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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H02J 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H02J |
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管理番号 | 1350658 |
異議申立番号 | 異議2017-700812 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-08-30 |
確定日 | 2019-01-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6085785号発明「電力供給システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6085785号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第6085785号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件特許第6085785号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成24年9月27日に出願され、平成29年2月10日にその特許権の設定登録がなされ、平成29年3月1日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成29年 8月30日 :特許異議申立人 嶋村早織による請求項1、2に係る発明の特許について特許異議の申立て 平成29年10月24日付け:取消理由通知書 平成29年12月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成30年 2月20日付け:訂正拒絶理由通知書 平成30年 3月27日 :特許権者による意見書の提出 平成30年 4月26日付け:取消理由通知書(決定の予告) 平成30年 7月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成30年 7月30日付け:審尋(特許権者に対して) 平成30年 8月31日 :特許権者による回答書の提出 平成30年 9月10日付け:訂正請求があった旨の通知(特許異議申立人に対して)(回答書の提出なし) 2 訂正の適否 (1)訂正の内容 平成30年 7月 5日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項のとおりである(下線部は訂正箇所に対し、当審で付与した。)。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出する第二検出部と、から構成される複合センサであり、」と記載されているのを、「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出するCTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、」に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出する第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出する第四検出部と、から構成される複合センサであり、」と記載されているのを、「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出するCTセンサ部としての第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出するCTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、」に訂正する。 ウ 訂正事項3 願書に添付した明細書の段落m【0009】に記載された「前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出する第二検出部と、から構成される複合センサであり、」を、「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出するCTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、」に訂正する。 エ 訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0010】に記載された「前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出する第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出する第四検出部と、から構成される複合センサであり、」を、「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出するCTセンサ部としての第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出するCTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項1 a 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明は、「複合センサ」について「前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出する第二検出部と、から構成される複合センサ」であることを特定している。 これに対して、訂正後の請求項1は、「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出するCTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサ」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における複合センサをより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明の第一実施形態に基づく構成であり、第一実施形態における複合センサに係る説明として、段落【0027】には、「第一CTセンサ部41は、回路の所定位置における電力(電流値)を検出するものである。」、段落【0028】には、「第二CTセンサ部42は、回路の所定位置における電力(電流値)を検出するものである。」、段落【0030】には、「また、第一CTセンサ部41は、本発明に係る「第一検出部」の一実施形態である。また、第二CTセンサ部42は、本発明に係る「第二検出部」の一実施形態である。」、段落【0029】には、「第一複合センサ40は、・・・(略)・・・、これらの電力の情報に関する信号を蓄電装置30の制御部31へと一括して出力可能に構成される。」の記載がある。 ここで、CTセンサ部のみを組み合わせて構成した場合には、信号を一括して出力するセンサにならないから、これらの段落に記載された事項は、「第一複合センサ40」が「第一CTセンサ部41」と「第二CTセンサ部42」との組み合わせ以外に「信号を一括して出力するための手段」を他に有しているものといえる。 したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1による訂正は、「前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出する第二検出部と、から構成される複合センサ」という発明特定事項を概念的により下位の「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出するCTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサ」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (イ)訂正事項2 a 訂正の目的について 訂正前の請求項2に係る発明は、「複合センサ」について「前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出する第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出する第四検出部と、から構成される複合センサ」であることを特定している。 これに対して、訂正後の請求項2は、「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出するCTセンサ部としての第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出するCTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサ」との記載により、訂正後の請求項2に係る発明における複合センサをより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明の第二実施形態に基づいて導き出される構成であり、この第二実施形態における複合センサに係る説明として、段落【0074】には、「第二複合センサ60は、前記第一CTセンサ部41と、第三CTセンサ部43と、第四CTセンサ部44と、を組み合わせた複合センサとして構成される。」、段落【0075】には、「第三CTセンサ部43は、回路の所定位置における電力(電流値)を検出するものである。」、段落【0076】には、「第四CTセンサ部4 4は、回路の所定位置における電力(電流値)を検出するものである。」、段落【0078】には、「また、第三CTセンサ部4 3は、本発明に係る「第三検出部」の一実施形態である。また、第四CTセンサ部44は、本発明に係る「第四検出部」の一実施形態である。」、段落【0077】には、「第二複合センサ60は、・・・(略)・・・、これらの電力の情報に関する信号を蓄電装置30の制御部31へと一括して出力可能に構成される。」の記載がなされている。 ここで、CTセンサ部のみを組み合わせて構成した場合には、信号を一括して出力するセンサにならないから、これらの段落に記載された事項は、「第二複合センサ60」が「第一CTセンサ部41」と「第三CTセンサ部43」と「第四CTセンサ部44」との組み合わせ以外に「信号を一括して出力するための手段」を他に有していることを示すものといえる。 このように、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2による訂正は、「前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出する第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出する第四検出部と、から構成される複合センサ」という発明特定事項を概念的により下位の「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出するCTセンサ部としての第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出するCTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサ」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (ウ)訂正事項3 a 訂正の目的について 訂正事項3は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項3は特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3による訂正は、訂正事項1に対応した訂正である。上記したように訂正事項1による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるため、上記訂正事項3による訂正も、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3による訂正は、訂正事項1に対応した訂正である。上記したように訂正事項1による訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことから、訂正事項3による訂正も、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (エ)訂正事項4 a 訂正の目的について 訂正事項4は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項4は特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 b 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4による訂正は、訂正事項2に対応した訂正である。上記したように訂正事項2による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるため、上記訂正事項4による訂正も、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 c 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4による訂正は、訂正事項2に対応した訂正である。