• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1349884
審判番号 不服2017-14520  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-02 
確定日 2019-03-13 
事件の表示 特願2015-242195「固定シーケンスの駆動ハンドルを備えた装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 7日出願公開、特開2016- 47443〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成22年1月19日(パリ条約による優先権主張 2009年1月19日 米国、2010年1月18日 米国)を国際出願日とする特願2011-546268号の一部を平成27年12月11日に新たな特許出願としたものであって、平成28年10月28日付けの拒絶理由通知に対し平成29年1月30日付けで手続補正書及び意見書が提出されたが、同年5月23日付けで拒絶査定がされ、その後、同年10月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲についての手続補正がされたものである。


II.平成29年10月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された(下線は、補正箇所を明示するために付したものである。)。
「【請求項1】
ハンドル・アセンブリと、
前記ハンドル・アセンブリから延びているカテーテルと、
前記カテーテルの一部分上で前記ハンドル・アセンブリから遠隔に位置する展開可能なデバイスと、
第一の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第一段階を遂行して第二の部材を露出するように構成されている第一の部材と、
前記第一の部材によって少なくとも部分的に覆われかつ前記第一の部材が脱離した後にユーザーに露出されかつ第二の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第二段階を遂行して第三の部材を露出するように構成されている第二の部材と、
前記第二の部材によって少なくとも部分的に覆われかつ前記第二の部材が脱離した後にユーザーに露出されかつ第三の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第三段階を遂行するように構成されている第三の部材とを備える、装置。」

2 補正の目的及び新規事項の追加の有無等
請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第二の部材」について、「第一の部材が脱離した後にユーザーに露出され」るように構成されていると技術的に限定するとともに、同発明を特定するために必要な事項である「第三の部材」について、「第二の部材が脱離した後にユーザーに露出され」るように構成されていると技術的に限定する補正であって、しかも、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するところはない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について、以下に検討する。
3-1 刊行物の記載事項
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第2006/007389号(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている(括弧内に付記した邦訳は当審による。)。
1a:第1頁第1?6行
「THORACIC DEPLOYMENT DEVICE AND STENT GRAFT
・・・
Technical Field
This invention relates to a medical device and more particularly to a medical device for the introduction of a stent graft into a human or animal body.
(胸部留置装置及びステントグラフト
・・・
技術分野
本発明は、医療デバイスに関し、特に、ステントグラフトをヒト又は動物の身体へ導入するための医療デバイスに関する。)

1b:第4頁第7?30行
「In a further form the invention is said to reside in a stent graft introducer for intraluminal deployment of a stent graft, an introducer having:
a guide wire catheter extending from a proximal to a distal end,
a nose cone dilator on the proximal end of the guide wire catheter, the nose cone dilator having a proximal end and a distal end,
a deployment catheter on the guide wire catheter, the guide wire catheter passing through a lumen in the deployment catheter and the deployment catheter being able to move longitudinally and rotationally with respect to the guide wire catheter,
a distal retention arrangement a the proximal end of the deployment catheter to retain the distal end of a stent graft thereon and an associated distal release arrangement,
a proximal retention arrangement at the distal end of the nose cone dilator to retain the proximal end of a stent graft thereon and an associated proximal release arrangement, the proximal retention arrangement including multiple fastenings between the stent graft and the release mechanism,
a first release arrangement associated with the handle to release the distal retention arrangements,
a second release arrangement associated with the handle to release the proximal fastenings,
each release arrangement including a trigger wire extending from the respective retention arrangement to a trigger wire grip on the handle,
the trigger wire grips being arranged on the handle so that they can only be released in a selected order.」
(さらなる形態における本発明として、ステントグラフトを腔内留置するためのステントグラフト導入器があり、導入器は以下を備える。
近位端から遠位端まで延びるガイドワイヤカテーテル。
ガイドワイヤカテーテルの近位端に設けられたノーズコーン拡張器。ここで、該ノーズコーン拡張器は、近位端及び遠位端を有する。
ガイドワイヤカテーテル上の留置カテーテル。ここで、該ガイドワイヤカテーテルは、該留置カテーテルの管腔を通過し、該留置カテーテルは、該ガイドワイヤカテーテルに対し長手方向及び周方向に移動可能である。
留置カテーテルの近位端に設けられた遠位保持具であってその上にステントグラフトの遠位端を保持する遠位保持具、及びこれに対応する遠位解放装置。
ノーズコーン拡張器の遠位端に設けられた近位保持具であってその上にステントグラフトの近位端を保持する近位保持具、及びこれに対応する近位解放装置。ここで、該近位保持具は、ステントグラフトと解放機構との間の複数の固定具を含む
ハンドルに結合され、遠位保持具を解放するための第1の解放装置。
ハンドルに結合され、近位保持具を解放するための第2の解放装置。
該解放装置のそれぞれは、それぞれの保持具からハンドル上のトリガワイヤ保持部まで延びるトリガワイヤを含み、該トリガワイヤ保持部は、選択された順序での解放のみが可能となるように、ハンドル上に整列して配置されている。)

