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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02C
管理番号 1350181
審判番号 不服2018-1374  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-01 
確定日 2019-04-18 
事件の表示 特願2012-277215「鑑賞者の着用メガネの補正レンズの屈折力を推定する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月27日出願公開、特開2013-127621、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特願2012-277215号(以下、「本件出願」という。)は、平成24年12月19日(パリ条約による優先権主張2011年12月19日、フランス国)の出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成28年 1月 7日 :手続補正書の提出
平成28年 9月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月 4日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月27日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成30年 2月 1日 :審判請求書の提出
平成30年11月29日付け:拒絶理由通知書(この拒絶理由通知書で
通知された拒絶理由を、以下、「当審拒絶
理由」という。)
平成31年 2月20日 :意見書、手続補正書の提出(この手続補正
書による補正を、以下、「本件補正」と
いう。)

第2 本願発明
本件出願の請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
鑑賞者によって着用されたメガネのレンズの屈折力を推定する方法であって、
2つの画像を得る手段の前に位置する前記鑑賞者の顔の連続した2つの画像を取得することであって、当該画像の一方を前記メガネを着用して取得し、他方の画像をメガネ着用しないで取得する、前記取得することと、
前記画像の各々における各目のアイリスの位置を識別することと、
各画像化されたアイリスのサイズ拡大又はサイズ縮小を評価することと、
当該評価されたサイズ拡大又はサイズ縮小に基づいて前記レンズの屈折力を推定することと、
を含み、
前記画像化されたアイリスの前記サイズ拡大又はサイズ縮小は、前記取得された2つの画像の一方の画像上の2つのプリミティブポイント間の距離と、前記他方の画像の同一の2つのプリミティブポイント間の距離との間の比率によって定義されたスケール係数に基づいて評価される、前記方法。
【請求項2】
前記画像の各々における各目のアイリスの位置を識別することにおいては、
選択された位置の周囲に位置するウィンドウでは、前記画像にエッジ検出器を適用することによって前記アイリスのエッジが前記画像内で検出され、ハフ変換が前記画像の各々の各アイリスを定める円の半径
【数1】


を判定するために使用され、
前記画像化されたアイリスの前記サイズ拡大又はサイズ縮小は、前記アイリスに対応する前記画像内の2つの円の半径間の比率によって推定され、
前記アイリスについてのメガネのレンズの屈折力は、前記2つの円の半径間の前記比率と前記レンズと前記アイリスとの間の距離とから推定された前記レンズの焦点距離の逆数で与えられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
3D画面上で前記鑑賞者によって鑑賞されることが意図されたメディアストリームの被写界深度の効果を調整するために請求項1から2のいずれかによる前記鑑賞者によって着用されたメガネのレンズの屈折力を推定するための、方法の使用。
【請求項4】
プログラムが装置のプロセッサによって実行されるとき請求項1から3のいずれか1つによる方法を前記装置によって実施するための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項5】
プログラムが装置のプロセッサによって実行されるとき請求項1から3のいずれか1つによる方法を前記装置によって実施するための命令を含むコンピュータプログラムを保存する、記憶手段。
【請求項6】
鑑賞者によって着用されたメガネのレンズの屈折力を推定する装置であって、
2つの画像を得る手段の前に位置した鑑賞者の顔の連続した2つの画像を取得する手段であって、当該画像の一方を前記メガネを着用して取得し、他方の画像をメガネ着用しないで取得する、前記取得する手段と、
前記画像の各々の各目のアイリスの位置を識別する手段と、
各画像化されたアイリスのサイズ拡大又はサイズ縮小を評価する手段と、
当該評価されたサイズ拡大又はサイズ縮小に基づいて前記レンズの屈折力を推定する手段と、
を含み、
前記画像化されたアイリスの前記サイズ拡大又はサイズ縮小は、前記取得された2つの画像の一方の画像上の2つのプリミティブポイント間の距離と、前記他方の画像の同一の2つのプリミティブポイント間の距離との間の比率によって定義されたスケール係数に基づいて評価される、前記装置。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の優先権主張の日前に頒布された引用文献1(特開2003-30494号公報)には、次の事項が記載されている。下線は当合議体にて付した。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、購入者の顔部を撮影した画像に眼鏡の画像を重畳合成した画像によって眼鏡を装用した時の見栄えを評価し選択することができる眼鏡の仮想装用システムに関する。
【0002】
【従来の技術】購入する眼鏡を選択する際、顧客は眼鏡店の店頭において実際に眼鏡を装用した自分自身の顔部を鏡に写して見栄えを評価する。しかし、装用した眼鏡にはレンズが装着されていないので、強度の眼鏡を必要とする顧客はよく見ることができず充分に確認することができない。前記問題点を解決した装置として、眼鏡を装用した顧客の顔部を撮影した画像を表示する装置がある。いずれの場合も眼鏡店の店頭に出向くことが必要である。
・・・(中略)・・・
【0006】
【発明が解決しようとする課題】眼鏡は、リムレス、ハーフリム、フルリムなどの形式、レンズ枠の形状と大きさ(天地幅*サイズ)、素材、色などの組み合わせにより、極めて多数の種類がある。眼鏡店で実物を装用て選択する場合にはその眼鏡店に在庫されている範囲からの選択になるが、仮装装用システムで眼鏡を仮装的に装用して選択する場合には該仮装装用システム上に登録された全ての眼鏡が選択対象となる。このように極めて多種類の中から自分に合う眼鏡を選び出すことは大変困難なことである。ここで言う「自分に合う」とは、大きさが適切であること、似合うこと等を意味する。
【0007】本発明は、顧客が自分に合う眼鏡を容易に選択することができる眼鏡の選択支援システムを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための本発明は、顧客の顔部の画像を入力する画像入力部と、前記顔部の画像に基づいて顔部の特徴を示す顔部データを求める解析部と、眼鏡の画像と該眼鏡に関する諸データからなる眼鏡データとを記憶した記録部と、前記顔部データと前記眼鏡データとに基づいて眼鏡を選択する眼鏡選択部と、前記選択された眼鏡の画像を前記顔部の画像に重畳させた合成画像を生成する画像合成部と、前記合成画像を表示する表示部とを備えることを特徴とする眼鏡の選択支援システムである。」