上記したように訂正事項2による訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことから、訂正事項4による訂正も、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)小括 上記のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 3 訂正後の本件発明 本件訂正により訂正された請求項1、2に係る発明(以下、請求項順に「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 太陽光を受けて発電可能な太陽光発電部と、 商用電源及び前記太陽光発電部に接続される分電盤と、 前記分電盤と接続され、前記分電盤と電力のやり取りが可能な蓄電装置と、 電力を検出可能な第一電力検出手段と、 前記第一電力検出手段の検出結果に応じて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御手段と、 を具備し、 前記第一電力検出手段は、 前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出するCTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、 前記蓄電装置と前記分電盤との電力のやり取りに関して、任意に選択可能な第一モード及び第二モードを有し、 前記第一モードが選択されると、 前記太陽光発電部が発電し、かつ、前記太陽光発電部の発電電力が前記商用電源へと逆潮流している場合には、前記蓄電装置から前記分電盤への電力の放電を不可能として、 前記第二モードが選択されると、 前記太陽光発電部が発電し、かつ、前記太陽光発電部から前記分電盤に供給した発電電力に余剰が生じた場合には、余剰した前記発電電力を前記商用電源へと逆潮流させずに前 記蓄電装置に充電し、 前記太陽光発電部が発電していない場合には、前記蓄電装置から前記分電盤へと電力を放電する、 電力供給システム。 【請求項2】 太陽光を受けて発電可能な太陽光発電部と、 商用電源及び前記太陽光発電部に接続される分電盤と、 前記分電盤と接続され、前記分電盤へと電力を供給可能な燃料電池と、 前記分電盤と接続され、前記分電盤と電力のやり取りが可能な蓄電装置と、 電力を検出可能な第二電力検出手段と、 前記第二電力検出手段の検出結果に応じて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御手段と、 を具備し、 前記第二電力検出手段は、 前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出するCTセンサ部としての第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出するCTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、 前記蓄電装置と前記分電盤との電力のやり取りに関して、任意に選択可能な第三モード及び第四モードを有し、 前記第三モードが選択されると、 前記燃料電池からの電力が優先的に前記分電盤に供給される状態となり、 前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より少ない場合には、前記燃料電池からの余剰電力を前記蓄電装置に充電し、 前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より多い場合には、前記分電盤の不足電力を前記蓄電装置から放電して、 前記第四モードが選択されると、 前記太陽光発電部が発電している場合には、前記太陽光発電部の発電電力を前記商用電源へと逆潮流させずに前記蓄電装置に充電し、 前記太陽光発電部が発電しておらず、かつ、前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より多い場合には、前記分電盤の不足電力を前記蓄電装置から放電する、 電力供給システム。」 4 取消理由の概要 (1)訂正前の請求項1、2に係る特許に対して平成29年10月24日付けで通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。 「1.本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号および第2号の規定に適合していない。 (1)請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、明確でない。 段落【0026】には、第一CTセンサ部41と第二CTセンサ部42とを組み合わせたものが第一複合センサ40であるとの記載がある。一方、図1-3には、これとは異なる構成、すなわち、第一CTセンサ部41および第二CTセンサ部42が第一複合センサ40から独立した構成が示されている。このため、本件特許発明1における第一検出部、第二検出部および複合センサの関係を理解することができない。 仮に、段落【0026】の記載にしたがって、第一検出部と第二検出部とを組み合わせたものが複合センサであるとの理解に立った場合、複合センサは、各検出部の検出結果を一括して出力することができない。このため、本件特許発明1は、解決すべき課題であるタイムラグの解消(段落【0005】および【0007】参照)を実現することができない構成、言い換えると、発明の詳細な説明によってサポートされていない構成を含んでいる。 (2)請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、明確でない。 段落【0074】には、第一CTセンサ部41と第三CTセンサ部43と第四CTセンサ部44とを組み合わせたものが第二複合センサ60であるとの記載がある。一方、図4-6には、これとは異なる構成、すなわち、第一CTセンサ部41、第三CTセンサ部43および第四CTセンサ部44が第二複合センサ60から独立した構成が示されている。このため、本件特許発明2における第一検出部、第三検出部、第四検出部および複合センサの関係を理解することができない。 仮に、段落【0074】の記載にしたがって、第一検出部と第三検出部と第四検出部とを組み合わせたものが複合センサであるとの理解に立った場合、複合センサは、各検出部の検出結果を一括して出力することができない。このため、本件特許発明2は、解決すベき課題である夕イムラグの解消を実現することができない構成、言い換えると、発明の詳細な説明によってサポー卜されていない構成を含んでいる。」 (2)平成30年 4月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)において、当審の示した判断は、要旨以下のとおりである。 「ア 請求項1の記載 請求項1には、「前記第一電力検出手段は、前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出する第二検出部と、から構成される複合センサであり、」とあり、電力の検出を行う第一検出部と第二検出部の二つの検出部が「複合センサ」であることについて記載されるものである。 しかし、第一検出部と第二検出部とを単に用いるのみでは、明細書に示された従来技術と何ら変わるものではなく、「複合センサ」とはならないから、第一検出部と第二検出部とがそれぞれどの様に用いられ、また、どの様に組み合わされることで「複合センサ」として構成されることになるのか不明である。また、第一検出部と第二検出部とがそれぞれ検出した値を出力しても、明細書に示された従来技術と何ら変わるものではなく、「複合センサ」の出力とはならないから、第一検出部と第二検出部の出力と、「複合センサ」としての出力は何が異なり、「複合センサ」としてどのように出力されるのかも不明である。 請求項1の記載は明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。 発明の詳細な説明の段落【0026】には、第一CTセンサ部41と第二CTセンサ部41とを組み合わせたものが第一複合センサ40であるとの記載がある一方、図1-3には、第一CTセンサ部41および第二CTセンサ部41が第一複合センサ40から独立した構成が図示されている。そのため、請求項1の「第一検出部」、「第二検出部」、「複合センサ」が、それぞれ、発明の詳細な説明に記載された、「第一CTセンサ部41」、「第二CTセンサ部41」、「第一複合センサ40」に相当するとはいえず、請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。 請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていないので、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。 イ 請求項2の記載 請求項2には、「「前記第二電力検出手段は、前記太陽光発電部の発電電力を検出する第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出する第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出する第四検出部と、から構成される複合センサであり、」とあり、電力の検出を行う第一検出部と、第三検出部と、第四検出部との三つの検出部が「複合センサ」であることについて記載されるものである。 しかし、第一検出部と第三検出部と第四検出部とを用いることのみでは、明細書に示された従来技術と何ら変わるものではなく、「複合センサ」とはならないから、第一検出部と第三検出部と第四検出部とがそれぞれどの様に用いられ、また、どの様に組み合わされることで「複合センサ」として構成されることになるのか不明である。また、第一検出部と第三検出部と第四検出部とがそれぞれ検出した値を出力しても、明細書に示された従来技術と何ら変わるものではなく、「複合センサ」の出力とはならないから、第一検出部と第三検出部と第四検出部の出力と、「複合センサ」としての出力は何が異なり、「複合センサ」としてどのように出力されるのかも不明である。 請求項2の記載は明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。 発明の詳細な説明の段落【0074】には、第一CTセンサ部41と第三CTセンサ部43と第四CTセンサ部44を組み合わせたものが第二複合センサ60であるとの記載がある一方、図4-6には、第一CTセンサ部41、第三CTセンサ部43および第四CTセンサ部44が第二複合センサ60から独立した構成が図示されている。そのため、請求項2の「第一検出部」、「第三検出部」、「第四検出部」、「複合センサ」が、それぞれ、発明の詳細な説明に記載された、「第一CTセンサ部41」、「第三CTセンサ部43」、「第四CTセンサ部44」、「第二複合センサ60」に相当するとはいえず、請求項2に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。 請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていないので、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。」 (3)平成30年 4月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)において、訂正により、「検出結果に関する信号を一括して前記充放電制御手段へと出力可能な複合センサ」という事項が付加された場合について、予備的に取消理由を通知した、その要旨は以下のとおりである。 「仮に、請求項1及び2に記載された「複合センサ」に、「検出結果に関する信号を一括して前記充放電制御手段へと出力可能」という事項が付加された場合について、予備的な検討を行う。 発明の詳細な説明には、「検出結果に関する信号を一括して前記充放電制御手段へと出力可能な複合センサ」に関し、以下の記載がある。 「【0029】 このように、第一複合センサ40は、太陽光発電部10からの(発電)電力と、商用電源90からの電力及び商用電源90への電力(すなわち、逆潮流する電力)と、を検出可能であり、これらの電力の情報に関する信号を蓄電装置30の制御部31へと一括して出力可能に構成される。」 「【0077】 このように、第二複合センサ60は、太陽光発電部10からの(発電)電力と、分電盤20の消費電力と、燃料電池50からの電力と、を検出可能であり、これらの電力の情報に関する信号を蓄電装置30の制御部31へと一括して出力可能に構成される。」 しかし、これらの記載の「一括して出力可能」とはいかなることか不明である。例えば、検出された各電力の値が、どの様にして複合センサにおいて一括されるのか、また、出力の際、どの様にすれば検出された各電力が一括して出力可能となり、結果として、本件発明の目的としているタイムラグの解消が、どの様にして実現されるのか全く不明であり、当業者がこれらの記載に基づき「検出結果に関する信号を一括して前記充放電制御手段へと出力可能な複合センサ」という事項を実施可能であるということはできない。 そうすると、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関する信号を一括して前記充放電制御手段へと出力可能な複合センサ」という事項が請求項1、2に係る発明に導入された場合、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものとなる。」 5 当審の判断 (1)本件訂正発明1について (明確性) 本件訂正発明1は、「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出するCTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、」の発明特定事項を有し、「複合センサ」は、CTセンサ部としての第一検出部と、CTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段とから構成されることが特定されるものとなった。 しかし、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」について、一般に、「一括」とは、「一つに括ること。一まとめにすること。」(岩波書店「広辞苑」第5版)を意味するものであるから、本件訂正発明1の「複合センサ」は、CTセンサ部としての第一検出部の検出結果に関する信号と、CTセンサ部としての第二検出部の検出結果に関する信号を一つに括り、まとめて出力するものであるが、CTセンサ部から得られる信号がどのような形態の信号(例えば、アナログ値、デジタル信号等)か特定されるものではなく、どのように括られ(例えば、加算演算、パケット生成等)、どのような信号となって出力(例えば、演算結果のアナログ信号出力、ネットワーク送信等)されるのか特定されるものではないので、「信号を一括」とは何か不明である。 