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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1350649
異議申立番号 異議2018-700096  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-02 
確定日 2019-03-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6184550号発明「洗浄剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6184550号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、7〕、〔3?6〕について訂正することを認める。 特許第6184550号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6184550号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成28年4月28日に特許出願され、平成29年8月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成30年2月2日に特許異議申立人中島由貴(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年4月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月4日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、その訂正の請求に対して申立人から同年10月4日付けで意見書が提出され、特許権者から平成31年1月30日付けで上申書が提出されたものである。



第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(D)水溶性無機塩の含有量が0.2?1.65質量%である」とあるのを、「(D)水溶性無機塩の含有量が0.5?1.5質量%である」に訂正し(以下、「訂正事項1-1」という。)、請求項1の最後に「毛髪洗浄剤組成物」とあるのを、「毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)」に訂正する(以下、「訂正事項1-2」という。)。
また、請求項1を引用する請求項2及び7も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「(D)水溶性無機塩の含有量が0.5?1.5質量%である」とあるのを、「(D)水溶性無機塩の含有量が0.65?1.15質量%である」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「(D)水溶性無機塩の含有量が0.2?3.2質量%である」とあるのを、「(D)水溶性無機塩の含有量が0.5?1.5質量%である」に訂正し(以下、「訂正事項3-1」という。)、請求項3に「を含有する毛髪洗浄剤組成物」とあるのを、「を含有する毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)」に訂正する(以下、「訂正事項3-2」という。)。
また、請求項3を引用する請求項4?6も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「(D)水溶性無機塩の含有量が0.2?1.65質量%である」とあるのを、「(D)水溶性無機塩の含有量が0.65?1.15質量%である」に訂正する。


2 訂正の目的、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無、独立特許要件
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1-1は、請求項1における「(D)水溶性無機塩の含有量」の範囲を「0.2?1.65質量%」から「0.5?1.5質量%」に、特許請求の範囲を減縮するものである。
また、訂正事項1-2は、平成30年4月26日付けで通知された取消理由の理由3(後記第4 1を参照。)において、訂正前の請求項1に係る発明(以下、「訂正前の本件特許発明1」という。)に該当するものとして引用された発明、すなわち、本件特許出願の前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開された特許出願(先願11(特願2015-170798号(特開2017-048128号公報)))の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初」の明細書、特許請求の範囲又は図面という。また、これらを合わせて、「当初明細書等」ともいう。)の【表2】における比較例6として記載の毛髪洗浄剤組成物に係る発明を、訂正前の本件特許発明1から除外するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
請求項1を引用する請求項2及び7についても、同様に、訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件特許明細書」又は「本件特許請求の範囲」という。また、これらをまとめて「本件特許明細書等」という。)には、「前記毛髪洗浄剤組成物における前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.5?1.5質量%である、請求項1に記載の毛髪洗浄剤組成物」(本件特許請求の範囲の請求項2)及び「洗浄剤組成物における水溶性無機塩の含有量は、組成物全体に対して、0.2?3.2%であり、好ましくは0.5?1.5%であり、特に好ましくは0.6?1.2%である」(【0013】)(合議体注:【0013】における「%」が「質量%」を意味することは、本件特許明細書の【0010】に示されている。)との記載があるから、訂正事項1-1が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
また、訂正事項1-2は、上述のとおり、訂正前の本件特許発明1に該当する毛髪洗浄剤組成物に係る発明を訂正前の本件特許発明1から除外するだけのものであり、本件特許明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記アで説示したとおり、訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 独立特許要件
本件特許異議申立事件においては、請求項1、2及び7に係る特許は特許異議の申立ての対象とされているので、訂正事項1については、いわゆる独立特許要件は適用されない(特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項)。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項2における「(D)水溶性無機塩の含有量」の範囲を「0.5?1.5質量%」から「0.65?1.15質量%」に、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
本件特許明細書の【0019】の【表1】には、以下の記載がある。

表1中、実施例3?5において、「組成物中の実際の水溶性無機塩量(質量%)」の値は、それぞれ、0.65、0.90及び1.15であり、「評価結果」の「コアセルベート吸着挙動」及び「使用感試験の結果」がいずれも「特に良好」であることが示されており、「(D)水溶性無機塩の含有量」が「0.65?1.15質量%」の範囲において、「評価結果」の「コアセルベート吸着挙動」及び「使用感試験の結果」がいずれも「特に良好」であることが読み取れるから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものと認められる。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記アで説示したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 独立特許要件
本件特許異議申立事件においては、請求項2に係る特許は特許異議の申立ての対象とされているので、訂正事項2については、いわゆる独立特許要件は適用されない(特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項)。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3-1は、請求項3における「(D)水溶性無機塩の含有量」の範囲を「0.2?3.2質量%」から「0.5?1.5質量%」に、特許請求の範囲を減縮するものである。
また、訂正事項3-2は、平成30年4月26日付けで通知された取消理由の理由3(後記第4 1を参照。)において、訂正前の請求項3に係る発明(以下、「訂正前の本件特許発明3」という。)に該当するものとして引用された発明、すなわち、先願11の当初明細書等の【表2】における比較例6として記載の毛髪洗浄剤組成物の製造方法に係る発明を、訂正前の本件特許発明3から除外するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
請求項3を引用する請求項4?6についても、同様に、訂正事項3-1及び訂正事項3-2は、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
本件特許明細書には、「洗浄剤組成物における水溶性無機塩の含有量は、組成物全体に対して、0.2?3.2%であり、好ましくは0.5?1.5%であり、特に好ましくは0.6?1.2%である」(【0013】)との記載があるから、訂正事項3-1が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは明らかである。
また、訂正事項3-2は、上述のとおり、訂正前の本件特許発明3に該当する毛髪洗浄剤組成物の製造方法に係る発明を訂正前の本件特許発明3から除外するだけのものであり、本件特許明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記アで説示したとおり、訂正事項3-1及び訂正事項3-2は、特許請求の範囲を減縮するだけのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 独立特許要件
本件特許異議申立事件においては、請求項3?6に係る特許は特許異議の申立ての対象とされているので、訂正事項3については、いわゆる独立特許要件は適用されない(特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項)。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、請求項5における「(D)水溶性無機塩の含有量」の範囲を「0.2?1.65質量%」から「0.65?1.15質量%」に、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
上記(2)イで述べたところと同様に、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものと認められる。
よって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無
上記アで説示したとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮するだけものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 独立特許要件
本件特許異議申立事件においては、請求項5に係る特許は特許異議の申立ての対象とされているので、訂正事項4については、いわゆる独立特許要件は適用されない(特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項)。


3 小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、7〕、〔3?6〕について訂正することを認める。



第3 本件特許発明
本件訂正後の請求項1?7に係る発明(以下、「本件特許発明1?7」という。)は、平成30年7月4日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
(A)N-アシルサルコシン塩
(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤
(C)カチオン化ポリマー、及び
(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩の1種又は2種以上
を含有する毛髪洗浄剤組成物であって、
前記毛髪洗浄剤組成物における、
前記(A)N-アシルサルコシン塩の含有量が1.0?30質量%であり、
前記(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤の含有量が1.0?10質量%であり、
前記(C)カチオン化ポリマーの含有量が0.1?3.0質量%であり、
前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.5?1.5質量%である毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)。

【請求項2】
前記毛髪洗浄剤組成物における前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.65?1.15質量%である、請求項1に記載の毛髪洗浄剤組成物。

