ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
---|---|
管理番号 | 1350488 |
審判番号 | 不服2018-5864 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-27 |
確定日 | 2019-04-03 |
事件の表示 | 特願2016-527143「プロセス材料の濃度を決定する工程における関連マトリックスの自動切り換え」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月22日国際公開、WO2015/010072、平成28年 8月25日国内公表、特表2016-525683〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)7月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月19日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月13日付けで拒絶理由が通知され、同年4月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月15日付けで拒絶理由が通知され、同年12月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月28日付けで拒絶査定されたところ、平成30年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「少なくとも2つ以上のプロセス材料マトリックスを格納したメータを用いて、プロセスライン内の第1のプロセス材料を検知し、2つ以上のプロセス材料マトリックスは、第1のプロセス材料に関連した第1のプロセス材料マトリックスと第2のプロセス材料に関連した第2のプロセス材料マトリックスを含み、第1のプロセス材料は第2のプロセス材料とは異なる方法であって、 第1のプロセス材料のライン密度を測定する工程と、 第1のプロセス材料のライン温度を測定する工程と、 前記ライン密度とライン温度に基づいて2つ以上のマトリックスから前記第1のプロセス材料マトリックスを識別する工程を有する、プロセスライン内の第1のプロセス材料を検知する方法。」 第3 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?13に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知慣用の技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開平9-113433号公報 引用文献2.Micro Motion 7826/7828 Insertion Liquid Density Meters; Installation and Configuration Manual,[online],2011年4月,Pages 1-6, 91-96,[平成29年1月12日検索],インターネット, 引用文献3.特開平7-294406号公報 第4 引用文献 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。以下、同様。) (引1ア)「【請求項1】 被測流体の密度を測定する密度計において、 前記被測流体の温度を検出する温度センサと、 前記被測流体の温度-密度特性に応じた演算式を記憶する記憶手段と、 前記温度センサにより検出された温度データに基づいて前記記憶手段に記憶された演算式を選択する演算式選択手段と、 該演算式選択手段により選択された一の演算式による演算を実行して被測流体の密度を求める演算手段と、 を備えてなることを特徴とする密度計。」 (引1イ)「【0010】 【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明の一実施例を説明する。図1は本発明になる密度計の一実施例の縦断面図である。振動式密度計1は密閉されたケーシング2内に被測流体が通過する管路3を挿通してなる。管路3は、軸方向に変位可能なベローズ4A,4Bと、流入管5と、流入側マニホールド6と、一対のセンサチューブ7,8と、流出側マニホールド9と、流出管10とより構成されている。また、流入側マニホールド6には被測流体の温度を測定する温度センサ25が取り付けられている。この温度センサ25としては、サーミスタ温度センサが使用されており、流入側マニホールド6内を流れる被測流体の温度を直接測定することができ、温度変化に応じた信号を出力する。 ・・・ 【0019】19は加振器ユニットで、励振信号が入力される励振コイル19aと磁石19bとを対向させた実質電磁ソレノイドと同様な加振器を有する構成であり、一対のセンサチューブ7,8の略中間部間に設けられている。20は上流側ピックアップユニットで、センサチューブ7,8の振幅に応じた検出信号を出力するセンサコイル20aと磁石20bとを対向させたピックアップを有する構成であり、上記加振器ユニット19より上流側に位置するように配設されている。 