以下となるように、前記消費者ごとの前記賞金を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記予め定められた比率は2%であり、前記予め定められた係数は20であり、前記予め定められた金額は10万円である、
ことを特徴とする請求項2に記載のサーバ装置。」
「【請求項5】
前記情報取得部は、他のサーバ装置から前記消費者の支払い関連情報と該消費者の識別情報とを受信することによって、該消費者の支払い関連情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のサーバ装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、前記消費者が使用する通信端末から決済情報を受信することによって、該消費者の支払い関連情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のサーバ装置。」
「【請求項10】
前記賞金設定部は、前記支払い相当額に応じて前記消費者に客単価レベルを設定し、該客単価レベルが高い前記消費者については、高い分配率に基づいて前記賞金を設定し、該客単価レベルが低い前記消費者については、低い分配率に基づいて前記賞金を設定する、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のサーバ装置。」
「【請求項13】
遊興提供事業者によって管理される第1のサーバ装置と、
前記遊興提供事業者とは異なる提供事業者によって管理される第2のサーバ装置と、
消費者によって使用される一つ以上の通信端末と、
を備え、前記消費者に遊興を提供する遊興提供システムであって、
前記第1のサーバ装置は、
複数の前記消費者の支払い関連情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額に基づいて、複数の前記消費者のいずれか一人以上にベット権を設定するベット権設定部と、
前記消費者が前記ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付部と、
前記支払い相当額の合計値に基づいて、賞金の合計値の上限値を算出し、該支払い相当額の個別値に基づいて、前記ベットを行った前記消費者ごとに該ベットが当たった場合に支払われる賞金の個別値の上限値を算出し、算出した該賞金の合計値の上限値及び該賞金の個別値の上限値に基づいて、前記消費者ごとの前記賞金を設定する賞金設定部と、
当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定部が設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与部と、
を備えることを特徴とする遊興提供システム。
【請求項14】
サーバ装置によって実行される遊興提供方法であって、
情報取得部が消費者の支払い関連情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにおいて取得した支払い関連情報が示す支払い相当額に基づいて、ベット権設定部が前記消費者にベット権を設定するベット権設定ステップと、
前記消費者が前記ベット権に基づいてベットしたベット情報をベット情報受付部が受け付けるベット情報受付ステップと、
賞金設定部が、前記支払い相当額の合計値に基づいて、賞金の合計値の上限値を算出し、該支払い相当額の個別値に基づいて、前記ベットを行った前記消費者ごとに該ベットが当たった場合に支払われる賞金の個別値の上限値を算出し、算出した該賞金の合計値の上限値及び該賞金の個別値の上限値に基づいて、前記消費者ごとの前記賞金を設定する賞金設定ステップと、
受領権付与部が、当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定ステップにおいて設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与ステップと、
を含むことを特徴とする遊興提供方法。
【請求項15】
コンピュータを、
複数の消費者の支払い関連情報を取得する情報取得手段、
前記情報取得手段が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額に基づいて、複数の前記消費者のいずれか一人以上にベット権を設定するベット権設定手段、
前記消費者が前記ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付手段、
前記支払い相当額の合計値に基づいて、賞金の合計値の上限値を算出し、該支払い相当額の個別値に基づいて、前記ベットを行った前記消費者ごとに該ベットが当たった場合に支払われる賞金の個別値の上限値を算出し、算出した該賞金の合計値の上限値及び該賞金の個別値の上限値に基づいて、前記消費者ごとの前記賞金を設定する賞金設定手段、
当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定手段が設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与手段、
として機能させるためのプログラム。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、
主たる証拠として特開2015-191386号公報(甲第1号証)及び従たる証拠として特開2013-251008号公報(甲第2号証)、特許第5410282号(甲第3号証)、特開2016-189222号公報(甲第4号証)、特開2015-5296号公報(甲第5号証)、特開2017-182815号公報(甲第6号証)、特開2016-85604号公報(甲第7号証)、ウィキペディア「スポーツ振興くじ」(URL省略。甲第8号証)、特開2016-4451号公報(甲第9号証)、特開2008-176688号公報(甲第10号証)、消費者庁ホームページ「景品規制の概要」(URL省略。甲第19号証-1)、平成8年2月16日公正取引委員会告示第1号「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(甲第19号証-2)、広辞苑第7版(甲第20号証)を提出し、請求項1、2、3、5、6、10,13、14及び15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2、3、5、6、10,13、14及び15に係る特許を取り消すべきものである旨(申立理由1)、及び、
主たる証拠として甲第11号証乃至甲第17号証(いずれも「グランブルー・ファンタジー」なるゲームを提供する「グラブル用サーバ」に係る公然実施発明の認定に係るホームページの写し。URLは「第5」の「1」において後述。)及び従たる証拠として甲第9号証、甲第10号証、特開2017-113595号公報(甲第18号証-1)、、特開2017-794号公報(甲第18号証の-2)、特開2016-163710号公報(甲第18号証-3)を提出し、請求項1、2、3、5、6、10、13、14及び15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2、3、5、6、10、13、14及び15に係る特許を取り消すべきものである旨(申立理由2)
を主張している。

第4 申立理由1について
1 甲号証の記載等
(1)甲第1号証
ア(発明が解決しようとする課題)
「【0005】 しかしながら、従来技術においては、ユーザが欲しい商品を適切に入手できるとともに、消費を促進できる仕組みを提供できなかった。」