イ 「【0020】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施の形態例のシステム構成のブロック図である。本システムは眼鏡の購入予定者である顧客が用いる顧客システム1と、眼鏡メーカー又は眼鏡卸業者が管理・運営するサーバーシステム2と、眼鏡小売店に設置された小売店システム3と、インターネット網4とで構成されている。
【0021】顧客システム1は、本体部10とCRT等の表示部17とキーボードやマウスなどの入力部18とからなるパソコンであり、本体部10は、デジタルカメラ(DSC)19が接続され該DSC19から画像が入力される画像入力部11と、各種プログラムや画像データなどを記憶する記憶部12と、インターネット網4が接続される接続部13と、画像処理部15と、入力部18からの入力を受けると共に表示部17に表示データを出力する入出力部16と、前記各部を制御する制御部14と前記各部を接続するバスライン(図示せず)等で構成されている。DSC19は本体部10の一部として本体部10に組み込まれていても良い。
【0022】画像入力部11は画像データが記録された記録媒体から前記画像データを読み込むデータ読み取り装置でも良い。画像処理部15は、画像入力部11から入力された顧客の顔部画像を解析し顔部の形状、寸法を検出する画像解析手段15Aと、前記顔部画像に眼鏡の画像を重畳合成した合成画像を作成する画像合成手段15Bとを備える。前記合成画像は、顧客が眼鏡を装用した状態を仮想的に作り出す仮想装用を行うものである。
【0023】サーバーシステム2は、本体部20とCRT等の表示部27とキーボードやマウスなどの入力部28とからなるコンピュータシステムであり、本体部20は、各種プログラムや多数の眼鏡の画像の画像データ、及び該眼鏡に関するデータ(以下、眼鏡データという)、例えば眼鏡の型番、材質、色、寸法形状などを記憶する記憶部22と、インターネット網4に接続される接続部23と、記憶部22に記憶された多数の眼鏡データから所定の基準に従って眼鏡を選択する眼鏡選択部25と、表示部27及び入力部28が接続される入出力部26と、前記各部を制御する制御部24と前記各部を接続するバスライン(図示せず)などで構成されている。
【0024】小売店システム3は、本体部30とCRT等の表示部37とキーボードやマウスなどの入力部38とからなるコンピュータシステムであり、本体部30は、各種プログラムやデータなどを記憶する記憶部32と、インターネット網4に接続される接続部33と、販売した眼鏡の売上処理を行う売上処理部31と、前記各部を制御する制御部34と前記各部を接続するバスライン(図示せず)などで構成されている。」

