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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1350157
審判番号 不服2018-3935  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-20 
確定日 2019-03-20 
事件の表示 特願2016- 54332「統合システム構造および使用の方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月21日出願公開、特開2016-129712〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)12月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年12月23日、米国)を国際出願日とする特願2013-546256号の一部を平成28年3月17日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月28日付けの拒絶理由が通知され、同年9月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月15日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して平成30年3月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、本件補正前の平成29年9月1日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13を削除し、請求項14の記載である、
「【請求項14】
患者区域であって、
カテーテルと、
前記カテーテル内に適合するように構成される、サンプルプローブと、 インタフェースモジュールであって、
光源、干渉計、及び光検出器を有する光コヒーレントトモグラフィシ ステムと、
画像データをデジタル化して圧縮するように構成されるデジタイザと
を有するインタフェースモジュールと
を有する患者区域と、
前記患者区域から遠隔に配置されるモバイルコンソールであって、少なくとも一つのモバイル輸送デバイス、コネクタケーブルを介して前記デジタイザに動作可能に接続され、前記インターフェースモジュールから前記デジタル化される画像データを受信して解凍するように構成されるCPUコンポーネント、及びディスプレイを有する、モバイルコンソールと
を有する、統合システム。」を、
「【請求項1】
患者区域であって、
カテーテルと、
前記カテーテル内に適合するように構成される、サンプルプローブと、 インタフェースモジュールであって、
光源、干渉計、及び光検出器を有する光コヒーレントトモグラフィシ ステムと、
画像データをデジタル化して圧縮するように構成されるデジタイザと
を有するインタフェースモジュールと
を有する患者区域と、
前記患者区域から遠隔に配置されるモバイルコンソールであって、少なくとも一つのモバイル輸送デバイス、コネクタケーブルを介して前記デジタイザに直接接続され、前記インターフェースモジュールから前記デジタル化される画像データを受信して解凍するように構成されるCPUコンポーネント、及びディスプレイを有する、モバイルコンソールと
を有し、前記干渉計は、光源出力をデジタイザに効率的に同期させるサンプルクロック生成器を有する、
統合システム。」(下線は補正箇所である。)とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)上記請求項1についての補正は、本件補正前の請求項14の「干渉計」を「光源出力をデジタイザに効率的に同期させるサンプルクロック生成器を有する」ものに限定することを含むものであるから、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(2)引用文献について
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
本願の優先日前に頒布され、下記第3の2の原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である引用文献1(米国特許出願公開第2009/0276515号明細書)には、次の事項が記載されている。なお、以下の(イ)の引用発明の認定に関連する当審訳の箇所に、当審で下線を付与した。
(1ア)「FIELD OF THE INVENTION
[0002] The present invention relates to medical systems, and more particularly to multi-modality networks for providing access to different medical devices through a common interface.」
(当審訳:発明の分野
[0002] 本発明は、医療システムに関し、特に、共通インターフェイスを介して種々の医療装置へのアクセスを可能にするマルチモダリティネットワークに関する。)