1c:第14頁第3行?第15頁第5行
「In Figures 1 and 2, it will be seen that the deployment device 1 generally consists of a guide wire catheter 2 which extends the full length of the device from a Luer lock connector 3 for a syringe at the far distal end of the device to and through a nose cone dilator 4 at the proximal end. The nose cone dilator 4 is fixed to the guide wire catheter 1 and moves with it. To lock the guide wire catheter with respect to the deployment device in general a pin vice 5 is provided.
Trigger wire release mechanisms generally shown as 6 on a fixed handle 10 includes three triggerwire release mechanisms as will be discussed below. The trigger wire release mechanisms 6 slide on a portion of the fixed handle 10 and hence until such time as they are activated the trigger wire mechanisms 6 which are fixed by thumbscrews 11 remain fixed with respect to the fixed portion of the fixed handle 10. The triggerwire release mechanisms generally shown as 6 includes three triggerwire mechanisms 7, 8 and 9 for three different stages of release of the stent graft from the deployment device. The three stages of release generally comprise:
(1) release of the distal end of the stent graft;
(2) release of diameter reducing ties; and
(3) release of the proximal retention arrangements.
The trigger wire release mechanism 9 has a trigger wire 48 (see Figure 3A) which extends to the capsule 21 and engages one of the loops of the exposed stent 29. When the thumb screw 11 on the retention mechanism 9 is removed, the trigger wire mechanism 9 and trigger wire 48 can be removed and the capsule 21 can be removed from the exposed stent.
The trigger wire release mechanism 8 extends a trigger wire 45 (see Figure 3A) to diameter reducing ties 43 on the stent graft. When the thumb screw 11 on the trigger wire mechanism 8 is removed, the trigger wire mechanism 8 and trigger wire 45 can be completely removed from the deployment device which releases the diameter reducing ties 43.
The trigger wire mechanism 7 has three trigger wires 76 (see Figure 7) connected to it and when this trigger wire release mechanism 7 and trigger wires 76 are removed the proximal retention fastenings 90, 91 and 92 (see Figure 12) can be released to release the proximal end of the stent graft as is discussed in relation to Figures 7, 8 and 12 to 14.」
(図1及び2に示すように、留置装置1は通常、ガイドワイヤカテーテル2を含み、このガイドワイヤカテーテル2は、遠位端のシリンジ用ルアーロックコネクタ3から、近位端のノーズコーン拡張器4を貫通して、留置装置1の全長に渡って延びている。ノーズコーン拡張器4は、ガイドワイヤカテーテル1に固定され、これと共に移動する。ガイドワイヤカテーテルを留置装置に対しロックするため、通常、ピンバイス5が設けられる。
固定ハンドル10上のトリガワイヤ解放機構6は、後述するように3つのトリガワイヤ解放機構を含む。トリガワイヤ解放機構6は、固定ハンドル10の一部分上で摺動する。そして、蝶ねじ11によって固定されているトリガワイヤ機構6は、それらが作動される時点まで、固定ハンドル10の固定箇所に固定されたままである。トリガワイヤ解放機構6は、ステントグラフトを留置装置から解放する異なる3つの段階のための3つのトリガワイヤ解放機構7,8,9を含む。解放の3段階は、通常、以下を含む。
(1)ステントグラフトの遠位端の解放
(2)縮径部材の解放
(3)近位保持具の解放
トリガワイヤ解放機構9は、カプセル21まで延びて露出ステント29の一ループに係合するトリガワイヤ48(図3A参照)を有する。保持機構9の蝶ねじ11が取り外されると、トリガワイヤ機構9とトリガワイヤ48とを除去することができ、また、カプセル21を露出ステントから除去することができる。
トリガワイヤ解放機構8により、トリガワイヤ45(図3A参照)はステントグラフト上の縮径部材43まで延びる。トリガワイヤ機構8の蝶ねじ11が取り外されると、トリガワイヤ機構8とトリガワイヤ45とは、縮径部材43を解放する留置装置から完全に除去することができる。
トリガワイヤ機構7は、自身に接続された3本のトリガワイヤ76(図7参照)を有する。このトリガワイヤ解放機構7とトリガワイヤ76が除去されると、図7,8,12,14に関連して説明されるように、近位保持固定具90,91,92(図12参照)は、ステントグラフトの近位端を解放するためにその固定を解除することができる。)

