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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1350618
異議申立番号 異議2018-700496  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-19 
確定日 2019-02-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6248784号発明「液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6248784号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6248784号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6248784号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成26年4月25日に出願され、平成29年12月1日にその特許権の設定登録がされ、同年12月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成30年6月19日に特許異議申立人西あけみ(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 8月30日付け:取消理由通知
同年11月 1日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)

なお、平成30年11月6日付けで、当審から申立人に、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、また、参考として、上記取消理由通知の写し、上記訂正請求書及びこれに添付された訂正した特許請求の範囲の副本、及び上記取消理由通知に対応する特許権者の意見書副本を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定期間内に申立人から意見書は提出されなかった。

2.訂正請求について
(1)訂正の内容
平成30年11月1日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」ということがある。)の内容は、以下のとおりである。
ア 訂正事項1(請求項1?7に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1に、
「ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)と、溶剤と、を含有する液晶配向剤であって、前記溶剤が、1-ブトキシ-2-プロパノールである特定溶剤(X)と、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む特定溶剤(Y)を含有する液晶配向剤。」と記載されているのを、
「ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)と、溶剤と、を含有する液晶配向剤であって、前記溶剤が、1-ブトキシ-2-プロパノールである特定溶剤(X)と、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールジアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む特定溶剤(Y)を含有する液晶配向剤。」
に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2?7についても同様に訂正する。

(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正の目的、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に、特定溶剤(Y)の選択肢の一つとして択一的に記載されていた「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」を削除することにより、特定溶剤(Y)の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記選択肢の削除が、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲の範囲内で行われる訂正であり、かつ、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。
請求項1の訂正に連動する請求項2?7の訂正についても、請求項1と同様である。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

イ 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?7は、請求項2?7が請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。また、訂正事項1により訂正された後の請求項2?7は、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正される。よって、訂正事項1は一群の請求項に対して請求されたものといえるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

ウ 独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1?7に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?7に係る訂正事項1については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

エ 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正を認める。

3.本件発明について
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1]
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)と、溶剤と、を含有する液晶配向剤であって、
前記溶剤が、1-ブトキシ-2-プロパノールである特定溶剤(X)と、
ジエチレングリコールジエチルエーテル、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールジアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む特定溶剤(Y)を含有する液晶配向剤。
[請求項2]
前記特定溶剤(X)と特定溶剤(Y)の合計量が全溶剤量に対して1?70重量%である請求項1に記載の液晶配向剤。
[請求項3]
前記特定溶剤(X)の含有量が、特定溶剤(X)と特定溶剤(Y)の合計量の10?90重量%である請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
[請求項4]
インクジェット方式による塗布用である、請求項1?3に記載の液晶配向剤。
[請求項5]
前記重合体(A)は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応により得られる重合体であり、
前記テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及びシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
[請求項6]
請求項1?5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
[請求項7]
請求項6に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。」

4.取消理由通知に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して平成30年8月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
なお、各引用文献は、下記5.(1)「引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。
(1)理由I(新規性)
(その1 引用文献1を主引例とする場合)
本件特許の訂正前の請求項1、5?7に係る発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(その2 引用文献2を主引例とする場合)
本件特許の訂正前の請求項1、6、7に係る発明は、引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)理由II(進歩性)
(その1 引用文献1を主引例とする場合)
本件特許の訂正前の請求項1?7に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるか、又は引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(その2 引用文献2を主引例とする場合)
本件特許の訂正前の請求項1?7に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるか、又は引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

5.取消理由通知に記載した取消理由についての判断
(1)引用文献及びその記載事項
<引用文献等一覧>
1.特開平7-109438号公報(甲第1号証)
2.特開平7-316502号公報(甲第2号証)
3.国際公開第2012/165355号(甲第3号証)

(i)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1] ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体を有機溶媒に溶解し、該溶液を支持基板上に塗布し、加熱処理を施して、支持基板上にポリイミド塗膜を形成するのに使用されるポリイミドワニスにおいて、有機溶媒の5?60重量%が、一般式[I]
[化1]

(式中、nは1又は2であり、Rは水素、炭素数1以上4以下のアルキル基、アルケニル基、アルカノイル基を表す。)で表されるプロピレングリコール誘導体であることを特徴とするポリイミドワニス。
[請求項2] 一般式[I]で表されるプロピレングリコール誘導体が1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール及び2-(2-ブトキシプロポキシ)プロパノールの中から選ばれる少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体である請求項1記載のポリイミドワニス。
[請求項3] 一般式[I]で表されるプロピレングリコール誘導体が1-ブトキシ-2-プロパノール、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノールから選ばれる少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体である請求項2記載のポリイミドワニス。
[請求項4] ポリイミドワニスが液晶配向膜形成用である請求項1記載のポリイミドワニス。」

(1-2)「[0004]本発明の目的は、ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体を溶解した溶液を基板上に塗布し、電気・電子素子用の絶縁膜・保護膜或いは液晶配向膜等として用いられるポリイミド塗膜形成するポリイミドワニスにおいて、平滑なポリイミド塗膜を形成することが出来るポリイミドワニスの提供にある。
・・・
[0007]・・・本発明の一般式[I]で表されるプロピレングリコール誘導体を添加することにより、ポリイミドワニスを支持基板に対して均一かつ平坦に塗布することが可能である。」

(1-3)「[0008]本発明のポリイミドワニスに用いられるポリイミド及び/又はポリイミド前駆体は特に限定されない。通常は、テトラカルボン酸誘導体と1級ジアミンを反応、重合させてポリイミド前駆体とし、閉環イミド化してポリイミドとするのが一般的である。本発明のポリイミド及び/又はポリイミド前駆体を得るために使用されるテトラカルボン酸誘導体の具体例を挙げると、・・・などの芳香族テトラカルボン酸及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸などの脂環式テトラカルボン酸及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物、・・・などの脂肪族テトラカルボン酸及びこれらの二無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物などが挙げられる。」

(1-4)「[0017]プロピレングリコール誘導体の具体例を挙げれば、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、2-(2-ブトキシプロポキシ)プロパノール、などが挙げられ、特に1-ブトキシ-2-プロパノール、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノールが好ましい。
[0018]これらのプロピレングリコール誘導体は、本発明のポリイミドワニスを構成する全溶媒量の5重量%以上なければ、塗膜の平滑化に対する効果が十分ではない。又、これらのプロピレングリコール誘導体は、通常、単独ではこのポリイミド及び/又はポリイミド前駆体を溶解させないため、全溶媒量の60重量%を超えると、ポリマーの析出などが起こり、ワニスの安定性が低下するため好ましくない。」

