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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23F
管理番号 1350474
審判番号 不服2018-6754  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-17 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2015-542706「ギア製造のためのデュアルハンドカッタヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成26年5月22日国際公開、WO2014/078174、平成27年12月7日国内公表、特表2015-534911、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)11月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年11月13日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 7月24日付け:拒絶理由通知書
平成29年 9月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月 6日付け:拒絶査定
平成30年 5月17日 :審判請求書と同時に手続補正書(以下この
手続補正書による補正を「本件補正」とい
う。)の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年2月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし6、8ないし10及び12に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

本願の請求項1ないし4、6、8ないし10及び12に係る発明は、以下の引用文献2ないし4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

本願の請求項7及び11に係る発明は、以下の引用文献1ないし3及び5、又は、引用文献2ないし5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

本願の請求項5に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-347412号公報
2.特開2010-179409号公報(周知技術を示す文献)
3.特表平10-503433号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平10-58232号公報
5.特開2008-279574号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
全体的にディスク形状であり、軸の周りで回転可能である、ベベルギア及びハイポイドギア用のギア切削工具のカッタヘッドであって、前記カッタヘッドが、
前記カッタヘッドの表面内に配置された複数の切削ブレード位置決め溝を備え、前記複数の切削ブレード位置決め溝のそれぞれが、前記カッタヘッドを通り、前記表面から前記カッタヘッドの対向表面まで延在し、
前記複数のブレード位置決め溝の第1の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それによって前記カッタヘッドは、右側切削するように作動可能であり、前記複数の切削ブレード位置溝の第2の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それにより、前記カッタヘッドは、左側切削するように作動可能であり、
前記ブレード位置決め溝は、前記カッタヘッドが内側切削ブレードおよび外側切削ブレードと共に作動できるように配置されることを特徴とするギア切削工具のカッタヘッド。

【請求項2】
ブレード位置決め溝の前記第1の部分は、前記カッタヘッドの回転軸に対するフック角度を有して配向されることを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項3】
ブレード位置決め溝の前記第2の部分は、前記カッタヘッドの回転軸に対するフック角度を有して配向されることを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項4】
前記ブレード位置決め溝は、前記カッタヘッドが正面フライス削りできるように配置されることを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項5】
前記ブレード位置決め溝は、前記カッタヘッドが正面ホブ切りできるように配置されることを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項6】
前記ブレード位置決め溝は、前記カッタヘッドが溝全幅切削ブレードと共に作動できるように配置されることを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項7】
前記ブレード位置決め溝は、前記カッタヘッドの周りで等しく離間されることを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項8】
右側切削のためのブレード位置決め溝の数および左側切削のためのブレード位置決め溝の数は、等しいことを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項9】
右側切削のためのブレード位置決め溝および左側切削のためのブレード位置決め溝は、前記カッタヘッドの周りに交互に配置されることを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項10】
前記ブレード位置決め溝は、4角または5角の断面形状を有する切削ブレードを収容することを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。

【請求項11】
前記ブレード位置決め溝は、円形または半円形の断面形状を有する切削ブレードを収容することを特徴とする請求項1に記載のカッタヘッド。」

なお、本願発明1中の「前記複数の切削ブレード位置溝の第2の部分」は正しくは「前記複数の切削ブレード位置決め溝の第2の部分」の誤記であることは明らかである。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。
(1)段落【0006】
「【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態である正面フライスカッタ10を図1ないし図10に基づいて詳細に説明する。この正面フライスカッタ10は図1に示す歯車加工装置20に取り付けられて用いられることにより、まがりばかさ歯車,ハイポイドギヤ等の傘状まがりば歯車を加工することができる。・・・」