【請求項3】
(A)N-アシルサルコシン塩
(B)ベタイン型両性界面活性剤
(C)カチオン化ポリマー、及び
(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩の1種又は2種以上
を含有する毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)の製造方法であって、
前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された前記(B)ベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程と、
前記(A)?(D)の各成分を混合する混合工程とを備え、
前記毛髪洗浄剤組成物における、
前記(A)N-アシルサルコシン塩の含有量が1.0?30質量%であり、
前記(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤の含有量が1.0?10質量%であり、
前記(C)カチオン化ポリマーの含有量が0.1?3.0質量%であり、
前記毛髪洗浄剤組成物における前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.5?1.5質量%である、
毛髪洗浄剤組成物の製造方法。

【請求項4】
前記脱塩処理工程により、前記(B)ベタイン型両性界面活性剤における水溶性無機塩の含有量を1.5質量%以下に抑制する、請求項3に記載の毛髪洗浄剤組成物の製造方法。

【請求項5】
前記毛髪洗浄剤組成物における前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.65?1.15質量%である、請求項3に記載の毛髪洗浄剤組成物の製造方法。

【請求項6】
脱塩処理の施されていない前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を用いない、請求項3に記載の毛髪洗浄剤組成物の製造方法。

【請求項7】
脱塩処理の施されていない前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を含んでいない、請求項1に記載の毛髪洗浄剤組成物。」



第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して平成30年4月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(理由1-1(新規性))請求項1及び3?7に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び3?7に係る特許は、取り消されるべきものである。

(理由1-2(進歩性))請求項1及び3?7に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1及び3?7に係る特許は、取り消されるべきものである。

(理由2-1(新規性))請求項3、4及び6に係る発明は、引用文献9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項3、4及び6に係る特許は、取り消されるべきものである。

(理由2-2(進歩性))請求項1?7に係る発明は、引用文献9に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?7に係る特許は、取り消されるべきものである。

(理由3(拡大先願))請求項1?7に係る発明は、先願11(引用文献等11)の願書に最初に添付された明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が先願11に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、本件特許出願の出願人が先願11の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。それゆえ、請求項1?7に係る特許は、取り消されるべきものである。

<引用文献等一覧>
1.「新規両性界面活性剤 ソフタゾリンLMEB ソフタゾリンLMEB -R」パンフレット,川研ファインケミカル株式会社ライフ事業部,2 009年2月
2.“第4回化粧品産業技術展 CITE Japan 2009 出展者 技術発表会 プログラム”,[online],[2017年12月5日検索], インターネット

3.FRAGRANCE JOURNAL,2009年5月15日,第37 巻,第5号,p.89-92
4.特開2015-147824号公報
5.特開2013-155143号公報
6.特開2005-213208号公報
7.特開2014-034560号公報
8.薬事審査研究会監修,「医薬部外品原料規格2006」,第3刷,20 06年11月22日,p.1086
9.特開2003-147399号公報
10.特開2012-031112号公報
11.特願2015-170798号(特開2017-048128号公報 )
12.化学工業日報社著,「2013年版16313の化学商品」,201 3年1月29日発行,化学工業日報社発行,p.1403,p.141 2
13.花王株式会社,「エマール170J 安全データシート」,2017 年7月7日改訂
14.特開2008-179759号公報


2 引用文献の記載
引用文献1?7及び9?11には、以下の記載がある(下線は、当審合議体による。)。

(1)引用文献1
引用文献1(「新規両性界面活性剤 ソフタゾリンLMEB ソフタゾリンLMEB-R」パンフレット,川研ファインケミカル株式会社ライフ事業部,2009年2月)には、以下の記載がある。

・摘記事項1-1
「ラウリル-ミリスチル-エタノール-ベタイン(Lauryl-Myristyl-Ethanol-Betaine)
ソフタゾリンLMEBは、これまでにない新規な構造を有する、アミノ酸型の両性界面活性剤です。ソフタゾリンLMEB-Rは、LMEBの脱塩タイプです。」(第2頁上欄)

・摘記事項1-2
「ソフタゾリンLMEB-R配合。ヘアカラーの色落ちを防ぐクリアタイプヘアシャンプー(処方例)
成分 %
ソフタゾリンLMEB-R(27%) 23.5
ソイポンSLTA(30%) 14.7
ソフタゾリンCL-R(30%) 9.0
アミゼット1PC 2.5
ココイルグルタミン酸TEA(30%) 1.7
アミゾールCME 0.5
ポリクオタニウム-7(5.5%) 1.0
グリコシルトレハロース/加水分解デンプン 1.0
ポリクオタニウム-10 0.2
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド 0.1
防腐剤 適量
クエン酸 適量
精製水 to 100
pH(原液)5.9」(第3頁下欄)

・摘記事項1-3
「コアセルベートの生成領域
(コアセルベートの生成領域の表)
総界面活性剤濃度(ココイルグルタミン酸TEA+両性)20%、カチオン化セルロース0.3%、pH6.5。
原液を順次希釈して、目視で判定。

LMEB-Rは広い領域でコアセルベートの生成が見られ、なおかつ原液は透明となるためクリアタイプの処方化が可能です。」(第4頁下欄)

上記コアセルベートの生成領域の表には、LMEB-Rは、両性:アニオンの比が15:5の場合、5、10、20、50、75及び100倍の希釈倍率でコアセルベートが生成し、両性:アニオンの比が15:10の場合、5、10、20、50及び75倍の希釈倍率でコアセルベートが生成すること、並びにLMEBは、両性:アニオンの比が15:5の場合、10、20及び50倍の希釈倍率でコアセルベートが生成し、両性:アニオンの比が15:10の場合、10、20、50及び75倍の希釈倍率でコアセルベートが生成することが記載されている。

・摘記事項1-4
「ソフタゾリンLMEB、LMEB-Rの安全性、製品規格
・・・
塩化ナトリウム^(2))・・・1.0%以下
・・・
2)LMEB-Rのみ
表示名称:ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン
・・・」(第7頁下欄)

・摘記事項1-5
「・・・
2007-05- 500
2007-06- 500
2008-09- 500
2009-02-1000」
(第8頁下欄)


(2)引用文献2
引用文献2(“第4回化粧品産業技術展 CITE Japan 2009 出展者技術発表会 プログラム”,[online],[2017年12月5日検索],インターネット)には、以下の記載がある。

・摘記事項2-1
「第4回化粧品産業技術展
CITE Japan 2009
・・・
2009年3月4日(水)?6日(金)
パシフィコ横浜
・・・
3月5日(木)




(3)引用文献3
引用文献3(FRAGRANCE JOURNAL,2009年5月15日,第37巻,第5号,p.89-92)には、以下の記載がある。

・摘記事項3-1
「今回開発したソフタゾリンLMEB-RはLMEBの脱塩タイプである。」(第89頁右欄第1?2行)

・摘記事項3-2
「以上の結果を踏まえた上で、LMEB-Rの最大の特長である、ヘアカラー染色毛が褪色しにくいシャンプーを処方化した。各成分の配合量は、LMEB-R23.5%、ラウロイルサルコシンTEA14.7%、ココアンホ酢酸9.0%、POEヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド2.5%、ココイルグルタミン酸TEA1.7%、ポリクオタニウム-7 1.0%、グリコシルトレハロース/加水分解デンプン1.0%、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド0.5%、ポリクオタニウム-10 0.2%、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド0.1%、防腐剤、クエン酸適量。」(第92頁左欄第2?13行)