【0020】21は下流側ピックアップユニットで、センサチューブ7,8の振幅に応じた検出信号を出力するセンサコイル21aと磁石21bとを対向させたピックアップを有する構成であり、上記加振器ユニット19より下流側に位置するように配設されている。 【0021】即ち、上記各ピックアップユニット20,21は、夫々電磁ソレノイドと同様な構成であり、加振器ユニット19により加振されたセンサチューブ7,8の変位に応じたセンサコイル20a,21aと磁石20b,21bとの相対変位により発生する電圧値を出力する。そして、加振器ユニット19,ピックアップユニット20,21は、夫々センサチューブ7,8に固定された支持板23,24に支持されている。 ・・・ 【0024】被測流体の密度に応じたセンサチューブ7,8の固有振動数はピックアップユニット20,21により検出される。すなわち、ピックアップユニット20,21から出力された信号の波形から振動周波数が得られ、この周波数からセンサチューブ7,8の固有振動数又は固有周期が得られるので、被測流体の密度を演算することができる。 【0025】26は密度演算回路で、後述するようにピックアップユニット20,21からの出力信号及び温度センサ25により測定された被測流体の温度に基づいて被測流体の密度を演算する。」 (引1ウ)「【0025】・・・図2は密度演算回路26のブロック図である。 【0026】密度演算回路26は、周波数測定回路27と、密度演算部28と、記憶部29とからなる。周波数測定回路27はピックアップユニット20,21から出力された信号からセンサチューブ7,8の固有振動数を測定する。そして、周波数測定回路27により測定されたセンサチューブ7,8の固有振動数又は固有周期は密度演算部28に入力される。 【0027】密度演算部28は、周波数測定回路27により測定されたセンサチューブ7,8の固有振動数又は固有周期に基づいてセンサチューブ7,8を流れる被測流体の密度を所定の演算式で演算する。上記記憶部29には、被測流体の温度t_(1) 、センサチューブ7,8の振動周期(又は周波数)I_(1) のときの密度ρ_(1) を算出する演算式(1)が記憶されている。 【0028】 ρ_(1) =f(t_(1) ,I_(1) ) … (1) 密度演算部28は、演算式(1)の演算を行って温度t_(1) のときの密度ρ_(1) を求めた後、後述するように被測流体の種類を判別して記憶部29に記憶された密度-温度特性の演算式を選択し、選択された演算式に基づいて基準温度に対応する被測流体の密度を演算し、その演算結果を表示部30に表示する。」 (引1エ)「【0029】図3は2種類の流体の密度-温度特性を示すグラフである。記憶部29には、各被測流体の種類毎の密度-温度特性が記憶されている。例えば上記振動式密度計1が配設される管路に2種類の流体が流れる場合には、予め当該2種類の流体の密度-温度特性を実験により求めておき、この密度-温度特性を記憶部29に記憶させておく。 【0030】本実施例では、記憶部29に2種類の流体に対応する密度-温度特性A,B(図3中、実線で示す)を表す式が予め記憶されている。 特性A → ρ_(A) =a(t_(1) -t_(0) )+ρ_(0) … (2) 特性B → ρ_(A) =b(t_(1) -t_(0) )+ρ_(2) … (3) (当審注:特性Bの「ρ_(A)」は、「ρ_(B)」の誤記と認める。) (a,bは被測流体固有の係数、t_(1) は被測流体の温度、t_(0) は基準温度) この密度-温度特性A,Bは、実験で得られたものであるため、実際の計測値とずれることがある。そこで、本実施例では、密度-温度特性A,Bに対して±10%の許容範囲(図3中、破線で示す)を設定しており、上記(1)式で演算された密度ρが密度-温度特性A又はBのどちらの許容範囲に入るのかを判定することにより被測流体の密度-温度特性式を(2)(3)の中から選択するようにしている。 【0031】そのため、上記(1)?(3)式の演算の後、密度-温度特性A,Bの±10%の許容範囲判定の演算(演算式選択手段)を行う。よって、記憶部29には、次式(4)(5)が記憶されている。 特性Aの許容範囲→ -0.1≦(ρ_(1) -ρ_(A1))/ρ_(A1)≦0.1 … (4) 特性Bの許容範囲→ -0.1≦(ρ_(1) -ρ_(B1))/ρ_(B1)≦0.1 … (5) 今、計測した密度が温度t1 において密度ρ_(1) でa点とすると、a点はA式の許容範囲内に入っているので、特性Aの(2)式で換算すると基準温度t_(o) においてはb点となり密度ρ_(o) が求まる。 【0032】また、計測した密度が温度t_(1) において密度ρ_(3) でc点であるきは、c点がB式の許容範囲内に入っているので、特性Bの(3)式で換算すると基準温度t_(o)においてはd点となり密度ρ_(2) が求まる。このように、計測した密度がρ_(o) ?ρ_(1) の±10%の許容範囲に入るのか、あるいは計測した密度がρ_(2) ?ρ_(3) の±10%の許容範囲に入るのかを判定することにより計測中の被測流体の密度が密度-温度特性AかBかを判定することができる。尚、計測中の被測流体の密度が密度-温度特性A又はBの許容範囲に入らない場合には、演算不可能であるのでエラーを表示させる。 