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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08B
管理番号 1350651
異議申立番号 異議2018-700367  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-01 
確定日 2019-02-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6224711号発明「部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6224711号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6224711号の請求項1、3ないし10に係る特許を維持する。 特許第6224711号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6224711号の請求項1?10に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2013年8月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月24日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成29年10月13日にその特許権の設定登録がされ、同年11月1日にその特許公報が発行され、その後、平成30年5月1日に信越化学工業株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。

平成30年 7月12日付け 取消理由通知
同年10月12日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年11月13日付け 通知書
同年12月19日 意見書(特許異議申立人)

第2 訂正の適否
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である平成30年10月12日に訂正請求書を提出し、特許第6224711号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?10について訂正(以下「本件訂正」という。)することを求めた。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1、B)の「少なくとも0.20であり」を「0.24?0.49であり」に、特許請求の範囲の請求項1の「を有する、前記部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル。」を「を有し、前記エステル化セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、前記部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル。」に、それぞれ訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3中の記載「請求項1または2に記載の」を記載「請求項1に記載の」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4中の記載「請求項1?3のいずれか1項に記載の」を記載「請求項1または3に記載の」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5中の記載「請求項1?4のいずれか1項に記載の」を記載「請求項1、3?4のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6中の記載「請求項1?4のいずれか1項に記載の」を記載「請求項1、3?4のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7中の記載「請求項1?4のいずれか1項に記載の」を記載「請求項1、3?4のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8中の記載「請求項1?4のいずれか1項に記載の」を記載「請求項1、3?4のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9中の記載「請求項1?4のいずれか1項に記載の」を記載「請求項1、3?4のいずれか1項に記載の」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10中の記載「請求項1?4のいずれか1項に記載の」を記載「請求項1、3?4のいずれか1項に記載の」に訂正する。

2 本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1-1
訂正事項1に関し、訂正前の請求項1は、「少なくとも0.20であり」と規定している。これに対し、訂正後の請求項1は、「0.24?0.49であり」と規定し、下限をさらに限定し、上限を規定するものである。
訂正事項1-2
訂正事項1に関し、訂正前の請求項1は、「を有する、前記部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル。」と規定している。これに対し、訂正後の請求項1は、「を有し、前記エステル化セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、前記部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル。」と規定し、エステル化セルロースエーテルの具体的種類を特定するものである。
すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
本件の願書に添付した明細書の、
「実施例5 ・・[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XL:0.24」(段落0127、表2)、
「実施例7 ・・[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XL:0.49」(段落0127、表2)、
「実施例1?8のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートト(HPMCAS)の生産」(段落0105)、
なる記載から明らかであるように、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項2は訂正前の請求項2を削除するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項3は訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項4は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項4は訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項5は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項5は訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項6は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項6は訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項7は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項7は訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項8は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項8は訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項9は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項9は訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更について
上記アに記載したとおり、訂正事項10は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

新規事項の追加について
上記アに記載したとおり、訂正事項10は訂正前の請求項2の削除に伴って従属先の範囲を減縮するものであることから明らかであるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(11)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成30年12月19日付けの意見書において、「「本件訂正発明1」と称された訂正後の請求項1に係る発明は、
「部分的架橋結合型エステル化セルロースエーテルであって、
A)Rが二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aが水素またはカチオンである、式-C(O)-R-COOAの基、または脂肪族一価アシル基と式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせを有し、ならびに、
B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが少なくとも0.24?0.49であり、
ここで、Wf(100k超)は、100,000g/molを超えるエステル化セルロースエーテルの総重量分率であり、Wf(100k超)XLは、前記エステル化セルロースエーテルの生産後に前記-COOA基をメチルエステル化に供したエステル化セルロースエーテルの、100,000g/molを超える重量分率であり、ここで、Wf(100k超)およびWf(100k超)XLを、溶離液としてテトラヒドロフランおよびポリスチレン較正標準物を用いたサイズ排除クロマトグラフィーで決定するような、分子量分布を有し、前記エステル化セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、前記部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル。」
である。
エステル化セルロースをHPMCASとしたため、Rは-CH_(2)-CH_(2)-となる。したがって、Rが芳香族炭化水素基である場合が不明であるため、本件訂正発明1の範囲は不明確であり、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明3?120も不明確である。」と主張する。
しかし、HPMCASは、Rが-CH_(2)-CH_(2)-である化合物であり、Rが二価脂肪族である場合に相当するから、Rが芳香族炭化水素基である場合には当たらない。したがって、本件訂正後の請求項1に係る発明の範囲は明確であり、本件訂正後の請求項1に係る発明を引用する本件訂正後の請求項3?10に係る発明も明確である。
したがって、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

なお、訂正事項1に係る訂正前の請求項1について、請求項2?10は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって訂正前の請求項1?10に対応する訂正後の請求項1?10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(12)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び6項の規定に適合する。
したがって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項1?10について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1、3?10に係る発明は、平成30年8月22日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3?10に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」、「本件発明3」?「本件発明10」ともいう。)である。

