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審決分類 |
審判 訂正 2項進歩性 訂正する G07G 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する G07G 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G07G 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G07G 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する G07G 審判 訂正 1項3号刊行物記載 訂正する G07G |
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管理番号 | 1349869 |
審判番号 | 訂正2018-390117 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2018-08-15 |
確定日 | 2019-02-15 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6094709号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6094709号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6094709号は、平成24年8月20日(優先権主張 平成24年1月25日,平成24年4月27日)に出願された特願2012-181734号(以下「原出願」という。)の一部を、平成27年7月23日に新たな出願とした特願2015-146035号の一部を、同年10月19日に新たな出願とした特願2015-205836号の一部を、平成28年3月23日に新たな出願とした特願2016-58594号の一部を、同年6月8日に新たな出願とした特願2016-114889号に係るものであって、その請求項1?14に係る発明について、平成29年2月24日に特許権の設定登録がされたものであって、その後の経緯は以下のとおりである。 平成30年8月15日 訂正2018-390117号 (以下「本件訂正審判」という。)の請求 8月29日付け 手続補正指令(方式) 9月28日 手続補正書(方式)の提出 11月 7日付け 訂正拒絶理由の通知 12月 7日 意見書の提出 第2 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6094709号の特許請求の範囲を、本件審判請求書(平成30年9月28日付け手続補正書(方式)により補正されている。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであり、請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許権全体について訂正をするものであって、本件審判請求書の訂正事項1?6に示されるとおり、請求項1(及び請求項1の記載を引用する請求項3?8)、請求項2(及び請求項2の記載を引用する請求項3?8)、請求項9(及び請求項9の記載を引用する請求項10、11)、請求項12?14に対して、商品の登録について「店員」が行うことを特定するものである。 そして、本件訂正の内容は、以下のとおりである。(下線部分は訂正箇所であり、請求人が訂正特許請求の範囲において示したとおりである。) (訂正前) 「【請求項1】 顧客の購入対象の商品を登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおいて、 前記登録装置は、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とするPOSシステム。 【請求項2】 顧客の購入対象の商品を登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置と、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置とを有するPOSシステムにおいて、 前記登録装置は、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とするPOSシステム。 【請求項3】 前記表示手段は、 前記空き状態の精算装置のボタンを、点滅、または、他のボタンと表示色を異ならせる、または、網掛けで表示する、のいずれかで強調させて表示する ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPOSシステム。 【請求項4】 前記登録装置は、 前記選択された精算装置で前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する送信手段、を備え、 前記精算装置は、 前記登録データを受信する受信手段と、 点滅または点灯することにより報知を行う所定のランプと、を備え、 前記登録データを受信すると前記所定のランプを点滅または点灯させる ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項5】 前記精算装置は、 前記受信した登録データに基づいて代金を決済するための、少なくとも現金またはクレジットカードの何れかを選択する決済方法を表示部に表示させる表示手段、 を備えることを特徴とする請求項4に記載のPOSシステム。 【請求項6】 前記精算装置は、 前記登録データに基づく精算処理を保留する保留手段、 を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項7】 前記登録装置は、 前記登録データに基づく精算処理を保留、または未精算の登録データを保留にする保留手段、 を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項8】 前記登録装置、または、前記精算装置は、 1次元コードあるいは2次元コードを読み取る読取手段を更に備え、 保留にされた登録データを呼出し可能な1次元コードあるいは2次元コードが印刷された保留レシートが前記読取手段によって読み取られると、保留にされた登録データを呼出す ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項9】 顧客の購入対象の商品を登録する登録装置と、前記登録された商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおける前記登録装置であって、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とする登録装置。 【請求項10】 前記登録データに基づく精算処理を保留、または未精算の登録データを保留にする保留手段、 を備えることを特徴とする請求項9に記載の登録装置。 