「【0044】 図2は、本実施の形態における販促システムのブロック図である。
【0045】 販促システムを構成するサーバ装置1は、格納部11、受信部12、処理部13、送信部14を備える。
【0046】サーバ装置1を構成する格納部11は、ユーザ情報格納部111、抽選対象商品情報格納部112、購入情報格納部113、ユーザ登録商品情報格納部114を備える。
【0047】受信部12は、登録指示受信部121、購入情報受付部122、販売促進情報受信部123、抽選指示受信部124、購入指示受信部125を備える。
【0048】処理部13は、購入情報蓄積部131、抽選対象商品登録部132、判断部133、抽選処理部134、店舗選択部135、ポイント取得部136、ポイント蓄積部137、購入処理部138、抽選関連情報取得部139を備える。」


「【0053】ユーザ情報格納部111は、1以上のユーザ情報を格納し得る。ユーザ情報は、ユーザに関する情報であり、ユーザ識別子とポイントとを有する。ポイントは、通常、商品の購入金額を用いて取得されるものであり、抽選に利用される。ユーザ情報は、氏名、性別、年齢、住所等の情報を有しても良い。なお、ポイントは、商品の購入金額の総計等でも良い。
【0054】抽選対象商品情報格納部112は、1以上の抽選対象商品情報を格納し得る。抽選対象商品情報は、抽選対象の商品に関する情報である。抽選対象商品情報は、抽選対象の商品を識別する抽選対象商品識別子を有する。
・・・
【0056】ユーザ登録商品情報格納部114は、1以上のユーザ登録商品情報を格納し得る。ユーザ登録商品情報は、ユーザが申し込んだ抽選対象の商品に関する情報である。ユーザ登録商品情報は、通常、ユーザ識別子と、抽選対象の商品の抽選対象商品識別子とを有する。この抽選対象の商品は、ユーザが選択した商品である。ユーザ登録商品情報は、抽選に必要な利用金額である必要金額を有することは好適である。・・・
【0057】受信部12は、端末装置2または店舗装置3等から情報や指示等を受信する。情報や指示等は、例えば、後述する登録指示、購入情報、販売促進情報、購入指示である。
【0058】登録指示受信部121は、登録指示を端末装置2から受信する。登録指示とは、抽選対象の商品を登録する指示である。登録指示は、通常、抽選対象商品識別子とユーザ識別子とを有する。
【0059】購入情報受付部122は、1以上の購入情報を受け付ける。購入情報受付部122は、例えば、端末装置2または店舗装置3から購入情報を受信する。また、購入情報受付部122は、図示しない装置(例えば、クレジットカード会社のサーバ装置、ECサイトのサーバ装置等)から購入情報を受信しても良い。また、購入情報受付部122は、人手により入力された購入情報を受け付けても良い。ここで、購入情報とは、商品の購入に関する情報であり、通常、購入金額とユーザ識別子とを有する。・・・
・・・
【0061】抽選指示受信部124は、抽選の実施の指示である抽選指示を端末装置2から受信する。ここで、抽選とは、くじと言っても良い。また、抽選とは、商品に関する特典を与えられるか否かの選択である、と言っても良い。ここで、商品に関する特典とは、商品の無償譲渡、商品の割り引き購入の権利等である。抽選の結果、当選と落選がある。また、抽選指示は、通常、ユーザ識別子を有する。
・・・
【0065】抽選対象商品登録部132は、登録指示が有するユーザ識別子に対応付けて、登録指示が有する抽選対象商品識別子をユーザ登録商品情報格納部114に蓄積する。
【0066】判断部133は、1以上の購入情報が有する1以上の購入金額に関する情報であり、一のユーザ識別子と対になる1以上の購入金額に関する情報が、一のユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子で識別される商品の抽選のための条件である抽選条件に合致するか否かを判断する。また、購入金額に関する情報とは、購入金額でも良いし、購入金額から取得され得るポイント等でも良い。また、購入金額に関する情報とは、その抽選対象商品を提供する店舗や販売促進する店舗での購入金額等でもよい。さらに、抽選条件は、通常、抽選対象商品識別子と対に管理されている。
【0067】判断部133は、一のユーザ識別子と対になるポイントが、一のユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子で識別される商品の抽選のための条件である抽選条件に合致するか否かを判断する。
【0068】抽選処理部134は、判断部133が抽選条件に合致すると判断した場合に、抽選対象商品識別子で識別される商品の抽選のための処理を行う。ここで、抽選のための処理とは、抽選でも良いし、抽選のための情報の出力でも良いし、抽選を行う指示の送信や、抽選を行う装置を起動し、抽選させる処理でも良いし、抽選可能回数を増加させる処理等でも良い。なお、抽選は、装置により行っても良いし、人手により行っても良い。なお、抽選とは、当選、落選のうちのいずれかの結果を得ることであり、その方法は問わない。抽選とは、例えば、当選の確率が「1/N(Nは2以上の自然数)」の場合、乱数を発生させて、Nで割り切れる数の場合は「当選」とし、Nで割り切れない数の場合は「落選」としても良い。また、当選とは、ユーザが商品をもらうことができたり、商品を格安で購入できたり等、商品に関する特典を得ることができる状態を言う。
・・・。」


