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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  G03B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03B
管理番号 1350680
異議申立番号 異議2018-701056  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-27 
確定日 2019-03-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第6353583号発明「光源装置及び画像投影装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6353583号の請求項1ないし24に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6353583号の請求項1-24に係る特許についての出願は、平成22年6月18日(以下、「原出願日」という。)を特許出願日とする特願2010-139175の一部を、平成27年6月25日に新たな特許出願(特願2015-127493号)とし、その一部を、平成28年9月5日に新たな特許出願(特願2016-172604号)とし、その一部を平成29年5月16日に新たな特許出願としたものであって、平成30年6月15日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年12月27日に特許異議申立人今里好久により、特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許発明
特許第6353583号の請求項1-24の特許に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」-「本件特許発明24」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-24に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の色光を含む励起光を射出する励起光源と、
前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する蛍光体と、前記蛍光体に対して前記励起光の入射側とは反対側に設けられる反射部材と、を有する蛍光部材と、
前記励起光源と前記蛍光部材との間の光路上に設けられ、前記第1の色光における第1偏光成分および第2偏光成分のうち第2偏光成分を第1偏光成分へ変換し、第1偏光成分に変換された前記第1の色光と前記反射部材で反射された前記第2の色光を射出する1/4波長板と、を備える
光源装置。
【請求項2】
前記1/4波長板は、前記第1の色光が2度通過されることで、前記第1の色光における第1偏光成分を第2偏光成分に変換する
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第1偏光成分はP偏光成分であり、前記第2偏光成分はS偏光成分である 請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記励起光源は、直線偏光の励起光を射出する
請求項1乃至3のいずれかに記載の光源装置。
【請求項5】
前記励起光源は、前記直線偏光の励起光として、前記第1の色光における前記第2偏光成分の励起光を射出する
請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第1の色光は青色光成分を含み、前記第2の色光は赤色光成分と緑色光成分を含む 請求項1乃至5のいずれかに記載の光源装置。
【請求項7】
前記蛍光部材は、円盤状の形状を有する
請求項1乃至6のいずれかに記載の光源装置。
【請求項8】
前記蛍光部材の中心に対応する位置に駆動軸が接続され、前記蛍光体上における前記励起光の照射位置が時間とともに回転円周方向に移動するよう前記蛍光部材を回転させる駆動部、をさらに備え、
前記駆動部が、前記蛍光部材を、前記蛍光体の前記励起光の照射面内の所定方向に回転させている状態で、前記励起光を前記蛍光体に照射する
請求項1乃至7のいずれかに記載の光源装置。
【請求項9】
前記蛍光部材の前記励起光の入射側に設けられ、前記励起光源から射出された励起光を前記蛍光体上で所定のスポット径となるように集光するとともに、前記蛍光体で発光され前記蛍光部材から射出された発光光を略平行光に変換する光学系、をさらに備える 請求項1乃至8のいずれかに記載の光源装置。
【請求項10】
前記反射部材は、少なくとも前記第2の色光を反射する
請求項1乃至9のいずれかに記載の光源装置。
【請求項11】
前記蛍光部材は、基板をさらに有し、
前記反射部材は、前記基板上に配置される
請求項1乃至10のいずれかに記載の光源装置。
【請求項12】
固定ハブにより前記基板が前記駆動軸に固定される
請求項8を引用する請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
第1の色光を含む励起光を射出する励起光源と、
前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する蛍光体と、前記蛍光体に対して前記励起光の入射側とは反対側に設けられる反射部材と、を有する蛍光部材と、
前記励起光源と前記蛍光部材との間の光路上に設けられ、前記第1の色光における第1偏光成分および第2偏光成分のうち第2偏光成分を第1偏光成分へ変換し、第1偏光成分に変換された前記第1の色光と前記反射部材で反射された前記第2の色光を射出する1/4波長板と、を有する光源装置部と、
前記光源装置部から射出された光を用いて所定の画像光を生成し、該生成した画像光を外部に投影する画像投影部と、を備える
画像投影装置。
【請求項14】
前記1/4波長板は、前記第1の色光が2度通過されることで、前記第1の色光における第1偏光成分を第2偏光成分に変換する
請求項13に記載の画像投影装置。
【請求項15】
前記第1偏光成分はP偏光成分であり、前記第2偏光成分はS偏光成分である 請求項13又は14のいずれかに記載の画像投影装置。
【請求項16】
前記励起光源は、直線偏光の励起光を射出する
請求項13乃至15のいずれかに記載の画像投影装置。
【請求項17】
前記励起光源は、前記直線偏光の励起光として、前記第1の色光における前記第2偏光成分の励起光を射出する
請求項16に記載の画像投影装置。
【請求項18】
前記第1の色光は青色光成分を含み、前記第2の色光は赤色光成分と緑色光成分を含む 請求項13乃至17のいずれかに記載の画像投影装置。
【請求項19】
前記蛍光部材は、円盤状の形状を有する
請求項13乃至18のいずれかに記載の画像投影装置。
【請求項20】
前記蛍光部材の中心に対応する位置に駆動軸が接続され、前記蛍光体上における前記励起光の照射位置が時間とともに回転円周方向に移動するよう前記蛍光部材を回転させる駆動部、をさらに備え、
前記駆動部が、前記蛍光部材を、前記蛍光体の前記励起光の照射面内の所定方向に回転させている状態で、前記励起光を前記蛍光体に照射する
請求項13乃至19のいずれかに記載の画像投影装置。
【請求項21】
前記蛍光部材の前記励起光の入射側に設けられ、前記励起光源から射出された励起光を前記蛍光体上で所定のスポット径となるように集光するとともに、前記蛍光体で発光され前記蛍光部材から射出された発光光を略平行光に変換する光学系、をさらに備える
請求項13乃至20のいずれかに記載の画像投影装置。
【請求項22】
前記反射部材は、少なくとも前記第2の色光を反射する
請求項13乃至21のいずれかに記載の画像投影装置。
【請求項23】
前記蛍光部材は、基板をさらに有し、
前記反射部材は、前記基板上に配置される
請求項13乃至22のいずれかに記載の画像投影装置。
【請求項24】
固定ハブにより前記基板が前記駆動軸に固定される
請求項20を引用する請求項23に記載の画像投影装置。」