【請求項11】 1次元コードあるいは2次元コードを読み取る読取手段を更に備え、 保留にされた登録データを呼出し可能な1次元コードあるいは2次元コードが印刷された保留レシートが前記読取手段によって読み取られると、保留にされた登録データを呼出す ことを特徴とする請求項9に記載の登録装置。 【請求項12】 顧客の購入対象の商品を登録する登録装置として第1コンピュータを機能させ、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置として第2コンピュータを機能させPOSシステムのプログラムであって、 前記第1コンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。 【請求項13】 顧客の購入対象の商品を登録する登録装置として第1コンピュータを機能させ、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置として第2コンピュータを機能させ、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置として第3コンピュータを機能させる、POSシステムのプログラムであって、 前記第1コンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。 【請求項14】 顧客の購入対象の商品を登録する登録装置と、前記登録された商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおける前記登録装置としてのコンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。」 (訂正後) 「【請求項1】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおいて、 前記登録装置は、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とするPOSシステム。 【請求項2】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置と、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置とを有するPOSシステムにおいて、 前記登録装置は、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とするPOSシステム。 【請求項3】 前記表示手段は、 前記空き状態の精算装置のボタンを、点滅、または、他のボタンと表示色を異ならせる、または、網掛けで表示する、のいずれかで強調させて表示する ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPOSシステム。 【請求項4】 前記登録装置は、 前記選択された精算装置で前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する送信手段、を備え、 前記精算装置は、 前記登録データを受信する受信手段と、 点滅または点灯することにより報知を行う所定のランプと、を備え、 前記登録データを受信すると前記所定のランプを点滅または点灯させる ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項5】 前記精算装置は、 前記受信した登録データに基づいて代金を決済するための、少なくとも現金またはクレジットカードの何れかを選択する決済方法を表示部に表示させる表示手段、 を備えることを特徴とする請求項4に記載のPOSシステム。 【請求項6】 前記精算装置は、 前記登録データに基づく精算処理を保留する保留手段、 を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項7】 前記登録装置は、 前記登録データに基づく精算処理を保留、または未精算の登録データを保留にする保留手段、 を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項8】 前記登録装置、または、前記精算装置は、 1次元コードあるいは2次元コードを読み取る読取手段を更に備え、 保留にされた登録データを呼出し可能な1次元コードあるいは2次元コードが印刷された保留レシートが前記読取手段によって読み取られると、保留にされた登録データを呼出す ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項9】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記登録された商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおける前記登録装置であって、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とする登録装置。 【請求項10】 前記登録データに基づく精算処理を保留、または未精算の登録データを保留にする保留手段、 を備えることを特徴とする請求項9に記載の登録装置。 【請求項11】 1次元コードあるいは2次元コードを読み取る読取手段を更に備え、 保留にされた登録データを呼出し可能な1次元コードあるいは2次元コードが印刷された保留レシートが前記読取手段によって読み取られると、保留にされた登録データを呼出す ことを特徴とする請求項9に記載の登録装置。 【請求項12】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置として第1コンピュータを機能させ、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置として第2コンピュータを機能させPOSシステムのプログラムであって、 前記第1コンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。 【請求項13】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置として第1コンピュータを機能させ、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置として第2コンピュータを機能させ、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置として第3コンピュータを機能させる、POSシステムのプログラムであって、 前記第1コンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。 【請求項14】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記登録された商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおける前記登録装置としてのコンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。」 