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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21F
管理番号 1350320
審判番号 不服2018-1207  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-10 
確定日 2019-03-27 
事件の表示 特願2014-201965「放射性物質除去用フィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日出願公開、特開2015- 45648〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月2日に出願した特願2013-114664号(優先権主張 平成24年5月2日、以下「原出願の優先日」という。)の一部を平成26年9月9日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年12月15日 :手続補正書の提出
平成29年 1月19日付け:拒絶理由の通知
平成29年 4月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月 8日付け:拒絶査定(同年10月10日発送)
平成30年 1月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年10月 5日付け:拒絶理由の通知
平成30年12月10日 :意見書、手続補正書(以下、「本件補正」という。)の提出

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
放射性物質を含む空気を上流側から下流側へと通過させてろ過する放射性物質除去用フィルタであって、
上記放射性物質除去用フィルは、0. 3μmまでの物質あるいは放射性物質の粒子を捕集・除去するHEPAフィルタと、
1nm以下の細孔口径(ミクロポア) を有し、0. 3μm未満の放射性物質の混合気体を通過させ、かつ上記混合気体中の粒状放射性物質を物理吸着によって捕集すると共に、有機の放射性ガスを上記細孔を触媒とする化学吸着によって捕集すべくトリエチレンジアミンを添着してなる活性炭素繊維フィルタとよりなり、
上記HEPAフィルタと上記活性炭素繊維フィルタとは、上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素繊維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して接合一体化していることを特徴とする放射性物質除去用フィルタ。」

第3 拒絶の理由
平成30年10月5日付けの当審が通知した拒絶理由のうちの理由2及び3は、次のとおりのものである。

理由2(進歩性)
この出願の請求項1に係る発明は、原出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由3(拡大先願)
この出願の請求項1に係る発明は、原出願の優先日前の特許出願であって、原出願の優先日後に出願公開がされた下記の特許出願7の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が下記の特許出願7に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が下記の特許出願7の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

引用文献1:特開2004-191347号公報
引用文献2:特開2012-2714号公報(平成24年1月5日公開)
引用文献3:特開2008-249358号公報
引用文献4:特開2002-28415号公報
引用文献5:実願平4-57377号(実開平6-15718号)のCD-ROM
引用文献6:特開2006-57900号公報
特許出願7:特願2011-179158号(特開2013-40884号公報)

第4 理由2(進歩性)について
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、医療施設や原子力施設などで発生した放射性気体分の捕集除去作用を、特に既設の空気浄化装置を改変することなく付設するのに好適な放射性気体の吸着用フィルター装置に関するものである。」

イ「【0002】
【従来の技術】
従来、医療施設や原子力施設などにおいては、放射性ヨウ素などの放射性気体が排出されるため、空調施設の気体処理経路中に空気浄化装置を設置し、発生した放射性気体分の濃度を法律に規制された基準値以下に低下させた後、施設外に排出している。」

ウ「【0017】
図1に示すように、空調施設の気体処理経路中に介在される空気浄化装置10は、吸入口10a側に設けられているフィルター収納部10cに、比較的大型の粗塵の除去を行うプレフィルター11が配備されている。また、その後段に設けられているフィルター収納部10dに、より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)12と、放射性気体の捕集除去を行うシート状チャコフィルター13(当審注:「シート状チャコールフィルター」の誤記。)が配備されている。
【0018】
具体的には、高性能フィルター12はフィルター収納部10dの約半分の高さ(1/2D)とされており、シート状チャコールフィルター13もフィルター収納部10dの約半分の高さ(1/2D)とされている。高性能フィルター12とシート状チャコールフィルター13は、パッキン15を介して一体に組み合わされた放射性気体の吸着用フィルター装置14として内蔵されている。なお、この吸着用フィルター装置14は、従来のように重量物である鉄製などのような金属製でなく、軽量な木製などによりハウジングを形成している。
【0019】
シート状チャコールフィルター13は、従来のように粉状あるいは粒状の活性炭によるものではなく、繊維状活性炭によりシート状に編組されている。この種のフィルターの素材として好適なものは、商品名:活性炭素繊維KF(東洋紡績(株)製)などがある。活性炭素繊維KFは、セルロース繊維を原料として製造される繊維状の活性炭とされ、比表面積が1000?2000m^(2)/gと大きく、5?100Åの細孔が開設されており、簿いシート状でも微細な被吸着物質をほとんど完全に捕集除去することができ、吸着容量は粉状あるいは粒状の活性炭に比べても著しく大きい吸着素材である。」

