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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A61K
管理番号 1350644
異議申立番号 異議2018-700719  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-06 
確定日 2019-02-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6286690号発明「糖アルコール球形造粒物集合体及びその製造方法、並びに錠剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6286690号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、7、8〕について訂正することを認める。 特許第6286690号の請求項5ないし6に係る特許を維持する。 特許第6286690号の請求項1-4、7及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6286690号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成26年2月20日に出願され、平成30年2月16日にその特許権の設定登録がされ、平成30年3月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年9月6日に特許異議申立人 袴田 忠士により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年11月5日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年12月17日付けで意見書の提出及び訂正の請求を行った。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、特許請求の範囲の請求項1、2、3、4、7及び8を削除するというものである。
ここで、この訂正事項は、訂正前に引用関係を有する請求項1?4、7及び8に対して請求されたものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されている。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項1?4、7及び8を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括
したがって、上記の訂正請求による訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、7,8〕について訂正することを認める。

3.取消理由の概要
訂正前の請求項1-4、7及び8に係る特許に対し、当審が新規性及び進歩性欠如を理由とする取消理由を通知したところ、上記のとおり、これらの請求項は、すべて削除された。

4.訂正後の本件発明
本件訂正請求により、訂正前の請求項1?4、7及び8は削除され、本件訂正後の請求項5及び6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項5及び6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、これらの発明を「本件発明5」、「本件発明6」ということがある。なお、請求項5及び6の記載は、本件訂正請求により訂正されていない。)。

「【請求項5】
放出制御粒子の核粒子として用いられる糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法であって、
平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒する工程と、
前記工程で得られた造粒物に糖アルコール溶液を噴霧してコーティングする工程とを含むことを特徴とする糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法。
【請求項6】
糖アルコールの結晶粒子が解砕されたものである請求項5に記載の糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法。」

5.申立て理由の概要
特許異議申立人は、本件発明5及び6は、以下の甲1?4号証の記載から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5及び6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張する。

甲1号証:国際公開第2013/163453号
甲2号証:国際公開第2007/018057号
甲3号証:特開2009-126783号公報
甲4号証:特開2004-67670号公報

6.文献の記載
(1)甲2号証
甲2号証には、以下の事項が記載されている。
「[0001]本発明は、口腔内速崩壊錠およびその製造法に関する。・・・」
「[0018](D-マンニトール造粒物)
D-マンニトール造粒物は、粉末状D-マンニトールを造粒したものであり、上述の「賦形剤」に分類される。・・・」
「[0055]〔実施例1?2、比較例1?2〕
粉末状D-マンニトール(ROQUETTE社製、商品名「PEARLITOL35」)1.5kgを4.5kgの50℃温水に溶かし、D-マンニトール水溶液を調製した。
粉末状D-マンニトール(ROQUETTE社製、商品名「PEARLITOL35」)5kgを遠心転動造粒コーティング装置(フロイント産業(株)製、商品名「グラニュレックス GX-40」)に仕込み、これにD-マンニトール水溶液をスプレーして、遠心転動流動層造粒法により造粒し、D-マンニトール造粒物を得た。造粒物は150μmのふるいを用いてふるい分けた。レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装(株)製、商品名「マイクロトラック粒度分析計」)を用いて体積平均粒子径を測定した結果、95μmであった。」

上記の記載事項、及び「ROQUETTE社製、商品名「PEARLITOL35」」の中央粒径は約35μmであること(例えば、特表2013-544849号公報の段落【0038】を参照)を踏まえると、甲第2号証には、以下の発明が記載されていると認められる。

「口腔内速崩壊錠の賦形剤として用いられるD-マンニトール造粒物を製造する方法であって、中央粒径が約35μmの粉末状D-マンニトール(ROQUETTE社製、商品名「PEARLITOL35」)を遠心転動造粒コーティング装置に仕込み、これにD-マンニトール水溶液をスプレーして、遠心転動流動層造粒法により造粒し、D-マンニトール造粒物を製造する方法。」(以下、「甲2発明」という。)

