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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1350395
審判番号 不服2018-5895  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-27 
確定日 2019-04-25 
事件の表示 特願2016-141049「投射光学系および画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-186659、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特願2016-141049号(以下「本願」という。)は、特願2014-230732号(平成23年10月11日に出願された特願2011-223983号の一部を平成26年11月13日に新たな特許出願としたもの)の一部を、平成28年7月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年 7月19日付け:手続補正書
平成29年 5月31日付け:拒絶理由通知書
平成29年 8月 7日付け:意見書、手続補正書
平成30年 1月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年 4月27日付け:審判請求書、手続補正書
平成30年12月13日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月 5日付け:意見書、手続補正書

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
理由1:本願の請求項1、5、7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2:本願の請求項1-7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明及び周知技術(周知例:引用文献2-4)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2008-96983号公報
引用文献2:特開2008-225455号公報
引用文献3:特開2008-96984号公報
引用文献4:特開2008-292634号公報

第3 平成30年12月13日付け拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由の概要
平成30年12月13日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由は、概略、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、というものである。

第4 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成31年2月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるとおりの、以下の発明である。

「 【請求項1】
画像表示素子によって形成された投射画像を被投射面に投射する画像表示装置に用いられる投射光学系であって、
複数のレンズを有するレンズ光学系と、平面ミラーである第1ミラーと凹面ミラーである第2ミラーからなるミラー光学系と、を有してなり、
前記レンズ光学系は、前記複数のレンズが全て光軸を共有する共軸光学系であり、かつ前記複数のレンズは重力方向に沿って縦に設置され、
前記画像表示素子の画像表示面は前記被投射面に対して垂直であり、
前記共軸光学系の光軸を含み前記被投射面と垂直な面において、前記被投射面の前記画像表示素子の画像表示面から最も近い位置へ到達する第1の投射光束と、前記被投射面の前記画像表示素子の画像表示面から最も離れた位置へ到達する第2の投射光束とは、前記第2ミラーで反射された後に一旦交わった後、前記被投射面に投射され、
かつ、前記第2ミラーで反射された後、前記第1の投射光束と前記第2の投射光束とが交わる位置は、前記第2ミラーよりも前記第1ミラーに近い位置であり、
前記複数のレンズのうち前記第1ミラーに最も近いレンズのレンズ面は凸面であり、
前記共軸光学系の光軸に最も近い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記第1ミラーから前記第2ミラーまでの光路上に形成され、前記共軸光学系の光軸に最も遠い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記レンズ光学系から前記第1ミラーまでの光路上に形成されることを特徴とする投射光学系。
【請求項2】
前記レンズ光学系は、前記複数のレンズのうち前記画像表示素子に最も近いレンズに隣接する開口絞りを有することを特徴とする請求項1記載の投射光学系。
【請求項3】
前記開口絞りに隣接するレンズを、前記共軸光学系の光軸に最も近い前記画像表示素子に係る画素の中間像のスポット径は太く、かつ該画素の前記被投射面でのスポット径は細くなるような非球面レンズとしたことを特徴とする請求項2の投射光学系。
【請求項4】
前記第2ミラーは自由曲面ミラーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の投射光学系。
【請求項5】
光源から出射された光を画像表示素子に照射する照明光学系と、
前記照明光学系からの照明光が照射され投射画像を形成する前記画像表示素子と、
全体で正の屈折力を有し前記画像表示素子によって形成された投射画像を被投射面に投射する投射光学系と、を有する画像表示装置であって、
前記投射光学系は、請求項1乃至4のいずれかに記載の投射光学系であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
前記第2ミラーと前記被投射面との間に防塵ガラスを有し、
前記防塵ガラスは、前記画像表示素子の平面と平行であることを特徴とする請求項5記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画像表示素子は、2次元的に配置された複数の微小ミラーを有し、個々の微小ミラーの傾き角度をオン状態とオフ状態で変化させることにより反射光の出射をオン・オフさせる反射型画像表示素子であることを特徴とする請求項5または6記載の画像表示装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2008-96983号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、投射光学系及び画像投射装置に関する。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の第一の目的は、より小型の投射光学系を提供することである。」

