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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B42D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B42D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 B42D
管理番号 1350546
審判番号 不服2018-3482  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-09 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2013- 82419「ヒンジを有する本」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月30日出願公開,特開2014-205248,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月10日を出願日とする特許出願(特願2013-082419号)であって、平成29年5月12日付で拒絶の理由が通知され,同年7月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年12月1日付で拒絶の査定がなされ、同査定の謄本は、同月12日に請求人に送達された。
これに対して,平成30年3月9日付で拒絶査定不服審判の請求がなされた。
その後、当審において、平成30年12月21日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年2月14日に面接を行い,同年2月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年12月1日付けの拒絶査定(以下,「原査定」という。)の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8(平成29年7月21日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載のもの)に係る発明は,引用文献1及び2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献1:特開2011-046049号公報
引用文献2:実公昭33-019710号公報

第3 当審拒絶理由の概要
平成30年12月21日付けで当審において通知した拒絶の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要はつぎのとおりのものである。
<理由1(特許法第36条第6項第1号違反)>
本件出願は、特許請求の範囲の記載がつぎの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1ないし3及び5ないし8について
本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】の記載によれば,本願発明の課題は,「ヒンジを有する本において,端の頁及び中央の頁における見開き性が高い本を提供する」にあるものと認められるところ,当該課題を解決する手段の実施例としては,段落【0020】ないし段落【0024】に開示されているところ,そこには,端の頁から中央の頁に向かうに従ってヒンジ長さが高くなるよう変化する形状のもののみが示されている。すなわち,段落【0024】には,図1(a)のように,端の頁から中央の頁に向かうに従ってヒンジの長さが大きくなるように常に変化する山なり形状のものに加えて,ヒンジの長さが同じ頁を所定枚数連続させながら端の頁から中央の頁に向かうに従ってそのヒンジ長さを大きく変化させる階段状の形状のものが開示されているのみである。
そして,端の頁のヒンジの長さよりも中央の頁のヒンジの長さが大きく形成されているものであっても,その途中の頁のヒンジの長さが端の頁のヒンジの長さよりも小さく形成されているものが「端の頁及び中央の頁における見開き性が高い本を提供する」課題を解決し得ることを裏付ける記載は,発明の詳細な説明には記載されておらず,また,技術常識を参酌したとしても,そのことを当業者が認識し得るものともいえない。
してみると,「中央の頁のヒンジの長さ」が「端の頁のヒンジの長さより長い」ことが特定されているのみである請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明の記載から把握される本願発明の課題を解決し得るものと当業者が認識し得る範囲を超えるものというほかない。
したがって,請求項1ないし3及び5並びに,請求項4を直接又は間接的に引用するものではない請求項6ないし8の記載はの記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

<理由2(特許法第36条第4項第1号違反)>
本件出願は、明細書の発明の詳細な説明の記載がつぎの点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1ないし8について
本願明細書の図1(a)の一番左端の頁とその次の頁との見開きは,図2(c)の図と比較すれば見開き性は改善されないものと解されるから,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願請求項1ないし8に係る発明を本願発明の課題を解決できるよう使用できる程度に記載されているものということはできない。(図1(a)のようにヒンジ長さを形成することで見開き性が改善されることについて,具体的に説明されたい。)

第4 本願発明
本件特許出願に係る請求項1ないし7に係る発明(以下,それぞれ,「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、平成31年2月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。