エ「【0024】
さらに、この放射性気体の吸着用フィルター装置14は、従来に比して著しく小型化が図られるので、新設の場合でも従来に比して大幅な小スペース化を測ることができる。」

オ 上記ウ及び図1から、空気浄化装置10は、吸入口10a及び排出口10bを有し、吸入口10aと排出口10bの間の気体処理経路の周囲は壁で囲われていることが理解できる。また、上流側に高性能フィルター12が、下流側にシート状チャコールフィルター13が配置されることが理解できる。

(2)引用発明
上記アないしオから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「医療施設や原子力施設などにおいて、放射性ヨウ素などの放射性気体の捕集除去を行う空気浄化装置の吸着用フィルター装置であって、
上流側に、より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)と、下流側に、放射性気体の捕集除去を行う、5?100Åの細孔が開設された繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルターがパッキンを介して一体に組み合わされ、
小型化が図られた吸着用フィルター装置。」

2 対比
(1)本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「放射性ヨウ素などの放射性気体」、「吸着用フィルター装置」及び「繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルター」は、本願発明の「放射性物質を含む空気」、「放射性物質除去用フィルタ」及び「活性炭素繊維」にそれぞれ相当する。
そして、HEPAフィルタは、一般に、0.3μmまでの粒子を捕集・除去するものであるから、引用発明の 「より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)」は、本願発明の「0.3μmまでの物質あるいは放射性物質の粒子を捕集・除去するHEPAフィルタ」に相当する。

イ 引用発明の「繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルター」は、5?100Åの細孔が開設されたものであるので、放射性ヨウ素などの放射性気体だけでなく、HEPAフィルタを通過した0.3μm未満の粒子状物質や無機の放射性ヨウ素などを物理吸着するものであることは明らかであるから、本願発明の「活性炭素繊維フィルタ」と引用発明の「繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルター」とは、「1nm以下の細孔口径(ミクロポア)を有し、0.3μm未満の放射性物質の混合気体を通過させ、かつ上記混合気体中の粒状放射性物質を物理吸着によって捕集すると共に、有機の放射性ガスを捕集する活性炭素繊維フィルタ」である点で一致する。

ウ 引用発明では、「上流側に、より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)と、下流側に、放射性気体の捕集除去を行う、5?100Åの細孔が開設された繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルターがパッキンを介して一体に組み合わされて」いるから、本願発明の「放射性物質除去用フィルタ」と引用発明の「吸着用フィルター装置」とは、「上流側の上記HEPAフィルタと下流側の上記活性炭素繊維フィルタとが一体化している」点で一致する。
そして、本願発明の「放射性物質除去用フィルタ」と引用発明の「吸着用フィルター装置」とは、「放射性物質を含む空気を上流側から下流側へと通過させてろ過する放射性物質除去用フィルタ」である点で一致する。

エ 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

・一致点
「放射性物質を含む空気を上流側から下流側へと通過させてろ過する放射性物質除去用フィルタであって、
上記放射性物質除去用フィルタは、0.3μmまでの物質あるいは放射性物質の粒子を捕集・除去するHEPAフィルタと、1nm以下の細孔口径(ミクロポア)を有し、0.3μm未満の放射性物質の混合気体を通過させ、かつ上記混合気体中の粒状放射性物質を物理吸着によって捕集すると共に、有機の放射性ガスを捕集する活性炭素繊維フィルタとよりなり、
上流側の上記HEPAフィルタと下流側の上記活性炭素繊維フィルタとが一体化している放射性物質除去用フィルタ。」