(2)段落【0009】
「正面フライスカッタ10は、図2に概念的に示すように、カッタ本体60に複数のブレード62が取り付けられて構成される(ただし図には一部のブレードのみ取り付けられた状態が示されている)。カッタ本体60は概して段つき円筒状に形成され、比較的大径のブレード保持部64と、そのブレード保持部64より小径の取付部66とを含み、取付部66において工具主軸36に同軸にかつ相対回転不能に取り付けられる。ブレード保持部64には、その回転軸線68を中心とする一円周に沿って、横断面形状が円形であってブレード保持部64を厚さ方向に貫通するブレード穴70が複数個形成されている。図3に角度γで示すように、ブレード穴70は回転軸線68を中心とする円筒面に対する接平面内において前傾して形成され、その前傾角が1度?12度の範囲から選定される。すなわち、ブレード62は、カッタ本体60の先端面71から先端部が突出する状態で取り付けられるのであるが、カッタ本体60が回転するとき、ブレード穴62の先端面71側の開口が反対側の開口よりカッタ本体60の回転方向において先行する結果となる向きに傾斜させられているのである。」

(3)段落【0010】
「さらに、ブレード保持部64に、各ブレード穴70に対応して2個ずつのカム穴72が形成されている。2個のカム穴72は、各ブレード穴70の軸方向に隔たった位置に、ブレード穴70と部分的に干渉しつつ立体交差する状態で形成されている。図示の例では、各カム穴72は、ブレード保持部64の側面74から、ブレード穴70に対して直角に、かつ、円筒面に対する接平面に直交する直交面に沿って延びている(図2参照)。これらカム穴72の各々に、偏心カム80が回転可能に保持されている。」

(4)【図2】


(5)【図3】


(6)段落【0012】
「各ブレード穴70にブレード62が、それの先端部に形成された刃先が、ブレード保持部64の先端面71から突出するように取り付けられている。本実施形態においては、円周方向に並んで配置されたブレード62が、交互に内刃ブレード62Aと外刃ブレード62Bとされている。内刃ブレード62Aはカッタ本体60の内周側に切刃を有するブレードであり、外刃ブレード62Bは外周側に切刃を有するブレードである。両ブレード62A,62Bはそれぞれ傘状まがりば歯車の各歯溝の一側面ずつを切削する。」

また、引用文献1の【図2】から次の事項が認められる。
(7)正面フライスカッタ10のカッタ本体60のブレード保持部64は、円板型状である。

(8)正面フライスカッタ10のカッタ本体60のブレード保持部64の表面には、ブレード62が取り付けられるブレード穴70が複数形成されている。

2 引用文献1に記載されている発明
記載事項(1)ないし(6)並びに認定事項(7)及び(8)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ディスク形状であり、回転軸線68の周りに回転可能である、ハイポイドギヤ等の傘状まがりば歯車を加工することができる、正面フライスカッタ10のカッタ本体60のブレード保持部64であって、
前記ブレード保持部64が、表面に配置された複数のブレード穴70を備え、前記複数のブレード穴70のそれぞれが、前記ブレード保持部64の表面から裏面まで延在し、
前記複数のブレード穴70は、内刃ブレード62A及び外刃ブレード62Bを収容するように配向され、前記内刃ブレード62A及び外刃ブレード62Bは、それぞれ傘状まがりば歯車の各歯溝の一側面ずつを切削するように作動可能であり、
前記複数のブレード穴70は、前記ブレード保持部64が、前記内刃ブレード62A及び外刃ブレード62Bと共に作動できるよう配置される、正面フライスカッタ10のカッタ本体60のブレード保持部64。」

3 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(1)段落【0027】
「切削工具1は、カッター回転軸CZ回りに回転可能な略円柱状(または略円筒状)のカッターボディ10と、カッターボディ10におけるカッター回転軸CZ方向の先端部に設けられて支軸30回りに揺動可能な複数のチップCBと、チップCBの周囲に設けられてチップCBの揺動範囲を規制する規制部12とで構成されている。
カッターボディ10におけるカッター回転軸CZ方向の先端部には、刃(刃具)である複数のチップCBのそれぞれに対応させた複数の支軸30が設けられている。図1?図4に示すフライス型の切削工具1では、支軸30のそれぞれは、カッターボディ10の外周面に、カッター回転軸CZに直交する方向に設けられている。」