【請求項1】
綴じ代部分と、ヒンジと、画像が形成された画像部分とを、背面側からこの順に有する複数の頁を有する本であって、
前記複数の頁の、綴じ代部分と、ヒンジと、画像部分とを、頁毎に直線状に配列し、前記背面側を下側、前記背面と反対側を上側としたときに、前記ヒンジの前記画像部分側の端の位置は、端の頁よりも中央の頁の方が上側に位置しており、
前記ヒンジの前記画像部分側の端の位置は、本全体で山なりの形状であり、
前記中央の頁のヒンジの長さは前記端の頁のヒンジの長さよりも長く、前記中央の頁の綴じ代部分の長さは前記端の頁の綴じ代部分の長さと同じであることを特徴とする本。
【請求項2】
前記ヒンジが基材と粘着層とを有する粘着テープで形成されている請求項1に記載の本。
【請求項3】
前記綴じ代部分と前記画像部分とが同種の材料で形成されている請求項1または2のいずれかに記載の本。
【請求項4】
前記ヒンジの前記画像部分側の端の位置が、本全体で階段状の形状である請求項1乃至3のいずれかに記載の本。
【請求項5】
前記ヒンジは画像部分上を覆う粘着テープを延在させたものである請求項1乃至4のいずれかに記載の本。
【請求項6】
前記複数の頁における画像部分上の粘着テープの長さの平均に対して、各頁における画像部分上の粘着テープの長さを±1.0mm以内とする請求項5に記載の本。
【請求項7】
前記ヒンジは複数の粘着テープを貼り合わせて形成したものである請求項1乃至6のいずれかに記載の本。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1:特開2011-46049号公報
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された本件特許出願前に出願公開された引用文献1には,つぎの事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項3】
写真等の画像が直接印刷される矩形状の台紙本体と、
一辺を前記台紙本体の一辺に対し平行に離間して配置される矩形状ののど側台紙と、
前記台紙本体の一辺と前記のど側台紙の一辺とを平行に離間した状態で互いに固定されるように、前記台紙本体及び前記のど側台紙の表裏両面からテープを貼着してなる可撓部と、を備えることを特徴とするアルバム台紙。」

(2)「【0007】そこで、本発明の目的とするところは、アルバムとして製本したときに見開きのアルバム台紙が完全に水平に開くとともに、印刷障害や表面加工障害の起こらないアルバム台紙の製造方法及びアルバム台紙を提供することにある。」

(3)「【0017】また、請求項3に記載のアルバム台紙によれば、台紙本体とのど側台紙とを備え、さらに台紙本体の一辺とのど側台紙の一辺とを平行に離間した状態で互いに固定されるように、台紙本体及びのど側台紙の表裏両面からテープを貼着してなる可撓部を備えるので、可撓部において容易に折れ曲がる。よって、大部分が厚手の素材で構成されるアルバム台紙であっても、このアルバム台紙を用いて作成された写真アルバムを開くと、見開きのアルバム台紙が完全に水平に開くので、アルバム台紙に印刷された画像の視認性に優れる。」

(4)「【0028】つまり、このように製造されたアルバム台紙40は、別の見方をすれば写真が直接印刷される矩形状の台紙本体33と、のど側台紙34と、テープ32を貼着してなる可撓部35と、から構成されるといえる。
のど側台紙34は、小口側の一辺を、台紙本体33ののどG側の一辺に対し平行に離間して配置されている。こののど側台紙34と台紙本体33は、一枚のベース材30を切り分けられたものであるので、のど側台紙34と台紙本体33の材質は同じである。
可撓部35は、台紙本体33ののどG側の一辺と、のど側台紙34の小口側の一辺とを平行に離間した状態で互いに固定されるように、台紙本体33及びのど側台紙34の表裏両面からテープ32を貼着してなる。つまり、長孔31において、図6に示すようにテープ32の粘着面が互いに張り合わされた状態となる。
【0029】このようなアルバム台紙40を同じ向きに複数枚重ね、のど側台紙34をステープラで綴じて表紙(おもて表紙、裏表紙、背表紙)をつけることで、アルバムとして製本される。このアルバムを開くと、図7のようにアルバム台紙40は可撓部35で折れ曲がり、完全に水平に開く。但し、図7においては表紙を省略している。」

