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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1350683
異議申立番号 異議2018-701061  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-27 
確定日 2019-04-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6353061号発明「有機液体希釈剤及び特定のヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6353061号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6353061号の請求項1?10に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)9月15日(パリ条約による優先権主張 2013年(平成25年)9月25日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年6月15日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年12月27日に特許異議申立人信越化学工業株式会社(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

2 本件発明
特許第6353061号の請求項1?10に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に従い、「本件発明1」?「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。

「【請求項1】
有機液体希釈剤と、1つ以上の有効成分と、ヒドロキシアルコキシル基が分率(A)と分率(B)とに分類される少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロースと、を含む液体組成物であって、分率(A)は、さらにメトキシル基で置換されたヒドロキシル基を有する置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(B)は、さらにメトキシル基で置換されないヒドロキシル基を有する非置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(A)/分率(B)の比率は、少なくとも0.30である、前記液体組成物。
【請求項2】
前記有機液体希釈剤は、アルコール、エーテル、ケトン、アセテート、またはハロゲン化炭化水素である、請求項1に記載の前記液体組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースの分率(A)/分率(B)の比率は、0.35?0.90である、請求項1または2に記載の前記液体組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、1.6?2.4のDSと、0.08?0.90のMSと、を有し、DSは、アンヒドログルコース単位毎のメトキシル基で置換されたヒドロキシル基の平均数であり、MSは、アンヒドログルコース単位毎のヒドロキシアルコキシル基のモルの平均数である、請求項1?3のいずれか一項に記載の前記液体組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、水中2重量%溶液として20℃で測定される、1.20?100mPa・sの粘度を有する、請求項1?4のいずれか一項に記載の前記液体組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1?5のいずれか一項に記載の前記液体組成物。
【請求項7】
ヒドロキシアルコキシル基が分率(A)と分率(B)とに分類される少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロース中に少なくとも1つの有効成分を含む固体分散剤であって、分率(A)は、さらにメトキシル基で置換されたヒドロキシル基を有する置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(B)は、さらにメトキシル基で置換されないヒドロキシル基を有する非置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(A)/分率(B)の比率は、少なくとも0.30である、前記固体分散剤。
【請求項8】
請求項7に記載の前記固体分散剤を生成するための方法であって、請求項1?6のいずれか一項に記載される前記液体組成物を提供するステップと、前記液体組成物から液体希釈剤を除去するステップと、を含む、前記方法。
【請求項9】
剤形をコーティングするための方法であって、請求項1?6のいずれか一項に記載の前記液体組成物を、前記剤形と接触させるステップを含む、前記方法。
【請求項10】
カプセルの製造のための方法であって、請求項1?6のいずれか一項に記載の前記液体組成物を、浸漬ピンと接触させるステップを含む、前記方法。」

3 申立理由の概要
異議申立人は、甲第1号証?甲第6号証(以下「甲1」?「甲6」という。下記参照)を提出し、次の申立理由を主張する。

(申立理由1)「有機液体希釈剤」が不明確であるため、本件発明1は不明確となり、本件発明1を引用する本件発明2?6および8?10も不明確となる。ヒドロキシアルキルメチルセルロース中に少なくとも1つの有効成分を含む「固体分散剤」は不明確であるため、本件発明7は不明確となり、本件発明7を引用する本件発明8も不明確となる。したがって、本件発明1?10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきである(同法第113条第1項第4号)。

(申立理由2及び3)本件明細書には、液体組成中に有効成分が存在する実施例、90/10の重量比のメタノール/水の混合物以外の実施例、分率(A)/分率(B)の比率0.56以外の実施例、1.95のDS(メトキシル)と0.26のMS.(ヒドロキシプロポキシル)以外の実施例が存在せず、これらの結果を特許請求の範囲の記載された範囲に拡張できる根拠もなく、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、過度の実験等を要するため、本件発明1?10は、その発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?10を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。したがって、本件発明1?10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)及び同法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきである(同法第113条第1項第4号)。

(申立理由4)本件発明1?4および7は、必要であれば周知技術甲3を証拠として、甲1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。本件発明5?6および8?9は、必要であれば周知技術甲3?5を証拠として、甲1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。本件発明10は、必要であれば周知技術甲3?5を証拠として、甲1?2および甲6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。したがって、本件発明1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきである(同法第113条第1項第2号)。

甲1:特開2007-308479号公報
甲2:特開昭60-192702号公報
甲3:特開2008-285673号公報
甲4:日本薬局方第14改正の抜粋:厚生労働省告示、
66?68頁及び951?954頁
甲5:日本薬局方第16改正の抜粋:厚生労働省告示、
目次の1頁、57?60頁及び1082?1084頁
甲6:特公昭47-5116号公報