1d:第17頁第17?18行
「The fixed handle extension 16 is joined to the trigger wire mechanism handle 10 by screw threaded nut 24. 」
(固定ハンドル延長部16は、ねじナット24によってトリガワイヤ機構ハンドル10に結合されている。)

続いて図面を参照しつつ、上記の各記載について検討する。
A)摘記事項1cの「留置装置1は通常、ガイドワイヤカテーテル2を含み」、「固定ハンドル10上のトリガワイヤ解放機構6は、後述するように3つのトリガワイヤ解放機構を含む。」、「トリガワイヤ解放機構6は、ステントグラフトを留置装置から解放する異なる3段階のための3つのトリガワイヤ解放機構7,8,9を含む。」等の記載及び図1、図2の図示内容からみて、留置装置1は、ガイドワイヤカテーテル2、固定ハンドル10、ステントグラフト、トリガワイヤ解放機構7?9を備えるものといえる。
また、摘記事項1dの「固定ハンドル延長部16は、ねじナット24によってトリガワイヤ機構ハンドル10に結合されている。」の記載及び図5の図示内容から、固定ハンドル10には、固定ハンドル延長部16及びねじナット24が連結されていることも分かる。
B)摘記事項1cの「このガイドワイヤカテーテル2は、・・・留置装置1の全長に渡って延びている。」の記載及び図2の図示内容からみて、ガイドワイヤカテーテル2は、固定ハンドル10を通って留置装置1の全長に延びているものといえる。
C)図2、図9等の断面図には、ステントグラフトは、ガイドワイヤカテーテル2上であって、固定ハンドル10から離れた箇所に位置付けられていることが図示されている。
D)摘記事項1cの「トリガワイヤ解放機構6は、ステントグラフトを留置装置から解放する異なる3つの段階のための3つのトリガワイヤ解放機構7,8,9を含む。解放の3段階は、通常、以下を含む。(1)ステントグラフトの遠位端の解放(2)縮径部材の解放(3)近位保持具の解放」、「トリガワイヤ解放機構9は、カプセル21まで延びて露出ステント29の一ループに係合するトリガワイヤ48(図3A参照)を有する。保持機構9の喋ねじ11が取り外されると、トリガワイヤ機構9とトリガワイヤ48とを除去することができ、また、カプセル21を露出ステントから除去することができる。」、「トリガワイヤ解放機構8により、トリガワイヤ45(図3A参照)はステントグラフト上の縮径部材43まで延びる。トリガワイヤ機構8の蝶ねじ11が取り外されると、トリガワイヤ機構8とトリガワイヤ45とは、縮径部材43を解放する留置装置から完全に除去することができる。」、「トリガワイヤ機構7は、自身に接続された3本のトリガワイヤ76(図7参照)を有する。このトリガワイヤ解放機構7とトリガワイヤ76が除去されると、図7,8,12,14に関連して説明されるように、近位保持固定具90,91,92(図12参照)は、ステントグラフトの近位端を解放するためにその固定を解除することができる。」の各記載から、トリガワイヤ解放機構9は、トリガワイヤ48を有し、ステントグラフトの遠位端の解放という第一の段階を遂行するものといえ、同様に、トリガワイヤ解放機構8は、トリガワイヤ45を有し、縮径部材の解放という第二の段階を遂行し、トリガワイヤ解放機構7は、トリガワイヤ76を有し、近位保持具の解放という第三の段階を遂行するものといえるし、また、これらの各段階は、ステントグラフトを留置装置1から解放するための異なる3つの段階であるといえる。
加えて、摘記事項1bの「該トリガワイヤ保持部は、選択された順序での解放のみが可能となるように、ハンドル上に整列して配置されている。」なる記載及び図1に図示されたトリガワイヤ解放機構7?9の配置を参照すれば、トリガワイヤ解放機構8による上記第二の段階は、トリガワイヤ解放機構9が除去された後に遂行され、同様に、トリガワイヤ解放機構7による上記第三の段階は、トリガワイヤ解放機構8が除去された後に遂行されることも分かる。