(5)図6


(6)図7


(7)上記(1)ないし(6)によれば,引用文献1には,
「写真等の画像が直接印刷される矩形状の台紙本体と、
一辺を前記台紙本体の一辺に対し平行に離間して配置される矩形状ののど側台紙と、
前記台紙本体の一辺と前記のど側台紙の一辺とを平行に離間した状態で互いに固定されるように、前記台紙本体及び前記のど側台紙の表裏両面からテープを貼着してなる可撓部と、を備えるアルバム台紙を同じ向きに複数枚重ね,のど側台紙をステープラで綴じて表紙をつけることで製本されるアルバム」の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。


2 引用文献2(実公昭33-019710号公報)
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された本件特許出願前に頒布された刊行物である引用文献2には,つぎの事項が記載されている。
(1)「本案は,アルバムに於ける内部の各紙葉の開きを充分に而も簡易になし得せしめんがため案出したもので即ち本案は表表紙1と裏表紙2との間に綴り込んだ内部の各紙葉3,3・・・・・・の折曲用押筋線4,4・・・・・・を表表紙1及び裏表紙2の折曲用押筋線5及び6より中央紙葉方向に向け1枚或は2枚置きに順次内方にずらして設けたものである。尚図中7は綴り込み紐である。」(1頁左欄7?14行)

(2)「本案は上述したように内部の各紙葉3,3・・・・・・の折曲用押筋線4,4・・・・・・を表表紙1及び裏表紙2の折曲用押筋線5及び6より中央紙葉方向に向け1枚或は2枚置きに順次内方にずらして設けたため内部の各紙葉を開く場合それぞれの折曲用押筋線部分が重さなることがないので充分に而も簡単に開くことができ又充分に開くことによつて開いた部分が自然に閉ぢることがないので使用上有利であり而も本案は内部の各紙葉の折曲用押筋線を表裏両面から中央紙葉に向け内方にずらして設けたため折曲用押筋線をずらして設けるも内部の各紙葉特に中央の紙葉の有効面積を著しく狭めることがなく従つて内部の各紙葉は特に面積の大なるものを使用する必要がなく従来のアルバムと同一面積のものを使用し得る効果を有するものである。」(1頁左欄8行?同頁右欄11行)

(3)第3図


(4)上記(1)ないし(3)によれば,引用文献2には,
「表表紙と裏表紙との間に綴り込んだ内部の各紙葉の折曲用押筋線を表表紙及び裏表紙の折曲用押筋線より中央紙葉方向に向け1枚或は2枚置きに順次内方にずらして設けたアルバム」の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

第6 当審の判断
1 原査定の拒絶の理由について
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明1との対比
(ア)引用発明1の「写真等の画像が直接印刷される矩形状の台紙本体」,「一辺を前記台紙本体の一辺に対し平行に離間して配置される矩形状ののど側台紙」,「前記台紙本体の一辺と前記のど側台紙の一辺とを平行に離間した状態で互いに固定されるように、前記台紙本体及び前記のど側台紙の表裏両面からテープを貼着してなる可撓部」は,それぞれ,本願発明1の「画像が形成された画像部分」,「綴じ代部分」,「ヒンジ」に相当する。
(イ)引用発明1の「可撓部」は,「台紙本体の一辺」と「のど側台紙の一辺」とを平行に離間した状態で固定されるよう「台紙本体及びのど側台紙の表裏両面からテープを貼着してなる」ものであるから,台紙本体とのど側台紙の間に存在するものであり,また,引用発明1のアルバム台紙は,複数枚重ねられることで製本されるものであるから,引用発明1の「一辺を前記台紙本体の一辺に対し平行に離間して配置される矩形状ののど側台紙と、前記台紙本体の一辺と前記のど側台紙の一辺とを平行に離間した状態で互いに固定されるように、前記台紙本体及び前記のど側台紙の表裏両面からテープを貼着してなる可撓部と、を備えるアルバム台紙を同じ向きに複数枚重ね,のど側台紙をステープラで綴じて表紙をつけることで製本されるアルバム」は本願発明1の「綴じ代部分と、ヒンジと、画像が形成された画像部分とを、背面側からこの順に有する複数の頁を有する本」に相当するものである。
(ウ)引用発明1は,上記(イ)で上述したように,「アルバム台紙」を複数枚重ねられて製本されるものであるから,それぞれのアルバム台紙の構造は同じものであるので,複数枚重ねられて製本された「アルバム台紙」の「のど側台紙」,「可撓部」,「台紙本体」とを「アルバム台紙」毎に直線状に配列し,背面側を下側,反対側を上側としたときに,「可撓部」の「台紙本体」側の端の位置は,同じ高さに位置するものであり,「のど側台紙」は,全て同じ長さであるものと理解できる。
してみると,引用発明1の「のど側台紙」が全て同じ長さであることは,本願発明1の「中央の頁の綴じ代部分の長さは,端の頁の綴じ代部分の長さと同じであること」に相当するものといえる。
(エ)引用発明1の「アルバム」は,「製本」されているものであるから,本願発明1の「本」に相当する。
(オ)以上のとおりであるから,本願発明1と引用発明1とはつぎの一致点で一致し,相違点で相違するものである。