4 甲1?6の記載事項
(1)甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
難溶性薬物、水溶性ポリマー、賦形剤及び崩壊剤を含む固体分散体の顆粒剤であって、該水溶性ポリマーの含有量が1?10質量%で、かつ該崩壊剤の含有量が15?50質量%である固体分散体の顆粒剤。
【請求項2】
上記水溶性ポリマーが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選ばれる請求項1に記載の固体分散体の顆粒剤。
【請求項3】
上記崩壊剤が、ヒドロキシプロポキシル基5?16質量%を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1又は請求項2に記載の固体分散体の顆粒剤。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、固体分散体の溶出性を損なうことなく、製剤中の薬物を迅速に溶出することができる固体分散体の顆粒剤又は錠剤及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、固体分散体のキャリヤーである水溶性ポリマーの添加量及び崩壊剤の添加量を所定量にすることにより、固体分散体を圧縮成型した錠剤において崩壊性の低下を起すことなく、顆粒や錠剤において優れた溶出性を示すことを見出し、本発明を成すに至ったものである。…
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顆粒の場合には高い溶出性が認められ、錠剤の場合には溶解媒体への導入後10分以内に崩壊し、難溶性薬物の少なくとも70質量%を放出することができる優れた溶解性を有する固形製剤が得られる。」

「【0013】
本発明においては、難溶性薬物を非晶状態で分子分散させるため、キャリヤーとして水溶性ポリマーを用いる。…具体的には、メチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0014】
水溶性ポリマーの含有量は、固形製剤の剤形により異なり、顆粒剤の場合には、好ましくは製剤全体中に1?10質量%、錠剤の場合には、好ましくは製剤中に1?5質量%である。…
【0015】
難溶性薬物に対する水溶性ポリマーの添加比率は、難溶性薬物1質量に対して水溶性ポリマー1?5質量が好ましい。水溶性ポリマーの比率が1より小さいと固体分散体中の難溶性薬物を完全に非晶状態にすることができない場合があり、5よりも大きい場合は製剤中の水溶性ポリマーの割合が大きくなるため、結果として製剤サイズが大きくなることになり、一般的な製剤として適さない場合がある。
【0016】
水溶性ポリマーを含んでなる難溶性薬物の固体分散体を調製する際の溶媒は、難溶性薬物が良く溶け、かつ水溶性ポリマーも溶ける溶媒が好ましい。例えばメタノール、エタノール、塩化メチレン、アセトン又はこれらの混合溶媒の他、これらと水との混合溶媒が挙げられるが、難溶性薬物と水溶性ポリマーの溶媒への溶解性により適宜選択することができる。
溶媒の添加量は、固形分濃度が好ましくは3?18質量%、特に好ましくは3.5?12質量%溶液になる量である。」

「【実施例】
【0029】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1及び比較例1
ニフェジピン1.2g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(ヒドロキシプロポキシル基8.7質量%、メトキシル基28.8質量%、6mPa・s)2.4g又はニフェジピン12g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(ヒドロキシプロピル基8.7質量%、メトキシル基28.8質量%、6mPa・s)24gをエタノール:水=8:2(質量比)の混合溶媒中に溶解し、固体分散体液を調製した。低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)(ヒドロキシプロポキシル基10.9質量%)、乳糖(DMV社製Pharmatose)及びコーンスターチ(日本食品加工社製コーンスターチW)の混合物を流動層造粒コーティング装置(POWREX社製Multiplex MP-01)中で流動させて固体分散体液を噴霧・造粒・乾燥した後、30メッシュ(目開き500μm)の篩で整粒して顆粒を得た。比較例として崩壊剤である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの添加量が本願発明の範囲を外れた場合の顆粒を同様の方法で製造した。」

(2)甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。

「【発明の名称】ヒドロキシアルキルアルキルセルロ-スの製造方法」

「1. アルカリセルロースに、アルキレンオキサイドとハロゲン化アルキルを反応させてヒドロキシアルキルアルキルセルロースを製造するにあたり、第1段階として反応に消費される全ハロゲン化アルキル量の5?80モル%相当量のアルカリを含むアルカリセルロースに、反応に消費される全ハロゲン化アルキル量の0?80%相当量のハロゲン化アルキルの存在下にアルキレンオキサイドを反応させ、ついで第2段階としてこの反応系に水酸化アルカリおよびハロゲン化アルキルを加えて反応させることを特徴とするヒドロキシアルキルアルキルセルロースの製造方法。」(特許請求の範囲)

「本発明の方法によれば、従来のアルキレンオキサイドとハロゲン化アルキルとを反応によって消費される全ハロゲン化アルキル量と当モルの水酸化アルカリを含むアルカリセルロースに反応させる方法に比べて、まず第1段階としてセルロースに対する水酸化アルカリのモル比が小さいアルカリセルロースに対してアルキレンオキサイドを反応させるために、アルカリセルロースへのアルキレンオキサイドの反応に際し、副反応が少なくなって反応効率が大幅に向上するという利点が与えられる。」(3頁右上欄2?12行)