そうすると、第一検出部と第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を充放電制御に用いることと、信号が一つに括られ、「複合センサ」として出力される信号を充放電制御に用いることとでは、信号要素の何が異なり、その差異がいかなる効果を奏するのか、技術的意味が不明である。 したがって、本件訂正発明1の記載は明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。 (サポート要件) 発明の詳細な説明の段落【0064】には、「このような構成により、第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42による検出結果を用いて蓄電装置30の充放電を制御する場合には、複合センサである第一複合センサ40から一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置30の充放電を制御することができる。すなわち、制御部31が蓄電装置30の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じることを防止して、第一複合センサ40による検出結果に応じて蓄電装置30の充放電をタイミング良く行うことができる。」とあるように、第一複合センサ40から一括して出力された信号によって、従来技術の課題であるタイムラグが生じることを防止することが記載されているが、本件訂正発明1の「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」という発明特定事項は、第一検出部と第二検出部とのそれぞれの信号を一括して出力することが特定されるにすぎず、つまり、それぞれ取得時刻の異なる信号(タイムラグの発生している信号)を一つに括るにすぎないから、明細書に示された従来技術の課題(タイムラグの発生を防止すること)を解決していないといえる。 そうすると、本件訂正発明1が、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を越えているから、発明の詳細な説明に記載されていないといえ、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。 本件訂正発明1は、「CTセンサ部としての第一検出部と、・・・CTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサ」という発明特定事項を有するものであるから、平成30年 4月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)において予備的に通知した、「『複合センサ』に、『検出結果に関する信号を一括して前記充放電制御手段へと出力可能』という事項が付加された場合」の判断事項(実施可能要件)についても判断を行う。 (実施可能要件) 発明の詳細な説明には、「【発明が解決しようとする課題】」として、以下の記載がある。 【0002】 従来、住宅等に備えられた電力供給システムにおいて、商用電源や太陽光発電部からの電力を蓄電装置(蓄電池)に充電可能とし、それらの電力を負荷へと供給する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。 【0003】 前記電力供給システムは、電力を検出可能な複数のCTセンサ(電力検出手段)と、当該複数のCTセンサによる検出結果が入力され、当該入力された検出結果に応じて蓄電装置の充放電を制御するホームサーバ(充放電制御手段)と、が設けられる。 【0004】 このような構成により、前記電力供給システムは、複数のCTセンサからの検出結果がホームサーバに入力され、当該入力された検出結果に応じて蓄電装置の充放電を行うことができる。 【0005】 しかしながら、前記電力供給システムは、複数のCTセンサがそれぞれ独立してホームサーバに接続されているため、当該複数のCTセンサからの検出結果がそれぞれ独立して当該ホームサーバに入力されている。すなわち、前記電力供給システムでは、ホームサーバが蓄電装置の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じ、このタイムラグにより蓄電装置の充放電をタイミング良く行うことが困難となる点で不利であった。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2012-5168号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、充放電制御手段が蓄電装置の制御に必要な情報の取得までにタイムラグが生じることを防止して、電力検出手段による検出結果に応じて蓄電装置の充放電をタイミング良く行うことができる電力供給システムを提供することである。」 そして、段落【0064】には、以下の記載がある。 「【0064】 このような構成により、第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42による検出結果を用いて蓄電装置30の充放電を制御する場合には、複合センサである第一複合センサ40から一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置30の充放電を制御することができる。すなわち、制御部31が蓄電装置30の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じることを防止して、第一複合センサ40による検出結果に応じて蓄電装置30の充放電をタイミング良く行うことができる。」 そうすると、本件は、蓄電装置の充放電の制御に必要な情報を取得するまでのタイムラグの発生を、複合センサから一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置の充放電を制御することで防止することを目的とするものであって、本件訂正発明1の「複合センサ」における「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」という発明特定事項により、タイムラグの発生を防止するものであるといえる。 しかし、発明の詳細な説明には、複数のCTセンサがそれぞれ独立していると、なぜタイムラグが発生することになるのかその理由については記載されていない。また、一般に、「一括」とは、「一つに括ること。一まとめにすること。」(岩波書店「広辞苑」第5版)を意味するものであるから、一つにまとめる意味はあっても、タイムラグを解消するような時間的な概念は存在せず、タイムラグのある信号をひとまとめにして出力したとしても、その出力による制御にはタイムラグが依然として存在すると考えられる。段落【0064】の記載を参照しても、「一括して出力された信号」は、どのような作用効果によってタイムラグを防止するのか不明である。そうすると、発明の詳細な説明の記載は、どのように発生するタイムラグを、どのような構成により防止するのか、当業者が実施可能な程度に記載されているものではない。 したがって、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない。 (2)本件訂正発明2について (明確性) 本件訂正発明2は、「前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出するCTセンサ部としての第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出するCTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、」の発明特定事項を有し、「複合センサ」は、CTセンサ部としての第一検出部と、CTセンサ部としての第三検出部と、CTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段とから構成されることが特定されるものとなった。 しかし、「前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」について、一般に、「一括」とは、「一つに括ること。一まとめにすること。」(岩波書店「広辞苑」第5版)を意味するものであるから、本件訂正発明2の「複合センサ」は、CTセンサ部としての第一検出部の検出結果に関する信号と、CTセンサ部としての第三検出部の検出結果に関する信号と、CTセンサ部としての第四検出部の検出結果に関する信号と、を一つに括り、まとめて出力するものであるが、CTセンサ部から得られる信号がどのような形態の信号(例えば、アナログ値、デジタル信号等)か特定されるものではなく、どのように括られ(例えば、加算演算、パケット生成等)、どのような信号となって出力(例えば、演算結果のアナログ信号出力、ネットワーク送信等)されるのか特定されるものではないので、「信号を一括」とは何か不明である。 そうすると、第一検出部と第三検出部と、第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を充放電制御に用いることと、信号が一つに括られ、「複合センサ」として出力される信号を充放電制御に用いることとでは、信号要素の何が異なり、その差異がいかなる効果を奏するのか、技術的意味が不明である。 したがって、本件訂正発明2の記載は明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。 (サポート要件) 発明の詳細な説明の段落【0106】には、「このような構成により、第一CTセンサ部41、第三CTセンサ部43、及び第四CTセンサ部44による検出結果を用いて蓄電装置30の充放電を制御する場合には、複合センサである第二複合センサ60から一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置30の充放電を制御することができる。すなわち、制御部31が蓄電装置30の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じることを防止して、第二複合センサ60による検出結果に応じて蓄電装置30の充放電をタイミング良く行うことができる。」とあるように、第二複合センサ60から一括して出力された信号によって、従来技術の課題であるタイムラグが生じることを防止することが記載されているが、本件訂正発明2の「前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」という発明特定事項は、第一検出部と第三検出部と第四検出部とのそれぞれの信号を一括して出力することが特定されるにすぎず、つまり、それぞれ取得時刻の異なる信号(タイムラグの発生している信号)を一つに括るにすぎないから、明細書に示された従来技術の課題(タイムラグの発生を防止すること)を解決していないといえる。 そうすると、本件訂正発明2が、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を越えているから、発明の詳細な説明に記載されていないといえ、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。 本件訂正発明2は、「CTセンサ部としての第一検出部と、・・・・CTセンサ部としての第三検出部と、・・・・CTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサ」という発明特定事項を有するものであるから、平成30年 4月26日付けで通知した取消理由(決定の予告)において予備的に通知した、「『複合センサ』に、『検出結果に関する信号を一括して前記充放電制御手段へと出力可能』という事項が付加された場合」の判断事項(実施可能要件)についても判断を行う。 (実施可能要件) 発明の詳細な説明には、「【発明が解決しようとする課題】」として、先に「ア 本件訂正発明1」で摘記した段落【0002】?【0007】の記載がある。 そして、段落【0106】には、以下の記載がある。 「【0106】 このような構成により、第一CTセンサ部41、第三CTセンサ部43、及び第四CTセンサ部44による検出結果を用いて蓄電装置30の充放電を制御する場合には、複合センサである第二複合センサ60から一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置30の充放電を制御することができる。すなわち、制御部31が蓄電装置30の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じることを防止して、第二複合センサ60による検出結果に応じて蓄電装置30の充放電をタイミング良く行うことができる。」 そうすると、本件は、蓄電装置の充放電の制御に必要な情報を取得するまでのタイムラグの発生を、複合センサから一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置の充放電を制御することで防止することを目的とするものであって、本件訂正発明2の「複合センサ」における「前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」という発明特定事項により、タイムラグの発生を防止するものであるといえる。 しかし、発明の詳細な説明には、複数のCTセンサがそれぞれ独立していると、なぜタイムラグが発生することになるのかその理由については記載されていない。また、一般に、「一括」とは、「一つに括ること。一まとめにすること。」(岩波書店「広辞苑」第5版)を意味するものであるから、一つにまとめる意味はあっても、タイムラグを解消するような時間的な概念は存在せず、タイムラグのある信号をひとまとめにして出力したとしても、その出力による制御にはタイムラグが依然として存在すると考えられる。段落【0106】の記載を参照しても、「一括して出力された信号」は、どのような構成によってタイムラグを防止するのか不明である。