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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1350156
審判番号 不服2018-1343  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-31 
確定日 2019-03-20 
事件の表示 特願2014-245706「訪問介護看護のためのマトリックスイノベーション管理法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月15日出願公開、特開2015-180984〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許出願は、平成26年12月4日(国内優先権主張 平成26年3月4日)を出願日としたものであって、その手続の経緯は以下の通りである。

平成26年12月 5日 :手続補正書の提出
平成29年 4月 4日付け:拒絶理由の通知
平成29年 8月10日 :意見書及び手続補正書の提出
平成29年10月26日付け:拒絶査定
平成30年 1月31日 :審判請求書及び手続補正書の提出
平成30年 2月 7日 :手続補正書の提出
平成30年 3月 5日付け:前置報告書


第2 本件補正(平成30年1月31日提出の手続補正書による手続補正) について

1.本件補正の内容

(1)平成29年8月10日提出の手続補正書により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1から10は、以下のとおりである。

「【請求項1】
コンピュータを用い、曜日別に、単位サービス時間で区切られたマス目を順に縦列又は横列して形成した介護サービス時系列を単一又は複数の介護事業所の予定するスタッフ数だけ並列して縦横複数のマス目で区切られ、表示される単位サービスマスで形成され、介護所の介護可能なキャパシティを作業単位マスで示す曜日別の介護サービスの管理予定マトリックスをコンピュータ画面に用意する工程と、コンピュータに表示される、介護サービスの管理予定マトリックスの空き単位サービスマスに対し、介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービスを手動又は自動読み取り入力で、上記曜日別マトリックスの並列されるスタッフ列の一方の端から予定の介護サービス単位を時系列に沿って時間順に入力する工程と、コンピュータ画面に表示される介護事業所の縦横複数のマス目で形成される介護サービスのマトリックス(キャパシティ)内に予定介護サービス分布を表示していく工程を含むことを特徴とするコンピュータによる介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項2】
上記請求項1の方法において、コンピュータを用い、縦横複数のマス目で形成される管理予定マトリックス(キャパシティ)に予め予定スタッフとその勤務時間シフトを入力して介護事業所の実働マトリックスを用意する工程を含み、介護事業所のコンピュータに表示される実働マトリックス上の空き時間をケアマネが手動又は自動読み取り入力で選択して月間サービス提供票D1を作成することを特徴とする介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項3】
上記請求項2の方法において、ケアマネの作成する月間サービス提供票D1を電子化した端末と介護事業所の曜日別の予定スタッフとその勤務時間シフトを予め入力した実働マトリックス(キャパシティ)を表示した端末とを連携させ、目視により介護事業所の曜日別の実働マトリックスの空き情報を確認し、ケアマネはその端末に表示される介護利用者の月間サービス提供票D1に介護時間と介護サービス科目コードとを入力して月間サービス提供票を作成する工程を含むことを特徴とする介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項4】
上記請求項3において、介護利用者の月間サービス提供票D1への入力と同時に、介護事業所の曜日別の実働マトリックスに予約入力が完了する工程を含むことを特徴とする介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項5】
上記請求項3または4の方法において、ケアマネが介護事業所の端末が表示する稼動マトリックスを見ながらその介護サービス空きマス目のドラッグアンドドロップ方式でケアマネ又は介護事業所の端末に必要な入力をする工程を含むことを特徴とする介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項6】
上記請求項1の方法において、コンピュータを用い、サービス単位時系列をスタッフ数並列してなる縦横複数のマス目で形成される介護サービスの管理予定マトリックスを用意する工程を含み、介護事業所のケアマネの作成した月間サービス提供票D1に基づいてケアマネの要求する介護利用者の予定介護サービス単位を手動又は自動読み取り入力で、上記曜日別マトリックスの並列されるスタッフ列の一方の端から時系列に沿って時間順に入力して、介護事業所の介護サービスの予定マトリックス(キャパシティ)内に予定介護サービスを表示する工程と、介護事業所のコンピュータは該予定マトリックス上の全介護サービス分布に対し、サービス時系列の並列数だけ介護スタッフ数を用意し、時系列の必要な単位サービスマス目が埋まるように各介護スタッフの勤務時間シフトを決定する工程を含むことを特徴とする介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項7】
上記請求項6において、介護事業所のコンピュータは予定介護サービスに対し該当スタッフなしの場合、予定マトリックス上に該当スタッフなしとして介護利用者名が介護予定時間と介護サービス科目とともに表示され、手動又は自動で予定マトリックス上で該当スタッフなしの介護利用者名をマトリックス上の適当なサービス空きマス目に移動することにより該当スタッフなしのサービス単位にスタッフを割り当てる工程を含むことを特徴とする介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項8】
上記請求項6において、介護事業所のコンピュータは上記介護予定スケジュールに変更が生ずれば、スタッフの欠勤又は勤務時間シフトの変更を入力することにより該当スタッフなしの表示が示されるとともに、その表示に介護利用者名、介護予定時間、介護サービス科目を表示し、マトリック上でこれを空き時間にシフトして該当するスタッフをあてがい、介護利用者と介護スタッフのマッチング調整する工程を含むことを特徴とする介護看護マトリックス管理方法。