(1イ)「DETAILED DESCRIPTION
[0023] FIG. 1 shows a block diagram of an example multi-modality network 10. The network 10 comprises a host computer 15 and a plurality of medical devices 35-1 to 35-3, each of which may be a diagnostic and/or therapeutic device. For example, a medical device 35-1 to 35-3 may acquire image data from a patient using an imager, perform measurements in the patient, and/or perform therapy (e.g., delivering therapeutic agent to a patient). Although three medical devices 35-1 to 35-3 are shown in the example in FIG. 1, the network 10 may include any number of medical devices. In a preferred embodiment, the network 10 is flexible allowing medical devices 35-1 and 35-3 to be added to or removed from the network 10. The host computer 15 may be installed in a laboratory room or an adjacent control room. The example network 10 also comprises a network hub 30 that couples communications between the host computer 15 to the medical devices 35-1 to 35-3. Other network configurations may be used besides the example shown in FIG. 1 including a ring configuration, a common bus configuration, a tree configuration, daisy-chain configuration, and the like. Examples of other network configurations are given below.
[0024] The network hub 30 is coupled to the host computer 15 via communications link 23 and to the medical devices 35-1 to 35-3 via communications links 27-1 to 27-3. In the example shown, the network hub 30 is coupled to each medical device 35-1 to 35-3 by a separate point-to-point link 27-1 to 27-3. Alternatively, the medical devices 35-1 to 35-3 may be coupled to the network hub 30 over a shared transmission line as shown in FIG. 4. In an embodiment, the network hub 30 provides electrical isolation and/or power for the medical devices 35-1 to 35-3, as explained further below. The links 23 and 27-1 to 28-3 may comprise twisted pair wires, coaxial cables, optical fibers, wireless links, and/or a combination thereof. A wireless link requires a wireless transceiver at both ends of the link. The medical devices 35-1 and 35-3 and host computer 15 may communicate with each other over the network 10, e.g., using industry-standard protocols such as Ethernet protocols (e.g., IEEE 802.3). An advantage of using standard Ethernet protocols is that they provide protocols for transporting information, addressing devices coupled to the network (e.g., MAC addresses) and handling access to the network (e.g., Carrier Sense Multiple Access/Collision Detection). Examples of industry standards that may be used for the links include copper-based Ethernet (10/100/1000/1000BaseT) and optical-based Ethernet, Token-Ring, USB (1.1, 2.0), IEEE 1394 (a and b), and other standards. Examples of wireless standards include IEEE 802.11a, 802.11b, 802.11b, 802.11g, 802.11n, Bluetooth, Zigbee, UWB (Ultra Wide Band), and other wireless standards. Examples of standards for transmitting images and video include Digital Video (DV), HD-Digital Video (HD-DV), S-video, NTSC, PAL, DVI, HDMI, and other standards.
[0025] The medical devices 35-1 to 35-3 may comprise devices employing different imaging modalities, e.g., intravascular ultrasound, ultrasound array beamformer, optical coherence tomography (OCT), Raman spectroscopy, MRI, and the like. A more detailed discussion of example medical devices is given below. The network 10 advantageously allows a physician to access different medical devices 35-1 to 35-3 on the network using a common interface (e.g., monitor 25 and control panel 20 coupled to the computer 15). For example, the network 10 allows a physician to acquire images from devices using different imaging modalities and view the images on a common interface. Further, using a common interface allows a medical device manufacturer or vender to manufacture a medical device without a control console and/or display, thereby reducing development, manufacturing, and equipment costs. Alternatively, a medical device may have a simplified control console and/or display compared with a standalone medical device with an understanding that the physician will access the device primarily through the common control console and/or will only need to access a subset of the controls at the medical device.
[0026] In the preferred embodiment, a monitor (e.g., LCD monitor) and a touch screen control panel 20 are coupled to the computer 15. The monitor 25 is used to display images and/or measurements received from the medical devices 35-1 to 35-3. The touch screen control panel 20 displays controls that allow the physician to interface with the computer 15 and issue commands to the medical devices 35-1 to 35-3 via the computer 15. An advantage of using a touch screen control panel 20 is that it can display different sets of controls corresponding to the different medical devices 35-1 to 35-3. For example, the touch screen control panel 20 may display a set of controls corresponding to medical device 35-1 when the physician selects medical device 35-1. The touch screen control panel 20 may display a set of icons where each icon represents one of the medical devices 35-1 to 35-3 currently coupled to the network. In this embodiment, the physician selects one of the medical devices 35-1 to 35-3 by touching the corresponding icon on the control panel 20. Thus, the physician can choose the medical device according to clinical need. Also, the selected medical device may be automatically activated when the physician selects the device.」
(当審訳:詳細な説明
[0023] 図1は、例示のマルチモダリティネットワーク10のブロック図である。ネットワーク10は、ホストコンピュータ15と、複数の医療装置35‐1?35‐3とを有し、これら医療装置は各々、診断及び/又は治療用装置であるのが良い。例えば、医療装置35‐1?35‐3は、イメージャを用いて患者から画像データを収集し、患者に対する測定を実施すると共に/或いは治療を施す(例えば、治療薬を患者に投与する)ことができる。3つの医療装置35‐1?35‐3が図1の例に示されているが、ネットワーク10は、任意の数の医療装置を有することが可能である。好ましい実施形態では、ネットワーク10は、融通性があり、医療装置35‐1,35‐3をネットワーク10に追加し又はこれから除くことができる。ホストコンピュータ15は、実験室又は隣接の制御室内に設置可能である。例示のネットワーク10は、ホストコンピュータ15と医療装置35‐1?35‐3との間の通信を結合するネットワークハブ30を更に有している。図1に示されている例のほかに、他のネットワーク構成を利用することができ、かかる構成としては、リング構成、共通バス構成、いもづる(デイジーチェーン)構成等が挙げられる。他のネットワーク構成の例は以下に与えられている。
[0024] ネットワークハブ30は、通信リンクによりホストコンピュータ15に結合されると共に通信リンク27‐1?27‐3を経由して医療装置35‐1?35‐3に結合されている。図示の例では、ネットワークハブ30は、別個の二点間リンク27‐1?27‐3によって各医療装置35‐1?35‐3に結合されている。変形例として、医療装置35‐1?35‐3は、図4に示されているように共有伝送路によりネットワークハブ30に結合されても良い。一実施形態では、ネットワークハブ30は、以下に更に説明するように医療装置35‐1?35‐3のための電気的絶縁を可能にすると共に/或いは電力を供給する。リンクス23及びリンク27‐1?27‐3は、より対(ツイストペア)線、同軸ケーブル、光ファイバ、ワイヤレスリンク及び/又はこれらの組み合わせから成るのが良い。ワイヤレスリンクでは、リンクの両端にワイヤレストランシーバが必要である。医療装置35‐1,35‐3及びホストコンピュータ15は、ネットワーク10により、例えば、業界標準プロトコル、例えばイーサネットプロトコル(例えば、IEEE 802.3)を用いて互いに通信可能である。標準イーサネットプロトコルを用いた場合の利点は、これら標準イーサネットプロトコルが情報を運び、ネットワークに結合された装置をアドレス指定し(例えば、MACアドレス)及びネットワークへのアクセスを取り扱う(例えば、キャリヤ検知多重アクセス/衝突検出)のためのプロトコルを提供することにある。リンクに用いることができる業界標準の例としては、メタル系イーサネット(10/100/1000/1000BaseT)及び光ファイバ系イーサネット、トークン・リング、USB(1.1,2.0)、IEEE1394(a及びb)及び他の規格が挙げられる。ワイヤレス無線規格の例としては、IEEE802.11a,802.11b,802.11b,802.11g,802.11n、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、ジグビー(Zigbee)、UWB(ウルトラワイドバンド)及び他のワイヤレス規格が挙げられる。画像及び映像を送るための規格の例としては、デジタル・ビデオ(DV)、HD‐デジタル・ビデオ(HD‐DV)、S‐ビデオ、NTSC、PAL、DVI、HDMI及び他の規格が挙げられる。
[0025] 医療装置35‐1?35‐3は、種々の画像化モダリティ、例えば血管内超音波、超音波アレイビームフォーマ、光コヒーレンス断層撮影法(OCT)、ラマン分光分析法、MRI等を採用した装置から成るのが良い。例示の医療装置の詳細な説明が以下に与えられている。ネットワーク10は、有利には、医師が共通インターフェイス(例えば、コンピュータ15に結合されたモニタ25及びコントロールパネル20)を用いてネットワーク上の種々の医療装置35‐1?35‐3にアクセスできるようにする。例えば、ネットワーク10により、医師は、種々の画像化モダリティを用いて装置から画像を収集し、共通インターフェイス上でこれら画像を視認することができるようにする。さらに、共通インターフェイスを用いると、医療装置製造業者又は供給業者は、制御コントロール及び/又はディスプレイなしの医療装置を製造することができ、それにより開発費、製造費及び設備費が減少する。変形例として、医療装置は、医師が主として共通制御コンソールを介して医療装置にアクセスすると共に/或いは医療装置のところの制御部のサブセットにアクセスする必要があるに過ぎないということを理解した上で、スタンドアロン型医療装置と比較して単純化された制御コンソール及び/又はディスプレイを有しても良い。」