(4)引用文献4
引用文献4(特開2015-147824号公報)には、以下の記載がある。

・摘記事項4-1
「【0007】
・・・両性界面活性剤は、アミン化合物にモノハロカルボン酸を縮合反応させた後、反応混合物を逆浸透膜処理に供し、脱塩・濃縮させたものを使用することが好ましい。
・・・
【0018】
(B4)一般式(5)乃至は一般式(6)で示されるアミドアミン型両性界面活性剤
・・・好適例としてはソフタゾリンCL(川研ファインケミカル社製)、ソフタゾリンCH(川研ファインケミカル社製)、ソフタゾリンLHL(川研ファインケミカル社製)、ソフタゾリンNS(川研ファインケミカル社製)、ソフタゾリンCL-R(川研ファインケミカル社製)、ソフタゾリンCH-R(川研ファインケミカル社製)、ソフタゾリンLHL-R(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。」

・摘記事項4-2
「【0031】
表1配合成分の詳細
・・・
(注4) ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン(脱塩);ソフタゾリンLMEB-R(無機塩含量0.6%、Lot.No.130513)(川研ファインケミカル株式会社製)」


(5)引用文献5
引用文献5(特開2013-155143号公報)には、以下の記載がある。

・摘記事項5-1
「【0043】
(使用した原料)
A-1 :ソフタゾリンCL-R(川研ファインケミカル(株)社製(成分 含量30%))
表示名称;ココアンホ酢酸Na、水
(3)/{(1)+(3)}=0.5 無機塩含有率1%
A-2’:ソフタゾリンCL(川研ファインケミカル(株)社製(成分含量 36%))
表示名称;ココアンホ酢酸Na、水
(3)/{(1)+(3)}=0.5 無機塩含有率14%」


(6)引用文献6
引用文献6(特開2005-213208号公報)には、以下の記載がある。

・摘記事項6-1
「【0044】
(注1)川研ファインケミカル(株)製、N-ヤシ脂肪酸-N-ヒドロキシエチル-N’-カルボキシメチルエチレンジアミンナトリウム(脱塩品)、「ソフタゾリンCL-R」
・・・
【0047】
・・・
(注9) 川研ファインケミカル(株)製、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、「アミゾールCME」
(注10)川研ファインケミカル(株)製、POP(1)ヤシ脂肪酸モノイソプパノールアミド、「アミゼット1PC」」


(7)引用文献7
引用文献7(特開2014-034560号公報)には、以下の記載がある。

・摘記事項7-1
「【0013】
(A)成分のN-アシルサルコシン塩は、市販品をそのまま用いることもできる。N-ラウロイルサルコシンナトリウムの市販品としては、例えば、ソイポン SLP,SLE(商品名,何れも川研ファインケミカル社製)などを例示することができる。N-ラウロイルサルコシントリエタノールアミンの市販品としては、例えば、ソイポン SLTA(商品名,川研ファインケミカル社製)などを例示することができる。」


(8)引用文献9
引用文献9(特開2003-147399号公報)には、以下の記載がある。

・摘記事項9-1
「【請求項1】(A)一般式(1)
【化1】

[・・・]で示されるN-アシル中性アミノ酸塩 10?30重量%
(B)水溶性無機塩 1?15重量%
(C)分子内にカチオン中心或いは擬カチオン中心を持つ、両性界面活性剤、双性界面活性剤、半極性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上 0.5?30重量%を必須成分として含有し、成分(A)に対する成分(C)の比率が重量比で9/1?1/1の範囲内にあることを特徴とする液体洗浄剤組成物。」

・摘記事項9-2
「【0026】より好ましくは、水溶性無機塩における2価の陽イオン含有水溶性無機塩と1価の陽イオン含有水溶性無機塩の洗浄剤組成物に対する添加量は、2価の陽イオン含有水溶性無機塩と1価の陽イオン含有水溶性無機塩の合計添加量が1.0?15.0重量%であって、より好ましくは、2.0?12.0重量%である。合計添加量が1重量%を下回ると増粘効果が得られず、15重量%を超えて添加すると洗浄剤組成物の起泡安定性が劣化し好ましくない。」

・摘記事項9-3
「【0058】
実施例7
真珠光沢含有シャンプー
N-メチル-N-ラウロイル-βアラニンナトリウム液
(30%溶液) 20.0w/w%
N-ラウロイルサルコシンナトリウム液(30%溶液) 20.0
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル
イミダゾリニウムベタイン脱塩品(30%溶液) 17.0
POP(1)ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド 3.0
硫酸マグネシウム 2.0
塩化ナトリウム 0.5
カチオン化セルロース 0.5
塩化ジメチルアリルアンモニウム・ アクリルアミド
共重合体液(5.5%) 2.0
グリセリン 2.0
ジステアリン酸エチレングリコール 2.0
メチルパラベン 0.3
クエン酸 pH7とする量
水 100とする量

全ての成分を配合器に計り込み、80℃度まで撹拌下昇温し、30分間80度に保持した後、撹拌下30度まで冷却して真珠光沢含有シャンプー作成した。本処方の粘度は982mPa・sであり、優れた泡立ちを有する、低温安定性の優れたシャンプー組成物であった。」


(9)引用文献10
引用文献10(特開2012-031112号公報)には、以下の記載がある。

・摘記事項10-1
「【0034】
N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルアミノカルボン酸塩の具体例は、例えば、ココアンホ酢酸Na(N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンであり、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインと呼ばれることもある。)、ココアンホプロピオン酸Na(N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン)、ラウロアンホ酢酸Na(N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン)、オリーブアンホ酢酸Na、カカオ脂アンホ酢酸Na、ゴマアンホ酢酸Na、スイートアーモンドアンホ酢酸Na、ステアロアンホ酢酸塩、パームアンホ酢酸Na、ピーナッツアンホ酢酸Na、ヒマワリ種子アンホ酢酸Na、及び綿実アンホ酢酸Naを含む。」


(10)先願11(引用文献等11)
先願11(特願2015-170798号(特開2017-048128号公報))の当初明細書には、以下の記載がある。

・摘記事項11-1
「【実施例】
【0035】
本発明の効果に関して以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
表1及び表2記載の配合比率に従ってサンプルを調整した。
調製した毛髪洗浄剤組成物は下記各種測定法により、性能評価した。
・・・
【0039】
・・・
※1 花王社製;エマール170J
・・・
※3 川研ファインケミカル社製;ソフタゾリンCPB-R
・・・
※5 三晶社製;JAGUAR C-17
・・・
※11 川研ファインケミカル社製;ソイポンSLE
・・・」

・摘記事項11-2
「【0040】
【表2】
*配合数値はすべて純分%
成分
ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1)※1 14.0
コカミドプロピルベタイン※3 3.0
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド※5 0.5
ラウロイルサルコシンNa ※11 1.0
塩化ナトリウム 0.5
pH調整剤(クエン酸または苛性ソーダ) pH6.0に調整
精製水 バランス 」(【表2】の比較例6)