【請求項9】
介護事業所のコンピュータは介護予定スケジュールを示す予定マトリックスにスタッフ毎の勤務実績を手動又は自動入力により、介護スケジュールが予定通りに実施されたかどうか判定する工程を含み、介護スケジュールを示す予定マトリックスとケアマネが作成した介護利用者毎の月間サービス提供票D1とを比較する工程を含み、介護スタッフ毎の実働記録を予定マトリックスへの手動又は自動入力により、実働マトリックスを作成する工程を含み、予定マトリックスと実績マトリックスとを突き合わせて該当なしの予定サービスを表示する工程と、実績のない介護サービスについて不当請求しているか否かを監査する工程を含むことを特徴とする介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項10】
請求項9において、上記勤務日別スタッフ毎の実働入力信号を介護スタッフ毎の個別認証から得る工程を含むことを特徴とする介護看護サービスマトリックス管理方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1から7は、以下のとおりである。(下線は、審判請求人が付した通りである。)

「【請求項1】
手動入力可能な手段と、表示画面と、処理手段とを備えたコンピュータを用い、
曜日別に、単位サービス時間で区切られたマス目を順に縦列又は横列して形成した介護サービス時系列を単一又は複数の介護事業所の予定するスタッフ数だけ並列して縦横複数のマス目で区切られ、表示される単位サービスマスで形成され、介護所の介護可能なキャパシティを作業単位マスで示す曜日別の介護サービスの管理予定マトリックスをコンピュータ画面に表示させ、 コンピュータ画面に表示された、介護サービスの管理予定マトリックスの空き単位サービスマスに対し、介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービスが上記曜日別マトリックスの並列されるスタッフ列の一方の端から予定の介護サービス単位を時系列に沿って時間順に手動入力された時に、コンピュータ画面に表示される介護事業所の縦横複数のマス目で形成される介護サービスのマトリックス(キャパシティ)内に予定介護サービス分布を表示させるように、コンピュータ処理することを特徴とするコンピュータによる介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項2】
上記請求項1の方法において、手動入力可能な手段と、表示画面と、処理手段とを備えたコンピュータを用い、
縦横複数のマス目で形成される管理予定マトリックス(キャパシティ)に予め予定スタッフとその勤務時間シフトを入力した介護事業所の実働マトリックスをコンピュータ画面に表示させ、
介護事業所のコンピュータ画面に表示された実働マトリックス上の空き時間がケアマネによって手動入力で選択された時に、月間サービス提供票D1が作成されるようにコンピュータ処理する請求項1記載の介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項3】
上記請求項2の方法において、ケアマネの作成する月間サービス提供票D1を電子化した端末と介護事業所の曜日別の予定スタッフとその勤務時間シフトを予め入力した実働マトリックス(キャパシティ)を表示した端末とを連携させ、
ケアマネが目視により介護事業所の曜日別の実働マトリックスの空き情報を確認してその端末に表示される介護利用者の月間サービス提供票D1に介護時間と介護サービス科目コードとが入力された時に、月間サービス提供票が作成されるようにコンピュータ処理する請求項2記載の介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項4】
上記請求項3において、介護利用者の月間サービス提供票D1が入力された時に、介護事業所の曜日別の実働マトリックスに予約入力が完了するようにコンピュータ処理する請求項3記載の介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項5】
上記請求項1の方法において、コンピュータを用い、サービス単位時系列をスタッフ数並列してなる縦横複数のマス目で形成される介護サービスの管理予定マトリックスをコンピュータ画面に表示させ、
介護事業所のケアマネの作成した月間サービス提供票D1に基づいてケアマネの要求する介護利用者の予定介護サービス単位が、上記曜日別マトリックスの並列されるスタッフ列の一方の端から時系列に沿って時間順に手動入力された時に、介護事業所の介護サービスの予定マトリックス(キャパシティ)内に予定介護サービスを表示させ、
介護事業所のコンピュータは該予定マトリックス上の全介護サービス分布に対し、サービス時系列の並列数だけの各介護スタッフの勤務時間シフトを、時系列の必要な単位サービスマス目が埋まるようにコンピュータ処理する請求項1記載の介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項6】
上記請求項5において、介護事業所のコンピュータは予定介護サービスに対し該当スタッフなしの場合、予定マトリックス上に該当スタッフなしとして介護利用者名を介護予定時間と介護サービス科目とともに表示し、
予定マトリックス上で該当スタッフなしの介護利用者名がマトリックス上の適当なサービス空きマス目に手動で移動された時に、該当スタッフなしのサービス単位にスタッフを割り当てるようにコンピュータ処理する請求項5記載の介護看護サービスマトリックス管理方法。

