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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1350281
審判番号 不服2017-17658  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-29 
確定日 2019-04-16 
事件の表示 特願2016-518541「飛行時間システムを駆動するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日国際公開、WO2015/104307、平成28年 9月 8日国内公表、特表2016-527482、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)1月8日(パリ条約による優先権主張2014年1月13日(以下「優先日」という。)、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年11月17日付け:拒絶理由通知書(発送日:同年同月22日)
平成29年 4月21日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。送達日:
同年同月12日)
平成29年11月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 7月20日付け:拒絶理由通知書(発送日:同年同月24日)
平成30年 9月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年11月16日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」とい
う。発送日:同年同月20日)
平成31年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<理由1(特許法第29条第1項第3号)について>
・請求項1-8
・引用文献1

<理由2(特許法第29条第2項)について>
・請求項1-8
・引用文献1

・請求項9-14,16
・引用文献1-2

・請求項15
・引用文献1-3

<引用文献等一覧>
1.特開2011-013138号公報
2.国際公開第2011/158796号
3.特表2010-537555号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(新規性)本願の下記の請求項に係る発明は、本願の優先日の前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、本願の優先日の前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本願の優先日の前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1-8
・引用文献等 1

●理由2(進歩性)について
・請求項 9-11、13-14
・引用文献 1

・請求項 15-16
・引用文献 1-2

<拒絶の理由を発見しない請求項>
請求項12に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

<引用文献等一覧>
1.特開2009-47662号公報(新たに引用された文献)
2.特表2010-537555号公報(周知技術を示す文献)

第4 本願発明
本願の請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成31年2月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、9は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
変調信号(16)でシーン(15)を照明するように適応された照明システム(18)用の飛行時間(ToF)システム(3)を駆動するための方法であって、
前記ToFシステムが少なくとも1つの画素(35a)を含む撮像センサ(35)を有し、
前記画素が、前記シーンから反射した変調信号(17)を検出するために駆動信号によって駆動されるタップを含み、
前記ToFシステムは、
前記駆動信号を受信し、かつそれらを前記タップに送信するように適応されたタップドライバ(31a、31b、32a、32b、502、503、504、505)と、
前記タップドライバ(502、503、504、505)に関連付けられる少なくとも1つのマルチプレクサ(506、507)と、
をさらに含み、
各画素に対し、
・少なくとも第1の組、および第2の組のタップを決定するステップと、
・前記変調信号(16)の所定数N周期中に、前記第1の組のタップを駆動し、次いで、前記変調信号(16)の所定数N周期中に、前記第2の組のタップを駆動して、前記反射した変調信号(17)を検出するステップと、
を含む方法。」

「【請求項9】
変調信号(16)でシーン(15)を照明するように適応された照明システム(18)用の飛行時間システム(3)であって、
・少なくとも2つの画素(35a)を含み、各画素にタップが含まれる、撮像センサ(35)と、
・前記タップを駆動するために駆動信号を発生するための信号発生器(30、501)と、
・前記信号発生器(501、30)から前記駆動信号を受信し、かつそれらを前記タップに送信するように適応されたタップドライバ(31a、31b、32a、32b、502、503、504、505)とを備え、
・各画素が少なくとも2組のタップを含むこと、
・各画素の前記2組のタップがそれぞれ異なるドライバに接続されること、および
・各ドライバが各画素の1つのタップに接続され、前記各ドライバに接続された前記撮像センサの前記画素のタップが1組のタップを形成すること、
・前記変調信号(16)の所定数N周期中に、第1の組のタップを駆動し、次いで、前記変調信号(16)の所定数N周期中に、第2の組のタップを駆動して、前記シーン(15)から反射した変調信号(17)を検出し、
前記タップドライバ(502、503、504、505)に関連付けられる少なくとも1つのマルチプレクサ(506、507)をさらに含むこと、
を特徴とする、飛行時間システム(3)。」

なお、本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明であり、
本願発明10-15は、本願発明9を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献Aについて
(1)当審拒絶理由において引用された特開2009-47662号公報(以下「引用文献A」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)
「【0014】
また、本発明に係る距離画像測定装置は、上述の固体撮像装置と、一対の第1ゲート電極への印加電位に同期したパルス光を対象物に出射する光源と、一対の第2蓄積領域から出力されたキャリアの電荷量に応じて対象物までの距離を演算する演算回路と、を備えることを特徴とする。」

「【0020】
距離画像測定装置は、固体撮像素子1、固体撮像素子1の駆動を制御する制御回路2、パルス光を出射する光源3、光源3の駆動回路4、及び固体撮像素子1の出力から物体Hまでの距離を演算する演算回路を内蔵した出力処理回路5を備えている。制御回路2は、固体撮像素子1に右側パルス信号S_(R)、左側パルス信号S_(L)を入力しており、また、駆動回路4には投光用の駆動パルス信号S_(P)を入力している。駆動パルス信号S_(P)は出力処理回路5にも入力されており、固体撮像素子1から距離を演算する際に用いられる。
【0021】
制御回路2から出力された駆動パルス信号S_(P)に同期して、駆動回路4から光源3に駆動電流が供給される。光源3からは、駆動パルス信号S_(P)と同一パルス幅のプローブ光が出射される。プローブ光は、投光用のレンズL1を介して物体Hに照射される。物体Hの表面において反射されたプローブ光は、結像用のレンズL2,L3を介して固体撮像素子1の撮像領域に入射する。したがって、固体撮像素子1の撮像領域には物体Hの像が結像することになる。
・・・(中略)・・・
【0024】
固体撮像素子1は、二次元状に配列した複数の画素P(1,1),P(1,2),・・・P(m,n),・・・P(M,N)からなる撮像領域1IPを備えている。m,n,M,Nは自然数である。なお、説明の明確化のため、同図では実際よりも少ない数の画素を示している。撮像領域1IPの画素列に平行に垂直シフトレジスタ1Vが配置されており、画素行に平行に背景光除去回路PCC、及び水平シフトレジスタ1H2が配置されている。」

【図1】

「【0032】
駆動回路4は、電源4aと光源3との間に介在するスイッチ4bを有しており、スイッチ4bに投光用の駆動パルス信号S_(P)を入力すると、駆動パルス信号S_(P)に同期した駆動電流が光源3に供給され、駆動パルス信号S_(P)に同期したプローブ光(パルス光)L_(P)が光源3から出射される。本例の光源3は、パルス光の立ち上がり及び立下りの急峻性に優れた発光ダイオード又はレーザダイオードからなることとするが、もちろん、他の種類の光源を用いることも可能である。なお、好適には、光源3は、赤外線発光ダイオードからなる。
【0033】
プローブ光が、距離dの位置にある物体Hの表面に照射されると、プローブ光はこの表面で反射され、反射したプローブ光はパルス光L_(D)として固体撮像素子1に入射する。固体撮像素子1に入射するパルス光をL_(D)とし、パルス光が入射することによって画素から出力される検出パルス信号をS_(D)とする。固体撮像素子1には、上述の距離情報読出回路Kが設けられており、距離情報読出回路Kには上述の右側パルス信号S_(R)と左側パルス信号S_(L)が入力される。」

「【0036】
図5は、駆動パルス信号S_(P)、検出パルス信号S_(D)、右側パルス信号S_(R)、左側パルス信号S_(L)のタイミングチャートである。駆動パルス信号S_(P)のパルス幅をT_(P)とする。
【0037】
駆動パルス信号S_(P)の立ち上がり時刻t_(1)に同期して、右側パルス信号S_(R)が立ち上がる。駆動パルス信号S_(P)の立ち下り時刻t_(3)に同期して、右側パルス信号S_(R)が立ち下がる。すなわち、右側パルス信号S_(R)は駆動パルス信号S_(P)と同位相である。左側パルス信号S_(L)は、右側パルス信号S_(R)とは逆位相であり、時刻t_(1)において立ち下り、時刻t_(3)において立ち上がる。これらの右側パルス信号S_(R)と左側パルス信号S_(L)のパルス幅は共にT_(P)である。
【0038】
検出パルス光L_(D)が各画素に入射すると、各画素においてキャリアが発生する。検出パルス光L_(D)の入射に伴って発生するキャリアの電荷量の時間波形は検出パルス信号S_(D)に一致する。
【0039】
右側パルス信号S_(R)がハイレベルの場合において、画素で発生したキャリアが一方の第1蓄積領域内に流れ込む。したがって、今回のパルス周期において、一方の第1蓄積領域内に実効的に蓄積されるキャリアの電荷量Q1は、検出パルス信号S_(D)と右側パルス信号S_(R)との重複期間t_(2)?t_(3)に比例することになる。換言すれば、波高値が時間当たりの電荷量を示す検出パルス信号S_(D)と右側パルス信号S_(R)の積を、時刻t_(2)?t_(3)の期間の間、積分した値が一方の第1蓄積領域内に蓄積される電荷量Q1となる。また、次回のパルス周期において、検出パルス信号S_(D)と右側パルス信号S_(R)の積を、時刻t_(6)?t_(7)の期間の間、積分した値が一方の第1蓄積領域内に蓄積される電荷量Q1となる。
【0040】
左側パルス信号S_(L)がハイレベルの場合において、画素で発生したキャリアが他方の第1蓄積領域内に流れ込む。したがって、今回のパルス周期において、他方の第1蓄積領域内に実効的に蓄積されるキャリアの電荷量Q1は、検出パルス信号S_(D)と右側パルス信号S_(R)との重複期間t_(3)?t_(4)に比例することになる。換言すれば、波高値が時間当たりの電荷量を示す検出パルス信号S_(D)と左側パルス信号S_(L)の積を、時刻t_(3)?t_(4)の期間の間、積分した値が他方の第1蓄積領域内に蓄積される電荷量Q2となる。また、次回のパルス周期において、検出パルス信号S_(D)と左側パルス信号S_(L)の積を、時刻t_(7)?t_(8)の期間の間、積分した値が他方の第2蓄積領域内に蓄積される電荷量Q2となる。
【0041】
電荷量Q1と電荷量Q2の比率は、TOF(飛行時間)に比例する。すなわち、後者の電荷量Q2が相対的に前者の電荷量Q1よりも大きいほど、距離dは大きくなる。もちろん、1つのパルス周期内において蓄積された電荷量のみでなく、電荷量Q1、Q2の積算値ΣQ1、ΣQ2の比率もTOFに比例することになる。なお、積算を行なった方が、電荷量が大きくなるため正確な距離を求めることが可能となる。」