第3 申立の理由の概要
特許異議申立人は、次の取消理由1、取消理由2により、請求項1-24に係る特許を取り消すべきものであると主張する。
1 取消理由1
特許異議申立人は、証拠として、甲第1号証(特開2011-165555号公報(特願2010-28771号))を提出し、本件特許発明1、2、13、14は、本件特許についての出願(以下、「本件出願」という。)の原出願日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者がその出願の原出願日前の甲第1号証の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の原出願日において、その出願人が上記甲第1号証の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1、2、13、14に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

2 取消理由2
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、蛍光体が、「入射する励起光の全部を第1の色光とは異なる第2の色光に変換する」構成について、何ら記載されていないから、請求項1-24に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第4 取消理由1について
1 甲第1号証の記載、先願発明等
甲第1号証に係る特許出願(特願2010-28771号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「先願の当初明細書等」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードや半導体レーザなどの固体素子を光源として利用し、省エネに優れた光源として注目を集める固体光源装置に係わり、特に、光源からの光を透過型又は反射型の液晶パネル、或いは、複数のマイクロミラーを配列したディジタルミラーディバイス(DMD)などで映像信号に応じて光強度変調し、形成された光学像を拡大して投射する投射型表示装置に適した固体光源装置に関する。」

「【0036】
続いて、上記に構成を説明した投射型表示装置、特に、その照明光学系100において、光軸101に略平行な白色光の光束を射出するための、固体発光素子からなる光源ユニット(固体光源装置)10の詳細について、以下に説明する。
【実施例1】
【0037】
添付の図1は、本発明の一実施例(実施例1)になる光源ユニット10の原理を説明するための図である。図からも明らかなように、当該ユニット10は、固体素子の発光源である青色帯域(B色)の光を発光する半導体レーザ素子、又は、発光ダイオードを略円板状の基板上に複数配列した半導体レーザ素子群110と、上記半導体レーザ素子群110のレーザ光出射面に対向して、略45度の角度で傾斜して配置された分離ミラー120と、当該分離ミラー120のレーザ光反射面に対向する位置に配置された、例えば放物面を備えた、反射鏡(リフレクタ)130と、当該反射鏡の焦点(F)の近傍において回転する円盤(ホイール)部材140と、そして、当該円盤(ホイール)部材を所望の回転速度で回転駆動するための駆動手段、例えば、電動モータ150を備えている。なお、この光源ユニット10(但し、電動モータ150を除く)の縦断面を、添付の図2に示す。
【0038】
上述した光源ユニット10の構成において、まず、励起光を発生する半導体レーザ素子群110について説明する。以下の説明からも明らかとなるように、励起光を発生するための光源としては、固体発光素子である、例えば、発光ダイオードやレーザ光源が優れているが、しかしながら、一般に、高出力レーザは高価であることから、上述したように、複数の青色レーザの半導体レーザ素子を併用し、励起光源とすることが好ましい。特に、可視光領域の青色光帯域に属し、エネルギー効率が高いこと、狭帯域であること、更には、単一偏波であることなどを理由として、青色レーザ光が望ましく、本実施例では、青色帯域(B色)の光を発光する半導体レーザ素子を、例えば、上述した円板状、矩形、又は、多角形の基板上に多数配列し、もって、半導体レーザ素子群110としている。また、これら多数の半導体レーザ素子は、その発光面から出射する光の偏光面が所定の方向に揃うように配置されている。」