「実施例1(HPMCの製造)
粉末状パルプ7.00Kgをかくはん機の付いた内容積120lの耐圧反応器に仕込み、かくはんしながら49%水酸化ナトリウム水溶液を7.30Kg加えることによりアルカリセルロースを調製した。充分なN_(2)置換の後プロピレンオキサイド(PO)1.47Kg〔PO/セルロース(モル比)=0.587〕を仕込み、かくはんしながら30?60℃の温度にて3時間反応させた。
次いで30℃以下まで冷却しさらに49%水酸化ナトリウム水溶液を8.70Kg加えよくかくはんしたのち、メチルクロライド9.91Kg〔CH_(3)Cl/セルロース(モル比)=4.54〕を仕込み35?80℃で4時間反応させた。反応終了後生成物を熱水で洗浄精製し乾燥した。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ヒドロキシプロピキシル基MS=0.25、メトキシル基DS=1.86であり、エーテル化効率はプロピレンオキサイド42.6%、メチルクロライド41.0%であった。」(4頁左下欄3行?右下欄4行)

(3)甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
ヒドロキシアルコキシル基の置換モル数が0.05?0.1で、メトキシル基の置換度が1.6?1.9である水溶性ヒドロキシアルキルメチルセルロースであって、 該ヒドロキシアルコキシル基は該ヒドロキシアルコキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシアルコキシル基と、置換されていない非置換ヒドロキシアルコキシル基とに分けられ、該非置換ヒドロキシアルコキシル基のモル分率(B)に対する、該置換ヒドロキシアルコキシル基のモル分率(A)の比(A/B)が0.4以上である水溶性ヒドロキシアルキルメチルセルロース。」

「【背景技術】
【0002】
セルロースにメチル基及びヒドロキシプロピル基をエーテル置換したヒドロキシプロピルメチルセルロースは、メトキシル基がセルロース鎖に対して分子内で局在化している。そのため、ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液を加熱すると、局在化して存在しているメトキシル基部分が疎水和を生じて含水されたゲル状物となり、冷却するとこの疎水和が減少して元の水溶液に戻る「熱可逆ゲル化性」という特徴を有している。この熱可逆ゲル化性のために、水溶液は加熱されても優れた保形性を示す。例えばセラミックの押出成形用のバインダーとしてヒドロキシアルキルメチルセルロ-スを使用した場合、水に溶解したヒドロキシアルキルメチルセルロースをセラミック粒子とともに混合混練し、一定形状に成形した後、加熱乾燥する工程において、ヒドロキシアルキルメチルセルロースが加熱によりゲル状となる。そして、このゲル状になった部分の強度が高い場合には、乾燥中の収縮ひずみによる割れ等の不良を抑制できることから、専らセラミックの押出成形用のバインダーとして使用されている。
【0003】
また、ヒドロキシアルコキシル基を有してないメチルセルロースにおいては、この熱可逆ゲル化性能に優れ、80℃の恒温水槽に2.5質量%の水溶液を入れて15分後に熱可逆ゲル化させた後に、15mm径の円柱棒を5cm/分速度で2cm貫入時に円柱棒にかかる最大加重(g)を貫入棒の断面積で除した熱可逆ゲルの強度として求めた場合、500?700g/cm^(2)と高い値となり、セラミック粒子の成形に用いて加熱乾燥した場合には乾燥中の収縮ひずみに割れが抑えられ、セラミックへの添加量を少なくしても乾燥中の割れによる不良を少なくすることができる。
【0004】
一方、ヒドロキシアルコキシル基が置換モル数0.1を超えて導入されると、熱可逆ゲル強度は、100g/cm^(2)以下となってしまう。例えばヒドロキシプロポキシル基を置換モル数0.15導入したメトキシル基の置換度1.8を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースにあっては、この熱可逆ゲル強度は30g/cm^(2)となり、ヒドロキシエトキシル基を置換モル数0.15導入したメトキシル基の置換度1.8を有するヒドロキシエチルメチルセルロースでも25g/cm^(2)となってしまう。すなわち、高い熱可逆ゲル強度が必要な場合には、ヒドロキシアルコキシル基を導入していないメチルセルロースを用いることが望ましい。しかしながら、ヒドロキシアルコキシル基が導入されてないメチルセルロースを水に溶解するためには、水温を10℃以下にしなければならない。溶解が行われなければ本来の熱可逆ゲル強度が発現せず、実用上意味をもたなくなるため、ヒドロキシアルコキシル基を導入してないメチルセルロースの使用は困難であった。
【0005】
そこで、特許文献1では、ヒドロキシアルコキシル基の置換モル数を0.02?0.13に限定したヒドロキシアルキルメチルセルロース類は、溶解温度を30℃程度にしても所定の時間経過すれば溶解することから、温度を下げなくても溶解できることを開示している。更に、特許文献1では、ヒドロキシアルコキシル基をメチルセルロースに導入することで、熱可逆ゲル化する温度をメチルセルロースより高くできることは開示している。
【特許文献1】特公昭62-059074号公報」