「【0045】
画素P(m,n)は、p型(第1導電型)の半導体基板100と、半導体基板100上に形成された絶縁層101とを備えている。絶縁層101上には、遮光膜SMが設けられている。遮光膜SMは画素毎に光入射用の開口OPを備えている。開口OPの直下の絶縁層101上には、画素電極PGが配置されている。半導体基板100の画素電極PGの直下の半導体基板100内の表面領域を光感応領域SAとする。画素電極PGの両側には、絶縁層101上に一対の第1ゲート電極TX1,TX2が配置されている。第1ゲート電極TX1,TX2の外側には、半導体基板100内に設けられた一対の第1蓄積領域AR,ALが位置している。更に、第1蓄積領域AR,ALの外側には、半導体基板100内に設けられた一対の第2蓄積領域FDR、FDLが位置している。第2蓄積領域FDR、FDLはフローティング・ディフュージョン領域である。第1蓄積領域AR,ALと、第2蓄積領域FDR、FDLの間の領域の上方には、絶縁層101上にそれぞれ第2ゲート電極IGR,IGLが位置している。」

「【0066】
上述のように、各画素P(m,n)には、検出パルス信号S_(D)、右側パルス信号S_(R)及び左側パルス信号S_(L)が入力されている。電荷量Q1は検出パルス信号S_(D)と右側パルス信号S_(R)の積を、これらのパルスの重複期間t_(2)?t_(3)の間、時間積分した値であり、電荷量Q2は検出パルス信号S_(D)と左側パルス信号S_(L)の積を、これらのパルスの重複期間t_(3)?t_(4)の間、時間積分した値である。各画素P(m,n)からは、電荷量Q1,Q2が出力される。
【0067】
電荷量Q1,Q2は、駆動パルス信号S_(P)のパルス幅T_(P)と共に、後段の演算回路5aに入力され、距離dを求める演算が行われる。上述のように、第2蓄積領域が2つの場合、d=(c/2)×(T_(P)×Q2/(Q1+Q2)で与えられる。なお、cは光速である。したがって、演算回路5aからは、各画素P(m,n)毎の距離d(m,n)が出力される。なお、画素列又は画素行毎にビニング動作を行っても良い。この場合には、ビニングによって積算される画素列又は画素行に入射した検出パルスが示す平均距離が得られることになる。
【0068】
また、上記では180度の位相差で2つの第1ゲート電極を駆動した場合に、2つの第1蓄積領域に隣接する2つの第2蓄積領域を用いた例を説明した。これは、90度毎の位相差で4つの第1ゲート電極を駆動した場合に、4つの第1蓄積領域に隣接する4つの第2蓄積領域を用いたものにも適用することができる。第2蓄積領域の数が3つ以上の場合、例えば4つで駆動信号が正弦波状の場合には、各第2蓄積領域に蓄積される電荷量をQ1,Q2,Q3,Q4とすると、d=Φ×c/2×2πfで与えられる。なお、fは駆動正弦波信号S_(P)の繰り返し周波数であり、位相Φ=-arctan((Q2-Q4)/(Q1-Q3))で与えられる。」(当審注:【0068】の数式を見るに、この段落におけるQ1,Q2,Q3,Q4のナンバリングは、この文献のその他の記載におけるナンバリングとは異なり、駆動信号に対して90度毎の位相差で、すなわち、0、90、180、270度の位相差で第1ゲート電極を駆動したものを、順に、Q1,Q2,Q3,Q4とナンバリングしたものであることは、技術常識(例えば特開2006-190791号公報の段落0088-0093等を参照)からも明らかである。)

「・・・(前略)・・・
【0081】
駆動パルスの前半の半周期の期間においては、ポテンシャルφ_(PG)及び右側のポテンシャルφ_(TX1)を深くし、右側の第1蓄積領域のポテンシャルφ_(AR)の井戸内にキャリアを転送する(図10(B))。右側のポテンシャル井戸には電荷量QRが蓄積されている。
【0082】
駆動パルスの後半の半周期の期間においては、ポテンシャルφ_(PG)及び左側のポテンシャルφ_(TX2)を深くし、左側の第1蓄積領域のポテンシャルφ_(AL)の井戸内にキャリアを転送する(図10(C))。左側のポテンシャル井戸には電荷量QLが蓄積されている。
【0083】
図10(B)と図10(C)からなる微少電荷蓄積工程をM回繰り返すと、各ポテンシャル井戸内に、M倍に積算された電荷量ΣQR、ΣQLが蓄積される(図10(D))。
・・・(中略)・・・
【0101】
また、電荷の振り分けを行うため、一対の第1ゲート電極TX1,TX2には、それぞれパルス信号を含む右側パルス信号S_(R),左側パルス信号S_(L)が入力される。
・・・(中略)・・・
【0109】
図16は、固体撮像装置のタイミングチャートである。
【0110】
まず、時刻t_(1)?t_(2)の間は、駆動パルス信号SPは光源には印加されず、光源は非発光状態である。時刻t_(1)?t_(2)の間、背景光検出信号T_(N)をONし、背景光の検出を行う。背景光の検出期間は、T_(M)/2とする。これは、反射パルス検出における上述のM回の微少電荷蓄積を行う期間をT_(M)とすると、その2分の1に相当する。光検出素子PDと各画素P(m,n)で発生する時間当りのキャリア量が略等しいとすると、背景光検出期間T_(M)/2において光検出素子PDで発生したキャリアの電荷量(電圧β)が、反射パルス検出期間T_(M)において含まれる背景光成分のキャリアの電荷量に略一致する。
・・・(中略)・・・
【0112】
時刻t_(3)?t_(4)の期間において、上述のM回の検出が行われる。この時、キャリア排出用の信号S_(EX)はローレベル(トランジスタOFF)とされており、ポテンシャルφ_(A)が時間の経過と共に低下していく。このポテンシャルφ_(A)の低下量φ_(1)は、反射パルス光と背景光の受光量に比例する。本例では、第1蓄積領域にキャリアを蓄積した後、背景光の光量に応じてポテンシャル障壁φ_(IG)を下げる。すなわち、時刻t_(5)?t_(6)の期間、転送信号S_(T)をハイレベル(ポテンシャルφ_(IG))とし、第2蓄積領域へのキャリアの転送を行う。これにより、第1蓄積領域から第2蓄積領域に電子が流れ込み、電子の流れ出したポテンシャルφ_(A)は高くなり、電子が流入したポテンシャルφ_(FD)は低くなる。
・・・(後略)・・・」

「【0185】
図28は、電荷退避領域を備えた固体撮像装置のタイミングチャートである。
【0186】
1つの画素における信号の測定期間T_(F)において、S_(TR),S_(TG),φ_(B)、φ_(FD)を除く信号のタイミングは、図16に示したものと同一であるので、必要に応じて説明を省略する。」

「【0194】
上記では、180度の位相が異なる右側パルス信号S_(R)及び左側パルス信号S_(L)を、一対のゲート電極にそれぞれ印加することで、距離画像の測定を行った。以下では、90度ずつ位相が異なる(位相=0度,90度,180度,270度)4つのパルス信号を、4つのキャリア振り分け用のゲート電極に印加することで、距離画像の測定を行う例について説明する。
・・・(中略)・・・
【0204】
図30は、図29に示した画素P(m,n)の平面図である。図31は、図30における31A-31A矢印断面図(図31(A))、図31(A)の断面図における無バイアス時の半導体内のポテンシャル図(図31(B))、図30における31C-31C矢印断面図(図31(C))、図31(C)の断面図における無バイアス時の半導体内のポテンシャル図(図31(D))である。
・・・(中略)・・・
【0206】
前後方向の縦断面図(図31(C))の構造及びポテンシャル図(図31(D))は、左右方向のものと同一であるが、要素の符号が異なるので、以下、説明する。なお、左右方向及び前後方向は、それぞれ半導体基板100の露出表面に平行であって、半導体基板100の厚み方向に垂直であり、左右方向と前後方向とは互いに直交している。
【0207】
画素電極PGの両側には、絶縁層101上に一対の第1ゲート電極TX3,TX4が配置されている。第1ゲート電極TX3,TX4の外側には、半導体基板100内に設けられた一対の第1蓄積領域AF,ABが位置している。更に、第1蓄積領域AF,ABの外側には、半導体基板100内に設けられた一対の電荷退避領域(第2蓄積領域)BF、BBが位置している。第1蓄積領域AF,ABと、電荷退避領域BF、BBの間の領域の上方には、絶縁層101上にそれぞれ第2ゲート電極IGF,IGBが位置している。」

【図30】

「【0216】
図32は、図30に示した画素P(m,n)の回路図である。
・・・(中略)・・・
【0218】
図32における上半分の回路構造UP及びその機能は、図26に示したものと同一であるので、説明を省略する。下半分の回路構造DNの構造及びその機能は、電荷振り分け時の位相を除いて、上半分の回路構造UP及びその機能と同一である。以下では、図32の下半分の回路構造DNについて説明する。
【0219】
画素電極PGを含むトランジスタの一端は、ゲート電極TX3を含むNMOSトランジスタのソースに接続されており、NMOSトランジスタ(TX3)のドレインは、第1蓄積領域AF、及びNMOSトランジスタ(IGF)のソース、キャリア排出用トランジスタ(EX3)のソースに接続され、キャリア排出用のNMOSトランジスタ(EX3)のドレインは電源電位V+に接続されている。第1蓄積領域AFは、背景光成分除去用のNMOSトランジスタ(IGF)のソースに接続されており、NMOSトランジスタ(IGF)のドレインは電荷退避領域BFに接続されている。
・・・(中略)・・・
【0223】
画素電極PGを含むトランジスタの他端は、ゲート電極TX4を含むNMOSトランジスタのソースに接続されており、NMOSトランジスタ(TX4)のドレインは、第1蓄積領域AB、及びNMOSトランジスタ(IGB)のソース、キャリア排出用トランジスタ(EX4)のソースに接続され、キャリア排出用のNMOSトランジスタ(EX4)のドレインは電源電位V+に接続されている。第1蓄積領域ABは、背景光成分除去用のNMOSトランジスタ(IGB)のソースに接続されており、NMOSトランジスタ(IGB)のドレインは電荷退避領域BBに接続されている。
・・・(中略)・・・
【0227】
また、電荷の振り分けを行うため、一対の第1ゲート電極TX3,TX4には、それぞれ前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)が入力される。前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)は、第1ゲート電極TX3,TX4に印加されるタイミングを除いて、右側パルス信号S_(R)及び左側パルス信号S_(L)とそれぞれ同一である。すなわち、第1ゲート電極TX3,TX4と前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)の関係は、第1ゲート電極TX1,TX2と右側パルス信号S_(R)及び左側パルス信号S_(L)の関係に等しい。」

