ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項2号公然実施 B65D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D |
---|---|
管理番号 | 1350632 |
異議申立番号 | 異議2017-701143 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-12-05 |
確定日 | 2019-02-25 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6144506号発明「容器体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6144506号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6144506号の請求項1、3?6に係る特許を維持する。 特許第6144506号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6144506号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成25年2月26日を出願日とする特許出願であって、平成29年5月19日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行 平成29年6月7日)がされた。 その後、請求項1?6に係る特許について、平成29年12月5日に、特許異議申立人中澤佳樹(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成30年3月27日付けで取消理由が通知され、平成30年5月27日に意見書び訂正請求書が提出され、平成30年6月12日付けで申立人に対し、前記訂正請求書による訂正の請求があった旨の通知がなされ、平成30年7月13日に申立人から意見書(以下、「申立人意見書1」という。)が提出され、平成30年9月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成30年12月3日に意見書及び訂正請求書が提出され、平成30年12月6日付けで申立人に対し、前記訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があった旨の通知がなされ、平成31年1月10日に申立人から意見書(以下、「申立人意見書2」という。)が提出された。 なお、平成30年5月27日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 2.本件訂正請求についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記傾斜角変更部の位置は、前記容器体の下端から高さ20mm以下の範囲内にある」とあるのを、 「前記傾斜角変更部の位置は、前記容器体の下端から高さ20mm以下の範囲内にあり、 前記下部傾斜角は、3°?4°の範囲内にあり、かつ、前記上部傾斜角は、6°?7°の範囲内にあり、かつ、前記上部傾斜角から前記下部傾斜角を差し引いた値は、3°?4°の範囲内にある」に訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3?6も同様に訂正する。) イ.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ.訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「ことを特徴とする請求項1又は2記載の容器体」とあるのを、 「ことを特徴とする請求項1記載の容器体」に訂正する。 エ.訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「ことを特徴とする請求項1又は2記載の容器体」とあるのを、 「ことを特徴とする請求項1記載の容器体」に訂正する。 オ.訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の容器体」とあるのを、 「ことを特徴とする請求項1、3、又は4のいずれか1記載の容器体」に訂正する。 カ.訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、 「ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1記載の容器体」とあるのを、 「ことを特徴とする請求項1、3、4、又は5のいずれか1記載の容器体」に訂正する。 (2)訂正の適否 ア.一群の請求項 訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2?6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1?6による訂正は当該一群の請求項1?6に対し請求されたものである。 イ.訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「下部傾斜角」、「上部傾斜角」及び「下部傾斜角」と「上部傾斜角」の大きさの関係について、本件特許明細書の段落【0042】及び【0055】の「下部傾斜角θ1の値としては、2°?7°の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましい値は3°?4°である。下部傾斜角θ1の値が2°以上であれば、キャビティからの容器体1の離形性をよくすることができるという利点がある。下部傾斜角θ1の値が3°以上であると、この効果がより顕著になる。また、下部傾斜角θ1の値が7°以下であれば、容器体1の上部が下部に比べて必要以上に大きくなるのを抑え、載置面GRに載置する際の容器体1の安定性をよくすることができるという利点がある。下部傾斜角θ1の値が4°以下であると、この効果がより顕著になる。」との記載、段落【0043】及び【0056】の「また、上部傾斜角θ2の値としては、4°?8°の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましい値は6°?7°である。上部傾斜角θ2の値が4°以上であれば、複数の容器体1を積み重ねた容器体積層ブロック10の高さを低く抑えることができるという利点がある。上部傾斜角θ2の値が6°以上であると、この効果がより顕著になる。上部傾斜角θ2の値が8°以下であれば、容器体1の上部が下部に比べて必要以上に大きくなるのを抑え、載置面GRに載置する際の容器体1の安定性をよくすることができるという利点がある。上部傾斜角θ2の値が7°以下であると、この効果がより顕著になる。」