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】 …
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、20?30℃の室温で溶解させることができ、かつ熱可逆ゲル化時には高い熱可逆ゲル強度を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを提供するものである。」

「【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、20?30℃の室温で溶解し、かつ熱可逆ゲル化時には高い熱可逆ゲル強度を有する水溶性ヒドロキシアルキルメチルセルロースが得られる。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に詳述する。
本発明で使用されるヒドロキシアルコキシル基の置換モル数が0.05?0.1で、メトキシル基の置換度が1.6?1.9である水溶性ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、特に限定されるものではないが、特開2001-302701号公報に提示されているようにセルロースにアルカリ水溶液を所定量含浸させた後、必要量のメチルエーテル化剤(好ましくは塩化メチル)及びヒドロキシアルキルエーテル化剤(好ましくはプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイド等)を反応させて製造する。
ここで、ヒドロキシアルコキシル基の置換モル数とは、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルコキシル基(好ましくはヒドロキシプロポキシル基又はヒドロキシエトキシル基)の平均モル数をいい、メトキシル基の置換度とは、セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシル基で置換された水酸基の平均個数をいう。
【0010】
ヒドロキシアルコキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換されていない非置換ヒドロキシアルコキシル基のモル分率(B)に対する、ヒドロキシアルコキシル基の水酸基が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシアルコキシル基のモル分率(A)の比(A/B)を0.4以上にするため、先にヒドロキシアルコキシル基の置換が多く行われた後に、メトキシル基の置換が行われるように、エーテル化剤の仕込み順序又は仕込み速度を調整する。
更に詳しくは、セルロ-スと必要量のアルカリ(好ましくはカセイソ-ダ溶液)を反応させてアルカリセルロ-スを調製した後、ヒドロキシアルキルエ-テル化剤(例えばプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイド)を仕込み、好ましくは50?95℃の温度でエーテル化反応を行なう。その後に、メチルエ-テル化剤(例えば塩化メチル(メチルクロライド))を仕込み反応させる。
あるいは、仕込まれたこのエ-テル化剤のストイチオメトリック量の好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上反応が終了した時点においても、塩化メチルのストイチオメトリック量の好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上反応が終了していないように、ヒドロキシアルキルエ-テル化剤(例えばプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイド)及びメチルエーテル化剤(例えば塩化メチル)を連続又は適宜仕込みながら製造する。具体的には、ヒドロキシアルキルエーテル化剤とメチルエーテル化剤は、同時に添加してもどちらかを先に添加してもよいが、ヒドロキシアルキルエ-テル化剤の仕込み時間に対するメチルエーテル化剤の仕込み時間の比が、1.3?3、特に1.5?3が好ましい。」

「【0025】
【表1】



(4)甲4の記載事項
甲4には、「○厚生労働省告示第111号
薬事法(昭和35年法律第145号)第41条第1項の規定に基づき、日本薬局方(以下「新薬局方」という。)を次のように定め、平成13年4月1日から適用し、…。
(なお、「次のよう」とは、「第十四改正 日本薬局方第一部」から始まり、「参照赤外吸収スペクトル 第二部」(1225頁)までをいう。)」と記載され、951?954頁に、HPMC2208、2906、2910の粘度は、20℃で粘度測定法第1法によると記載し、66?68頁の「45.粘度測定法」の「第1法 毛細管粘度測定法」として、ウベローデ型粘度計を用いる粘度測定法が記載されている。

(5)甲5の記載事項
甲5には、「○厚生労働省告示第65号
薬事法(昭和35年法律第145号)第41条第1項の規定に基づき、日本薬局方(平成18年厚生労働省告示第285号)の全部を改正する告示を次のように定め、平成23年4月1日から適用する。」、「第十六改正日本薬局方」(目次の1頁)、「本医薬品各条は、三薬局方での調和合意に基づき規定した医薬品各条である。」(1082頁)と記載され、1082?1084頁に、ヒプロメロース(HPMCの別名)の粘度は、20±0.1℃で粘度測定法第1法によると記載し、57?60頁の「45.粘度測定法」の「第1法 毛細管粘度測定法」として、ウベローデ型粘度計を用いる粘度測定法が記載されている。

(6)甲6の記載事項
甲6には、次の事項が記載されている。

「発明の詳細な説明
本発明は、水性または非水性の溶媒を使用してヒドロキシアルキルセルロースエーテルより医薬用カプセルを製造する方法、ならびに該方法によって製造したカプセルに関するものである。」(1欄26?29行)