(1ウ)「 [0031] ・・・. This is especially advantageous when one of the devices includes a component (e.g., a probe or a catheter) contacting and/or inserted into a patient, which could harm the patient if an electrical surge is allowed to propagate to the patient. 」「
(当審訳:[0031] ・・・。これは、医療装置のうちの1つが患者に接触すると共に/或いは患者の体内に挿入されるコンポーネント(例えば、プローブ又はカテーテル)を有する場合に特に有利であり、なお、かかるコンポーネントは、電気サージが患者に伝搬した場合には患者を傷つける場合がある。」

(1エ)「[0046] FIG. 8 shows an example of a medical device 505 for an imaging modality. The medical device 505 comprises a network interface 520, an acquisition processor 518, an imaging system 515, and an imager 530. The imager 530 may comprise an ultrasound array, an MRI, OCT imager, etc. The imaging system 515 drives the imager 530 and receives signals from the imager 530. For the example of an OCT imager 530, the imaging system 515 may include a light source for the OCT imager 530, and an optical signal processor (e.g., interferometer) for processing optical signals from the imager 530 into electrical signals containing image information that are inputted to the acquisition processor 518. The acquisition processor 518 controls the imaging system 515 based on commands received from the host computer, and sends image data and other information (e.g., status information) to the host computer. The acquisition processor 518 may be PC-based or other type of processor. The acquisition processor 518 communicates with the host computer over the network via the network interface 520, which may comprise a standard network interface card. The device 505 may also include memory 525 for storing software (e.g., software uploaded to the host computer), temporarily storing data being processed, buffering data, and the like. The memory 525 may comprise RAM, nonvolatile memory (e.g., Flash memory), buffers, and/or a combination thereof.」
(当審訳:[0046] 図8は、画像化モダリティのための医療装置505の一例を示している。医療装置505は、ネットワークインターフェイス520、収集プロセッサ518、画像化システム515及びイメージャ530を有している。イメージャ530は、超音波アレイ、MRI、OCTイメージャ等から成るのが良い。画像化システム515は、イメージャ530を駆動し、イメージャ530からの信号を受け取る。OCTイメージャ530の一例に関し、画像化システム515は、OCTイメージャ530のための光源及びイメージャ530からの光信号を処理して収集プロセッサ518に入力される画像情報を含む電気信号にする光信号プロセッサ(例えば、干渉計)を有するのが良い。収集プロセッサ518は、ホストコンピュータから受け取ったコマンドに基づいて画像化システム518を制御し、画像データ及び他の情報(例えば、状態情報)をホストコンピュータに送る。収集プロセッサ518は、PC利用型のものであっても良く、他形式のプロセッサであっても良い。収集プロセッサ518は、ネットワークインターフェイス520経由でネットワークによりホストコンピュータと通信し、ネットワークインターフェイスは、標準ネットワークインターフェイスカードから成るのが良い。医療装置505は、ソフトウェア(例えば、ホストコンピュータにアップロードされたソフトウェア)を記憶し、処理中のデータを一時的に記憶し、データをバッファリングすること等を行うメモリ525を更に有するのが良い。メモリ525は、RAM、不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)、バッファ及び/又はこれらの組み合わせから成るのが良い。」