との記載並びに段落【0044】の「上部傾斜角θ2から下部傾斜角θ1を差し引いた値である変更角φの範囲は1°?5°が好ましく、さらに好ましい値は3°?4°である。変更角φが1°以上であると、外面突起部6及び内面突起部7の高さを共に低く設定することができるという利点がある。変更角φが3°以上であると、この効果がより顕著になる。変更角φが5°以下であると、容器体積層ブロック10のスタック時における容器体1のブロッキング(最下部に位置する容器体1が抜き取られるのを抑えること)を防止し、小さな力で最下部に位置する容器体1の抜き取りを可能とすることができるという利点がある。変更角φが4°以下であると、この効果がより顕著になる。」との記載に基いて、「下部傾斜角は、3°?4°の範囲内にあ」ること、「上部傾斜角は、6°?7°の範囲内にあ」ること及び「上部傾斜角から前記下部傾斜角を差し引いた値は、3°?4°の範囲内にある」ことを限定して特定するものである。 ゆえに、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ.訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 エ.訂正事項3?6について 訂正事項3?6による訂正は、いずれも、上記訂正事項2により削除された請求項2を引用しないものとするものであって、上記削除された請求項2を引用するという不合理が生ずる記載を正すものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 上記2.のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1?6」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 【請求項1】 底面となる平面部と、 前記平面部の縁に沿って無端状に連続すると共に当該平面部との間で対象物を収容するための収容凹部を形成する側面部と、を備え、 前記側面部の外面の下部に、外側へ突出すると共に前記平面部の縁が伸びる方向へ延在された外面突起部を設け、 前記側面部の内面の下部であって、同一の他の容器体を前記収容凹部内に挿入して当該他の容器体の外面突起部を乗り越えさせることにより当該外面突起部と係合可能な内面突起部を設け、 さらに、前記挿入によって重ね合わされた2つの容器体の平面部間に所定の隙間を設定して位置決めする位置決め部を設け、 前記側面部に、前記側面部の傾斜角を変更させる傾斜角変更部を設け、 前記傾斜角変更部より下に下部傾斜角を設定し、 前記傾斜角変更部より上に上部傾斜角を設定し、 前記内面突起部を、前記下部傾斜角を設定した部分に設け、 前記傾斜角変更部の位置は、前記容器体の下端から高さ20mm以下の範囲内にあり、 前記下部傾斜角は、3°?4°の範囲内にあり、かつ、前記上部傾斜角は、6°?7°の範囲内にあり、かつ、前記上部傾斜角から前記下部傾斜角を差し引いた値は、3°?4°の範囲内にある ことを特徴とする容器体。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記外面突起部及び前記内面突起部は、前記平面部の縁に沿って無端状に連続して形成された一つの連続突起部である ことを特徴とする請求項1記載の容器体。 【請求項4】 前記外面突起部及び前記内面突起部は、前記平面部の縁に沿って適当な長さに延在されて形成された二以上の部分突起部である ことを特徴とする請求項1記載の容器体。 【請求項5】 前記外面突起部及び前記内面突起部の断面形状は、任意の曲率半径を有する半円形突起、円弧状突起又は三角形突起からなる ことを特徴とする請求項1、3、又は4のいずれか1記載の容器体。 【請求項6】 前記側面部は、前記平面部の前記収容凹部と反対側に突出するスカート部を有し、 前記スカート部の先端側に前記外面突起部を設けた ことを特徴とする請求項1、3、4又は5のいずれか1記載の容器体。 (2)取消理由(決定の予告)の概要 当審において通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 理由1 本件発明1、2、4?6は、下記の甲1?甲3からみて、その出願前に日本国内又は外国において、公然実施をされた、下記の検甲1製品により具現化された発明(以下、「検甲1発明」という。)であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができない。 理由2 本件発明1?6は、その出願前に日本国内又は外国において、公然実施をされた検甲1発明及びその出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲4?甲10に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 《証拠》 検甲1.「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0 ブルーベリー」の容器 甲1.中澤佳樹,「写真撮影報告書」,平成29年11月30日 甲2.「2012 商品のご案内 product catalog」,株式会社明治,2012年4月 甲3.地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター,「報告書」,平成29年11月29日 甲4.特開昭53-137787号公報 甲5.埼玉県産業技術総合センター,「試験成績書」,平成30年7月5日 甲6.プレスリリース「本場ブルガリアの乳酸菌で作った脂肪0タイプのフルーツヨーグルト「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0(180g)」シリーズ ブルーベリー/ストロベリー/5種類の果実ミックス/アロエ 新発売」,[online],株式会社明治,[平成30年7月3日検索],インターネット <URL:https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2012/detail/20120406_01.html> 甲7.ニュース「(株)明治とJOCオフィシャルパートナーシップ契約に合意」,[online],JOC,[平成30年7月3日検索],インターネット <URL:https://www.joc.co.jp/news/detail.html?id=1710> 甲8.「2013 商品のご案内 product catalog」,株式会社明治,2013年4月 甲9.「2014 商品のご案内 product catalog」,株式会社明治,2014年4月 甲10.「2015 商品のご案内 product catalog」,株式会社明治,2015年4月 《備考》 検甲1製品?