第3 当審の判断 1 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について 本件訂正は、訂正前の請求項1、2、9、12?14において、顧客の購入対象の商品を登録する主体の特定がなかったのを、「店員」が登録することを特定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 よって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 また、願書に添付した明細書の段落【0036】には、「登録用POSレジスタ20は、顧客が購入しようとする商品のデータを登録する処理を行う。データの登録は、例えば、商品に付されているバーコードを読み取ることで行う。そのため、登録用POSレジスタ20には、例えば、顧客が購入する商品に付されたバーコード(商品コード)を店員の操作により読み取るスキャナが設けられている。」との記載があり、商品の登録について、店員が行うことが開示されているといえる。 したがって、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。 また、本件訂正は、発明特定事項における直列的要素の削除若しくは択一的記載の要素の追加又は発明特定事項の上位概念への変更ではなく、発明のカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 よって、本件訂正は、特許法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。 2 独立特許要件について (1)訂正後の発明 訂正後の請求項1?14に係る発明は、上記「第2」の「(訂正後)」のとおりのものである(以下「本件訂正発明1」?「本件訂正発明14」という。)。 (2)特許無効の抗弁 本件特許に関し、東京地方裁判所において侵害訴訟事件(平成29年(ワ)第37545号)が係属中であるところ、特許法第168条第5項に基づき、裁判所より、特許無効の抗弁がなされた旨の通知があった。 本件特許に係る特許無効の抗弁の理由とは、以下のものである。 無効理由3:請求項1、14 特許法第29条第2項違反 (乙第2、3、9?16号証) 無効理由4:請求項1、14 特許法第29条第2項違反 (乙第3、8?16号証) 乙第2号証;特開平7-320164号公報 乙第3号証;特開平5-233963号公報 乙第8号証;特開平2-184995号公報 乙第9号証;特開平2-98797号公報 乙第10号証;特開2000-194759号公報 乙第11号証;特開2000-194943号公報 乙第12号証;特開2003-6300号公報 乙第13号証;特開2004-46422号公報 乙第14号証;特開2001-243159号公報 乙第15号証;特開2002-189546号公報 乙第16号証;特開2004-194110号公報 また、上記侵害訴訟事件における特許第6048609号の特許無効の抗弁の証拠の一部として次の文献が提出されている。 乙第4号証;特開2011-253234号公報 乙第5号証;特開2012-3561号公報 (3)独立特許要件の当審の判断 ア 訂正拒絶理由通知の概要 平成30年11月7日付けの訂正拒絶理由通知の概要は次のとおりである。 「本件訂正発明1?5、9、12?14は、引用文献1(特開平5-233963号公報;乙第3号証)に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件訂正発明1?5、9、12?14は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものではない。 よって、本件訂正は認められない。」 以下、平成30年12月7日付けの意見書における主張も踏まえて検討する。 イ 引用文献1の記載事項等 (ア)記載事項 原出願の優先日前に頒布された引用文献1には以下の記載がある。なお、下線は当審で付加した。 a 「【請求項1】顧客が購入した商品を特定する情報およびその価格を少なくとも登録して取引明細データを生成する1または2以上のチェッカ装置と、上記生成される取引明細データに基づいて購入商品の精算処理を行なう2以上のキャッシャ装置と、チェッカ装置およびキャッシャ装置に対する通信、ならびに、チェッカ装置およびキャッシャ装置の動作状態の管理を少なくとも行なう管理装置とを備え、 チェッカ装置は、登録した取引について、精算処理を行なうべきキャッシャ装置を指定する手段と、少なくとも管理装置との通信を行なう手段とを有し、 管理装置は、上記取引明細データおよびキャッシャ装置を指定する情報を、チェッカ装置から受信して、このキャッシャ装置を指定する情報に基づいて、指定されたキャッシャ装置に転送する手段を備えることを特徴とする商品販売システム。」 b 「【0002】 【従来の技術】近年、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店等の小売業では、売上げの集計、販売情報の取得等を迅速かつ効率的に行なうため、POSシステムが採用されている。 ・・・ 【0004】これに対し、従来、1台のPOS端末を2人(チェッカ、キャッシャ)で操作する方法がある。このように、POS端末を2人制に設定すれば、1人(チェッカ)がチェッカ部で商品登録処理を行い、もう1人(キャッシャ)が支払登録処理を行うことができる。したがって、チェッカ部では合計キ-押下後(該当顧客の商品登録終了後)、次の顧客の商品登録が続けて行えるため、販売処理の時間が短縮できる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところで、商品の登録処理と支払登録処理とは、その作業内容がまったく異なるため、商品登録処理に要する時間と支払登録処理に要する時間とが一般的に一致しない。つまり、商品登録時間は、商品数により大きく変化し、支払登録時間は、支払方法(現金、カ-ド等)等により異なり、両者は一致しないことが多い。 【0006】しかし、上記従来技術では、商品登録処理と支払登録処理とが同一のPOS端末で連続して行われるため、商品登録時間と支払登録時間とが一致しないことにより、商品販売がスム-ズに行かないという問題がある。すなわち、チェッカ部とキャッシャ部との間に支払待ちの顧客がたまったり、逆に、キャッシャが暇だったりして、精算効率が悪くなると共に、顧客も待ち時間が多くなるという問題が発生する。」 c 「【0035】本POSシステムは、チェッカ装置1と、キャッシャ装置2と、POSコントロ-ラ3と、ストアプロセッサ4とを有する。ストアプロセッサ4およびPOSコントロ-ラ3に、1台もしくは複数台のチェッカ装置1と、1台もしくは複数台のキャッシャ装置2とが通信回線9を介して接続されている。 【0036】チェッカ装置1とキャッシャ装置2とは、配置について、1体1、1対多、多対1、多対多等のように、種々の対応関係とすることができる。