ウ 「【0025】インターネット網4は接続部13、23、33を介して顧客システム1とサーバーシステム2と小売店システム3とを接続し、相互にデータ授受を可能としている。以下、本システムを用いて眼鏡を仮想的に装用することを含む眼鏡の取引方法の詳細を図2の流れ図によって説明する。なお、太線枠で示した処理は顧客システム1の処理、鎖線枠で示した処理はサーバーシステムの処理、細線枠で示した処理は小売店システム3の処理、破線枠で示した処理は顧客の行為である。
【0026】まず、ステップ1(図中ではS1と表記する。他のステップも同様とする。)において、顧客システム1の画像入力部11に接続されたDSC19で眼鏡をかけていない状態で顧客の顔部の画像を撮影する。その際、撮影された画像から被写体の寸法を求めることを可能とする寸法算出基礎データを保持させる。例えば、DSCから被写体までの距離と撮影レンズの焦点距離とを撮影した画像データに付随させる。又は寸法既知の物体を同時に写し込むか、寸法既知のパターンを背景にして撮影する。
【0027】ステップ2では、顧客システム1は、前記顔部画像の画像データを読み込んで入出力部16に接続された表示部17に表示し(図3)、ステップ3で、前記画像データを画像処理部15に取り込む。そして、ステップ4において、画像処理部15の画像解析手段15Aは顧客の顔部の輪郭と瞳H1、H2を検出する画像処理を行うと共に、前記寸法算出基礎データを参照して顧客の顔部の寸法、形状を求める。前記求める顔部の寸法、形状には図3に示した瞳の高さ位置における顔部の幅W、長さL、瞳位置(瞳の高さ位置H、瞳間隔WH)などが含まれる。
【0028】更に、前記顔部の幅W、H/2の高さ位置における顔部の幅W1、長さL等に基づいて解析した顔部形状の類型(丸顔、角顔、たまご顔、ホームベース顔等)を求める。更に前記顔部のその他の特徴(例えば、目の細目、ドングリ目、つり目、たれ目等の特徴)を求める画像処理を行う。以下、前記顔部の寸法、形状等に関する各種データを顔部データと称する。
・・・(中略)・・・
【0031】そして、ステップ5では、顧客システム1が顧客の操作に応じてインターネット網4を介してサーバーシステム2にアクセスし、眼鏡の仮想装用を行い、好みの眼鏡を選択させる。前記仮想装用の詳細は後述する。なお、前記サーバーシステム2へのアクセスは、顧客システム1からアクセスされた小売店システム3からサーバーシステム2に張られたリンクを介したものであっても良い。
【0032】ステップ6では、顧客システム1は実装用実施情報入力画面(図4)を表示して、顧客に実装用情報、即ち実装用を行う眼鏡店、実施日時、及び顧客の名前、住所などの個人情報を入力させ、「送信」ボタン61の選択に応じて該実装用情報と選択された眼鏡の型番とをサーバーシステム2に伝達する。
【0033】ステップ7では、サーバーシステム2は前記指定された眼鏡店の小売店システム3に前記眼鏡の型番と実装用実施希望日、顧客名などを通知する。前記通知を受けた小売店システム3は、ステップ8で、指定された型番の眼鏡の在庫の有無を調査し、前記通知された情報と前記在庫の有無を表示部27に表示する。そして、在庫があれば直ちに、在庫が無ければ卸売店に前記型番の眼鏡の注文処理を行った上で、ステップ9に進み、顧客システム1に実装用実施許諾を通知する。前記注文処理は自動的に行われるようにしても良いし、前記在庫の有無の表示に対する確認操作に応答して行われるようにしても良い。また、前記実装用実施許諾の通知はサーバーシステム2を介して行っても良い。
【0034】そして、ステップ10において、顧客はステップ6で指定した実装用実施日時に指定した眼鏡店に出向いて眼鏡の実装用を行い、ステップ11で当該眼鏡を購入するか否かを決定する。ステップ11において顧客が当該眼鏡の購入を決定した場合にはステップ12に進み、小売店システム3が前記購入を決定された眼鏡の売上処理を行って処理を修了する。ステップ11において顧客が購入を取り止めた場合にはそのまま処理を修了する。