甲4は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された検甲第1号証?甲第4号証であり、甲5?甲10は、申立人意見書1に添付された甲第5号証?甲第10号証である。 ・本件発明1、2、4?6について 検甲1発明は、公然と譲渡等の申出がなされていた発明であると認める。 本件発明1、2、4?6は、検甲1発明であり(理由1)、検甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(理由2)。 ・本件発明3について 本件発明3は、検甲1発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(理由2)。 (3)当審の判断 ア.本件発明1について (ア)証拠等の記載事項等 a.甲1(証拠2) (a)甲1には、(写真1)?(写真10)が掲載されている。 (b)甲1の(写真1)及び(写真4)から、検甲1製品の側面には、「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右上部分に「たっぷり180g」との文字が表示された部分」が表示されていることが把握される。 また、甲1の(写真2)から、検甲1製品の上面、すなわち、前記側面の上部にあたる面には、「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に「たっぷり180g」との文字が表示され、前記領域の右上部分に「New」との文字が表示された部分」が表示されていることが把握される。 b.甲2(証拠3) (a)1頁には、「2012 商品のご案内 product catalog」及び「明日をもっとおいしく meiji」と記載されている。 (b)2頁には、「INDEX 目次」及び「2012年4月現在 ※パッケージ・商品情報は変更の可能性がございます。」と記載されている。 (c)27頁(左下隅に「27」と表記されている頁)の左下部分には、以下の写真が掲載されるとともに、以下の記載事項が記載されている。 《写真》 「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右上部分に「たっぷり180g」との文字が表示された部分と、当該部分の上部に、「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に「たっぷり180g」との文字が表示され、前記領域の右上部分に「New」との文字が表示されたもの」の写真 《記載事項》 「New」、「明治 ブルガリアヨーグルト 脂肪0ブルーベリー」、「4972 0532(短縮)」 c.甲3(証拠4) (a)1頁には、以下の記載事項が記載されている。 《記載事項》 「依頼品 賞味期限 12.5.3 ヨーグルトサンプル (4972 0532)」、「依頼事項 形状、寸法測定」 (b)2頁には、図1として以下の写真が掲載されるとともに、以下の記載事項が記載されている。 《写真》 「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に「たっぷり180g」との文字が表示され、前記領域の右上部分に「New」との文字が表示されたもの」の写真(左側)及び「下側部分にブルーベリーの実等が印字され、上側部分に上下が逆さまとなった「4972 0532」との文字が印字され、3mm及び36.2mmとの文字が付され、点線で囲まれた領域が表示されたもの」の写真(右側) 《記載事項》 「1.測定箇所・測定項目 ヨーグルト容器の図1に示す箇所について、図2の断面プロフィルムに示す容器の端から角度が変わる箇所までの長さLとその角度θを測定した。」、「2.測定結果 表1 測定結果 長さL 15.01mm 角度θ 3.44°」 d.甲4(証拠5) 甲4には、図面(特に、Fig.1?10)とともに以下の記載事項が記載されている。 (a)「2.特許請求の範囲 (1)底と側壁とを含んでなるカップであり、他の同一のカップと直立姿勢で積重ね体に組立てられ得て、 (a)2つの隣接するカップの上方のカップが、引掛り合うことなく下方のカップに支持されている、 (b)2つの隣接するカップが、両者の間に空間を画定している、 (c)2つの隣接するカップは、予定された軸方向の分離力が2つのカップに加えられない限り、相互に離れる軸方向の変位を制止されている、 (d)該空間が、シールまたはニア・シールにより・・・該シールまたはニア・シールが、2つの隣接するカップの一方の周面と、2つのカップの他方の周線または周面との間の協働により与えられている、 (e)支持部がシールまたはニア・シールにより、あるいは2つのカップの別々の協働部分によって接続部に設けられている、そして (f)抑止部が、該シールまたはニア・シールにより、あるいは2つのカップの別個の協働部分により与えられている、 前記(a)?(f)の状態になるように形成されている前記底と側壁とを含むカップにおいて、・・・ (g)・・・ (h)・・・ことを特徴とする前記カップ。」(1頁左下欄3行?右下欄15行) (b)「3.発明の詳細な説明 自動販売装置で飲料物を売る1つの公知の手順では、かなりの数のカップが、-緒に入れ子式にされて積重ね体とされて装置に供給され・・・使用に際し、カップは、積重ね体の底から1つずつ外され・・・。 このようなカップは、また、カップが手により1回に1つ除去され得る分配装置(dispenser)にも使用され得る。 本発明は、これらの使用に適するカップに関する。このようなカップは、底および側壁を含んでおり1他の同一のカップとの間で直立姿勢で積重ね体に組立てられ得て・・・(2頁右上欄13行?左下欄10行) (c)「第1図に示すカップは・・・それぞれのカップは、底壁2および側壁4を有し、側壁は、底壁から上縁6へ上向き外方向へ広がる基本的な形状を有している。・・・。 第1図に示される如き多数の同一のカップが、直立姿勢で積重ね体として一緒に組立てられると、カップの相互係合は、一方のカップの壁部分Aと他方のカップの壁部分Bとの間の協働により起こる。すなわち、部分Aの内面が、積重ね体の上方の次のカップの部分Bの外面と協働し、一方、部分Bの外面が、積重ね体の下側の次のカップの部分Aの内面と協働する。積重ね体となった2つの隣接するカップの積重ね状態が、第1図に示されている。」(3頁右上欄4?19行) (d)「面8と10とは、一緒になって、壁部分Aの内部に連続的な周囲V字断面形溝を画定し、面14と16とは、一緒になって、壁部分Bの外部に連続的な周囲リブを画定する。このリブは、底壁2にすぐ隣接している。 面12は、側壁4の内部段上にある平坦な上向き面である。」(3頁左下欄2?8行) (e)「面18は、底壁の平坦外面の一部をなす。 組合せられた状態において、面12および18は、連続的な環状帯域にわたり相互係合関係にあり、よって同時にシールおよび全体的な支持部を与える。」