(2)甲1号証
甲1号証には、以下の事項が記載されている(日本語訳は、当合議体で作成した。)。
「[002] 本発明は複数のマイクロスフェアを含む組成物およびその同じ物を製造する方法に関し、ここでそのマイクロスフェアは完全に球状である。本発明は、持続放出および放出調節有効医薬成分(API)マイクロスフェアの製造において、ミニ錠剤(mini-tablets)のための自由流動性賦形剤として、ならびにAPIキャリヤー分散物の製造において有用である。」
「[0068] 本発明の一部の態様において、組成物は複数のマイクロスフェアを含み、ここでそのマイクロスフェアは単一コア材料を含む。別の態様において、組成物は複数のマイクロスフェアを含み、ここでそのマイクロスフェアはコア材料を含み、かつここでそのコア材料はポリオールである。別の態様において、組成物は複数のマイクロスフェアを含み、ここでそのマイクロスフェアはコア材料を含み、かつここでそのコア材料はマンニトールである。別の態様において、組成物は複数のマイクロスフェアを含み、ここでそのマイクロスフェアはコア材料を含み、かつここでそのコア材料は100%マンニトールである。」
「[0077] 本発明のマイクロスフェアは様々な適用において有用である。1態様において、本発明のマイクロスフェアは、有効医薬成分(API)を多微粒子系として投与するための持続放出および放出調節ビーズの製造において有用である。別の態様において、本発明のマイクロスフェアはその後の錠剤への製造のためのAPIのためのキャリヤーとして有用である。」
「[0078] 一部の態様において、本発明のマイクロスフェアはその上にAPIを懸濁液または溶液または溶液と交互にして粘着性の表面を作り出すための乾燥粉末のいずれかで積層させるコアビーズとして有用であり、必要であれば機能性コーティングも適用する。一部の態様において、本発明のマイクロスフェアは、有効物質を即時放出、調節放出および/または持続放出するためのコアビーズならびに小さい袋(sachets)、カプセルおよび錠剤配合物中に含ませるためのコートされたビーズとして有用である。」

(3)甲3号証
甲3号証には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、表面に経口摂取可能な活性物質がレイヤリングされる為の球形粒及びその製造方法に関する。」
「【0028】
〔実施例1〕
まず、衝撃式微粉砕機(ACM-10A、ホソカワミクロン(株)製)を用いてD-マンニトールを平均粒子径15μmとした。
次に、得られたD-マンニトール2.4kgと、粉末セルロース(A)1.6kg(平均粒子径:24μm、長径と短径の比(L/D):3.1)とをスリットエアーを供給しながら遠心転動造粒装置(グラニュレックス GX-40、フロイント産業(株)製)に投入し、回転皿を250rpmで回転させた。
続いて水1900gを10?40g/minの速度で噴霧し、造粒を行った。このとき、水1400gおよび1600gを噴霧した時点で、それぞれ造粒物を回転させたまま10分間噴霧を停止した。更に、水1900gを噴霧し終えた後、30分間造粒物を回転させ、合計3回の中間処理を経て造粒物を得た。
最後に、得られた造粒物を、流動層造粒コーティング装置(フローコーター FLO-5、フロイント産業(株)製)内へ移し替え、この流動層装置内に90℃に設定された加熱空気を導入し、造粒物の温度が60℃になるまで乾燥させた。
その結果、真球度0.84、かさ密度0.70g/ml、粒子径75?150μmの球形粒を80%の回収率で得た。」

(4)甲4号証
甲4号証には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面平滑性が高く、摩損度の低い単一種類の物質の球形粒に関する。特に、本発明は、糖アルコール、塩化ナトリウム、ビタミンCからなり、医薬製造における造粒コーテイング用や食品用として有用な球形粒に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬用の原料として使用される球形粒は、主に徐放性製剤や腸溶性製剤のシード(seeds)として利用されている。 ・・・」
「【0051】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
攪拌造粒機(深江工業株式会社製、商品名、ハイスピードミキサーFS-25)の造粒容器にD-マンニトール粉末を3kg仕込み、D-マンニトールの20重量%水溶液を加えつつ、アジテーターとチョッパーを回転しながら攪拌造粒を行い、終了後、造粒物を取り出した。この造粒物を乾燥後、355μmから500μmに篩別して、球形造粒用の核として使用するD-マンニトール造粒物を得た。
【0052】
次に、遠心転動造粒装置(フロイント産業株式会社製、商品名、CFグラニュレーターCF-360、以下CF装置と略す)の造粒容器に、核として前記のように得られたD-マンニトール造粒物を1kg仕込み、スリットエアーを供給しながら、回転円板を180rpmで回転させた。続いて、平均粒径7.4μmのD-マンニトール粉末1kgを25g/minの供給速度でD-マンニトール造粒物に散布しつつ、D-マンニトール20重量%水溶液400mlを0.8kg/cm2 の圧力を加えながら、噴霧造粒し、湿潤状態のD-マンニトール球形粒を得た。
【0053】
次に、得られた湿潤球形粒を流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製、商品名、フローコーターFL-5、以下FL装置と略す)の造粒容器に入れ、60℃で乾燥しながら、D-マンニトールの20重量%水溶液1kgを40ml/minの速度で噴霧コーテイングした。こうして500μmから710μmのD-マンニトール球形粒が84.5%の収率で得られた。
この球形粒のアスペクト比は1.09であり、集合体としてのカサ密度は0.70g/ml、安息角は31度であった。また、この球形粒の表面は図5で示すとおり、平滑であり、摩損度は0.27%であった。」