【0035】次に、ステップ5の仮想装用の手順を図5の流れ図によって詳細に説明する。ステップ51では、顧客システム1は、インターネット網4を介して接続されたサーバーシステム2に画像解析手段15Aが求めた前記顔部データを送信する。 ステップ52では、サーバーシステム2が受けた前記顔部データに基づいて、眼鏡選択部25が記憶部22に記憶した多数の眼鏡から任意の眼鏡を選択して該眼鏡の画像と眼鏡データとを顧客システム1に送信する。その際、所定の基準に従って選択した眼鏡を優先的に選択する。
【0036】前記所定の基準による選択は、例えば前記顔部データの顔部寸法と眼鏡データに含まれる眼鏡の寸法データとに基づいて行われる。寸法データには図8に示す各部の寸法が含まれている。前記選択は、具体的には瞳間隔WHと設計瞳位置EP1、EP2の間隔EWとの差が所定値以内である眼鏡を選択する。前記設計瞳位置EP1、EP2は眼鏡フレームの形状・寸法を決定する際に基準とする設計上の瞳位置であり、サーバーシステム2から受ける眼鏡データに含まれている。或いは顔部の幅Wと眼鏡の寸法データの一項目である全幅(蝶番間距離)WFとの差が所定値以内である眼鏡を選択する。その結果、良好な性能を期待できる眼鏡が選択される。
【0037】更に、顔部形状の類型や寸法、その他の特徴に応じてその類型形状や寸法、その他の特徴の顔に似合うとされる眼鏡を選択する。各眼鏡は寸法データに基づいて丸型、四角型、オーバル型、ドロップ型などの形状類型に分類される。記憶部22には各類型の顔部形状に似合うとされる眼鏡の形状類型や、似合うとされる顔部の長さLと眼鏡の高さTHとの比が記憶されている。更に、その他の特徴に対して似合うとされる眼鏡の形状類型も記憶されている。眼鏡選択部25はこれらを参照して眼鏡を選択する。例えば、丸顔には四角形の眼鏡を選択する。或いは顔部の長さLに基づいて前記長さLと眼鏡の高さTHとの比が所定値の範囲内である眼鏡を選択する。これらの選定基準は流行に合わせて適宜変更される。
【0038】画像解析部15Aは顧客の顔部の肌の色も検出する。そして、眼鏡選択部25は画像解析部15Aが検出した肌の色に基づいて似合うとされる色の眼鏡を選択する。前記眼鏡の選択には眼鏡フレームの選択の他、眼鏡レンズの色、濃度、染色範囲なども含めて良い。即ち、前記肌の色と眼鏡フレームの色と眼鏡レンズの色との調和を考慮して夫々を選択する。
【0039】眼鏡選択部25は眼鏡レンズの度数も参照して眼鏡を選択する。即ち、強度の近視用眼鏡レンズの場合、眼鏡のボックスサイズ(図8のLS*TH)が大きいと眼鏡レンズの縁厚が厚くなり見栄えが悪い。更に眼鏡が重くなり掛け心地が悪い。従って、強度の近視用眼鏡レンズにはボックスサイズの小さい眼鏡を選択する。
【0040】前記眼鏡レンズの度数は予め眼科医などで検眼したデータか前回作成した眼鏡のデータを顧客に顧客システム1に入力させサーバーシステム2に読込んでおくか、画像解析部15Aによって概略値を求める。画像解析部15Aによる眼鏡レンズ度数概略値の決定方法の例を説明する。図2のステップ1?ステップ3において、現在使用中の眼鏡をかけた状態の顔部画像を更に撮影し画像解析部15Aに取り込む。そして、ステップ4において眼鏡をかけた状態の画像と眼鏡をかけていない状態の画像との差異を検出する。前者の画像の眼鏡を通して撮影された部分、例えば目の大きさは、後者の画像の対応する部分よりも小さく(近視の場合)、又は大きく(遠視の場合)撮影されている。両者の大きさの比は眼鏡レンズの度数が強いほど大きい。従って前記比から眼鏡レンズの概略度数を求めることができる。」