よって、以上の各記載及び図面の図示内容を総合すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「留置装置1であって、
固定ハンドル延長部16及びねじナット24を連結する固定ハンドル10と、
前記固定ハンドル10を通って留置装置1の全長に延びているガイドワイヤカテーテル2と、
前記ガイドワイヤカテーテル2上であって、固定ハンドル10から離れた箇所に位置付けられているステントグラフトと、
トリガワイヤ48を有し、ステントグラフトの遠位端の解放という第一の段階を遂行するトリガワイヤ解放機構9と、
トリガワイヤ45を有し、トリガワイヤ解放機構9が除去された後に縮径部材の解放という第二の段階を遂行するトリガワイヤ解放機構8と、
トリガワイヤ76を有し、トリガワイヤ解放機構8が除去された後に近位保持具の解放という第三の段階を遂行するトリガワイヤ解放機構7とを備え、
前記の各段階は、ステントグラフトを留置装置1から解放するための異なる3つの段階である、留置装置1。」


(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に周知例として引用され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2007-518465号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
2a:「【要約】
患者の体内における経皮配送を容易にする。特に、抑圧された構成の装置の周囲に配置された少なくとも1つのベルトを有する血管内グラフトなど、拡張可能な体内装置の配送のための可撓性の低い外形の配送システム。ベルトは、ベルトの輪状の両端から解放ワイヤを引き出すことにより、解放ワイヤなどの解放部材によって解放される。血管内グラフトの解放および配置の順序の制御のために、複数のベルトを連続的に使用し解放することができる。」

2b:「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、概して、拡張可能な体内装置(特に血管内グラフト)の配送に用いる、配送システムに関するものである。本発明の実施例は、治療される患者の患った動脈、または他の体内導管へのアクセスのために、外科的切開の必要性を排除する、血管内グラフトの経皮非侵襲配送に関するものである。こうした非侵襲配送システムおよび方法は、手術継続時間をより短くし、回復時間を速め、複雑さの危険を減少させる。また、本発明のいくつかの実施例における可撓性の低い外形の特性により、通常は、こうした治療が利用できない患者集団も、血管内グラフト配送用の経皮非侵襲手術が利用可能となる。例えば、小さな生体構造、または特に蛇行性脈管構造を有する患者には、本発明の実施例の、可撓性や低い外形の特徴を備えていない配送システムの使用を伴う手術は、禁忌的であってもよい。」