(1オ)FIG.1(図1)として、以下の図面が記載されている。

ここで、Monitor、Computer、Touch Screen Control Panel、Network Hub、Medical deviceは、各々「モニタ」、「コンピュータ」、「タッチスクリーンコントロールパネル」、「ネットワークハブ」、「医療装置」と訳される。

(1カ)FIG.8(図8)として、以下の図面が記載されている。

ここで、Network Interface、Acquistion Processor、Memory、Imageing System、Imgerは、各々「ネットワークインターフェイス」、「収集プロセッサ」、「メモリ」、「画像化システム」、「イメージャ」と訳される。

(イ)引用発明について
a 記載事項の整理
(a)上記摘記(1イ)における「画像化モダリティ」である「医療装置35‐1?35‐3」の具体例は、摘記(1エ)に記載されている「画像化モダリティのための医療装置505」であるから、以下両者を「医療装置」という。

(b)上記図1及び摘記(1イ)の「ネットワークハブ30は、通信リンクによりホストコンピュータ15に結合されると共に通信リンク27‐1?27‐3を経由して医療装置35‐1?35‐3に結合されている」、「リンクス23及びリンク27‐1?27‐3は」「同軸ケーブル」「から成る」の記載から、「ホストコンピュータ15」と「医療装置」とは、途中にネットワークハブを有する同軸ケーブルによって結合されている。

(c)「収集プロセッサ518は、ネットワークインターフェイス520経由でネットワークによりホストコンピュータと通信」しており、「画像及び映像を送るための規格の例としては、デジタル・ビデオ(DV)、HD‐デジタル・ビデオ(HD‐DV)」であるから、データはデジタル化されて送られており、ネットワークインターフェイス520で画像データはデジタル化されている。

b 引用発明
上記aを踏まえれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、各構成要素に付された符号については省略している
「ネットワークを有する医療システムにおいて、
ネットワークは、ホストコンピュータと、複数の医療装置とを有し、
医療装置は、ネットワークインターフェイス、収集プロセッサ、画像化システム及びイメージャを有しており、
イメージャは、OCTイメージャであり、
画像化システムは、OCTイメージャのための光源及びイメージャから の光信号を処理する干渉計を有し、
収集プロセッサは、画像化システムを制御し、画像データ及び他の情報 をネットワークインターフェイス経由でネットワークによりホストコン ピュータに送り、ネットワークインターフェイスで画像データはデジタ ル化されており、
ホストコンピュータには、モニタ及びコントロールパネルが結合されており、
該ホストコンピュータは、実験室又は隣接の制御室内に設置され、途中 にネットワークハブを有する同軸ケーブルによって上記医療装置に結合 されている、
医療システム。」(以下「引用発明」という。)

イ 引用文献2
本願の優先日前に頒布され、下記第3の2の原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である引用文献2(特開2004-290548号公報)には、次の事項が記載されている。
(2ア)「【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の画像診断装置は、生体に対して超音波の送受波を行う電気音響変換手段と、この電気音響変換手段からイメージング用の超音波を送波するために前記電気音響変換手段に対して駆動信号を供給するイメージング用駆動手段と、前記生体に対して光の送受波を行う光送受波手段と、前記超音波の送受波および前記光の送受波の方向を制御する制御手段と、前記電気音響変換手段によって得られる前記生体からの受信信号と前記制御手段からの送受波方向の情報に基づいて超音波画像データを生成する超音波画像データ生成手段と、前記生体からの反射光と前記制御手段からの送受波方向の情報に基づいてOCT画像データを生成するOCT画像データ生成手段と、前記超音波画像データ及び前記OCT画像データを表示する表示手段とを備えることを特徴としている。」