(3頁左下欄10?15行) (f)「同時に、面8と14とは、相互係合関係にあり、予定された軸方向の分離力が2つのカップに加えられない限りカップが相互間に離れる軸方向変移に対する抑制を与える。」(3頁右下欄2?5行) (g)「第4図は、別の構造を示し、壁部分Aは、内部リブ36、38を有し、壁部分Bは、外部リブ40、42を有する。使用に際し、面38、42は、協働して面8、14と同様な機能を果たす。・・・ 第5図は、第1、2および3図に示す構造に似た構造を示しているが、リブ14a、16bが周囲で断続していることが異なる。・・・ さらに、第5図では(および第6図の詳細図では)、側壁は、面8の近傍で厚みが増加されているので、実際上、面8は、同時的に、内部溝の上方面と、上方面44を有する内部リブの下方面とである。組立てられた状態において、面44は、働きを示さないが、組立て中にリブ部14a、16bのための送り込み(lead-in)として働く。」(4頁左下欄9行?右下欄6行) e.甲5(申立人意見書に添付された甲第5号証) (a)1/11頁には、以下の記載事項が記載されている。 《記載事項》 「試験成績書」、「依頼品名 検甲第1号証 形状、寸法測定」、「依頼事項 その他の依頼試験 X線CT三次元測定器による形状測定 その他の試験 形状測定データの解析」 (b)2/11頁には、図1として以下の写真が掲載されるとともに、以下の記載事項が記載されている。 《写真》 「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字された部分と、当該部分の上部に、「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に「たっぷり180g」との文字が表示され、前記領域の右上部分に「New」との文字が表示されたもの」の写真 《記載事項》 「〇検甲第1号証 測定対象の写真を以下に示す。」 (c)3/11頁には、図2として以下の写真が掲載されている。 《写真》 「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右上部分に「たっぷり180g」との文字が表示されたもの」の写真 (d)4/11頁には、図4として以下の写真が掲載されている。 《写真》 「左側部分にブルーベリーの実等が印字され、右側部分に横書きかつ上下方向に「4972 0532」との文字が印字されたもの」の写真 (e)9/11頁には、以下の記載事項が記載されている。 「線1:任意に抽出した下端部からの点群から得られる最小二乗直線 線2:Z=15mm以上の位置より任意に抽出した点群から得られる最小二乗直線 線3:Z=15mm以上の位置より任意に抽出した点群から得られる最小二乗直線 線4:線2と線3の交点から線1へ下ろした直線(Z軸) 原点:線1と線4の交点」 「9.8°(線3と線4の交差角度)」 (f)10/11頁には、以下の記載事項が記載されている。 「線5:Z=1.25mm近傍からZ=8.25mm近傍までの位置より任意に抽出した点群から得られる最小二乗直線 線6:線3と線5の間の区間から任意に抽出した点群から得られる最小二乗直線」 「6.5°(線6と線4の交差角度)」 「6.0°(線5と線4の交差角度)」 (g)11/11頁には、以下の記載事項が記載されている。 「線7:点1(Z=0mm)と点2(Z=15mm)とを結ぶ直線」 「6.8°(線7と線4の交差角度)」 f.甲6(申立人意見書に添付された甲第6号証) 甲6の1頁には、以下の写真が掲載されるとともに、以下の記載事項が記載されている。 《写真》 「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右上部分に「たっぷり180g」との文字が表示された部分と、当該部分の上部に、「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に「たっぷり180g」との文字が表示され、前記領域の右上部分に「New」との文字が表示されたもの」の写真 《記載事項》 「プレスリリース」、「本場ブルガリアの乳酸菌で作った脂肪0タイプのフルーツヨーグルト「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0(180g)」シリーズ ブルーベリー・・・新発売」、「2012/04/06」、「株式会社 明治(・・・)は、健康的な・・・180gに仕立てた、「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0 ブルーベリー」・・・(各180g)を4月17日から、・・・を4月24日から、それぞれ全国で販売します。」 g.甲8(申立人意見書に添付された甲第8号証) (a)1頁には、「2013 商品のご案内 product catalog」及び「明日をもっとおいしく meiji」と記載されている。 (b)2頁には、「INDEX 目次」及び「2013年4月現在 ※パッケージ・商品情報は変更の可能性がございます。」と記載されている。 (c)26頁(右下隅に「26」と表記されている頁)の左下部分には、以下の写真が掲載されるとともに、以下の記載事項が記載されている。 《写真》 「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、当該部分の上部に、「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に「コク・・・(合議体注:“・・・”は不鮮明につき判読不明な文字)」との文字が表示されたもの」の写真 《記載事項》 「明治 ブルガリアヨーグルト 脂肪0ブルーベリー」、「4972 0532」 h.甲9(申立人意見書に添付された甲第9号証) (a)1頁には、「2014 商品のご案内 product catalog」及び「明日をもっとおいしく meiji」と記載されている。 (b)2頁には、「INDEX 目次」及び「2014年4月現在 ※パッケージ・商品情報は変更の可能性がございます。」と記載されている。 (c)26頁(右下隅に「26」と表記されている頁)の右中部分には、以下の写真が掲載されるとともに、以下の記載事項が記載されている。 《写真》 「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、当該部分の上部に、「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に、上記ブルーベリーの実とは別のブルーベリーの実の一房が印字されたもの」の写真 《記載事項》 「Re」、「明治 ブルガリアヨーグルト 脂肪0ブルーベリー」、「4972 0532」 i.