<一致点>
「綴じ代部分と、ヒンジと、画像が形成された画像部分とを、背面側からこの順に有する複数の頁を有する本であって、
前記複数の頁の、綴じ代部分と、ヒンジと、画像部分とを、頁毎に直線状に配列し、前記背面側を下側、前記背面と反対側を上側としたときに、前記中央の頁の綴じ代部分の長さは前記端の頁の綴じ代部分の長さと同じであることを特徴とする本。」である点

<相違点>
本願発明1の「ヒンジの画像部分側の端の位置は、端の頁よりも中央の頁の方が上側に位置しており」、「ヒンジ」の「画像部分側の端の位置は、本全体で山なりの形状であり」、「中央の頁のヒンジの長さは前記端の頁のヒンジの長さよりも長」いものであるのに対して,引用発明1の「可撓部」の「台紙本体」側の端の位置は,「同じ高さに位置するもの」である点

イ 相違点について
引用発明2は「表表紙と裏表紙との間に綴り込んだ内部の各紙葉の折曲用押筋線を表表紙及び裏表紙の折曲用押筋線より中央紙葉方向に向け1枚或は2枚置きに順次内方にずらして設けたアルバム」であって,本願発明1と同様に頁の見開き性を高めるために,折曲用押筋線を端の頁より中央の頁の位置を内方,すなわち,背面側と反対側(本願発明1でいう「上側」)にずらす構成であって,本全体で山なりの形状とするものが開示されているといえるものの,引用発明2に記載のものは,押筋線の位置を綴じ代部分の長さを変更することによりずらすことが記載されているにすぎず,ヒンジの長さを変更することについては記載されていないから,引用発明1に引用発明2を適用したとしても,「可撓部」の位置を変更するもの,すなわち,綴じ代部分の長さを変化させるものとなるのであって,「可撓部」の長さを変えるものとはならない。
このように,引用文献2には、中央の頁と端の頁とで、押筋線の位置をずらすに当たり,綴じ代部分の長さを変更し、ヒンジの長さを変更しない構成及び技術的思想が記載されているものであって,引用文献2に記載の引用発明2を引用発明1に適用する際に、引用文献2に記載されている内容とは逆に、中央の頁と端の頁とで、綴じ代部分の長さは揃え、ヒンジの長さは変えるということまでは、例え当業者であっても容易には想到し得るものではない。
そして,本願発明1は,当該相違点に係る構成により,端の頁においては、ヒンジが短いことによって頁間の余白を小さくすることができ、中央の頁においては、ヒンジが長いことによってヒンジを十分に機能させて頁間を良好に見開くことができるという効果を奏するものである。

ウ 以上のとおりであるから,本願発明1は,当業者であっても引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