・相違点1
活性炭素繊維フィルタが、本願発明では「有機の放射性ガスを上記細孔を触媒とする化学吸着によって捕集すべくトリエチレンジアミンを添着してなる」ものであるのに対し、引用発明ではそのようなことが不明である点。

・相違点2
HEPAフィルタと上記活性炭素繊維フィルタとの一体化は、本願発明では、「上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素繊維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して接合」一体化しているのに対し、引用発明では、そのようなものでない点。

3 判断
(1)相違点についての検討
ア 相違点1について
活性炭素繊維フィルタにトリエチレンジアミンを添着されることにより、放射性有機ヨウ素を除去する技術は、例えば、引用文献2(段落0056を参照。)及び引用文献3(段落0016を参照。)に記載されているように、原出願の優先日前に周知である。
そして、引用発明と上記周知技術とは、活性炭素繊維フィルタにより放射性ヨウ素を除去する技術である点で共通するものであるから、上記周知技術を引用発明の活性炭素繊維フィルタに採用することは、当業者が容易になし得ることである。その際、活性炭素繊維フィルタが「細孔を触媒とする、化学反応」より有機の放射性ガスが吸着されるとの作用を奏することは、明らかである。

イ 相違点2について
引用文献4の段落0061及び図2からは、「白炭を担持したフィルター3」と「フィルター3」の2つのフィルタの互いの表裏面が「接着し、一体化」していることが理解できる。
引用文献5の段落0015及び図1からは、「上流層1のネット」と「下流層2の不織布」の2つのフィルタが積層されたものであって、熱融着または接着により積層されていることが理解できる。
以上の引用文献4及び5の記載を踏まえると、2種類のフィルタを互いの表裏面で接合一体化する技術は、原出願の優先日前に周知であったといえる。
そして、引用発明も、上記第4の1(1)エにあるように、小型化を図るものであることを踏まえれば、引用発明のHEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとの接合一体化に上記周知技術を適用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(2)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成30年12月10日の意見書において、概ね以下のようなことを主張している。

ア 「本願発明は簡単な構成で効率よく捕集・除去することができる、換言すれば、HEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとが互いの表裏面で接するように接合一体化し、これにより放射性物質を簡単な構成で効率よく捕集・除去するものです。
各引用文献で放射性物質を捕集・除去するためには、それぞれのフィルタが互いに対向するように組み合わされていますが、本願発明ではHEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとは互いの間隔をおかず1組のフィルタとして接合一体化しているものです。
これにより、小型の室内空気浄化装置などとしても用いることができる放射性物質除去用フィルタを提供するものです。」

イ 「本願発明は、段落【0014】にあるように、・・・(略)・・・簡単な構成であっても、すなわち「上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素繊維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して接合一体化している」というきわめて簡単な構造であっても、きわめて効率よく放射性物質の除去が行えるフィルタを提供できます。」

上記主張について検討すると、上記(1)イで検討したとおり、2つのフィルターを互いの表裏面で接合一体化する技術は、原出願の優先日前に周知であるといえる。
そして、上記(1)イで検討したように、引用発明のHEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとを上記周知技術により接合一体化することにより、2つのフィルタの間隔がなくなることから、「小型の室内空気浄化装置などとしても用いることができ」、「簡単な構造」となることは、明らかである。
また、2つのフィルタを接合一体化することで、放射性物質の捕集・除去に関して、特段の作用効果を奏するものでもない。
したがって、上記審判請求人の主張を採用することができない。