「アンヒドログルコース単位当りの従来の置換度(D,S,)にて表わせば、このヒドロキシプロピルメチルセルロースは、2-ヒドロキシプロポキシルD,S,約0.17-0.30およびメチオキシルD,S,約1.68-1.82をもつものである。」(4欄3?7行)

「非水性溶媒
また、本発明の方法の一態様において不可欠なものは、実質的にC_(1)-C_(3)アルコール15-50重量%、ならびにC_(1)-C_(3)の塩素化した脂肪族炭化水素またはC_(6)-C_(7)芳香族炭化水素80-50重量%より成る非水性溶媒の使用である。乾燥を迅速にするためには、各成分が30-120℃の沸点をもつ揮発性溶媒が好ましい。特に適当なものは、メタノール、イソプロパノール、塩化メチレンクロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレン、二塩化プロピレン、ベンゼンおよびトルエンである。
水性溶媒
可成りの重要性をもち、本発明による方法の第二の態様を成す点は、水および水性C_(1)-C_(3)アルコール内におけるヒドロキシアルキルセルロースの向上せる溶解度であり、これによって固体約30重量%程度までを含む溶液を室温にて使用する製法が可能となる。カプセル成形のピンに付着せる被膜は溶媒の蒸発により乾燥するのであるから、好ましい水性溶媒は水、または水とメタノールあるいはイソプロパノールの如き揮発性のC_(1)-C_(3)アルコールとの混合物である。」(4欄43行?5欄20行)

「製造に当って、カプセルの本体は、適当なカプセル成形のダイス型に対し、溶液よりヒドロキシアルキルセルロースの被膜あるいはフィルムを沈着することによって成形する。…一般にカプセル成形のダイス型は、支持体部分に取付けた多数個の、こわいステンレススチール製のピンより成るものであり、これに対しては、乾燥済みのカプセル本体の除去を容易ならしめるため、潤滑グリース、テクロン、ポリエチレンまたはその他類似の物質の薄膜を塗布する。」(5欄34行?6欄2行)

5 本件明細書の記載事項
本件明細書には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、有機液体希釈剤及び特定のヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む液体組成物、ならびにヒドロキシアルキルメチルセルロース中に有効成分を含む固体分散剤に関する。」

「【背景技術】
【0002】
多くの現在知られている薬物は、低い水への溶解性を有し、それ故、好適な剤形を調製するために複雑な技法が必要とされる。低水溶性の薬物と組み合わせた薬学的に許容される水溶性ポリマーの使用に多くの研究が費やされている。水溶性ポリマーの使用は、薬物の結晶度を低減し、それにより薬物の溶解に必要な活性化エネルギーを最小化すること、及び薬物分子の周囲の親水性条件を確立し、それにより薬物自体の溶解性を向上させ、その生物学的利用能、すなわち、投与後個体によるその体内吸収を増加させることを目指す。しかしながら、水溶性ポリマーと低水溶性の薬物との単純なブレンドは、一般に薬物の結晶度を低減することも、一般に前記薬物の溶解性を向上することもない。
【0003】
G.Van den Mooter,“The use of amorphous solid dispersions:A formulation strategy to overcome poor solubility and dissolution rate”,Drug Discov Today:Technol(2011),doi:10.1016/j.ddtec.2011.10.002は、溶解の速度及び程度を向上させることにより、難溶解性薬物の生物学的利用能を増加させるための、非晶質固体分散剤の調製について論じる。非結晶固体分散剤を調製するための一般的に適用される製造方法は、噴霧乾燥である。噴霧乾燥プロセスは、一般的な有機溶媒または水性溶媒及び有機溶媒の混合物中の薬物及び担体の溶液から開始する。この溶液は、ノズルを用いて霧化され、溶媒は続いて迅速に蒸発される(桁は、ミリ秒である)。非常に早い溶媒蒸発は、固体分散剤の非結晶状態を助長する。

【0006】
国際特許出願第2008/047201号は、水難溶性イオン化可能な薬物、陽イオン種、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等の分散ポリマーを含む、固体分散剤を開示する。実施例によると、薬物及びHPMC(The Dow Chemical Company、Midland、MIから市販可能なE3 Prem LV;Methocel(登録商標))が水及びメタノールと混合され、噴霧溶液を形成する。HPMC中の薬物の固形噴霧乾燥分散剤が、この溶液から生成される。
【0007】
残念ながら、有機液体希釈剤及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースエーテルを含む組成物は、貯蔵安定性がないことが多く、長期間にわたる液体組成物の貯蔵後、非常に大きな粘度増加を呈する。粘度増加は、液体組成物を室温未満で保管することにより避けられることが多いが、これは多くの場合、貯蔵を複雑化し貯蔵費用を追加することから、望ましくない。さらに、観察される粘度増加は、液体組成物中のセルロースエーテルの達成可能な含有量を制限することが多く、それ故に、運搬及び溶媒回収費用を追加する。
【0008】
この高い重要性及び多数の水難溶性薬物を考慮すると、本発明の目的は、有機液体希釈剤と水難溶性薬物などの有効成分を組み込むことができるセルロースエーテルとを含み、かつセルロースエーテル中に有効成分を含む固体分散剤を生成するために噴霧乾燥され得る、新しい液体組成物を提供することである。本発明の好適な目的は、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む既知の比較液体組成物よりも、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む新しい液体組成物を提供することである。」