「【請求項1】
部分的架橋結合型エステル化セルロースエーテルであって、
A)Rが二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aが水素またはカチオンである、式-C(O)-R-COOAの基、または脂肪族一価アシル基と式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせを有し、ならびに、
B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが少なくとも0.24?0.49であり、
ここで、Wf(100k超)は、100,000g/molを超えるエステル化セルロースエーテルの総重量分率であり、Wf(100k超)XLは、前記エステル化セルロースエーテルの生産後に前記-COOA基をメチルエステル化に供したエステル化セルロースエーテルの、100,000g/molを超える重量分率であり、
ここで、Wf(100k超)およびWf(100k超)XLを、溶離液としてテトラヒドロフランおよびポリスチレン較正標準物を用いたサイズ排除クロマトグラフィーで決定するような、分子量分布を有し、前記エステル化セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、前記部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
20℃の0.43重量%水性NaOH中の、エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、最大4.0mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載のエステル化セルロースエーテル。
【請求項4】
40体積部のアセトニトリルならびに50mMのNaH_(2)PO_(4)および0.1MのNaNO_(3)を含む60体積部の水性緩衝液の混合物を移動相として用いたSEC-MALLSによって測定される、80,000ダルトン?350,000ダルトンの重量平均分子量M_(w)を有する、請求項1または3に記載のエステル化セルロースエーテル。
【請求項5】
液体希釈剤、および、少なくとも1つの、請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテルを含む、組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの、請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテルに、少なくとも1つの活性成分を含む、固体分散物。
【請求項7】
請求項6に記載の固体分散物を生産するプロセスであって、a)少なくとも1つの、請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、およびc)1つ以上の添加剤を混合する工程、ならびにその混合物を押出成型する工程を含む、前記プロセス。
【請求項8】
請求項6に記載の固体分散物を生産するプロセスであって、a)少なくとも1つの、請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、c)1つ以上の添加剤、およびd)液体希釈剤を混合して液体組成物を調製する工程、ならびに前記液体希釈剤を取り除く工程を含む、前記プロセス。
【請求項9】
請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテルがコーティングされている、調製物。
【請求項10】
請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテルを含む、カプセルシェル。」

第4 取消理由の概要
当審が平成30年7月12日付けの取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由
(1)特許法第29条第2項について
ア 本件特許の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?2に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 本件特許の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5号証に記載された事項を組み合わせて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項3に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。

ウ 本件特許の請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第6号証に記載された事項を組み合わせて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項4に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。

エ 本件特許の請求項5および9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された事項を組み合わせて、または甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項5および9に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。

オ 本件特許の請求項6?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第7号証に記載された事項を組み合わせて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項6?8に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。

カ 本件特許の請求項10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第8号証に記載された事項を組み合わせて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項10に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。

そして、甲第1?8号証として、以下のものが挙げられている。
甲第1号証:米国特許第4226981号
甲第2号証:特開平5-339301号公報
甲第3号証:信越化学工業社技術資料「医薬品添加剤一覧」の表紙、第3頁、第12頁および裏表紙、平成2年6月発行
甲第4号証:日本薬局方外医薬品成分規格1989の書名頁、第1402?1407頁および発行年頁、平成元年4月1日発行
甲第5号証:1986年「第十一改正日本薬局方」の書名頁、第166?167頁および発行年頁
甲第6号証:Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743、平成23年7月30日オンライン公開
甲第7号証:特表2008-501009号公報
甲第8号証:米国特許出願公開第2012/0161364号明細書

(2)特許法第36条第6項第1号について
ア エステル化セルロースエーテルの種類について
本件明細書の実施例1?8に、エステル化セルロースエーテルとしてHPMCASが製造されているだけであり、本件発明1?10は、当業者がその課題を解決できると認識できる範囲を超えており、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合せず、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、請求項1?10に係る発明の特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ [Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLと非溶解性粒子の低減について
本件発明の課題である非溶解性粒子の低減を評価する方法さえも記載されておらず、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが少なくとも0.20であれば、非溶解性粒子の量が減少する技術常識もないため、課題が解決されたかも不明であり、本件発明1?10は、当業者がその課題を解決できると認識できる範囲を超えており、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合せず、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、請求項1?10に係る発明の特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)特許法第36条第4項第1号について
ア エステル化セルロースエーテルの種類について
上記(3)アで述べたのと同様の理由により、本件発明1?10について、発明の詳細な説明の記載は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1?10は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ [Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLと非溶解性粒子の低減について
上記(3)イで述べたのと同様の理由により、本件発明1?10について、発明の詳細な説明の記載は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1?10は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 当審が平成30年7月12日付けの取消理由通知で通知した取消理由
理由1 特許法第36条第4項第1号について
どのようにして本件発明1で特定される全ての範囲の[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLを有する部分架橋結合型エステル化セルロースエーテルを製造することができるかは不明であり、また、HPMCASと同様に他のエステル化セルロースエーテルが製造できることについて反応機構を含めた理論的な説明はなく、きわめて広範な範囲を含む本件発明1で定義されるすべてのエステル化セルロースエーテルについて製造できると当業者が理解できず、本件の請求項1?10に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない。
よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由2 特許法第36条第6項第1号について
きわめて広範な範囲を含む本件発明1で定義されるすべてのエステル化セルロースエーテルについて製造できると当業者が理解できず、どのようにして本件発明1で特定される全ての範囲の[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLを有する部分架橋結合型エステル化セルロースエーテルを製造することができるかは不明であるから、本件発明1で特定される全ての範囲の[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLを有する部分架橋結合型エステル化セルロースエーテルを当業者が理解できず、本件の請求項1?10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
1 平成30年7月12日付けの取消理由通知で通知した取消理由について
(1)特許法第36条第4項第1号について
ア はじめに
特許制度は、発明を公開する代償として、一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから、明細書には、当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。実施可能要件を定める趣旨は、明細書の発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されていない場合には、発明が公開されていないことに帰し、発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからであると解される。
そして、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、物の発明について上記の実施可能要件を充足するためには、明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。