「【0041】
そして、添付の図4(A)及び(B)には、上述した円盤(ホイール)部材140の詳細を示す。なお、図4(A)は円盤(ホイール)部材140の側面断面を、そして、図4(B)はその上面図を示している。
【0042】
これらの図からも明らかなように、この円盤(ホイール)部材140は、その中心部に回転駆動のための回転軸141を備えると共に、円盤状に形成された基材142を備えている。そして、回転制御が可能な円盤状の基材142の表面には、複数(本例では12個)のセグメント領域が設けられ(分割され)ている。これら複数のセグメント領域は、二つの領域に分けられる。一方のセグメント領域(図4(B)では、「Y」で示す)には、可視光領域の励起光(青色(B)レーザ光)を受光して所定の波長帯領域の光を発光する蛍光体層からなる蛍光面143が設けられ、他方のセグメント領域には、励起光を反射・拡散する反射面144を設けると共に、その表面を覆って、更に、励起光の位相を1/4波長(1/4λ)だけ移動する位相変換手段である透過膜145(図4(B)では、「B」で示す)が形成されている。そして、この基材142を所定の速度で回転させることにより、上記の反射鏡(リフレクタ)130により反射されて焦点近傍Fに集光された励起光は、図4(B)の太線の円で示すように、交互に、蛍光面143(Y)と、そして、その表面が透過膜145で覆われた反射面144へ入射することとなる。その結果、上述した円盤(ホイール)部材140からは、蛍光体からの発光光束と、基材142の反射面144で拡散反射した励起光とが、時分割で、取り出されることとなる。
【0043】
なお、上述した基材142の一方のセグメント領域Yに塗布して形成される蛍光体、即ち、青色領域の励起光により励起されて発光する蛍光体としては、青色光の補色の関係にある黄色光を高効率に発光するYAG蛍光体((Y,Gd)_(3)(Al,Ga)O_(12):Ce_(3+))が一般的である。しかしながら、本発明ではこれに限定することなく、その他、青色領域の励起光により励起されて黄色光を発光するものであればよい。なお、この青色領域の励起光と、当該励起光により励起されて発光するY色の蛍光光について、それらの波長と強度の関係の一例について、添付の図5に示す。
【0044】
また、蛍光体は、励起光により励起された発熱するため、当該蛍光体をその表面に形成する円盤状の基材142としては、熱伝導率が高い部材を用いることが好ましい。例えば、熱伝導率が5/W・m^(-1)・K^(-1)以上の、水晶やサファイア、又は、金属等を用いることで、効率良く冷却することができ、その結果として、蛍光体の発光光率を高めると共に、その長寿命化にとっても有効である。
【0045】
続いて、上記にその詳細な構成を説明した光源ユニット10の動作、即ち、投射型表示装置の照明光学系100において、光軸101に略平行な白色光の光束を射出する動作について、以下に説明する。
【0046】
再び、上記図16を参照しながら説明すると、半導体レーザ素子群110からの偏光面が所定の方向に揃った青色帯域(B色)の光は、分離ミラー120を透過して反射鏡(リフレクタ)130に向かい、その内面側の反射鏡(面)131により反射されて、その焦点近傍Fに集光される。この焦点近傍Fに集光された青色帯域(B色)の光は、円盤(ホイール)部材140の回転に伴い、当該部材を構成する円盤状の基材142の表面に形成された蛍光面143(Y)と反射面144(B)に、順次、入射する。その結果、青色帯域(B色)の光は、上記蛍光面143では、励起光として蛍光体層に受光され、その蛍光光である黄色光に変換されて発光する。他方、上記反射面144(B)では、その表面で反射・散乱され、これが連続して繰り返されることとなる。なお、この時、反射面144(B)に入射し、その反射面で反射・散乱される光は、その表面を覆う、位相を1/4波長(1/4λ)だけ移動する位相変換手段である透過膜145を2度通過するため、その偏光面を90度だけ変更される(即ち、位相が1/2波長(1/2λ)だけ移動される)。
【0047】
そして、上述したように、円盤(ホイール)部材140の蛍光面143から発光する光(黄色光)と、その反射面144(B)からの反射光であるB色光とは、再度、上記反射鏡(リフレクタ)130に向かい、その内面側の反射鏡(面)131により反射されて、平行光束として、再び、分離ミラー120に向かうこととなる。なお、この分離ミラー120は、上述したように、透過膜145により偏光面を90度だけ変更されたB色光を反射する。また、蛍光面143から発光する光(黄色光)も、同様に、分離ミラー120を反射する。その結果、励起光であるB色光は蛍光面からの黄色光は、上記円盤(ホイール)部材140の回転に伴って混色され、略白色の光となる。即ち、上述した光源ユニット10によれば、分離ミラー120の裏面(半導体レーザ素子群110からの偏光面の入射面と反対の面)から、図1の下方向に向かって、投射型表示装置の照明光学系100に入射する白色の照明光が得られることとなる。」(当審注:段落【0046】に「図16」とあるのは、「図1」の誤記と認められる。)