(2)「【0025】
本発明の第一の実施形態は、共役面A上にある画像情報を表示する画像形成素子から射出した複数の光束を、共役面Bに斜めから入射させて共役面B上に前記画像形成素子によって形成された画像の拡大画像を形成可能な投射光学系において、少なくとも第1光学系と第2光学系とを有し、第1光学系と第2光学系の間に前記複数の光束が略収束化された画像形成素子の中間像を有し、第1光学系の屈折力を持った光学系は前記光束を透過するレンズ系のみで構成され、第1光学系の屈折力のみで前記中間像を形成し、第2光学系は前記中間像の直後に前記光束を反射させる正の屈折力を持った反射ミラーを含んだ反射光学系で、前記第1光学系は、共役面A側から順に正・正・負の屈折力を有するレンズ群で構成されたことを特徴とする投射光学系である。
・・・(中略)・・・
【0029】
本発明の第三の実施形態は、本発明の第一の又は第二の実施形態である投射光学系において、第2光学系の正の屈折力を持ったミラーは、第1光学系の光軸と交わる点から周辺に向かうにしたがって曲率がゆるくなるような曲面形状を持つことを特徴とする投射光学系である。
・・・(中略)・・・
【0033】
本発明の第五の実施形態は、本発明の第一の、第二の、又は第三の実施形態である投射光学系において、第2光学系の正の屈折力を持ったミラーは、回転対称な非球面形状であることを特徴とする投射光学系である。
【0034】
本発明の第五の実施形態によれば、ある軸に対し回転対称の形状であるため正の屈折力を持ったミラーの加工がしやすく形状誤差が小さくできるし、加工時間も短くできるためコストダウンとなる。
・・・(中略)・・・
【0041】
本発明の第九の実施形態は、本発明の第一の、第二の、第三の、第四の、第五の、第六の、第七の、又は第八の実施形態である投射光学系において、前記中間像は第1光学系の光軸に垂直な面に対して傾斜湾曲していることを特徴とする投射光学系である。」

(3)「【実施例1】
【0053】
図1に本発明の実施例1を示す。
【0054】
なお、本発明の説明図における座標系は、共役面B上のスクリーンの長軸方向をX、短軸方向をY、スクリーンの法線方向をZとする。
【0055】
共役面A上の画像形成素子011で形成された画像を共役面B上のスクリーン016に投射するための投射光学系であって、屈折光学系を少なくとも一つの含んだ共軸系の第1光学系013、正のパワーを有する反射面を少なくとも一つ含んだ第2光学系015で構成され、画像形成素子から第1光学系、第2光学系を配置し、第1光学系と第2光学系の間に、画像形成素子で形成された画像を一旦中間像形成させて、全体で拡大投射させる。なお、図1では第1光学系と第2光学系の間に折り返しミラー014を配置し、光路を折り曲げ、光学系の空間占有率を小さくしているが、配置せずとも本発明は成立する。
・・・(中略)・・・
【0061】
図3は実施例1の第1光学系、第2光学系の拡大図である。
【0062】
第1光学系033を射出した光束は折り返しミラー034により光路を曲げられ第2光学系035に入射し、第3光学系の正のパワーを持った反射ミラーにより拡大投射される。第1光学系と第2光学系の間には、光束が略収束化され画像形成素子の中間像036を形成する。
【0063】
第2光学系の正のパワーにより共役面B上に拡大投影される画像形成素子031の像の歪曲収差は一般に、入射する画角の3乗に比例して大きくなってしまう。つまり、画像形成素子上に等間隔に並んだ物点から射出する光線が投射光学系によって共役面B上に像を作るとき、出来た像は等間隔ではなく、光軸から離れた像点ほどズレ量は大きくなる。本光学系では第3光学系の曲面が球面であった場合、投射される像は画角が大きい光束、つまり光軸から離れれば離れるほど像点の間隔が広がってしまう。以上のような拡大投射系における歪曲収差を補正するため、第2光学系の正のパワーを持つ反射ミラーは、光軸037から離れれば離れるほど正のパワーがゆるくなるような曲面形状をしている(本発明の第三の実施形態)。また第2光学系の正のパワーを持つ反射ミラーがアナモフィックな多項式自由曲面形状であれば、設計自由度が高くなるので、上記歪曲収差を含めた収差補正性能がよくなる(本発明の第四の実施形態)。なお本説明では凹面状の反射面を採用しているが、フレネル反射鏡であったり、ホログラム反射鏡であったり、集光パワーを有する反射光学素子であればこの限りでない。
・・・(中略)・・・
【0065】
さらに光軸から離れるほど正のパワーがゆるくなるということは光軸から離れるほど焦点距離が伸びるわけで、第2光学系の正のパワーを持った反射ミラーにより形成される拡大像に共役な前記中間像は、光軸から離れるにつれて焦点距離が伸びるため、第2光学系の正のパワーを持った反射ミラーとの光路長が光軸から離れた光線ほど伸びる方向に傾斜湾曲する(本発明の第九の実施形態)。
・・・(中略)・・・
【実施例3】
【0088】
次に本発明の第五の実施形態に対する実施例3について説明する。
【0089】
図13に実施例3、図14に実施例3の第1光学系拡大図を示す。
【0090】
本発明の第一の実施形態同様、共役面A上の画像形成素子で形成された画像を共役面B上のスクリーンに投射するための投射光学系であって、屈折光学系を少なくとも一つ含んだ共軸系の第1光学系、正のパワーを有する反射面を少なくとも一つ含んだ第2光学系で構成され、画像形成素子から第1光学系、第2光学系を配置し、第1光学系と第2光学系の間に、画像形成素子で形成された画像を一旦中間像形成させて、全体で拡大投射させる光学系である。ここで第二光学系の正のパワーを持つ反射面は回転対称非球面形状である。
【0091】
また折り返しミラーにより光路を折り曲げており、その方向は、図13では第1光学系を共役面Bの高さ方向、つまりY方向に折り曲げているが、第1光学系を図の奥行き方向、つまりX方向に折り曲げるような向きにするなど、光学系の空間占有率をより小さく出来ることは当然である。」