「【発明の概要】
【0009】
驚くべきことに、有機液体希釈剤及びヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む液体組成物の貯蔵における粘度安定性が、向上され得ること、すなわち、置換及び非置換ヒドロキシアルコキシル基の特定の比率のヒドロキシアルキルメチルセルロースが、液体組成物内へ組み込まれる場合、粘度増加の速度が、低減され得ることが見出された。」

「【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に使用されるヒドロキシアルキルメチルセルロース中、ヒドロキシアルコキシル基は、分率(A)と分率(B)とに分類される。分率(A)は、置換ヒドロキシアルコキシル基、すなわち、メトキシル基でさらに置換された(ヒドロキシアルコキシル基の)ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表す。分率(B)は、非置換ヒドロキシアルコキシル基、すなわち、メトキシル基でさらに置換されない(ヒドロキシアルコキシル基の)ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表す。
【0017】
分率(A)/分率(B)の比率は、少なくとも0.30、好適には少なくとも0.35、さらに好適には少なくとも0.40、さらに一層好適には少なくとも0.45、最も好適には少なくとも0.50、特に少なくとも0.53である。典型的に、分率(A)/分率(B)の比率は、最大0.90、さらに典型的には最大0.80、さらに一層典型的には最大0.70または0.65、最も典型的には最大0.60である。ヒドロキシアルキルメチルセルロース等のセルロースエーテル中の、メトキシル基及びヒドロキシアルコキシル基等のエーテル置換基の分布の決定は、一般的に知られ、…分率(A)/分率(B)の比率の決定は、実施例部分で詳細に記載される。
【0018】
ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、本発明の文脈においてアンヒドログルコース単位と呼ばれるβ-1,4-グリコシド結合D-グルコピラノース反復単位を有するセルロース主鎖を有する。好適なヒドロキシアルキルメチルセルロースは、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、さらに好適にはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。好適なものは、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、最も好適なものは、以下に記載される、MS(ヒドロキシアルコキシル)及びDS(メトキシル)を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。MS(ヒドロキシアルコキシル)及びDS(メトキシル)は、MS及びDSと略称される。MS(ヒドロキシアルコキシル)は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースにおけるアンヒドログルコース単位1つ毎のヒドロキシアルコキシル基の平均モル数である。ヒドロキシアルキル化反応の際、セルロース主鎖に結合しているヒドロキシアルコキシル基のヒドロキシル基は、メチル化剤及び/またはヒドロキシアルキル化剤によりさらにエーテル化され得ることが理解されるべきである。アンヒドログルコース単位の同じ炭素原子の位置に関して続く多数のヒドロキシアルキル化エーテル化反応は、側鎖を生じ、多数のヒドロキシアルコキシル基は、エーテル結合により互いに共有結合し、各側鎖は、全体として、セルロース主鎖へのヒドロキシアルコキシル置換基を形成する。用語「ヒドロキシアルコキシル基」は、したがって、2つ以上のヒドロキシアルコキシ単位がエーテル結合により互いに共有結合している、単一のヒドロキシアルコキシル基または上で概説された側鎖のいずれかを含む、ヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位としてのヒドロキシアルコキシル基を指すとMS(ヒドロキシアルコキシル)及び分率(A)/分率(B)の比率の文脈において解釈される必要がある。この定義の範囲内において、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基がさらにアルキル化、例えばメチル化されているかは重要ではなく、アルキル化及び非アルキル化ヒドロキシアルコキシル置換基の両方が、MS(ヒドロキシアルコキシル)を決定するために含まれる。ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、一般に0.05?1.00、好適には0.08?0.90、さらに好適には0.12?0.60、最も好適には0.15?0.50、特に0.21?0.35の範囲のヒドロキシアルコキシル基のモル置換を有する。
【0019】
アンヒドログルコース単位毎にメトキシル基によって置換されるヒドロキシル基の平均数は、メトキシル基の置換度DS(メトキシル)と呼ばれる。DSの上述の定義において、用語「メトキシル基により置換されているヒドロキシル基」には、セルロース主鎖の炭素原子に直接結合しているメチル化ヒドロキシル基のみならず、セルロース主鎖に結合しているヒドロキシアルコキシル置換基のメチル化ヒドロキシル基も含まれることが本発明の範囲内であると解釈されるべきである。ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、好適には1.4?2.5、さらに好適には1.6?2.4、さらに一層好適には1.7?2.2、最も好適には1.8?2.1、特に1.9?2.05の範囲のDS(メトキシル)を有する。