(1-5)「[0022]又、最終的に形成されたポリイミド塗膜と支持基板の密着性を更に向上させる目的で、本発明のポリイミドワニスの成分の一つとして、カップリング剤などの添加剤を加えることも可能である。本発明のポリイミドワニスは、支持基板上に塗布し、加熱処理をすることにより、支持基板上に均一膜厚のポリイミド塗膜を形成し、電気・電子素子の絶縁膜、保護膜、更には液晶表示素子の配向膜として使用することができる。
[0023]この際の塗布方法は、特に限定されるものではないが、スピンコート、ロールコート、オフセット印刷、グラビア印刷などが一般的である。ポリイミド塗膜を形成させるための加熱処理温度は、ポリイミドワニスがポリイミド前駆体溶液である場合は、ポリイミド前駆体をポリイミドに転化させるための温度が必要であり、100から350℃、好ましくは120から250℃の任意の温度を選択できる。又、ポリイミドワニスがポリイミド溶液である場合の加熱処理温度は、溶媒が蒸発すればよく、通常は80から150℃で充分である。
[0024]ポリイミド塗膜を形成させるための支持基板は、ポリイミド塗膜を使用する用途に応じて適宜選択することができる。例えば、半導体素子用絶縁膜、保護膜の場合には各種配線加工されたシリコン基板であり、液晶配向膜の場合には、透明電極付きのガラス、又は、プラスチックフィルムなどである。」

(1-6)「[0025]
[実施例]以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例 1
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPと略す) 41.0g(0.1モル)、及び1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物 19.2g(0.098モル)をN-メチルピロリドン(以下、NMPと略す)340g中、室温で10時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を調製した。得られたポリイミド前駆体の還元粘度(ηsp/c)は 1.02dl/g(0.5重量%NMP溶液、30℃)であった。
[0026]この溶液12gにNMP12g、1-ブトキシ-2-プロパノール6gを添加し、総樹脂分を6%として透明電極付きガラス基板に2000rpmでスピンコートし乾燥し、硬化させることにより厚さ約3000Åのポリイミド塗膜を得た。得られた塗膜は凹凸のない平滑な膜であった。」

(1-7)「[0027]実施例 2
BAPP 41.0g(0.1モル)、及び3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物29.9g(0.0995モル)をNMP400g中、室温で10時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を調製した。得られたポリイミド前駆体の還元粘度(ηsp/c)は 1.14dl/g(0.5重量%NMP溶液、30℃)であった。
[0028]得られたポリイミド前駆体溶液50gに、イミド化触媒として無水酢酸10.8g、ピリジン5.0gを加え、50℃で3時間反応させ、ポリイミド溶液を調製した。この溶液を500mlのメタノール中に投入し、得られた白色沈殿をろ別、乾燥し、白色のポリイミド粉末を得た。得られたポリイミドの還元粘度(ηsp/c)は 1.04dl/g(0.5重量%NMP溶液、30℃)であった。
[0029]この粉末6gをγ-ブチロラクトン74g及び、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノール20gの混合溶媒に溶解し、総樹脂分を6%として、透明電極付きガラス基板にフレキソ印刷して、乾燥硬化させることにより、厚さ約1000Åのポリイミド塗膜を得た。得られた塗膜は凹凸のない平滑な膜であった。」

(ii)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-1)「[請求項1] ポリイミド前駆体を含有するワニスの溶剤組成において、非プロトン性溶剤(成分A)と、成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有し、成分Aと相溶性の良い溶剤を含有するワニス組成物。
[請求項2] ポリイミド前駆体を含有するワニスにおいて、下記成分A群の中から選ばれる化合物の少なくとも1種と、下記成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有する少なくとも1種の化合物とを含有するワニス組成物。
成分A:N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルプロピオンアミド、γ-ブチルラクトン。
成分B:
R-O(C_(2)H_(4)O)_(n)R’ (1)
(但し、R、R’はメチル基又はエチル基であり、nは2?4である)
R-O(C_(3)H_(6)O)_(n)R’ (2)
(但し、R、R’はメチル基又はエチル基であり、nは2?4である)
(R-O(C_(2)H_(4)O)_(n)H (3)
(但し、nが1の時は、Rは炭素数4?6個を有するアルキル基、又はフェニル基、nが2又は3の時は、Rは炭素数2?6個を有するアルキル基、又はフェニル基である)
R-O(C_(3)H_(6)O)_(n)H (4)
(但し、nが1の時は、Rは炭素数4?6個を有するアルキル基、又はフェニル基、nが2又は3の時は、Rは炭素数1?6個を有するアルキル基、又はフェニル基、nが4の時は、Rはメチル基である)
及び
乳酸アルキル、3-メチル,3-メトキシブタノール、テトラリン、デカリン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン (5)
[請求項3] 更に、前記成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも低い沸点(又は、高い蒸気圧)を有する少なくとも1種の化合物を含有する請求項2記載のワニス組成物。
[請求項4] 請求項1、2又は3記載のワニス組成物を使用した液晶表示素子用液晶配向制御膜。
・・・
[請求項6] カラーフィルターの上に液晶配向制御膜を配した構成の液晶表示素子において、請求項4記載の制御膜を使用した液晶表示素子。」

(2-2)「[0005]一方、最近、コストダウン等の見直しから、液晶配向制御膜の下にカラーフィルターを配する構成の液晶表示素子も検討されるようになってきている。カラーフィルターの上に直接液晶配向制御膜を形成する事により、保護膜の削減、及び保護膜形成工程の削減等のメリットがある。
[0006]
[発明が解決しようとする課題]カラーフィルター上に液晶配向制御膜、又は、保護膜を形成する場合の問題点は、該膜用ワニスの溶剤により、カラーフィルターの着色剤が溶出されたり、あるいは、溶出とまではいかなくともカラーフィルターの着色剤がフィルター上で損傷を受ける事である。とりわけ赤色系統の染料にこの問題が発生しやすい。それは、赤色染料がポリイミド前駆体の溶剤に溶解しやすいからである。
[0007]従って本発明は、カラーフィルターの上に液晶配向制御膜、又は、保護膜を設ける構成の液晶表示素子において、カラーフィルターの着色料(染料、顔料)を溶出したり、あるいは、カラーフィルターを損傷したりする事のないワニスを提供する事を主要な目的とするものである。」