甲10(申立人意見書に添付された甲第10号証) (a)1頁には、「2015 商品のご案内 product catalog」及び「明日をもっとおいしく meiji」と記載されている。 (b)2頁には、「INDEX 目次」及び「2015年4月現在 ※パッケージ・商品情報は変更の可能性がございます。」と記載されている。 (c)3頁(左下隅に「03」と表記されている頁)の中央右寄り部分には、以下の写真が掲載されるとともに、以下の記載事項が記載されている。 《写真》 「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、当該部分の上部に、「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された白い楕円領域であって、青色曲線が前記領域の内側に向け段階的に薄くなっており、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された紫色帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に、上記ブルーベリーの実とは別のブルーベリーの実の一房が印字されたもの」の写真 《記載事項》 「明治 ブルガリアヨーグルト 脂肪0ブルーベリー」、「4972 0532」 (イ)検甲1発明 検甲1製品を撮影した写真の報告書である甲1の(写真1)?(写真10)及び検甲1製品の形状に関する測定結果の報告書である甲3並びに甲5をみると、検甲1製品の構造等について、以下の事項が把握される。 a.(写真4)からみて、以下の図Aに示すように、検甲1製品は、平面状の底面と、当該底面の一方の面側に突出した上側側面と、前記底面の他方の面側に突出した下側側面とからなり、前記底面の縁に沿って無端状に連続する側面壁を有していること。 なお、各部品名は、本件特許異議申立書の記載をもとに付した。 《図A》 (写真4)に部品名を付した図 b.(写真5)からみて、以下の図Bに示すように、検甲1製品は、前記底面と、前記側面壁の上側側面との間に凹部を形成していること。 「ブルガリアヨーグルト」等の印刷が付されている検甲1製品((写真1)等を参照。)は、ヨーグルトを収容するための容器であり、前記凹部は、前記ヨーグルトを収容するためのものであることが明らかであること。 《図B》 (写真5)に部品名を付した図 c.(写真3)からみて、以下の図Cに示すように、検甲1製品は、前記側面壁の下側側面の角部分の先端側に、外側へ突出し、前記側面壁の周方向へ延在する第1の突起部を有しており、前記第1の突起部は、前記底面に対して、前記凹部とは反対側に存在する前記下側側面の先端側に設けられていること。 《図C》 (写真3)に部品名を付した図 d.(写真5)からみて、以下の図Dに示すように、検甲1製品は、前記側面壁の内面の角部分の下部に、前記側面壁の周方向へ延在する第2の突起部を有していること。 《図D》 (写真5)に部品名を付した図 e.(写真1)及び(写真3)からみて、検甲1製品は、下部(前記底面の存在する側)から上部に向けて拡径する逆台形形状であること。 (写真7)からみて、前記第1の突起部は、検甲1製品の最下端から約2mmの位置に設けられていること。 (写真8)からみて、前記第2の突起部は、前記底面から約3mmの位置に設けられていること。 f.(写真4)からみて、以下の図Eに示すように、検甲1製品では、前記底面が、いわゆる底上げ状態となっており、前記底面と前記下側側面の先端との間には隙間が形成されていること。 《図E》 (写真4)に部品名を付した図 g.甲3の1頁には「依頼品 賞味期限 12.5.3 ヨーグルトサンプル (4972 0532)」と記載されていること及び甲1の(写真1)、(写真2)及び(写真4)から把握される事項(上記第3.(3)ア.(ア)a.(b)を参照)並びに甲3の2頁掲載された写真(左側)(上記第3.(3)ア.(ア)c.を参照)からみて、甲3は、検甲1製品の形状及び寸法を測定した結果を示すこと。 甲3の図2及び2頁の記載事項からみて、検甲1製品の側面壁は、下側側面側の端部(側面壁の最下端)から高さ15.01mmの位置までの概略一定角度範囲の部分を基準とした場合、前記高さ15.01mmの位置から先の部分が、前記基準とした部分に対して相対的に角度3.44°で傾斜が変化し、前記容器の外側方向に拡がっていること、すなわち、前記側面壁には、高さ15.01mmの地点で傾斜角が前記地点までの概略一定角度範囲(下側傾斜角設定範囲)の部分に対し、3.44°変更された傾斜角変更点が設けられ、前記地点よりも先の範囲(上側傾斜角設定範囲)は、前記下側傾斜各設定範囲の傾斜角よりも、容器の外側方向に3.44°拡がった傾斜角が設定されていること。 h.(写真7)からみて、検甲1製品の全高は約66mmであり、上記したように、前記第2の突起部は、前記底面から約3mmの位置に設けられていることを踏まえると、第2の突起部の容器上端からの距離は約53mm(=56mm-3mm)であって、容器最下端からの高さは約13mm(=66mm-53mm)であり、前記第2の突起部は、前記下側傾斜角設定範囲に設けられていること。 i.甲5の1/11頁には「試験成績書」、「依頼品名 検甲第1号証 形状、寸法測定」、「依頼事項 その他の依頼試験 X線CT三次元測定器による形状測定 その他の試験 形状測定データの解析」と記載されていること、甲1の(写真1)、(写真2)及び(写真4)から把握される事項(上記第3.(3)ア.(ア)a.(b)を参照)、甲5の2/11頁及び3/11頁に掲載された写真(上記第3.(3)ア.(ア)e.を参照)からみて、甲5は、検甲1製品の形状及び寸法を測定した結果を示すこと。 甲5に記載された「線2」及び「線3」、「線5」?「線7」は、各々、検甲1製品の「側面壁」の「上側傾斜角設定範囲」、「側面壁」の「下側傾斜角設定範囲」に対応するものであり、検甲1製品の「側面壁」の「上側傾斜角設定範囲」における傾斜角は「9.8°」であり、同製品の「側面壁」の「下側傾斜角設定範囲」における傾斜角は「6.0?6.8°の範囲内」にあること。 j.甲1の(写真3)?(写真6)を総合的にみると、上記「第1の突起」は、周面壁の下側側面に4箇所ある角部に設けられ、上記「第2の突起」は、周面壁の内面に4箇所ある角部分の下部に設けられていること。 上記a.?j.の事項を、整理すると検甲1製品から、以下の検甲1発明が把握される。 