そうすると、発明の詳細な説明の記載は、どのように発生するタイムラグを、どのような構成により防止するのか、当業者が実施可能な程度に記載されているものではない。 したがって、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない。 (3)特許権者の主張について 特許権者は、平成30年7月5日付けの意見書において、以下のように主張している。 「2.<特許法第36条第6項第2号の取消理由について> 訂正後の請求項1に係る発明において、複合センサは、各CTセンサ部(第一検出部及び第二検出部)によりリアルタイムに検出した検出結果を、所定の手段(第一検出部及び第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段、以下では便宜上前述の如く「所定の手段」と称する場合があります)により一括して出力することにより、充放電制御手段に同時に取得させることができます。こうして、訂正後の請求項1に係る発明は、蓄電装置の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じることを防止して、蓄電装置の充放電をタイミング良く行うことができます。 このように、訂正後の請求項1に係る発明においては、第一検出部と第二検出部とがそれぞれリアルタイムに発電電力を検出するために用いられること、及び、所定の手段が第一検出部及び第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するために用いられること、が明らかであると思われます。また、第一検出部と第二検出部と所定の手段とが組み合わさることで「複合センサ」として構成されることになるのが明らかであると思われます。また、第一検出部と第二検出部の出力と、「複合センサ」としての出力との違いが明らかであり、「複合センサ」としてどのように出力されるのか(具体的には、一括して出力されること)が明らかであると思われます。 以上のように、訂正後の請求項1の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に適合していると思われます。 3.<特許法第36条第6項第1号の取消理由について> 願書に添付した明細書には、第一CTセンサ部41(第一検出部)は、太陽光発電部10からの電力を検出するものであると共に、電力を検出した場合に、当該電力の情報に関する信号を出力することが記載されています(段落【0027】等参照)。 また、明細書には、第二CTセンサ部42(第二検出部)は、逆潮流する電力を検出するものであると共に、電力を検出した場合に、当該電力の情報に関する信号を出力することが記載されています(段落【0028】等参照)。 また、明細書には、第一複合センサ40(複合センサ)の検出結果は、第一CTセンサ部41(第一検出部)が検出した場合に得られる検出結果と、第二CTセンサ部42(第二検出部)が検出した場合に得られる検出結果と、により構成されることが記載されています(段落【0047】-【0049】等参照)。 また、明細書には、第一複合センサ40(複合センサ)、より詳細には第一複合センサ40(複合センサ)の図示せぬ所定の手段(第一検出部及び第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段)は、検出結果を蓄電装置30の制御部31へと出力することが記載されています(段落【0026】、【0029】等参照)。 このように、明細書には、蓄電装置30の制御部31が検出結果を取得するまでに、まず第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42からの出力が行われ、次に当該第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42から検出結果を取得した後に第一複合センサ40(より詳細には、前記所定の手段)からの出力が行われる、ことが記載されています。 すなわち、明細書には、図1-3と同様の構成となる、第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42が第一複合センサ40(より詳細には、前記所定の手段)から独立した構成が示されています。 以上のように、訂正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているものであるため、特許法第36条第6項第1号の規定に適合すると思われます。」(3頁7行?5頁8行) 「6-1.発明の詳細な説明の記載がその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かについて、検討を行います。 発明の詳細な説明に記載された事項を鑑みますと、本願発明において「タイムラグ」とは、複数のCTセンサの検出結果を充放電制御手段が受信する際の時間的な差、すなわち時間のずれをいうものです。すなわち、本顆発明は、蓄電装置の充放電の制御に必要な情報を充放電制御手段に時間のずれ無く、すなわち同時に取得させるための技術であるといえます。また、本願発明においては、図1等にも示すように、第一複合センサ40(複合センサ)が、第一CTセンサ部41(第一検出部)及び第二CTセンサ部42(第二検出部)の検出結果に関する信号のそれぞれの出カ部として構成されています。このような場合、当業者であれば、複数の信号(蓄電装置の充放電の制御に必用な情報)を入カ部(蓄電装置の制御部31)に同時に取得させるため、例えば出カ部(第一複合センサ40)から複数の信号を互いに同じタイミングで出カする処理を行うことに容易に想到すると思われます。 このように、発明の詳細な説明には、第一複合センサ40において、第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42の検出結果に関する信号(複数の信号)を一括して出カするための具体的な手段が記載されていないとも思われます。しかしながら、本願発明におきましては、蓄電装置30の充放電を制御する場合に、第一複合センサ40に入カされた複数の信号を蓄電装置30の制御部31がタイムラグが生じることを防止して入力できるようにするという考え方自体に特徴を有するものです。従いまして、第一複合センサ40において、複数の信号を一括してして出力とするための具体的な手段については、何ら限定するものではなく。従来周知となつている種々の技術を採用することができます。 6-2.複数の信号を一括して出力するための具体的な手段は、技術的な常識であると思われます。 具体的には、例えば特許文献1(特開平7-239236号公報)には、GPS受信機11の出力11aと、ジャイロ12や加速度計13出力12a、13aの出力時刻を一致させるための補正手段(信号同期部14)が記載されています。信号同期部14は、GPS受信機11の時計11’のクロック信号を入力してn倍し、周期T3の基準クロックを作成する逓倍手段141、ジャイロ12の出力12aを入力する角速度入力手段142、加速度計13の出力13aを入カする加速度入力手段143、入力データを基準クロック時に合わせて補正する時刻一致化処理手段144、145及び出力手段146から構成されています。このような構成により、信号同期部14において、出力手段146は、周期T3で、時刻一致化処理手段144,145から補正後の角速度12b及び加速度13bを取り出し周期T3で出力します。こうして、信号同期部14の補正処理によって、GPS受信機11とジャイロ12や加速度計13の計測周期が非同期の場合に、計測タイミングずれによる誤差を低減できます(段落【0034】、[0035】、【0043】、【0045】、図3等参照)。 このように、特許文献1においては、複数の信号(ジャイロ12や加速度計13の出力12a、13a)を一括して同じタイミング(周期T3)で出力する信号同期部14が開示されています。 また、例えば特許文献2(特開2003-289249号公報)には、並列演算回路ブロック701-A、701-Cの出カ端子にラッチ回路12を設けて並列演算回路ブロック701-Bに出カすると共に、さらに出力OUT1、OUT2の前段にラッチ回路12を2段設け、正転Q出力を順次接続することが記戴されています。また、このような構成により、出力OUT1、OUT2、OUT3が、同じタイミングで出力することができ、以後の信号処理が容易になるという利点が得られることが記載されています(段落【0051】、【0052】、図9等参照)。 このように、特許文献2においては、複数の信号(並列演算回路ブロック701-A、701-Cの出力端子からの出力)が一括して同じタイミングで出力する出力、OUT1、OUT2、OUT3が開示されています。 また、例えば特許文献3(特開2004-166094号公報)には、各HDDの画像データの読み出し速度にバラツキがあるが、各HDD毎に出力バッファが設けられているため、4つのHDD間の画像データの読み出し速度のバラツキを調整して出力するので、同一画素に属する複数色のデータを同じタイミングで出力するというように、4つのHDDから読み出された画像データ相互の関係を所定の関係にできることが記載されています(段落【0194】、図9等参照)。 このように、特許文献3においては、複数の信号(各HDDの画像データ)が一括して同じタイミングで出力する出力バッファが開示されています。 以上のように、第一検出部及び第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号が、複合センサにおいてどのように一括して同じタイミングで出力するかという技術は、従来周知となっています。 また、上述の如く、本顧発明の目的としているタイムラグの解消とは、蓄電装置の充放電の制御に必要な情報を充放電制御手段に同時に取得させることで実現されることは明らかであると思われます。 従いまして、当業者は、発明の詳細な説明に記載された事項及び周知技術に基づきまして、「第一検出部」と「第二検出部」の他、「第一検出部及び第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力とするための手段」とから構成される「第一複合センサ」という事項を実施可能であるといえると思われます。 従いまして、当業者がこのような「第一検出部及び第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力とするための手段」という事項が請求項1に係る発明に導入された場合、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえ、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものではないと思われます。」(8頁4行?11頁10行) また、平成30年8月31日付けの回答書では、以下のように述べている。 「(1)審尋の内容 平成30年7月30日付け起案の審尋においては、以下に示す4点の事項が記載されています。なお以下では、これらの事項をそれぞれ質問1?4と称します。 ・ 質問1 「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」は、「複合センサ」のどこにある構成なのか明確でないため、図面の「第1複合センサ」を参照し、どこにある構成なのか説明して下さい。 ・ 質問2 明細書に記載される「タイムラグ」とは、いかなる技術的な意味を持つのか (第一、第二の信号の検出に遅延が発生する意味か、第一と第二の信号に差が生じる意味か、それ以外の遅延を意味するのか不明)説明して下さい。 ・ 質問3 訂正事項の「一括して出力」がいかなる技術的意味で用いられているのか明確ではない。 たとえば、一般的な「一括」の意味からすれば、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力する」には、次のような技術的事項が含まれる。 (ア)第一検出部及び第二検出部の検出結果に関するそれぞれ複数の信号を一括して出力する(例えば、1時間に渡って得られた第一検出部及び第二検出部の検出結果を一括して出力する。)。 (イ)第一検出部の検出結果を第二検出部の検出結果が得られた時に一括して出力する(例えば、第一検出部の検出結果が得られた1時間後に、第二検出部の検出結果が得られ、これらの信号を一括して出力する。)。 (ウ)第二検出部の検出結果を第一検出部の検出結果が得られた時に一括して出力する(例えば、第二検出部の検出結果が得られた1時間後に、第一検出部の検出結果が得られ、これらの信号を一括して出力する。)。 ・ 質問4 「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」を用いると、「第一検出部」及び「第二検出部」のそれぞれの「信号」は、いつの時点の値がどのような時点で検出されて「信号」となり、一括した後どのような時点で「出力」されるのかについて不明になると考えられるので、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」によって、どのような技術的課題を解決しているのか説明して下さい。 (2)質問に対する回答 上述の如き質問1?4に対して回答を行います。 ・ 質問1に対して 明細書には、段落[0026]-[0029]、[0047]-[0049]等に示しますように、蓄電装置30の制御部31が検出結果を取得するまでに、まず第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42からの出力が行われ、次に当該第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42から検出結果を取得した後に、検出結果の出力側である第一複合センサ40(より詳細には「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」)から出力が行われる、ことが示されています。 すなわち、明細書には、図1と同様の構成となる、第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42が第一複合センサ40(より詳細には「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」)から独立した構成が示されています。 