【請求項7】
上記請求項5において、介護事業所のコンピュータは上記介護予定スケジュールに変更が生ずればスタッフの欠勤又は勤務時間シフトの変更が入力された時に、該当スタッフなしの表示をするとともに、その表示に介護利用者名、介護予定時間、介護サービス科目を表示し、マトリック上でこれを空き時間にシフトして該当するスタッフをあてがい、介護利用者と介護スタッフのマッチング調整するようにコンピュータ処理する請求項5記載の介護看護マトリックス管理方法。」

2.補正の適否について

本件補正は、後述する「原査定の拒絶の理由」である特許法第36条第6項第2号でいう明確性要件違反に対応してなされたものであり、特許法第17条の2第5項第4号でいう「明りょうでない記載の釈明」を目的とする補正、及び、本件補正前の請求項5、9、10を削除するものであり、特許法第17条の2第5項第1号でいう「第36条第5項に規定する請求項の削除」を目的とする補正である。
したがって、本件補正は適法になされたものである。


第3 本願発明について

本件補正は、上記「第2.本件補正(平成30年1月31日提出の手続補正書による手続補正)について」の「2.補正の適否について」で言及した通り適法になされたものであるので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2.本件補正(平成30年1月31日提出の手続補正書による手続補正)について」の「(2)の【請求項1】」)により特定されるものである。


第4 原査定の拒絶の理由

原査定の理由は、以下の「理由1」、「理由2」、「理由3」の通りである。

●理由1(進歩性)
この出願の請求項9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1から3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
また、この出願の請求項10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1から4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1:特開2006-133830号公報
引用例2:特開2001-067413号公報
引用例3:小野田 裕章 外1名,健康で豊かな高齢社会を支援する
トータルソリューション 介護保険関連の在宅サービス
事業者の運営効率向上を支援する総合情報システム,日立
評論,日本,2003年10月1日,第85巻 第10号,
p.35-40
引用例4:特開2009-288828号公報

●理由2(発明該当性)
この出願の請求項1-10に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

●理由3(明確性)
この出願の請求項1-10の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第5 当審の判断

原査定の拒絶の理由である「●理由2(発明該当性)」について、以下検討する。

(1)『自然法則の利用性』の観点について

特許法第2条第1項には、『この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。』と規定され、同法第29条第1項柱書には、『産業上利用することができる発明をしたものは、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。』と規定されている。したがって、特許出願に係る発明が『自然法則を利用した技術的思想の創作』でないときは、その発明は特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。