(3)本願発明の作用効果について
上記相違点1ないし2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

4 小括
よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 理由3(拡大先願)について
1 原出願の優先日前の特許出願の記載及び先願発明
(1)特許出願7の記載及び先願発明等について
特許出願7は、原出願の優先日前の他の特許出願であって、本願発明の発明者が特許出願7の発明をした者と同一ではなく、また本願の出願の時において、本願の出願人が先願の出願人と同一でもない。
そして、特許出願7(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、次の事項が記載されている。

ア「【0010】
前記前提における本発明の特徴は、放射性物質除去装置が、空気流入口および空気流出口を有して複合フィルタを挿脱可能に収容する所定容積のケーシングと、ケーシングに連結されてケーシングに空気を強制的に流入させる送風機とを備え、複合フィルタが、施設内の空気に含まれる塵埃を捕集するプレフィルタと、空気に含まれる放射性微粒子を捕集する多風量のHEPAフィルタと、活性炭素繊維シートから作られて空気に含まれる放射性有機ヨウ素を捕集する放射性有機ヨウ素除去フィルタとから形成され、放射性物質除去装置では、一方向へジグザグに整然と折り畳まれたHEPAフィルタと一方向へジグザグに整然と折り畳まれた放射性有機ヨウ素除去フィルタとが対向し、放射性有機ヨウ素を吸着するアミン類が活性炭素繊維シートに添着されていることにある。」

イ「【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる放射性物質除去装置によれば、複合フィルタがHEPAフィルタと放射性有機ヨウ素除去フィルタとを含み、HEPAフィルタが施設の空気に含まれる放射性微粒子を捕集し、放射性有機ヨウ素除去フィルタが高比表面積かつ微細な多数の細孔を有してアミン類が添着された活性炭素繊維シートから作られて空気に含まれる放射性有機ヨウ素を捕集するから、施設の空気に含まれる放射性微粒子や放射性有機ヨウ素を確実に捕集かつ除去することができ、施設において放射性微粒子や放射性有機ヨウ素を除去した清浄な空気を作ることができる。放射性物質除去装置は、放射性微粒子や放射性有機ヨウ素が発生するおそれがある原子力関連施設や医療施設に使用することで、それら施設から発生する放射性微粒子や放射性有機ヨウ素を確実に除去することができ、それら施設の安全性を確保することができる。」

ウ「【0038】
ケーシング12は、頂底壁19,20と前後壁21,22と両側壁23,24とを有し、四角形のそれら壁19?24が互いに直角に交差する六面体であり、上下方向へ長い四角柱状に成型されている。ケーシング12は、機器設置用架台11の上部と中間部とに配置(固定)されている。ケーシング12は、後記する複合フィルタ25(プレフィルタ36、HEPAフィルタ37、放射性有機ヨウ素除去フィルタ38)を挿脱可能に収容する所定容積のフィルタ収容スペース26を有する。」

エ「【0053】
図6は、放射性有機ヨウ素除去フィルタ38の部分拡大図であり、図7は、フィルタ収容スペース26への複合フィルタ25の収容状態の一例を示す図である。図8は、放射性有機ヨウ素除去フィルタ38を形成する活性炭素繊維積層シート56の部分拡大図である。図8では、セパレータ58の図示を省略している。複合フィルタ25は、プレフィルタ36とHEPAフィルタ37と放射性有機ヨウ素除去フィルタ38とから形成されている。」

オ「【0054】
複合フィルタ25では、フィルタ収容スペース26の上部から下部に向かって、プレフィルタ36、HEPAフィルタ37、放射性有機ヨウ素除去フィルタ38の順に並んでいる。なお、複合フィルタ25では、それらフィルタ36?38が一連につながって一体化したものではなく、それらフィルタ36?38が独立して存在し、各収容スペース33?35に別々に収容される。それらフィルタ36?38が各収容スペース33?35に収容されることで、複合フィルタ25を形成する。
【0055】
HEPAフィルタ37は、図7に示すように、横方向(一方向)へジグザグ(蛇腹状)に整然と折り畳まれている。HEPAフィルタ37は、その空気流入側(プレフィルタ36の側)に位置する第1折曲部51と、その空気流出側(放射性有機ヨウ素除去フィルタ38の側)に位置する第2折曲部52とを有する。HEPAフィルタ37は、その折り畳まれた回数が放射性有機ヨウ素除去フィルタ38のそれよりも多い。HEPAフィルタ37は、そこを通流する空気の空気抵抗が大きい。」