(4)「【図1】



(5)「【図3】



(6)「【図13】



(7)「【図14】



2 引用発明
ア 引用文献1の図13より、実施例3においては、「第1光学系は複数のレンズを有し」、「第1光学系と第2光学系の間に折り返しミラー134が配置」されることが看取される。
イ また、引用文献1の【0063】には、第2光学系の正のパワーにより画像形成素子31の像は拡大投影されることが記載されている。そうしてみると、第2光学系は、技術的にみて、凹面形状を有するものであるといえる。したがって、「第2光学系135は、凹面を有す」るものである。
ウ さらに、引用文献1の【0062】には、折り返しミラーは光束の光路を曲げるものであることが記載されている。そうしてみると、折り返しミラーは、技術的にみて、平面形状の反射面からなるものであるといえる。したがって、「折り返しミラー134」は、「平面を有す」るものである。
エ 加えて、引用文献1の図14より、実施例3においては、「第1光学系」の「複数のレンズのうちで折り返しミラー134に最も近いレンズのレンズ面は凸面」であることが看取される。
オ 上記1の記載事項及び上記ア-エより、引用文献1には、実施例3として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、引用文献1の【0090】における「画像を一旦中間像形成させ」るという記載は、「画像の中間像を一旦形成させ」ることを意味するものである。
「画像形成素子で形成された画像をスクリーンに投射するための投射光学系であって、屈折光学系を少なくとも一つ含んだ共軸系の第1光学系、正のパワーを有する反射面を少なくとも一つ含んだ第2光学系、折り返しミラー134で構成され、
画像形成素子から第1光学系、第2光学系を配置し、
第1光学系と第2光学系の間に折り返しミラー134が配置され、
第1光学系は複数のレンズを有し、
複数のレンズのうちで折り返しミラー134に最も近いレンズのレンズ面は凸面であり、
第2光学系135は、凹面を有し、折り返しミラー134は、平面を有し、
第1光学系と第2光学系の間に、画像形成素子で形成された画像の中間像を一旦形成させて全体で拡大投射させる、
投射光学系。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 画像表示装置、投射光学系
引用発明の「画像形成素子」、「画像」及び「スクリーン面」は、技術的にみて、それぞれ本願発明1の「画像表示素子」、「投射画像」及び「被投射面」に相当する。
加えて、引用発明の「投射光学系」は、その文言どおり、本願発明1の「投射光学系」に相当する。また、引用発明の「投射光学系」は、「画像形成素子で形成された画像をスクリーンに投射するため」に用いられるものである。
そうしてみると、引用発明の「投射光学系」は、本願発明1の「投射光学系」における、「画像表示素子によって形成された投射画像を被投射面に投射する画像表示装置に用いられる」という要件を満たすものであるといえる。

イ レンズ光学系、ミラー光学系
引用発明の「投射光学系」の構成からみて、引用発明の「第1光学系」及び「折り返しミラー134」と「第2光学系135」を併せたものは、それぞれ、本願発明1の「レンズ光学系」及び「ミラー光学系」に相当する。
そうしてみると、引用発明の「投射光学系」は、本願発明1の「投射光学系」における、「レンズ光学系」と、「ミラー光学系」とを「有してな」るという要件を満たすものである。