このように、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」とは、第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42から独立してこれらからの検出結果を取得可能であって、且つ、蓄電装置30の制御部31へと第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42の電力の情報に関する信号を一括して出力可能な場所にある構成です。 すなわち、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」とは、図1に示します「第一複合センサ40」にある構成です。 ・ 質問2に対して 明細書には、段落[0064]等に示しますように、第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42による検出結果を用いて蓄電装置30の充放電を制御する場合に、複合センサから一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置30の充放電を制御することによって、制御部31が蓄電装置30の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じることを防止する、ことが記載されています。 このように、本件発明は、蓄電装置の充放電の制御に必要な複数の情報(第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42による検出結果)を、同時に充放電制御手段(制御部31)に取得させるための技術です。 すなわち、明細書に記載される「タイムラグ」とは、技術的な意味として、第一と第二の信号に差(制御手段における第一の信号の取得タイミングと第二の信号の取得タイミングとの差)が生じる意味を持つものです。 ・ 質問3に対して 上述したように、明細書に記載される「タイムラグ」とは、技術的な意味として、第一と第二の信号に差が生じる意味を持つものです。 すなわち、訂正事項の「一括して出力」とは、蓄電装置が第一と第二の信号を取得するまでに時間の差が生じる(タイムラグが生じる)ことを防止するために行われているものであり、検出された第一と第二の信号を同時に出力する、という技術的意味で用いられていることは明確であると思います。 従いまして、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力する」には、第一検出部及び第二検出部の検出結果が得られると当該第一検出部及び第二検出部の検出結果を保持可能であることや、それぞれ保持した第一検出部及び第二検出部の検出結果を括って同時に出力すること、のような技術的事項が含まれていることは明確であると思います。 つまり、具体的には、2つのCTセンサ部は所定の周期でその時点の値をその時点で検出し、この検出結果を出力しているので、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」には常に検出結果が届いているものと解釈できますから、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」は届いている検出結果を1つにまとめて出力していることで、受け取り側の充放電制御手段はタイムラグなく(充放電の制御に)必要な検出結果を同時に受信することが可能となります。 こうして、例えば審尋にて例示された上記(ア)?(ウ)のような技術的事項におきましては、(イ)及び(ウ)のような技術的事項が「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力する」に相当するものであるといえます。 これに対して、(ア)のような技術的事項は、第一検出部の検出結果と第二検出部の検出結果とが互いに得られた時に一括して出力するものでない点で、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力する」に相当しないものであるといえます。 このように、訂正事項の「一括して出力」がいかなる技術的意味で用いられているのか明確であると思います。 ・ 質問4に対して 「第一検出部」及び「第二検出部」においては、例えばそれぞれ所定の周期でその時点の値がその時点で検出されて「信号」となり、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」へと出力されます。そして、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」は、出力された「第一検出部」及び「第二検出部」の検出結果を互いに括って同時に充放電制御手段へと出力します。 このように、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」によって、第一検出部から検出結果を取得するタイミングと第二検出部から検出結果を取得するタイミングとの差を解消するように、2つの検出結果を互いに括って同時に出力することで充放電制御手段は2つの検出結果をまとめて取得することができます。 こうして、「前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段」によって、充放電制御手段が蓄電装置の充放電の制御に必要な情報(すなわち、第一検出部及び第二検出部の検出結果)を取得するまでに時間の差が生じ(タイムラグが生じ)、このタイムラグにより蓄電装置の充放電をタイミング良く行うことが困難となるという技術的課題を解決しています。」 しかし、意見書や回答書の記載を参照すると、信号を一括して出力するための手段が、信号の時間的ずれ(タイムラグの発生)を防止するために、各信号に時間的な処理を行うことが前提となっており、本件訂正発明1、2の発明特定事項や、発明の詳細な説明の記載に基づかない主張であって採用はできない。 例えば、意見書で例示された特許文献1?3は、複数の信号を一括して利用するときに、信号間にずれが生じる原因に対応し、ずれの原因を取り除くための時間的な処理手段を用いて、得られる一括出力にずれが生じることを防止することが示されている。つまり、複数の信号を一つにまとめるのみでは、複数の信号の間に時間的ずれが発生するので、特許文献1では、入力データを基準クロック時に合わせて補正する時刻一致化処理手段、特許文献2では、並列演算回路ブロックの出カ端子のラッチ回路により、同じタイミングで出力を行うための手段、特許文献3では、データの読み出し速度のバラツキが生じる各HDDの速度のバラツキを調整するための出力バッファ手段を設けることによって、複数の信号を一括して利用するとき、それぞれの信号がずれないように特有の時間的な処理を行うものである。 意見書で例示された特許文献1?3の記載には、信号を一括するのみでタイムラグの発生を防止する技術が記載も示唆もされていない。 回答書には、「2つのCTセンサ部は所定の周期でその時点の値をその時点で検出し、この検出結果を出力しているので、『前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段』には常に検出結果が届いているものと解釈できますから、『前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段』は届いている検出結果を1つにまとめて出力していることで、受け取り側の充放電制御手段はタイムラグなく(充放電の制御に)必要な検出結果を同時に受信することが可能となります。」とあるものの、CTセンサ部は所定の周期でその時点の値をその時点で検出することや、「信号を一括して出力するための手段」には所定周期の信号が届き、届いている検出結果を1つにまとめ同時に充放電制御手段へと出力すること等の時間的な処理手段については、発明の詳細な説明に記載されていないことは勿論、本件訂正発明1、2の発明特定事項に基づくものでもない。 そうすると、本件訂正発明1、2の「信号を一括」には、信号のずれを揃える、という時間的な概念はなく、意見書や回答書の記載を参照しても、時間的概念のない「信号を一括して出力するための手段」によって、時間的なずれであるタイムラグを防止できるとはいえないので、特許権者の上記主張を採用することはできない。 6 むすび 以上のとおり、本件訂正発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、本件訂正発明1及び2の記載は明確でないので、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合しない。 そうすると、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものである。 したがって、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 なお、本件訂正発明1及び2に係る発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができず、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しないものでもあり、この点においても、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電力供給システム 【技術分野】 【0001】 本発明は、住宅等に備えられる電力供給システムの技術に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、住宅等に備えられた電力供給システムにおいて、商用電源や太陽光発電部からの電力を蓄電装置(蓄電池)に充電可能とし、それらの電力を負荷へと供給する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。 【0003】 前記電力供給システムは、電力を検出可能な複数のCTセンサ(電力検出手段)と、当該複数のCTセンサによる検出結果が入力され、当該入力された検出結果に応じて蓄電装置の充放電を制御するホームサーバ(充放電制御手段)と、が設けられる。 【0004】 このような構成により、前記電力供給システムは、複数のCTセンサからの検出結果がホームサーバに入力され、当該入力された検出結果に応じて蓄電装置の充放電を行うことができる。 【0005】 しかしながら、前記電力供給システムは、複数のCTセンサがそれぞれ独立してホームサーバに接続されているため、当該複数のCTセンサからの検出結果がそれぞれ独立して当該ホームサーバに入力されている。すなわち、前記電力供給システムでは、ホームサーバが蓄電装置の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じ、このタイムラグにより蓄電装置の充放電をタイミング良く行うことが困難となる点で不利であった。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2012-5168号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、充放電制御手段が蓄電装置の制御に必要な情報の取得までにタイムラグが生じることを防止して、電力検出手段による検出結果に応じて蓄電装置の充放電をタイミング良く行うことができる電力供給システムを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。 【0009】 即ち、請求項1においては、太陽光を受けて発電可能な太陽光発電部と、商用電源及び前記太陽光発電部に接続される分電盤と、前記分電盤と接続され、前記分電盤と電力のやり取りが可能な蓄電装置と、電力を検出可能な第一電力検出手段と、前記第一電力検出手段の検出結果に応じて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御手段と、を具備し、前記第一電力検出手段は、前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出するCTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、前記蓄電装置と前記分電盤との電力のやり取りに関して、任意に選択可能な第一モード及び第二モードを有し、前記第一モードが選択されると、前記太陽光発電部が発電し、かつ、前記太陽光発電部の発電電力が前記商用電源へと逆潮流している場合には、前記蓄電装置から前記分電盤への電力の放電を不可能として、前記第二モードが選択されると、前記太陽光発電部が発電し、かつ、前記太陽光発電部から前記分電盤に供給した発電電力に余剰が生じた場合には、余剰した前記発電電力を前記商用電源へと逆潮流させずに前記蓄電装置に充電し、前記太陽光発電部が発電していない場合には、前記蓄電装置から前記分電盤へと電力を放電するものである。 【0010】 請求項2においては、太陽光を受けて発電可能な太陽光発電部と、商用電源及び前記太陽光発電部に接続される分電盤と、前記分電盤と接続され、前記分電盤へと電力を供給可能な燃料電池と、前記分電盤と接続され、前記分電盤と電力のやり取りが可能な蓄電装置と、電力を検出可能な第二電力検出手段と、前記第二電力検出手段の検出結果に応じて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御手段と、を具備し、前記第二電力検出手段は、前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出するCTセンサ部としての第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出するCTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、前記蓄電装置と前記分電盤との電力のやり取りに関して、任意に選択可能な第三モード及び第四モードを有し、前記第三モードが選択されると、前記燃料電池からの電力が優先的に前記分電盤に供給される状態となり、前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より少ない場合には、前記燃料電池からの余剰電力を前記蓄電装置に充電し、前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より多い場合には、前記分電盤の不足電力を前記蓄電装置から放電して、前記第四モードが選択されると、前記太陽光発電部が発電している場合には、前記太陽光発電部の発電電力を前記商用電源へと逆潮流させずに前記蓄電装置に充電し、前記太陽光発電部が発電しておらず、かつ、前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より多い場合には、前記分電盤の不足電力を前記蓄電装置から放電するものである。 