3 合議体の判断
(1)取消理由の理由1-1(新規性)及び理由1-2(進歩性)について
ア 引用文献1に記載の発明
(ア)引用文献1は、ソフタゾリンLMEB及びLMEB-Rのパンフレットであり、「2009-02」と記載され(摘記事項1-5)、引用文献2には、ソフタゾリンLMEB-Rについて新規界面活性剤としての発表が2009年3月に行われたことが記載され(摘記事項2-1)、2009年5月に発行された引用文献3には、ソフタゾリンLMEB-Rが、LMEBの脱塩タイプとして「今回開発」されたものであることが記載されているから(摘記事項3-1)、引用文献1は、本件特許の出願日(平成28年(2016年)4月28日)前に公知であったと認められる。

(イ)摘記事項1-2より、引用文献1には、以下の成分からなるヘアシャンプーが記載されている(以下、「引1シャンプー」という。)。
「成分 %
ソフタゾリンLMEB-R(27%) 23.5
ソイポンSLTA(30%) 14.7
ソフタゾリンCL-R(30%) 9.0
アミゼット1PC 2.5
ココイルグルタミン酸TEA(30%) 1.7
アミゾールCME 0.5
ポリクオタニウム-7(5.5%) 1.0
グリコシルトレハロース/加水分解デンプン 1.0
ポリクオタニウム-10 0.2
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド 0.1
防腐剤 適量
クエン酸 適量
精製水 to 100」

(ウ)摘記事項7-1より、「ソイポンSLTA」には、N-アシルサルコシン塩であるN-ラウロイルサルコシントリエタノールアミンが含まれているところ、引1シャンプーの「ソイポンSLTA(30%)」には、N-ラウロイルサルコシントリエタノールアミン(以下、「(a1)」成分という。)が4.4%(=14.7×0.3)含まれると計算される。

(エ)摘記事項1-1及び1-4並びに摘記事項4-2より、「ソフタゾリンLMEB-R」には、ベタイン型両性界面活性剤であるヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン(脱塩)が含まれているところ、引1シャンプーの「ソフタゾリンLMEB-R(27%)」には、ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン(脱塩)が6.3%(=23.5×0.27)含まれると計算される。
また、摘記事項4-1、摘記事項5-1、摘記事項6-1及び摘記事項10-1より、「ソフタゾリンCL-R」には、ベタイン型両性界面活性剤であるココアンホ酢酸Na(2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインと呼ばれることもある。)(脱塩)が含まれているところ、引1シャンプーの「ソフタゾリンCL-R(30%)」には、ココアンホ酢酸Na(脱塩)が2.7%(=9.0×0.3)含まれると計算される。
これらの成分(ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン(脱塩)及びココアンホ酢酸Na(脱塩))(以下、「(b1)」成分という。)の合計は、9.0%(=6.3+2.7)である。

(オ)ポリクオタニウム-7には、塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体が含まれているところ、引1シャンプーの「ポリクオタニウム-7(5.5%)」には、塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体は0.1%(=1.0×0.055)含まれると計算される。
引1シャンプーに含まれる、塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、ポリクオタニウム-10及びグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(以下、これらの成分を合わせて、「(c1)」成分という。)は、合計で0.4%(=0.1+0.2+0.1)である。

(カ)摘記事項1-4には、「ソフタゾリンLMEB-R」には塩化ナトリウムが含まれていることが記載され、摘記事項4-2には、「ソフタゾリンLMEB-R」に含まれる無機塩の含有量は0.6%であることが記載されているから、「ソフタゾリンLMEB-R」に含まれる水性無機塩(塩化ナトリウム)の含有量は0.6%であると認められる。また、摘記事項4-1には、「両性界面活性剤は、アミン化合物にモノハロカルボン酸を縮合反応させた後、反応混合物を逆浸透膜処理に供し、脱塩・濃縮させたものを使用することが好ましい」と記載され、摘記事項5-1には、「ソフタゾリンCL-R」に含まれる無機塩の含有量は1.0%であることが記載されているから、「ソフタゾリンCL-R」に含まれる水性無機塩(塩化ナトリウム)の含有量は1.0%であると認められる。それゆえ、引1シャンプーに含まれる水性無機塩(塩化ナトリウム)(以下、「(d1)」成分という。)の含有量は、0.23%(=23.5×0.006+9.0×0.01)であると計算される。

(キ)そうしてみれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明1」という。)。

「以下の成分を含むヘアシャンプー。
(a1)N-ラウロイルサルコシントリエタノールアミン:4.4%、
(b1)ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン(脱塩)及びココアンホ酢酸Na(脱塩):合計で9.0% 、
(c1)ポリクオタニウム-7中の塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、ポリクオタニウム-10及びグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:合計で0.4%
(d1)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):合計で0.23% 」

イ 本件特許発明1について
(ア)引用発明1の(a1)?(d1)成分は、それぞれ、本件特許発明1の「(A)N-アシルサルコシン塩」、「(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤」、「(C)カチオン化ポリマー」及び「(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩」に相当し、引用発明1の(a1)?(c1)の各成分の含有量は、本件特許発明1の対応する各成分の含有量の範囲に包含される。また、引用発明1の「ヘアシャンプー」は、本件特許発明1の「毛髪洗浄剤組成物」に相当し、引用発明1は、本件特許発明1から除かれている、「(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物」ではない。
そして、引1シャンプーは、「アミゼット1PC」、「ココイルグルタミン酸TEA(30%)」、「アミゾールCME」、「グリコシルトレハロース/加水分解デンプン」、「防腐剤」及び「クエン酸」といった(a1)?(d1)以外の成分を含み、引用発明1もこれらの成分を含み得るものであるが、本件特許明細書等の請求項1の記載及び【0014】の記載からみて、本件特許発明1も、(A)?(D)以外の成分を含み得るものであるから、この点は、両発明の実質的な相違点とはいえない。

(イ)そうしてみれば、両発明は、
「(A)N-アシルサルコシン塩
(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤
(C)カチオン化ポリマー、及び
(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩の1種又は2種以上
を含有する毛髪洗浄剤組成物であって、
前記毛髪洗浄剤組成物における、
前記(A)N-アシルサルコシン塩の含有量が1.0?30質量%であり、
前記(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤の含有量が1.0?10質量%であり、
前記(C)カチオン化ポリマーの含有量が0.1?3.0質量%である毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明1は、「0.5?1.5質量%」であるのに対し、引用発明1は、「0.23%」である点

(ウ)したがって、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。
また、引用文献1には、「(d1)水溶性無機塩(塩化ナトリウム)」の含有量を、「0.5?1.5質量%」とすることについて記載も示唆もない。そして、本件特許発明1は、「洗髪時に泡立ちがよく、髪が絡まず滑り性に優れ、すすぎ時に髪のきしみがなく、指通り性に優れ、使用後に髪がぱさつかず、まとまりが良好であり、良好な安定性を有する」毛髪洗浄剤組成物であり、「特に、洗髪時及びすすぎ時における毛髪の感触を向上させることが可能である」という効果を奏するものであるところ(本件特許明細書の【0005】及び【0008】)、「(D)水溶性無機塩」の含有量を「0.5?1.5質量%」とすることにより、「コアセルベートの吸着挙動」(「使用者の毛髪の感触を良好にさせる効果」に関係する性質(本件特許明細書の【0015】)及び「使用感試験の結果」が「特に良好」となるものであり(平成31年1月30日付け上申書の[本件明細書の表1のデータと追加データとを示す表](第5頁))、かかる効果は、引用文献1の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)よって、本件特許発明1に係る特許は、取消理由1-1又は1-2によって取り消すべきものではない。