イ 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、請求項の内容の実質的な繰り返し記載の他、以下の記載がある。
「【0057】
セルロースエーテルを、i)ジカルボン酸無水物またはii)脂肪族モノカルボン酸無水物およびジカルボン酸無水物の組み合わせと反応させる。好ましいジカルボン酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸および無水フタル酸から成る群から選択される。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、無水酢酸、無水酪酸および無水プロピオン酸から成る群から選択される。ジカルボン酸無水物および脂肪族モノカルボン酸無水物を組み合わせて使用する場合は、2つの無水物は同時に反応容器内に導入してもよく、または、別々に次から次へ導入してもよい。反応容器内に導入される各無水物の量を、最終生成物で得られるエステル化の所望する度合いによって決定し、通常は、エステル化による無水グルコース単位の所望するモル置換度の計算量の1?10倍である。ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位との間のモル比は、一般的に0.1/1以上、および好ましくは0.13/1以上である。ジカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位との間のモル比は一般的に1.5/1以下、および好ましくは1/1以下である。モノカルボン酸の無水物を使用する場合、脂肪族モノカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位との間のモル比は一般的に、0.9/1以上、および好ましくは1.0/1以上である。脂肪族モノカルボン酸の無水物とセルロースエーテルの無水グルコース単位との間のモル比は通常、8/1以下、好ましくは6/1以下、およびさらに好ましくは4/1以下である。本発明のプロセスで用いられるセルロースエーテルの無水グルコース単位のモル数を、DS(アルコキシル)およびMS(ヒドロキシアルコキシル)から置換無水グルコース単位の平均分子量を計算することで、出発材料として使用されるセルロースエーテルの重量から決定し得る。
【0058】
セルロースエーテルのエステル化は好ましくは、酢酸、プロピオン酸または酪酸といった、反応希釈剤としての脂肪族カルボン酸中で実行される。反応希釈剤は、室温では液体であり、セルロースエーテルと反応しない、ベンゼン、トルーエン、1,4-ジオキサンもしくはテトラヒドロフラン;またはジクロロメタンまたはジクロロメチルエーテルといったハロゲン化C_(1)-C_(3)誘導体といった、芳香族または脂肪族溶媒といった他の溶媒または希釈剤を少量含み得るが、脂肪族カルボン酸の量は、反応希釈剤の総重量に基づき、好ましくは50%超、さらに好ましくは少なくとも75%、および、よりさらに好ましくは少なくとも90%である。
【0059】
最も好ましくは、反応希釈剤は、脂肪族カルボン酸から成る。モル比(脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は通常(4.9/1.0)?(11.5/1.0)、さらに好ましくは(5.0/1.0)?(10.0/1.0)、さらに好ましくは(5.5/1.0)?(9.0/1.0)、および最も好ましくは(5.8/1.0)?(9.0/1.0)である。
【0060】
エステル化反応は通常エステル化触媒の存在下、好ましくは、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムといったアルカリ金属カルボン酸塩の存在下で行われる。モル比(アルカリ金属カルボン酸塩/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は通常、(0.4/1.0)?(3.8/1.0)、および好ましくは(1.5/1.0)?(3.5/1.0)である。
【0061】
最も好ましくは、モル比(脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は、(4.9/1.0)?(11.5/1.0)であり、(アルカリ金属カルボン酸塩/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は、(0.4/1.0)?(3.3/1.0)であり、モル比(脂肪族モノカルボン酸の無水物/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は(0.9/1)?(3.0/1)であり、および、モル比(ジカルボン酸の無水物/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は(0.1/1)?(0.6/1)である。
【0062】
特に好ましくは、モル比(脂肪族モノカルボン酸の無水物/ジカルボン酸の無水物)は、(3.5/1)?(8.8/1)であり、モル比(脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は(4.9/1.0)?(11.5/1.0)である。」
「【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】



ウ 判断
(ア)本件発明1、3、4について
本件発明1、3、4は、HPMCASに限定され、「[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが少なくとも0.24?0.49であ」るものである。
発明の詳細な説明には、どのようにして、本件発明1、3、4に係るヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートの上記「[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLを調整するかについての具体的な記載はないものの、モル比(脂肪族カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位)(【0059】)、エステル化触媒であるアルカリ金属カルボン酸塩についてのモル比(アルカリ金属カルボン酸塩/ヒドロキシアルキルメチルセルロースの無水グルコース単位)(【0060】)、モル比(無水酢酸/無水コハク酸)(【0057】、反応温度、反応時間等(以上をまとめて「物性、反応条件」という。)に関する記載がある(【0063】)。
さらに、発明の詳細な説明には、実施例1?8として、本件発明1、3、4のヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートについての記載、比較実施例A?Jとして、本件発明1、3、4に該当しないヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートについての記載がある(表1?3)。
そして、これらの記載に接した当業者であれば、ヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートの[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLは、上記物性、反応条件を変更することによって変えることができることは明らかであり、実施例において、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが0.24?0.49であるものが得られていることからすると、実施例・比較実施例として記載された具体的な物質を基準として、上記物性、反応条件を変更することによって、実施例に記載された[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが0.24?0.49である範囲内である本件発明1、3、4のヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートが得ることができるといえる。

よって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1、3、4を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(イ)本件発明5?10について
本件発明5?10は、本件発明1、3、4を引用するものであり、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLについて、本件発明1、3、4と同じ特定がされているから、本件発明1、3、4と同様に、得ることができるものであるといえる。
よって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明5?10を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成30年12月19日付けの意見書において、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLをどのように調整するか依然として不明である旨、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが0.24?0.49である任意のDOS_(AC)、DOS_(S)を有するHPMCASを製造する方法が依然として不明である旨主張する。
しかしながら、上記ウ(ア)で述べたとおり、発明の詳細な説明には、上記物性、反応条件についての記載があり、具体的な実施例の記載もあるから、上記物性、反応条件を変更することによって、実施例に記載された[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの範囲内である本件発明1、3、4の0.24?0.49の[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLのヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートが得られるといえる。
[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが0.24?0.49である任意のDOS_(AC)、DOS_(S)を有するHPMCASを製造する方法が依然として不明である点については、DOS_(AC)、DOS_(S)は本件発明の特定事項ではないので、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが0.24?0.49である任意のDOS_(AC)、DOS_(S)を有するHPMCASまで要求されるものではない。
したがって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(2)特許法第36条第6項第1号について
本件訂正により、本件発明1、3?10はいずれもエステル化セルロースエーテルがヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートとなり、本件発明1、3?10について、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。
また、上記(1)で述べたとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、本件発明1、3、4の[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLのヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートを得ることができるといえるから、本件発明1、3?10は発明の詳細な説明に記載したものといえる。
特許異議申立人は、平成30年12月19日付けの意見書において、上記(1)エと同様の主張をするが、当該主張については、上記(1)エで述べたとおりであり、採用することができない。