例えば、図58(A)に示すように、1台のチェッカ装置1に2台のキャッシャ装置2、同図(B)に示すように、2台のチェッカ装置1に1台のキャッシャ装置2、同図(C)に示すように、2台のチェッカ装置1に2台のキャッシャ装置2、等の配置ができる。ここで、キャッシャ装置2を複数台用いる場合、それらを現金専用、カード専用、共用等に使い分けるようにしてもよい。 【0037】なお、チェッカ装置1とキャッシャ装置2とを通信回線で接続して、外見的には1台のPOS端末装置5として用いることもできる。 【0038】POSコントロ-ラ3は、チェッカ装置1で読み取った商品のバ-コ-ドに対応する商品名や値段等を記憶するPLU(プライス ルック アップ)ファイル6を持ち、かつ、図示していないが、該ファイル6の検索処理を行なうための処理装置および通信装置を有する。 【0039】また、ストアプロセッサ4は、本システムにおける管理装置として機能し、顧客の与信情報を記憶する顧客与信ファイル7と、カ-ドでの取引を記憶するカ-ド取引ファイル8とを持つ。このストアプロセッサ4は、例えば、ワークステーション等により構成され、図62に示すように、中央処理装置(CPU)43と、メインメモリ44と、ディスクメモリ45と、通信制御装置46と、入力部41と、表示部42とを備える。入力部41は、例えば、キーボード、マウス等の入力機器を有する。表示部42は、例えば、CRT等のディスプレイ装置を有する。また、上記各ファイル7および8を構成する、磁気ディスク装置、光ディスク装置等の補助記憶装置群を有する。」(当審注;段落【0035】に「通信回線9」との記載があるが、【図1】においては通信回線に符号50が付されており、段落【0044】の「通信回線50を介してPOSコントローラ3等と通信する」という記載も参照すると、符号の誤記であることは明らかである。なお、段落【0054】において符号9は「取引明細テーブル」に対して用いられている。) d 「【0044】図2(A)および図60に示すように、チェッカ装置1は、入力装置11と、表示装置12と、客用表示装置13と、スキャナ14と、磁気カ-ドリ-ダ15と、装置全体の制御、演算等を行なう処理装置16と、通信回線50を介してPOSコントローラ3等と通信するための通信装置17とを有する。 【0045】入力装置11は、数字キ-、小計キ-や合計キ-等の制御キ-などを有し、商品コ-ド等の数字入力や、小計、合計等の制御指令等を入力するものである。表示装置12は、例えば、液晶ディスプレイ等のディスプレイ、その駆動装置等を有し、商品名、値段等を表示する。客用表示装置13は、同様に、例えば、液晶ディスプレイ等のディスプレイ、その駆動装置等を有し、商品名や値段等を顧客に表示する。なお、客用表示装置13は、本実施例では、さらに、次に、どのキャッシャ装置に進むべきかを示す案内の表示をも行なう。スキャナ14は、商品に付された識別コード、例えば、バ-コ-ドを読み取るものである。磁気カ-ドリ-ダ15は、顧客カ-ド等の磁気カ-ドの記録内容を読み取るものである。 【0046】処理装置16は、コンピュータシステムにより構成することができる。例えば、図2(B)に示すように、中央処理ユニット(CPU)161と、CPU161の動作プログラムを格納するROM(ランダムアクセスメモリ)162と、各種テーブル類の記憶、データの一時的記憶、CPU161の作業用エリア等として機能するRAM(ランダムアクセスメモリ)163と、各種テーブル類のフォーマット、売上データ等を記録する、磁気ディスク、光ディスク等のディスク型記憶装置164とを有する。なお、後述するキャッシャ装置2の処理装置28も、同様のシステムで構成される。」 e 「【0106】本実施例により、商品を販売する際、混んでいるキャッシャ装置の負荷を軽減することが可能となる上、顧客の待ち時間も減少する。また、カ-ドによる取引のみを、カ-ド取引専用のキャッシャ装置を割り当て、行なうことにより、1台のキャッシャ装置としては、現金のみの精算を行なうか、カ-ドのみの精算を行なうかのいづれかに限定でき、キャッシャの負担は軽減し、1精算あたりの時間も短くなる。さらに、カ-ド精算に慣れていない新入社員等には、現金精算のキャッシャ装置を担当させるなどができ、人員の配置への柔軟な対応が可能となる。」 f 「【0135】上記実施例では、チェッカ装置上で、該取引に対応するキャッシャ装置が決まり、顧客が自由に決められないが、顧客が好きなキャッシャ装置を選び、それによってチェッカ装置が磁気カ-ドを出力し、選んだキャッシャ装置でその磁気カ-ドを挿入することにより、取引を識別してもよい。以下にその例を示す。」 【0136】顧客が好きなキャッシャ装置を選ぶ場合のチェッカ装置1”の構成を図37に示す。図37のチェッカ装置の構成は、図31に示すチェッカ装置1の構成に、顧客の入力を行う客用入力装置32を加えたものであり、キャッシャ装置は、図3に示す構成と同じである。 【0137】チェッカ装置の処理フロ-は、図4のフロ-チャ-トと同じであるが、精算指示処理(ステップ1011)が異なり、図38に示すフロ-となる。 【0138】本実施例の精算指示処理では、処理装置16は、まず、客用表示装置13に「お好きな精算装置を選んで下さい」という旨のメッセ-ジを、選択対象となるキャッシャ装置の番号およびその位置と共に表示する(ステップ6101)。選択対象となるキャッシャ装置は、図39に示すキャッシャ装置テ-ブル102’”の該当チェッカ装置に対応するキャッシャ番号で示される。図39の例では、10、15、16、17のキャッシャ装置が該当する。 【0139】処理装置16は、客用入力装置32のキ-入力をモニタ-する(ステップ6102)。該当する番号のキ-入力があれば、取引明細テ-ブル101の精算装置の項目に、入力キャッシャ番号をセットする(ステップ6103)。ここでは、5,6,7以外の数字キーが入力されたときに、キャッシャ番号10のキャッシャ装置が選択される。また、5の数字キーが入力されたときキャッシャ番号15のキャッシャ装置が、6の数字キーが入力されたときキャッシャ番号16のキャッシャ装置が、7の数字キーが入力されたときキャッシャ番号17のキャッシャ装置がそれぞれ選択される。 ・・・ 【0144】これにより、顧客が好きな精算装置を、空いている、特定の出口に近い、サ-ビスのよい、近い等を考慮して選ぶことができ、顧客の利便性を考え、かつ、精算の効率を上げることが可能となる。」 g 「【0145】なお、これまでの実施例では、全部の取引明細テ-ブル101をストアプロセッサ4に送っているが、全部の取引明細をストアプロセッサ4に送るのではなく、通常は送らず、属性が分離の時にのみ送っても良い。例えば、通常は全精算をペアのキャッシャ装置で行い、混んだときのみ、分離となり、現金はペアのキャッシャ装置で、カ-ドは別のキャッシャ装置で行うような時には、カ-ドのみの取引明細テ-ブル101をストアプロセッサ4に送り、現金の取引明細テ-ブル101は、直接ペアのキャッシャ装置に送っても良い。 【0146】また、ストアプロセッサ4を介さず、直接、精算装置に送ってもよい。」 (イ)引用発明 上記(ア)dの記載より「チェッカ装置1」は「表示装置12」と「客用表示装置13」等を備えるものであり、従来の技術を説明する上記(ア)bの段落【0004】の記載を参酌すれば、「チェッカ」が登録するものであることは明らかといえる。