そこで、本願発明が『自然法則を利用した』ものか否かについて以下検討する。

(1-1)『手動入力可能な手段と、表示画面と、処理手段とを備えたコンピュータを用い、』との構成要件は、コンピュータの技術的構成を特定しているものと認められる。

(1-2)『曜日別に、単位サービス時間で区切られたマス目を順に縦列又は横列して形成した介護サービス時系列を単一又は複数の介護事業所の予定するスタッフ数だけ並列して縦横複数のマス目で区切られ、表示される単位サービスマスで形成され、介護所の介護可能なキャパシティを作業単位マスで示す曜日別の介護サービスの管理予定マトリックスをコンピュータ画面に表示させ、』との構成要件は、「曜日別の介護サービスの管理予定マトリックス」の仕様(フォーマット)を特定する事項と仕様(フォーマット)が特定された「曜日別の介護サービスの管理予定マトリックス」をコンピュータ画面に表示させる事項とが特定されていると認められる。

ここで、「曜日別の介護サービスの管理予定マトリックス」の仕様(フォーマット)を特定する事項は、「ヒト」が人為的に取り決めた仕様(フォーマット)そのものであり、『自然法則』が利用されているとは認められない。

一方、「曜日別の介護サービスの管理予定マトリックス」をコンピュータ画面に表示させる事項は、一応、曜日別の介護サービスの管理予定マトリックスを「コンピュータ画面に表示させる」という技術的事項を特定しているものと認められる。

(1-3)『コンピュータ画面に表示された、介護サービスの管理予定マトリックスの空き単位サービスマスに対し、介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービスが上記曜日別マトリックスの並列されるスタッフ列の一方の端から予定の介護サービス単位を時系列に沿って時間順に手動入力された時に、コンピュータ画面に表示される介護事業所の縦横複数のマス目で形成される介護サービスのマトリックス(キャパシティ)内に予定介護サービス分布を表示させるように、コンピュータ処理すること』との構成要件は、「コンピュータ画面に表示された、介護サービスの管理予定マトリックスの空き単位サービスマスに対し、介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービスが上記曜日別マトリックスの並列されるスタッフ列の一方の端から予定の介護サービス単位を時系列に沿って時間順に手動入力する」という事項と「コンピュータ画面に表示される介護事業所の縦横複数のマス目で形成される介護サービスのマトリックス(キャパシティ)内に予定介護サービス分布を表示させるように、コンピュータ処理すること」という事項が特定されていると認められる。

ここで、「コンピュータ画面に表示された、介護サービスの管理予定マトリックスの空き単位サービスマスに対し、介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービスが上記曜日別マトリックスの並列されるスタッフ列の一方の端から予定の介護サービス単位を時系列に沿って時間順に手動入力する」という事項は、「手動入力する」という文言からも明らかな様に、「ヒト」が行う行為そのものを特定しており、『自然法則』が利用されているとは認められない。

一方、「コンピュータ画面に表示される介護事業所の縦横複数のマス目で形成される介護サービスのマトリックス(キャパシティ)内に予定介護サービス分布を表示させるように、コンピュータ処理すること」という事項は、「コンピュータ処理する」との文言はあるものの、「手動入力」されたデータ(入力情報)を「コンピュータ画面に表示される介護事業所の縦横複数のマス目で形成される介護サービスのマトリックス(キャパシティ)内に表示」させるために、単にコンピュータを用いるという技術的事項が特定されているに過ぎない。

(1-4)『コンピュータによる介護看護サービスマトリックス管理方法』との構成要件は、「コンピュータによる」との文言はあるものの、コンピュータの表示画面に表示された「曜日別の介護サービスの管理予定マトリックス」に「手動入力」で「介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービス」を入力し、入力されたデータ(入力情報)を反映させたものを利用して、「ヒト」が管理するという「介護看護サービスの管理方法」を特定しているに過ぎない。

(1-5)上記(1-1)から(1-4)で言及した様に、本願発明は、「入力手段」及び「表示手段」として「コンピュータ」という技術的手段を一部に用いてはいるものの、全体としては、「ヒト」が人為的に取り決めた仕様(フォーマット)に基づく「曜日別の介護サービスの管理予定マトリックス」に「介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービス」を「手動入力」し、入力されたデータ(入力情報)を反映させたものを利用して「管理する」という「介護看護サービスの管理方法」そのものであるから、特許法第2条第1項でいうところの『自然法則を利用した技術的思想の創作』とはいえず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものである。