(2)段落【0028】
「チップCBのそれぞれは、それぞれの支軸30に取り付けられており、各チップCBはカッターボディ10よりも一部が突出しており、取り付けられた支軸30回りに揺動可能である。図1?図4に示すフライス型の切削工具1では、チップCBはカッター回転軸CZ方向に一部が突出しており、チップCBには第1刃先C1と第2刃先C2とが形成されている。」

(3)段落【0031】
「そして、図2(A)に示すように切削工具1を正転方向に回転させてワークWを第1刃先C1で切削する場合、チップCBは規制部12に設けられた第1規制面20H1、20H1Aにて支持されて第1規制位置に保持され、すくい角が約+10度の第1刃先C1にてワークWを切削する。・・・
また、図2(B)に示すように切削工具1を逆転方向に回転させてワークWを第2刃先C2で切削する場合、チップCBは規制部12に設けられた第2規制面20H2、20H2Aにて支持されて第2規制位置に保持され、すくい角が約-10度の第2刃先C2にてワークWを切削する。」

(4)【図2】


4 引用文献2に記載されている技術的事項
引用文献2の記載事項(1)ないし(4)から、引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「カッター回転軸CZ回りに回転可能な略円柱状のカッターボディ10と、カッターボディ10におけるカッター回転軸CZ方向の先端部に設けられて支軸30回りに揺動可能な複数のチップCBと、チップCBの周囲に設けられてチップCBの揺動範囲を規制する規制部12とで構成されている切削工具1において、切削工具1を正転方向に回転させてワークWを第1刃先C1で切削する場合、チップCBは規制部12に設けられた第1規制面20H1、20H1Aにて支持されて第1規制位置に保持され、すくい角が約+10度の第1刃先C1にてワークWを切削し、切削工具1を逆転方向に回転させてワークWを第2刃先C2で切削する場合、チップCBは規制部12に設けられた第2規制面20H2、20H2Aにて支持されて第2規制位置に保持され、すくい角が約-10度の第2刃先C2にてワークWを切削する技術。」

5 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
(1)第8ページ第16ないし22行
「右回り又は左回りの回転方向で簡便に金属をカッティングできる器用なミリングカッタが明らかに必要である。このようなミリングカッタは、左回り又は右回りの両方向付けでカッティングインサートをカッタボデーの外周に容易に且つ効率的に固定できなければならない。結局、機械的安全性を最大とし、時間、労力及び部品を最小限にして、カッタボデーにおいて右回りから左回りへ及びその逆にもインサートの方向付けを容易に且つ便利に変更する手段を設けるべきである。」

(2)第10ページ第25ないし27行
「本発明のミリングカッタ1は、少なくとも1つの、好ましくはいくつかのインサートシートペアを含み、図面ではインサートシートペア10a?10hが示される。」

(3)第11ページ第7ないし11行
「インサートシートペア10a?10hの各々は、インサート15を右回りに方向づけて受け取るように方向付けられたインサートシート12と左回りに方向づけて受け取るように方向付けられたインサートシート14とを含む。」

(4)第13ページ第10ないし19行
「本発明のミリングカッタ1の複数方向付け作業は、図5A?図5Cを参照することにより最もよく理解される。図5Aでは、インサート15は、図4を参照して述べたように動作するウェッジ20により、インサートシートペア10a?10hの各々の右回りインサートシート12に固定される。図5Bでは、各ウェッジ20の取付けネジ22が反時計回りに回転され、各インサートシートペア10a?10hのシート同士の間に配置されるウェッジ受け取り凹所18からウェッジ20が引き抜かれる。取付けネジ22の各々が十分な距離だけはずされた後、割出し式ウェッジ20の各々が180°回転され、各インサート15は、インサートペア10a?10hの各々の右回転用シート12から出されて、各ペアの左回転用シート14に挿入される。」