また、課題を説明する上記(ア)bの段落【0006】の記載及び効果を説明する上記(ア)eの記載を参酌すれば、後者の「キャッシャ装置2」は「キャッシャ」が操作することは明らかといえる。そして、上記(ア)fは、上記(ア)aの「精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段」の一態様をなすものであることは明らかである。 以上のことと、上記(ア)の各記載事項より、引用文献1には次の発明(特に上記(ア)f、gの【0146】に係る事項を有する例に対応。以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「顧客が購入した商品を特定する情報およびその価格を少なくとも登録して取引明細データを生成するチェッカが登録する1または2以上のチェッカ装置1と、上記生成される取引明細データに基づいて購入商品の精算処理を行なうキャッシャが操作する2以上のキャッシャ装置2と、チェッカ装置1およびキャッシャ装置2に対する通信回線50を介しての通信、ならびに、チェッカ装置1およびキャッシャ装置2の動作状態の管理を少なくとも行なう管理装置として機能するストアプロセッサ4とを備えた商品販売システムにおいて、 チェッカ装置1は、登録した取引について、精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段と、少なくともストアプロセッサ4との通信を行なう手段と、上記取引明細データを、指定されたキャッシャ装置2に転送する手段とを有し、 上記精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段は、客用表示装置13に『お好きな精算装置を選んで下さい』という旨のメッセ-ジを、選択対象となるキャッシャ装置2の番号およびその位置と共に表示し、該当する番号のキー入力があれば、キャッシャ装置2が選択されるものである 商品販売システム。」 ウ 本件訂正発明1について (ア)対比 本件訂正発明1と引用発明とを対比する。 a 後者の「チェッカ装置1」は前者の「登録装置」に相当し、同様に、「キャッシャ装置2」は「精算装置」に相当する。 b 後者の「商品販売システム」は、上記イ(ア)cの段落【0035】の記載を踏まえると、後者の「POSシステム」に相当するといえる。 c 後者の「取引明細データ」は、少なくとも「顧客が購入した商品を特定する情報およびその価格」に係るデータであるから、前者の「商品の登録データ」に相当する。また、後者の「チェッカ」は「店員」であることは明らかである。 そうすると、上記a、bも踏まえると、後者の「顧客が購入した商品を特定する情報およびその価格を少なくとも登録して取引明細データを生成するチェッカが登録する1または2以上のチェッカ装置1と、上記生成される取引明細データに基づいて購入商品の精算処理を行なうキャッシャが操作する2以上のキャッシャ装置2と、チェッカ装置1およびキャッシャ装置2に対する通信回線50を介しての通信、ならびに、チェッカ装置1およびキャッシャ装置2の動作状態の管理を少なくとも行なう管理装置として機能するストアプロセッサ4とを備えた商品販売システム」と、前者の「顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステム」とは、「顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステム」の限度で一致するといえる。 d 後者の「上記精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段は、客用表示装置13に『お好きな精算装置を選んで下さい』という旨のメッセ-ジを、選択対象となるキャッシャ装置2の番号およびその位置と共に表示し、該当する番号のキー入力があれば、キャッシャ装置2が選択されるものである」とは、キャッシャ装置2の選択が番号のキー入力により行われるものであるから、「複数のボタン」に相当するものを有しているのは自明といえる。 そうすると、上記a、cも踏まえると、後者の「チェッカ装置1は、登録した取引について、精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段と、少なくともストアプロセッサ4との通信を行なう手段と、上記取引明細データを、指定されたキャッシャ装置2に転送する手段とを有し、上記精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段は、客用表示装置13に『お好きな精算装置を選んで下さい』という旨のメッセ-ジを、選択対象となるキャッシャ装置2の番号およびその位置と共に表示し、該当する番号のキー入力があれば、キャッシャ装置2が選択されるものである」ことと、前者の「前記登録装置は、前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、を備える」こととは、「前記登録装置は、前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンと、前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、を備える」ことの限度で一致するといえる。 e 以上のことより、本件訂正発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。 〔一致点1〕 「顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおいて、 前記登録装置は、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンと、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えるPOSシステム。」 〔相違点1〕 「精算処理」に関し、本件訂正発明1が「顧客が自ら操作して」いるのに対し、引用発明は「キャッシャが操作する」点。 〔相違点2〕 「複数のボタン」に関し、本件訂正発明1が複数のボタンを「表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段」により構成されるものであるのに対し、引用発明はキー入力が「客用表示装置13」に表示される複数のボタンによるのかどうか明らかでなく、また、「キャッシャ装置2」の空き状態に係る表示の事項を有していない点。 (イ)判断 〔相違点1〕、〔相違点2〕について 原出願の優先日前に頒布された特開2011-253234号公報(特に段落【0015】、【0017】、【0050】及び【図1】、【図7】参照。上記2(2)の乙第4号証。以下「引用文献2」という。)及び特開2012-3561号公報(特に段落【0014】、【0016】、【0046】及び【図1】、【図9】参照。上記2(2)の乙第5号証。以下「引用文献3」という。)