(2)『コンピュータソフトウェア関連発明』の観点について

本願発明は、請求項の記載に『手動入力可能な手段と、表示画面と、処理手段とを備えたコンピュータを用い、』、『コンピュータ処理する』、『コンピュータによる介護看護サービスマトリックス管理方法』等の文言が特定されていることに鑑み、いわゆる、「コンピュータソフトウェア関連発明」であるとも考えられるため、その観点からも以下検討する。

ここで、ソフトウェア関連発明が『自然法則を利用した技術的思想の創作』となる基本的な考え方は、以下の通りである。

ソフトウェア関連発明のうちソフトウェアについては、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」場合は、当該ソフトウェアは『自然法則を利用した技術的思想の創作』である。「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。(「特許・実用新案審査基準」の特定技術分野への適用例 附属書B 「2.1.1.2 ソフトウェアの観点に基づく考え方」参照。)

(2-1)本願発明は、その請求項の記載から、「手動入力可能な手段」、「表示画面」、「処理手段」という、いわゆる「ハードウェア資源」といえるものを利用していることは特定されている。

(2-2)一方、本願発明に係る「処理手段」が実行する「情報処理」の内容については、請求項の記載から、(ア)「曜日別に、単位サービス時間で区切られたマス目を順に縦列又は横列して形成した介護サービス時系列を単一又は複数の介護事業所の予定するスタッフ数だけ並列して縦横複数のマス目で区切られ、表示される単位サービスマスで形成され、介護所の介護可能なキャパシティを作業単位マスで示す曜日別の介護サービスの管理予定マトリックスをコンピュータ画面に表示させ、」、(イ)「コンピュータ画面に表示された、介護サービスの管理予定マトリックスの空き単位サービスマスに対し、介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービスが上記曜日別マトリックスの並列されるスタッフ列の一方の端から予定の介護サービス単位を時系列に沿って時間順に手動入力された時に、コンピュータ画面に表示される介護事業所の縦横複数のマス目で形成される介護サービスのマトリックス(キャパシティ)内に予定介護サービス分布を表示させるように、コンピュータ処理する」、(ウ)「コンピュータによる介護看護サービスマトリックス管理方法」である。

(2-3)上記(ア)及び(イ)の情報処理の内容は、入力手段により入力されたデータ(入力情報)を単にコンピュータ画面に表示させるという、「手動入力可能な手段」、「表示画面」、「処理手段」を備えたコンピュータが当然に実行するコンピュータ本来の情報処理にすぎない。

(2-4)また、上記(ウ)につては、上記(1-4)で言及した様に、コンピュータの表示画面に表示された「曜日別の介護サービスの管理予定マトリックス」に「手動入力」で「介護利用者の月間サービス提供票D1から曜日別の予定介護サービス」を入力し、入力されたデータ(入力情報)を反映させたものを利用して、「ヒト」が管理するという「介護看護サービスの管理方法」を特定しているに過ぎないから、コンピュータが実行する情報処理の内容を特定しているものではない。

(2-5)してみると、本願発明に係る「処理手段」が実行する「情報処理」の内容は、「手動入力可能な手段」、「表示画面」、「処理手段」を備えたコンピュータが当然に実行するコンピュータ本来の情報処理であり、「使用目的に応じた特有の情報処理」とはいえないものであるから、「コンピュータソフトウェア関連発明」である本願発明は、その観点から見ても『自然法則を利用した技術的思想の創作』とはいえない。
したがって、本願発明は、特許法第2条第1項でいうところの『自然法則を利用した技術的思想の創作』とはいえず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものである。


第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-16 
結審通知日 2019-01-17 
審決日 2019-02-01 
出願番号 特願2014-245706(P2014-245706)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 広一  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 佐藤 智康
宮久保 博幸
発明の名称 訪問介護看護のためのマトリックスイノベーション管理法  
代理人 石井 久夫  
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