《検甲1発明》 「平面状の底面と、 当該底面の一方の面側に突出した上側側面と、前記底面の他方の面側に突出した下側側面とからなり、前記底面の縁に沿って無端状に連続する側面壁を有し、 前記側面壁の上側側面との間に、ヨーグルトを収容するための凹部を形成しており、 前記側面壁の下側側面に4箇所ある角部分の先端側に、外側へ突出し、前記側面壁の周方向へ延在する第1の突起部を有しており、前記第1の突起部は、前記底面に対して、前記凹部とは反対側に存在する前記下側側面の先端側に設けられており、 下部(前記底面の存在する側)から上部に向けて拡径する逆台形形状であり、 前記側面壁の内面に4箇所ある角部分の下部に、前記側面壁の周方向へ延在する第2の突起部を有しており、 前記底面と前記下側側面の先端との間には隙間が形成されており、 前記側面壁には、高さ15.01mmの地点で傾斜角が前記地点までの概略一定角度範囲(下側傾斜角設定範囲)の部分に対し、3.44°変更された傾斜角変更点が設けられ、前記地点よりも先の範囲(上側傾斜角設定範囲)は、前記下側傾斜角設定範囲の傾斜角よりも、容器の外側方向に3.44°拡がった傾斜角が設定されており、 前記第2の突起部は、前記下側傾斜角設定範囲に設けられており、 前記上側傾斜角設定範囲の傾斜角は9.8°であり、 前記下側傾斜角設定範囲の傾斜角は6.0°?6.8°の範囲内である、 容器」 (ウ)検甲1発明の本件特許出願前の公然実施性 甲1の(写真1)、(写真2)及び(写真4)から把握される事項(上記3.(3)ア.(ア)a.(b)を参照)を踏まえると、検甲1製品に表示されているデザインは、甲2に掲載された写真に表示されているデザイン(上記3.(3)ア.(ア)b.(c)を参照)及び甲6に掲載された写真に表示されているデザイン(上記3.(3)ア.(ア)f.)と同じであると推認される。 そして、例えデザインが同じであっても、検甲1製品の容器構造と前記甲2に掲載された写真に示されたものや甲6に掲載された写真に示されたものの容器構造が異なることを示す証拠、すなわち、上記推認を覆す証拠等は示されていない。 ゆえに、検甲1製品は、甲2である「2012 商品のご案内 product catalog」の27頁に記載された「明治 ブルガリアヨーグルト 脂肪0ブルーベリー」なる製品及び2012年4月6日付けプレスリリースと解される甲6の1頁に記載された(上記3.(3)ア.(ア)f.を参照)「明治 ブルガリアヨーグルト 脂肪0ブルーベリー」なる製品であって、甲2及び甲6により、少なくとも本件特許の出願前である2012年4月時点で、公然と譲渡等の申出がなされていた製品であり、検甲1発明は、前記甲2及び甲6により、本件特許の出願前に公然と譲渡等の申出がなされていた発明であると解するのが自然である。 なお、特許権者は、特許権者意見書において、(ウェブ資料1)及び(ウェブ資料2)を示し、JANコード「4972 0532」及び製品名「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0 ブルーベリー」が同じであっても、検甲1製品の容器体と、甲2の容器体とが同一であることは立証できないから、検甲1発明は本件特許の出願前に公然実施された発明であるとはいえない旨を主張する。 しかしながら、上記したように、検甲1発明が本件特許出願前に公然実施されていたことは、検甲1製品に表示されているデザインと、甲2に掲載された写真に表示されているデザインとが同じであると推認され、この推認を覆す証拠等が示されていないことを判断の根拠としており、検甲1製品のJANコード「4972 0532」及び製品名「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0 ブルーベリー」の共通性を判断の根拠にしているわけではない。 そして、(ウェブ資料1)及び(ウェブ資料2)に掲載された写真は、「「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された楕円領域であって、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された帯とブルーベリーの実が印字され、当該部分の上部に、「明治 ブルガリア ヨーグルト 脂肪ゼロ」との文字が表示された楕円領域であって、前記領域の下部に「ブルーベリー」との文字が表示された帯とブルーベリーの実が印字され、前記領域の右下部分に、上記ブルーベリーの実とは別のブルーベリーの実の一房が印字されたもの」の写真であり、甲10に掲載された写真(上記3.(3)ア.(ア)i.(c)を参照)と同じデザインが表示されていると推認されるところ、(ウェブ資料2)の「購入場所 2015年10月 広島県/その他 2015年8月 北海道/イオン 2015年5月 北海道・・・」との記載、及び、甲10は2015年の製品カタログであることを踏まえると、(ウェブ資料1)及び(ウェブ資料2)は、2015年5月?10月に購入可能であった製品「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0 ブルーベリー」の写真を示すにとどまり、検甲1製品が、甲2及び甲6に記載され、2012年に購入可能であった製品「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0 ブルーベリー」とは別の製品であることを推認させるものではない。 したがって、上記特許権者の主張は採用できない。 (エ)本件発明1と検甲1発明との対比、相違点 本件発明1と検甲1発明を対比する。 検甲1発明の「平面状の底面」、「側面壁」、「ヨーグルト」、「凹部」、「容器」は、各々、本件発明1の、「底面となる平面部」、「側面部」、「対象物」、「収容凹部」、「容器体」に相当する。 また、検甲1発明は、「前記側面壁の下側側面に4箇所ある角部分の先端側に、外側へ突出し、前記側面壁の周方向へ延在する第1の突起部を有しており、前記第1の突起部は、前記底面に対して、前記凹部とは反対側に存在する前記下側側面の先端側に設けられており」、「下部(前記底面の存在する側)から上部に向けて拡径する逆台形形状であり」、「前記側面壁の内面に4箇所ある角部分の下部に、前記側面壁の周方向へ延在する第2の突起部を有しており」、「前記底面と前記下側側面の先端との間には隙間が形成されて」いるところ、このような構造を有することは、容器を積み重ねるべく、同一の他の容器を前記凹部内に挿入した際に、「第2の突起部」は、他の容器の「第1の突起部」を乗り越えさせることにより当該「第1の突起部」と係合可能となるように設けられたものであって、「前記底面と前記下側側面の先端との間には隙間が形成されて」いることは、前記挿入によって重ね合わされた2つの容器の平面状の底面間に所定の隙間を設定して位置決めするためのものであると解することが、甲4の記載事項(上記3.(3)ア.(ア)d.を参照)からみても、自然であるから、検甲1発明の「第1の突起部」、「第2の突起部」、「前記底面と前記下側側面の先端との間には隙間が形成されて」は、各々、本件発明1の「外面突起部」、「内面突起部」、「位置決め部を設け」に相当する。 