(5)【図5】


6 引用文献3に記載されている技術的事項
引用文献3の記載事項(1)ないし(5)から、引用文献3には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「インサートシートペア10a?10hを含むミリングカッタ1において、インサートシートペア10a?10hの各々は、インサート15を右回りに方向づけて受け取るように方向付けられたインサートシート12と左回りに方向づけて受け取るように方向付けられたインサートシート14とを含み、インサートシートペア10a?10hを右回りインサートシート12に固定することにより、右回りのカッティングを可能とし、インサートペア10a?10hを左回転用シート14に固定することにより、左回りのカッティングを可能とする技術。」

7 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。
(1)段落【0007】
「・・・図1は、中心又は回転軸22の回りに回転可能な実質的に円盤状のカツターヘツド本体24を持つたカツターヘツド8の斜視図である。カツターヘツド本体24は、丸棒ブレード10を収容するために、多数のブレード穴22を持つ。図1に示された実施形態においては、本発明のカツターヘツドは、18本の丸棒ブレード10を受け取るために18個のブレード穴12を持ち、図1には、そのうちの6個だけが示されている。ブレード穴12は、カツターヘツド本体24を、実質的にその厚さ方向に、もつと正確に言うと、カツターヘツド本体24が、カツターヘツド本体の周囲方向に、カツターヘツド本体の中心軸22に対し傾き角度δを形成して、貫通する。傾き角度δは、図2(b)に示され、実施形態では、12度である。図1に示されたカツターヘツド8の実施形態では、全部のブレード穴12が、同じで、丸棒ブレード10が1つの円に横たわるように、同じ方法で配置される。カツターヘツド8は、ここに示されない方法で、歯車切削機械の中心軸の回りに回転可能に取り付けられる。丸棒ブレード10は、カツターヘツド本体24の端面26から突き出す。周囲方向に続く各2つの丸棒ブレードは、1つのブレード群からなり、それぞれ、外側カツター10A及び内側カツター10Bとして設計される。・・・図3及び図4に描写された内側カツター及び外側カツターは、それぞれ、右螺旋状の歯形システムのために提供される。・・・」

(2)【図1】


また、引用文献4の【図1】から次の事項が認められる。
(3)カツターヘツド8は、ディスク形状である。

(4)カツターヘツド8の表面には、丸棒ブレード10が取り付けられるブレード穴12が複数形成されている。

(5)ブレード穴12には内側カッター10Iが収容されている。

8 引用文献4に記載されている発明
記載事項(1)及び(2)並びに認定事項(3)ないし(5)から、引用文献4には次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「ディスク形状であり、中心軸22の周りに回転可能である、歯車切削機械のカツターヘツド8であって、
前記カツターヘツド8が、表面に配置された複数のブレード穴12を備え、前記複数のブレード穴12のそれぞれが、前記カツターヘツド8の表面から裏面まで延在し、
前記複数のブレード穴12は、内側カツター10I及び外側カツター10Aを収容するように配向され、前記内側カツター10I及び外側カツター10Aは、右螺旋状の歯形システムのために提供され、
前記複数のブレード穴12は、前記カツターヘツド8が、前記内側カツター10I及び外側カツター10Aと共に作動できるよう配置される、歯車切削機械のカツターヘツド8。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「回転軸線」は本願発明1の「軸」に相当する。
以下同様に、引用発明1の「ハイポイドギヤ等の傘状まがりば歯車」は本願発明1の「ハイポイドギア」に、引用発明1の「正面フライスカッタ10のカッタ本体60のブレード保持部64」は本願発明1の「ギア切削工具のカッタヘッド」に、引用発明1の「複数のブレード穴70」は本願発明1の「複数の切削ブレード位置決め溝」に、引用発明1の「裏面」は本願発明1の「対向表面」に、引用発明1の「内刃ブレード62A及び外刃ブレード62B」は本願発明1の「切削ブレード」に、引用発明1の「内刃ブレード62A」は本願発明1の「内側切削ブレード」に、引用発明1の「外刃ブレード62B」は本願発明1の「外側切削ブレード」に、それぞれ相当する。