2 特許異議申立人が申し立てた理由について
(1)特許法第29条第2項について
ア 引用刊行物等及びその記載事項
甲第1号証:米国特許第4226981号
甲第2号証:特開平5-339301号公報
甲第3号証:信越化学工業社技術資料「医薬品添加剤一覧」の表紙、第3頁、第12頁および裏表紙、平成2年6月発行
甲第4号証:日本薬局方外医薬品成分規格1989の書名頁、第1402?1407頁および発行年頁、平成元年4月1日発行
甲第5号証:1986年「第十一改正日本薬局方」の書名頁、第166?167頁および発行年頁
甲第6号証:Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 56(2011)743、平成23年7月30日オンライン公開
甲第7号証:特表2008-501009号公報
甲第8号証:米国特許出願公開第2012/0161364号明細書

(ア)甲第1号証の記載事項(訳文で示す。)
a1)「実施例1 1Lのかくはん機付反応容器に、ヒドロキシプロピルセルロース(グルコース単位1個あたりのヒドロキシプロポキシル基置換数0.27、メトキシ基置換数1.85)50g、酢酸250g、酢酸ナトリウム50g、さらに第1表に示す量の無水コハク酸および無水酢酸を仕込み、85℃で3時間エステル化反応させた。反応後、反応液にその約10倍量の水を加えて反応生成物を析出させた。析出プロダクトをろ過し、十分に水洗し、乾燥したところ、表1の試料1?5に示すグルコース単位1個あたりの置換度を有する酸性サクシニル基またはアセチル基を持つプロダクトが得られた。」(第6欄第31?49行)
a2「

」(第7?8欄)

(イ)甲第2号証の記載事項
b1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固形医薬品の腸溶性コーティング剤、写真フィルムのアンチハレーション用バインダなどとして有用なカルボン酸エステル系セルロース誘導体の製造方法に関する。」
b2「【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1?3
双軸撹拌機を有する51ニーダ型反応機にヒドロキシプロピルメチルセルロース400gと、表1に示す量の酢酸、無水フタル酸、酢酸ナトリウムを仕込み、85℃で3時間、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと無水フタル酸とを反応させた。ヒドロキシプロピルメチルセルロースには、グルコース単位1個当りのヒドロキシプロポキシル基置換数0.24、メトキシル基置換数1.87のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた。
【0021】次いで、反応液にその約5倍重量の水を徐々に加えて反応生成物を析出させ、その析出物を十分に水洗、乾燥した。得られた析出物を分析した結果、生成物はグルコース1個当りの2-カルボキシ-ベンゾイル基の置換数がいずれも0.65のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラートだった。酢酸、無水フタル酸、酢酸ナトリウムの各仕込み量と無水フタル酸の反応効率を表1に示す。酢酸の仕込量の減少に従い無水フタル酸の反応効率が高くなっていることが分かった。
【0022】
【表1】



(ウ)甲第3号証の記載事項
c1 第3頁にHPMCASとしてAS-LFまたはLG、AS-MFまたはMG、AS-HFまがはHGを記載し、第12頁に日本薬局方外医薬品成分規格(局外規 としてこれらの粘度が「2.4?3.6cSt」と記載する。

(エ)甲第4号証の記載事項
d1「ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
・・・
粘度 本品を乾燥し、その2.000gをとり、希水酸化ナトリウム試薬を加えて100.0gとし、栓をして30分間絶えず振り混ぜて溶かす.この液につき20±0.1°で粘度測定法により試験を行うとき、本品の粘度は表示単位の80?120%である.」(第1402頁第1行?第1403頁第12行)

(オ)甲第5号証の記載事項
e1「水酸化ナトリウム試薬、希 水酸化ナトリウム4.3gに新たに煮沸し冷却した水を加えて溶かし、1000mlとする.用時製する(0.1N).」第167頁第4?5行

(カ)甲第6号証の記載事項(訳文で示す。)
f1「ヒプロメロース(HPMCと略す。CAS9004-65-3)およびヒプロメロースアセテートサクシネート(CAS71138-97-1、アセチル/スクシノイルの比を変えて3つのサブクラス-LF、-MF、-HF)は、日本国東京の信越化学工業社から購入した。」第744頁左欄第17?21行
f2「表2 PEOX30K、HPMC及びHPMCASの測定重量平均分子量(単位g/molで表されるMw)の記述統計
・・・ HPMCAS-LF HPMCAS-MF HPMCAS-HF
平均値 134,145 130,458 281,463
・・・
」(第747頁)