「【0164】以下、本実施の形態における販促システムの具体的な動作について説明する。販促システムの概念図は図1である。
【0165】今、ユーザ情報格納部111は、図6に示すユーザ情報管理表を保持している。ユーザ情報管理表は、「ID」「ユーザ識別子」「カード識別子」「ポイント」を有する1以上のレコードを管理している。「ID」はレコードを識別する情報である。なお、ここでは、ポイントは購入金額の総計である、とする。
【0166】また、抽選対象商品情報格納部112は、図7に示す抽選対象商品情報管理表を保持している。抽選対象商品情報管理表は、「ID」「抽選対象商品識別子」「抽選条件」「店舗通知先情報」「期間情報」「商品情報」を有する1以上のレコードを管理している。「商品情報」は、「商品名」「価格」「画像」等を有する。また、「ID」はレコードを識別する情報である。「画像」は商品の画像である。なお、図7の「店舗通知先情報」は、店舗または店舗通知先情報を選択する条件(例えば、「商品の種類「洋服」を取り扱っている店舗」、「店舗の位置情報がユーザの住所と比較して、閾値以内の距離になる店舗」など)でも良い。
【0167】また、購入情報格納部113は、図8に示す購入情報管理表を保持している。購入情報管理表は、「ID」「ユーザ識別子」「カード識別子」「商品識別子」「購入金額」を有する1以上のレコードを管理している。
【0168】さらに、ユーザ登録商品情報格納部114は、図9に示すユーザ登録商品情報管理表を保持している。ユーザ登録商品情報管理表は、「ID」「ユーザ識別子」「抽選対象商品識別子」を有する1以上のレコードを管理している。
【0169】かかる状況において、ユーザAは、自分の端末装置2に、選択画面の出力指示を入力する。なお、選択画面の出力指示は、抽選対象商品を選択するための選択画面を取得する指示である。
【0170】次に、端末装置2の端末受付部21は、ユーザから選択画面の出力指示を受け付ける。そして、端末処理部22は、端末格納部20からユーザ識別子「A」を読み出し、当該ユーザ識別子と受け付けられた選択画面の出力指示から、送信する出力指示(例えば、「出力指示 ユーザ識別子="A"」)を構成する。そして、端末送信部23は、構成された出力指示をサーバ装置1に送信する。
【0171】次に、サーバ装置1の受信部12は、抽選対象商品の選択画面の出力指示を端末装置2から受信する。そして、選択画面送信部143は、抽選対象商品情報管理表(図7参照)から1以上の商品情報を取得し、当該1以上の商品情報を用いて、抽選対象商品の選択画面を構成し、当該の選択画面を端末装置2に送信する。
【0172】次に、端末装置2の端末受信部24は、サーバ装置1から選択画面を受信する。そして、端末出力部25は、受信された選択画面を出力する。選択画面の出力例は、図10である。
【0173】次に、ユーザは、図10の選択画面から、商品「カメラX」(1001)を選択した、とする。また、ユーザは、1002の登録ボタンを押下した、とする。
【0174】次に、端末受付部21は、ユーザから登録指示を受け付ける。そして、端末処理部22は、端末格納部20からユーザ識別子「A」を読み出し、当該ユーザ識別子と受け付けられた登録指示から、送信する登録指示(例えば、「登録指示 商品識別子="商品1" ユーザ識別子="A"」)を構成する。そして、端末送信部23は、構成された登録指示をサーバ装置1に送信する。
【0175】次に、サーバ装置1の登録指示受信部121は、端末装置2から登録指示を受信する。抽選対象商品登録部132は、受信された登録指示(例えば、「登録指示 商品識別子="商品1" ユーザ識別子="A"」)が有するユーザ識別子「A」に対応付けて、当該登録指示が有する抽選対象商品識別子「商品1」をユーザ登録商品情報管理表(図9参照)に蓄積する。つまり、図9のユーザ登録商品情報管理表には、「ユーザ識別子:A,抽選対象商品識別子:商品1」を有するレコードが蓄積される。
・・・
【0184】次に、ユーザAは、クレジットカード「1234000110035432」を用いて、商品識別子「商品P1」で識別される商品を「5000円」で購入した、とする。
【0185】次に、商品P1を販売する店舗装置3の店舗受付部31は、購入情報を受け付ける。購入情報は、カード識別子「1234000110035432」、商品識別子「商品P1」、購入金額「5000円」を含む。
【0186】次に、店舗送信部33は、サーバ装置1に、受け付けられた購入情報を送信する。
【0187】次に、サーバ装置1の購入情報受付部122は、購入情報を受信する。
【0188】次に、購入情報蓄積部131は、受信された購入情報を、購入情報管理表(図8)に蓄積する。なお、蓄積された購入情報は、図8の「ID=1」のレコードである。
【0189】次に、ポイント取得部136は、購入情報受付部122が受け付けた購入情報が有する購入金額「5000円」を用いて、ポイント「5000円」を取得する。なお、ここでは、ポイントと購入金額は同じである、とする。
【0190】次に、ポイント蓄積部137は、取得されたポイント「5000円」を、受信された購入情報が有するユーザ識別子「A」と対になるポイントに加算し、ユーザ情報格納部111に蓄積する。なお、ここでは、ユーザAの元のポイントが「230」であり、加算結果は「5230」である、とする。
【0191】次に、判断部133は、受信された購入情報が有するユーザ識別子「A」と対になる1以上の購入金額に関する情報「5230」が、当該ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子「商品1」で識別される抽選条件「10000円」(図7参照)を満足しない、と判断する。また、ここでは、判断部133は、抽選までに必要な条件(ここでは、「10000円-5230円=4770円」)を取得する、とする。
【0192】次に、抽選関連情報取得部139は、購入情報が有するユーザ識別子「A」と対になる抽選関連情報を、ユーザ登録商品情報格納部114から取得する。なお、抽選関連情報は、ここでは、判断部133における判断結果を用いて構成された抽選関連情報「まだ、抽選できません。現在のポイントは「5230」です。あと、4770円を購入すれば、登録商品「商品1」の抽選が可能です。」を取得する。
・・・
【0196】次に、ユーザAは、抽選したいと思い、クレジットカード「1234000110035432」を用いて、さらに、商品識別子「商品P2」で識別される商品を「8000円」で購入した、とする。
【0197】次に、商品P2を販売する店舗装置3の店舗受付部31は、購入情報を受け付ける。購入情報は、カード識別子「1234000110035432」、商品識別子「商品P2」、購入金額「8000円」を含む。
【0198】次に、店舗送信部33は、サーバ装置1に、受け付けられた購入情報を送信する。
【0199】次に、サーバ装置1の購入情報受付部122は、購入情報を受信する。
【0200】次に、購入情報蓄積部131は、受信された購入情報を、購入情報管理表(図8)に蓄積する。なお、蓄積された購入情報は、図8の「ID=2」のレコードである。
【0201】次に、ポイント取得部136は、購入情報受付部122が受け付けた購入情報が有する購入金額「8000円」を用いて、ポイント「8000」を取得する。なお、ここでは、ポイントと購入金額は同じである、とする。
【0202】次に、ポイント蓄積部137は、取得されたポイント「8000」を、受信された購入情報が有するユーザ識別子「A」と対になるポイントに加算し、ユーザ情報格納部111に蓄積する。なお、ここでは、ユーザAの元のポイントが「5230」であり、加算結果は「13230」である、とする。
【0203】次に、判断部133は、受信された購入情報が有するユーザ識別子「A」と対になる1以上の購入金額に関する情報「13230」が、当該ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子「商品1」で識別される抽選条件「10000円」(図7参照)を満足する、と判断する。
【0204】次に、抽選関連情報取得部139は、購入情報が有するユーザ識別子「A」と対になる抽選関連情報を、ユーザ登録商品情報格納部114から取得する。なお、抽選関連情報は、ここでは、判断部133における判断結果を用いて、抽選関連情報「抽選が1回可能です。また、現在のポイントは「13230」です。」を取得する。
【0205】次に、抽選関連情報送信部144は、取得された抽選関連情報「抽選が1回可能です。また、現在のポイントは「13230」です。」を、購入情報を送信してきた店舗装置3に送信する。
【0206】次に、店舗装置3の店舗受信部34は、サーバ装置1から抽選関連情報「抽選が1回可能です。また、現在のポイントは「13230」です。」を受信する。次に、店舗出力部35は、受信された抽選関連情報を出力する。
【0207】次に、店舗出力部35は、店舗受付部31が購入情報を受け付けたことに応じて、受信された抽選関連情報が印字されたレシートを印刷する。レシートの例は、図12である。
【0208】次に、ユーザAは、「商品1」の抽選指示を端末装置2に入力する。すると、端末受付部21は、ユーザから抽選指示を受け付ける。
【0209】次に、端末処理部22は、端末格納部20からユーザ識別子「A」を読み出し、当該ユーザ識別子と受け付けられた抽選指示から、送信する抽選指示(例えば、「抽選指示 商品識別子="商品1",ユーザ識別子="A"」)を構成する。そして、端末送信部23は、当該抽選指示をサーバ装置1に送信する。
【0210】次に、サーバ装置1の抽選指示受信部124は、抽選指示「抽選指示 商品識別子="商品1",ユーザ識別子="A"」を端末装置2から受信する。
【0211】次に、抽選処理部134は、抽選指示「抽選指示 商品識別子="商品1",ユーザ識別子="A"」に対応する商品の抽選を実施する。そして、抽選処理部134は、抽選の結果(ここでは、例えば、「当選」)を構成する。そして、送信部14は、抽選結果「当選」を端末装置2に送信する。
【0212】また、選択画面送信部143は、抽選結果が「当選」であると判断し、選択画面送信部143は、選択画面(例えば、図10)を構成し、端末装置2に当該選択画面を送信する。
【0213】次に、端末受信部24は、サーバ装置1から選択画面を受信する。そして、端末出力部25は、受信された選択画面を出力する。」