「【0058】
以上に述べた実施例1では、上記円盤(ホイール)部材140を構成する基材142が、基本的に、反射面である場合について述べたが、次に、本発明の第二の実施例(実施例2)として、当該基材142’に透過性の基材を使用した場合について、以下に詳細に述べる。なお、以下の説明において、上記実施例1と同じ参照番号は、上記と同様の構成要素を示している。」

したがって、先願の当初明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「投射型表示装置において白色光の光束を射出するための、光源ユニット(固体光源装置)10(段落【0036】より。以下、同様。)であって、
光源ユニット10は、固体素子の発光源である青色帯域(B色)の光を発光する半導体レーザ素子群110と、回転する円盤(ホイール)部材140とを備え(【0037】)、
半導体レーザ素子群110は、その発光面から出射する光の偏光面が所定の方向に揃うように配置され(【0038】)、
円盤(ホイール)部材140は、円盤状に形成された基材142を備え、円盤状の基材142の表面には、複数のセグメント領域が設けられ(分割され)、これら複数のセグメント領域は、二つの領域に分けられ、一方のセグメント領域(Y)には、可視光領域の励起光(青色(B)レーザ光)を受光して所定の波長帯領域の光を発光する蛍光体層からなる蛍光面143が設けられ、他方のセグメント領域(B)には、励起光を反射・拡散する反射面144を設けると共に、その表面を覆って、更に、励起光の位相を1/4波長(1/4λ)だけ移動する位相変換手段である透過膜145が形成され(【0042】)、
基材142の一方のセグメント領域Yに塗布して形成される蛍光体としては、青色領域の励起光により励起されて黄色光を発光するものであればよく(【0043】)、
当該蛍光体をその表面に形成する円盤状の基材142としては、金属を用い(【0044】)、基材142は、基本的に、反射面であり(【0058】)、
半導体レーザ素子群110からの偏光面が所定の方向に揃った青色帯域(B色)の光は、円盤(ホイール)部材140の回転に伴い、当該部材を構成する円盤状の基材142の表面に形成された蛍光面143(Y)と反射面144(B)に、順次、入射し、この時、反射面144(B)に入射し、その反射面で反射・散乱される光は、その表面を覆う、位相を1/4波長だけ移動する位相変換手段である透過膜145を2度通過するため、その偏光面を90度だけ変更され(【0046】)、
円盤(ホイール)部材140の蛍光面143から発光する光(黄色光)と、その反射面144(B)からの反射光であるB色光とは、上記円盤(ホイール)部材140の回転に伴って混色され、略白色の光となり、投射型表示装置の照明光学系100に入射する白色の照明光が得られる(【0047】)、
光源ユニット(固体光源装置)10(【0036】)。」

2 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と先願発明とを対比する。
(ア)先願発明における「青色帯域(B色)の光」及び「青色帯域(B色)の光を発光する半導体レーザ素子群110」が、それぞれ、本件特許発明1における「第1の色光」及び「第1の色光を含む励起光を射出する励起光源」に相当する。

(イ)先願発明における「黄色光」及び「青色領域の励起光により励起されて黄色光を発光する」「蛍光体」が、それぞれ、本件特許発明1における「第1の色光とは異なる第2の色光」及び「前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する蛍光体」に相当する。

(ウ)先願発明では、「当該蛍光体をその表面に形成する円盤状の基材142としては、金属を用い」、「基材142は、基本的に、反射面であ」るとされている。すると、先願発明における「基材142」は、「蛍光体」の裏側(「青色帯域(B色)の光」が「入射」する側とは反対側)に、金属の基材142によって「反射面」が設けられていることになる。