(キ)甲第7号証の記載事項
g1「【請求項1】
薬物と高分子とを含む組成物であって、該高分子はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)であり、かつ該HPMCASのアセチル基の置換度(DOS_(AC))とスクシノイル基の置換度(DOS_(S))が次の条件を満たすことを特徴とする組成物:
DOS_(S)≧約0.02、
DOS_(AC) ≧約0.65、および
DOS_(AC) + DOS_(S) ≧約0.85。」
g2「【0116】
非晶質固体分散体
別の実施形態では、難溶性薬物と高分子を組み合わせて非晶質固体分散体を形成させる。「非晶質固体分散体」は難溶性薬物の少なくとも一部分が非晶質体として高分子中に分散している固形物をいう。非晶質固体分散体が好ましいのは、非晶質固体分散体はしばしばin vitroおよびin vivo使用環境中で高溶出薬物濃度を実現しうるためである。」
g3「【0124】
薬物の融点が比較的低く、一般に約200℃未満好ましくは約160℃未満であるときは、熱および/または機械エネルギーをもたらす押出法または溶融-凝固法がしばしば、ほぼ完全に非晶質である分散体の形成に適する。たとえば薬物と高分子を、水を加えてまたは水を加えずに、混合し、混合物を2軸押出機に送る。処理温度は、高分子の置換度や水を加える場合は水の量により決定される薬物と高分子の融点次第で約50℃?約200℃の間でもよい。一般に薬物と高分子の融点が高くなるほど処理温度も高くなる。一般に処理温度は、満足な(ほぼ完全に非晶質であり、実質的に一様である)分散体を生成する限りで、最も低くする。」
g4「【0126】
非晶質固体分散体を調製する別の方法は「溶媒処理」法であり、薬物と高分子を共通溶媒で溶解させるものである。溶媒が「共通」であるとは、溶媒が、化合物の混合体でもよいが、薬物と高分子の両方を溶解させることを意味する。薬物と高分子の両方が溶解したら、溶媒は留去するか、または非溶媒と混合して除去する。例示的な方法にはスプレードライ、スプレーコート(パンコーティング、流動層コーティングなど)、高分子および薬物溶液とCO2、水、または他の何らかの非溶媒とを急速に混合して沈殿させる方法などがある。好ましくは、溶媒が除去されると実質的に一様な非晶質固体分散体が形成される結果となる。溶媒法が好ましいが、それは実質的に一様な非晶質固体分散体がしばしば形成されるためである。」
g5「【0173】
添加物と剤形
組成物を錠剤、カプセル剤、懸濁用粉末剤、クリーム剤、経皮パッチ剤、デポ剤などに製剤化するには、組成物に他の添加物を加えるのが有用な場合もあろう。薬物と高分子との組成物は、該薬物を実質的に変性させない限りどんな方法でも、他剤形の成分に加えることもできる。本発明の組成物が非晶質固体分散体の形をとる場合には、添加物は該分散体と物理的に混合してもおよび/または該分散体に含有させてもよい。」
g6「【0215】
分散体17
50wt%薬物1と50wt%高分子10の非晶質固体分散体を、スプレードライ法により次の要領で調製した。高分子10(6gm)を メタノール1000mLに加え、それにTHFを1000mL加えた。混合物をかき混ぜ、沸点近くまで約45分間加熱し、高分子を溶解させた。混合物は高分子を全量加えた後はやや濁った。混合物を室温に冷まし、6gmの薬物1を加え、かき混ぜながら溶解させた。このスプレー液を高圧ポンプで、高圧ノズル(Schlick 3.5)付きスプレードライヤー(NiroタイプXP Portable Spray-Dryer + Liquid-Feed Process Vessel(PSD-1))に送った。PSD-1は9インチの乾燥延長室を設けて、ドライヤー内滞留時間を延ばし、生成物がドライヤーの、角度の付いた部分に到達する前に乾燥してしまうようにした。スプレードライヤーはまた、1/16インチのドリルホールを設け開口面積1%とした316 SS円形拡散板を備えていた。この小開口面積は乾燥ガスの流れをスプレードライヤー内の生成物の再循環の抑制に振り向けた。作業中、ノズルは拡散板と同一平面にあった。スプレー液のノズルへの給送にはBran + Lubbe N-P31高圧ポンプを使用した。ポンプの後ろにはノズル部の脈動を抑制するためのパルセーションダンパーを設けた。スプレー液のスプレードライヤーへの送液圧力は300psig、送液量は約100g/分であった。拡散板越しに乾燥ガス(窒素ガスなど)を130℃の入口温度で循環させた。蒸発溶媒と乾燥ガスは65℃の出口温度でスプレードライヤーを出た。調製された非晶質固体分散体はサイクロンで回収し、真空デシケーターで事後乾燥した。」

(ク)甲第8号証の記載事項(訳文で示す)
h1「1.腸溶性基剤、カプセル成形補助剤及び中和剤を含む腸溶性硬質カプセル用水性組成物。
2.前記腸溶性基剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の腸溶性硬質カプセル用水性組成物。
・・・
11.腸溶性基剤、カプセル成形補助剤及び中和剤を水に溶解させた後、常温で熟成させて水性組成物を製造する段階と、
前記水性組成物を前記水性組成物のゲル化温度より低い第1温度まで予熱させる段階と、
前記ゲル化温度より高い第2温度に加熱したモールドピンを、前記水性組成物内に浸漬する段階と、
前記モールドピンを前記水性組成物から回収し、前記モールドピン上に形成された膜を得る段階と、
前記膜を前記モールドピン上に固着させるため、前記ゲル化温度以上の温度である第3温度で第1時間維持し、第4温度で第2時間乾燥させてカプセル・シェルを得る段階と、を含む腸溶性硬質カプセルの製造方法。」(特許請求の範囲)

イ 引用発明
甲第1号証には、ヒドロキシプロピルセルロース(グルコース単位1個あたりのヒドロキシプロポキシル基置換数0.27、メトキシ基置換数1.85)、酢酸、酢酸ナトリウム、さらに無水コハク酸および無水酢酸を仕込みエステル化反応させ、酸性サクシニル基またはアセチル基を持つプロダクトが得られたことが記載されている(摘示a1)、得られたプロダクトはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシネートであるといえる。
したがって、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。

「ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシネート」(以下「甲1発明」という。)」

甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。

「ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート」(摘示b2、以下「甲2発明」という。)