(2-3)「[0009]即ち、本発明はポリイミド前駆体を含有するワニスの溶剤組成において、非プロトン性溶剤(成分A)と、成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有し、成分Aと相溶性の良い溶剤を含有するワニス組成物である。また、本発明はポリイミド前駆体を含有するワニスにおいて、下記成分A群の中から選ばれる化合物の少なくとも1種と、下記成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有する少なくとも1種の化合物(B-1群)とを含有するワニス組成物である。
[0010]このワニス組成物を用いる事により、カラーフィルターを損傷しないポリイミド系液晶配向制御膜、又は、保護膜を形成する事が出来る。又、更に、上記成分Aと成分Bとに加えて、B群の中から、含有するA成分の沸点より低い沸点、又は、高い蒸気圧を有する化合物(B-2群)を少なくとも1種含有するワニス組成物を提供する。このワニス組成物を用いる事により、カラーフィルターの損傷のない、かつ、塗布性に優れ、ワニスの乾燥速度を適度に調節し、又、溶剤の組合せによっては、有害性の小さいワニス組成物を得る事が出来る。
[0011]沸点が高いか、又は、蒸気圧が低い成分と、沸点が低いか、又は高い蒸気圧成分を適度に含有する事により、適度な乾燥性を得る事が出来る。特に、印刷法により、ワニスを塗布する場合には、溶剤の乾燥速度が早すぎると、印刷の版が乾燥しやすく、又、ロール上等のワニスの濃度が変化して、膜厚が不均一になりやすい。その点、スピンナー塗布の場合は、印刷による場合よりも溶剤の選択幅を比較的広くすることができる。」

(2-4)「[0013]・・・
成分Aの溶剤系は、極性の強い溶剤系であり、溶剤としての性能が優れているため、カラーフィルター上へ塗布するワニスの溶剤としては、一般的には、好ましくない溶剤系である。これらの成分Aの中では、NMP、DMI、DEFA、γ-ブチルラクトン等が好ましい。その含有量は2?40重量%が好ましく、さらに好ましくは、5?20重量%である。40重量%を超えると、カラーフィルターの損傷が大きくなり、又、2重量%未満では、ポリイミド前駆体の溶解性に難点が出て来るので好ましくない。これらの溶剤は、主に反応溶剤の主成分として使用されている。
[0014]成分Bの含有量は、成分B、あるいは、成分Aの種類及びこれらの濃度によって含有量の有効範囲が変わるので一概に規定する事は出来ない。成分Aよりも、成分Bの量が少なすぎると、カラーフィルターが損傷を受け安い。B-1群用化合物としては、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、イソホロン、ジ又は、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、又、B-2群用化合物としては、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、乳酸ブチル、ブチルセロソルブ等が好ましいが、B-1群とB-2群については、使用するA成分の沸点(又は、蒸気圧)によって交差し得るので、一該にB-1とB-2に分類する事はできない。」

(2-5)「[0017]・・・即ち、ポリイミド前駆体としては、ピロメリット酸二無水物の様な芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物や、シクロブタン環等の脂環式テトラカルボン酸にジアミノ化合物を反応させて得られるポリアミック酸等が用いられる。
[0018]テトラカルボン酸二無水物としては、・・・脂環式テトラカルボン酸としては、シクロブタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ビシクロオクタンや下記記載の脂環式テトラカルボン酸等を挙げることができる。
[0019]
[化2]



(2-6)「[0024]更に、酸無水物及びジアミノ化合物は2種類以上を組合わせて用いることもできる。これらの原料から合成されたポリイミド前駆体の濃度は、0.1?40重量%とすることができるが、通常のワニスの塗布手段(例えば、スピンナー塗布、印刷塗布、浸漬塗布、スプレー塗布等)で用いるには、1?10重量%程度の濃度が適量である。又、これらのポリイミド前駆体の一部がイミド化されたポリアミド・イミド、或いは可溶性ポリイミドのワニスにおいても適用することが可能である。又、本発明は、カラーフィルター上へ配する液晶配向制御膜、又は、保護膜として、特に有効であるが、カラーフィルター上のみに限定するものではない。」

(2-7)「[0029][実験2:溶剤系のみでのカラーフィルターの損傷テスト]以下に成分A、及びB、及びその他の溶剤系について実験1で作成したカラーフィルターを用いてカラーフィルターの損傷テストを行った。以下にその実験内容と結果を示す。
[0030]1)実験方法
3cm×3cmの大きさにカットしたカラーフィルター付き基板を50ccのビーカーに入れ、その中に、各溶剤を単独で20cc注いで室温で5分間放置した後取りだして、90℃にセットしたホットプレート上に10分間放置し、溶剤を乾燥した。その後、顕微鏡で該フィルターの損傷を観察した。その結果を成分Aについては表1に、成分Bについては表2に、その他の溶剤については表3に示す。
・・・
[0033]
[表2]



[0034]B群の数字は、成分Bの(1)?(5)に相当する数字である。
〇:溶剤に浸漬する前と変わらないことを示す。」

(2-8)「[0042]・・・
実施例21?23
本実施例では、実際にポリイミド前駆体を製造し、該前駆体を含有するワニスにて、実験2と同じ方法でカラーフィルターの損傷テストを行った。但し、本実験では、ワニスからカラーフィルター基板を取り出した後、スピンナ-(2000rpm)で5秒間回転させ、過剰のワニスを飛ばしてから同じ乾燥条件で乾燥した。以下にワニスの製造方法及びカラーフィルターの損傷テストの結果を示す(表7)。
[0043]1)母液1の製造
300mlのフラスコに攪はん装置、温度計、コンデンサ-及び窒素置換装置を付し、フラスコ内を窒素ガスにより置換した後、脱水精製したNMP90g及びTDM36gを添加した。次いで、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-4-nペンチルシクロヘキサン16.3gを仕込み攪はん溶解した後、5℃に氷冷した。次ぎに、ピロメリット酸二無水物7.5gを一度に投入し、冷却しながら攪はん反応させ、1時間反応後、パラアミノフェニルトリメトキシシランO.2gを加え、10℃、1時間攪はん反応により16%のポリアミド前駆体を製造した。この透明ワニス液を母液1とする。
母液1の組成
NMP=60%、TDM=24%、ポリイミド前駆体16%
[0044]2)ワニスの調合
母液1を用いて、ワニスの組成が表7に示す組成になる様に調合した。
3)ワニスによるカラーフィルターの損傷テスト
ポリイミド前駆体を4%含有した実施例21、22、23の結果は以下の通り。
[0045]
[表7]



(iii)引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3-1)「[請求項1]
カルボキシル基を有するジアミン化合物を含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリイミド前駆体及び/又はポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドと、
下記式[1]で示される化合物、下記式[2]で示される化合物及び下記式[3]で示される化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする組成物。
H_(3)C-CH(OH)-CH_(2)-O-R_(1) [1]
(式[1]中、R_(1)は、炭素数1?4のアルキル基を表す。)
HO-CH_(2)-CH_(2)-OR_(2) [2]
(式[2]中、R_(2)は、炭素数1?4のアルキル基を表す。)
C_(5)H_(6)O_(2) [3]
・・・
[請求項7]
前記テトラカルボン酸二無水物が、下記式[7]で表される化合物である請求項1?6のいずれか1項に記載の組成物。
[化4]