(2イ)「【0019】
図1において、診断・治療装置100は、生体内に挿入して光及び超音波の送受波を行なうためのカテーテル部10と、カテーテル部10から光及び超音波を送波するためにカテーテル部10に対して駆動信号を供給すると共に、カテーテル部10を介して生体から得られる反射光(計測光)及び超音波反射波(受信超音波)に基づいて画像データを生成する診断・治療装置本体30と、上記カテーテル部10と診断・治療装置本体30とを接続する接合部17を備えている。」

(2ウ)図1には、以下の図面が記載されている。
【図1】

上記図面から、カテーテル内に適合するようにプローブ部分(ミラー、超音波振動子等)があることが見て取れる。

ウ 引用文献3
本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記第3の2の原査定で引用された文献である引用文献3(国際公開第2009/087759号)には、次の事項が記載されている。
(3ア)「技術分野
[0001] 本発明は、通信ネットワークを通じて互いに接続された超音波診断装置と端末装置を備え、端末装置によって超音波診断装置を遠隔操作しながら、超音波診断装置で取得した画像データを端末装置に伝送して端末装置のモニタに表示する超音波遠隔診断システムに関するものである。」

(3イ)「[0018] また、画像メモリ17に格納された画像データは、MPEGエンコード部21によってフレーム毎にエンコード(圧縮・符号化)された後、ネットワークアダプタ22によってパケットに分割され、通信ネットワーク12を通じて端末装置11に伝送される。
[0019] 端末装置11は、超音波診断装置10から通信ネットワーク12を通じて伝送されてきたパケットを受信するネットワークアダプタ23と、ネットワークアダプタ23で受信した一定数のパケットを貯える通信バッファ24と、通信バッファ24に一定数のパケットが貯えられる度に画像データをデコード(復元・復号化)するMPEGデコード部25と、MPEGデコード部25によってデコードされた画像データを格納する画像メモリ26を備えている。画像メモリ26に格納された画像データは、モニタ28に表示される。」

エ 引用文献4
本願の優先日前にに頒布され、下記第3の2の原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である引用文献4(特表2003-527184号公報)には、次の事項が記載されている。
(4ア)「【0001】
本発明は、医療診断撮像システム、特に、遠隔的に照会され、診断され、アップグレードされ得る医療診断撮像システムに関わる。」

(4イ)「【0007】
超音波システム100、ラップトップコンピュータ110、及び、診断センター120の中で可能な様々な接続を図2a乃至図2dに示す。図2aは、診断ラップトップコンピュータ110が超音波システム100の場所にあるときに使用され得るローカルシリアル接続を示す。同図は、ラップトップコンピュータ110と超音波システム100との間のシリアル/PPP接続を示す。図2bは、ラップトップコンピュータが超音波システムの場所から離れた場所にあるときに使用され得る、ラップトップコンピュータ110と超音波システム100との間のダイヤルイン接続を示す。この場合、公衆電話網により、ラップトップコンピュータ110及び超音波システム100のモデム32と、電話網のモデム又はモデムに互換性のある回路32’とを通じてシリアル/PPP接続される。」

(4ウ)図2aには、以下の図面が記載されている。


この図面から、ラップトップコンピュータ110ではなく、超音波システム100の方ではあるものの、コンピュータを台車のようなものに載せていることが見て取れる。

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
ア 患者区域の構成について
(ア)インタフェースモジュールについて
a 引用発明の「光源」、「干渉計」及び「OCTイメージャ」は、補正発明の「光源」、「干渉計」及び「光検出器」に相当するから、引用発明の「OCTイメージャ」並びに「光源」及び「干渉計」を有する「画像化システム」は、補正発明の「光源、干渉計、及び光検出器を有する光コヒーレントトモグラフィシステム」に相当する。

b 補正発明における「デジタイザ」について、本願明細書に「干渉信号を生成する器具類(例えば、光源、干渉計、および受光器)、情報を捕獲する器具類(例えば、デジタイザ)およびこれらの情報を分析する器具類(例えば、ホストコンピュータ、ディスプレイノード、アーカイバルサーバ等)」及び「デジタイザは、画像データをデジタル形式に変換する。このデジタルデータは、ネットワークにわたって伝送」と記載されているとおり、情報を捕獲し、それをデジタル化してネットワークに伝送するものである。
してみれば、引用発明の「画像データ及び他の情報を」「収集」する「収集プロセッサ518」及び「画像データ」を「デジタル化」する「ネットワークインターフェイス」と、補正発明の「画像データをデジタル化して圧縮するように構成されるデジタイザ」とは、「画像データをデジタル化するように構成されるデジタイザ」という限りにおいて共通する。

c 上記a及びbを踏まえれば、引用発明の「OCTイメージャ」並びに「光源」及び「干渉計」を有する「画像化システム」、「画像データ及び他の情報を」「収集」する「収集プロセッサ518」及び「画像データ」を「デジタル化」する「ネットワークインターフェイス」と、補正発明の「光源、干渉計、及び光検出器を有する光コヒーレントトモグラフィシステムと、画像データをデジタル化して圧縮するように構成されるデジタイザとを有するインタフェースモジュール」とは、「光源、干渉計、及び光検出器を有する光コヒーレントトモグラフィシステムと、画像データをデジタル化するように構成されるデジタイザとを有するインタフェースモジュール」の点で共通する。