(エ)上記「(ウ)」で述べたことを踏まえれば、先願発明における「円盤(ホイール)部材140」は、「円盤状に形成された基材142」の「表面」に「蛍光体層からなる蛍光面143」が設けられ、「蛍光体」の裏側(「青色帯域(B色)の光」が「入射」する側とは反対側)に、金属の基材142によって「反射面」が設けられていることになるから、本件特許発明1における「前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する蛍光体と、前記蛍光体に対して前記励起光の入射側とは反対側に設けられる反射部材と、を有する蛍光部材」に相当するといえる。

(オ)先願発明では、「励起光の位相を1/4波長だけ移動する位相変換手段である透過膜145」は、「他方のセグメント領域(B)」に「設け」られた「励起光を反射・拡散する反射面144」の「表面を覆って」「形成」され、「反射面144(B)に入射」した、「半導体レーザ素子群110からの偏光面が所定の方向に揃った青色帯域(B色)」の「励起光」は、「位相を1/4波長だけ移動する位相変換手段である透過膜145を2度通過するため、その偏光面を90度だけ変更され」ている。
よって、先願発明における「励起光の位相を1/4波長だけ移動する位相変換手段である透過膜145」と、本件特許発明1における「前記励起光源と前記蛍光部材との間の光路上に設けられ、前記第1の色光における第1偏光成分および第2偏光成分のうち第2偏光成分を第1偏光成分へ変換し、第1偏光成分に変換された前記第1の色光と前記反射部材で反射された前記第2の色光を射出する1/4波長板」とは、「前記第1の色光における第1偏光成分および第2偏光成分のうち第2偏光成分を第1偏光成分へ変換し、第1偏光成分に変換された前記第1の色光を射出する1/4波長板」の点で共通する。

(カ)先願発明における「光源ユニット(固体光源装置)10」が、本件発明1における「光源装置」に相当する。

よって、本件特許発明1と先願発明とは、次の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「第1の色光を含む励起光を射出する励起光源と、
前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する蛍光体と、前記蛍光体に対して前記励起光の入射側とは反対側に設けられる反射部材と、を有する蛍光部材と、
前記励起光源の前記第1の色光における第1偏光成分および第2偏光成分のうち第2偏光成分を第1偏光成分へ変換し、第1偏光成分に変換された前記第1の色光を射出する1/4波長板と、を備える
光源装置。」

(相違点1)
本件特許発明1では、1/4波長板が、「前記励起光源と前記蛍光部材との間の光路上に設けられ」、(第1偏光成分に変換された前記第1の色光だけでなく)「第2の色光」も射出するのに対し、
先願発明では、「励起光の位相を1/4波長だけ移動する位相変換手段である透過膜145」は、(「円盤(ホイール)部材140」の「基材142の表面」の「他方のセグメント領域(B)」に「設け」られた「励起光を反射・拡散する反射面144」の「表面を覆って」形成されているため)「反射面144(B)に入射」した「青色帯域(B色)の光」については、「その反射面で反射・散乱」した光を、「偏光面を90度だけ変更」して「通過」させて(すなわち、「射出」して)いるものの、「蛍光面143(Y)」からの「黄色光」については「通過」させていない点。

イ 判断
(ア)上記相違点1について検討する。
先願発明において、「励起光の位相を1/4波長だけ移動する位相変換手段である透過膜145」が、「蛍光面143(Y)」からの「黄色光」も「通過」させるようにするためには、「励起光の位相を1/4波長だけ移動する位相変換手段である透過膜145」を、「円盤(ホイール)部材140」の「基材142の表面」の「一方のセグメント領域(Y)」に「設け」られた「蛍光面143(Y)」の「表面」も「覆って」形成することが必要である。
しかし、先願の当初明細書等には、そのような構成は記載されておらず、また、そのような構成を示唆する記載もない。
したがって、先願発明には、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成が実質的に記載されているとはいえない。

(イ)したがって、本件特許発明1は先願発明と同一発明であるとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、本件出願の原出願日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の特許出願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1に限定を付加した発明であって、本件特許発明1と同じく、1/4波長板が、「前記励起光源と前記蛍光部材との間の光路上に設けられ」、(第1偏光成分に変換された前記第1の色光だけでなく)「前記反射部材で反射された前記第2の色光」も射出する、という構成を有するものである。
よって、本件特許発明2は、本件特許発明1について述べたのと同じ理由により、甲第1号証の特許出願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