ウ 本件特許発明3について
(ア)摘記事項1-2には、引1シャンプーの「処方例」が記載されているから、引用文献1には、引1シャンプーの上記成分を混合して、引1シャンプーを製造する方法が記載されているに等しいといえる。また、引用発明1の(b1)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤である「ソフタゾリンLMEB-R」及び「ソフタゾリンCL-R」が脱塩処理された製品であることは、摘記事項4-1及び4-2、摘記事項5-1、摘記事項6-1並びに摘記事項10-1の記載から明らかであり、これらに由来する水溶性無機塩の量が算出されていることも明らかである。それゆえ、引用文献1には、ベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された前記ベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程が記載されているに等しいといえる。

(イ)そうしてみれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明1’」という。)。

「以下の成分を含むヘアシャンプーの製造方法であって、
(a1)N-ラウロイルサルコシントリエタノールアミン:4.4%、
(b1)ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン(脱塩)及びココアンホ酢酸Na(脱塩):合計で9.0% 、
(c1)ポリクオタニウム-7中の塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、ポリクオタニウム-10及びグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:合計で0.4%
(d1)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):合計で0.23% 、
(b1)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された(b1)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程と、
前記(a1)?(d1)の各成分を混合する工程を備える、製造方法。」

(ウ)本件特許発明3と引用発明1’を対比すると、引用発明1’の(a1)?(d1)成分は、それぞれ、本件特許発明3の「(A)N-アシルサルコシン塩」、「(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤」、「(C)カチオン化ポリマー」及び「(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩」に相当し、引用発明1’の(a1)?(c1)の各成分の含有量は、本件特許発明3の対応する各成分の含有量の範囲に包含される。また、引用発明1’の「ヘアシャンプー」は、本件特許発明3の「毛髪洗浄剤組成物」に相当し、引用発明1’は、本件特許発明3から除かれている、「(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物」の製造方法ではない。
そして、引1シャンプーは、「アミゼット1PC」、「ココイルグルタミン酸TEA(30%)」、「アミゾールCME」、「グリコシルトレハロース/加水分解デンプン」、「防腐剤」及び「クエン酸」といった(a1)?(d1)以外の成分を含み、引用発明1’のヘアシャンプーもこれらの成分を含み得るものであるが、上記イ(ア)で述べたところと同様に、この点は、両発明の実質的な相違点とはいえない。
さらに、引用発明1’の「(b1)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された(b1)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程」及び「前記(a1)?(d1)の各成分を混合する工程」は、それぞれ、本件特許発明3の「前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された前記(B)ベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程」及び「前記(A)?(D)の各成分を混合する混合工程」に相当する。

(エ) そうしてみれば、両発明は、
「(A)N-アシルサルコシン塩
(B)ベタイン型両性界面活性剤
(C)カチオン化ポリマー、及び
(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩の1種又は2種以上
を含有する毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)の製造方法であって、
前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された前記(B)ベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程と、
前記(A)?(D)の各成分を混合する混合工程とを備え、
前記毛髪洗浄剤組成物における、
前記(A)N-アシルサルコシン塩の含有量が1.0?30質量%であり、
前記(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤の含有量が1.0?10質量%であり、
前記(C)カチオン化ポリマーの含有量が0.1?3.0質量%である、
毛髪洗浄剤組成物の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1’)水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明3は、「0.5?1.5質量%」であるのに対し、引用発明1’は、「0.23%」である点

(オ)したがって、本件特許発明3は、引用文献1に記載された発明ではない。
また、上記イで述べた理由と同様の理由で、引用文献1には、「(d1)水溶性無機塩(塩化ナトリウム)」の含有量を、「0.5?1.5質量%」とすることについて記載も示唆もなく、そのことによる効果は、引用文献1の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明3は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(カ)よって、本件特許発明3に係る特許は、取消理由1-1又は1-2によって取り消すべきものではない。

エ 本件特許発明4?6について
(ア)本件特許発明4及び6は、本件特許発明3について、それぞれ、「前記脱塩処理工程により、前記(B)ベタイン型両性界面活性剤における水溶性無機塩の含有量を1.5質量%以下に抑制する」こと、及び「脱塩処理の施されていない前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を用いない」ことを特定したものである。
しかしながら、本件特許発明4及び6は、引用発明1’と上記相違点1’で相違するから、上記ウで述べた理由と同様の理由で、本件特許発明4及び6は、引用文献1に記載された発明ではないし、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許発明5は、本件特許発明3の水溶性無機塩の含有量を「0.65?1.15質量%」に更に限定するものであり、本件特許発明5と引用発明1’は、以下の点で相違する。

(相違点2)水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明5は、「0.65?1.15質量%」であるのに対し、引用発明1’は、「0.23%」である点

したがって、本件特許発明5は、引用文献1に記載された発明ではない。
また、上記イで述べた理由と同様の理由で、引用文献1には、「(d1)水溶性無機塩(塩化ナトリウム)」の含有量を、「0.65?1.15質量%」とすることについて記載も示唆もなく、そのことによる効果は、引用文献1の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明5は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)よって、本件特許発明4?6に係る特許は、取消理由1-1又は1-2によって取り消すべきものではない。

オ 本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1について、「脱塩処理の施されていない前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を含んでいない」ことを特定したものである。
しかしながら、本件特許発明7は、引用発明1と上記相違点1で相違するから、上記イで述べた理由と同様の理由で、本件特許発明7は、引用文献1に記載された発明ではないし、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許発明7に係る特許は、取消理由1-1又は1-2によって取り消すべきものではない。


(2)取消理由の理由2-1(新規性)及び理由2-2(進歩性)について
ア 引用文献9に記載の発明
(ア)摘記事項9-3より、引用文献9には、以下の成分からなる真珠光沢含有シャンプーが記載されている(以下、「引9シャンプー」という。)。

「N-メチル-N-ラウロイル-βアラニンナトリウム液
(30%溶液) 20.0w/w%
N-ラウロイルサルコシンナトリウム液(30%溶液) 20.0
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル
イミダゾリニウムベタイン脱塩品(30%溶液) 17.0
POP(1)ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド 3.0
硫酸マグネシウム 2.0
塩化ナトリウム 0.5
カチオン化セルロース 0.5
塩化ジメチルアリルアンモニウム・ アクリルアミド
共重合体液(5.5%) 2.0
グリセリン 2.0
ジステアリン酸エチレングリコール 2.0
メチルパラベン 0.3
クエン酸 pH7とする量
水 100とする量」

(イ)引9シャンプーの「N-ラウロイルサルコシンナトリウム液(30%溶液)」には、N-アシルサルコシン塩であるN-ラウロイルサルコシンナトリウム(以下、「(a9)」成分という。)が6.0w/w%(=20.0×0.3)含まれると計算される。

(ウ)引9シャンプーの「2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン脱塩品(30%溶液)」には、ベタイン型両性界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(以下、「(b9)」成分という。)が5.1w/w%(=17.0×0.3)含まれると計算される。

(エ)引9シャンプーの「塩化ジメチルアリルアンモニウム・ アクリルアミド共重合体液(5.5%)」には、塩化ジメチルアリルアンモニウム・ アクリルアミド共重合体が0.1w/w%(=2.0×0.055)含まれると計算される。
引9シャンプーに含まれる、カチオン化セルロース及び塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(以下、これらの成分を合わせて、「(c9)」成分という。)は、合計で0.6w/w%(=0.5+0.1)である。