【0011】 【0012】 【発明の効果】 【0013】 本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。 【0014】 請求項1においては、充放電制御手段が蓄電装置の制御に必要な情報の取得までにタイムラグが生じることを防止して、電力検出手段による検出結果に応じて蓄電装置の充放電をタイミング良く行うことができる。 また、比較的少ない電力検出手段を用いて、太陽光発電部で発電した電力を売電することを目的とした第一モードと、太陽光発電部で発電した電力を蓄電装置に充電しておき、必要に応じて当該充電した電力を例えば住宅内で消費すること目的とした第二モードとを、任意に選択可能となる。 【0015】 請求項2においては、充放電制御手段が蓄電装置の制御に必要な情報の取得までにタイムラグが生じることを防止して、電力検出手段による検出結果に応じて蓄電装置の充放電をタイミング良く行うことができる。 また、比較的少ない電力検出手段を用いて、太陽光発電部で発電した電力を売電することを目的とした第三モードと、太陽光発電部で発電した電力を蓄電装置に充電しておき、必要に応じて当該充電した電力を例えば住宅内で消費すること目的とした第四モードとを、任意に選択可能となる。 【0016】 【0017】 【図面の簡単な説明】 【0018】 【図1】本発明の第一実施形態に係る電力供給システムの構成を示したブロック図。 【図2】同じく、電力供給システムの第一モードにおける電力の供給態様を示したブロック図。 【図3】(a)同じく、電力供給システムの第二モードにおける電力の供給態様を示したブロック図。(b)同じく、電力供給システムの第二モードにおける電力の供給態様を示したブロック図。 【図4】本発明の第二実施形態に係る電力供給システムの構成を示したブロック図。 【図5】(a)同じく、電力供給システムの第三モードにおける電力の供給態様を示したブロック図。(b)同じく、電力供給システムの第三モードにおける電力の供給態様を示したブロック図。 【図6】(a)同じく、電力供給システムの第四モードにおける電力の供給態様を示したブロック図。(b)同じく、電力供給システムの第四モードにおける電力の供給態様を示したブロック図。 【発明を実施するための形態】 【0019】 以下では、図1を用いて、本発明の実施の第一形態に係る電力供給システム1の構成について説明する。 【0020】 電力供給システム1は、住宅等に設けられ、商用電源90からの電力及び太陽光を利用して発電された電力を負荷へと供給するものである。電力供給システム1は、主として太陽光発電部10、分電盤20、蓄電装置30、第一複合センサ40を具備する。 【0021】 太陽光発電部10は、太陽光を利用して発電する装置であり、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部10は、例えば、住宅の屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。 なお、太陽光発電部10は、本発明に係る「太陽光発電部」の一実施形態である。 【0022】 分電盤20は、図示せぬ漏電遮断器、配線遮断器、及び制御ユニット等をまとめたものである。分電盤20は、複数の負荷への電力供給の可否をそれぞれ切り替え可能に構成される。分電盤20は、太陽光発電部10及び商用電源90に接続される。 なお、分電盤20は、本発明に係る「分電盤」の一実施形態である。 【0023】 蓄電装置30は、分電盤20と電力のやり取りが可能なものである。蓄電装置30は、電力を充電すると共に、当該充電した電力を放電することができる。本実施形態に係る蓄電装置30は、電力を充放電可能なリチウムイオン電池やニッケル水素電池等からなる蓄電池、供給されてくる交流電力を整流して蓄電池に充電させる充電器、及び蓄電池からの直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ等を具備する。蓄電装置30は、分電盤20に接続される。 【0024】 また、蓄電装置30は、制御部31を具備する。制御部31は、前記充電器や前記インバータ等を制御し、ひいては蓄電装置30の充放電を制御するものである。制御部31は、主としてCPU等の演算処理装置、RAMやROM等の記憶装置、並びにI/O等の入出力装置等により構成される。制御部31は、蓄電装置30に内蔵されている。 【0025】 なお、蓄電装置30は、本発明に係る「蓄電装置」の一実施形態である。また、蓄電装置30の制御部31は、本発明に係る「充放電制御手段」の一実施形態である。 【0026】 第一複合センサ40は、回路の所定位置における電力を検出可能に構成される。第一複合センサ40は、第一CTセンサ部41と、第二CTセンサ部42と、を組み合わせた複合センサとして構成される。第一複合センサ40は、検出結果に関する信号の出力側として、蓄電装置30(より詳細には、蓄電装置30の制御部31)に接続される。 【0027】 第一CTセンサ部41は、回路の所定位置における電力(電流値)を検出するものである。第一CTセンサ部41は、電力を検出した場合に、当該電力の情報(電力量等)に関する信号を出力する。第一CTセンサ部41は、太陽光発電部10の供給側(太陽光発電部10から需要者の住宅へと(発電)電力を供給する配電線)に設けられ、当該太陽光発電部10からの電力を検出することができる。 【0028】 第二CTセンサ部42は、回路の所定位置における電力(電流値)を検出するものである。第二CTセンサ部42は、電力を検出した場合に、接点信号を含む当該電力の情報(電力量や、流れる方向等)に関する信号を出力する。第二CTセンサ部42は、商用電源90の供給側(商用電源90から需要者の住宅へと電力を供給する配電線)に設けられ、当該商用電源90からの電力及び当該商用電源90への電力(すなわち、逆潮流する電力)を検出することができる。 【0029】 このように、第一複合センサ40は、太陽光発電部10からの(発電)電力と、商用電源90からの電力及び商用電源90への電力(すなわち、逆潮流する電力)と、を検出可能であり、これらの電力の情報に関する信号を蓄電装置30の制御部31へと一括して出力可能に構成される。 【0030】 なお、第一複合センサ40は、本発明に係る「第一電力検出手段」の一実施形態である。また、第一CTセンサ部41は、本発明に係る「第一検出部」の一実施形態である。また、第二CTセンサ部42は、本発明に係る「第二検出部」の一実施形態である。 【0031】 以下では、前述の如く構成された電力供給システム1における電力の供給態様について説明する。 【0032】 なお、以下の説明における電力の流通方向の変更は、図示せぬホームサーバ等の制御手段により制御される構成とすることや、図示せぬスイッチ部やパワーコンディショナが有する制御部によりそれぞれ制御される構成とすることが可能であり、本発明はこれを限定するものではない。 【0033】 太陽光発電部10において発電された電力は、分電盤20に供給される。また、商用電源90からの電力も分電盤20に供給される。 【0034】 太陽光発電部10及び商用電源90から分電盤20に供給された電力は、当該分電盤20に接続された前記複数の負荷に供給可能とされる。すなわち、居住者は、太陽光発電部10及び商用電源90からの電力によって、照明を点灯させたり、調理器具やエアコンを使用したりすることができる。 【0035】 この場合において、分電盤20で消費する電力が、太陽光発電部10からの電力だけで十分まかなえる場合は、商用電源90からの電力を用いないようにすることも可能である。これによって、電力料金を節約することができる。 【0036】 また、太陽光発電部10及び商用電源90から分電盤20に供給された電力は、適宜の時間帯に蓄電装置30に充電される。当該充電する時間帯は、居住者の任意に設定することができる。 【0037】 例えば深夜に充電するように設定すれば、料金の安い深夜電力を蓄電装置30に充電することができる。また、昼間の太陽光が十分に照射される時間帯に太陽光発電部10からの電力を充電するように設定すれば、当該太陽光発電部10において自然エネルギー(太陽光)を利用して発電された電力を蓄電装置30に充電することができる。 【0038】 一方、蓄電装置30に充電された電力を、分電盤20に供給することも可能である。蓄電装置30から分電盤20に電力を供給する時間帯は、居住者の任意に設定することができる。例えば深夜に充電した電力をその他(深夜以外)の時間帯に分電盤20に供給することによって、当該時間帯に商用電源90から供給される電力(買電)を減らすことができ、電力料金を節約することができる。 【0039】 また、分電盤20で消費する電力が、主に蓄電装置30からの電力だけで十分まかなえる場合は、太陽光発電部10及び商用電源90からの電力を用いないようにすることも可能である。 【0040】 例えば、深夜において、料金の安い深夜電力を商用電源90から蓄電装置30に充電すると共に、住宅に居住者が不在であり分電盤20で電力があまり消費されることがない昼間において、太陽光発電部10からの電力を蓄電装置30に充電しておく。当該蓄電装置30に充電された電力を、居住者が住宅に帰宅してから就寝するまでの分電盤20で電力が多く消費される時間帯に当該分電盤20へと供給する。これによって、電力料金を節約することができる。 【0041】 次に、前述の如く構成された電力供給システム1における電力の供給態様のうち、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様(モード)について説明する。 【0042】 電力供給システム1では、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様(モード)が予め設定されている。なお、本実施形態では、電力供給システム1は、前記モードとして、2つのモード(以下では、「第一モード」と、「第二モード」と、それぞれ称する。)を有している。第一モード及び第二モードは、例えば居住者により任意に選択可能に構成される。 なお、選択されるモードに関する情報は、例えば蓄電装置30の制御部31の構成要素の一つである記憶装置に格納される。制御部31は、前記モードに関する情報と第一複合センサ40が出力する電力の情報に関する信号に応じて後述するような蓄電装置30の充放電の制御を行う。 【0043】 第一モードは、太陽光発電部10で発電した電力を売電する(商用電源90へと逆潮流させる)ことを目的として、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様が設定されたモードである。 【0044】 第二モードは、太陽光発電部10で発電した電力を蓄電装置30に充電しておき、必要に応じて当該充電した電力を住宅内で消費することを目的として、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様が設定されたモードである。 【0045】 次に、図2を用いて、電力供給システム1において、第一モードが選択された場合の、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様について説明する。 【0046】 第一モードが選択された場合に、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様は、第一複合センサ40の検出結果に応じて、蓄電装置30から分電盤20への電力の供給が不可能となるように構成される。 【0047】 前記「第一複合センサ40の検出結果」とは、具体的には、以下に示す2つの検出結果(以下では、「第一検出結果」と称する。)により構成される。 【0048】 第一検出結果のうち1つ目の検出結果は、太陽光発電部10からの(発電)電力を示す検出結果である。すなわち、第一検出結果のうち1つ目の検出結果は、太陽光発電部10により発電された電力を、第一CTセンサ部41が検出した場合に得られるものである。 【0049】 第一検出結果のうち2つ目の検出結果は、太陽光発電部10からの電力が商用電源90へと逆潮流していることを示す検出結果である。すなわち、第一検出結果のうち2つ目の検出結果は、太陽光発電部10から分電盤20に電力が供給された場合に、当該太陽光発電部10から供給された電力が分電盤20で消費する電力より多いため余剰電力が発生し、当該余剰電力が商用電源90へと逆潮流していることを、第二CTセンサ部42が検出した場合に得られるものである。 【0050】 このように、第一モードが選択された場合であって、第一複合センサ40により第一検出結果が得られた場合、すなわち、太陽光発電部10が発電し、かつ、太陽光発電部10からの電力が商用電源90へと逆潮流している場合には、図2に示すように、電力供給システム1は、蓄電装置30から分電盤20への電力の供給を不可能とする。 【0051】 これによって、例えば、太陽光発電部10の発電時に蓄電装置30から分電盤20へと電力が供給されると電力の売電価格が安くなるという規則がある場合には、蓄電装置30から分電盤20への電力の供給を不可能とすることにより、太陽光発電部10からの電力の売電価格が安くなることを防止することができる。このように、電力供給システム1は、第一モードが選択された場合には、第一複合センサ40の検出結果に応じて居住者に金銭的な利益を与えることができる。 【0052】 次に、図3を用いて、電力供給システム1において、第二モードが選択された場合の、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様について説明する。 