【図32】(当審注:下半分の回路構造DNのS_(L)、S_(R)は、S_(B)、S_(F)の誤記と認められる。)

「【0237】
図35は、固体撮像装置のタイミングチャートである。
【0238】
1つの画素における信号の測定期間T_(F)において、S_(F),S_(B),S_(T2)、S_(EX2)を除く信号のタイミングは、図28に示したものと同一であるので、必要に応じて説明を省略する。なお、同図における信号S_(T1)、S_(EX1)は、図28においてはS_(T)、S_(EX)として示したものである。また、ポテンシャルφ_(A)、φ_(B)、φ_(FD)は、左右方向のポテンシャルφ_(AR),φ_(AL)、φ_(BR),φ_(BL)、φ_(FDR),φ_(FDL)を代表して示している。
【0239】
1つの画素内の左右方向のキャリアの振り分けの終了(時刻t_(4))の後、時刻t_(5)?t_(6)の間、転送信号S_(T1)をONして、その第1蓄積領域から信号退避領域に信号を転送する。なお、この時刻t_(5)?t_(6)の間、前後方向のキャリアの振り分け用の背景光を検出する(T_(N)=ON)。また、この時刻t_(5)?t_(6)の間、前側パルス信号S_(F)、後側パルス信号S_(B)を共にハイレベルとし、光感応領域から第1蓄積領域内にキャリアを転送し、排出信号S_(EX2)をハイレベルとして、このキャリアを同時に排出する。
【0240】
時刻t_(7)?t_(9)の期間において、前後方向のキャリア振り分けに関して、上述のM回の検出が行われる。この時、キャリア排出用の信号S_(EX2)はローレベル(トランジスタOFF)とされており、第1蓄積領域のポテンシャルφ_(AF),φ_(AB)(図31参照)が時間の経過と共に低下していく。なお、前後方向のパルス光の振り分け期間(時刻t_(7)?t_(9))中において、左右方向の排出信号S_(EX1)をONし(時刻t_(7)?t_(8))、左右方向の第1蓄積領域内に残留した背景光成分のキャリアを外部に排出する。
・・・(中略)・・・
【0242】
時刻t_(1)?時刻t_(9)までの検出サイクル期間をT_(F)’とする。時刻t_(9)の後、時刻t_(10)?t_(11)の期間、左右方向のキャリア排出用の信号S_(EX1)をハイレベル(トランジスタON)とし、第1蓄積領域に残留したキャリアを排出しながら、次の検出サイクル期間に移行する。次の検出サイクルにおいて、左右方向のキャリア振り分けが行われている期間において、時刻t_(12)?t_(13)の期間、前後方向のキャリア排出用の信号S_(EX2)をハイレベル(トランジスタON)とし、第1蓄積領域に残留したキャリアを排出しておく。なお、検出サイクル期間T_(F)’毎に、電荷退避領域には電子が積算して蓄積され、そのポテンシャルφ_(BR),φ_(BL),φ_(BF),φ_(BB)は順次低下していく。
【0243】
本例では、X回の検出サイクル期間T_(F)’を実行した後、時刻t_(32)?t_(33)において、フローティング・ディフュージョン領域としての第3蓄積領域FDR,FDL,FDF,FDBにリセットをかける。すなわち、時刻t_(32)?t_(33)の期間において、リセット信号S_(TR)をハイレベルとすることで、図32におけるリセット用のトランジスタ(TRR,TRL,TRF,TRB)をONすることで、第3蓄積領域FDR,FDL,FDF,FDBを電源電位に接続した後、トランジスタ(TRR,TRL,TRF,TRB)をOFFする。
・・・(中略)・・・
【0245】
次に、今回の測定期間T_(F)の終了後、又は次回の測定期間T_(F)の適当な時刻において、選択スイッチとしてのトランジスタSEL(図32参照)をONすることで、ポテンシャルφ_(FDR),φ_(FDL),φ_(FDF),φ_(FDB)の検出を行う。
【0246】
なお、上記では、右側パルス信号S_(R)と左側パルス信号S_(L)とは180度、位相が異なり、前側パルス信号S_(F)と後側パルス信号S_(B)とは180度、位相が異なり、右側パルス信号S_(R)と前側パルス信号S_(F)とは90度、位相が異なる。すなわち、S_(R)、S_(L)、S_(F)、S_(B)の位相は、駆動パルス信号S_(P)を基準とすれば、それぞれ、0度,90度,180度,270度である。」(当審注:「右側パルス信号S_(R)と左側パルス信号S_(L)とは180度、位相が異なり、前側パルス信号S_(F)と後側パルス信号S_(B)とは180度、位相が異なり、右側パルス信号S_(R)と前側パルス信号S_(F)とは90度、位相が異なる。」という記載及び【図35】からも明らかなように、「S_(R)、S_(L)、S_(F)、S_(B)の位相は、駆動パルス信号S_(P)を基準とすれば、それぞれ、0度,90度,180度,270度である。」は、「S_(R)、S_(L)、S_(F)、S_(B)の位相は、駆動パルス信号S_(P)を基準とすれば、それぞれ、0度,180度,90度,270度である。」の誤記と認められる。)

【図35】

「【0249】
この構成では、画素の各断面図に示される光感応領域SAは、光検出素子PDを兼用しており、この固体撮像装置は、光感応領域SAの出力に応じて、第2ゲート電極IG(IGR、IGL(及びIGF、IGB))への印加電位φ_(IG)を出力する背景光検出回路(制御手段)PCCを備えている。
【0250】
すなわち、光感応領域SAにおいて背景光を検出し、検出された背景光の出力が大きい場合には、第2ゲート電極IG(IGR、IGL(及びIGF、IGB))への印加電位φ_(IG)を第1ポテンシャル障壁φ_(BG)の高さが大きくなるように制御し、小さい場合には、第2ゲート電極IG(IGR、IGL(及びIGF、IGB))への印加電位φ_(IG)を第1ポテンシャル障壁φ_(BG)の高さが小さくなるように制御する。これにより、光検出手段を別途設ける必要がなくなるため、装置を小型化することが可能となる。
【0251】
図37は、このような自己参照型の背景光検出を行う場合の固体撮像装置のタイミングチャートである。一例として図9の構造の画素を駆動する場合について説明する。
【0252】
図37における時刻t_(7)以降は、パルス光照射時のキャリアの振り分けと転送を行うパルス検出期間T_(DIVIDE)であり、同図の時刻t_(7)以降のタイミングは、図16のt_(1)以降のタイミングと同一であるが、背景光検出信号T_(N)は、これより以前の背景光検出期間T_(MONITOR)に検出された背景光成分の値を読み込む又はサンプルホールドする或いは演算することを意味する。なお、図37における時刻t_(1)?t_(6)は、背景光検出期間T_(MONITOR)である。
【0253】
背景光検出期間T_(MONITOR)の時刻t_(1)?t_(2)においては、右側パルス信号S_(R)、左側パルス信号S_(L)、背景光検出信号T_(N)を同時にハイレベルとし、光電変換によって発生した電子によって、第1蓄積領域のポテンシャルφ_(A)を低下させる。時刻t_(3)?時刻t_(5)では、第2ゲート電極IGに、背景光成分の光量には依存しない通常の転送信号S_(T)を与え、第2蓄積領域にキャリアを転送し、第2蓄積領域のポテンシャルφ_(FD)を低下させる。しかる後、時刻t_(5)?t_(6)においては、選択スイッチとしてのトランジスタSELを読み出し信号S_(H)によってONさせて、第2蓄積領域のポテンシャルφ_(FD)を水平ラインHLR,HLLに読み出す。このときの読み出し信号S_(H)のパルス数が複数あるのは、垂直シフトレジスタの駆動によって時刻t_(5)?t_(6)に読み出される画素数が複数であることを意味する。」

「【0256】
以上のように、上述の距離画像測定装置では、所定のパルス幅を有する光を繰り返し被写体に照射し、照射した光の飛行時間の位相差に基づいて被写体までの3次元距離像を計測するTOF型距離測定装置であって、1つの画素から所定タイミングで出力ラインを切り替えて2つの出力を得て、照射光の出射タイミングと反射光の受光タイミングにおける位相のズレを2つの出力の差と捉え、2出力に基づいて被写体までの距離を計測している。そして、その際に微弱な信号成分への背景光成分の影響を簡単に排除することができるため、画素数を増加させたり、装置価格を低下させることが可能となる。」