そして、検甲1発明において、「高さ15.01mmの地点で傾斜角が前記地点までの概略一定角度範囲(下側傾斜角設定範囲)」の「概略一定角度」は、「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」の角度を意味すること、及び、「前記地点よりも先の範囲(上側傾斜角設定範囲)」に「設定される」、「前記下側傾斜角設定範囲の傾斜角よりも、容器の外側方向に3.44°拡がった傾斜角」は、「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」を意味することが、明らかであることを踏まえると、検甲1発明の「高さ15.01mmの地点」、「前記地点までの概略一定角度範囲(下側傾斜角設定範囲)」、「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」、「前記地点よりも先の範囲(上側傾斜角設定範囲)」、「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」は、各々、本件発明1の「傾斜角変更部」、「前記傾斜角変更部より下」及び「下部傾斜角を設定した部分」、「下部傾斜角」、「前記傾斜角変更部より上」、「上部傾斜角」に相当し、さらに、検甲1発明の「高さ15.01mmの地点で傾斜角が前記地点までの概略一定角度範囲(下側傾斜角設定範囲)の部分に対し、3.44°変更された傾斜角変更点が設けられ」は、本件発明1の「前記傾斜角変更部の位置は、前記容器体の下端から高さ20mm以下の範囲内にあり」に相当する。 してみると、本件発明1と検甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 《一致点》 底面となる平面部と、 前記平面部の縁に沿って無端状に連続すると共に当該平面部との間で対象物を収容するための収容凹部を形成する側面部と、を備え、 前記側面部の外面の下部に、外側へ突出すると共に前記平面部の縁が伸びる方向へ延在された外面突起部を設け、 前記側面部の内面の下部であって、同一の他の容器体を前記収容凹部内に挿入して当該他の容器体の外面突起部を乗り越えさせることにより当該外面突起部と係合可能な内面突起部を設け、 さらに、前記挿入によって重ね合わされた2つの容器体の平面部間に所定の隙間を設定して位置決めする位置決め部を設け、 前記側面部に、前記側面部の傾斜角を変更させる傾斜角変更部を設け、 前記傾斜角変更部より下に下部傾斜角を設定し、 前記傾斜角変更部より上に上部傾斜角を設定し、 前記内面突起部を、前記下部傾斜角を設定した部分に設け、 前記傾斜角変更部の位置は、前記容器体の下端から高さ20mm以下の範囲内にある 容器体。 《相違点》 本件発明1は「前記下部傾斜角は、3°?4°の範囲内にあり、かつ、前記上部傾斜角は、6°?7°の範囲内にあり、かつ、前記上部傾斜角から前記下部傾斜角を差し引いた値は、3°?4°の範囲内にある」のに対し、検甲1発明は「前記上側傾斜角設定範囲の傾斜角は9.8°であり、前記下側傾斜角設定範囲の傾斜角は6.0°?6.8°の範囲内である」である点。 (オ)相違点の判断 本件発明1における「上部傾斜角」及び「下部傾斜角」と、検甲1発明における「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」及び「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」は、各々、容器の「側面部」と「側面壁」の形状を規定する事項である。 そして、検甲1発明における「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」から「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」を差し引いた値は、3.0°?3.8°の範囲内となるところ、本件発明1における「上部傾斜角は、6°?7°の範囲内にあり」、「下部傾斜角は、3°?4°の範囲内にあり」及び「記上部傾斜角から前記下部傾斜角を差し引いた値は、3°?4°の範囲内にある」により規定される容器の「側面部」の形状と、検甲1発明における「上側傾斜角設定範囲の傾斜角は9.8°であり」、「下側傾斜角設定範囲の傾斜角は6.0°?6.8°の範囲内である」及び「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」から「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」を差し引いた値は、3.0°?3.8°の範囲内となることにより規定される「側面壁」の形状とは、明らかに異なるから、上記相違点は、単なる表現上の差異等ではなく、実質的な相違点である。 ゆえに、本件発明1は、検甲1発明であるとはいえない。 そして、検甲1発明における「上側傾斜角設定範囲の傾斜角は9.8°」であること及び「下側傾斜角設定範囲の傾斜角は6.0°?6.8°の範囲内である」ことは、上記3.(3)(ア)e.で示したように、検甲1製品を実測した結果(甲5の記載事項)に基づくものであるところ、検甲1発明において、なぜ「上側傾斜角設定範囲の傾斜角は9.8°」とし、「下側傾斜角設定範囲の傾斜角は6.0°?6.8°の範囲内である」としたのかということ、すなわち、これらの「傾斜角」がどのような技術的意図を持って設定されているのかは、甲1?甲10の記載事項や、申立人意見書1に添付された検甲第2号証(オリンピック版「明治ブルガリアヨーグルト 脂肪0 ブルーベリー」の容器)及び検甲第2号証の容器を写真撮影した報告書である甲第11号証(中澤佳樹,「写真撮影報告書」,平成30年7月12日)の記載事項を参酌しても、不明であるといわざるを得ない。 これに関し、申立人は、申立人意見書2において、検甲1発明における「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」や「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」の値の設定は設計的な事項であり、また、同書に添付された甲第12号証(青葉堯,「本当によくわかる射出成形金型設計入門」,日刊工業新聞社,平成22年7月16日,165?172頁。以下「甲12」という。)、甲第13号証(岡達,「プラスチック射出成形の基礎<その3>」,技能と技術,2/2000,52?58頁。以下「甲13」という。)、甲第14号証(岡達,「プラスチック射出成形の基礎<その3>」,技能と技術,社団法人雇用問題研究会,平成12年3月1日,2/2000 Vol.35,52?58頁。以下「甲14」という。)、甲第15号証(特開2004-174714号公報。以下「甲15」という。)及び甲第16号証(特開2007-276800号公報。以下「甲16」という。)の記載事項を組み合わせることにより、容易になし得た事項である旨を主張している。 