2c:「【0109】
図18は、図1および図14の本発明の実施例で使用された、近位アダプター42、323に対する代替的実施例を示している。この実施例では、近位アダプター360は、ネスト状に構成された、第1解放ワイヤハンドル361と、第2解放ワイヤハンドル362を有している。第2解放ワイヤ316の近位端334は、第2解放ワイヤハンドル362へ固定されている。第1解放ワイヤ312の近位端337は、第1解放ワイヤハンドル361へ固定されている。この構成により、操作者が、第1解放ワイヤ312を展開させ、または作動に先立って、第2解放ワイヤ316をうっかり展開させ、または作動させてしまい、結果的に望ましくない血管内グラフトの展開順序となってしまうのが防止される。
【0110】
使用に際しては、操作者は、最初にネジを外し、または別の方法で、第1解放ワイヤハンドル361のネジ部分363を、第1側部アーム366の第1側部アーム終端キャップ365の外側ネジ部分364から取外す。その後、第1解放ワイヤハンドル361は近位方向へ引き出され、図14に示す本発明の実施例に関して上で考察したように、第2遠位ベルト22の終端ループ82を解放する。
【0111】
第1解放ワイヤハンドル361が第1側部アーム終端キャップ365から分離されると、第2解放ワイヤハンドル362が露出して、配送システムの操作者がアクセス可能となる。その後、第2解放ワイヤハンドル362のネジ部分367は、ネジを外されるか、または別の方法で、第1側部アーム終端キャップ365のネジ部分368から取外される。その後、第2解放ワイヤハンドル362は、第1遠位ベルト21、自己拡張部材32、近位ベルト23、近位自己拡張部材31を、それぞれ連続して展開するために、近位方向へ引き出し可能となる。近位アダプター360の他の機能と特徴は、図1および図17、さらに上で考察した、近位アダプター42、323のものと同じまたは同様であってもよい。」

2d:図18には、第1解放ワイヤハンドル361と第2ワイヤ解放ハンドル362とを互いに“入れ子状”の関係に配置する事項が図示されている。

3-2 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明における「固定ハンドル」、「固定ハンドル延長部16」、「ねじナット24」は全体として一の集合体を成すものであるから、引用発明の「固定ハンドル延長部16及びねじナット24を連結する固定ハンドル10」は、本願補正発明の「ハンドル・アセンブリ」に相当する。
また、引用発明の「留置装置1」は、文言の意味、形状、機能等からみて、本願補正発明の「装置」に相当し、以下同様に、
「ガイドワイヤカテーテル2」は「カテーテル」に、
「ステントグラフト」は「展開可能なデバイス」に、
「トリガワイヤ48」は「第一の制御ライン」に、
「トリガワイヤ解放機構9」は「第一の部材」に、
「トリガワイヤ45」は「第二の制御ライン」に、
「トリガワイヤ解放機構8」は「第二の部材」に、
「トリガワイヤ76」は「第二の制御ライン」に、
「トリガワイヤ解放機構7」は「第三の部材」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明においては、「ステントグラフトの遠位端の解放という第一の段階」、「縮径部材の解放という第二の段階」、「近位保持具の解放という第三の段階」の「各段階は、ステントグラフトを留置装置1から解放するための異なる3つ段階である」ことから、引用発明の当該「第一の段階」、「第二の段階」、「第三の段階」は、それぞれ本願補正発明における「展開可能なデバイスの展開の第一段階」、「展開可能なデバイスの展開の第二段階」、「展開可能なデバイスの展開の第三段階」にそれぞれ相当する。
(ウ)上記(ア)、(イ)の相当関係からして、引用発明の「固定ハンドル10を通って留置装置1の全長に延びているガイドワイヤカテーテル2」は「ハンドル・アセンブリから延びているカテーテルカテーテル」に相当し、以下同様に、
「ガイドワイヤカテーテル2上であって、固定ハンドル10から離れた箇所に位置付けられているステントグラフト」は「カテーテルの一部分上で前記ハンドル・アセンブリから遠隔に位置する展開可能なデバイス」に、
「トリガワイヤ48を有し、」は「第一の制御ラインに取り付けられ」に、
「トリガワイヤ45を有し、」は「第二の制御ラインに取り付けられ」に、
「トリガワイヤ解放機構9が除去された後に」は「第一の部材が脱離した後に」に、
「トリガワイヤ76を有し、」は「第三の制御ラインに取り付けられ」に、
「トリガワイヤ解放機構8が除去された後に」は「第二の部材が脱離した後に」に、それぞれ相当する。