には、POSシステムにおいて、店員が登録を行い、精算用レシートを発行し、精算用レシートを顧客が精算装置に読み取らせ、顧客自ら操作して精算処理を行い、かつ、少なくとも現金またはクレジットカードの何れかを選択する決済方法を表示部に表示させる表示手段を有する技術が開示されており、当該技術は周知技術といえるものである。 ここで、上記周知技術における精算用レシートには、引用文献2の段落【0016】に「顧客が購入する全ての商品のバーコードについて商品登録が完了した場合、印刷用POSレジスタ20は、2次元コード(会計データ)を印刷媒体(レシート用紙)である精算用レシート40に印刷し、精算用レシート40を顧客に発行する。ここで、2次元コードは、顧客が購入する全ての商品の買上内容(購入情報)と、買上金額(購入金額)を精算する際に読み取られる買上内容の順番を示す順番情報と、を示すコードである。」と記載され、引用文献3の段落【0015】に「顧客が購入する全ての商品のバーコードについて商品登録が完了した場合、登録用POSレジスタ20は、2次元コード(会計データ)を、印刷媒体(レシート用紙)である精算用レシート40に印刷し、精算用レシート40を顧客に発行する。ここで、2次元コードとは、顧客が購入する全ての商品の買上内容(購入情報)と、買上金額(購入金額)を示すコードである。」と記載されているように、精算装置(会計用POSレジスタ装置30)を指定する情報は含まれていない。 すなわち、上記周知技術は「精算用レシート」を使用することで、登録装置における精算装置の指定を不要にし、顧客が任意の精算装置で精算処理行うことができるようにした技術であるということができ、また、「精算用レシート」を用いることにより、引用文献2の段落【0019】に記載の「会計用POSレジスタ30における処理時間は、2次元コードに基づいて会計を行うので短い」、及び、引用文献3の段落【0018】に記載の「2次元コードに基づいて会計を行うため、会計用POSレジスタ30における処理時間は短い」という有利な効果を奏するものと認められ、「精算用レシート」と「顧客自ら操作して精算処理を行」うということを分離して把握することはできない。 そうすると、上記周知技術を引用発明に適用することは、上述した利点を損なうおそれがあり、当該適用は当業者であっても容易に想到し得たこととはいえない。 また、仮に上記周知技術を引用発明に適用したとしても、引用発明の「チェッカ装置1は、登録した取引について、精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段と、少なくともストアプロセッサ4との通信を行なう手段と、上記取引明細データを、指定されたキャッシャ装置2に転送する手段とを有」するという事項に代えて、「チェッカ装置1は、登録した取引について、精算用レシートを印刷し、精算用レシートを顧客がキャッシャ装置2に読み取らせ、顧客自ら操作して精算処理を行う」という事項を有するものになるため、本件訂正発明1との新たな相違点が生じることになるし、精算処理を行うべきキャッシャ装置2を指定する手段がなくなるため、相違点2の前提構成がなくなることになる。 したがって、引用発明において、上記相違点1、2に係る本件訂正発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件訂正発明1は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおりであり、また、他に拒絶の理由を発見しないから、本件訂正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 エ 本件訂正発明2について (ア)対比 本件訂正発明2と引用発明とを対比する。 a 後者の「チェッカ装置1」は前者の「登録装置」に相当し、同様に、「キャッシャ装置2」は「精算装置」に、「管理装置として機能するストアプロセッサ4」は「管理装置」にそれぞれ相当する。 b 後者の「商品販売システム」は、上記イ(ア)cの段落【0035】の記載を踏まえると、後者の「POSシステム」に相当するといえる。 c 後者の「取引明細データ」は、少なくとも「顧客が購入した商品を特定する情報およびその価格」に係るデータであるから、前者の「商品の登録データ」に相当する。また、後者の「チェッカ」は「店員」であることは明らかである。 そうすると、上記a、bも踏まえると、後者の「顧客が購入した商品を特定する情報およびその価格を少なくとも登録して取引明細データを生成するチェッカが登録する1または2以上のチェッカ装置1と、上記生成される取引明細データに基づいて購入商品の精算処理を行なうキャッシャが操作する2以上のキャッシャ装置2と、チェッカ装置1およびキャッシャ装置2に対する通信回線50を介しての通信、ならびに、チェッカ装置1およびキャッシャ装置2の動作状態の管理を少なくとも行なう管理装置として機能するストアプロセッサ4とを備えた商品販売システム」と、前者の「顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置と、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置とを有するPOSシステム」とは、「顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて精算処理を行う複数の精算装置と、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置とを有するPOSシステム」の限度で一致するといえる。 d 後者の「上記精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段は、客用表示装置13に『お好きな精算装置を選んで下さい』という旨のメッセ-ジを、選択対象となるキャッシャ装置2の番号およびその位置と共に表示し、該当する番号のキー入力があれば、キャッシャ装置2が選択されるものである」とは、キャッシャ装置2の選択が番号のキー入力により行われるものであるから、「複数のボタン」に相当するものを有しているのは自明といえる。 そうすると、上記a、cも踏まえると、後者の「チェッカ装置1は、登録した取引について、精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段と、少なくともストアプロセッサ4との通信を行なう手段と、上記取引明細データを、指定されたキャッシャ装置2に転送する手段とを有し、上記精算処理を行なうべきキャッシャ装置2を指定する手段は、客用表示装置13に『お好きな精算装置を選んで下さい』という旨のメッセ-ジを、選択対象となるキャッシャ装置2の番号およびその位置と共に表示し、該当する番号のキー入力があれば、キャッシャ装置2が選択されるものである」ことと、前者の「前記登録装置は、前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、を備える」こととは、「前記登録装置は、前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンと、前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、を備える」ことの限度で一致するといえる。 