確かに、甲12や甲14に掲載されていた甲13には、「抜き勾配が3°及び4°」の例が記載され、甲15には、射出成形金型を用いてコップのような底の深い容器のように立体的な形状を有する成形品の成形技術が記載され、甲16には、「胴部3の傾き角度θ1が6°」であることが記載されている。 しかしながら、そもそも、検甲1発明において、「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」及び「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」がどのようような技術的意図をもって設定されているのかが不明である以上、これらの傾斜角の値を変更することが設計的事項といえるのかも不明というべきであり、さらに、甲12?甲16の記載事項を参酌しても、これらの傾斜角の値を変更する動機付けがあるとは到底いえない。 したがって、検甲1発明における「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」を「6°?7°の範囲内」の値とし、「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」を「3°?4°の範囲内」の値とし、前記「上側傾斜角設定範囲の傾斜角」から「下側傾斜角設定範囲の傾斜角」を差し引いた値が「3°?4°の範囲内にある」ように変更することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 (カ)まとめ 以上のとおり、本件発明1は、検甲1発明であるとはいえず、また、検甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 イ.本件発明3?6について 本件発明1の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項としている、本件発明3は、上記3.(3)ア.で示した理由と同様の理由により、検甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本件発明1の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項としている、本件発明4?6は、上記3.(3)ア.で示した理由と同様の理由により、検甲1発明であるとはいえず、また、検甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 したがって、理由1及び2によって、本件発明3?6に係る特許を取り消すことはできない。 (4)小括 以上のとおり、本件発明1、4?6は、特許法第29条第1項第2号に該当せず、また、本件発明1、3?6は、同法同条第2項の規定に違反して特許されたものではないから、本件発明1、3?6に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1、3?6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、3?6に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。 そして、本件特許の請求項2は、本件訂正が認められることにより、削除されたため、本件特許の請求項2についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。 よって、本件特許の請求項2についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 したがって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 底面となる平面部と、 前記平面部の縁に沿って無端状に連続すると共に当該平面部との間で対象物を収容するための収容凹部を形成する側面部と、を備え、 前記側面部の外面の下部に、外側へ突出すると共に前記平面部の縁が伸びる方向へ延在された外面突起部を設け、 前記側面部の内面の下部であって、同一の他の容器体を前記収容凹部内に挿入して当該他の容器体の外面突起部を乗り越えさせることにより当該外面突起部と係合可能な内面突起部を設け、 さらに、前記挿入によって重ね合わされた2つの容器体の平面部間に所定の隙間を設定して位置決めする位置決め部を設け、 前記側面部に、前記側面部の傾斜角を変更させる傾斜角変更部を設け、 前記傾斜角変更部より下に下部傾斜角を設定し、 前記傾斜角変更部より上に上部傾斜角を設定し、 前記内面突起部を、前記下部傾斜角を設定した部分に設け、 前記傾斜角変更部の位置は、前記容器体の下端から高さ20mm以下の範囲内にあり、 前記下部傾斜角は、3°?4°の範囲内にあり、かつ、前記上部傾斜角は、6°?7°の範囲内にあり、かつ、前記上部傾斜角から前記下部傾斜角を差し引いた値は、3°?4°の範囲内にある ことを特徴とする容器体。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記外面突起部及び前記内面突起部は、前記平面部の縁に沿って無端状に連続して形成された一つの連続突起部である ことを特徴とする請求項1記載の容器体。 【請求項4】 前記外面突起部及び前記内面突起部は、前記平面部の縁に沿って適当な長さに延在されて形成された二以上の部分突起部である ことを特徴とする請求項1記載の容器体。 【請求項5】 前記外面突起部及び前記内面突起部の断面形状は、任意の曲率半径を有する半円形突起、円弧状突起又は三角形突起からなる ことを特徴とする請求項1、3、又は4のいずれか1記載の容器体。 【請求項6】 前記側面部は、前記平面部の前記収容凹部と反対側に突出するスカート部を有し、 前記スカート部の先端側に前記外面突起部を設けた ことを特徴とする請求項1、3、4、又は5のいずれか1記載の容器体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-02-14 |
出願番号 | 特願2013-36407(P2013-36407) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B65D)
P 1 651・ 112- YAA (B65D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 植前 津子 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
渡邊 豊英 竹下 晋司 |
登録日 | 2017-05-19 |
登録番号 | 特許第6144506号(P6144506) |
権利者 | 有限会社K・Mプランニング |
発明の名称 | 容器体 |
代理人 | 磯山 弘信 |
代理人 | 磯山 弘信 |