(イ)上記(ア)を踏まえれば、引用発明の「ネットワークインターフェイス、収集プロセッサ、画像化システム及びイメージャを有して」いる「医療装置」の区域と、補正発明の「カテーテルと、前記カテーテル内に適合するように構成される、サンプルプローブと、」「インタフェースモジュールと」「を有する患者区域」とは、「インタフェースモジュール」「を有する患者区域」の点で共通する。

イ モバイルコンソールについて
(ア)引用発明の「途中にネットワークハブを有する同軸ケーブルによって上記医療装置に結合されている」「ホストコンピュータに送」られる「画像データ」は、「収集プロセッサ」により「収集」され、「ネットワークインターフェイスで」「デジタル化され」るものであるから、「ホストコンピュータ」は「途中にネットワークハブを有する同軸ケーブルによって」「ネットワークインターフェイス」に接続されており、「ネットワークインターフェイスで」「デジタル化され」る「画像データ」を受信していることになる。
してみれば、引用発明の「ネットワークインターフェイスで」「デジタル化され」た「画像データ」が「送」られる、「途中にネットワークハブを有する同軸ケーブルによって上記医療装置に結合されている」「ホストコンピュータ」と、補正発明の「コネクタケーブルを介して前記デジタイザに直接接続され、前記インターフェースモジュールから前記デジタル化される画像データを受信して解凍するように構成されるCPUコンポーネント」とは、上記ア(ア)bを踏まえると、「ケーブルを介して前記デジタイザに接続され、前記インターフェースモジュールから前記デジタル化される画像データを受信するように構成されるCPUコンポーネント」の点で共通する。

(イ)引用発明の「モニタ」及び「ホストコンピュータ」は、補正発明の「ディスプレイ」及び「CPUコンポーネント」に相当し、引用発明の「実験室又は隣接の制御室内に設置され」ることは、「医療装置」から遠隔に配置されることであるから、補正発明の「前記患者区域から遠隔に配置される」ことに相当する。
してみれば、引用発明の「実験室又は隣接の制御室内に設置され、」「モニタ及びコントロールパネルが結合されて」いる「ホストコンピュータ」と、補正発明の「前記患者区域から遠隔に配置されるモバイルコンソールであって、少なくとも一つのモバイル輸送デバイス、」「CPUコンポーネント、及びディスプレイを有する、モバイルコンソール」とは、「前記患者区域から遠隔に配置されるコンソールであって」「CPUコンポーネント、及びディスプレイを有する、」「コンソール」の点で共通する。

ウ 引用発明の「ホストコンピュータと、複数の医療装置とを有」する「ネットワークを有する医療システム」は、補正発明の「患者区域と、」「コンソールとを有する、統合システム」に相当する。

エ 上記ア?ウを踏まえると、補正発明と引用発明とは、
(一致点)
「患者区域であって、
インタフェースモジュールであって、
光源、干渉計、及び光検出器を有する光コヒーレントトモグラフィシ ステムと、
画像データをデジタル化するように構成されるデジタイザと
を有するインタフェースモジュール
を有する患者区域と、
前記患者区域から遠隔に配置されるコンソールであって、ケーブルを介して前記デジタイザに接続され、前記インターフェースモジュールから前記デジタル化される画像データを受信するように構成されるCPUコンポーネント、及びディスプレイを有する、コンソールと
を有する、
統合システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
患者区域に、補正発明では、「カテーテルと、前記カテーテル内に適合するように構成される、サンプルプローブ」を有しているのに対し、引用発明では、それらを有しているかどうか不明である点。

(相違点2)
画像データについて、補正発明では、デジタイザにおいて「圧縮」し、CPUコンポーネントにおいて「解凍」するのに対し、引用発明では、そのような処理をするかどうか不明である点。

(相違点3)
患者区域から遠隔に配置されるコンソールについて、補正発明では、「少なくとも一つのモバイル輸送デバイス」を有する「モバイル」態様であるのに対し、引用発明では、そのようなモバイル態様であるのかどうか不明である点。

(相違点4)
干渉計が、補正発明では「光源出力をデジタイザに効率的に同期させるサンプルクロック生成器を」有しているのに対し、引用発明では、そのようなものを有しているかどうか不明である点。