【0053】 第二モードが選択された場合に、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様は、第一複合センサ40の検出結果に応じて、蓄電装置30に電力を充電したり、蓄電装置30から分電盤20へと電力を放電(供給)したりするように構成される。 【0054】 なお、第二モードが選択された場合に、蓄電装置30に電力を充電することになる前記「第一複合センサ40の検出結果」とは、具体的には、以下に示す2つの検出結果(以下では、「充電用第二検出結果」と称する。)により構成される。 【0055】 また、第二モードが選択された場合に、蓄電装置30から分電盤20へと電力を放電(供給)することになる前記「第一複合センサ40の検出結果」とは、具体的には、以下に示す1つの検出結果(以下では、「放電用第二検出結果」と称する。)により構成される。 【0056】 充電用第二検出結果のうち1つ目の検出結果は、太陽光発電部10からの電力を示す検出結果である。すなわち、充電用第二検出結果のうち1つ目の検出結果は、太陽光発電部10により発電された電力を、第一CTセンサ部41が検出した場合に得られるものである。 【0057】 充電用第二検出結果のうち2つ目の検出結果は、太陽光発電部10から分電盤20に供給した電力に余剰が生じたことを示す検出結果である。すなわち、充電用第二検出結果のうち2つ目の検出結果は、太陽光発電部10から分電盤20に電力が供給された(太陽光発電部10が発電している)場合に、当該太陽光発電部10から供給された電力が分電盤20で消費する電力より多いため余剰電力が発生し、当該余剰電力が商用電源90へと逆潮流していることを、第二CTセンサ部42が検出した場合に得られるものである。 【0058】 このように、第二モードが選択された場合であって、第一複合センサ40により充電用第二検出結果が得られた場合、すなわち、太陽光発電部10が発電し、かつ、太陽光発電部10から分電盤20に供給した電力に余剰が生じた場合には、図3(a)に示すように、電力供給システム1は、当該余剰電力を商用電源90へと逆潮流させずに蓄電装置30に充電させる。 【0059】 放電用第二検出結果は、太陽光発電部10からの電力を検出していない(すなわち、電力を検出したとの検出結果を得ていない)ことを示す検出結果である。すなわち、充電用第二検出結果は、太陽光発電部10が発電していない場合に得られるものである。 【0060】 このように、第二モードが選択された場合であって、第一複合センサ40により放電用第二検出結果が得られた場合、すなわち、太陽光発電部10が発電していない場合には、図3(b)に示すように、電力供給システム1は、蓄電装置30から分電盤20へと電力を供給させる。 【0061】 これによって、第二モードが選択された場合には、太陽光発電部10で発電した電力を蓄電装置30に充電しておき、必要に応じて(商用電源90からの電力ではなく)当該充電した電力を住宅内で消費することをできる。すなわち、第二モードが選択された場合には、電力供給システム1は、第一複合センサ40の検出結果に応じて省エネ効果を得ることができる。 【0062】 なお、図3に示す第二モードにおいて、太陽光発電部10での発電状態にかかわらず、商用電源90からの電力を分電盤20が使用していると判断した場合に蓄電装置30から放電をする構成としてもよい。つまり、第一CTセンサ部41が太陽光発電部10での発電を検出したか否かにかかわらず、第二CTセンサ部42が商用電源90から分電盤20へ向かっての電力供給がある(あるいは第二CTセンサ部42に設定されたレベルの電力を超えた電力が供給されている)ことを検出した場合に蓄電装置30から分電盤20への放電を行う。このようにすれば、太陽光発電部10での発電があると判断された場合でも、分電盤20の不足した電力として商用電源90を使用することを抑えることができる。 【0063】 以上のように、電力供給システム1は、 太陽光を受けて発電可能な太陽光発電部10と、 商用電源90及び前記太陽光発電部10に接続される分電盤20と、 前記分電盤20と接続され、前記分電盤20と電力のやり取りが可能な蓄電装置30と、 電力を検出可能な第一電力検出手段(第一複合センサ40)と、 前記第一電力検出手段(第一複合センサ40)の検出結果に応じて前記蓄電装置30の充放電を制御する充放電制御手段(制御部31)と、 を具備し、 前記第一電力検出手段(第一複合センサ40)は、 前記太陽光発電部10の発電電力を検出する第一検出部(第一CTセンサ部41)と、前記商用電源90へと逆潮流される電力を検出する第二検出部(第二CTセンサ部42)と、から構成される複合センサであるものである。 【0064】 このような構成により、第一CTセンサ部41及び第二CTセンサ部42による検出結果を用いて蓄電装置30の充放電を制御する場合には、複合センサである第一複合センサ40から一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置30の充放電を制御することができる。すなわち、制御部31が蓄電装置30の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じることを防止して、第一複合センサ40による検出結果に応じて蓄電装置30の充放電をタイミング良く行うことができる。 【0065】 また、蓄電装置30の充放電を制御するために複合センサである第一複合センサ40を用いるので、設置スペースを余分に確保する必要がなく、電力供給システム1のコンパクト化を図ることができる。 【0066】 また、電力供給システム1は、 前記蓄電装置30と前記分電盤20との電力のやり取りに関して、任意に選択可能な第一モード及び第二モードを有し、 前記第一モードが選択されると、 前記太陽光発電部10が発電し、かつ、前記太陽光発電部10の発電電力が前記商用電源90へと逆潮流している場合には、前記蓄電装置30から前記分電盤20への電力の放電を不可能として、 前記第二モードが選択されると、 前記太陽光発電部10が発電し、かつ、前記太陽光発電部10から前記分電盤20に供給した発電電力に余剰が生じた場合には、前記余剰電力を前記商用電源90へと逆潮流させずに前記蓄電装置30に充電し、 前記太陽光発電部10が発電していない場合には、前記蓄電装置30から前記分電盤20へと電力を放電するものである。 【0067】 このような構成により、(比較的少ない)1つの電力検出手段(第一複合センサ40)を用いて、太陽光発電部10で発電した電力を売電することを目的とした第一モードと、太陽光発電部10で発電した電力を蓄電装置に充電しておき、必要に応じて当該充電した電力を例えば住宅内で消費すること目的とした第二モードとが、任意に選択可能となる。 【0068】 また、本実施形態では、前述の如く、本発明に係る「充放電制御手段」の一実施形態として蓄電装置30の制御部31を用いたが、例えば前記ホームサーバ等の制御手段を用いる構成(すなわち、第一複合センサ40から出力される信号が、前記ホームサーバ等の制御手段に入力される構成)としても良い。 【0069】 次に、図4を用いて、本発明の実施の第二実施形態に係る電力供給システム2の構成について説明する。 【0070】 なお、図4中において、第一実施形態に係る電力供給システム1の構成と同一の箇所には、同一の符号を付することでその説明を省略する。 【0071】 電力供給システム2は、住宅等に設けられ、商用電源90からの電力、太陽光を利用して発電された電力、及び燃料電池50からの電力を負荷へと供給するものである。電力供給システム1は、主として太陽光発電部10、分電盤20、蓄電装置30、燃料電池50、第二複合センサ60を具備する。 【0072】 なお、第二実施形態に係る電力供給システム2の構成が、第一実施形態に係る電力供給システム1の構成と異なる点は、燃料電池50が設けられている点と、(第一複合センサ40の代わりに)第二複合センサ60が設けられている点である。 【0073】 燃料電池50は、固体酸化物形燃料電池(SOFC : Solid Oxide Fuel Cell)等により構成され、前記住宅に設置される燃料電池である。燃料電池50は、供給される燃料(例えば、水素等)を用いて発電することが可能である。また、燃料電池50は図示せぬ貯湯ユニットを備え、発電時に発生する熱を用いて当該貯湯ユニット内で湯を沸かすことができる。燃料電池50は、分電盤20に接続される。 【0074】 第二複合センサ60は、回路の所定位置における電力を検出可能に構成される。第二複合センサ60は、前記第一CTセンサ部41と、第三CTセンサ部43と、第四CTセンサ部44と、を組み合わせた複合センサとして構成される。第二複合センサ60は、検出結果に関する信号の出力側として、蓄電装置30(より詳細には、蓄電装置30の制御部31)に接続される。 【0075】 第三CTセンサ部43は、回路の所定位置における電力(電流値)を検出するものである。第三CTセンサ部43は、電力を検出した場合に、当該電力の情報(電力量等)に関する信号を出力する。第三CTセンサ部43は、分電盤20の需要側(太陽光発電部10、商用電源90、及び燃料電池50から需要者の住宅へと電力が供給される配電線)に設けられ、分電盤20に供給される電力(ひいては、分電盤20の消費電力)を検出することができる。 【0076】 第四CTセンサ部44は、回路の所定位置における電力(電流値)を検出するものである。第四CTセンサ部44は、電力を検出した場合に、接点信号を含む当該電力の情報(電力量等)に関する信号を出力する。第四CTセンサ部44は、燃料電池50の供給側(燃料電池50から需要者の住宅へと(発電)電力を供給する配電線)に設けられ、当該燃料電池50からの電力を検出することができる。 【0077】 このように、第二複合センサ60は、太陽光発電部10からの(発電)電力と、分電盤20の消費電力と、燃料電池50からの電力と、を検出可能であり、これらの電力の情報に関する信号を蓄電装置30の制御部31へと一括して出力可能に構成される。 【0078】 なお、第二複合センサ60は、本発明に係る「第二電力検出手段」の一実施形態である。また、第三CTセンサ部43は、本発明に係る「第三検出部」の一実施形態である。また、第四CTセンサ部44は、本発明に係る「第四検出部」の一実施形態である。 【0079】 なお、前述の如く構成された電力供給システム2における電力の供給態様は、第一実施形態に係る電力供給システム1における電力の供給態様に加え、さらに燃料電池50において発電された電力も分電盤20へ供給される。 ここで、燃料電池50は、比較的安価であるガスを使用するものであり、さらには排熱利用を可能とするものである。したがって、本実施形態においては、蓄電装置30よりも燃料電池50からの電力を優先して利用するものとして設定される。 【0080】 次に、前述の如く構成された電力供給システム2における電力の供給態様のうち、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様(モード)について説明する。 【0081】 電力供給システム2では、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様(モード)が予め設定されている。なお、本実施形態では、電力供給システム2は、前記モードとして、2つのモード(以下では、「第三モード」と、「第四モード」と、それぞれ称する。)を有している。第三モード及び第四モードは、例えば居住者により任意に選択可能に構成される。 【0082】 第三モードは、太陽光発電部10で発電した電力を売電する(商用電源90へと逆潮流させる)ことを目的として、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様が設定されたモードである。 【0083】 第四モードは、太陽光発電部10で発電した電力を蓄電装置30に充電しておき、必要に応じて当該充電した電力を住宅内で消費することを目的として、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様が設定されたモードである。 【0084】 次に、図5を用いて、電力供給システム2において、第三モードが選択された場合の、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様について説明する。 【0085】 第三モードが選択された場合に、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様は、第二複合センサ60の検出結果に応じて、蓄電装置30に電力を充電したり、蓄電装置30から分電盤20へと電力を放電(供給)したりするように構成される。 【0086】 なお、第三モードが選択される場合には、電力供給システム2は、燃料電池50からの電力が、太陽光発電部10からの電力及び商用電源90からの電力に優先して、分電盤20に供給されるように構成される。 【0087】 なお、第三モードが選択された場合に、蓄電装置30に電力を充電することになる前記「第二複合センサ60の検出結果」とは、具体的には、以下に示す1つの検出結果(以下では、「充電用第三検出結果」と称する。)により構成される。 【0088】 また、第三モードが選択された場合に、蓄電装置30から分電盤20へと電力を放電(供給)することになる前記「第二複合センサ60の検出結果」とは、具体的には、以下に示す1つの検出結果(以下では、「放電用第三検出結果」と称する。)により構成される。 【0089】 充電用第三検出結果は、燃料電池50から分電盤20に供給した電力に余剰が生じたことを示す検出結果である。すなわち、燃料電池50からの電力が優先的に分電盤20に供給された場合に、燃料電池50から分電盤20に供給された電力が第四CTセンサ部44により得られ、また分電盤20の消費電力が第三CTセンサ部43により得られる。そして、充電用第三検出結果は、第三CTセンサ部43により得られた電力(検出結果)が、第四CTセンサ部44により得られた電力(検出結果)より少ない場合に得られるものである。 【0090】 このように、第三モードが選択された場合であって、充電用第三検出結果が得られた場合、すなわち、燃料電池50から電力が優先的に供給される状態となり、分電盤20の消費電力が燃料電池50から分電盤20に供給した電力より少ない場合には、図5(a)に示すように、電力供給システム2は、燃料電池50からの余剰電力を蓄電装置30に充電させる。