(2)したがって、引用文献Aには次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「TOF型距離測定装置(【0256】より。以下同様。)である、固体撮像装置と、光源と、対象物までの距離を演算する演算回路と、を備える距離画像測定装置(【0014】)において、固体撮像装置のタイミングチャート(【0237】)に従って、固体撮像素子1の駆動を制御する(【0020】)方法であって、
距離画像測定装置は、固体撮像素子1、固体撮像素子1の駆動を制御する制御回路2、パルス光を出射する光源3、光源3の駆動回路4、及び固体撮像素子1の出力から物体Hまでの距離を演算する演算回路を内蔵した出力処理回路5を備え(【0020】)、
制御回路2は、駆動回路4には投光用の駆動パルス信号S_(P)を入力し(【0020】)、制御回路2から出力された駆動パルス信号S_(P)に同期して、駆動回路4から光源3に駆動電流が供給され、光源3からは、駆動パルス信号S_(P)に同期した、駆動パルス信号S_(P)と同一パルス幅のプローブ光(パルス光)L_(P)が出射され、プローブ光は物体Hに照射され(【0021】、【0032】)、
固体撮像素子1は、二次元状に配列した複数の画素P(m,n)からなる撮像領域1IPを備えており(【0024】)、
物体Hの表面において反射されたプローブ光はパルス光L_(D)として固体撮像素子1の撮像領域に入射し(【0021】、【0033】)、
検出パルス光L_(D)が各画素に入射すると、各画素においてキャリアが発生し、検出パルス光L_(D)の入射に伴って発生するキャリアの電荷量の時間波形は検出パルス信号S_(D)に一致し(【0038】)、
画素P(m,n)の開口OPの直下の絶縁層101上には、画素電極PGが配置され、画素電極PGの両側には、絶縁層101上に一対の第1ゲート電極TX1,TX2が配置され、第1ゲート電極TX1,TX2の外側には、半導体基板100内に設けられた一対の第1蓄積領域AR,ALが位置し(【0045】)、画素電極PGの両側には、絶縁層101上に一対の第1ゲート電極TX3,TX4が配置され、第1ゲート電極TX3,TX4の外側には、半導体基板100内に設けられた一対の第1蓄積領域AF,ABが位置し(【0207】)、
制御回路2は、固体撮像素子1に右側パルス信号S_(R)、左側パルス信号S_(L)を入力し(【0020】)、
電荷の振り分けを行うため、一対の第1ゲート電極TX1,TX2には、それぞれパルス信号を含む右側パルス信号S_(R),左側パルス信号S_(L)が入力され(【0101】)、
右側パルス信号S_(R)がハイレベルの場合において、画素で発生したキャリアが一方の第1蓄積領域内に流れ込み(【0039】)、左側パルス信号S_(L)がハイレベルの場合において、画素で発生したキャリアが他方の第1蓄積領域内に流れ込み(【0040】)、
電荷の振り分けを行うため、一対の第1ゲート電極TX3,TX4には、それぞれ前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)が入力され、前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)は、第1ゲート電極TX3,TX4に印加されるタイミングを除いて、右側パルス信号S_(R)及び左側パルス信号S_(L)とそれぞれ同一であり、第1ゲート電極TX3,TX4と前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)の関係は、第1ゲート電極TX1,TX2と右側パルス信号S_(R)及び左側パルス信号S_(L)の関係に等しく(【0227】)、
右側パルス信号S_(R)と左側パルス信号S_(L)とは180度、位相が異なり、前側パルス信号S_(F)と後側パルス信号S_(B)とは180度、位相が異なり、右側パルス信号S_(R)と前側パルス信号S_(F)とは90度、位相が異なり、すなわち、S_(R)、S_(L)、S_(F)、S_(B)の位相は、駆動パルス信号S_(P)を基準とすれば、それぞれ、0度,180度,90度,270度であり(【0246】)、
駆動パルスの前半の半周期の期間においては、右側の第1蓄積領域のポテンシャルφ_(AR)の井戸内にキャリアを転送し、右側のポテンシャル井戸には電荷量QRが蓄積され(【0081】)、
駆動パルスの後半の半周期の期間においては、左側の第1蓄積領域のポテンシャルφ_(AL)の井戸内にキャリアを転送し、左側のポテンシャル井戸には電荷量QLが蓄積され(【0082】)、
微少電荷蓄積工程をM回繰り返すと、各ポテンシャル井戸内に、M倍に積算された電荷量ΣQR、ΣQLが蓄積され(【0083】)、
反射パルス検出における上述のM回の微少電荷蓄積を行う期間T_(M)(【0110】)である、時刻t_(3)?t_(4)の期間において、上述のM回の検出が行われ(【0112】)、
1つの画素内の左右方向のキャリアの振り分けの終了(時刻t_(4))の後(【0239】)、時刻t_(7)?t_(9)の期間において、前後方向のキャリア振り分けに関して、上述のM回の検出が行われる(【0240】)、
距離画像測定装置(【0014】)において、固体撮像装置のタイミングチャート(【0237】)に従って、固体撮像素子1の駆動を制御する(【0020】)方法。」

2.引用文献Bについて
(1)原査定の拒絶の理由において引用された特開2011-013138号公報(以下「引用文献B」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0014】
以下、図面を参照して車載用の画像センサに関して説明する。特に、以下の実施例で説明する画像センサは、車両の運転手の頭部に係る画像データを取得するために用いられる。図1に示すように、画像センサ100は、照射装置20と、受光装置80と、照射装置20と受光装置80を制御する制御装置30を備えている。照射装置20と受光装置80と制御装置30は、それぞれ別個の装置として構成されていてもよく、一体化されたモジュールとして構成されていてもよい。
【0015】
照射装置20は、第1波長域の第1波長光を測定対象物の表面に向けて照射する第1光源22と、第2波長域の第2波長光を測定対象物の表面に向けて照射する第2光源24を備えている。第1光源22と第2光源24は、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を備えている。第1光源22及び第2光源24は、800?1100nmの近赤外領域の光を照射するのが望ましい。本実施例では、第1光源22が870nmの第1波長光を照射し、第2光源24が970nmの第2波長光を照射する。
【0016】
受光装置80は、撮像装置40と、記憶装置50と、演算装置60と、データベース70を備えている。撮像装置40は、測定対象物で反射した第1波長光の第1反射光に応じた電荷量を蓄積するとともに、測定対象物で反射した第2波長光の第2反射光に応じた電荷量を蓄積する。記憶装置50は、撮像装置40に蓄積された電荷量に応じた電圧値を記憶する。演算装置60は、記憶装置50及びデータベース70に記憶されているデータを用いて、距離画像データ及び部位判別画像データを演算する。データベース70は、特定部位における第1波長光の反射特性及び特定部位における第2波長光の反射特性を記憶している。
【0017】
図2に、撮像装置40の構成を概略して示す。撮像装置40は、2次元状(アレイ状)に配置されている複数の受光部42を備えている。受光部42は、画素毎に設けられている。受光部42はそれぞれ、光を電荷に変換する受光素子(光電変換素子)と、受光素子で変換された電荷を蓄積する電荷蓄積部を備えている。受光素子には、典型的にはフォトダイオードが用いられる。電荷蓄積部には、典型的にはコンデンサが用いられる。
【0018】
図3に、受光部42の一例を示す。受光部42は、4つの受光素子44a,44b,44c,44dと、4つの電荷蓄積部46a,46b,46c,46dを備えている。第1受光素子44aは第1電荷蓄積部46aに接続されており、第1受光素子44aで変換された電荷が第1電荷蓄積部46aに蓄積される。第2受光素子44bは第2電荷蓄積部46bに接続されており、第2受光素子44bで変換された電荷が第2電荷蓄積部46bに蓄積される。第3受光素子44cは第3電荷蓄積部46cに接続されており、第3受光素子44cで変換された電荷が第3電荷蓄積部46cに蓄積される。第4受光素子44dは第4電荷蓄積部46dに接続されており、第4受光素子44dで変換された電荷が第4電荷蓄積部46dに蓄積される。
【0019】
記憶装置50は、受光部42の電荷蓄積部46a,46b,46c,46dに蓄積された電荷量を電圧に変換する電圧変換回路と、変換された電圧値を記憶する記憶回路を備えている。記憶装置50の記憶回路は複数のメモリを有しており、各受光部42の電荷蓄積部46a,46b,46c,46dのそれぞれの電荷量に対応した電圧値を記憶する。
【0020】
演算装置60は、記憶装置50に記憶された電圧値に基づいて、距離画像データを演算する。演算装置60はさらに、記憶装置50に記憶された電圧値とデータベース70に記憶された反射特性に基づいて、部位判別画像データも演算する。」

「【0023】
図5に示すように、第1光源22と第2光源24は、交互に発光を繰返し、第1波長光(870nm)と第2波長光(970nm)を交互に測定対象物に向けて照射する。制御装置30は、第1光源22を制御してパルス変調された第1波長光(870nm)を測定対象物に向けて照射させるとともに、第2光源24を制御してパルス変調された第2波長光(970nm)を測定対象物に向けて照射させる。図5に示すように、第1光源22がオンしているときは第2光源24がオフしており、第2光源24がオンしているときは第1光源22がオフしている。また、第1光源22と第2光源24が同時にオフする期間も設けられている。この例では、第1光源22の第1波長光(870nm)と第2光源24の第2波長光(970nm)は、いずれも同一のパルス周期である。なお、利用されるパルス変調の種類は特に限定されないが、本実施例ではパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)を利用する。
【0024】
制御装置30は、撮像装置40に接続されており、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングに連動(同期)して、撮像装置40のうちのどの電荷蓄積部に電荷を蓄積させるかも制御する。具体的には、図3に示す受光部42の場合、受光素子44a,44b,44c,44dと電荷蓄積部46a,46b,46c,46dの間のそれぞれにスイッチング素子(典型的には電界効果型トランジスタ)が接続されており、制御装置30は、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングに連動して、それらのスイッチング素子をオン・オフするタイミングを制御する。したがって、制御装置30は、パルス変調されたゲート信号を利用して、受光素子44a,44b,44c,44dと電荷蓄積部46a,46b,46c,46dの間のスイッチング素子のオン・オフを制御する。図5に示すように、制御装置30は、第1光源22及び第2光源24の発光するタイミングに一致してスイッチング素子をオンさせる蓄積タイミング1(位相0°)と、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングから位相が180°ずれてスイッチング素子をオンさせる蓄積タイミング2(位相180°)の2種類が存在する。図5に示すように、蓄積タイミング1と蓄積タイミング2によるスイッチング素子のオン・オフが所定期間に亘って繰返される。」