(式[7]中、Z_(1)は炭素数4?13の4価の有機基であり、かつ炭素数4?8の非芳香族環状炭化水素基を含有する。)
[請求項8]
Z_(1)が、下記式[7a]?[7j]で表される構造である請求項7に記載の組成物。
[化5]

(式[7a]中、Z_(2)?Z_(5)は水素原子、メチル基、塩素原子又はベンゼン環であり、それぞれ、同じであっても異なってもよく、式[7g]中、Z_(6)及びZ_(7)は水素原子又はメチル基であり、それぞれ、同じであっても異なってもよい。)」

(3-2)「[0005]
・・・
発明が解決しようとする課題
[0006]
ポリイミド系の液晶配向膜は、ポリイミドの溶液又はポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液からなる液晶配向処理剤を基板に塗布し、次いで、塗膜を焼成することにより形成されるが、塗布に際し、塗布性の向上、特に、基板への濡れ広がり性の向上が求められている。濡れ広がり性の向上により、液晶配向膜形成の工程中の塗布工程において、印刷塗布時のはじきやピンホールなどの欠陥を抑制することができる。
[0007]
また、ポリイミド系液晶配向膜を形成するための焼成プロセスは、液晶表示素子を製造するプロセスの中で、特に高温を必要とする。そのため、液晶表示素子の基板を通常のガラス基板に代えて、薄く軽量であるが低耐熱性のプラスチック基板を用いる場合に、より低温の焼成を可能にすることが求められている。同様に、カラーフィルターにおける色特性の低下などの劣化を抑制するため以外に、液晶表示素子の製造におけるエネルギーコストを削減するためにも、液晶配向膜の低温焼成化が求められている。さらに、液晶表示素子の信頼性低下(長期使用時の特性低下等)を抑えるという点からも、焼成プロセスの低温化が求められている。
[0008]
ポリイミド系の有機膜は、電子デバイスにおける層間絶縁膜や保護膜などに広く用いられている。保護膜など他の電子デバイスにおいても、液晶配向膜の場合と同様に、塗布性の向上や、膜形成時の焼成プロセスの低温化が求められている。塗布性の向上は、印刷塗布時の欠陥の抑制に有効となり、低温焼成化は、電子デバイスの特性低下を防止し、エネルギーコストの削減に有効となる。
そこで、本発明は、塗布性の向上した、低温での加熱によって形成されるポリイミド系の有機膜を形成できる組成物、特に低温での加熱によって液晶配向膜を形成できる液晶配向処理剤、該液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜、及びこの液晶配向膜を備えた液晶表示素子を提供することを目的とする。」

(3-3)「[0118]
本発明では、式[1]で示される化合物、式[2]で示される化合物、及び式[3]で示される化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を成分として含む溶媒の使用が好ましい。
・・・
上記の[1]?[3]で表される化合物を溶媒として用いることにより、塗布性に優れた液晶配向処理剤を提供することができる。含有される特定重合体が主にポリイミドである場合、そのポリイミドを溶解し、より低温で液晶配向膜を形成できる液晶配向処理剤を調製することができる。
[0119]
本発明の液晶配向処理剤において、塗布により均一な膜を形成するという観点から、上記溶媒の含有量は、全溶媒中70?99質量%であることが好ましく、75?95質量%がより好ましい。含有量については、目的とする液晶配向膜の膜厚によって適宜変更することができる。
・・・
[0120]
・・・
本発明の液晶配向処理剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、液晶配向処理剤を塗布した際の膜の膜厚均一性や表面平滑性をさらに向上させる目的で、塗布性向上のための他の有機溶媒(以下、貧溶媒とも言う。)を含有させることができる。
[0121]
膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる貧溶媒の具体例としては、次のものが挙げられる。例えば、・・・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、・・・1-ブトキシ-2-プロパノール、・・・プロピレングリコールジアセテート、・・・などの低表面張力を有する溶媒などである。これらの貧溶媒は、1種類で用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。」

(3-4)「[0162]
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の組成物の一つである液晶配向処理剤を例にして、液晶配向処理剤から液晶配向膜を形成する場合について説明する。液晶配向処理剤は、基板上に塗布し、熱処理により焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、液晶配向膜を形成する。・・・
液晶配向処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。本発明の液晶配向処理剤は、以上の塗布法を用いた場合であっても塗布性は良好である。」

(3-5)「[0172]
<テトラカルボン酸二無水物>
M1:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
M2:ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物
M3:3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物
M4:2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
[化65]



(2)引用文献に記載された発明
ア 引用文献1に記載された発明
引用文献1の請求項1(摘記1-1)には、「ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体を有機溶媒に溶解し、該溶液を支持基板上に塗布し、加熱処理を施して、支持基板上にポリイミド塗膜を形成するのに使用されるポリイミドワニスにおいて、有機溶媒の5?60重量%が、一般式[I]
[化1]

(式中、nは1又は2であり、Rは水素、炭素数1以上4以下のアルキル基、アルケニル基、アルカノイル基を表す。)で表されるプロピレングリコール誘導体であることを特徴とするポリイミドワニス。」が記載されており、請求項4(摘記1-1)には、「ポリイミドワニスが液晶配向膜形成用である請求項1記載のポリイミドワニス。」が記載されている。
また、上記有機溶媒の具体例が請求項2(摘記1-1)及び摘記1-4に記載されており、特に好ましい例として「1-ブトキシ-2-プロパノール、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノールから選ばれる少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体」が記載されている(摘記1-1の請求項3、摘記1-4)。
さらに、実施例1(摘記1-6)には、ポリイミド前駆体溶液にNMP及び1-ブトキシ-2-プロパノールを添加し、総樹脂分を6%として透明電極付きガラス基板にスピンコートし乾燥し、ポリイミド塗膜を得たこと、及び得られた塗膜は凹凸のない平滑な膜であったことが記載され、実施例2(摘記1-7)には、ポリイミド粉末をγ-ブチロラクトン及び2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノールの混合溶媒に溶解し、総樹脂分を6%として透明電極付きガラス基板にフレキソ印刷して、乾燥硬化させることによりポリイミド塗膜を得たこと、及び得られた塗膜は凹凸のない平滑な膜であったことが記載されている。
加えて、引用文献1に記載された発明の目的の一つとして、「液晶配向膜等として用いられるポリイミド塗膜形成するポリイミドワニスにおいて、平滑なポリイミド塗膜を形成することが出来るポリイミドワニスの提供」(摘記1-2)が記載され、「ポリイミド塗膜を形成させるための支持基板は・・・液晶配向膜の場合には、透明電極付きのガラス」であることが記載され(摘記1-5の[0024])、上記請求項4(摘記1-1)には、「ポリイミドワニスが液晶配向膜形成用である」ことが記載されていることを参酌すると、上記実施例1、2で得られたポリイミド塗膜は、液晶配向膜として用いられるものと解される。
そうすると、引用文献1には次の発明が記載されている。
「ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体を有機溶媒に溶解し、該溶液を支持基板上に塗布し、加熱処理を施して、支持基板上にポリイミド塗膜を形成するのに使用されるポリイミドワニスにおいて、有機溶媒の5?60重量%が、一般式[I]
[化1]