(相違点5)
デジタイザとCPUコンポーネントを接続するケーブルについて、補正発明では両者を「直接」接続する「コネクタ」ケーブルであるのに対し、引用発明では、ホストコンピュータは「途中にネットワークハブを有する同軸ケーブル」によって結合されている点。

(4)判断
相違点の判断
(ア)相違点1について
OCT装置は生体内に挿入され得るもので、そのプローブはカテーテルに適合するように構成されることは本願優先日前に周知技術(例えば、上記引用文献2の摘記(2ア)?(2ウ)参照)である。
引用発明の「OCT」である「医療装置」も、摘記(1ウ)に「医療装置のうちの1つが」「患者の体内に挿入されるコンポーネント(例えば、プローブ又はカテーテル)を有する」と記載されているとおり、患者の体内に挿入され得るものであり、引用発明において、「医療装置」を患者の体内に挿入すべく、「カテーテルと、前記カテーテル内に適合するように構成される、サンプルプローブ」を有する「医療装置」とすることは、上記周知技術に鑑みて、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
画像データを扱う医療システムの技術分野において、画像データの送信効率を高める等のため、画像データを圧縮して送信し、受信した後に解凍して元の画像データを復元することは、本願優先日前に周知技術である(例えば、上記引用文献3の摘記(3ア)及び(3イ)参照)。
してみれば、引用発明において、画像データを扱うにあたり、画像データの送信効率を高める等のために、画像データを圧縮して送信し、受信した後に解凍して元の画像データを復元する周知技術を採用すること、すなわち、ネットワークインターフェイスにおいて「圧縮」し、ホストコンピュータにおいて「解凍」することは当業者が容易になし得たことである。

(ウ)相違点3について
医療システムの技術分野において、医療機器を取り扱う操作者の利便性等を考慮して、コンピュータを「モバイル」デバイスとすることは、本願優先日前に周知技術である(例えば、上記引用文献4の摘記(4ア)?(4ウ)参照。ラップトップコンピュータ、台車に載せられたコンピュータが記載されている。)
一方、引用文献1の摘記(1イ)には、医療システムを医師(操作者)が扱うことが記載されており、引用発明において、取り扱う操作者の利便性等を考慮して、「モニタ及びコントロールパネルが結合され」た「ホストコンピュータ」として、ラップトップ型のコンピュータや台車に載せられたコンピュータ等の本願優先日前に周知の「モバイル」態様とし、それを「少なくとも1つのモバイル輸送デバイス」を含むものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、「少なくとも1つのモバイル輸送デバイス」については、本願明細書に「モバイルコンソール112は、モバイルコンソール112がCPU170と共に移動することを可能にするホイールまたは他のモバイル輸送デバイスを含む。」と記載され、本願請求項2では「前記モバイルコンソールはラップトップを有する、請求項1に記載の統合システム」と特定されていることから、補正発明における「モバイル輸送デバイス」には、ラップトップ態様とする手段も含まれるものである。

(エ)相違点4について
上記相違点4である、干渉計が「光源出力をデジタイザに効率的に同期させるサンプルクロック生成器」有することについては、上記1で記載したように、本件補正によって追加されてきた事項である。
OCTの干渉計として、光源出力をデジタイザに同期させるサンプルクロック生成器を有する干渉計を用いることは優先日前に周知技術(例えば、特表2010-533301号公報(以下「引用文献5」という。)参照)であり、引用発明の干渉計においても、光源出力をデジタイザに効率的に同期させるべく、サンプルクロック生成器を有する干渉計を用いることは当業者が容易になし得たことである。
なお、本願明細書において、OCT干渉計について、「代替的な実施形態において、OCT干渉計は、サンプルクロック生成器を含む。非線形掃引プロフィールを有する光源は、別個のクロッキング干渉計(例えば、波長計)および光検出器サブシステムを介して光源出力をデジタイザに効率的に同期させるサンプルクロック生成器によって達成され得る。線形(k空間内)掃引を有する光源は、デジタイザの内部(オンボード)サンプルクロック生成器を使用し得る。サンプルクロック生成器方式は、SS-OCTにとって重要なコンポーネントである。他のコンポーネントのように、その位置は、大幅な距離にわたって物理的に分配され得、OCTシステムと共通の要素(干渉計、検出器、デジタイザ等)を共有し得る。例示的なクロック生成器は、同一出願人になる米国特許出願第12/172,980号において開示され、上記文献が、本明細書において参照することによって援用される。」と記載され、その米国特許出願第12/172,980号は、米国特許出願公開第2009/0046295号明細書(上記引用文献5は該米国特許出願公開明細書とファミリー関係にある文献である)として本願優先日前に公開されている。