(3)本件特許発明13について
本件特許発明13は、本件特許発明1に係る「光源装置」(光源装置部)と、「前記光源装置部から射出された光を用いて所定の画像光を生成し、該生成した画像光を外部に投影する画像投影部」と、を備える「画像投影装置」についての発明であって、本件特許発明1と同様に、「光源装置部」における1/4波長板が、「前記励起光源と前記蛍光部材との間の光路上に設けられ」、(第1偏光成分に変換された前記第1の色光だけでなく)「前記反射部材で反射された前記第2の色光」も射出する構成を有するものである。
よって、本件特許発明13は、本件特許発明1について述べたのと同様の理由により、甲第1号証の特許出願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

(4)本件特許発明14について
本件特許発明14は、本件特許発明13に限定を付加した発明であって、本件特許発明13と同じく、「光源装置部」における1/4波長板が、「前記励起光源と前記蛍光部材との間の光路上に設けられ」、(第1偏光成分に変換された前記第1の色光だけでなく)「前記反射部材で反射された前記第2の色光」も射出する構成を有するものである。
よって、本件特許発明14は、本件特許発明13について述べたのと同様の理由により、甲第1号証の特許出願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

(5)異議申立人の主張について
異議申立人は、「甲第1号証に記載の発明において、分離ミラー120は、蛍光の波長領域においては偏光の向きにかかわらず透過する特性を有している。このため、1/4波長板を蛍光体上に設けて蛍光も1/4波長板を通過する構成としても、蛍光が照明光学系へ導かれることに変わりはない。蛍光も通過するような位置に1/4波長板を設ける構成は周知であるから、上記相違点(当審注:上記「(1)」の相違点1と同旨。)は課題解決の具体的手段における微差にすぎず、本件特許発明は甲第1号証に記載の発明と実質的に同一である。」と主張している(異議申立書第8頁下から第9行-同頁下から3行。なお、甲第1号証の段落【0047】には「また、蛍光面143から発光する光(黄色光)も、同様に、分離ミラー120を反射する。」と記載されている。)。
しかし、「1/4波長板を蛍光体上に設けて蛍光も1/4波長板を通過する構成としても、蛍光が照明光学系に導かれることに変わりはない。」からといって、「1/4波長板を蛍光体上に設ける」構成が先願の当初明細書等に記載されていることにはならない。
また、異議申立人は、「蛍光も透過するような位置に1/4波長板を設ける構成は周知技術である」と主張するが、該主張を裏付ける証拠は提出されておらず、また、仮に該主張が裏付けられたとしても、先願発明において該周知技術を用いることは、先願の当初明細書等に何ら示唆されていないことである。
したがって、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成は、「課題解決の具体的手段における微差」か否かを判断する以前に、そもそも先願の当初明細書等に実質的に記載されていない事項であるから、異議申立人の主張は採用できない。

(6)取消理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2、13、14は、甲第1号証の特許出願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえないから、本件特許発明1、2、13、14に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものということはできない。

第5 取消理由2について
(1)異議申立人の主張(異議申立書第9頁第18行-第11頁第6行)
異議申立人は、本件の請求項1(以下、請求項2-24についても同様。)における「前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する」との記載は、「前記励起光が入射されることにより前記励起光の全部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する」構成を含んでいる、として、次のように主張している。
ア 本件の特許明細書には、蛍光体が、「入射する励起光の全部を第1の色光とは異なる第2の色光に変換する」構成については、なんら記載がない。

イ 蛍光体が、「入射する励起光の全部を第1の色光とは異なる第2の色光に変換する」場合、本件特許発明1の光源装置からは、「波長変換された第2の波長光(蛍光)のみ」を得ることしかできず、白色光を射出することはできないから、本件の請求項1は、「3LCD方式のプロジェクタ等の様々な用途に対しても適用可能な水銀レスの光源装置及びそれを備える画像投影装置を提供する」(本件の特許明細書の段落【0008】、【0012】)、という、本件特許発明の課題を達成できない構成を含んでいる。

ウ よって、本件の請求項1-24は、本件特許明細書の詳細な説明において、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているので、請求項1-24に係る発明と発明の詳細な説明に記載されたものが、実質的に対応しているとは言えない。

(2)当審の判断
ア 本件の特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、次のとおり記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0007】
しかしながら、上記特許文献1で提案されている技術は、DLP(登録商標)方式のプロジェクタ等のように、互いに波長の異なる複数の単色光を時分割で射出する光源装置(照明装置)にのみ適用可能である。例えば、3LCD(Liquid Crystal Display)方式のプロジェクタ等の画像表示装置のように、白色光を射出する光源装置を必要とする用途には、上記特許文献1で提案されている技術を適用することができない。」