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 甲1発明に基づく進歩性
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシネートは本件発明1のRが二価脂肪族であり、Aが水素である、脂肪族一価アシル基と式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせを有するエステル化セルロースエーテルであるから、本件発明1と甲1発明とは、 「エステル化セルロースエーテルであって、
A)Rが二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aが水素またはカチオンである、式-C(O)-R-COOAの基、または脂肪族一価アシル基と式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせを有し、前記エステル化セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、前記エステル化セルロースエーテル。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
エステル化セルロースエーテルについて、本件発明1が部分的架橋結合型であるのに対し、甲1発明は部分的架橋結合型であると特定されていない点
(相違点2)
エステル化セルロースエーテルについて、本件発明1が、「B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが少なくとも0.24?0.49であり、
ここで、Wf(100k超)は、100,000g/molを超えるエステル化セルロースエーテルの総重量分率であり、Wf(100k超)XLは、前記エステル化セルロースエーテルの生産後に前記-COOA基をメチルエステル化に供したエステル化セルロースエーテルの、100,000g/molを超える重量分率であり、
ここで、Wf(100k超)およびWf(100k超)XLを、溶離液としてテトラヒドロフランおよびポリスチレン較正標準物を用いたサイズ排除クロマトグラフィーで決定するような、分子量分布を有」するのに対し、
甲1発明は、B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが特定されていない点。

上記相違点について検討する。
相違点2について検討するに、甲第1号証には、Wf(100k超)、Wf(100k超)XLの値や、B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLについて何ら着想する記載がなく、示唆もない。
してみると、甲1発明において、B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLを0.24?0.49の範囲に特定することは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

b 甲2発明に基づく進歩性
甲2発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラートは本件発明1のRが脂肪族一価アシル基であり、Aが水素である、式-C(O)-R-COOAの基を有するエステル化セルロースエーテルであるから、 本件発明1と甲2発明は「エステル化セルロースエーテルであって、
A)Rが二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aが水素またはカチオンである、式-C(O)-R-COOAの基、または脂肪族一価アシル基と式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせを有する前記エステル化セルロースエーテル。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
エステル化セルロースエーテルについて、本件発明1が部分的架橋結合型であるのに対し、甲1発明は部分的架橋結合型であると特定されていない点
(相違点4)
エステル化セルロースエーテルについて、本件発明1が、B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが少なくとも0.24?0.49であり、
ここで、Wf(100k超)は、100,000g/molを超えるエステル化セルロースエーテルの総重量分率であり、Wf(100k超)XLは、前記エステル化セルロースエーテルの生産後に前記-COOA基をメチルエステル化に供したエステル化セルロースエーテルの、100,000g/molを超える重量分率であり、
ここで、Wf(100k超)およびWf(100k超)XLを、溶離液としてテトラヒドロフランおよびポリスチレン較正標準物を用いたサイズ排除クロマトグラフィーで決定するような、分子量分布を有するのに対し、
甲1発明は、B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが特定されていない点。
(相違点5)
エステル化セルロースエーテルについて、本件発明1が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)であるのに対し、甲2発明は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラートである点。