ウ レンズ
引用発明の「第1光学系」は、「複数のレンズを有」するものである。そうしてみると、引用発明の「第1光学系」は、本願発明1の「レンズ光学系」における「複数のレンズを有する」という要件を満たすものである。
また、引用発明の「第1光学系」は、「共軸系」のものである。そうしてみると、引用発明の「第1光学系」は、技術的にみて、本願発明1の「レンズ光学系」における「複数のレンズが全て光軸を共有する共軸光学系」であるという要件を満たすものである。
さらに、引用発明の「第1光学系」における「複数のレンズ」は、「重力方向に沿って縦に設置され」たものである。そうしてみると、引用発明の「第1光学系」は、その文言どおり、本願発明1の「レンズ光学系」における「複数のレンズは重力方向に沿って縦に設置され」るという要件を満たすものである。
加えて、引用発明の「第1光学系」における「複数のレンズのうちで折り返しミラー134に最も近いレンズのレンズ面は凸面」である。そうしてみると、引用発明の「第1光学系」は、本願発明1の「レンズ光学系」における「複数のレンズのうちで前記第1ミラーに最も近いレンズのレンズ面は凸面」であるという要件を満たすものである。

エ 第1ミラー、第2ミラー
引用発明の「折り返しミラー134」及び「第2光学系135」は、それぞれ、「平面」及び「凹面」を有するものである。
また、引用発明の「折り返しミラー134」は、その文言からみて、「ミラー」であることは明らかである。また、引用発明の「第2光学系135」は、「反射面」を含むものであるから、技術的にみて、「ミラー」であるといえる。
以上の点に加え、引用発明における「投射光学系」の構造を考慮すると、引用発明の「折り返しミラー134」及び「第2光学系135」は、それぞれ本願発明1の「第1ミラー」及び「凹面ミラー」に相当するといえる。
そうしてみると、引用発明の「折り返しミラー134」と「第2光学系135」を併せたものは、本願発明1の「ミラー光学系」における「平面ミラーである第1ミラーと凹面ミラーである第2ミラーからなる」という要件を満たすものである。

(2)一致点及び相違点
ア 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
(一致点)
「画像表示素子によって形成された投射画像を被投射面に投射する画像表示装置に用いられる投射光学系であって、
複数のレンズを有するレンズ光学系と、平面ミラーである第1ミラーと凹面ミラーである第2ミラーからなるミラー光学系と、を有してなり、
前記レンズ光学系は、前記複数のレンズが全て光軸を共有する共軸光学系であり、
前記複数のレンズのうち前記第1ミラーに最も近いレンズのレンズ面は凸面である、
投射光学系。」

イ 本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1における、「複数のレンズ」は、「重力方向に沿って縦に設置され」るものであるのに対して、引用発明は、このように特定されたものではない点。
(相違点2)
本願発明1における、「画像表示素子の画像表示面」は、「被投射面に対して垂直」であるのに対して、引用発明は、このように特定されたものではない点。
(相違点3)
本願発明1の「光学投射系」における、「前記共軸光学系の光軸を含み前記被投射面と垂直な面において、前記被投射面の前記画像表示素子の画像表示面から最も近い位置へ到達する第1の投射光束と、前記被投射面の前記画像表示素子の画像表示面から最も離れた位置へ到達する第2の投射光束とは、前記第2ミラーで反射された後に一旦交わった後、前記被投射面に投射され、かつ、前記第2ミラーで反射された後、前記第1の投射光束と前記第2の投射光束とが交わる位置は、前記第2ミラーよりも前記第1ミラーに近い位置であ」るのに対して、引用発明は、このように特定されたものではない点。
(相違点4)
本願発明1の「光学投射系」は、「前記共軸光学系の光軸に最も近い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記第1ミラーから前記第2ミラーまでの光路上に形成され、前記共軸光学系の光軸に最も遠い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記レンズ光学系から前記第1ミラーまでの光路上に形成される」ものであるのに対して、引用発明の「投射光学系」は、「第1光学系と第2光学系の間に、画像形成素子で形成された画像を一旦中間像形成」させるものであって、共軸光学系の光軸に最も遠い画像表示素子に係る画素の中間像がレンズ光学系から折り返しミラー134までの光路上に形成されるものであるかが不明である点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点4について検討する。
ア 特許法29条1項3号(新規性)について
引用発明の「中間像」は、「第1光学系と第2光学系の間」にある。しかしながら、引用文献1には、中間像と折り返しミラーとの位置関係に関する記載はなく、また、当該位置関係を相違点4に係る本願発明1の構成のようにすることを示唆する記載もない。
さらに、引用文献1の図13から、引用発明における「中間像」の形成位置を特定することは困難である。
ところで、引用文献1の【0090】には、引用発明(実施例3)は、本発明の第一の実施形態と同様に、中間像を形成させるものであることが記載されている。
そこで、第一の実施形態を示す図面である図3(実施例1の第1光学系及び第2光学系の拡大図)を参照すると、中間像の形成位置が○印及び破線で描かれている。当該図3によれば、引用文献1の実施例1の投射光学系においては、第1光学系033(013)の光軸に最も近い画像形成素子031(011)の画素から最も遠い画像形成素子031(011)の画素を含む各画素による中間像の全てが、折り返しミラー034(014)と第2光学系035(015)の間に形成されていることが理解できる(特に、図3の中間像の結像位置に対応する各画素からの光束の集光位置(図3における○印の位置)を参照。)。ここで、引用発明の「投射光学系」は、上記実施例1の投射光学系と同様のものであるから、引用発明の「中間像」は、いずれも「折り返しミラー134」と「第2光学系135」の間に形成される蓋然性が高い。
そうしてみると、引用発明の「投射光学系」が、相違点4に係る本願発明1の構成のうちの「前記共軸光学系の光軸に最も遠い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記レンズ光学系から前記第1ミラーまでの光路上に形成される」という要件を満たしているということはできない。
したがって、相違点4は実質的な相違点であって、上記相違点1-3について判断するまでもなく、本願発明1と引用発明が同一のものであるとはいえない。