f 以上のことより、本件訂正発明2と引用発明2との一致点、相違点は次のとおりと認める。 〔一致点2〕 「顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて精算処理を行う複数の精算装置と、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置とを有するPOSシステムにおいて、 前記顧客の精算処理を行う精算装置を選択する選択手段と、 前記管理装置は、 前記選択手段で選択された精算装置で前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する送信手段と、を備え、 前記精算装置は、 前記登録データを受信する受信手段と、 前記受信された前記登録データに基づいて代金を決済するための、少なくとも現金またはクレジットカードの何れかに係る情報を表示部に表示させる表示手段と、 を備えるPOSシステム。」 〔相違点3〕 「精算処理」に関し、本件訂正発明2が「顧客が自ら操作して」行うものであるのに対し、引用発明は「キャッシャが操作する」点。 〔相違点4〕 「複数のボタン」に関し、本件訂正発明2が複数のボタンを「表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段」により構成されるものであるのに対し、引用発明はキー入力が「客用表示装置13」に表示される複数のボタンによるのかどうか明らかでなく、また、「キャッシャ装置2」の空き状態に係る表示の事項を有していない点。 (イ)判断 〔相違点3〕、〔相違点4〕について 上記相違点3、4は、上記相違点1、2と実質的に同様内容であり、その判断についても、上記ウ(イ)と同様である。 したがって、引用発明において、上記相違点3、4に係る本件訂正発明2の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件訂正発明2は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおりであり、また、他に拒絶の理由を発見しないから、本件訂正発明2は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 オ 本件訂正発明3?8について 本件訂正発明3?8は、本件訂正発明1または2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものである。 よって、上記ウ、エと同様の理由により、本件訂正発明3?8は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 以上のとおりであり、また、他に拒絶の理由を発見しないから、本件訂正発明3?8は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 カ 本件訂正発明9について 本件訂正発明9は、「登録装置」に係る発明であるが、本件訂正発明1と実質的に同様内容であって、その判断についても上記ウ(イ)と同様である。 よって、本件訂正発明9は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 以上のとおりであり、また、他に拒絶の理由を発見しないから、本件訂正発明9は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 キ 本件訂正発明10、11について 本件訂正発明10、11は、本件訂正発明9の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものである。 よって、上記カと同様の理由により、本件訂正発明10、11は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 以上のとおりであり、また、他に拒絶の理由を発見しないから、本件訂正発明10、11は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 ク 本件訂正発明12について 本件訂正発明12は、「プログラム」に係る発明であるが、本件訂正発明1と実質的に同様内容であって、引用発明の「チェッカ装置1」、「キャッシャ装置2」もプログラムにより機能させられるコンピュータであることは技術的に明らかであるから(上記イ(ア)dの段落【0046】参照。)、その判断についても上記ウ(イ)と同様である。 よって、本件訂正発明12は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 以上のとおりであり、また、他に拒絶の理由を発見しないから、本件訂正発明12は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 ケ 本件訂正発明13について 本件訂正発明13は、「プログラム」に係る発明であるが、本件訂正発明2と実質的に同様内容であって、引用発明の「チェッカ装置1」、「キャッシャ装置2」、「ストアプロセッサ4」もプログラムにより機能させられるコンピュータであることは技術的に明らかであるから(上記イ(ア)cの段落【0039】、上記イ(ア)dの段落【0046】参照。)、その判断についても上記ウ(イ)と同様である。 よって、本件訂正発明13は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 以上のとおりであり、また、他に拒絶の理由を発見しないから、本件訂正発明13は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 コ 本件訂正発明14について 本件訂正発明14は、「プログラム」に係る発明であるが、本件訂正発明1と実質的に同様内容であって、引用発明の「チェッカ装置1」もプログラムにより機能させられるコンピュータであることは技術的に明らかであるから(上記イ(ア)dの段落【0046】参照。)、その判断についても上記ウ(イ)と同様である。 よって、本件訂正発明14は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 以上のとおりであり、また、他に拒絶の理由を発見しないから、本件訂正発明14は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 第4 むすび 上記「第3 1」のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、また、新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更もなく、同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。