上記相違点について検討する。
上記相違点4について検討するに、甲第2号証には、Wf(100k超)、Wf(100k超)XLの値や、B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLについて何ら着想する記載がなく、示唆もない。
してみると、甲2発明において、B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLを0.24?0.49の範囲に特定することは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(イ)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1について、さらに、20℃の0.43重量%水性NaOH中の、エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、最大4.0mPa・sの粘度を有すると特定するものである。
ここで、甲第3?5号証は、それぞれ、特定のHPMCASの粘度、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの粘度測定法、水酸化ナトリウム試薬の調製に関する事項が記載されているにすぎず、上記相違点2及び4に係る事項を記載・示唆するものではない。
したがって、本件発明1が甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件発明3も甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に甲第3?5号証に記載された事項を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(ウ)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1または3について、さらに、40体積部のアセトニトリルならびに50mMのNaH_(2)PO_(4)および0.1MのNaNO_(3)を含む60体積部の水性緩衝液の混合物を移動相として用いたSEC-MALLSによって測定される、80,000ダルトン?350,000ダルトンの重量平均分子量M_(w)を有するものである。
ここで、甲第6号証には、HPMCASの市販品HPMCAS-LF、-MF、=HFの重量平均分子量として134145,130458および281463g/molが記載されているものの(摘示f2)、上記相違点2及び4に係る事項を記載・示唆するものではない。
したがって、本件発明1が甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件発明4も甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に甲第6号証に記載された事項を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(エ)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1、3、4のヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートを含む組成物であるところ、甲第1号証及び甲第2号証のいずれも相違点2及び4に係る事項を記載・示唆するものでないことは上で述べたとおりであり、本件発明1、3、4が甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件発明5も甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された事項を組み合わせて、甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(オ)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1、3、4のヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートを含む固体分散物である。
ここで、甲第7号証には、「50wt%薬物1と50wt%高分子10の非晶質固体分散体を、スプレードライ法により次の要領で調製した。」と記載されているものの(摘示g6)、上記相違点2及び4に係る事項を記載・示唆するものではない。
したがって、上述のとおり、本件発明1、3、4が甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件発明6も甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第7号証に記載された事項を組み合わせて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5と7又は6と7号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(カ)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6の固体分散物を生産するプロセスであって、a)少なくとも1つの、本件発明1、3、4のいずれかのエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、およびc)1つ以上の添加剤を混合する工程、ならびにその混合物を押出成型する工程を含む、前記プロセスである。
ここで、甲第7号証には、「熱および/または機械エネルギーをもたらす押出法または溶融-凝固法がしばしば、ほぼ完全に非晶質である分散体の形成に適する。たとえば薬物と高分子を、水を加えてまたは水を加えずに、混合し、混合物を2軸押出機に送る。」と記載され(摘示g3)、当該高分子はHPMCASであり(摘示g1)、「本発明の組成物が非晶質固体分散体の形をとる場合には、添加物は該分散体と物理的に混合してもおよび/または該分散体に含有させてもよい。」と記載されているものの(摘示g4)、、上記相違点2及び4に係る事項を記載・示唆するものではない。
したがって、上述のとおり、本件発明1、3、4が甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件発明7も甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第7号証に記載された事項を組み合わせて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5と7又は6と7号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(キ)本件発明8について
本件発明8は、本件発明6の固体分散物を生産するプロセスであって、a)少なくとも1つの、本件発明1、3、4のいずれのエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、c)1つ以上の添加剤、およびd)液体希釈剤を混合して液体組成物を調製する工程、ならびに前記液体希釈剤を取り除く工程を含む、前記プロセスである。
ここで、甲第7号証には、薬物と高分子を共通溶媒で溶解させた後、溶媒を留去する溶媒処理法が記載され(摘示g5)、当該高分子はHPMCASであり(摘示g1)、「本発明の組成物が非晶質固体分散体の形をとる場合には、添加物は該分散体と物理的に混合してもおよび/または該分散体に含有させてもよい。」と記載されているものの(摘示g4)、上記相違点2及び4に係る事項を記載・示唆するものではない。
したがって、上述のとおり、本件発明1、3、4が甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件発明8も甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第7号証に記載された事項を組み合わせて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5と7又は6と7号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(ク)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1、3、4のヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートがコーティングされている調製物である。
ここで、甲第2号証には、HPMCASの用途として固形医薬品の腸溶性コーティング剤が記載されているものの(摘示b1)、上記相違点2及び4に係る事項を記載・示唆するものではない。
したがって、上述のとおり、本件発明1、3、4が甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件発明9も甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された事項を組み合わせて、甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(ケ)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1、3、4のヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートサクシネートを含む、カプセルシェルである。
ここで、甲第8号証には、「腸溶性基剤、カプセル成形補助剤及び中和剤を水に溶解させた後、常温で熟成させて水性組成物を製造する段階と、
前記水性組成物を前記水性組成物のゲル化温度より低い第1温度まで予熱させる段階と、
前記ゲル化温度より高い第2温度に加熱したモールドピンを、前記水性組成物内に浸漬する段階と、
前記モールドピンを前記水性組成物から回収し、前記モールドピン上に形成された膜を得る段階と、
前記膜を前記モールドピン上に固着させるため、前記ゲル化温度以上の温度である第3温度で第1時間維持し、第4温度で第2時間乾燥させてカプセル・シェルを得る段階と、を含む腸溶性硬質カプセルの製造方法。」が記載され(摘示h1)、腸溶性基剤にはHPMCASが含まれるものの(摘示h1)、上記相違点2及び4に係る事項を記載・示唆するものではない。
したがって、上述のとおり、本件発明1、3、4が甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基づいて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件発明10も甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第8号証に記載された事項を組み合わせて、あるいは、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に甲第3?5又は6と8号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、比較実施例D?Hは、使用したHPMCの粘度以外は甲第1号証の実施例の実質的な再現実験と言えるものであり、比較実施例Hでは、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値は0.18であり、本件発明1の「少なくとも0.20」とは微差である。
比較実施例D?Hからみて、モル比(無水酢酸/無水コハク酸)が増加するにつれて[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値が増加しており、HPMCASを製造するにあたり、所望のエステル化度になるように無水物の量を適宜選択することは一般的に行われているから、甲第1号証において、当業者はアセチル化度を高めるために酢酸無水物の量を増加させており、その結果、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値として、甲第1号証の0.18を少なくとも0.2とするHPMCASを得ることは通常行われていることである旨主張している。
また、特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件明細書段落[0057]?[0063]において、モル比(ジカルボン酸無水物(e.g.無水コハク酸0/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は0.1?1.5、モル比(脂肪族モノカルボン酸無水物(e.g.無水酢酸)/セルロースエーテルの無水グルコース単位は0.9?8、モル比(脂肪族カルボン酸(e.g.酢酸)/セルロースエーテルの無水グルコース単位)は4.9?11.5、モル比(アルカリ金属カルボン酸/セルロースエーテルの無水グルコース単位)0.4?3.8、モル比(脂肪族カルボン酸の無水物(e.g.無水酢酸)/ジカルボン酸の無水物(e.g.無水コハク酸))は3.5?8.8、反応温度は60?110℃、反応時間は2?25時間と記載され、比較実施例Hは、モル比(脂肪族カルボン酸(e.g.酢酸)/セルロースエーテルの無水グルコース単位)が16.9であり、4.9?11.5でない点においてのみ本願明細書の反応条件と相違し、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値が0.18となり、少なくとも0.20とならない理由と考えられるところ、エステル化セルロースを製造するにあたり、モル比(脂肪族カルボン酸)/セルロースエーテルの無水グルコース単位)を変更することは、通常行われており、甲第1号証において、酢酸の量を減少させ、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値として少なくとも0.20とするHPMCASを得ることは通常行われている旨主張している。
しかし、甲第1号証において使用したHPMCの粘度が不明である以上、該HPMCを特定することができないから、比較実施例D?Hは甲第1号証の実施例の実質的な再現実験と言えず、甲第1号証に記載のものの[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値が微差であるとはいえないし、甲第1号証において、アセチル化度を高めるために酢酸無水物の量を増加させる動機付けもない。
また、比較実施例Hを、本件明細書段落[0057]?[0063]の一般記載と比較しているが、一般記載に該当すれば、必ずしも、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値が少なくとも0.20になるというものではないし、酢酸の量を減少させ、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値として少なくとも0.20とするという動機付けもない。
したがって、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(2)特許法第36条第6項第1号について
[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLと非溶解性粒子の低減について
特許異議申立人の主張する理由は、本件発明の課題である非溶解性粒子の低減を評価する方法さえも記載されておらず、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLの値が少なくとも0.20であれば、非溶解性粒子の量が減少する技術常識もないため、課題が解決されたかも不明であることを根拠とするものと解される。
しかし、段落[0048]には「[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]の差は、-COOA基のメチル化に際して可逆性である、すなわち、-COOA基のメチル化の際に消滅する、ポリマー鎖の相互作用によって引き起こされる。-COOA基のメチル化に際して可逆性であるポリマー鎖の相互作用の例としては、鎖会合および/または鎖集合が挙げられる。理論に縛られることは望まないが、出願人らは、エステル化セルロースエーテルの架橋結合を形成する能力、および、鎖会合および/または鎖集合といった他の鎖の相互作用を形成するエステル化セルロースエーテルの能力は双方とも、水性溶液中の薬剤といった活性成分の溶解性に影響を及ぼし、薬剤といった活性成分の種類次第では、水性溶液中の薬剤といった活性成分の溶解性を改善し、その生物学的利用性、すなわち、摂取後の個体によるインビボ吸収を増大する。理論に縛られることは望まないが、出願人らはまた、架橋結合していないが、疎水性/親水性鎖会合および/または鎖集合といった他の鎖の相互作用のために予測されるよりも高い分子量を有するエステル化セルロースエーテルは、有機溶媒において、低下した量の非溶解粒子を有すると考え、このことは、多くの最終用途適用に望ましい。たとえば、有機触媒における非溶解粒子の低下した量は、エステル化セルロースエーテルをスプレー乾燥に供する際に望ましく、スプレーノズルといったスプレー乾燥のために使用されるデバイスが詰まるのを緩和または避ける。さらに、アセトン溶液中の非溶解粒子の低下した量は、エステル化セルロースエーテルを透明のフィルムまたはコーティングに使用される際に望ましい。」と記載され、[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]の差と非溶解粒子の量との関連が一応示されており、課題が解決されたといえることから、本件発明1、3?10について、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。