(オ)そうしてみれば、引用文献9には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明9」という。)。

「以下の成分を含む真珠光沢含有シャンプー。
(a9)N-ラウロイルサルコシンナトリウム:6.0重量%、
(b9)2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン:5.1重量%
(c9)カチオン化セルロース及び塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体:合計で0.6重量%
硫酸マグネシウム:2.0重量%及び塩化ナトリウム:0.5重量% 」

イ 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と引用発明9とを対比すると、引用発明9の(b9)成分は、「2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン脱塩品(30%)」として17.0重量%配合されるところ、当該脱塩品中の水溶性無機塩の含有量は、摘記事項4-1、摘記事項5-1、摘記事項6-1及び摘記事項10-1に記載のごとく、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン脱塩品の市販品として知られている「ソフタゾリンCL-R(川研ファインケミカル(株)社製(成分含量30%))表示名称;ココアンホ酢酸Na、水」の無機塩含有率(1%)と同程度であると推認されるから、「2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン脱塩品(30%)」中には、無機塩が0.17重量%程度(=17.0×0.01)含まれることになる。そうすると、引用発明9には、「硫酸マグネシウム・・・及び塩化ナトリウム」と合わせて、2.67重量%程度(=2.0+0.5+0.17)の水溶性無機塩(以下、「(d9)」成分という。)が含まれると認められる。

(イ)引用発明9の(a9)?(c9)成分は、それぞれ、本件特許発明1の「(A)N-アシルサルコシン塩」、「(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤」及び「(C)カチオン化ポリマー」に相当し、引用発明9に含まれる水溶性無機塩である(d9)成分は、本件特許発明1の「(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩」に相当する。そして、引用発明9の(a9)?(c9)の各成分の含有量は、本件特許発明1の対応する各成分の含有量の範囲に包含される。
また、引用発明9の「真珠光沢含有シャンプー」は、本件特許発明1の「毛髪洗浄剤組成物」に相当し、引用発明9は、本件特許発明1から除かれている、「(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物」ではない。
そして、引9シャンプーは、「N-メチル-N-ラウロイル-βアラニンナトリウム液(30%溶液)」、「POP(1)ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド」、「グリセリン」、「ジステアリン酸エチレングリコール」、「メチルパラベン」及び「クエン酸」といった(a9)?(d9)以外の成分を含み、引用発明9もこれらの成分を含み得るものであるが、上記(1)イ(ア)で述べた理由と同様の理由で、この点は、両発明の実質的な相違点とはいえない。

(ウ)そうしてみれば、両発明は、
「(A)N-アシルサルコシン塩
(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤
(C)カチオン化ポリマー、及び
(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩の1種又は2種以上
を含有する毛髪洗浄剤組成物であって、
前記毛髪洗浄剤組成物における、
前記(A)N-アシルサルコシン塩の含有量が1.0?30質量%であり、
前記(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤の含有量が1.0?10質量%であり、
前記(C)カチオン化ポリマーの含有量が0.1?3.0質量%である毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点3)水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明1は、「0.5?1.5質量%」であるのに対し、引用発明9は、「2.67重量%」である点

(エ)相違点3について検討すると、引用文献9には、液体洗浄剤組成物における水溶性無機塩の添加量を1?15重量%とし得ることが記載されており(摘記事項9-1及び9-2)、この範囲は、本件特許発明1の水溶性無機塩の含有量と1?1.5質量%の範囲で重複する。しかしながら、本件特許発明1は、「洗髪時に泡立ちがよく、髪が絡まず滑り性に優れ、すすぎ時に髪のきしみがなく、指通り性に優れ、使用後に髪がぱさつかず、まとまりが良好であり、良好な安定性を有する」毛髪洗浄剤組成物であり、「特に、洗髪時及びすすぎ時における毛髪の感触を向上させることが可能である」という効果を奏するものであるところ(本件特許明細書の【0005】及び【0008】)、平成31年1月30日付け上申書の[本件明細書の表1のデータと追加データとを示す表](第5頁)には、「(D)水溶性無機塩」の含有量を「0.5?1.5質量%」とすることにより、「コアセルベートの吸着挙動」及び「使用感試験の結果」が「特に良好」となることが示される一方、水溶性無機塩の含有量が1.65?3.65質量%の場合には、「コアセルベートの吸着挙動」及び「使用感試験の結果」が「良好」、「普通」あるいは「不良」であることが示されていることからみて、上記の効果は、「1?1.5質量%」との含有量を特に選択することによって初めて奏されるものと認められ、このことを踏まえれば、引用文献9の上記「1?15重量%」なる記載をもって、水溶性無機塩の含有量を「1?1.5質量%」とすることが当業者に動機付けられているとはいえないし、本件特許発明1の奏する上記の効果が引用文献9の記載から当業者が予測し得るものともいえない。
したがって、本件特許発明1は、引用文献9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ)よって、本件特許発明1に係る特許は、取消理由2-2によって取り消すべきものではない。

ウ 本件特許発明2及び7について
(ア)本件特許発明2は、本件特許発明1の水溶性無機塩の含有量を「0.65?1.15質量%」に更に限定するものであり、本件特許発明2と引用発明9は、以下の点で相違する。

(相違点4)水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明2は、「0.65?1.15質量%」であるのに対し、引用発明9は、「2.67重量%」である点

そして、上記イで述べた理由と同様の理由で、引用文献9記載から、水溶性無機塩の含有量を「1?1.15質量%」とすることは、当業者が容易に想到するものではないし、それによって奏される効果は引用文献9の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明2は、引用文献9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許発明7は、本件特許発明1について、「脱塩処理の施されていない前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を含んでいない」ことを特定したものである。
しかしながら、本件特許発明7は、引用発明9と上記相違点3で相違するから、上記イで述べた理由と同様の理由で、本件特許発明7は、引用文献9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)よって、本件特許発明2及び7に係る特許は、取消理由2-2によって取り消すべきものではない。

エ 本件特許発明3について
(ア)引用文献9には、引9シャンプーの各成分を配合して製造していることが記載されている(摘記事項9-3)。また、引用発明9の(b9)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤である「2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン脱塩品(30%)」は脱塩処理された製品であることが明らかであり、製品として統一した無機塩量とすることを必要とするから、これに由来する水溶性無機塩の量が算出されていることも明らかである。それゆえ、引用文献9には、ベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された前記ベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程が記載されているに等しいといえる。

(イ)そうしてみれば、引用文献9には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明9’」という。)。

「 以下の成分を含む真珠光沢含有シャンプーの製造方法であって、
(a9)N-ラウロイルサルコシンナトリウム:6.0重量%、
(b9)2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン:5.1重量%
(c9)カチオン化セルロース及び塩化ジメチルアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体:合計で0.6重量%
硫酸マグネシウム:2.0重量%、及び塩化ナトリウム:0.5重量%、
(b9)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された(b9)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程と、
前記(a9)?(c9)の各成分、硫酸マグネシウム及び塩化ナトリウムの各成分を配合する工程を備える、製造方法。」