カ「【0060】
活性炭素繊維は、有機繊維を焼成して炭化し、さらに高温で熱処理をして作られる。活性炭素繊維には、セルロース系やアクリル系、フェノール系、ピッチ系を使用することができる。活性炭素繊維には、その表面から厚み方向へ延びる複数のミクロポアが形成されている。活性炭素繊維シート50は、繊維不織布、織物、編み物のうちのいずれかの形態を有し、シート50毎にその全体が撥水処理を施した撥水性繊維不織布60または疎水性繊維不織布60に包被されている。
【0061】?【0063】
・・・(略)・・・
【0064】
活性炭素繊維シート50には、放射性有機ヨウ素を吸着するトリエチレンジアミンC_(6)H_(12)N_(2)(アミン類)が添着されている。活性炭素繊維シート50の単位重量に対するトリエチレンジアミンC_(6)H_(12)N_(2)の添着量は、10?20重量%の範囲、好ましくは、12?18重量%の範囲、より好ましくは、13?16重量%の範囲にある。活性炭素繊維積層シート50では、放射性有機ヨウ素が活性炭素繊維のミクロポアに捕集されるとともに、放射性有機ヨウ素が活性炭素繊維シート50に添着されたトリエチレンジアミンC_(6)H_(12)N_(2)に吸着される。」

キ 図7は以下のとおりである。


ク 上記オ及び図7から、上流側のHEPAフィルタ37と下流側の放射性有機ヨウ素除去フィルタ38とは互いの表裏面で接し、1つの複合フィルタ25を構成しているものであることが理解できる。

ケ 上記アないしクから、特許出願7には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「複合フィルタが、施設内の空気に含まれる塵埃を捕集するプレフィルタと、空気に含まれる放射性微粒子を捕集する多風量のHEPAフィルタと、活性炭素繊維シートから作られて空気に含まれる放射性有機ヨウ素を捕集する放射性有機ヨウ素除去フィルタとから形成された複合フィルタであって、
放射性物質除去装置では、上流側のHEPAフィルタと下流側の放射性有機ヨウ素除去フィルタとは互いの表裏面で接し、1つの複合フィルタを構成し、
活性炭素繊維シートは、その表面から厚み方向へ延びる複数のミクロポアが形成されているとともに、トリエチレンジアミンが添着されている、
複合フィルタ。」

2 対比
本願発明と先願発明を対比する。
ア 先願発明の「複合フィルタ」、「HEPAフィルタ」及び「放射性有機ヨウ素除去フィルタ」は、本願発明の「放射性物質除去用フィルタ」、「HEPAフィルタ」及び「活性炭素繊維フィルタ」にそれぞれ相当する。

イ HEPAフィルタは、一般に、0.3μmまでの粒子を捕集・除去するものであって、先願発明の「HEPAフィルタ」は、「空気に含まれる放射性微粒子を捕集する」ものであるから、本願発明の「HEPAフィルタ」と先願発明の「HEPAフィルタ」とは、「0.3μmまでの物質あるいは放射性物質の粒子を捕集・除去する」ものである点で一致する。