【0033】また、記憶部29には、計測された被測流体の密度ρ_(1) を基準温度t_(0) の密度ρ_(0) に補正するための基準温度補正演算式(6)(7)が記憶されている。 ρ_(0) =ρ_(A0)×{1+(ρ_(1) -ρ_(A1))/ρ_(A1)} … (6) ρ_(0) =ρ_(B0)×{1+(ρ_(1) -ρ_(B1))/ρ_(B1)} … (7)」 (引1オ)「【0033】・・・ここで、上記密度演算回路26が実行する密度演算処理につき図4のフローチャートを参照して説明する。 【0034】密度演算回路26は、ステップS1(以下「ステップ」を省略する)において、温度センサ25により計測された被測流体の温度t_(1) を読み込む。次にS2でピックアップユニット20,21から出力された信号の波形から振動周期I_(1) を測定する。 【0035】次のS3では、前述した(1)式の演算を行う。すなわち、密度演算式ρ=f(t_(1) ,I_(1) )の演算を実行して温度t_(1) の被測流体の密度ρ_(1) を求める。続いて、S4に進み、記憶部29に記憶された密度-温度特性A,Bの(2)(3)式の演算を行って温度t_(1) のときの密度ρ_(A1), ρ_(B1)を求める。 【0036】S5では、温度t_(1) のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っているか否かを判定する。すなわち、S5においては、前述した(4)式の演算を行う。そして、S5において、被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っている場合には、S6に進み、(2)式に基づいて基準温度t_(o) のときの密度ρ_(A0)を算出する。 【0037】そして、S7では、上記(2)式により算出された基準温度t_(o) のときの密度ρ_(A0)を上記密度ρ_(1) と密度ρ_(A1)との差に基づいて補正することにより計測中の被測流体の密度ρ_(0) を算出する。すなわち、前述した基準温度補正演算式(6)の演算を行って基準温度t_(o) に対応する被測流体の密度ρ_(0) を求める。その後、S8に進み、S7で算出された密度ρ_(0) を基準温度での被測流体の密度として外部に出力すると共に、表示部30に表示させる。尚、S8の処理が終了すると、再びS1に戻り、上記S1以降の処理を繰り返す。 【0038】また、上記S5において、被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っていない場合には、S9に進み、温度t_(1) のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Bの密度ρ_(B1)の±10%以内に入っているか否かを判定する。すなわち、S9においては、前述した(5)式の演算を行う。 【0039】上記S9において、被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Bの密度ρ_(B1)の±10%以内に入っている場合には、S10に進み、(3)式に基づいて基準温度t_(o) のときの密度ρ_(B0)を算出する。そして、S11では、上記(3)式により算出された基準温度t_(o) のときの密度ρ_(A0)を上記密度ρ_(1 )と密度ρ_(A1)との差に基づいて補正することにより計測中の被測流体の密度ρ_(0) を算出する。すなわち、前述した基準温度補正演算式(7)の演算を行って基準温度t_(o) に対応する被測流体の密度ρ_(0) を求める。その後、S8に移行して、S11で算出された密度ρ_(0) を基準温度での被測流体の密度として外部に出力すると共に、表示部30に表示させる。また、S8の処理が終了すると、再びS1に戻り、上記S1?S11の処理を繰り返す。 【0040】尚、上記S9において、被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Bの密度ρ_(B1)の±10%以内に入っていない場合には、S12に進み、エラーを表示部30に表示させてS1に戻り、再度密度演算処理をやり直す。このように複数種の被測流体が順次給送される給送ラインにおいて、計測された密度が密度-温度特性A,Bの許容範囲内に入っていれば複数種の被測流体の密度を自動的に測定することができるので、従来のように被測流体が切り換わる度に密度-温度特性の演算式の設定を切り換えるといった面倒な操作が不要であり、作業者が演算式の切り換え操作を忘れたり、あるいは操作ミスにより被測流体に対応しない演算式に切り換えてしまったりするといった問題を解消することができる。 【0041】しかも、2種類の密度-温度特性A,Bを設定しておくことにより、測定された被測流体の密度を基準温度に対する密度に補正して正確な密度を求めることができる。また、記憶部29には、上記密度-温度特性A,Bの2種類に限らず、3種類以上の密度-温度特性の演算式を記憶させるようにしても良い。」 (引1カ)図1には、以下の図面が示されている。 (引1キ)図2には、以下の図面が示されている。 (引1ク)図3には、以下の図面が示されている。(当審注:図中の「d(t_(0) ,ρ_(0) )」は、「d(t_(0) ,ρ_(2))」の誤記と認める。) (引1ケ)図4には、以下の図面が示されている。 