「【0031】
図7及び8を参照して、距離画像データを取得するための方法の他の一例を説明する。図7及び8に示す例は、光源から照射された照射光と測定対象物で反射した反射光の位相差から測定対象物までの距離を換算することによって、距離画像データを取得する例である。
【0032】
図7に示すように、この例では、第1光源22と第2光源24が発光するタイミングに連動(同期)して、撮像装置40のスイッチング素子をオンさせるタイミングが4種類であることを特徴としている。図7に示すように、制御装置30は、第1光源22及び第2光源24のオンするタイミングに一致してスイッチング素子をオンさせる蓄積タイミング1(位相0°)と、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングから位相が180°ずれてスイッチング素子をオンさせる蓄積タイミング2(位相180°)と、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングから位相が90°ずれてスイッチング素子をオンさせるタイミング3(位相90°)と、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングから位相が270°ずれてスイッチング素子をオンさせるタイミング4(位相270°)の4種類が存在する。図7に示すように、蓄積タイミング1と蓄積タイミング2によるスイッチング素子のオン・オフが所定期間(T1)に亘って繰返された後に、蓄積タイミング3と蓄積タイミング4によるスイッチング素子のオン・オフが所定期間(T2)に亘って繰返される。」

「【0037】
即ち、所定期間(T1)において第1電荷蓄積部46aに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(図7の時間(1)に対応する)と第2電荷蓄積部46bに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(図7の時間(2)に対応する)と、所定期間(T2)において第1電荷蓄積部46aに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(図7の時間(5)に対応する)と第2電荷蓄積部46bに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(図7の時間(6)に対応する)に基づいて、距離画像データを演算することができる。この距離画像データは、第1波長光(870nm)に基づいて取得される距離画像データである。同様に、所定期間(T1)において第3電荷蓄積部46cに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(図7の時間(3)に対応する)と第4電荷蓄積部46dに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(図7の時間(4)に対応する)と、所定期間(T2)において第3電荷蓄積部46cに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(図7の時間(7)に対応する)と第4電荷蓄積部46dに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(図7の時間(8)に対応する)に基づいて、距離画像データを演算することができる。この距離画像データは、第2波長光(970nm)に基づいて取得される距離画像データである。
【0038】
第1波長光に基づく距離画像データと第2波長光に基づく距離画像データは、例えば、それらの平均値を真の距離画像データとして用いてもよい。あるいは、必要に応じて、第1波長光に基づく距離画像データと第2波長光に基づく距離画像データのいずれか一方を用いてもよい。」

「【0054】
図11に、撮像装置40に設けられた受光部42の他の一例を示す。図11に示す受光部42は、2つの受光素子44A,44Bと、4つの電荷蓄積部46a,46b,46c,46dを備えている。第1電荷蓄積部46aと第2電荷蓄積部46bはそれぞれ、第1受光素子44Aに接続されている。第3電荷蓄積部46cと第4電荷蓄積部46dはそれぞれ、第2受光素子44Bに接続されている。第1電荷蓄積部46aと第1受光素子44A、及び第2電荷蓄積部46bと第1受光素子44Aの間には、スイッチング素子がそれぞれ設けられている。第3電荷蓄積部46cと第2受光素子44B、及び第4電荷蓄積部46dと第2受光素子44Bの間にも、スイッチング素子がそれぞれ設けられている。
【0055】
受光部42はさらに、2つのバンドパスフィルタ48A,48Bを備えている。第1バンドパスフィルタ48Aは第1受光素子44Aを覆っており、第2バンドパスフィルタ48Bは第2受光素子44Bを覆っている。第1バンドパスフィルタ48Aは第1波長光(870nm)に対して透過選択性を有しており、第2バンドパスフィルタ48Bは第2波長光(970nm)に対して透過選択性を有している。このため、第1受光素子44Aは、第1波長光のみを受光する。第2受光素子44Bは、第2波長光のみを受光する。
【0056】
図12に、図11の受光部42を用いて位相差φに基づく距離画像データを取得する例を示す。なお、以下の技術は、図5に示す時間差τに基づく距離画像データの取得例にも適用することができる。図7の例と比較すると分かるように、第1光源22と第2光源24が同時に発光を繰り返している。所定期間(T1)の場合、図12に示されている時間(1)では、図11の第1受光素子44Aと第1電荷蓄積部46aの間のスイッチング素子がオンとなり、第1受光素子44Aで変換された電荷が第1電荷蓄積部46aに蓄積される。図11に示されている時間(2)では、図11の第1受光素子44Aと第2電荷蓄積部46bの間のスイッチング素子がオンとなり、第1受光素子44Aで変換された電荷が第2電荷蓄積部46bに蓄積される。図12に示されている時間(3)では、図11の第2受光素子44Bと第3電荷蓄積部46cの間のスイッチング素子がオンとなり、第2受光素子44Bで変換された電荷が第3電荷蓄積部46cに蓄積される。図12に示されている時間(4)では、図11の第2受光素子44Bと第4電荷蓄積部46dの間のスイッチング素子がオンとなり、第2受光素子44Bで変換された電荷が第4電荷蓄積部46dに蓄積される。4つの電荷蓄積部46a,46b,46c,46dには、所定期間(T1)に亘って変換された電荷が累積的に蓄積される。所定期間(T1)が終了すると、電荷蓄積部46a,46b,46c,46dに累積的に蓄積された電荷量は、記憶装置50において電圧値に変換され記憶される。さらに、所定期間(T1)が終了すると、電荷蓄積部46a,46b,46c,46dに蓄積された電荷は消去される。
【0057】
次に、所定期間(T2)に移行すると、図12に示されている時間(5)では、図11の第1受光素子44Aと第1電荷蓄積部46aの間のスイッチング素子がオンとなり、第1受光素子44Aで変換された電荷が第1電荷蓄積部46aに蓄積される。図12に示されている時間(6)では、図11の第1受光素子44Aと第2電荷蓄積部46bの間のスイッチング素子がオンとなり、第1受光素子44Aで変換された電荷が第2電荷蓄積部46bに蓄積される。図12に示されている時間(7)では、図11の第2受光素子44Bと第3電荷蓄積部46cの間のスイッチング素子がオンとなり、第2受光素子44Bで変換された電荷が第3電荷蓄積部46cに蓄積される。図12に示されている時間(8)では、図11の第2受光素子44Bと第4電荷蓄積部46dの間のスイッチング素子がオンとなり、第2受光素子44Bで変換された電荷が第4電荷蓄積部46dに蓄積される。4つの電荷蓄積部46a,46b,46c,46dには、所定期間(T2)に亘って変換された電荷が累積的に蓄積される。所定期間(T2)が終了すると、電荷蓄積部46a,46b,46c,46dに累積的に蓄積された電荷量は、記憶装置50において電圧値に変換され記憶される。さらに、所定期間(T2)が終了すると、電荷蓄積部46a,46b,46c,46dに蓄積された電荷は消去される。
【0058】
図12に示すように、時間(1)と(3)は同一であり、時間(2)と(4)は同一であり、時間(5)と(7)は同一であり、時間(6)と(8)は同一である。即ち、第1バンドパスフィルタ48A及び第2バンドパスフィルタ48Bを利用することにより、第1受光素子44Aでは第1波長光の反射光のみを電荷に変換する処理を実行することができ、第2受光素子44Bでは第2波長光の反射光のみを電荷に変換する処理を実行することができる。第1受光素子44Aにおける処理と第2受光素子44Bにおける処理を平行して実行することができる。これにより、画像センサ100は、より短時間で画像データを取得することが可能になる。」

【図11】 【図12】

図12より、時間(1)、時間(3)は、蓄積タイミング1(位相0°)であり、時間(2)、時間(4)は、蓄積タイミング2(位相180°)であり、時間(5)、時間(7)は、蓄積タイミング3(位相90°)であり、時間(6)、時間(8)は、蓄積タイミング4(位相270°)であることが見て取れる。