「【0008】
本発明は、上記現状を鑑みなされたものであり、本発明の目的は、例えば3LCD方式のプロジェクタ等の様々な用途に対しても適用可能な水銀レスの光源装置及びそれを備える画像投影装置を提供することである。」

「【0012】
上述のように、本発明の光源装置(光源装置部)では、第1の色光を含む励起光及び発光光(第2の色光)とは異なる波長帯域の光を射出することができ、励起光の第1の波長帯と発光光の第2の波長帯との組み合わせを適宜設定することにより、例えば白色光等の光を射出することができる。それゆえ、本発明によれば、例えば3LCD方式のプロジェクタ等の様々な用途に対しても適用可能な水銀レスの光源装置及びそれを備える画像投影装置を提供することができる。」

「【0031】
蛍光部材15は、集光光学系14を介して入射された励起光(青色光)の一部を吸収し、所定波長帯域(第2の波長)の光を発光するとともに、残りの励起光を反射する。そして、蛍光部材15は、発光光と反射した励起光の一部とを合波し、その合波光を集光光学系14に射出する。」

「【0040】
反射膜31は、図2(a)に示すように、基板30の一方の表面上にドーナツ状に形成される。そして、ドーナツ状の反射膜31と基板30とが同心円となるように、反射膜31が基板30上に配置される。なお、反射膜31の半径方向の幅は、集光光学系14により集光される励起光(集光光)のスポットサイズより大きくなるように設定される。
【0041】
反射膜31は、入射される光の波長及び入射角に関係なく、全ての光を反射する。それゆえ、反射膜31は、蛍光体層32で励起された光(発光光)を集光光学系14側に反射するだけでなく、蛍光体層32を透過した励起光(青色光)の一部も集光光学系14側に反射する。」

「【0043】
蛍光体層32は、層状の蛍光体で形成され、励起光が入射された際に、励起光の一部を吸収して所定波長帯域の光を発光する。さらに、蛍光体層32は、吸収されない残りの励起光のうち、一部の励起光を透過させ且つ残りの励起光を拡散(反射)する。なお、蛍光体層32で反射された励起光成分は、無偏光の光となる。
【0044】
本実施形態では、反射膜31及び蛍光体層32で反射された励起光の一部と、蛍光体層32での発光光とを合波して白色光を生成するので、蛍光体層32を、例えばYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系蛍光材料等で形成する。この場合、青色の励起光が入射されると、蛍光体層32は波長480?680nmの帯域の光(黄色光)を発光する。」

「【0047】
また、蛍光体層32における、発光量、並びに、励起光の透過量及び反射量(拡散量)の割合は、例えば蛍光体層32の厚さや蛍光体密度(含有量)等により調整することができる。それゆえ、本実施形態では、光源装置部1からの出射光が白色光となるように、蛍光体層32の厚さや蛍光体密度等を調整する。」

「【0054】
一方、蛍光部材15から射出される合波光に含まれる発光光成分は、480?680nmの波長帯域の光成分であるので、偏光ビームスプリッタ12を透過する。また、蛍光部材15から射出される合波光に含まれる励起光(青色光)成分のうち、反射膜31から反射される励起光成分は後述するようにP偏光の光であるので、偏光ビームスプリッタ12を透過する。さらに、蛍光部材15から射出される合波光に含まれる励起光成分のうち、蛍光体層32から直接反射される励起光成分は無偏光であるので、その励起光成分の約半分程度が偏光ビームスプリッタ12を透過する。すなわち、蛍光部材15から射出された
合波光の一部は、偏光ビームスプリッタ12を透過し、その透過した合波光が白色光LWとして光学エンジン部2内の分光光学系20に導かれる。」

「【0057】
次いで、蛍光部材15の蛍光体層32に励起光が照射されると、蛍光体層32は、その励起光の一部を吸収し、これにより、赤色光及び緑色光を含む波長480?680nmの帯域の光(黄色光)を発光する。また、この際、蛍光体層32は、蛍光体層32で吸収されない励起光の一部を拡散して集光光学系14側に反射するとともに、吸収されない励起光の残りの一部を透過させ、反射膜31に導く。そして、反射膜31は、蛍光体層32を透過した励起光を集光光学系14側に反射する。なお、この際、蛍光体層32の発光光の一部も反射膜31により集光光学系14側に反射される。
【0058】
その結果、蛍光部材15内で、蛍光体層32からの発光光と、蛍光体層32及び反射膜31から反射された励起光の一部とが合波され、蛍光部材15からその合波光が集光光学系14に射出される。」