そして、上記「第3 2(3)」のとおり、本件訂正発明1?14は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであって、本件訂正は、同法第126条第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおいて、 前記登録装置は、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とするPOSシステム。 【請求項2】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置と、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置とを有するPOSシステムにおいて、 前記登録装置は、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とするPOSシステム。 【請求項3】 前記表示手段は、 前記空き状態の精算装置のボタンを、点滅、または、他のボタンと表示色を異ならせる、または、網掛けで表示する、のいずれかで強調させて表示する ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPOSシステム。 【請求項4】 前記登録装置は、 前記選択された精算装置で前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する送信手段、を備え、 前記精算装置は、 前記登録データを受信する受信手段と、 点滅または点灯することにより報知を行う所定のランプと、を備え、 前記登録データを受信すると前記所定のランプを点滅または点灯させる ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項5】 前記精算装置は、 前記受信した登録データに基づいて代金を決済するための、少なくとも現金またはクレジットカードの何れかを選択する決済方法を表示部に表示させる表示手段、 を備えることを特徴とする請求項4に記載のPOSシステム。 【請求項6】 前記精算装置は、 前記登録データに基づく精算処理を保留する保留手段、 を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項7】 前記登録装置は、 前記登録データに基づく精算処理を保留、または未精算の登録データを保留にする保留手段、 を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項8】 前記登録装置、または、前記精算装置は、 1次元コードあるいは2次元コードを読み取る読取手段を更に備え、 保留にされた登録データを呼出し可能な1次元コードあるいは2次元コードが印刷された保留レシートが前記読取手段によって読み取られると、保留にされた登録データを呼出す ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のPOSシステム。 【請求項9】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記登録された商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおける前記登録装置であって、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 を備えることを特徴とする登録装置。 【請求項10】 前記登録データに基づく精算処理を保留、または未精算の登録データを保留にする保留手段、 を備えることを特徴とする請求項9に記載の登録装置。 【請求項11】 1次元コードあるいは2次元コードを読み取る読取手段を更に備え、 保留にされた登録データを呼出し可能な1次元コードあるいは2次元コードが印刷された保留レシートが前記読取手段によって読み取られると、保留にされた登録データを呼出す ことを特徴とする請求項9に記載の登録装置。 【請求項12】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置として第1コンピュータを機能させ、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置として第2コンピュータを機能させPOSシステムのプログラムであって、 前記第1コンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。 【請求項13】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置として第1コンピュータを機能させ、前記商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置として第2コンピュータを機能させ、前記登録装置および前記精算装置と通信回線を介して接続された管理装置として第3コンピュータを機能させる、POSシステムのプログラムであって、 前記第1コンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。 【請求項14】 顧客の購入対象の商品を店員が登録する登録装置と、前記登録された商品の登録データに基づいて顧客が自ら操作して精算処理を行う複数の精算装置とを有するPOSシステムにおける前記登録装置としてのコンピュータを、 前記精算装置のそれぞれを示す複数のボタンを表示し、前記複数のボタンのうち空き状態の精算装置のボタンを他のボタンと異なる表示形態で表示する表示手段と、 前記顧客の精算処理が行えるように前記登録された商品の登録データを送信する1つの精算装置を前記複数のボタンから選択させる選択手段と、 として機能させるためのプログラム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2019-01-21 |
結審通知日 | 2019-01-24 |
審決日 | 2019-02-05 |
出願番号 | 特願2016-114889(P2016-114889) |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Y
(G07G)
P 1 41・ 854- Y (G07G) P 1 41・ 121- Y (G07G) P 1 41・ 113- Y (G07G) P 1 41・ 856- Y (G07G) P 1 41・ 841- Y (G07G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 金丸 治之、永石 哲也 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
島田 信一 一ノ瀬 覚 |
登録日 | 2017-02-24 |
登録番号 | 特許第6094709号(P6094709) |
発明の名称 | POSシステム、登録装置、及びプログラム |
代理人 | 平野 昌邦 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 平野 昌邦 |
代理人 | 松沼 泰史 |