以上によれば、甲第1号証には、次の発明(引用発明1)が記載されている。

(引用発明1)
端末装置、クレジットカード会社のサーバ装置、ECサイトのサーバ装置等から、複数のユーザの購入情報(商品の購入に関する情報であり、購入金額およびユーザ識別子を有する)を受け付ける購入情報受付部122と、
受信された購入情報が有するユーザ識別子と対になる購入金額に関する情報が、当該ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子で識別される抽選条件を満足する、と判断する判断部133と、この判断結果を用いて抽選が可能である旨の抽選関連情報が店舗に送信されてレシートに印刷されることとなり、
端末装置2から抽選指示を受信する抽選指示受信部124と、
商品識別子とユーザ識別子を含む抽選指示に対応する商品の抽選を実施し、端末装置にユーザが商品をもらうことができたり、商品を格安で購入できたり等、商品に関する特典を得ることができる情報である「当選」などの抽選の結果を構成する抽選処理部134と、
を備えるサーバ装置1。

(2)甲第2号証
「【0012】・・・本願明細書に記載の方法及びシステムは、ベッティング・セッションの終了時にある金額レベルに到達している1以上の指標等の、金融マーケット内に発生するイベントへの賭けに関する例示でありうるが、本願の方法及びシステムは、例えば、スポーツ・イベント、競馬又はドッグ・レース、カジノ・ゲーム、くじ、その他、これらに限定しないもの等の、金融マーケットとは関連のない他のイベントへのベットにも同等に適用可能であることを理解されたい。・・・」