7.当審の判断
(1)本件発明5について
本件発明5と甲2発明とを対比すると、両者は、
「糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法であって、
平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒する工程を含むことを特徴とする糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法。」の発明である点で一致し、
以下の点で相違する。

相違点:
1)糖アルコール球形造粒物が、本件発明5では「放出制御粒子の核粒子」として用いられるものであるのに対し、甲2発明では「賦形剤」として用いられるものである点
2)本件発明5では「前記工程で得られた造粒物に糖アルコール溶液を噴霧してコーティングする工程」を含むのに対し、甲2発明では当該工程を含まない点

以下、上記相違点1)及び2)について検討する。
・上記相違点1)について
甲3号証及び甲4号証には、本件発明5における「放出制御粒子の核粒子」に相当する「球形粒」の製造方法が記載されているが、当該「球形粒」が賦形剤として用いうることについての記載はない。
甲1号証には、球状のマイクロスフェアが記載され、当該「マイクロスフェア」は、有効物質を即時放出、調節放出および/または持続放出するためのコアビーズ(本願発明5における「放出制御粒子の核粒子」に相当)や、ミニ錠剤(mini-tablets)のための自由流動性賦形剤として有用であることが記載されている。
ここで、甲1号証には、同号証記載の球状のマイクロスフェアが放出制御粒子の核粒子や賦形剤として使用できることが記載されているものの、甲3号証や甲4号証の記載を見ても、糖アルコールからなる球状の粒子であれば、放出制御粒子の核粒子だけでなく賦形剤としても使用できるとまではいえない。
そうしてみると、賦形剤の製造方法である甲2発明を、「放出制御粒子の核粒子」の製造方法に転用してみることが、当業者にとって、容易に想到しうることとはいえない。
特許異議申立人は、上記相違点1)に関連して、甲1号証の記載等から、球形粒子を核粒子及び賦形剤のどちらにも適用することは、当業者にとって周知の技術である旨主張するが、かかる主張が失当であることは、上記で述べたとおりである。
したがって、相違点2)について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1?4号証に記載された事項から容易に発明することができたものとはいえない。

(2)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5に対して、さらに「糖アルコールの結晶粒子が解砕されたものである」という技術的事項を追加したものである。
よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明6は、甲1?4号証に記載された事項から容易に発明することができたものとはいえない。

8.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項5及び6に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1-4、7及び8は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による、請求項1-4、7及び8に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
放出制御粒子の核粒子として用いられる糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法であって、
平均粒子径が15μm超50μm未満である糖アルコールの結晶粒子を遠心転動装置内で転動させ、糖アルコール粉末の非存在下で、糖アルコール溶液を噴霧しながら造粒する工程と、
前記工程で得られた造粒物に糖アルコール溶液を噴霧してコーティングする工程とを含むことを特徴とする糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法。
【請求項6】
糖アルコールの結晶粒子が解砕されたものである請求項5に記載の糖アルコール球形造粒物集合体の製造方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-04 
出願番号 特願2014-30329(P2014-30329)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 112- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 基章  
特許庁審判長 光本 美奈子
特許庁審判官 藤原 浩子
滝口 尚良
登録日 2018-02-16 
登録番号 特許第6286690号(P6286690)
権利者 フロイント産業株式会社
発明の名称 糖アルコール球形造粒物集合体及びその製造方法、並びに錠剤  
代理人 廣田 浩一  
代理人 山下 武志  
代理人 流 良広  
代理人 松田 奈緒子  
代理人 流 良広  
代理人 松田 奈緒子  
代理人 廣田 浩一  
代理人 山下 武志  

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