(2)したがって、引用文献Bには次の技術的事項(以下「引用文献Bに記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「画像センサ100は、照射装置20と、受光装置80と、照射装置20と受光装置80を制御する制御装置30を備え(【0014】)、
照射装置20は、第1波長域の第1波長光を測定対象物の表面に向けて照射する第1光源22と、第2波長域の第2波長光を測定対象物の表面に向けて照射する第2光源24を備え(【0015】)、
受光装置80は、撮像装置40と、記憶装置50と、演算装置60を備え、
撮像装置40は、測定対象物で反射した第1波長光の第1反射光に応じた電荷量を蓄積するとともに、測定対象物で反射した第2波長光の第2反射光に応じた電荷量を蓄積し(【0016】)、
撮像装置40は、2次元状(アレイ状)に配置されている複数の受光部42を備え、受光部42は、画素毎に設けられ、受光部42はそれぞれ、光を電荷に変換する受光素子(光電変換素子)と、受光素子で変換された電荷を蓄積する電荷蓄積部を備え(【0017】)、
受光部42は、2つの受光素子44A,44Bと、4つの電荷蓄積部46a,46b,46c,46dを備え、第1電荷蓄積部46aと第2電荷蓄積部46bはそれぞれ、第1受光素子44Aに接続され、第3電荷蓄積部46cと第4電荷蓄積部46dはそれぞれ、第2受光素子44Bに接続され、第1電荷蓄積部46aと第1受光素子44A、及び第2電荷蓄積部46bと第1受光素子44Aの間には、スイッチング素子がそれぞれ設けられ、第3電荷蓄積部46cと第2受光素子44B、及び第4電荷蓄積部46dと第2受光素子44Bの間にも、スイッチング素子がそれぞれ設けられ(【0054】)、
第1受光素子44Aは、第1波長光のみを受光し、第2受光素子44Bは、第2波長光のみを受光し(【0055】)、
記憶装置50は、受光部42の電荷蓄積部46a,46b,46c,46dに蓄積された電荷量を電圧に変換する電圧変換回路と、変換された電圧値を記憶する記憶回路を備え、記憶装置50の記憶回路は複数のメモリを有しており、各受光部42の電荷蓄積部46a,46b,46c,46dのそれぞれの電荷量に対応した電圧値を記憶し(【0019】)、
演算装置60は、記憶装置50に記憶された電圧値に基づいて、距離画像データを演算し(【0020】)、
制御装置30は、第1光源22を制御して第1波長光を測定対象物に向けて照射させるとともに、第2光源24を制御して第2波長光を測定対象物に向けて照射させ(【0023】)、
制御装置30は、撮像装置40に接続されており、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングに連動(同期)して、撮像装置40のうちのどの電荷蓄積部に電荷を蓄積させるかも制御し、受光素子と電荷蓄積部46a,46b,46c,46dの間のそれぞれにスイッチング素子が接続されており、制御装置30は、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングに連動して、それらのスイッチング素子をオン・オフするタイミングを制御し(【0024】)、
光源から照射された照射光と測定対象物で反射した反射光の位相差から測定対象物までの距離を換算することによって、距離画像データを取得するための方法(【0031】)において、
制御装置30は、第1光源22及び第2光源24のオンするタイミングに一致してスイッチング素子をオンさせる蓄積タイミング1(位相0°)と、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングから位相が180°ずれてスイッチング素子をオンさせる蓄積タイミング2(位相180°)と、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングから位相が90°ずれてスイッチング素子をオンさせるタイミング3(位相90°)と、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングから位相が270°ずれてスイッチング素子をオンさせるタイミング4(位相270°)の4種類が存在し(【0032】)、
所定期間(T1)の場合、時間(1)では、蓄積タイミング1(位相0°)で第1受光素子44Aと第1電荷蓄積部46aの間のスイッチング素子がオンとなり、第1受光素子44Aで変換された電荷が第1電荷蓄積部46aに蓄積され、時間(2)では、蓄積タイミング2(位相180°)で第1受光素子44Aと第2電荷蓄積部46bの間のスイッチング素子がオンとなり、第1受光素子44Aで変換された電荷が第2電荷蓄積部46bに蓄積され、時間(3)では、蓄積タイミング1(位相0°)で第2受光素子44Bと第3電荷蓄積部46cの間のスイッチング素子がオンとなり、第2受光素子44Bで変換された電荷が第3電荷蓄積部46cに蓄積され、時間(4)では、蓄積タイミング2(位相180°)で第2受光素子44Bと第4電荷蓄積部46dの間のスイッチング素子がオンとなり、第2受光素子44Bで変換された電荷が第4電荷蓄積部46dに蓄積され、4つの電荷蓄積部46a,46b,46c,46dには、所定期間(T1)に亘って変換された電荷が累積的に蓄積され、所定期間(T1)が終了すると、電荷蓄積部46a,46b,46c,46dに累積的に蓄積された電荷量は、記憶装置50において電圧値に変換され記憶され(【0056】、図12)、
所定期間(T2)に移行すると、時間(5)では、蓄積タイミング3(位相90°)で第1受光素子44Aと第1電荷蓄積部46aの間のスイッチング素子がオンとなり、第1受光素子44Aで変換された電荷が第1電荷蓄積部46aに蓄積され、時間(6)では、蓄積タイミング4(位相270°)で第1受光素子44Aと第2電荷蓄積部46bの間のスイッチング素子がオンとなり、第1受光素子44Aで変換された電荷が第2電荷蓄積部46bに蓄積され、時間(7)では、蓄積タイミング3(位相90°)で第2受光素子44Bと第3電荷蓄積部46cの間のスイッチング素子がオンとなり、第2受光素子44Bで変換された電荷が第3電荷蓄積部46cに蓄積され、時間(8)では、蓄積タイミング4(位相270°)で第2受光素子44Bと第4電荷蓄積部46dの間のスイッチング素子がオンとなり、第2受光素子44Bで変換された電荷が第4電荷蓄積部46dに蓄積され、4つの電荷蓄積部46a,46b,46c,46dには、所定期間(T2)に亘って変換された電荷が累積的に蓄積され、所定期間(T2)が終了すると、電荷蓄積部46a,46b,46c,46dに累積的に蓄積された電荷量は、記憶装置50において電圧値に変換され記憶され(【0057】、図12)、
所定期間(T1)において第1電荷蓄積部46aに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(時間(1)に対応する)と第2電荷蓄積部46bに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(時間(2)に対応する)と、所定期間(T2)において第1電荷蓄積部46aに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(時間(5)に対応する)と第2電荷蓄積部46bに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(時間(6)に対応する)に基づいて、第1波長光に基づいて取得される距離画像データを演算し、
同様に、所定期間(T1)において第3電荷蓄積部46cに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(時間(3)に対応する)と第4電荷蓄積部46dに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(時間(4)に対応する)と、所定期間(T2)において第3電荷蓄積部46cに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(時間(7)に対応する)と第4電荷蓄積部46dに蓄積されている電荷量に基づいて記憶装置50に記憶されている電圧値(時間(8)に対応する)に基づいて、第2波長光に基づいて取得される距離画像データを演算する(【0037】)、
距離画像データを取得するための方法(【0031】)。」

3.引用文献Cについて
(1)原査定の拒絶の理由において引用された国際公開第2011/158796号(以下「引用文献C」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0030] 以下に説明する実施形態では、図3に示すように、対象空間に投光する発光源1と、対象空間からの光を受光する撮像素子2とを備えた撮像装置を例示する。図3において撮像素子2として電荷結合素子を用いている。ただし、この構成は一例であって、本発明の構成を限定する趣旨ではない。」

「[0039] 図2に示す構成は、撮像素子2の1画素分の構成であって、素子形成層13の表面に沿って10個の電極10を一直線上に配列している。また、図2では、各電極10を区別するために10A?10Jの符号を付与している。なお、電極10Iは、本実施形態の動作では、受光期間には電極10Aに隣接してポテンシャル障壁を形成し、電荷を取り出す際には電荷を移動させるために用いる。同様に、電極10Jは、本実施形態の動作では、受光期間には電極10Hに隣接してポテンシャル障壁を形成し、電荷を取り出す際には電荷を移動させるために用いる。」

「[0045] また、投光期間には図4(b)のように電極10A?10Fに跨る領域にポテンシャル井戸11を形成し、非投光期間には図4(h)のように電極10C?10Hに跨る領域にポテンシャル井戸11を形成する。投光期間では、電極10B?10Fが一列の転送電極として使用され、電極10Gは電極10B?10Fに対応するポテンシャル井戸を電極10Hに対応するポテンシャル井戸から分離するためのポテンシャル障壁を形成する障壁電極(分離電極)として使用される。一方、非投光期間では、電極10C?10Gが一列の転送電極として使用され、電極10Bは電極10C?10Gに対応するポテンシャル井戸を電極10Aに対応するポテンシャル井戸から分離するためのポテンシャル障壁を形成する障壁電極(分離電極)として使用される。なお、一列の転送電極の第1端側は図2における右端側であり、第2端側は図2における左端側である。よって、保持電極(第1保持電極)10Aは、一列の転送電極10B?10Fの第2端側に配置されている。保持電極(第2保持電極)10Hは、一列の転送電極10C?10Gの第1端側に配置されている。
[0046] すなわち、投光期間と非投光期間とにおいて、保持電極である電極10A,10Hの間の電極10B?10Gを用いて集積された電荷が、それぞれ保持電極である電極10A,10Hに対応して形成されたポテンシャル井戸に保持されるのである。これらのポテンシャル井戸には、素子形成層13に照射された光により生成された電荷が集積されるから、受光量に応じた電荷を生成する感光部として機能する。したがって、感光部に電極10が配置されていることになる。」

「[0066] ところで、投光期間Tbと非投光期間Tdとでは、電極10に制御電圧を印加する順序が逆になる。そこで、投光期間Tbおよび非投光期間Tdを規定する投光信号(図6(j)参照)を適宜時間(図示例ではクロック信号の1周期分)だけ遅延させた選択信号SELを生成し、データラッチ24のクロック端子に入力する矩形波信号S2?S4を選択する。すなわち、リングオシレータ21から出力される矩形波信号S2?S4のうちで選択すべき2信号ずつをセレクタ25の入力とし、各セレクタ25の2入力のうちの一方を選択信号SELにより選択してセレクタ25の出力とするのである。
[0067] たとえば、図5の最上段のセレクタ25には、矩形波信号S2?S4のうちで基準タイミング信号S5を生成する矩形波信号S1との時間差が最小である矩形波信号S2と最大である矩形波信号S4とを入力する。また、次段のセレクタ25には、矩形波信号S1との時間差が2番目に小さい矩形波信号と2番目に大きい矩形波信号とを入力する。そして、最下段のセレクタ25では、矩形波信号S1との時間差が最大である矩形波信号S4と最小である矩形波信号S2とを選択できるようにする。
[0068] 各セレクタ25への入力をこのように組み合わせることにより、選択信号SELを用いて、各データラッチ24のクロック端子に入力する矩形波信号S2?S4の順番を入れ替えることができる。すなわち、最上段のセレクタ25と最下段のセレクタ25とには、同じ矩形波信号S2,S4が入力されるが、互いに異なる矩形波信号S2,S4が出力される関係となるように接続関係を設定する。他のセレクタ25についても同様である。」

「[0076] 駆動回路280は、複数の電極10(10A?10J)に個別に対応する複数のドライバ28(28A?28J)を備える。ドライバ28は、駆動信号が第1値であれば制御電圧を、駆動信号が第2値であれば基準電圧を対応する電極10に与えるように構成されている。よって、駆動回路280は、制御回路250から駆動信号を受け取ると、駆動信号に対応する電極10に、駆動信号が第1値であれば制御電圧を、駆動信号が第2値であれば基準電圧を与えるように構成されている。」

「[0081] 駆動信号生成回路251は、複数(6つ)の電極10B?10Gに個別に対応する複数(6つ)の駆動信号D1?D6を生成するように構成される。図7に示すように、駆動信号生成回路251は、複数(6つ)のセレクタ25(25A?25F)と、複数(4つ)のデータラッチ24(24A?24D)と、基準パルス生成部23と、切替回路253と、を備える。」