なお、甲第2号証のファミリー文献であり重複する内容を引用する甲第3号証及び甲第6号証についての摘記は省略する。

(3)甲第4号証
「【0009】・・・可能なゲーム活動は、カジノによって提供されるものなどの、ギャンブルを含む。ギャンブル活動は、以下に限定されないが、スロットマシン、ビデオポーカー、テーブルゲーム(例えば、クラップス、ルーレット、ブラックジャック、パイゴウポーカー(pai gow poker)、カリブスタッドポーカー(Caribbean stud poker)、バカラなど)、ホイールオブフォーチュン(wheel of fortune)ゲーム、キノ、スポーツくじ、競馬、ドッグレース、ハイアライなどのカジノタイプの任意のギャンブル活動、およびその他のギャンブル活動を含んでもよい。ゲーム活動は、さらに、任意のタイプのイベントについて賭けをすることを含んでもよい。」

なお、甲第4号証のファミリー文献であって重複する内容を引用する甲第5号証についての摘記は省略する。

(5)甲第7号証
「【0002】サッカーは古くからくじや賭けの対象とされ、イタリアではトトカルチョ、イギリスではフットボールプール、スペインではキニエラと称され、広く一般に馴染まれている。また最近ではわが国でもスポーツ振興クジ(toto)としてサッカーくじが普及しつつある。」

(6)甲第8号証
「スポーツ振興くじ(スポーツしんこうくじ)は、サッカーの指定された試合の結果あるいは各チームの得点数を予想して投票し、的中すると当然金を受けることができる公営ギャンブル。」

(7)甲第9号証
「【0002】このような懸賞によって提供される金品は、景品表示法上の景品とみなされ、その限度額に厳しい規制がある。」

(8)甲第10号証
「【0002】従来、懸賞では、予め景品総額、景品の単価及び当選人数などが定められている。また、これらを定めるにあたっては景品表示法が遵守されることが一般的である。景品表示法によると、景品総額の上限が売上総額に応じて決定されるようになっている。」

(9)甲第19号証-1、甲第19号証-2
景品表示法の規定する内容を示すものである。

(10)甲第20号証
「抽選」が「くじをひくこと。くじびき。」を意味する旨を示すものである。

2 請求項1に係る発明について
(1)対比
ア 「複数の消費者の支払い関連情報を取得する情報取得部」
引用発明1の「購入」は商品等の購入であって支払いを含むから、本件発明の「支払い」に相当し、これを行う主体である引用発明1の「ユーザ」は、本件発明の「消費者」に相当する。そして、引用発明1の「購入情報受付部」は、消費者の支払いに関連する情報である購入金額を含む情報を受け付けて取得するから、本件発明の「情報取得部」に相当する。

イ 「情報取得部が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額に基づいて、複数の前記消費者のいずれか一人以上にベット権を設定するベット権設定部」
引用発明1の「受信された購入情報が有するユーザ識別子と対になる購入金額に関する情報」は、本件発明の「情報取得部が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額」に相当する。

本件発明の「ベット権」は、「賞金」を受領する権利の獲得に向けたものであるところ、引用発明1の判断部は、この「支払い相当額」がユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子で識別される抽選条件を満足することによって抽選が可能である旨の判断を行うものであって、その判断結果によって「ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子」が示す商品の「抽選権」を設定するものの、「賞金」を受領する権利の獲得に向けた「ベット権」を設定するものでない。
もっとも、本件発明の「ベット権」の設定と引用発明1の「抽選権」の設定とは、いずれも権利の設定であるとはいえるから、本件発明と引用発明1とは、設定される権利が異なる(相違点1)ものの、いずれも、情報取得部が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額に基づいて複数の消費者のいずれか一人以上に権利を設定する設定部を備える点において共通するといえる。

ウ 「 前記消費者が前記ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付部」、「前記支払い相当額の合計値に基づいて、賞金の合計値の上限値を算出し、該支払い相当額の個別値に基づいて、前記ベットを行った前記消費者ごとに該ベットが当たった場合に支払われる賞金の個別値の上限値を算出し、算出した該賞金の合計値の上限値及び該賞金の個別値の上限値に基づいて、前記消費者ごとの前記賞金を設定する賞金設定部」、「当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定部が設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与部」
これらの構成は、「賞金」を受領する権利の獲得に向けた「ベット権」を前提とするものであるところ、引用発明1は、ユーザが欲しい商品を適切に入手できるとともに消費を促進できるようにするために、「ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子」が示す「商品」の「抽選」を行うものであるから、「賞金」やこれを受領する権利の獲得に向けた「ベット権」を前提とするものではない。
よって、これらの構成は、いずれも相違点(相違点2)である。

エ「を備える・・・サーバ装置」
引用発明1の「サーバ装置1」は、以上に示した相違点を除いて、本件発明の「サーバ装置」に相当するといえる。

オ してみると、本件発明と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

<一致点>
複数の消費者の支払い関連情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額に基づいて、複数の前記消費者のいずれか一人以上に権利を設定する設定部と、
を備えるサーバ装置。

<相違点>
(相違点1)
本件発明では、「賞金」を受領する権利の獲得に向けた「ベット権」を設定するのに対し、引用発明1では、「賞金」を受領する権利の獲得に向けた「ベット権」でなく「ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子」が示す商品の「抽選権」を設定する点。

(相違点2)
本件発明は、「前記消費者が前記ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付部」、「前記支払い相当額の合計値に基づいて、賞金の合計値の上限値を算出し、該支払い相当額の個別値に基づいて、前記ベットを行った前記消費者ごとに該ベットが当たった場合に支払われる賞金の個別値の上限値を算出し、算出した該賞金の合計値の上限値及び該賞金の個別値の上限値に基づいて、前記消費者ごとの前記賞金を設定する賞金設定部」、「当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定部が設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与部」を備えるのに対し、引用発明1は、これらを備えていない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
引用発明1は、ユーザが欲しい商品を適切に入手できるとともに消費を促進できるようにするために、「ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子」が示す「商品」の「抽選」を行うものであり、いうなれば、ユーザに「ユーザが欲しい商品」を入手する機会を与えることを通じて消費を促進しようとするものである。そして、引用発明1の「ユーザが欲しい商品」である「ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子」が示す「商品」の「抽選」を「賞金」を獲得するための「ベット」とする変更を行うと、「ユーザが欲しい商品」を入手する機会が失われ、引用発明1の課題が解決できなくなるから、このような変更が動機付けられるとはいえず、むしろ阻害されるというべきである。
よって、相違点1は、容易想到でない。