イ 特許法29条2項(進歩性)について
(ア)引用文献1には、引用発明の「中間像」は、「第1光学系と第2光学系の間」にあるものであると位置付けられているものの、「折り返しミラー134」との位置関係は特定されていない。
また、中間像の位置を相違点4に係る本願発明1の構成のような位置関係とすることを示唆する記載もなされていない。
そうしてみると、引用発明において、相違点4に係る本願発明1の構成のうちの「前記共軸光学系の光軸に最も遠い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記レンズ光学系から前記第1ミラーまでの光路上に形成される」という要件を満たす構成とすることの動機があるとはいえない。
(イ)仮に、引用発明において「第1光学系」と「折り返しミラー134」との物理的距離を長くすることを考えた場合、「折り返しミラー134」の近くに位置する、光軸から最も遠い画像形成素子131の画素による中間像が、第1光学系133と「折り返しミラー134」との間の光路上に位置することとなり、相違点4に係る本願発明1の構成のうちの「前記共軸光学系の光軸に最も遠い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記レンズ光学系から前記第1ミラーまでの光路上に形成される」という要件を満たす構成になり得るといえる。
しかしながら、引用文献1にいう本発明の目的は、「より小型の投射光学系を提供することである」(【0016】)ところ、引用発明において、「第1光学系」と「折り返しミラー134」との物理的距離を長くすることは、投射光学系を大型にするものである。そうしてみると、引用発明において、「第1光学系」と「折り返しミラー134」との物理的距離をより長いものとして、相違点4に係る本願発明1の構成のうちの「前記共軸光学系の光軸に最も遠い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記レンズ光学系から前記第1ミラーまでの光路上に形成される」という要件を満たす構成とすることには阻害要因があるといえる。
また、[A]画像表示素子に最も近いレンズに隣接した位置に開口絞りを配置すること、[B]開口絞り近傍のレンズを非球面のものとすること、及び[C]凹面ミラーとして自由曲面ミラーを用いることは、いずれも周知技術である(例えば、原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2008-225455号公報の実施例2、原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2008-96984号公報の実施例3参照)。
しかしながら、引用発明において、当該周知技術を採用しても、相違点4に係る本願発明1の構成のうちの「前記共軸光学系の光軸に最も遠い前記画像表示素子に係る画素の中間像が前記レンズ光学系から前記第1ミラーまでの光路上に形成される」という要件を満たす構成になるとはいえない。
(ウ)以上より、上記相違点1-3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、あるいは、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2-本願発明4について
本願発明2-本願発明4は、本願発明1の「投射光学系」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、あるいは、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明5-本願発明7について
本願発明5-本願発明7は、本願発明1-4の「投射光学系」を有する「画像表示装置」の発明であり、本願発明1の「投射光学系」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、あるいは、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 平成30年12月13日付け拒絶理由通知書における理由(特許法36条6項2号)について
平成30年12月13日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由は、平成31年2月5日付けの手続補正によって解消した。

第8 むすび
前記第6に記載したとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由もない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2016-141049(P2016-141049)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 113- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 殿岡 雅仁  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
川村 大輔
発明の名称 投射光学系および画像表示装置  
代理人 石橋 佳之夫  
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