エ 「






(2)引用発明
前記(1)ア-エによると、引用文献1には、眼鏡の選択支援システムを用いた眼鏡の取引方法において、現在使用中の眼鏡レンズの概略度数を求める方法として、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。

「画像入力部11に接続されたDSC19で眼鏡をかけていない状態で顧客の顔部の画像を撮影し、その際、撮影された画像から被写体の寸法を求めることを可能とする寸法算出基礎データを保持させ、前記顔部画像の画像データを画像処理部15に取り込み、現在使用中の眼鏡をかけた状態の顔部画像を更に撮影し画像解析部15Aに取り込み、眼鏡をかけた状態の画像での目の大きさと眼鏡をかけていない状態の画像での目の大きさの比から眼鏡レンズの概略度数を求める、眼鏡レンズ度数概略値の決定方法。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「画像入力部11に接続されたDSC19」は、技術的にみて、本願発明1の「画像を得る手段」に相当する。また、引用発明は、「画像入力部11に接続されたDSC19で眼鏡をかけていない状態で顧客の顔部の画像を撮影し」、「現在使用中の眼鏡をかけた状態の顔部画像を更に撮影」するから、顧客の顔を撮影することにより、顧客の顔の画像を続けて取得し、画像の一方は眼鏡をかけた状態で取得し、他方の画像は眼鏡をかけていない状態で取得するといえる。
そうすると、引用発明は、本願発明1の「2つの画像を得る手段の前に位置する」「顔の連続した2つの画像を取得することであって、当該画像の一方を前記メガネを着用して取得し、他方の画像をメガネ着用しないで取得する、前記取得すること」を含むという要件を満たしている。

イ 引用発明は、「画像入力部11に接続されたDSC19で眼鏡をかけていない状態で顧客の顔部の画像を撮影し」、「現在使用中の眼鏡をかけた状態の顔部画像を更に撮影し、画像解析部15Aに取り込み、眼鏡をかけた状態の画像での目の大きさと眼鏡をかけていない状態の画像での目の大きさの比から眼鏡レンズの概略度数を求める、眼鏡レンズ度数概略値の決定方法」であるから、顧客によって着用された眼鏡レンズの概略度数を求めるといえる。また、眼鏡レンズの概略度数を求めることは、技術的にみて、眼鏡レンズの屈折力を推定することであるといえる。
そうすると、引用発明の「眼鏡レンズ度数概略値の決定方法」と本願発明1の「鑑賞者によって着用されたメガネのレンズの屈折力を推定する方法」は、「着用されたメガネのレンズの屈折力を推定する方法」である点で共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
以上によれば、本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。

「着用されたメガネのレンズの屈折力を推定する方法であって、
2つの画像を得る手段の前に位置する顔の連続した2つの画像を取得することであって、当該画像の一方を前記メガネを着用して取得し、他方の画像をメガネ着用しないで取得することを含む、方法。」

イ 相違点
他方、本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明1では、レンズの屈折力を推定するメガネが、「鑑賞者によって着用されたメガネ」であるのに対し、引用発明では、顧客がかけた眼鏡である点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記画像の各々における各目のアイリスの位置を識別することと、各画像化されたアイリスのサイズ拡大又はサイズ縮小を評価することと、当該評価されたサイズ拡大又はサイズ縮小に基づいて前記レンズの屈折力を推定することと、を含」むのに対し、引用発明は、「眼鏡をかけた状態の画像での目の大きさと眼鏡をかけていない状態の画像での目の大きさの比から眼鏡レンズの概略度数を求める」ことを含む点。

(相違点3)
本願発明1は、「前記画像化されたアイリスの前記サイズ拡大又はサイズ縮小は、前記取得された2つの画像の一方の画像上の2つのプリミティブポイント間の距離と、前記他方の画像の同一の2つのプリミティブポイント間の距離との間の比率によって定義されたスケール係数に基づいて評価される」のに対し、引用発明は、このような構成を有するものとは特定されていない点。