イ 相違点2に係る本件発明の各構成は、相違点1に係る設定される「権利」が「賞金」に対する「ベット権」であることを前提とするものである。そして、アで示したとおり、相違点1は容易想到でないから、相違点2も容易想到でない。

(3)特許異議申立人の主張について
いずれの主張も、理由がない。
ア 特許異議申立人は、引用発明について、「抽選」に係る「商品」について、「ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子」が示すものである旨を捨象し、上位概念化して認定している。
しかし、引用発明1は、ユーザが欲しい商品を適切に入手できるとともに消費を促進できるようにするために「ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子」が示す「商品」の「抽選」を行うものであるから、「抽選」に係る商品はユーザが欲しい商品として予め登録されている必要があり、引用発明1の認定に際してこのような上位概念化を行うことはできないといわざるを得ない。

イ 特許異議申立人は、「前記消費者が前記ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付部」及び「当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定部が設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与部」は一致点であるとしている。
しかし、引用発明1は、ユーザが欲しい商品を適切に入手できるとともに消費を促進できるようにするために、「ユーザ識別子と対になる抽選対象商品識別子」が示す「商品」の「抽選」を行うものであるから、「ベット」及び「ベット権」を前提とするものでなく、本件発明においてこれを前提とした構成については、全て相違点となる。

ウ 特許異議申立人は、甲第2号証乃至甲第7号証を引用して「ベット」と「抽選」に大差がないと主張している。
しかし、「ベット」と「抽選」というそれぞれの文言が示す意義に重複する部分がありその意義に大差がないとしても、(2)において上述したように、ユーザに「ユーザが欲しい商品」を入手する機会を与えることを通じて消費を促進しようとする引用発明1の「抽選権」を、本件発明のような「賞金」を受領する権利の獲得に向けた「ベット権」へと変更することは、「ユーザが欲しい商品」を入手する機会が失われて引用発明1の課題が解決できなくなる変更であって、このような変更が動機付けられるとはいえず、むしろ阻害されるというべきである。

3 請求項2、3、5、6、10に係る発明について
請求項2、3、5、6、10に係る発明は、請求項1の従属項であり、請求項1に係る発明に対して、さらに技術的事項を追加して限定したものである。よって、上記2に示した理由と同様の理由により、請求項2、3、5、6、10に係る発明は、引用発明1に基いて当業者が容易になし得るものではない。

4 請求項13に係る発明について
請求項13に係る発明は、請求項1に係る発明に対して、さらに技術的事項を追加して限定したものに対応しており、2(2)において上述した相違点を全て含むものである。よって、上記2に示した理由と同様の理由により、請求項13に係る発明は、引用発明1に基いて当業者が容易になし得るものではない。

5 請求項14、15に係る発明について
請求項14及び15に係る発明は、それぞれ、請求項1に係る発明に対応する方法発明及びプログラム発明であり、2(2)において上述した相違点に対応する内容を全て含むものである。よって、上記2に示した理由と同様の理由により、請求項14及び15に係る発明は、引用発明1に基いて当業者が容易になし得るものではない。

6 小括
以上のとおり、請求項1、2、3、5、6、10、13、14及び15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたとはいえないから、申立理由1は、理由がない。

第5 申立理由2について
1 甲号証の記載等
(1)甲第11号証
(URL:https://granbluefantasy.jp/index.php(甲第11号証-1)
https://granbluefantasy.jp/pages/?m=201403(甲第11号証-2))
「2014-03-10 ニュース 正式サービス開始しました」

(2)甲第15号証(URL:https://granbluefantasy.jp/pages/?p=15169)
「SSレアの装備が必ず1回以上出現する「スターレジェンド10連ガチャ」を3,000モバコイン、3,000グラブルコイン、3,000GREEコイン、または3,000DMMポイントで購入することができます。」

(3)甲第12号証(URL:http://granblue.tokyo/1538)
「ノースランド、ウェストランド、イーストランド、サウスランドの4つに分かれていて、そのランドのどこが勝つかを予想します。その予想が当たりますと、宝晶石をもらうことができます。
・・・
この予想するときに賭けるのがベッティングカードです。
・・・
ベッティングカードの入手方法
そのベッティングカードをどうやって手に入れればいいか?ですが、色々と入手する方法があります。
・・・
戦貨ガチャを引くこともできますし、報酬の中にもベッティングカードがあります。
あとはレジェンド10連ガチャですね。
古戦場中は、10連ガチャ1回につき、ベッティングカード5枚手に入ります。」

(4)甲第13号証(URL:https://meidyrouge.com/list-of-articles/bookmaker/card/rou)
「カードの入手経路です。
これから意識的にベッティングカードを集めたい方へ。
○1(丸数字の1) 戦貨ガチャ(3箱目まで)で計3枚
・・・
○3(丸数字の3) 古戦場中ガチャ10連毎に5枚」

(5)甲第14号証(URL:https://gran-matome.com/archives/33940)
「スターレジェンド10連ガチャ
・・・
セット内容
・・・
【ベッティングカード】5枚のセット
・・・」