そして、太陽光発電部10で発電した電力を売電する(商用電源90へと逆潮流させる)ことができる。 【0091】 放電用第三検出結果は、燃料電池50から分電盤20に供給した電力に不足が生じたことを示す検出結果である。すなわち、燃料電池50からの電力が優先的に分電盤20に供給された場合に、燃料電池50から分電盤20に供給された電力が第四CTセンサ部44により得られ、また分電盤20の消費電力が第三CTセンサ部43により得られる。そして、充電用第三検出結果は、第三CTセンサ部43により得られた電力(検出結果)が、第四CTセンサ部44により得られた電力(検出結果)より多い場合に得られるものである。 【0092】 このように、第三モードが選択された場合であって、放電用第三検出結果が得られた場合、すなわち、燃料電池50から電力が優先的に供給される状態となり、分電盤20の消費電力が燃料電池50から分電盤20に供給した電力より多い場合には、図5(b)に示すように、電力供給システム2は、分電盤20の不足した電力を蓄電装置30から供給させる。そして、太陽光発電部10で発電した電力を売電する(商用電源90へと逆潮流させる)ことができる。 【0093】 これによって、第三モードが選択された場合には、分電盤20で消費する電力として燃料電池50及び蓄電装置30から供給された電力を用いるため、太陽光発電部10で発電した電力を売電する(商用電源90へと逆潮流させる)ことができる。すなわち、電力供給システム2は、第三モードが選択された場合には、第二複合センサ60の検出結果に応じて居住者に金銭的な利益を与えることができる。 【0094】 なお、図5(a)に示す燃料電池50からの余剰電力を蓄電装置30へ充電させることに関しては、その可否を任意に選択可能な構成としてもよい。また、図5(b)に示す分電盤20の不足した電力を蓄電装置30から供給させることに関しては、その可否を任意に選択可能な構成としてもよい。 【0095】 次に、図6を用いて、電力供給システム2において、第四モードが選択された場合の、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様について説明する。 【0096】 第四モードが選択された場合に、蓄電装置30と分電盤20との電力のやり取りに関する態様は、第二複合センサ60の検出結果に応じて、蓄電装置30に電力を充電したり、蓄電装置30から分電盤20へと電力を放電(供給)したりするように構成される。 【0097】 なお、第四モードが選択された場合に、蓄電装置30に電力を充電することになる前記「第二複合センサ60の検出結果」とは、具体的には、以下に示す1つの検出結果(以下では、「充電用第四検出結果」と称する。)により構成される。 【0098】 また、第四モードが選択された場合に、蓄電装置30から分電盤20へと電力を放電(供給)することになる前記「第二複合センサ60の検出結果」とは、具体的には、以下に示す2つの検出結果(以下では、「放電用第四検出結果」と称する。)により構成される。 【0099】 充電用第四検出結果は、太陽光発電部10からの電力を示す検出結果である。すなわち、充電用第四検出結果は、太陽光発電部10により発電された電力を、第一CTセンサ部41が検出した場合に得られるものである。 【0100】 このように、第四モードが選択された場合であって、第二複合センサ60により充電用第四検出結果が得られた場合、すなわち、太陽光発電部10が発電している場合には、図6(a)に示すように、電力供給システム2は、当該発電した電力を商用電源90へと逆潮流させずに蓄電装置30に充電させる。 【0101】 放電用第四検出結果のうち1つ目の検出結果は、太陽光発電部10からの電力を検出していない(すなわち、電力を検出したとの検出結果を得ていない)ことを示す検出結果である。すなわち、放電用第二検出結果のうち1つ目の検出結果は、太陽光発電部10により発電された電力を、第一CTセンサ部41が検出していない場合に(電力を検出したとの検出結果を得ていないことにより)得られるものである。 【0102】 放電用第四検出結果のうち2つ目の検出結果は、燃料電池50から分電盤20に供給した電力に不足が生じたことを示す検出結果である。すなわち、燃料電池50から分電盤20に供給された電力が第四CTセンサ部44により得られ、また分電盤20の消費電力が第三CTセンサ部43により得られる。そして、放電用第四検出結果のうち2つ目の検出結果は、第三CTセンサ部43により得られた電力(検出結果)が、第四CTセンサ部44により得られた電力(検出結果)より多い場合に得られるものである。 【0103】 このように、第四モードが選択された場合であって、第二複合センサ60により放電用第四検出結果が得られた場合、すなわち、太陽光発電部10が発電しておらず、かつ、分電盤20の消費電力が燃料電池50から分電盤20に供給した電力より多い場合には、図6(b)に示すように、電力供給システム2は、分電盤20の不足した電力を蓄電装置30から供給させる。 【0104】 これによって、第四モードが選択された場合には、太陽光発電部10で発電した電力を蓄電装置30に充電しておき、必要に応じて(商用電源90及び燃料電池50からの電力ではなく)当該充電した電力を住宅内で消費することをできる。すなわち、第四モードが選択された場合には、電力供給システム2は、第二複合センサ60の検出結果に応じて省エネ効果を得ることができる。 【0105】 以上のように、電力供給システム2は、 太陽光を受けて発電可能な太陽光発電部10と、 商用電源90及び前記太陽光発電部10に接続される分電盤20と、 前記分電盤20と接続され、前記分電盤20へと電力を供給可能な燃料電池50と、 前記分電盤20と接続され、前記分電盤20と電力のやり取りが可能な蓄電装置30と、 電力を検出可能な第二電力検出手段(第二複合センサ60)と、 前記第二電力検出手段(第二複合センサ60)の検出結果に応じて前記蓄電装置30の充放電を制御する充放電制御手段(制御部31)と、 を具備し、 前記第二電力検出手段(第二複合センサ60)は、 前記太陽光発電部10の発電電力を検出する第一検出部(第一CTセンサ部41)と、前記分電盤20の消費電力を検出する第三検出部(第三CTセンサ部43)と、前記燃料電池50から供給される電力を検出する第四検出部(第四CTセンサ部44)と、から構成される複合センサであるものである。 【0106】 このような構成により、第一CTセンサ部41、第三CTセンサ部43、及び第四CTセンサ部44による検出結果を用いて蓄電装置30の充放電を制御する場合には、複合センサである第二複合センサ60から一括して出力された信号に応じて当該蓄電装置30の充放電を制御することができる。すなわち、制御部31が蓄電装置30の充放電の制御に必要な情報を取得するまでにタイムラグが生じることを防止して、第二複合センサ60による検出結果に応じて蓄電装置30の充放電をタイミング良く行うことができる。 【0107】 また、蓄電装置30の充放電を制御するために複合センサである第二複合センサ60を用いるので、設置スペースを余分に確保する必要がなく、電力供給システム2のコンパクト化を図ることができる。 【0108】 また、電力供給システム2は、 前記蓄電装置30と前記分電盤20との電力のやり取りに関して、任意に選択可能な第三モード及び第四モードを有し、 前記第三モードが選択されると、 前記燃料電池50からの電力が優先的に分電盤20供給される状態となり、 前記分電盤20の消費電力が前記燃料電池50から前記分電盤20に供給した電力より少ない場合には、前記燃料電池50からの余剰電力を前記蓄電装置30に充電し、 前記分電盤20の消費電力が前記燃料電池50から前記分電盤20に供給した電力より多い場合には、前記分電盤20の不足電力を前記蓄電装置30から放電して、 前記第四モードが選択されると、 前記太陽光発電部10が発電している場合には、前記太陽光発電部10の発電電力を前記商用電源90へと逆潮流させずに前記蓄電装置30に充電し、 前記太陽光発電部10が発電しておらず、かつ、前記分電盤20の消費電力が前記燃料電池50から前記分電盤20に供給した電力より多い場合には、前記分電盤20の不足電力を前記蓄電装置30から放電するものである。 【0109】 このような構成により、(比較的少ない)1つの電力検出手段(第二複合センサ60)を用いて、太陽光発電部10で発電した電力を売電することを目的とした第三モードと、太陽光発電部10で発電した電力を蓄電装置に充電しておき、必要に応じて当該充電した電力を例えば住宅内で消費すること目的とした第四モードとが、任意に選択可能となる。 【0110】 なお、本発明に係る「電力供給システム」は、前述の如き電力供給システム1や電力供給システム2の構成に限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更することを妨げない。 例えば、図6(b)に示す電力の供給態様を第三モードとしてもよい。この場合、太陽光発電部10により発電された電力を第一CTセンサ部41が検出していない場合には、図6(b)に示す電力の供給態様とし、太陽光発電部10により発電された電力を第一CTセンサ部41が検出した場合には、第三CTセンサ43部及び第四CTセンサ44部の検出結果に応じて図5(a)あるいは図5(b)のいずれかに示す電力の供給態様とすればよい。このようにすれば、第四モードを選択することなく、第三モードを選択することによって図6(b)に示す電力の供給態様が実現可能となる。 【符号の説明】 【0111】 1 電力供給システム 10 太陽光発電部 20 分電盤 30 蓄電装置 31 制御部 40 第一複合センサ 41 第一CTセンサ部 42 第二CTセンサ部 90 商用電源 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 太陽光を受けて発電可能な太陽光発電部と、 商用電源及び前記太陽光発電部に接続される分電盤と、 前記分電盤と接続され、前記分電盤と電力のやり取りが可能な蓄電装置と、 電力を検出可能な第一電力検出手段と、 前記第一電力検出手段の検出結果に応じて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御手段と、 を具備し、 前記第一電力検出手段は、 前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記商用電源へと逆潮流される電力を検出するCTセンサ部としての第二検出部と、前記第一検出部及び前記第二検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、 前記蓄電装置と前記分電盤との電力のやり取りに関して、任意に選択可能な第一モード及び第二モードを有し、 前記第一モードが選択されると、 前記太陽光発電部が発電し、かつ、前記太陽光発電部の発電電力が前記商用電源へと逆潮流している場合には、前記蓄電装置から前記分電盤への電力の放電を不可能として、 前記第二モードが選択されると、 前記太陽光発電部が発電し、かつ、前記太陽光発電部から前記分電盤に供給した発電電力に余剰が生じた場合には、余剰した前記発電電力を前記商用電源へと逆潮流させずに前記蓄電装置に充電し、 前記太陽光発電部が発電していない場合には、前記蓄電装置から前記分電盤へと電力を放電する、 電力供給システム。 【請求項2】 太陽光を受けて発電可能な太陽光発電部と、 商用電源及び前記太陽光発電部に接続される分電盤と、 前記分電盤と接続され、前記分電盤へと電力を供給可能な燃料電池と、 前記分電盤と接続され、前記分電盤と電力のやり取りが可能な蓄電装置と、 電力を検出可能な第二電力検出手段と、 前記第二電力検出手段の検出結果に応じて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御手段と、 を具備し、 前記第二電力検出手段は、 前記太陽光発電部の発電電力を検出するCTセンサ部としての第一検出部と、前記分電盤の消費電力を検出するCTセンサ部としての第三検出部と、前記燃料電池から供給される電力を検出するCTセンサ部としての第四検出部と、前記第一検出部、前記第三検出部及び前記第四検出部の検出結果に関するそれぞれの信号を一括して出力するための手段と、から構成される複合センサであり、 前記蓄電装置と前記分電盤との電力のやり取りに関して、任意に選択可能な第三モード及び第四モードを有し、 前記第三モードが選択されると、 前記燃料電池からの電力が優先的に前記分電盤に供給される状態となり、 前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より少ない場合には、前記燃料電池からの余剰電力を前記蓄電装置に充電し、 前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より多い場合には、前記分電盤の不足電力を前記蓄電装置から放電して、 前記第四モードが選択されると、 前記太陽光発電部が発電している場合には、前記太陽光発電部の発電電力を前記商用電源へと逆潮流させずに前記蓄電装置に充電し、 前記太陽光発電部が発電しておらず、かつ、前記分電盤の消費電力が前記燃料電池から前記分電盤に供給した電力より多い場合には、前記分電盤の不足電力を前記蓄電装置から放電する、 電力供給システム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-11-16 |
出願番号 | 特願2012-213766(P2012-213766) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
ZAA
(H02J)
P 1 651・ 536- ZAA (H02J) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 坂本 聡生 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
矢島 伸一 堀川 一郎 |
登録日 | 2017-02-10 |
登録番号 | 特許第6085785号(P6085785) |
権利者 | 大和ハウス工業株式会社 エリーパワー株式会社 |
発明の名称 | 電力供給システム |
代理人 | 長田 豊彦 |
代理人 | 長田 豊彦 |
代理人 | 長田 豊彦 |