(式中、nは1又は2であり、Rは水素、炭素数1以上4以下のアルキル基、アルケニル基、アルカノイル基を表す。)で表される少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体である、液晶配向膜形成用ポリイミドワニス。」(以下、「引用発明1」という。)

また、引用発明1のポリイミドワニスを用いて形成される液晶配向膜は、「液晶表示素子の配向膜として使用する」ものであるから(摘記1-5の[0022])、引用文献1には次の発明も記載されている。
「引用発明1のポリイミドワニスを用いて形成された液晶配向膜、及び当該液晶配向膜を具備する液晶表示素子。」(以下、「引用発明1b」という。)

イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2の請求項1(摘記2-1)には、「ポリイミド前駆体を含有するワニスの溶剤組成において、非プロトン性溶剤(成分A)と、成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有し、成分Aと相溶性の良い溶剤を含有するワニス組成物。」が記載されており、請求項2(摘記2-1)には、成分A群の化合物と、(1)?(5)の化合物群からなるB群の化合物が記載され(各群の具体的な選択肢及び定義は摘記2-1の請求項2を参照。)、「成分A群の中から選ばれる化合物の少なくとも1種と、・・・成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有する少なくとも1種の化合物とを含有するワニス組成物」が記載されており、請求項3(摘記2-1)には、「更に、前記成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも低い沸点(又は、高い蒸気圧)を有する少なくとも1種の化合物とを含有する請求項2記載のワニス組成物」が記載されている。
また、引用文献2に記載された発明は、「カラーフィルターの上に液晶配向制御膜、又は、保護膜を設ける構成の液晶表示素子において、カラーフィルターの着色料(染料、顔料)を溶出したり、あるいは、カラーフィルターを損傷したりする事のないワニスを提供する事を主要な目的とするものである」ところ(摘記2-2)、「成分Aの溶剤系は、極性の高い溶剤系であり、溶剤としての性能が優れているため、カラーフィルター上へ塗布するワニスの溶剤としては、一般的には、好ましくない溶剤系である」こと(摘記2-4)、「成分A群の中から選ばれる化合物の少なくとも1種と、・・・成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有する少なくとも1種の化合物(B-1群)とを含有するワニス組成物・・・を用いる事により、カラーフィルターを損傷しないポリイミド系液晶配向制御膜、又は、保護膜を形成する事が出来る」こと、「更に、上記成分Aと成分Bとに加えて、B群の中から、含有するA成分の沸点より低い沸点、又は、高い蒸気圧を有する化合物(B-2群)を少なくとも1種含有するワニス組成物・・・を用いる事により、カラーフィルターの損傷のない、かつ、塗布性に優れ、ワニスの乾燥速度を適度に調節し、又、溶剤の組合せによっては、有害性の小さいワニス組成物を得る事が出来る」こと(摘記2-3)、及び「B-1群用化合物としては、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、イソホロン、ジ又は、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、又、B-2群用化合物としては、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、乳酸ブチル、ブチルセロソルブ等が好ましいが、B-1群とB-2群については、使用するA成分の沸点(又は、蒸気圧)によって交差し得る」こと(摘記2-4)が記載されている。
さらに、実施例21?23(摘記2-8)には、ポリイミド前駆体と、A成分に相当するNMP(N-メチル-2-ピロリドン)と、B-1成分に相当するTDM(ジメチルトリグリコール)と、B-2成分に相当するMMB(3-メチル-3-メトキシブタノール)又はPGBとを含有するワニスを用いてカラーフィルターの損傷テストを行ったところ、結果はいずれも「○」(摘記2-7の[0034]を参照すると、「溶剤に浸漬する前と変わらない」という評価結果と解される。)であったことが記載されている。
そうすると、引用文献2には次の発明が記載されている。
「ポリイミド前駆体を含有するワニスの溶剤組成において、非プロトン性溶剤である成分A群の中から選ばれる化合物の少なくとも1種(成分A)と、成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有する少なくとも1種の化合物(B-1群)と、成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも低い沸点、又は、高い蒸気圧を有する少なくとも1種の化合物(B-2群)とを含有する、液晶配向制御膜形成用ワニス組成物(成分A及び成分B群の具体的な選択肢及び定義は、摘記2-1の請求項2を参照。)。」(以下、「引用発明2」という。)

また、引用発明2の請求項4(摘記2-1)には、「請求項1、2又は3記載のワニス組成物を使用した液晶表示素子用液晶配向制御膜」が記載され、請求項6(摘記2-1)には、「カラーフィルターの上に液晶配向制御膜を配した構成の液晶表示素子において、請求項4記載の制御膜を使用した液晶表示素子」が記載されており、引用文献2に記載された発明の目的(摘記2-2)も参酌すると、引用文献2には次の発明が記載されている。
「引用発明2のワニス組成物を用いて形成された液晶表示素子用液晶配向制御膜、及び当該液晶配向制御膜を使用した液晶表示素子。」(以下、「引用発明2b」という。)