(6)甲第16号証(URL:http://課金方法.xyz/rpg/89/)
「グラブルコイン」が有償である旨を示すものである。

(7)甲第17号証(URL:http://yahoo-mbga.jp/help/content?no=61&id=83&pid=1271)
「モバコイン」が有償である旨を示すものである。

(8)甲第18-1号証、甲第18-2号証、甲第18-3号証
ゲームの提供を複数のサーバによって行うことが周知である旨を示すものである。

(9)甲第9号証、甲第10号証
「第4」の「1」に示したとおりである。

2 「グランブルー・ファンタジー」なるゲームを提供するサーバ装置に係る公然実施発明について
(1)出願前公然実施について
甲第11号証(甲第11号証-1及び甲第11号証-2)及び甲第15号証は、そのURL中に「https://granbluefantasy.jp/」を含み、これを含むURLで示されるサーバ装置(以下、「グラブル用サーバ」という。)において提供されるホームページに示された一連の内容であるといえる。
そして、甲第11号証-2においては、「https://granbluefantasy.jp/pages/?m=201403」のURLが示す「NEWS」のタイトル一覧の一部において「2014-03-10 ニュース 正式サービス開始しました」と記載されている。また、甲第15号証においては、「https://granbluefantasy.jp/pages/?p=15169」のURLが示す「NEWS」記事において、「2017-11-11 13:00」及び「11月11日(土)19:00より期間限定で「スターレジェンド10連ガチャ」を開催いたします。」と記載されている。
サービスを提供するサーバにおける「NEWS」の内容は、そのサーバが過去にどのようなサービスをいつ行ったかを示すものであって、過去に遡って変更されない蓋然性が高いこと等も踏まえると、このサーバ装置において、本願出願前である2014年3月10日に正式サービスが開始され、2017年11月頃に、甲第15号証の内容を含むサービスが提供されていたことが推認できる。
なお、甲第12号証、甲第13号証、甲第14号証、甲第16号証、甲第17号証は、そのURL中に「https://granbluefantasy.jp/」を含んでおらず、グラブル用サーバにおいて提供されるホームページに示された一連の内容を示すものではないことが明らかであるものの、事案に鑑み、甲第11号証又は甲第15号証に示された事項を前提とした補足説明を行うものであるという観点から、公然実施発明の認定のための資料として扱う。

(2)公然実施発明(引用発明2)の内容について
甲第15号証によれば、2017年11月11日19:00から同月17日18:59までの期間、グラブル用サーバにおいて、有償で、「スターレジェンド10連ガチャ」の購入を可能とするサービスが提供されたことが認められる。
また、甲第12号証、甲第13号証、甲第14号証によれば、この「スターレジェンド10連ガチャ」は、これをグラブル用サーバにおけるサービスの提供を受けるプレイヤが実行する毎に5枚の「ベッティングカード」がプレイヤに付与されるものであって、また、この「ベッティングカード」による「ベット」は、プレイヤによる「4つの「ランド」の中のいずれが勝つかの予想」であって、この予想が当たることによってプレイヤに「宝晶石」が付与されるものであることが認められる。
これらを踏まえると、グラブル用サーバに係る、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が本件特許の出願前に公然実施されていたものである。

(引用発明2)
プレイヤが、有償の「スターレジェンド10連ガチャ」を実行した、という情報をプレイヤ端末から受信する「ガチャ実行情報受信部」と、
プレイヤが古戦場中で「スターレジェンド10連ガチャ」を実行する毎に5枚のベッティングカードを付与する「ベッティングカード付与部」と、
ベッティングカードを付与されたプレイヤから、4つの「ランド」の中のいずれが勝つかの予想を受け付ける「予想受付部」と、予想が当たったプレイヤに宝晶石を付与する「宝晶石付与部」と、を有するグラブル用サーバ。

2 請求項1に係る発明について
(1)対比
ア 「複数の消費者の支払い関連情報を取得する情報取得部」及び「情報取得部が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額に基づいて、複数の前記消費者のいずれか一人以上にベット権を設定するベット権設定部」
引用発明2の「ベッティングカード」の「付与」は、本件発明の「ベット権」の設定に相当するといえる。

引用発明2における、古戦場中での「スターレジェンド10連ガチャ」の実行毎に5枚のベッティングカードが付与されることを踏まえてプレイヤが「スターレジェンド10連ガチャ」を購入するという「ベッティングカード」に係るサービスは、グラブル用サーバが提供する「スターレジェンド10連ガチャ」に関する有償のサービスの一部であって、そこで購入される「スターレジェンド10連ガチャ」の対価には、5枚のベッティングカードに相当する「ベット権」の対価が含まれる。これに対して、本件発明の「支払い」は、「一般的な商品又はサービス」に対してのものであって「競馬における馬券購入のような賭金そのもの」に対しての支払いは排除されている(本件明細書段落【0028】)。
これらを踏まえれば、引用発明2の「スターレジェンド10連ガチャ」の対価の支払いは、本件発明の「支払い」に相当するものではなく、引用発明2における受信して取得される情報である「有償の「スターレジェンド10連ガチャ」を実行した、という情報」は、本件発明の「支払い」とは異なるものであり(相違点1)、さらには、引用発明2の「プレイヤ」は、本件発明の「支払い」を行う「消費者」とは異なるものである(相違点2)。

イ 「 前記消費者が前記ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付部」
引用発明2の「予想」の「受け付け」は、本件発明の「ベット」に相当するといえる。
そして、引用発明2は、ベットするのが「消費者」ではなく「プレイヤ」である(相違点2)ものの、「ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付部」を備える点で、本件発明と共通している。