(ウ)本件特許発明3と引用発明9’を対比すると、引用発明9’の(a9)?(c9)成分は、それぞれ、本件特許発明3の「(A)N-アシルサルコシン塩」、「(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤」及び「(C)カチオン化ポリマー」に相当し、引用発明9’に含まれる水溶性無機塩である(d9)成分(「2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン脱塩品(30%)」に含まれる無機塩並びに硫酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを合わせた水性無機塩)の含有量は、上記イ(ア)で述べたとおり、2.67重量%程度であり、引用発明9’の(d)成分は、本件特許発明3の「(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩」に相当する。そして、引用発明9’の(a9)?(c9)の各成分の含有量は、本件特許発明3の対応する各成分の含有量の範囲に包含される。
また、引用発明9の「真珠光沢含有シャンプー」は、本件特許発明3の「毛髪洗浄剤組成物」に相当し、引用発明9’は、本件特許発明3から除かれている、「(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物」の製造方法ではない。
そして、引9シャンプーは、「N-メチル-N-ラウロイル-βアラニンナトリウム液(30%溶液)」、「POP(1)ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド」、「グリセリン」、「ジステアリン酸エチレングリコール」、「メチルパラベン」及び「クエン酸」といった(a9)?(d9)以外の成分を含み、引用発明9’のシャンプーもこれらの成分を含み得るものであるが、上記(1)イ(ア)で述べた理由と同様の理由で、この点は、両発明の実質的な相違点とはいえない。
さらに、引用発明9’の「(b9)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された(b9)成分として配合されるベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程」及び「(a9)?(c9)の各成分、硫酸マグネシウム及び塩化ナトリウムの各成分を配合する工程」は、それぞれ、本件特許発明3の「前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された前記(B)ベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程」及び「前記(A)?(D)の各成分を混合する混合工程」に相当する。

(エ)そうしてみれば、両発明は、
「(A)N-アシルサルコシン塩
(B)ベタイン型両性界面活性剤
(C)カチオン化ポリマー、及び
(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩の1種又は2種以上
を含有する毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)の製造方法であって、
前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された前記(B)ベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程と、
前記(A)?(D)の各成分を混合する混合工程とを備え、
前記毛髪洗浄剤組成物における、
前記(A)N-アシルサルコシン塩の含有量が1.0?30質量%であり、
前記(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤の含有量が1.0?10質量%であり、
前記(C)カチオン化ポリマーの含有量が0.1?3.0質量%である、
毛髪洗浄剤組成物の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点3’)水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明3は、「0.5?1.5質量%」であるのに対し、引用発明9’は、「2.67重量%」である点

(オ)したがって、本件特許発明3は、引用文献9に記載された発明ではない。
また、上記イで述べた理由と同様の理由で、引用発明9’において、水溶性無機塩の含有量を「1?1.5質量%」とすることは、当業者が容易に想到するものではないし、それによって奏される効果は引用文献9の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明3は、引用文献9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(カ)よって、本件特許発明3に係る特許は、取消理由2-1又は2-2によって取り消すべきものではない。

オ 本件特許発明4?6について
(ア)本件特許発明4及び6は、本件特許発明3について、それぞれ、「前記脱塩処理工程により、前記(B)ベタイン型両性界面活性剤における水溶性無機塩の含有量を1.5質量%以下に抑制する」こと、及び「脱塩処理の施されていない前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を用いない」ことを特定したものである。
しかしながら、本件特許発明4及び6は、引用発明9’と上記相違点3’で相違するから、上記エで述べた理由と同様の理由で、本件特許発明4及び6は、引用文献9に記載された発明ではないし、引用文献9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許発明5は、本件特許発明3の水溶性無機塩の含有量を「0.65?1.15質量%」に更に限定するものであり、本件特許発明5と引用発明9’は、以下の点で相違する。

(相違点4’)水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明5は、「0.65?1.15質量%」であるのに対し、引用発明9’は、「2.67重量%」である点

相違点4’について検討すると、上記ウで述べた理由と同様の理由で、引用発明9’において、水溶性無機塩の含有量を「1?1.15質量%」とすることは、当業者が容易に想到するものではないし、それによって奏される効果は引用文献9の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明5は、引用文献9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)よって、本件特許発明4及び6に係る特許は、取消理由2-1又は2-2によって取り消すべきものではない。また、本件特許発明5に係る特許は、取消理由2-2によって取り消すべきものではない。


(3)取消理由の理由3(拡大先願)について
ア 先願11の当初明細書等に記載の発明
摘記事項11-1及び11-2より、先願11の当初明細書等(【表2】の比較例6)には、以下の成分からなる毛髪洗浄剤組成物が記載されており、該組成物の製造方法が各成分を混合する工程を含むことは自明である。
以下、上記毛髪洗浄剤組成物を「先願発明11」といい、各成分を混合する工程を含む上記毛髪洗浄剤組成物の製造方法を「先願発明11’」という。

「以下の成分からなる毛髪洗浄剤組成物。
ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1) 14.0 (重量%)
コカミドプロピルベタイン 3.0
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド 0.5
ラウロイルサルコシンNa 1.0
塩化ナトリウム 0.5
pH調整剤(クエン酸または苛性ソーダ) pH6.0に調整
精製水 バランス 」

イ 本件特許発明1、2及び7について
本件訂正(訂正事項1-2)により、訂正前の本件特許発明1から、「(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物」が除外され、これにより、本件特許発明1と先願発明11とは同一の発明ではなくなった。
また、本件特許発明2及び7は、本件特許発明1を更に限定したものであるから、同様に、先願発明11と同一の発明ではない。

ウ 本件特許発明3?6について
本件訂正(訂正事項3-2)により、訂正前の本件特許発明3から、「(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物」の製造方法が除外され、これにより、本件特許発明3と先願発明11’とは少なくとも製造される毛髪洗浄剤組成物自体において同一の発明とはいえないものとなった。
また、本件特許発明4?6は、本件特許発明3を更に限定したものであるから、同様に、先願発明11’と同一の発明ではない。

エ よって、本件特許発明1?7に係る特許は、取消理由3によって取り消すべきものではない。



第5 特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
申立人は、上記した引用発明1及び1’、引用発明9及び9’並びに先願発明11及び11’を、それぞれ甲第1号証、甲第9号証並びに甲第11号証に記載された発明として、下記の申立理由を主張する。

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))
請求項1?7に係る発明は、甲第1号証(引用文献1)又は甲第9号証(引用文献9)に記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))
請求項1?7に係る発明は、甲第1号証(引用文献1)及び/又は甲第9号証(引用文献9)に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(3)申立理由3(特許法第29条の2)(同法第113条第2号)
請求項1?7に係る発明は、甲第11号証(先願11の当初明細書等)に記載の発明と同一発明であるから、特許法第29条の2の規定に違反するものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。


2 合議体の判断
(1)申立理由1(新規性)について
ア 甲第1号証(引用文献1)について
(ア)本件特許発明1及び3?7について
本件特許発明1及び3?7が甲第1号証に記載された発明でないことは、上記第4 3(1)で説示したとおりである。

(イ)本件特許発明2について
水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明2は、「0.65?1.15質量%」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、「0.23%」である点で、両発明は相違するから、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明ではない。

イ 甲第9号証(引用文献9)について
(ア)本件特許発明3、4及び6について
本件特許発明3、4及び6が甲第9号証に記載された発明ではないことは、上記第4 3(2)で説示したとおりである。

(イ)本件特許発明1、2、5及び7について
水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明1、2、5及び7は、それぞれ、「0.5?1.5質量%」、「0.65?1.15質量%」、「0.65?1.15質量%」及び「0.5?1.5質量%」であるのに対し、甲第9号証に記載された発明は、「2.67重量%」である点で、両発明は相違するから、本件特許発明1、2、5及び7は、甲第9号証に記載された発明ではない。