(3)判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
ア 前記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用文献1に記載されていない。
引用発明においては、「眼鏡をかけていない状態で顧客の顔部の画像を撮影」する「際、撮影された画像から被写体の寸法を求めることを可能とする寸法算出基礎データを保持させ」るが、当該「寸法算出基礎データ」は、瞳の高さ位置における顔部の幅、長さ、瞳位置(瞳の高さ位置、瞳間隔)などの被写体の寸法を求めることが可能なデータであるから(【0027】)、前記相違点3に係る本願発明1の構成のような、取得された2つの画像の一方の画像上の2つのプリミティブポイント間の距離と、他方の画像の同一の2つのプリミティブポイント間の距離との間の比率によって定義されたスケール係数とは異なるものである。
そうすると、前記相違点3は、実質的な相違点であるから、本願発明1は、引用発明であるとはいえない。

イ 前記相違点3に係る本願発明1の構成が、その優先権主張の日前に公知又は周知であったことを示す証拠は見当たらない。
また、本願発明1の「スケール係数」によっては、撮影された画像から被写体の寸法を求めることはできないから、引用発明において、寸法算出基礎データにかえて、本願発明1の「スケール係数」を採用する動機付けは見い出せないし、仮に引用発明において、画像化されたアイリスのサイズ拡大又はサイズ縮小を評価するとしても、寸法算出基礎データに基づいて評価できるから、引用発明において寸法算出基礎データに加えて、本願発明1の「スケール係数」を求める動機付けもない。
そうすると、引用発明において、前記相違点3に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
請求項2は、請求項1の記載を引用して記載されたものであって、かつ、本願発明2は、本願発明1の構成を全て具備し、さらに他の発明特定事項を加えたものに該当する。
また、前記相違点3に係る本願発明1の構成は、特表2010-533308号公報(引用文献2)、特開2004-4436号公報(引用文献3)、又は特開平9-247564号公報(引用文献4)(以下、「引用文献2-4」という。)に記載されていない(なお、引用文献2及び3は、原査定において、本願の請求項2で特定された事項が公知であること、また、引用文献4は、請求項4で特定された事項が周知であることを、それぞれ示すために引用された文献である。)。
そうすると、前記1の本願発明1についての判断と同じ理由により、本願発明2は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明3について
請求項3は、請求項1-2の記載を引用して記載されたものであって、かつ、本願発明3は、本願発明1-2の方法の使用の発明であり、本願発明1-2の構成を全て具備するものである。
そうすると、前記1-2の本願発明1-2についての判断と同じ理由により、本願発明3は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明4について
請求項4は、請求項1-3の記載を引用して記載されたものであって、かつ、本願発明4は、本願発明1-3の方法を装置によって実施するための命令を含むコンピュータプログラムの発明であり、本願発明1-3の構成を全て具備するものである。
そうすると、前記1-3の本願発明1-3についての判断と同じ理由により、本願発明4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明5について
請求項5は、請求項1-3の記載を引用して記載されたものであって、かつ、本願発明5は、本願発明1-3の方法を装置によって実施するための命令を含むコンピュータプログラムを保存する記憶手段の発明であり、本願発明1-3の構成を全て具備するものである。
そうすると、前記1-3の本願発明1-3についての判断と同じ理由により、本願発明5は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1の方法の発明に対応する装置の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
そうすると、前記1の本願発明1についての判断と同じ理由により、本願発明6は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、
理由1:本件出願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2003-30494号公報(引用文献1)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、
理由2:本件出願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2003-30494号公報(引用文献1)に記載された発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、また、本件出願の請求項2-6に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2003-30494号公報(引用文献1)に記載された発明、及び特表2010-533308号公報(引用文献2)、特開2004-4436号公報(引用文献3)、又は特開平9-247564号公報(引用文献4)に記載された技術事項に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。
しかしながら、本願発明1は、前記「第4」1で述べたとおり、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明2-6は、前記「第4」2-6で述べたとおり、引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由の概要
当合議体は、平成30年11月29日付けで、明確性要件違反(特許法36条6項2号)の当審拒絶理由を通知したところ、平成31年2月20日に意見書及び手続補正書が提出された。
そして、この手続補正書による補正(本件補正)で特許請求の範囲が補正されたことにより、当審拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-08 
出願番号 特願2012-277215(P2012-277215)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02C)
P 1 8・ 121- WY (G02C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 川村 大輔
関根 洋之
発明の名称 鑑賞者の着用メガネの補正レンズの屈折力を推定する方法及び装置  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 阿部 豊隆  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
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