また、引用発明1の「前記複数のブレード穴70は、内刃ブレード62A及び外刃ブレード62Bを収容するように配向され、前記内刃ブレード62A及び外刃ブレード62Bは、それぞれ傘状まがりば歯車の各歯溝の一側面ずつを切削するように作動可能であ」る事項は、本願発明1の「前記複数のブレード位置決め溝の第1の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それによって前記カッタヘッドは、右側切削するように作動可能であり、前記複数の切削ブレード位置決め溝の第2の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それにより、前記カッタヘッドは、左側切削するように作動可能であ」る事項と、「複数のブレード位置決め溝(複数のブレード穴70)が、切削ブレード(内刃ブレード62A及び外刃ブレード62B)を収容するように配向され」る点を限度として一致する。

そうすると、本願発明1と引用発明1は以下の点で一致する。
【一致点】
「ディスク形状であり、軸の周りで回転可能である、ハイポイドギア用のギア切削工具のカッタヘッドであって、
前記カッタヘッドが、表面に配置された複数の切削ブレード位置決め溝を備え、前記複数の切削ブレード位置決め溝のそれぞれが、前記カッタヘッドを通り、前記表面から前記カッタヘッドの対向表面まで延在し、
前記複数のブレード位置決め溝が、切削ブレードを収容するように配向され、
前記ブレード位置決め溝は、前記カッタヘッドが内側切削ブレードおよび外側切削ブレードと共に作動できるように配置される、ギア切削工具のカッタヘッド。」

また、本願発明1と引用発明1は以下の点で相違する。
【相違点】
本願発明1は「前記複数のブレード位置決め溝の第1の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それによって前記カッタヘッドは、右側切削するように作動可能であり、前記複数の切削ブレード位置決め溝の第2の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それにより、前記カッタヘッドは、左側切削するように作動可能であ」るのに対し、引用発明1は複数のブレード穴70が、内刃ブレード62A及び外刃ブレード62Bを収容するように配向されるものの、正面フライスカッタ10は、右側切削及び左側切削するように作動可能ではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献2及び3に記載された技術的事項から、本願の優先日前には、フライス工具の技術分野において、カッタヘッドのブレード位置決め溝に第1の部分と第2の部分とを設けて、第1の部分によってカッタヘッドを右側切削可能とし、第2の部分によってカッタヘッドを左側切削可能とすることは、周知技術であると認められる。
しかしながら、引用発明1は、ハイポイドギヤ等の傘状まがりば歯車を加工するものであるから、右側切削と左側切削では加工される歯車の形状が対称状に変更されてしまうところ、引用文献1又は2のいずれにおいても、そのように歯車の形状を対称状に変更することを許容する記載も示唆もないから、当業者は、引用発明1について、右側切削と左側切削を行うように、引用文献2に記載された技術的事項を適用するとはいえない。
また、引用発明1は、ブレード保持部6の表面から裏面に貫通するように配置されたブレード穴70に内刃ブレード62A及び外刃ブレード62Bを収容するものであるのに対し、引用文献2に記載された技術的事項は、カッターボディ10の側面外周部に設けられた規制部12にチップCBを収容するものであるので、両者は切削工具(ブレード62A,62BとチップCB)の保持部材(ブレード穴70と規制部12)の形状が大きく異なっている。
以上に鑑みれば、引用発明1に対して引用文献2に記載された技術的事項を適用する動機付けが認められない。

以上の指摘は、引用発明1と引用文献3に記載された技術的事項の組み合わせについて検討した場合も同じである。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)引用発明4との対比
本願発明1と引用発明4とを対比する。
引用発明4の「中心軸22」は本願発明1の「軸」に相当する。

以下同様に、引用発明4の「歯車切削機械のカツターヘッド8」は本願発明1の「ギア切削工具のカッタヘッド」に、引用発明4の「複数のブレード穴12」は本願発明1の「複数の切削ブレード位置決め溝」に、引用発明4の「裏面」は本願発明1の「対向表面」に、引用発明4の「内側カツター10I及び外側カツター10A」は本願発明1の「切削ブレード」に、引用発明4の「内側カツター10I」は本願発明1の「内側切削ブレード」に、引用発明4の「外側カツター10A」は本願発明1の「外側切削ブレード」に、それぞれ相当する。