以上によれば、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
ハンドル・アセンブリと、
前記ハンドル・アセンブリから延びているカテーテルと、
前記カテーテルの一部分上で前記ハンドル・アセンブリから遠隔に位置する展開可能なデバイスと、
第一の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第一段階を遂行するように構成されている第一の部材と、
第二の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第二段階を遂行するように構成されている第二の部材と、
第三の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第三段階を遂行するように構成されている第三の部材とを備える、装置。

<相違点>
本願補正発明では、第一の部材は、展開可能なデバイスの展開の第一段階を遂行して第二の部材を露出するように構成され、第二の部材は、第一の部材によって少なくとも部分的に覆われかつ第一の部材が脱離した後にユーザーに露出されかつ展開可能なデバイスの展開の第二段階を遂行して第三の部材を露出するように構成され、第三の部材は、第二の部材によって少なくとも部分的に覆われかつ前記第二の部材が脱離した後にユーザーに露出されるのに対し、引用発明では、第一の部材は、展開可能なデバイスの展開の第一段階を遂行するものの第二の部材を露出するものではなく、第二の部材は、第一の部材によって覆われておらずかつ第一の部材が脱離した後に展開可能なデバイスの展開の第二段階を遂行するものの第三の部材を露出するものではなく、第三の部材は、第二の部材によって覆われておらずかつ前記第二の部材が脱離した後にユーザーに露出されるものではない点。

3-3 判断
上記相違点について検討する。
操作者により操作される複数の操作部材に関し、先行して操作される先行操作部材と次に操作される後続操作部材とを互いに入れ子状に配置すること、即ち、後続操作部材が先行操作部材によって少なくとも部分的に覆われかつ先行操作部材が操作されて脱離した後に操作者に露出されるように、各操作部材を配置することは、例えば、上記引用文献2に摘記事項2a?2dとして示されるように、従来周知の技術事項にすぎない(特に、先行操作部材としての「第1解放ワイヤハンドル361」、後続操作部材としての「第2ワイヤ解放ハンドル362」参照)。
また、このような配置がもたらす効果として、同文献には「操作者が、第1解放ワイヤ312を展開させ、または作動に先立って、第2解放ワイヤ316をうっかり展開させ、または作動させてしまい、結果的に望ましくない血管内グラフトの展開順序となってしまうのが防止される。」(摘記事項2c)とも明示されている。
引用文献1に「トリガワイヤ保持部は、選択された順序での解放のみが可能となるように、ハンドル上に整列して配置されている。」(摘記事項1b)と記載されるように、引用発明は、デバイスの展開操作を適切に遂行することを目的の1つとするものであるところ、ユーザによるデバイスの展開操作に当たり、うっかり操作等の誤操作の一層の防止は当然に望まれる事項であるから、引用発明における第一の部材と第二の部材の関係及び第二の部材と第三の部材の関係のそれぞれについて、各操作部材を入れ子状の関係に配置するという上記周知の技術事項を適用して、上記相違点における前者の特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願補正発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別のものとはいえない。

3-4 小括
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


III.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成29年1月30日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
ハンドル・アセンブリと、
前記ハンドル・アセンブリから延びているカテーテルと、
前記カテーテルの一部分上で前記ハンドル・アセンブリから遠隔に位置する展開可能なデバイスと、
第一の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第一段階を遂行して第二の部材を露出するように構成されている第一の部材と、
前記第一の部材によって少なくとも部分的に覆われかつ第二の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第二段階を遂行して第三の部材を露出するように構成されている第二の部材と、
前記第二の部材によって少なくとも部分的に覆われかつ第三の制御ラインに取り付けられかつ前記展開可能なデバイスの展開の第三段階を遂行するように構成されている第三の部材とを備える、装置。」


IV.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。


V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、前記II.2で指摘した限定事項を省いたものに相当する発明である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-2、3-3、3-4に示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-15 
結審通知日 2018-10-16 
審決日 2018-10-29 
出願番号 特願2015-242195(P2015-242195)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 船越 亮
関谷 一夫
発明の名称 固定シーケンスの駆動ハンドルを備えた装置  
代理人 三橋 真二  
代理人 出野 知  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 青木 篤  
代理人 胡田 尚則  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