(オ)相違点5について
同軸ケーブルを、その長さの調整、接続/切断を容易とするためにコネクタ付き同軸ケーブルとすることは当業者において自明のことである。
また、引用発明においては、「途中にネットワークハブを有する同軸ケーブルによって結合されている」が、これは複数ある医療装置に対応するためであり、引用文献1の摘記(1イ)には「任意の数の医療装置を有することが可能である。好ましい実施形態では、ネットワーク10は、融通性があり、医療装置35‐1,35‐3をネットワーク10に追加し又はこれから除くことができる。」と記載されているとおり、医療装置35‐1,35‐3を除けば、医療装置35‐2のみとなり、この場合、途中にネットワークハブを設ける必要はないことから、「医療装置」と「ホストコンピュータ」は、同軸ケーブルによって「直接」接続することにもなる。
してみれば、引用発明において、医療装置の数に対応させて「医療装置」と「ホストコンピュータ」を、同軸ケーブルによって「直接」接続することは当業者が容易になし得たことである。
なお、本願明細書で、ケーブルについて、「デジタイザ160は、PIMケーブル162によってモバイルコンソール112内のCPU170と動作可能に関連付けられる。PIMケーブル162は、任意の接続デバイスであり得、既知の接続デバイス、雌型/雄型コネクタ等を介してモバイルコンソール112と切断される。」と記載されていることから、「コネクタケーブル」とはコネクタ付きのケーブル、「直接」接続とは、両者をケーブルによって接続すること以上の技術的意味はないものである。

イ 補正発明の効果について
上記各々の相違点に基づく効果は、いずれも引用文献1、3、4及び5並びに周知技術から当業者が予期しうるものであり、それらを相乗した効果も認められないことから、補正発明について当業者が予期し得ない格別顕著な効果があるとはいえない。

ウ 請求人の主張
請求人は、審判請求の請求の理由、「制御室またはワークステーションが患者区域から遠隔にある場合、長い距離にわたって広い帯域幅を伝送することに関する問題を有していた。本発明の課題は上記問題を解決することにある。本願の補正後の請求項1の上記特徴によれば、ノイズ、群遅延分散、z-オフセット摂動、および光学挿入損失を低減させる統合システムは実現されるという顕著な作用効果がもたらされる。然るに本願発明のこのような課題及び顕著な作用効果が引用文献1乃至4において認識されているわけでもない。従って、本願の補正後の請求項1に係る発明と引用文献1乃至4との間には課題・作用効果の共通性がないので本願発明の進歩性を否定する根拠となる動機づけとなり得るものが存在しない。」と主張しているが、ノイズ、群遅延分散、z-オフセット摂動、および光学挿入損失の各々が、補正発明のどの発明特定事項によりそれぞれ実現されるのか不明であることから、上記請求人の主張に基づいて、上記各相違点に対する判断が変わることはない。そして、補正発明によってどの程度の「ノイズ、群遅延分散、z-オフセット摂動、および光学挿入損失」を低減できるのか本願明細書には記載されておらず、それらの効果が格別顕著なものとはいえない。

エ 小括
よって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのまとめ
以上のとおり、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、平成29年9月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項14に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1の前者に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
この出願の請求項1?19に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
特に、上記本件補正により請求項1となる請求項14については、原査定において、下記の引用文献1に記載された発明に周知技術(引用文献2?4)を適用して当業者が容易になし得たことであると述べている。
引用文献1:米国特許出願公開第2009/0276515号明細書
引用文献2:特開2004-290548号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:国際公開第2009/087759号(周知技術を示す文献;原査定時に引用された文献)
引用文献4:特表2003-527184号公報(周知技術を示す文献)
なお、引用文献の番号(1?4)は、原査定時における番号で記載している。

3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、3及び4の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、補正発明から「前記干渉計は、光源出力をデジタイザに効率的に同期させるサンプルクロック生成器を有する」との限定事項を削除し、デジタイザとCPUコンポーネントとの接続を「動作可能に」接続することとしたものである。
上記第2の2(3)を参照すると、本願発明と引用発明とは、上記相違点1?3の点で相違し、さらに、相違点5については「コネクタ」ケーブルに加え、「動作可能に」接続する点で相違することにもなるが、「直接」接続することと「動作可能に」接続することとは技術上、実質的に相違しないことから、これらの相違点に対する判断は、第2の2(4)ア(ア)?(ウ)及び(オ)に記載したとおりである。仮に、相違するとしても、第2の2(4)ア(オ)で摘記した本願明細書に「動作可能に関連づけられる」としか記載されておらず、引用発明の「ネットワークインターフェイス」と「ホストコンピュータ」とを「動作可能に」接続することは当業者が容易になし得たことである。
よって、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-10-19 
結審通知日 2018-10-23 
審決日 2018-11-06 
出願番号 特願2016-54332(P2016-54332)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森川 能匡田邉 英治  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 三崎 仁
渡戸 正義
発明の名称 統合システム構造および使用の方法  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 五十嵐 貴裕  

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