2 引用文献1に記載された発明 (1)(引1ア)の請求項1には、密度計が記憶手段と演算式選択手段と演算手段とを備えてなると記載されていることから、(引1ウ)の【0026】に記載の「周波数測定回路27と、密度演算部28と、記憶部29とからなる」「密度演算回路26」は、「振動式密度計1」に備えられたものであると理解できる。 (2)上記(1)を含め上記1の記載事項及び図面を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「密閉されたケーシング2内に被測流体が通過する管路3を挿通してなり、管路3は、軸方向に変位可能なベローズ4A,4Bと、流入管5と、流入側マニホールド6と、一対のセンサチューブ7,8と、流出側マニホールド9と、流出管10とより構成され、流入側マニホールド6には被測流体の温度を測定する温度センサ25が取り付けられ、加振器ユニット19,ピックアップユニット20,21は、夫々センサチューブ7,8に固定された支持板23,24に支持され、被測流体の密度に応じたセンサチューブ7,8の固有振動数はピックアップユニット20,21により検出され、ピックアップユニット20,21からの出力信号及び温度センサ25により測定された被測流体の温度に基づいて被測流体の密度を演算する密度演算回路26は、周波数測定回路27と、密度演算部28と、記憶部29とからなる、振動式密度計1を用いる方法であって、 上記振動式密度計1が配設される管路に2種類の流体が流れる場合には、記憶部29に2種類の流体に対応する密度-温度特性A,Bを表す次式が予め記憶されており、 特性A → ρ_(A) =a(t_(1) -t_(0) )+ρ_(0) … (2) 特性B → ρ_(B) =b(t_(1) -t_(0) )+ρ_(2) … (3) (a,bは被測流体固有の係数、t_(1) は被測流体の温度、t_(0) は基準温度) 密度演算回路26は、ステップS1(以下「ステップ」を省略する)において、温度センサ25により計測された被測流体の温度t_(1) を読み込み、次にS2でピックアップユニット20,21から出力された信号の波形から振動周期I_(1) を測定し、次のS3では、密度演算式ρ=f(t_(1) ,I_(1) )の演算を実行して温度t_(1) の被測流体の密度ρ_(1) を求め、続いて、S4に進み、記憶部29に記憶された密度-温度特性A,Bの(2)(3)式の演算を行って温度t_(1) のときの密度ρ_(A1), ρ_(B1)を求め、S5では、温度t_(1)のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っているか否かを判定し、また、上記S5において、被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っていない場合には、S9に進み、温度t_(1) のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Bの密度ρ_(B1)の±10%以内に入っているか否かを判定することを含み、 2種類の被測流体が順次給送される給送ラインにおいて、測定された被測流体の密度を基準温度に対する密度に補正して正確な密度を求めることができる、方法。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 (1)引用発明の「振動式密度計1」は、本願発明の「メータ」に相当し、引用発明の「振動式密度計1が配設される管路」又は「給送ライン」と本願発明の「プロセスライン」とは、「ライン」という点で一致し、引用発明の「密度-温度特性A」の「流体」と本願発明の「第1のプロセス材料」とは、「第1の材料」という点で一致し、引用発明の「密度-温度特性B」の「流体」と本願発明の「第2のプロセス材料」とは、「第2のプロセス材料」という点で一致する。 (2)また、引用発明の「密度-温度特性A」の「流体」及び「密度-温度特性B」の「流体」は、「2種類の流体」であるから、引用発明は、本願発明の「第1のプロセス材料は第2のプロセス材料とは異なる」という構成のうちの「第1の材料は第2の材料とは異なる」という構成を備えている。 (3)また、本願発明の「プロセス材料マトリックス」は、本願明細書の「プロセス材料のマトリックスはデータテーブル(図4を参照)から生成され、密度及び温度の範囲をカバーし」(【0018】)という記載及び図4、並びに「図7は、メータ内に格納されたマトリックス演算に用いられる例示の生成物溶液(Brix、ブリックス)の温度値及び密度値の基準テーブルを示す。図8は、同じメータ内に格納されたマトリックス演算に用いられる例示の洗浄溶液NaOH(苛性ソーダ)の温度と密度の値の基準テーブルを示します。」(【0022】)という記載及び図7,8に鑑みると、プロセス材料における密度-温度特性をデータテーブルにした態様を含むことから、引用発明の「2種類の流体に対応する」「密度-温度特性A,Bの(2)(3)式」と、本願発明の「第1のプロセス材料に関連した第1のプロセス材料マトリックスと第2のプロセス材料に関連した第2のプロセス材料マトリックスを含」む「2つ以上のプロセス材料マトリックス」とは、「第1の材料に関連した第1の材料特性と第2の材料に関連した第2の材料特性を含」む「2つ以上の材料特性」である点で共通する。 (4)上記(1)及び(3)での対比を踏まえると、引用発明の「記憶部29に2種類の流体に対応する」「密度-温度特性A,Bの(2)(3)式」が「予め記憶され」た「振動式密度計1」と、本願発明の「少なくとも2つ以上のプロセス材料マトリックスを格納したメータ」とは、「少なくとも2つ以上の材料特性を格納したメータ」である点で共通する。 (5)引用発明の「振動式密度計1が配設される管路」を「流れる」「流体」に対し、「温度t_(1)のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っている」と「判定」することは、「密度-温度特性A」の「流体」を検知していることに他ならない。 よって、引用発明の「振動式密度計1が配設される管路」を「流れる」「流体」に対し、「温度t_(1)のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っている」と「判定」することと、本願発明の「プロセスライン内の第1のプロセス材料を検知」することとは、「ライン内の第1の材料を検知」する点で共通する。 (6)以上のことから、引用発明の「記憶部29に2種類の流体に対応する」「密度-温度特性A,Bの(2)(3)式」が「予め記憶され」た「振動式密度計1」を用いて、「振動式密度計1が配設される管路」を「流れる」「流体」に対し、「温度t_(1)のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っている」と「判定」する「方法」と、本願発明の「少なくとも2つ以上のプロセス材料マトリックスを格納したメータを用いて、プロセスライン内の第1のプロセス材料を検知し、2つ以上のプロセス材料マトリックスは、第1のプロセス材料に関連した第1のプロセス材料マトリックスと第2のプロセス材料に関連した第2のプロセス材料マトリックスを含み、第1のプロセス材料は第2のプロセス材料とは異なる方法」とは、「少なくとも2つ以上の材料特性を格納したメータを用いて、ライン内の第1の材料を検知し、2つ以上の材料特性は、第1の材料に関連した第1の材料特性と第2の材料に関連した第2の材料特性を含み、第1の材料は第2の材料とは異なる方法」である点で共通する。 2 引用発明の「温度t_(1) の被測流体の密度ρ_(1) を求め」ることは、「被測流体」が「密度-温度特性A」の「流体」の場合を含み、ここでの「密度ρ_(1) 」が本願発明の「ライン密度」に相当する。 よって、引用発明の「温度t_(1) の被測流体の密度ρ_(1) を求め」ることと、本願発明の「第1のプロセス材料のライン密度を測定する工程」とは、「第1の材料のライン密度を測定する工程」である点で共通する。 3 引用発明の「被測流体の温度t_(1) を」「計測」することは、「被測流体」が「密度-温度特性A」の「流体」の場合を含み、ここでの「温度t_(1) 」が、本願発明の「ライン温度」に相当する。 よって、引用発明の「被測流体の温度t_(1) を」「計測」することと、本願発明の「第1のプロセス材料のライン温度を測定する工程」とは、「第1の材料のライン温度を測定する工程」である点で共通する。 4 引用発明の「S5では、温度t_(1)のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っているか否かを判定し、また、上記S5において、被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っていない場合には、S9に進み、温度t_(1) のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Bの密度ρ_(B1)の±10%以内に入っているか否かを判定する」工程では、「密度-温度特性A」の「流体」の場合、「温度t_(1)のとき被測流体の密度ρ_(1) 」に基づいて「2種類の流体に対応する」「密度-温度特性A,Bの(2)(3)式」から「密度-温度特性A」の「(2)」「式」が採用される。 よって、引用発明の「S5では、温度t_(1)のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っているか否かを判定し、また、上記S5において、被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Aの密度ρ_(A1)の±10%以内に入っていない場合には、S9に進み、温度t_(1) のとき被測流体の密度ρ_(1) が密度-温度特性Bの密度ρ_(B1)の±10%以内に入っているか否かを判定する」工程と、本願発明の「前記ライン密度とライン温度に基づいて2つ以上のマトリックスから前記第1のプロセス材料マトリックスを識別する工程」とは、「前記ライン密度とライン温度に基づいて2つ以上の材料特性から前記第1の材料特性を識別する工程」である点で共通する。 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 (一致点) 「少なくとも2つ以上の材料特性を格納したメータを用いて、ライン内の第1の材料を検知し、2つ以上の材料特性は、第1の材料に関連した第1の材料特性と第2の材料に関連した第2の材料特性を含み、第1の材料は第2の材料とは異なる方法であって、 第1の材料のライン密度を測定する工程と、 第1の材料のライン温度を測定する工程と、 前記ライン密度とライン温度に基づいて2つ以上の材料特性から前記第1の材料特性を識別する工程を有する、ライン内の第1の材料を検知する方法。」 (相違点1) 本願発明は、ラインが「プロセス」ラインであり、材料が「プロセス」材料であり、材料特性が「プロセス」材料特性であるのに対し、引用発明は、ラインが「給送ライン」であり、材料が「流体」であり、材料特性が「流体に対応する密度-温度特性」である点。 (相違点2) メータに格納した材料特性が、本願発明は、プロセス材料「マトリックス」であるのに対し、引用発明は、流体に対応する密度-温度特性を表す「式」である点。 第6 判断 上記相違点について検討する。 1 相違点1について (1)本願発明の「プロセスライン」について、本願明細書に明確には定義されていないが、【0002】や【0005】などの記載によれば、食品製造などの設備内の配管であると解される。一方、引用文献1の【0040】には、「複数種の被測流体が順次給送される給送ラインにおいて、計測された密度が密度-温度特性A,Bの許容範囲内に入っていれば複数種の被測流体の密度を自動的に測定することができるので、従来のように被測流体が切り換わる度に密度-温度特性の演算式の設定を切り換えるといった面倒な操作が不要であり、作業者が演算式の切り換え操作を忘れたり、あるいは操作ミスにより被測流体に対応しない演算式に切り換えてしまったりするといった問題を解消することができる。」と記載されていることによれば、引用発明の「給送ライン」も、作業者が管理する設備内の配管であることは明らかである。 してみると、引用発明の給送ラインは「プロセス」ラインであり、流体は「プロセス」材料であり、流体に対応する密度-温度特性は「プロセス」材料特性であるから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。 (2)仮に、上記相違点1が実質的な相違点であるとしても、ライン内の材料の密度を求める密度計の技術において、密度計をプロセスラインに配置することは、例えば、引用文献2の「1.2.1 What is it?」の欄(第1?2頁)や引用文献3の【0008】などに記載されているように、本願の優先日前に周知の技術事項であるから、引用発明において、上記周知の技術事項を適用し、給送ラインを「プロセス」ラインとし、流体を「プロセス」材料とし、流体に対応する密度-温度特性を「プロセス」材料特性とし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 2 相違点2について 材料の測定技術において、材料における2つの物理量の特性を関係式やデータテーブルとして予め記憶させておくことは、本願の優先日前に周知の技術事項である。このことは、例えば、特開2008-232890号公報に、「【0021】 比重値は、一般的に温度によって変化するため、比重値を所定温度での換算比重とし、この換算比重を管理することが一般的である。したがって、液体2の液温Tを計測する温度センサー10を配置し、これによって得られた液温Tを用いて補正手段9cにより、液温Tにおける比重値を所望とする液温T_(0)における換算比重値に補正する。 【0022】 このような補正手段9cとしては、予め液体の種類別に比重と液温との関係を示す関係式やデータテーブルを記憶させておき、液温T、液温T_(0)と比重値とから、液温T_(0)における換算比重値を得ることができる。」と記載されていることからも裏付けられており、平成29年12月13日付けの意見書において、請求人は、「拒絶理由通知における『材料の特性をマトリックスの形式で表し記憶することは、周知である。』との御指摘には同意する。」と述べている。 したがって、引用発明において、上記周知の技術事項を適用し、記憶部29に記憶された密度-温度特性A,Bの「(2)(3)式」をそれぞれ「マトリックス」形式に変更して、上記相違点2に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 3 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果が、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得る程度を越えた格別なものとは認められない。 4 よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2018-11-05 |
結審通知日 | 2018-11-06 |
審決日 | 2018-11-19 |
出願番号 | 特願2016-527143(P2016-527143) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 北川 創 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
▲高▼見 重雄 信田 昌男 |
発明の名称 | プロセス材料の濃度を決定する工程における関連マトリックスの自動切り換え |
代理人 | 特許業務法人 有古特許事務所 |