(2)本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は,それぞれ請求項1を引用する請求項2ないし7に係る発明であって,本願発明1にさらに限定を付したものであり,いずれの発明も本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。

(3)小括
上記のとおりであるから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできないから,原査定を維持することはできない。

2 当審拒絶理由について
(1)理由1(特許法第36条第6項第1号違反)について
平成31年2月22日に提出された手続補正書による補正によって,請求項1に補正前の請求項4において特定されていた構成を入れる補正がされ,補正後の請求項1において,「ヒンジの画像部分側の端の位置が、本全体で山なりの形状」であることが特定された結果,当審拒絶理由の理由1は解消した。
(2)理由2(特許法第36条第4項第1号違反)について
平成31年2月22日に提出された意見書の「本願明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題の欄の記載である段落番号0009に、「図2(a)に示す本の端の頁を開いた状態を、図2(c)に示す。図2(c)の状態では、ヒンジ51bが必要以上に広がり、見開き部分に大きな隙間が発生している。従って、見開き部分を介して両側に形成した画像の連続性が低下してしまうといったように、見開き性に課題がある。」と記載されています。即ち、拒絶理由通知書でご指摘の「1番左端の頁とその次の頁」との間において、ヒンジの長さに起因する頁間の隙間による画像の連続性の低下という課題があることが、発明の詳細な説明に記載されています(上記の通り、本願明細書の段落番号0009ではこれを端の頁における見開き性の課題と表現しております)。
続いて、同段落には、「逆に、図2(c)の状態における見開き性を高める為に、例えばヒンジ51bの長さを短くすると」と記載されています。即ち、「1番左端の頁とその次の頁」を含む端の頁のヒンジを短くすることで、ヒンジの長さに起因する頁間の隙間を小さくすることができ、画像の連続性を高めることができる、即ち上述の課題が解決することができることが、発明の詳細な説明に記載されています。
従って、発明の詳細な説明には、拒絶理由通知書に記載の「1番左端の頁とその次の頁」に関して、ヒンジの画像部分側の端の位置を本全体で山なりの形状とし、中央の頁のヒンジの長さを端の頁のヒンジの長さよりも長くする、即ち端の頁のヒンジの長さを短くすることによって、頁間の隙間を小さくして画像の連続性を高めることができ、上記課題を解決することができることが記載されています。また、本願明細書の段落番号0020、0021では、ヒンジの画像部分側の端の位置を本全体で山なりの形状とすることで、端の頁の見開き性が高くなる(上述の通り、端の頁において頁間の余白が小さく画像の連続性が高い)と記載されています。
尚、本願明細書の発明の詳細な説明では、もう1つの課題として、中央付近の頁の見開き性を挙げています(本願明細書の段落番号0010、0012、0021等)。中央付近の頁の見開き性とは、本願明細書の段落番号0008、0009等の記載から明らかな通り、ヒンジを屈曲させて頁間を良好に開けることができるかどうかを意味します。
本願発明は、上記2つの課題に対して、請求項1に記載されているように、ヒンジの画像部分側の端の位置を本全体で山なりの形状とし、中央の頁のヒンジの長さを端の頁のヒンジの長さよりも長くするというものです。本願発明は、かかる構成によって、これまで説明したように、端の頁においては、ヒンジが短いことによって頁間の余白を小さくすることができ、中央の頁においては、ヒンジが長いことによってヒンジを十分に機能させて頁間を良好に見開くことができます。即ち、いずれの課題も、本願発明の構成によって解決できることが、発明の詳細な説明に記載されています。」との説明により,当審拒絶理由の理由2は解消した。

第7 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由及び当審拒絶理由を検討しても,その理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2013-82419(P2013-82419)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B42D)
P 1 8・ 121- WY (B42D)
P 1 8・ 536- WY (B42D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 信也櫻井 茂樹  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 尾崎 淳史
荒井 隆一
発明の名称 ヒンジを有する本  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  

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