なお、申立人は、以下のように主張する(特許異議申立書第27頁第7?10行)。
「・・・甲第9号証においては水溶性無機塩の含有量を1?15重量%とすることができることが記載されている。よって甲第9号証には(D)水溶性無機塩の含有量を0.2?1.65質量%とすることが記載されている・・・。
したがって、本件特許発明1はその構成が甲第9号証に記載された発明である・・・」

しかしながら、甲第9号証に記載された発明は、上述の第4 3(2)アで述べたとおりの発明(引用発明9)であり、水溶性無機塩の含有量は「2.67重量%」であるから、甲第9号証において水溶性無機塩の含有量を1?15重量%とすることができる旨記載されているからといって、甲第9号証に記載された発明の水溶性無機塩の含有量が「0.2?1.65質量%」であるということはできない。それゆえ、本件特許発明1は、甲第9号証に記載された発明ではない。
本件特許発明2、5及び7についても同様である。
したがって、上記申立人の主張は受け入れられない。

ウ 以上のとおり、申立理由1はいずれも採用できない。

(2)申立理由2(進歩性)について
ア 甲第1号証(引用文献1)について
(ア)本件特許発明1及び3?7について
本件特許発明1及び3?7が甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記第4 3(1)で説示したとおりである。

(イ)本件特許発明2について
水溶性無機塩の含有量が、本件特許発明2は、「0.65?1.15質量%」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、「0.23%」である点で、両発明は相違するところ、上記第4 3(1)イで述べた理由と同様の理由で、甲第1号証には、「(d1)水溶性無機塩(塩化ナトリウム)」の含有量を、「0.65?1.15質量%」とすることについて記載も示唆もなく、そのことによる効果は、甲第1号証の記載から当業者が予測し得るものではない。
したがって、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 甲第9号証(引用文献9)について
本件特許発明1?7が甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記第4 3(2)で説示したとおりである。

ウ なお、申立人は、以下のように主張する(特許異議申立書第22頁第23行?第23頁第9行)。
「ここで、本件特許発明2の構成による作用は、コアセルベート吸着挙動や使用感の最適化であることが理解できる。
しかしながら、コアセルベート吸着挙動や使用感に着目し、これらを最適化するために水溶性無機塩の含有量を調整しようとすることは当業者が通常思い付く設計事項に過ぎない。事実、甲第1号証では脱塩品であるソフタゾリンLMEB-Rを使用する場合でのコアセルベート生成確認が記載されている。
また、後述のとおり、甲第1号証組成物と同じく水溶性無機塩の含有量以外の構成を満足する実施例が開示されている甲第9号証において、水溶性無機塩の含有量を1?15重量%とすることができることが記載されている。よって、甲第9号証の記載に基づき甲第1号証組成物において水溶性無機塩の含有量を範囲内の例えば1%とすることは、当業者にとって容易である。
したがって、本件特許発明2は、甲第1号証、または甲第1号証と甲第9号証とに基づき当業者が容易に発明することができる。」

しかしながら、甲第1号証には、LMEB-R及びLMEBにおける「コアセルベートの生成領域」について記載されているが(摘記事項1-3)、これは、単にLMEB-Rのコアセルベートの生成領域を、他の界面活性剤と比較した結果を示すものに過ぎず、甲第1号証組成物(引用発明1に該当する。)中の水溶性無機塩の含有量を調整し、「コアセルベートの吸着挙動」及び「使用感試験の結果」を優れたものにすることを示すものではないし、水溶性無機塩の含有量を「0.5?1.5質量%」とすることにより、「コアセルベートの吸着挙動」及び「使用感試験の結果」が「特に良好」となることを示すものでもない。それゆえ、甲第1号証の記載は、水溶性無機塩の含有量を「0.5?1.5質量%」とすることを示唆するものではない。
また、甲第9号証における水溶性無機塩の含有量を1?15重量%とすることができる旨の記載が、水溶性無機塩の含有量を「0.5?1.5質量%」とすることを示唆するものとはいえず、「コアセルベートの吸着挙動」及び「使用感試験の結果」が「特に良好」となるとの効果が、かかる記載から当業者が予測し得るものではないことは、上記第4 3(2)イで述べたとおりである。
したがって、上記申立人の主張は受け入れられない。

エ 以上のとおり、申立理由2はいずれも採用できない。

(3)申立理由3(拡大先願)について
本件特許発明1?7が甲第11号証(先願11の当初明細書等)に記載の発明と同一の発明ではないことは、上記第4 3(3)で説示したとおりである。
よって、申立理由3は採用できない。



第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項〔1、2、7〕、〔3?6〕に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項〔1、2、7〕、〔3?6〕に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)N-アシルサルコシン塩
(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤
(C)カチオン化ポリマー、及び
(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩の1種又は2種以上
を含有する毛髪洗浄剤組成物であって、
前記毛髪洗浄剤組成物における、
前記(A)N-アシルサルコシン塩の含有量が1.0?30質量%であり、
前記(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤の含有量が1.0?10質量%であり、
前記(C)カチオン化ポリマーの含有量が0.1?3.0質量%であり、
前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.5?1.5質量%である毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)。
【請求項2】
前記毛髪洗浄剤組成物における前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.65?1.15質量%である、請求項1に記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A)N-アシルサルコシン塩
(B)ベタイン型両性界面活性剤
(C)カチオン化ポリマー、及び
(D)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムから選ばれる水溶性無機塩の1種又は2種以上
を含有する毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)ラウロイルサルコシンNa:1.0重量%、(b)コカミドプロピルベタイン:3.0重量%、(c)グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:0.5重量%、(d)水溶性無機塩(塩化ナトリウム):0.5重量%、及び、(e)ラウレス硫酸Na(EO付加モル数1):14.0重量%を含有する毛髪洗浄剤組成物を除く)の製造方法であって、
前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を脱塩し、脱塩処理された前記(B)ベタイン型両性界面活性剤に由来する水溶性無機塩の量について算出する脱塩処理工程と、
前記(A)?(D)の各成分を混合する混合工程とを備え、
前記毛髪洗浄剤組成物における、
前記(A)N-アシルサルコシン塩の含有量が1.0?30質量%であり、
前記(B)脱塩処理されたベタイン型両性界面活性剤の含有量が1.0?10質量%であり、
前記(C)カチオン化ポリマーの含有量が0.1?3.0質量%であり、
前記毛髪洗浄剤組成物における前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.5?1.5質量%である、
毛髪洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項4】
前記脱塩処理工程により、前記(B)ベタイン型両性界面活性剤における水溶性無機塩の含有量を1.5質量%以下に抑制する、請求項3に記載の毛髪洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項5】
前記毛髪洗浄剤組成物における前記(D)水溶性無機塩の含有量が0.65?1.15質量%である、請求項3に記載の毛髪洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項6】
脱塩処理の施されていない前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を用いない、請求項3に記載の毛髪洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項7】
脱塩処理の施されていない前記(B)ベタイン型両性界面活性剤を含んでいない、請求項1に記載の毛髪洗浄剤組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-18 
出願番号 特願2016-90742(P2016-90742)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 16- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 周士郎  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 阪野 誠司
長谷川 茜
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6184550号(P6184550)
権利者 クラシエホームプロダクツ株式会社
発明の名称 洗浄剤組成物  
代理人 小林 浩  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 潮 太朗  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 小林 浩  
代理人 潮 太朗  
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