【0023】
少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有する、上述のヒドロキシアルキルメチルセルロースを調製するための方法は、当該技術分野において知られ、例えば、米国特許第5,493,013号及び日本特許出願第J60-192702号に記載される。
【0024】
概して言えば、上述の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを調製するための方法は、i)アルカリセルロースを調製するステップと、ii)ヒドロキシアルキル化反応を、好適には50?95℃、さらに好適には60?80℃の温度で、好適には20?200分間、さらに好適には30?90分間、アルカリセルロースをヒドロキシアルキルエーテル化剤と反応させることによって実施するステップと、iii)続いてメチルエーテル化剤を添加し、ヒドロキシアルキル化反応後にメチル化反応を実施するステップとを含む。少量のメチルエーテル化剤は、この方法のステップii)にすでに存在し得るが、メチルエーテル化剤は、ステップii)及びiii)のメチルエーテル化剤の総重量に基づいて、典型的には僅か0?20パーセント、さらに典型的には0?10パーセント、最も典型的には0?5パーセントの量で存在する。いずれにせよ、ステップii)中に存在する、(セルロース中、1モルのアンヒドログルコース単位毎にモルでの)メチルエーテル化剤の量は、十分なヒドロキシアルキル化反応を許容するために、ステップii)中に存在するアルカリ化剤の量を一般的に超えるべきではない。ステップiii)は、好適には第2の量のアルカリ化剤の存在下で行われる。ステップiii)における第2の量のアルカリ化剤の添加は、好適には、反応が60?95℃、好適には75?85℃の温度で継続される前に、30?95℃、好適には30?60℃の温度で行われる。
【0025】
ステップi)、好適にはステップiii)で使用されるアルカリ化剤は、好適には水酸化ナトリウムの水溶液、最も好適には45?50重量パーセント水酸化ナトリウム水溶液である。セルロース中1モルのアンヒドログルコース単位毎に、典型的には1.0?5.0、さらに典型的には2.0?4.0、最も典型的には2.5?3.5モル当量のアルカリ化剤が、ステップi)で使用される。セルロース中1モルのアンヒドログルコース単位毎に、典型的には0.2?5.0、さらに典型的には0.5?2.0、最も典型的には0.65?0.85モル当量のヒドロキシアルキルエーテル化剤が、ステップii)で使用される。セルロース中1モルのアンヒドログルコース単位毎に、典型的には、1.0?10、さらに典型的には3.0?8.0、最も典型的には5.0?6.5モル当量のメチルエーテル化剤、及び典型的には1.0?5.0、さらに典型的には2.0?3.0、最も典型的には2.1?2.4モル当量のアルカリ化剤が、ステップiii)で使用される。
【0026】
ステップii)のヒドロキシアルキルエーテル化剤は、好適には酸化エチレンまたは酸化ブチレン、さらに好適には酸化プロプレンである。ステップiii)でメチル化反応を実施するための好適なメチルエーテル化剤は、ハロゲン化メチル、さらに好適には塩化メチルである。
【0027】
ヒドロキシアルキルエーテル化剤及びメチルエーテル化剤の添加の順序を制御することにより、メトキシル基での置換は、ヒドロキシアルコキシル基の大部分の形成後になるであろう。
【0028】
少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを生成する一方法は、1985年10月1日に未審査の出願として公開され、1984年3月14日の出願日及び出願第59-48389号を有する日本特許出願第J60-192702号に詳細に記載される。少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースは、好適には、セルロース中1モルのアンヒドログルコース単位毎のモル当量のヒドロキシアルキルエーテル化剤及びメチルエーテル化剤が、所望のMS(ヒドロキシアルコキシル)及びDS(メトキシル)を達成するために、適応されることを除き、この日本特許出願の実施例1?3に記載されるとおりに生成される。この日本特許出願に開示される方法に従い、第1のステップとして、酸化アルキレンが、ハロゲン化アルキルの非存在下または存在下で、反応で消費されるハロゲン化メチルの総量の5?80モル%、好適には10?70モル%に対応する量のアルカリを含有するアルカリセルロースと反応させるためにもたらされ、その後、第2のステップとして、水酸化アルカリ及びハロゲン化アルキルが添加され反応が生じる方法で、アルキルセルロースを、酸化アルキレン及びハロゲン化メチルと反応させる。第1のステップにおいて、反応温度は、好適には30?90℃であり、反応時間は、理想的には0.5?5時間である。好適な実施形態に従って、かつ実施例1?3に従って、第1のステップで、酸化アルキレンが、ハロゲン化アルキルの非存在下でアルカリセルロースと反応させるためにもたらされる。
【0029】