(3)理由I(新規性)及び理由II(進歩性)(その1 引用文献1を主引例とする場合)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明1との対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、後者における「ポリイミド及び/又はポリイミド前駆体」、「有機溶媒」及び「液晶配向膜形成用ポリイミドワニス」は、それぞれ前者における「ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)」、「溶剤」及び「液晶配向剤」に相当する。また、後者における「一般式[I](当審注:化学構造及びその定義は、摘記1-1の請求項1を参照。)で表される少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体」は、摘記1-1の請求項2の記載を参酌すると、前者における「1-ブトキシ-2-プロパノールである特定溶剤(X)」及び「プロピレングリコールジアセテート・・・特定溶剤(Y)」を包含するものである。そうすると、両者は、
「ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)と、溶剤と、を含有する液晶配向剤。」である点で一致し、
相違点1:溶剤が、本件発明1においては「1-ブトキシ-2-プロパノールである特定溶剤(X)と、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールジアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む特定溶剤(Y)」を含有するものであるのに対し、引用発明1においては、「1-ブトキシ-2-プロパノール及びプロピレングリコールジアセテートを包含する一般式[I](当審注:化学構造及びその定義は、摘記1-1の請求項1を参照。)で表される少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体」を含有するものである点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点1について(理由I(新規性)について)
引用発明1における「1-ブトキシ-2-プロパノール及びプロピレングリコールジアセテートを包含する一般式[I](当審注:化学構造及びその定義は、摘記1-1の請求項1を参照。)で表される少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体」は、具体的には、例えば引用文献1の摘記1-1の請求項2及び摘記1-4に記載されたような多数(12種類)の化合物を包含するものであり、その中には、本件発明1の「特定溶剤(X)」に相当する「1-ブトキシ-2-プロパノール」及び本件発明1の「特定溶剤(Y)」の一種に相当する「プロピレングリコールジアセテート」も含まれているが、「1-ブトキシ-2-プロパノール」及び「プロピレングリコールジアセテート」という特定の2種類の溶剤を選択的に組み合わせることは、具体的には記載されていない。また、引用文献1の摘記1-4には、「特に1-ブトキシ-2-プロパノール、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノールが好ましい」ことが記載され、摘記1-1の請求項3には、「一般式[I]で表されるプロピレングリコール誘導体が1-ブトキシ-2-プロパノール、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノールから選ばれる少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体である」ワニスの発明が記載されているが、この2種類の溶剤の組合せは、本件発明1における特定溶剤(X)及び(Y)の組合せとは異なるものである。さらに、引用文献1に記載された実施例(摘記1-6、1-7)を参照しても、本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せに相当する溶剤を用いた例は記載されていない。そうすると、上記相違点1は実質的な相違点である。

(ウ)小括(理由I(新規性)について)
よって、本件発明1は引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(エ)相違点1について(理由II(進歩性)について)
(エ-1)引用文献1について
引用文献1には、引用文献1に記載された発明が、「平滑なポリイミド塗膜を形成することが出来るポリイミドワニスの提供」を課題とするものであり(摘記1-2)、請求項1に記載された「一般式[I]で表されるプロピレングリコール誘導体を添加することにより、ポリイミドワニスを支持基板に対して均一かつ平坦に塗布することが可能である」ことを見出したものであること(摘記1-2の[0007])が記載されており、摘記1-4の[0018]には、「これらのプロピレングリコール誘導体は、本発明のポリイミドワニスを構成する全溶媒量の5重量%以上なければ、塗膜の平滑化に対する効果が十分ではない」ことが記載されている。
そして、上記5.(3)ア(イ)「相違点1について(理由I(新規性)について)」に記載したように、引用文献1には、引用発明1の「一般式[I]」で表されるプロピレングリコール誘導体の具体例として12種類の化合物が列記され、特に好ましい化合物として特定の2種類の化合物が記載されているところ、上記課題を勘案すると、これらの化合物は「塗膜の平滑化に対する効果」の点でいずれも同じような作用効果を期待することができるものであり、特には、「1-ブトキシ-2-プロパノール、2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノールから選ばれる少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体」が好ましい作用効果を示すものとして記載されているといえる。
しかし、引用文献1には、一般式[I]で表される多数のプロピレングリコール誘導体から、本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せに相当する特定の化合物の組合せを選択することを動機付ける具体的な記載はなく、特に好ましいとされる2種類の化合物を組み合わせても、本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せにはならない。また、実施例及び比較例の実験データを参照しても、列挙された具体的な化合物のうちの特定の2種類の溶剤の組合せを選択して用いることにより、好ましい効果が得られることは読み取れないから、当業者が本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せに相当する特定の化合物の組合せを選択することが動機付けられるものではない。
そうすると、引用文献1の記載に基づいて、複数の溶剤の組合せ、特に、「1-ブトキシ-2-プロパノール」及び「2-(2-メトキシプロポキシ)プロパノール」を組み合わせて用いることにより、上記相違点1に係る構成に至ることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(エ-2)本件発明1の効果について
引用発明1は、「一般式[I]で表される少なくとも一種のプロピレングリコール誘導体」を用いることから、形式的には本件発明の複数の溶剤の組合せを包含する上位概念の発明が記載されているとも解することができるから、本件発明1が引用発明1に対して進歩性を有する選択発明であるといえるか、検討する。
本件明細書の[0003]?[0005]には、液晶配向剤を基板に塗布する方法において、従来、オフセット印刷装置を用いた方法では、液晶パネルの大型化に伴い、塗布ムラが発生しやすいといったデメリットがあったこと、インクジェット方式による塗布によれば、大型液晶パネルの製造に際して液晶配向剤の塗布ムラの低減を図ることが可能である反面、塗布領域の端部において、液垂れや塗布量不足などに起因して膜厚が薄くなりやすいといったデメリットがあったこと、及び、膜厚不良は液晶パネルの表示ムラの原因となるため、大型液晶パネルではこれまで、パネル額縁を広く設計していたが、近年、狭額縁化を図ることが求められていることが記載されており、[0006]には、本件発明が、上記従来技術の課題に鑑みて、塗布領域の端部における膜厚不良を抑制することができる液晶配向剤を提供することを課題とするものであることが記載されている。
そして、本件明細書の[0094]の表1等に記載された実施例及び比較例では、「筋ムラ」の評価に加えて、「Halo」(塗膜端部において色調変化している部分の幅)の評価が行われており、本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の2種類の溶剤の組合せを用いた実施例では、「筋ムラ」及び「Halo」がいずれも○又は△であるのに対し、特定溶剤(X)又は(Y)のいずれか1種類を用いた場合は、いずれかの評価が×であることが読み取れるから、本件発明1は、特定溶剤(X)及び(Y)の組合せにより、「液晶配向剤の塗布ムラの低減」及び「塗布領域の端部における膜厚不良の抑制」という課題を解決することができたものと解される。
これに対し、引用文献1には、上記5.(3)ア(エ)(エ-1)「引用文献1について」に記載したように、引用発明が「塗膜の平滑化に対する効果」を有することは記載されているが、本件発明の「塗布領域の端部における膜厚不良を抑制する」ことに相当する効果については記載も示唆もされていない。また、引用文献1には、引用文献1に列記された多数の溶剤の中から特定の複数の溶剤を選択して組み合わせて用いることにより、1種類の溶剤を用いる場合を超える顕著な効果や異質の効果が得られることも記載されていない。そして、本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せにより「液晶配向剤の塗布ムラの低減」及び「塗布領域の端部における膜厚不良の抑制」の両方で高い評価が得られることが、本件特許の出願時において周知の技術的事項であったとも認められない。
そうすると、本件発明1は、上記相違点1に係る特定溶剤(X)及び(Y)の組合せの構成を備える点で、引用発明1に対して進歩性を有する選択発明をなすものといえる。