ウ 「前記支払い相当額の合計値に基づいて、賞金の合計値の上限値を算出し、該支払い相当額の個別値に基づいて、前記ベットを行った前記消費者ごとに該ベットが当たった場合に支払われる賞金の個別値の上限値を算出し、算出した該賞金の合計値の上限値及び該賞金の個別値の上限値に基づいて、前記消費者ごとの前記賞金を設定する賞金設定部」、「当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定部が設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与部」
引用発明2において、ベットに係る予想が当たった場合に当たられるものは、「宝晶石」であって、これが「賞金を受領する権利」である本件発明と異なるから、これらの構成については、いずれも相違点(相違点3)となる。

エ「を備える・・サーバ装置」
引用発明2の「グラブル用サーバ」は、以上に示した相違点を除いて、本件発明の「サーバ装置」に相当するといえる。

オ してみると、両者は、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
情報を取得する取得部と、
取得部が取得した情報に基づいて複数の者のいずれか一人以上にベット権を設定するベット権設定部と、
ベット権に基づいてベットしたベット情報を受け付けるベット情報受付部
を備えるサーバ装置。

<相違点>
(相違点1)
本件発明は、「複数の消費者の支払い関連情報」を取得して「情報取得部が取得した支払い関連情報が示す支払い相当額」に基づいてベット権を設定するのに対し、引用発明2は、「有償の「スターレジェンド10連ガチャ」を実行した、という情報」を取得してこれに基づいてベット権を設定する点。

(相違点2)
「ベット権」が設定され「ベット」するのが、本件発明では、「消費者」であるのに対し、引用発明2では、「プレイヤ」である点。

(相違点3)本件発明では、「前記支払い相当額の合計値に基づいて、賞金の合計値の上限値を算出し、該支払い相当額の個別値に基づいて、前記ベットを行った前記消費者ごとに該ベットが当たった場合に支払われる賞金の個別値の上限値を算出し、算出した該賞金の合計値の上限値及び該賞金の個別値の上限値に基づいて、前記消費者ごとの前記賞金を設定する賞金設定部」及び「当たりが確定した前記ベットを行った前記消費者に対して、前記賞金設定部が設定した前記賞金を受領する権利を与える受領権付与部」を備えるのに対し、引用発明2では、予想が当たったプレイヤに宝晶石を付与する宝晶石付与部を備える点。

(2)相違点の判断
相違点1及び相違点2は、関連する相違点であるので、まとめて検討する。
引用発明2は、「グランブルー・ファンタジー」なるゲームを提供するサーバ装置(グラブル用サーバ)であり、そのプレイヤにエンタメ性と射幸性を付与するものであって、「一般的な商品又はサービスに対する支払い」を行う「消費者」の活動を活発化しようとするものでないから、「ベット権」が設定され「ベット」する者をプレイヤでなく消費者としたり、「消費者の支払い関連情報」が示す「支払い相当額」に基づいて消費者にベット権を付与することが動機付けられることはなく、むしろ阻害されるものである。
そうすると、相違点3について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明2に基づいて容易想到であるといえない。

(3)特許異議申立人の主張について
いずれの主張も、理由がない。
公然実施発明の認定について
特許異議申立人は、甲第12号証、甲第13号証、甲第14号証を提示して「戦貨ガチャ」に係る内容が公然実施発明に含まれるとしている。
しかし、「戦貨ガチャ」に係る内容は、甲第11号証又は甲第15号証に示された事項を前提とした補足説明でないから、これを公然実施発明に含めるのは適切でない。
なお、仮に「ベッティングカード」が「戦貨ガチャ」によって獲得できるものであるとしても、古戦場中での「スターレジェンド10連ガチャ」の実行毎に5枚のベッティングカードが付与されることを踏まえて購入される「スターレジェンド10連ガチャ」の対価にこの5枚のベッティングカードに相当する「ベット権」に対する対価が含まれないとはいえないから、この点は、(1)で示した対比の論旨に関係しない。

イ 対比について
特許異議申立人は、(1)相違点1及び相違点2が一致点であるしている。
しかし、(1)で上述したとおり、これらは、相違点である。

3 請求項2、3、5、6、10に係る発明について
請求項2、3、5、6、10に係る発明は、請求項1の従属項であり、請求項1に係る発明に対して、さらに技術的事項を追加して限定したものである。よって、上記2に示した理由と同様の理由により、請求項2、3、5、6、10に係る発明は、引用発明2に基いて当業者が容易になし得るものではない。

4 請求項13に係る発明について
請求項13に係る発明は、請求項1に係る発明に対して、さらに技術的事項を追加して限定したものに対応しており、2(2)において上述した相違点を全て含むものである。よって、上記2に示した理由と同様の理由により、請求項13に係る発明は、引用発明2に基いて当業者が容易になし得るものではない。

5 請求項14、15に係る発明について
請求項14及び15に係る発明は、それぞれ、請求項1に係る発明に対応する方法発明及びプログラム発明であり、2(2)において上述した相違点に対応する内容を全て含むものである。よって、上記2に示した理由と同様の理由により、請求項14及び15に係る発明は、引用発明2に基いて当業者が容易になし得るものではない。

6 小括
以上のとおり、請求項1、2、3、5、6、10、13、14及び15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたとはいえないから、申立理由2も、理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、申立理由1と申立理由2のいずれも理由がなく、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、1、2、3、5、6、10,13、14及び15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に1、2、3、5、6、10,13、14及び15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-03-04 
出願番号 特願2017-253682(P2017-253682)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邉 加寿磨  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 相崎 裕恒
宮久保 博幸
登録日 2018-06-01 
登録番号 特許第6346708号(P6346708)
権利者 株式会社チアード
発明の名称 サーバ装置、遊興提供システム、遊興提供方法及びプログラム  
代理人 IPTech特許業務法人  

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