ウ 先願発明の「放射性有機ヨウ素除去フィルタ」は、HEPAフィルタの下流側に配置されたものであって、その表面から厚み方向へ延びる複数のミクロポアが形成されているものであるから、HEPAフィルタを通過した0.3μm未満の放射性物質の混合気体を通過させるものであって、上記混合気体中の粒状放射性物質を物理吸着によって捕集するものであることは明らかである。そうすると、先願発明は、本願発明の「細孔口径(ミクロポア)を有し、0.3μm未満の放射性物質の混合気体を通過させ、かつ上記混合気体中の粒状放射性物質を物理吸着によって捕集する」との発明特定事項を備える。

エ 先願発明の「放射性有機ヨウ素除去フィルタ」は、「その表面から厚み方向へ延びる複数のミクロポアが形成されているとともに、トリエチレンジアミンが添着されている」ので、本願発明の「有機の放射性ガスを上記細孔を触媒とする化学吸着によって捕集すべくトリエチレンジアミンを添着してなる」との発明特定事項を備える。

オ 先願発明では、「上流側のHEPAフィルタと下流側の放射性有機ヨウ素除去フィルタとは互いの表裏面で接し、1つの複合フィルタを構成し」ている状態であるので、当該2つのフィルタは「一体化」している状態といえる。
そうすると、本願発明と先願発明とは、「上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素素維維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して一体化している」点で一致するものの、先願発明では、一連につながって一体化したものではなく、接合はしていない。

カ 以上のことから、本願発明と先願発明とは、以下の一致点を有し、以下の相違点で一応相違する。
・一致点
「放射性物質を含む空気を上流側から下流側へと通過させてろ過する放射性物質除去用フィルタであって、
上記放射性物質除去用フィルタは、0.3μmまでの物質あるいは放射性物質の粒子を捕集・除去するHEPAフィルタと、
細孔口径(ミクロポア)を有し、0.3μm未満の放射性物質の混合気体を通過させ、かつ上記混合気体中の粒状放射性物質を物理吸着によって捕集すると共に、有機の放射性ガスを上記細孔を触媒とする化学吸着によって捕集すべくトリエチレンジアミンを添着してなる活性炭素繊維フィルタとよりなり、
上記HEPAフィルタと上記活性炭素繊維フィルタとは、上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素繊維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して一体化している放射性物質除去用フィルタ。」

・相違点3
活性炭素繊維フィルタの細孔が、本願発明では、「1nm以下」であるのに対し、先願発明では不明である点。

・相違点4
HEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとが、本願発明では、「接合」一体化しているのに対し、先願発明では、そのように一体化されていない点。

3 判断
以下、相違点について検討する。
(1)相違点3について
活性炭素繊維フィルタが1nm以下の細孔口径(ミクロポア)を有することは、当業者にとって明らかなことであるから、相違点3は実質的なものではない。

(2)相違点4について
上記第4の3(1)イで検討したとおり、引用文献4及び5の記載を踏まえると、2種類のフィルタを互いの表裏面で接合一体化する技術は、原出願の優先日前に周知である。
また、2種類のフィルタを互いの表裏面で接するものの、接合はせずに、一体化する技術についても、例えば、引用文献6(段落0009及び図1(d)から、集塵フィルタ2と脱臭フィルタ3は表裏で接着されていないものの、表裏で接して一体化し、空気清浄フィルタXをなすものと理解できる。)に記載されているように、原出願の優先日前に周知である。
そうすると、引用発明のHEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとを一体化する際に、両者が接する表裏面を接合するか否かは、製造時における具体化手段の微差である。
したがって、上記相違点4は実質的なものでない。

4 小括
よって、本願発明と先願発明とは、実質的に同一であって、本願発明の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、原出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、原出願の優先日前の特許出願であって、原出願の優先日後に出願公開がされた先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、本願の出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-21 
結審通知日 2019-01-28 
審決日 2019-02-12 
出願番号 特願2014-201965(P2014-201965)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G21F)
P 1 8・ 161- WZ (G21F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南川 泰裕右▲高▼ 孝幸長谷川 聡一郎  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 野村 伸雄
西村 直史
発明の名称 放射性物質除去用フィルタ  
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