(エ-3)引用文献3との組合せについて
引用文献3には、引用発明1と共通の技術分野に属する、ポリイミドの溶液又はポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液からなり、ポリイミド系の液晶配向膜を形成するための液晶配向処理剤の発明が記載されており(摘記3-1?3-2)、「塗布性の向上した、低温での加熱によって形成されるポリイミド系の有機膜を形成できる組成物、特に低温での加熱によって液晶配向膜を形成できる液晶配向処理剤・・・を提供することを目的とする」こと(摘記3-2の[0008])、具体的には「[1]?[3]で表される化合物を溶媒として用いることにより、塗布性に優れた液晶配向処理剤を提供することができる」ことが記載されており(摘記3-3の[0118])、中でも、式[1]において、R1が炭素数4のアルキル基である場合は、「1-ブトキシ-2-プロパノール」に相当する。また、「液晶配向処理剤を塗布した際の膜の膜厚均一性や表面平滑性をさらに向上させる目的で、塗布性向上のための他の有機溶媒(以下、貧溶媒とも言う。)を含有させることができる」こと(摘記3-3の[0120])、及び「膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる貧溶媒の具体例としては・・・例えば、・・・1-ブトキシ-2-プロパノール、・・・プロピレングリコールジアセテート、・・・などの低表面張力を有する溶媒などである。これらの貧溶媒は、1種類で用いてもよく、複数種類を混合して用いてもよい」ことも記載されている(摘記3-3の[0121])。
しかし、引用文献3には、本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せに相当する特定の化合物の組合せは具体的には記載されておらず、また、例示されている多数の溶剤から、本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せに相当する特定の化合物の組合せを選択することを動機付ける具体的な記載もない。さらに、上記5.(3)ア(エ)(エ-2)「本件発明1の効果について」に記載したとおり、本件発明1は、上記相違点1に係る特定の溶剤(X)及び(Y)の組合せを用いることにより、「液晶配向剤の塗布ムラの低減」及び「塗布領域の端部における膜厚不良の抑制」という課題を解決することができたものであるのに対し、引用文献3には、特定の複数の溶剤を選択して組み合わせて用いることにより、「塗布領域の端部における膜厚不良の抑制」という効果が得られることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明1において、引用文献3に記載されたように、「液晶配向処理剤を塗布した際の膜の膜厚均一性や表面平滑性をさらに向上させる目的で」、複数種類の溶剤を組み合わせて用いることが動機付けられるとしても、具体的に上記相違点1に係る特定溶剤(X)及び(Y)の組合せを採用することが動機付けられるとはいえないし、本件発明1が引用発明1に対して選択発明をなすものであることが否定されるものでもない。

(オ)小括(理由II(進歩性)について)
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

イ 本件発明2?5について
本件発明2?5は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、本件発明1の構成要件をさらに限定する要件を備える発明である。
そこで、本件発明2?5と引用発明1とを対比、検討すると、本件発明1と同様の理由により、両者は少なくとも上記相違点1の点で実質的に相違するものであり、当該相違点については、引用文献1及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものとすることができない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、本件発明2、3は、いずれも引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、さらに、本件発明2?5は、いずれも引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

ウ 本件発明6について
本件発明6と引用発明1bとを対比すると、後者における「ポリイミドワニス」及び「液晶配向膜」は、それぞれ前者における「液晶配向剤」及び「液晶配向膜」に相当する。そして、後者における「引用発明1のポリイミドワニス」と前者における「請求項1?5のいずれか一項に記載の液晶配向剤」との一致点及び相違点については、上記5.(3)ア「本件発明1について」及び同イ「本件発明2?5について」に記載したとおりである。
そうすると、本件発明6と引用発明1bとは、少なくとも上記相違点1の点で実質的に相違するものであり、当該相違点1については、上記5.(3)ア(エ)「相違点1について(理由II(進歩性)について)」において検討したとおり、引用文献1及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものとすることができない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、さらに、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

エ 本件発明7について
本件発明7と引用発明1bとを対比すると、後者における「液晶配向膜」及び「液晶表示素子」は、それぞれ前者における「液晶配向膜」及び「液晶表示素子」に相当する。そして、後者における「引用発明1のポリイミドワニスを用いて形成された液晶配向膜」と前者における「請求項6に記載の液晶配向膜」との一致点及び相違点については、上記5.(3)ウ「本件発明6について」において検討したとおりであり、具体的には、上記5.(3)ア「本件発明1について」及び同イ「本件発明2?5について」に記載したとおりである。
そうすると、本件発明7は、引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、さらに、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

オ 理由I(新規性)及び理由II(進歩性)(その1 引用文献1を主引例とする場合)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1、5?7は、いずれも引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものではない。
また、本件発明1?7は、いずれも引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、又は引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

(4)理由I(新規性)及び理由II(進歩性)(その2 引用文献2を主引例とする場合)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明2との対比
本件発明1と引用発明2とを対比すると、後者における「ポリイミド前駆体」、「溶剤」及び「液晶配向制御膜形成用ワニス組成物」は、それぞれ前者における「ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)」、「溶剤」及び「液晶配向剤」に相当する。そうすると、両者は、
「ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)と、溶剤と、を含有する液晶配向剤。」である点で一致し、
相違点1’:溶剤が、引用発明2においては「成分A」を含有するのに対し、本件発明1においてはそのような成分を含有することが明らかでない点
相違点2’:溶剤が、本件発明1においては「1-ブトキシ-2-プロパノールである特定溶剤(X)と、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールジアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む特定溶剤(Y)」を含有するものであるのに対し、引用発明2においては、「成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも高い沸点、又は、小さい蒸気圧を有する少なくとも1種の化合物(B-1群)と、成分B群の中から選ばれ、含有する成分Aよりも低い沸点、又は、高い蒸気圧を有する少なくとも1種の化合物(B-2群)とを含有する」ものである点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、まず上記相違点2’について検討する。

(イ)相違点2’について(理由I(新規性)について)
引用発明2の「成分B群」のうち、式(1)においてR及びR’がエチル基であり、nが2である場合、本件発明1の「ジエチレングリコールジエチルエーテル・・・特定溶剤(Y)」を表し、同式(4)においてnが1であり、Rが炭素数4個を有するアルキル基である場合、本件発明1の「1-ブトキシ-2-プロパノールである特定溶剤(X)」を表す。しかし、上記相違点2’に係る構成は、当該「成分B群」の中から、「成分A」の沸点又は蒸気圧と所定の関係を有するような「B-1群用化合物」及び「B-2群用化合物」の組合せを用いるというものであるから、引用発明2の「成分B群」を表す式(1)、(4)に、それぞれ本件発明1における特定溶剤(Y)、(X)を表す場合が包含されているとしても、直ちに本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せが記載されているとはいえない。また、引用文献2の摘記2-4([0014])には、「B-1群用化合物」及び「B-2群用化合物」の具体例が記載されているが、本件発明1の「特定溶剤(Y)」に相当する化合物は、具体的には記載されていない。さらに、引用文献2の実施例及び比較例の記載を含む他の箇所を参照しても、本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)という特定の2種類の溶剤を選択的に組み合わせることは、具体的には記載されておらず、そのような組合せを動機付ける記載もない。そうすると、上記相違点2’は実質的な相違点である。