「[0083] 切替回路253は、駆動制御回路252の指示に応じて各セレクタ25にハイレベルまたはロウレベルの切替信号を与えるように構成される。また、切替回路253は、障壁信号R2を出力するように構成される。障壁信号R2は、図8(i)に示すように、電極10に基準電圧を与えるための信号であり、常に第2値(ロウレベル)に設定されている。
[0084] セレクタ25は第1入力端子と第2入力端子と出力端子を有し、ハイレベルの信号が与えられると第1入力端に入力された信号を出力端子から出力し、ロウレベルの信号が与えられると第2入力端に入力された信号を出力端子から出力するように構成される。セレクタ25Aの第1入力端子にはタイミング信号d3が入力され、第2入力端子にはタイミング信号D2が入力されている。セレクタ25Bの第1入力端子にはタイミング信号d2が入力され、第2入力端子にはタイミング信号d3が入力されている。セレクタ25Cの第1入力端子はデータラッチ24Dの出力端子Qに接続され、第2入力端子には障壁信号R2が与えられ、出力端子はドライバ28Bに接続される。セレクタ25Dの第1入力端子はデータラッチ24Cの出力端子Qに接続され、第2入力端子には基準タイミング信号R1が与えられ、出力端子はドライバ28Cに接続される。セレクタ25Eの第1入力端子は基準タイミング信号R1が与えられ、第2入力端子にはデータラッチ24Cの出力端子Qに接続され、出力端子はドライバ28Fに接続される。セレクタ25Fの第1入力端子には障壁信号R2が与えられ、第2入力端子はデータラッチ24Dの出力端子Qに接続され、出力端子はドライバ28Gに接続される。」

「[0090] 駆動制御回路252は、クロック信号に基づいて各ドライバ28(28A,28H,28I,28J)に駆動信号を出力する。すなわち、駆動制御回路252は、投光期間Tbおよび非投光期間Tdを通して、保持電極となる電極10A,10Hに対応するドライバ28A,28Hに第1値(ハイレベル)の駆動信号を与える。また、駆動制御回路252は、投光期間Tbおよび非投光期間Tdを通して、取出電極となる電極10I,10Jに対応するドライバ28I,28Jに第2値(ロウレベル)の駆動信号を与える。」

(2)したがって、引用文献Cには次の技術的事項(以下「引用文献Cに記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「対象空間に投光する発光源1と、対象空間からの光を受光する撮像素子2とを備えた撮像装置([0030])において、
撮像素子2の1画素分の素子形成層13の表面に沿って電極10A?10Jを一直線上に配列し([0039])、
投光期間には電極10A?10Fに跨る領域にポテンシャル井戸11を形成し、非投光期間には電極10C?10Hに跨る領域にポテンシャル井戸11を形成し、投光期間では、電極10B?10Fが一列の転送電極として使用され、非投光期間では、電極10C?10Gが一列の転送電極として使用され([0045])、投光期間と非投光期間とにおいて、保持電極である電極10A,10Hの間の電極10B?10Gを用いて集積された電荷が、それぞれ保持電極である電極10A,10Hに対応して形成されたポテンシャル井戸に保持され([0046])、
駆動回路280は、複数の電極10(10A?10J)に個別に対応する複数のドライバ28(28A?28J)を備え([0076])、
駆動制御回路252は、クロック信号に基づいて各ドライバ28(28A,28H,28I,28J)に駆動信号を出力し([0090])、
駆動信号生成回路251は、複数(6つ)の電極10B?10Gに個別に対応する複数(6つ)の駆動信号D1?D6を生成するように構成され、複数(6つ)のセレクタ25(25A?25F)を備え([0081])、
切替回路253は、駆動制御回路252の指示に応じて各セレクタ25にハイレベルまたはロウレベルの切替信号を与えるように構成され([0083])、
セレクタ25は第1入力端子と第2入力端子と出力端子を有し、ハイレベルの信号が与えられると第1入力端に入力された信号を出力端子から出力し、ロウレベルの信号が与えられると第2入力端に入力された信号を出力端子から出力するように構成され([0084])、
投光期間Tbと非投光期間Tdとでは、電極10に制御電圧を印加する順序が逆になるから、選択すべき2信号ずつをセレクタ25の入力とし、各セレクタ25の2入力のうちの一方を選択してセレクタ25の出力とする([0066])ことにより、順番を入れ替えることができる([0068])、
撮像装置([0030])。」

4.引用文献Dについて
原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由において周知技術を示す文献として引用された特表2010-537555号公報(以下「引用文献D」という。)には、段落0050、図8A?図8Cの記載より、概略、画素の形状が八角形の八角形画素を用いる周知技術が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「光源3」、「プローブ光」は、それぞれ、本願発明1の「照明システム」、「変調信号」に相当し、引用発明における、「光源3から」「プローブ光」「が出射され、プローブ光は物体Hに照射され」ることは、本願発明1における「照明システム」が「変調信号でシーンを照明するように適応され」ていることに相当する。
そして、引用発明における、「固体撮像装置と、光源と、対象物までの距離を演算する演算回路と、を備え」、「TOF型距離測定装置である」、「距離画像測定装置」は、本願発明1における「変調信号でシーンを照明するように適応された照明システム用の飛行時間(ToF)システム」に相当し、引用発明における、その「距離画像測定装置において、固体撮像装置のタイミングチャートに従って、固体撮像素子1の駆動を制御する方法」は、本願発明1における「飛行時間(ToF)システムを駆動するための方法」に相当するといえる。

イ 引用発明における「画素P(m,n)」、「固体撮像素子1」は、それぞれ、本願発明1における「画素」、「撮像センサ」に相当する。
そして、引用発明における、「距離画像測定装置は、固体撮像素子1」「を備え」、「固体撮像素子1は、二次元状に配列した複数の画素P(m,n)からなる撮像領域1IPを備えて」いることは、上記アを踏まえると、本願発明1における「前記ToFシステムが少なくとも1つの画素を含む撮像センサを有」することに相当する。

ウ 引用発明における、「物体Hの表面において反射されたプローブ光」である「検出パルス光L_(D)」は、上記アを踏まえると、本願発明1における「前記シーンから反射した変調信号」に相当する。
また、引用発明における「右側パルス信号S_(R)、左側パルス信号S_(L)」並びに「前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)」は、本願発明1における「駆動信号」に相当する。
そして、引用発明において、「検出パルス光L_(D)が各画素に入射すると、各画素においてキャリアが発生し」、「画素P(m,n)」に「第1ゲート電極TX1,TX2が配置され、第1ゲート電極TX1,TX2の外側には」「一対の第1蓄積領域AR,ALが位置し」、「画素P(m,n)」に「第1ゲート電極TX3,TX4が配置され、第1ゲート電極TX3,TX4の外側には」「一対の第1蓄積領域AF,ABが位置し」、「電荷の振り分けを行うため、一対の第1ゲート電極TX1,TX2には、それぞれパルス信号を含む右側パルス信号S_(R),左側パルス信号S_(L)が入力され」、「一対の第1ゲート電極TX3,TX4には、それぞれ前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)が入力され」ることは、上記イを踏まえると、本願発明1における、「前記画素が、前記シーンから反射した変調信号を検出するために駆動信号によって駆動されるタップを含」むことに相当する。
なお、「タップ」に関し、本願明細書では「【0008】・・・「タップ」は、S_(φ)のような光信号にさらされたときに電荷を光生成するために使用される制御ノードおよび検出領域を含む構成要素である。・・・【0033】・・・各タップはそれぞれ制御ノード(すなわち基板コンタクト)1、3、5、および7、ならびに検出領域2、4、6、および8から構成される。・・・【0035】・・・回路構成321(または324)と制御ノード325との間に印加される電位を制御することによって、関連付けられるタップの検出能を制御することが可能である。光子を画素の感光領域内に入射すると、特定の位置に電子正孔e^(-)/h^(+)対が生成される。電子正孔対は、存在しかつ流れる多数電流に関連付けられる電界によって分離される。この電界は、光生成される少数キャリアを、流れている多数電流とは反対の方向に、すなわち領域325の方向にドリフトさせる。拡散によって、最終的に少数キャリアは検出領域326に到達する。【0036】基本的に、画素が幾つかのタップを含む場合、かつ他のタップに対して正電位が1つのタップに印加されると、そのタップは起動され、検出能が高くなる。すなわち、起動されたタップの検出領域は、画素における光生成された少数キャリアの大部分を受け取る。」等と記載されており、引用発明における「第1ゲート電極」、「第1蓄積領域」は、それぞれ、本願明細書でいうところの「制御ノード」、「検出領域」に相当するといえるから、引用発明における「第1ゲート電極」及び「第1蓄積領域」が、本願発明1でいうところの(制御ノードおよび検出領域を含む)「タップ」に相当するといえる。すなわち、引用発明における、「第1ゲート電極TX1」及び「第1蓄積領域AR」、「第1ゲート電極」「TX2」及び「第1蓄積領域」「AL」、「第1ゲート電極TX3」及び「第1蓄積領域AF」、並びに、「第1ゲート電極」「TX4」及び「第1蓄積領域」「AB」のそれぞれが、本願発明1における「前記シーンから反射した変調信号を検出するために駆動信号によって駆動されるタップ」に相当することになる。

エ 引用発明では、「1つの画素内の左右方向のキャリアの振り分けの終了(時刻t_(4))の後、時刻t_(7)?t_(9)の期間において、前後方向のキャリア振り分け」「が行われる」ところ、上記ウを踏まえると、引用発明における、「左右方向のキャリアの振り分け」に関係する、「第1ゲート電極TX1」及び「第1蓄積領域AR」、「第1ゲート電極」「TX2」及び「第1蓄積領域」「AL」と、「前後方向のキャリア振り分け」に関係する、「第1ゲート電極TX3」及び「第1蓄積領域AF」、「第1ゲート電極」「TX4」及び「第1蓄積領域」「AB」とは、それぞれ、本願発明1における、「第1の組」「のタップ」、「第2の組のタップ」に相当する。
そうすると、上記イを踏まえると、引用発明において、「1つの画素内」で、「第1ゲート電極TX1」及び「第1蓄積領域AR」、「第1ゲート電極」「TX2」及び「第1蓄積領域」「AL」を、「左右方向のキャリアの振り分け」に用い、「第1ゲート電極TX3」及び「第1蓄積領域AF」、「第1ゲート電極」「TX4」及び「第1蓄積領域」「AB」を、「前後方向のキャリア振り分け」に用いることが、本願発明1において、「各画素に対し」、「少なくとも第1の組、および第2の組のタップを決定する」ことに相当するといえる。