また、引用発明4の「前記複数のブレード穴12は、内側カツター10I及び外側カツター10Aを収容するように配向され、前記内側カツター10I及び外側カツター10Aは、右螺旋状の歯形システムのために提供され」る事項は、本願発明1の「前記複数のブレード位置決め溝の第1の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それによって前記カッタヘッドは、右側切削するように作動可能であり、前記複数の切削ブレード位置決め溝の第2の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それにより、前記カッタヘッドは、左側切削するように作動可能であ」る事項と、「複数のブレード位置決め溝(複数のブレード穴12)が、切削ブレード(内側カツター10I及び外側カツター10A)を収容するように配向され、それによってカッタヘッド(カツターヘッド8)は、右側(右螺旋状の歯形システムを)切削するように作動可能であ」る点を限度として一致する。

そうすると、本願発明1と引用発明4は以下の点で一致する。
【一致点A】
「ディスク形状であり、軸の周りで回転可能である、ギア切削工具のカッタヘッドであって、
前記カッタヘッドが、表面に配置された複数の切削ブレード位置決め溝を備え、前記複数の切削ブレード位置決め溝のそれぞれが、前記カッタヘッドを通り、前記表面から前記カッタヘッドの対向表面まで延在し、
前記複数のブレード位置決め溝が、切削ブレードを収容するように配向され、それによって前記カッタヘッドは、右側切削するように作動可能であり、
前記ブレード位置決め溝は、前記カッタヘッドが内側切削ブレードおよび外側切削ブレードと共に作動できるように配置される、ギア切削工具のカッタヘッド。」

また、本願発明1と引用発明4は以下の点で相違する。
【相違点A】
本願発明1は「ベベルギア及びハイポイドギア用のギア切削工具のカッタヘッド」であるのに対し、引用発明4は「歯車切削機械のカツターヘツド8」であって、切削対象の歯車が、右螺旋状とは認められるものの、ベベルギア又はハイポイドギアであるか否かは不明である点。

【相違点B】
本願発明1は「前記複数のブレード位置決め溝の第1の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それによって前記カッタヘッドは、右側切削するように作動可能であり、前記複数の切削ブレード位置決め溝の第2の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それにより、前記カッタヘッドは、左側切削するように作動可能であ」るのに対し、引用発明4は複数のブレード穴12が、内側カツター10I及び外側カツター10Aを収容するように配向され、前記内側カツター10I及び外側カツター10Aは、右螺旋状の歯形システムのために提供されるものの、カツターヘッド8は、右側切削及び左側切削するように作動可能ではない点。

事案に鑑み、相違点Bから検討すると、上記「(2)相違点についての判断」で指摘したのと同様の理由で、本願発明1は、当業者であっても、引用発明4並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2ないし11について
本願発明2ないし11も、本願発明1の「前記複数のブレード位置決め溝の第1の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それによって前記カッタヘッドは、右側切削するように作動可能であり、前記複数の切削ブレード位置決め溝の第2の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それにより、前記カッタヘッドは、左側切削するように作動可能であ」る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項、又は、引用発明4並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
理由(特許法第29条第2項)について
本件補正により、本願発明1ないし11は「前記複数のブレード位置決め溝の第1の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それによって前記カッタヘッドは、右側切削するように作動可能であり、前記複数の切削ブレード位置決め溝の第2の部分が、切削ブレードを収容するように配向され、それにより、前記カッタヘッドは、左側切削するように作動可能であ」る発明特定事項を備えるものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-17 
出願番号 特願2015-542706(P2015-542706)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B23F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮部 菜苗  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 篠原 将之
刈間 宏信
発明の名称 ギア製造のためのデュアルハンドカッタヘッド  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
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