「【0064】
また、偏光ビームスプリッタ12に入射された励起光成分のうち、反射膜31からの反射光成分(Bp)はP偏光の光であるので、偏光ビームスプリッタ12は、反射膜31からの反射光成分(Bp)をそのまま通過させる。しかしながら、偏光ビームスプリッタ12に入射された励起光成分のうち、蛍光体層32からの反射光成分は無偏光の光であるので、偏光ビームスプリッタ12は、その反射光成分のうち、P偏光の光成分のみを通過させる。この際、蛍光体層32から反射された励起光成分のうち、偏光ビームスプリッタ12を通過する割合は約50%程度となる。それゆえ、本実施形態では、蛍光部材15から射出された励起光成分のうち、約70?80%の励起光成分が偏光ビームスプリッタ12を通過することになる。」

イ 以上の記載より、本件の特許明細書の発明の詳細な説明には、蛍光体について、次の事項が記載されているものと認められる。
「蛍光部材15は、入射された励起光(青色光)の一部を吸収し、所定波長帯域(第2の波長)の光(黄色光)を発光する(段落【0031】、【0057】より。以下、同様。)が、この際、蛍光体層32は、蛍光体層32で吸収されない励起光の一部を拡散して反射するとともに、吸収されない励起光の残りの一部を透過させ、反射膜31に導き(【0057】)、反射膜31は、蛍光体層32で励起された光(発光光)(黄色光)を反射するだけでなく、蛍光体層32を透過した励起光(青色光)の一部も反射し(【0041】)、蛍光体層32における、発光量、並びに、励起光の透過量及び反射量(拡散量)の割合は、例えば蛍光体層32の厚さや蛍光体密度(含有量)等により調整することができ(【0047】)、
偏光ビームスプリッタ12に入射された(S偏光の)励起光成分のうち、反射膜31からの反射光成分(Bp)は(S偏光の光が、1/4波長板を2度通過することにより)P偏光の光であるので、偏光ビームスプリッタ12は、反射膜31からの反射光成分(Bp)をそのまま通過させるが、蛍光体層32からの反射光成分は無偏光の光であるので、偏光ビームスプリッタ12は、その反射光成分のうち、P偏光の光成分のみを通過させ、蛍光部材15から射出された励起光成分のうち、約70?80%の励起光成分が偏光ビームスプリッタ12を通過する(【0064】)。」

ウ そこで、本件特許の請求項1における「前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する蛍光体」との記載が、本件の特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているか、判断する。
(ア)本件特許の請求項1における「前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する蛍光体」との記載は、文言を形式的に解釈すれば、入射された励起光の「全部」を前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する蛍光体も包含している。

(イ)しかし、変換効率が100%となるような蛍光体は、およそ自然界に存在しないものであるから、本件特許の請求項1に記載された蛍光体は、上記「(2)」「イ」のとおり、「蛍光体層32で吸収されない励起光の一部を拡散して反射するとともに、吸収されない励起光の残りの一部を透過させ」るものを想定していると考えるのが現実的である。
また、本件特許の請求項1に記載された蛍光体について、上記のような想定がなされていることは、本件特許の請求項1に、蛍光体層32を透過した励起光を「反射部材」で反射させ、さらに「反射部材」で反射した励起光を「1/4波長板」によって、第1偏光成分に変換することが発明特定事項として記載されていることからも明らかである。

(ウ)よって、本件特許の請求項1における「前記励起光が入射されることにより前記励起光の少なくとも一部を・・・第2の色光に変換する蛍光体」とは、蛍光体が、入射された励起光の「全て」を「透過または反射」するのではなく、入射された励起光の「一部」は必ず「第2の色光」に変換することを、いわば確認的に述べた記載であると解するのが相当である。

エ したがって、本件特許発明1は、本件の特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。

オ また、同様の理由により、本件特許発明2-24も、本件の特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。

カ よって、異議申立人の主張は、その前提となる請求項1の記載の解釈に合理的根拠を見出すことができないから、採用できない。

(3)取消理由2についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1-24は、本件の特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているから、本件特許発明1-24に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反する特許出願に対してされたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-24に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-03-12 
出願番号 特願2017-97395(P2017-97395)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G03B)
P 1 651・ 16- Y (G03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐野 浩樹  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
清水 稔
登録日 2018-06-15 
登録番号 特許第6353583号(P6353583)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 光源装置及び画像投影装置  
代理人 特許業務法人信友国際特許事務所  
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