オ 引用発明の「左右方向のキャリアの振り分け」は、「駆動パルスの前半の半周期の期間においては、右側の第1蓄積領域のポテンシャルφ_(AR)の井戸内にキャリアを転送し、右側のポテンシャル井戸には電荷量QRが蓄積され、駆動パルスの後半の半周期の期間においては、左側の第1蓄積領域のポテンシャルφ_(AL)の井戸内にキャリアを転送し、左側のポテンシャル井戸には電荷量QLが蓄積され、微少電荷蓄積工程をM回繰り返す」こと、すなわち、「駆動パルス」の「周期」を「M回繰り返す」ことである。ここでの「駆動パルス」とは「駆動パルス信号S_(P)」のことであり、「駆動パルス信号S_(P)」は「プローブ光」と、「駆動パルス信号S_(P)に同期した、駆動パルス信号S_(P)と同一パルス幅のプローブ光」という関係にあるから、上記アを踏まえると、引用発明における「M回繰り返」される「駆動パルス」の「周期」は、本願発明1における「前記変調信号の所定数N周期」に相当する。
そして、上記エに記載したように、引用発明では、「左右方向のキャリアの振り分け」において、本願発明1の「第1の組」「のタップ」に相当する、「第1ゲート電極TX1」及び「第1蓄積領域AR」、「第1ゲート電極」「TX2」及び「第1蓄積領域」「AL」が使用されるから、引用発明の、「駆動パルス」の「周期」を「M回繰り返す」「左右方向のキャリアの振り分け」は、本願発明1における、「前記変調信号の所定数N周期中に、前記第1の組のタップを駆動」することに相当する。
同様に、上記エに記載したように、引用発明では、「前後方向のキャリア振り分け」において、本願発明1の「第2の組のタップ」に相当する、「第1ゲート電極TX3」及び「第1蓄積領域AF」、「第1ゲート電極」「TX4」及び「第1蓄積領域」「AB」が使用されるから、引用発明における、「左右方向のキャリアの振り分けの終了」「の後」、「上述のM回の検出が行われる」「前後方向のキャリア振り分け」は、本願発明1における、「(前記変調信号の所定数N周期中に、前記第1の組のタップを駆動し、)次いで、前記変調信号の所定数N周期中に、前記第2の組のタップを駆動」することに相当する。
さらに、引用発明の「左右方向のキャリアの振り分け」及び「前後方向のキャリア振り分け」においての「M回の微少電荷蓄積」は、「反射パルス検出における」ものであること、及び上記ウを踏まえると、引用発明における、「駆動パルス」の「周期」を「M回繰り返す」「左右方向のキャリアの振り分け」を行い、「左右方向のキャリアの振り分けの終了」「の後」、「上述のM回の検出が行われる」「前後方向のキャリア振り分け」を行うことは、本願発明1における、「前記変調信号の所定数N周期中に、前記第1の組のタップを駆動し、次いで、前記変調信号の所定数N周期中に、前記第2の組のタップを駆動して、前記反射した変調信号を検出する」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「変調信号でシーンを照明するように適応された照明システム用の飛行時間(ToF)システムを駆動するための方法であって、
前記ToFシステムが少なくとも1つの画素を含む撮像センサを有し、
前記画素が、前記シーンから反射した変調信号を検出するために駆動信号によって駆動されるタップを含み、
各画素に対し、
・少なくとも第1の組、および第2の組のタップを決定するステップと、
・前記変調信号の所定数N周期中に、前記第1の組のタップを駆動し、次いで、前記変調信号の所定数N周期中に、前記第2の組のタップを駆動して、前記反射した変調信号を検出するステップと、
を含む方法。」

(相違点)
本願発明1では、
「前記ToFシステムは、
前記駆動信号を受信し、かつそれらを前記タップに送信するように適応されたタップドライバと、
前記タップドライバに関連付けられる少なくとも1つのマルチプレクサと、
をさらに含」むのに対して、
引用発明では、「固体撮像素子1に右側パルス信号S_(R)、左側パルス信号S_(L)」(並びに「前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)」)「を入力」する「制御回路2」から、「一対の第1ゲート電極TX1,TX2には、それぞれパルス信号を含む右側パルス信号S_(R),左側パルス信号S_(L)が入力され」、「一対の第1ゲート電極TX3,TX4には、それぞれ前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)が入力され」るまでの、「右側パルス信号S_(R),左側パルス信号S_(L)」、「前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)」の伝達過程の詳細が明記されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
ア 引用文献Bに記載された技術は、「制御装置30は、第1光源22及び第2光源24が発光するタイミングに連動」して、「受光素子と電荷蓄積部46a,46b,46c,46dの間のそれぞれに」「接続されて」いる「スイッチング素子をオン・オフするタイミングを制御」するものであるが、「制御装置30」が「スイッチング素子をオン・オフするタイミングを制御」するための信号を具体的にどのような手段によりどのようにして伝達するかは記載されておらず、相違点に係る本願発明1の構成を示唆するものではない。

イ 引用文献Cに記載された技術は、「撮像素子2の1画素分の素子形成層13の表面に沿って」「一直線上に配列」された「電極10A?10J」「に個別に対応する複数のドライバ28(28A?28J)」を設け、「複数(6つ)の電極10B?10Gに個別に対応する複数(6つ)の駆動信号D1?D6を生成する」のに「複数(6つ)のセレクタ25(25A?25F)」を用いるものであるが、この「複数(6つ)のセレクタ25(25A?25F)」は、「投光期間には電極10A?10Fに跨る領域にポテンシャル井戸11を形成し、非投光期間には電極10C?10Hに跨る領域にポテンシャル井戸11を形成し、投光期間では、電極10B?10Fが一列の転送電極として使用され、非投光期間では、電極10C?10Gが一列の転送電極として使用され、投光期間と非投光期間とにおいて、保持電極である電極10A,10Hの間の電極10B?10Gを用いて集積された電荷が、それぞれ保持電極である電極10A,10Hに対応して形成されたポテンシャル井戸に保持され」るものにおいて、「投光期間Tbと非投光期間Tdとでは、電極10に制御電圧を印加する順序が逆になるから、選択すべき2信号ずつをセレクタ25の入力とし、各セレクタ25の2入力のうちの一方を選択してセレクタ25の出力とすることにより、順番を入れ替える」ためのものである。
一方で、引用発明は、「制御回路2」は、「一対の第1ゲート電極TX1,TX2には、それぞれパルス信号を含む右側パルス信号S_(R),左側パルス信号S_(L)」を「入力」し、「一対の第1ゲート電極TX3,TX4には、それぞれ前側パルス信号S_(F)及び後側パルス信号S_(B)」を「入力」するものであるが、「駆動パルス信号SPは光源には印加されず、光源は非発光状態で、背景光の検出を行う」(引用文献Aの【0110】)にあたって、「光感応領域SAは、光検出素子PDを兼用し」(【0249】)、「光感応領域SAにおいて背景光を検出し」(【0250】)、「自己参照型の背景光検出を行う場合」(【0251】)には、「背景光検出期間T_(MONITOR)の時刻t_(1)?t_(2)においては、右側パルス信号S_(R)、左側パルス信号S_(L)を同時にハイレベルとし、光電変換によって発生した電子によって、第1蓄積領域のポテンシャルφ_(A)を低下させる」(【0253】)ものでもある。
しかしながら、引用発明は、引用文献Cのように「投光期間Tbと非投光期間Tdとでは、電極10に制御電圧を印加する順序が逆になる」ようなものではなく、「選択すべき2信号ずつをセレクタ25の入力とし、各セレクタ25の2入力のうちの一方を選択してセレクタ25の出力とすることにより、順番を入れ替える」必要もないから、引用発明において、引用文献Cに記載された技術を適用する動機づけを見出すことはできない。

ウ 相違点に係る本願発明1の構成は、引用文献Dにも記載されておらず、また、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。

(3)したがって、本願発明1と引用発明とは実質的な相違点を有しており、本願発明1は引用発明であるとはいえない。
また、本願発明1は、当業者であっても引用文献A-Dに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-8について
本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明であり、相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものである。
したがって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-8は、引用発明であるとはいえない。
また、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-8は、当業者であっても、引用文献A-Dに基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明9について
本願発明9は、本願発明1に対応する飛行時間システムの発明であり、本願発明1の上記相違点に係る構成に対応する、「・・・前記駆動信号を受信し、かつそれらを前記タップに送信するように適応されたタップドライバ(31a、31b、32a、32b、502、503、504、505)」「を備え」、「前記タップドライバ(502、503、504、505)に関連付けられる少なくとも1つのマルチプレクサ(506、507)をさらに含む」という構成を備えるものである。
したがって、本願発明1と同様の理由により、本願発明9は、引用発明であるとはいえない。
また、本願発明1と同様の理由により、本願発明9は、当業者であっても、引用文献A-Dに基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明10-15について
本願発明10-15は、本願発明9を減縮した発明であり、本願発明9の、本願発明1の相違点に係る構成に対応する上記「3.」の構成、と同一の構成を備えるものである。
したがって、本願発明9と同じ理由により、本願発明10-15は、引用発明であるとはいえない。
また、本願発明9と同じ理由により、本願発明10-15は、当業者であっても、引用文献A-Dに基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
上記「第6」「1.」「(2)」「ア」に記載したとおり、引用文献Bには、上記相違点に係る本願発明1の構成が記載されていないから、本願発明1は引用文献Bに記載された発明であるとはいえない。
また、本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献Bに記載された発明であるとはいえない。
さらに、本願発明9は、本願発明1に対応する飛行時間システムの発明であり、本願発明1の上記相違点に係る構成に対応する上記「第6」「3.」に記載した構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献Bに記載された発明であるとはいえない。
そして、本願発明10-15は、本願発明9を減縮した発明であり、本願発明9の上記構成を備えるものであるから、本願発明9と同じ理由により、引用文献Bに記載された発明であるとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
上記「第6」に記載したとおり、本願発明1-15は、当業者であっても、引用文献A-Dに基づいて容易に発明できたものとはいえない。よって、本願発明1-15は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献B-Dに基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由についての判断
本件補正により、本願発明1-15が、当審拒絶理由の対象でなかった、本件補正前の請求項12に記載されていた発明特定事項を含むものとなったから、当審拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由、当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-01 
出願番号 特願2016-518541(P2016-518541)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G01S)
P 1 8・ 537- WY (G01S)
P 1 8・ 121- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 中村 説志
須原 宏光
発明の名称 飛行時間システムを駆動するための方法  
代理人 亀谷 美明  

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