(ウ)小括(理由I(新規性)について)
よって、本件発明1は引用文献2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(エ)相違点2’について(理由II(進歩性)について)
引用文献2には、(B-1)群に加えて(B-2)群を含有する「ワニス組成物を用いる事により、カラーフィルターの損傷のない、かつ、塗布性に優れ、ワニスの乾燥速度を適度に調節し、又、溶剤の組合せによっては、有害性の小さいワニス組成物を得る事が出来る」(摘記2-3の[0010])ことが記載されており、「沸点が高いか、又は、蒸気圧が低い成分と、沸点が低いか、又は高い蒸気圧成分を適度に含有する事により、適度な乾燥性を得る事が出来る。特に、印刷法により、ワニスを塗布する場合には、溶剤の乾燥速度が早すぎると・・・膜厚が不均一になりやすい。」(摘記2-3の[0011])ことが記載されていることから、引用発明2は、溶剤の乾燥速度を調整することにより、液晶配向膜の膜厚が不均一になることを抑制することを課題の一つとする発明であると解される。
しかし、引用文献2には、(B-1)群及び(B-2)群に相当する多数の溶剤から、上記相違点2’に係る本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せに相当する特定の化合物の組合せを選択することを動機付ける具体的な記載はなく、引用文献2に記載された実施例及び比較例(摘記2-7、2-8)の実験データを参照しても、当業者が本件発明1の特定溶剤(X)及び(Y)の組合せに相当する特定の化合物の組合せを選択することが動機付けられるものではない。
また、上記5.(3)ア(エ)(エ-2)「本件発明1の効果について」に記載したとおり、本件発明1は、特定の溶剤(X)及び(Y)の組合せを用いることにより、「液晶配向剤の塗布ムラの低減」及び「塗布領域の端部における膜厚不良の抑制」という課題を解決することができたものであるのに対し、引用文献2には、特定の複数の溶剤を選択して組み合わせて用いることにより、「塗布領域の端部における膜厚不良の抑制」という効果が得られることは、記載も示唆もされていない。
さらに、引用文献3には、上記5.(3)ア(エ)(エ-3)「引用文献3との組合せについて」に記載したとおりの事項が記載されているところ、当業者が引用発明2において、引用文献3に記載されたように、「液晶配向処理剤を塗布した際の膜の膜厚均一性や表面平滑性をさらに向上させる目的で」、複数種類の溶剤を組み合わせて用いることが動機付けられるとしても、具体的に上記相違点2’に係る特定溶剤(X)及び(Y)の組合せを採用することが動機付けられるとはいえないし、本件発明1が引用発明2に対して選択発明をなすものであることが否定されるものでもない。

(オ)小括(理由II(進歩性)について)
よって、相違点1’について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

イ 本件発明2?5について
本件発明2?5は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、本件発明1の構成要件をさらに限定する要件を備える発明である。
そこで、本件発明2?5と引用発明2とを対比、検討すると、本件発明1と同様の理由により、両者は少なくとも上記相違点2’の点で相違するものであり、当該相違点については、引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものとすることができない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2?5は、いずれも引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

ウ 本件発明6について
本件発明6と引用発明2bとを対比すると、後者における「ワニス組成物」及び「液晶表示素子用液晶配向制御膜」は、それぞれ前者における「液晶配向剤」及び「液晶配向膜」に相当する。また、後者における「引用発明2のワニス組成物」と前者における「請求項1?5のいずれか一項に記載の液晶配向剤」との一致点及び相違点については、上記5.(4)ア「本件発明1について」及び同イ「本件発明2?5について」に記載したとおりである。
そうすると、本件発明6と引用発明2bとは、少なくとも上記相違点2’の点で相違するものであり、当該相違点2’については、上記5.(4)ア(エ)「相違点2’について(理由II(進歩性)について)」において検討したとおり、引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものとすることができない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、引用文献2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

エ 本件発明7について
本件発明7と引用発明2bとを対比すると、後者における「液晶表示素子用液晶配向制御膜」及び「液晶表示素子」は、それぞれ前者における「液晶配向膜」及び「液晶表示素子」に相当する。また、後者における「引用発明2のワニス組成物を用いて形成された液晶表示素子用液晶配向制御膜」と前者における「請求項6に記載の液晶配向剤」との一致点及び相違点については、上記5.(4)ウ「本件発明6について」において検討したとおりであり、具体的には、上記5.(4)ア「本件発明1について」及び同イ「本件発明2?5について」に記載したとおりである。
そうすると、本件発明7は、引用文献2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

オ 理由I(新規性)及び理由II(進歩性)(その2 引用文献2を主引例とする場合)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1、6、7は、いずれも引用文献2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものではない。
また、本件発明1?7は、いずれも引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

(5)理由I(新規性)及び理由II(進歩性)についてのまとめ
上記のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由I(新規性)(その1、その2)及び理由II(進歩性)(その1、その2)のいずれの理由によっても、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。

6.特許異議申立理由について
申立人が申し立てた申立理由は、取消理由通知に記載した理由I(新規性)(その1、その2)及び理由II(進歩性 その1)に相当するから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由はない。

7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)と、溶剤と、を含有する液晶配向剤であって、
前記溶剤が、1-ブトキシ-2-プロパノールである特定溶剤(X)と、
ジエチレングリコールジエチルエーテル、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールジアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む特定溶剤(Y)を含有する液晶配向剤。
【請求項2】
前記特定溶剤(X)と特定溶剤(Y)の合計量が全溶剤量に対して1?70重量%である請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記特定溶剤(X)の含有量が、特定溶剤(X)と特定溶剤(Y)の合計量の10?90重量%である請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
インクジェット方式による塗布用である、請求項1?3に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記重合体(A)は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応により得られる重合体であり、
前記テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及びシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-05 
出願番号 特願2014-91412(P2014-91412)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C09D)
P 1 651・ 121- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 磯崎 忠昭  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 天野 宏樹
野村 伸雄
登録日 2017-12-01 
登録番号 特許第6248784号(P6248784)
権利者 JSR株式会社
発明の名称 液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子  
代理人 日野 京子  
代理人 日野 京子  
代理人 山田 強  
代理人 山田 強  
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