(3)特許法第36条第4項第1号について
特許異議申立人が主張する理由は、上記(3)ア及びイと同様の理由であるところ、当該理由が成り立たないのは上記(3)ア及びイで述べたとおりであるから、発明の詳細な説明の記載が本件発明1?10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないということはできない。

第6 むすび
したがって、本件発明1、3?10に係る特許は、平成30年7月12日付けの取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件発明1、3?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的架橋結合型エステル化セルロースエーテルであって、
A)Rが二価脂肪族または芳香族炭化水素基であり、Aが水素またはカチオンである、式-C(O)-R-COOAの基、または脂肪族一価アシル基と式-C(O)-R-COOAの基との組み合わせを有し、ならびに、
B)[Wf(100k超)-Wf(100k超)XL]/Wf(100k超)XLが0.24?0.49であり、
ここで、Wf(100k超)は、100,000g/molを超えるエステル化セルロースエーテルの総重量分率であり、Wf(100k超)XLは、前記エステル化セルロースエーテルの生産後に前記-COOA基をメチルエステル化に供したエステル化セルロースエーテルの、100,000g/molを超える重量分率であり、
ここで、Wf(100k超)およびWf(100k超)XLを、溶離液としてテトラヒドロフランおよびポリスチレン較正標準物を用いたサイズ排除クロマトグラフィーで決定するような、分子量分布を有し、前記エステル化セルロースエーテルはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である、前記部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
20℃の0.43重量%水性NaOH中の、エステル化セルロースエーテルの2.0重量%溶液として測定される、最大4.0mPa^(・)sの粘度を有する、請求項1に記載のエステル化セルロースエーテル。
【請求項4】
40体積部のアセトニトリルならびに50mMのNaH_(2)PO_(4)および0.1MのNaNO_(3)を含む60体積部の水性緩衝液の混合物を移動相として用いたSEC-MALLSによって測定される、80,000ダルトン?350,000ダルトンの重量平均分子量M_(w)を有する、請求項1または3に記載のエステル化セルロースエーテル。
【請求項5】
液体希釈剤、および、少なくとも1つの、請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテルを含む、組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの、請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテルに、少なくとも1つの活性成分を含む、固体分散物。
【請求項7】
請求項6に記載の固体分散物を生産するプロセスであって、a)少なくとも1つの、請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、およびc)1つ以上の添加剤を混合する工程、ならびにその混合物を押出成型する工程を含む、前記プロセス。
【請求項8】
請求項6に記載の固体分散物を生産するプロセスであって、a)少なくとも1つの、請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテル、b)1つ以上の活性成分、c)1つ以上の添加剤、およびd)液体希釈剤を混合して液体組成物を調製する工程、ならびに前記液体希釈剤を取り除く工程を含む、前記プロセス。
【請求項9】
請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテルがコーティングされている、調製物。
【請求項10】
請求項1、3?4のいずれか1項に記載のエステル化セルロースエーテルを含む、カプセルシェル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-08 
出願番号 特願2015-528528(P2015-528528)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08B)
P 1 651・ 537- YAA (C08B)
P 1 651・ 121- YAA (C08B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三原 健治  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 冨永 保
瀬下 浩一
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6224711号(P6224711)
権利者 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
発明の名称 部分架橋結合型エステル化セルロースエーテル  
代理人 胡田 尚則  
代理人 古賀 哲次  
代理人 胡田 尚則  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 松井 光夫  
代理人 齋藤 都子  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 出野 知  
代理人 三橋 真二  
代理人 小林 直樹  
代理人 石田 敬  
代理人 齋藤 都子  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 出野 知  
代理人 小林 直樹  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 真二  

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