本発明の組成物は、25℃及び大気圧で液体であり、上述のとおり、少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロースに加え、有機液体希釈剤を含む。用語「有機液体希釈剤」は、本明細書で使用されるとき、25℃及び大気圧で液体である有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物を意味する。好適な有機液体希釈剤は、酸素、窒素、またはハロゲン(塩素など)のような1個以上のヘテロ原子を有する極性有機溶媒である。さらに好適な有機液体希釈剤は、アルコール、例えばグリセロール等の多官能アルコール、または好適には、メタノール、エタノール、イソプロパノールもしくはn-プロパノール等の単官能アルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、もしくはメチルイソブチルケトン等のケトン、エチルアセテート等のアセテート、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、またはアセトニトリル等のニトリルである。さらに好適には、有機液体希釈剤は、1?6個、最も好適には1?4個の炭素原子を有する。本発明の液体組成物は、追加的に水を含んでもよいが、液体組成物は、有機液体希釈剤及び水の総重量に基づいて50超、さらに好適には少なくとも65、最も好適には少なくとも75重量パーセントの有機液体希釈剤、ならびに50未満、さらに好適には最大35、最も好適には最大25重量パーセントの水を含むべきである。任意選択で少量の水と混合される好適な有機液体希釈剤の特定の例は、メタノール、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、80?95重量パーセントのメタノール及び20?5重量パーセントの水のブレンド、…または70?90重量パーセントのエタノール及び10?30重量パーセントのテトラヒドロフランもしくはエチルアセテートのブレンドである。
【0030】
有機液体希釈剤及び上述のヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む本発明の液体組成物は、貯蔵にあたり、驚くべき安定した粘度を有することが見出されている。驚くべきことに、本発明の液体組成物は、より良好な粘度安定性を有する、すなわち、長期間にわたる液体組成物の貯蔵後、0.30未満の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む比較液体組成物よりも小さい粘度増加の速度を、呈することが見出されている。
【0031】
本発明の液体組成物が、有機液体希釈剤及び、液体組成物の総重量に基づいて、10重量パーセントの上述のヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む場合、調製されてから60分後、25℃でのその粘度は、実施例部分で記載されるとおりに測定して、典型的には20?5000mPa・s、さらに典型的には50?2000mPa・s、最も典型的には100?1000mPa・s、特に150?500mPa・sの範囲である。そのような本発明の液体組成物が25℃で18時間以上貯蔵された場合、典型的に液体組成物の粘度は、液体組成物が調製されてから60分後に測定される25℃での液体組成物の10倍以下の粘度、さらに典型的には5倍以下の粘度、最も典型的には2.5倍以下の粘度である。したがって、有機液体希釈剤及び上述のヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む本発明の液体組成物は、室温での貯蔵にあたり、望ましくない粘度増加が起きにくい。粘度増加に対する傾向の減少は、有機液体希釈剤を含む液体組成物の少なくとも1つの上述のヒドロキシアルキルメチルセルロースのより高い濃度を可能にする一方で、液体組成物の流動性を依然として保存する。貯蔵における高められた粘度安定性、以後「貯蔵安定性」は、以下でさらに記載されるとおり、本発明の組成物が、液体形態、例えば懸濁液、噴霧可能な組成物、またはシロップの形態で直接使用される場合に、格別重要である。しかしながら、高められた貯蔵安定性はまた、さらに以下で記載されるとおり、液体希釈剤が、様々な剤形を生成するために液体組成物から除去される場合も、格別重要である。高められた貯蔵安定性は、処理ウィンドウ、すなわち、液体組成物の調製から、そのさらなる処理までの可能期間を増加させる。
【0032】
本発明の液体組成物は、有効成分の賦形剤系として有用であり、肥料、除草剤、もしくは殺虫剤等の有効成分の賦形剤系を調製するための中間体として、または、ビタミン、ハーブ及びミネラル補給剤、ならびに薬物等の生物学的有効成分として、特に有用である。したがって、本発明の液体組成物は、好適には1つ以上の有効成分、最も好適には1つ以上の薬物を含む。用語「薬物」は、従来どおり、動物、とりわけヒトに投与される場合、有益な予防及び/または治療特性を有する化合物を示す。好適には、薬物は、薬物が生理学的関連pH(例えば、pH1?8)で約0.5mg/mL以下の水溶性を有することを意味する、「低溶解性薬物」である。本発明は、薬物の水溶性が低下するにつれ、より大きな有用性を見いだす。それ故、本発明の液体組成物及び固体分散剤は、水溶性(mg/mL)が、USP模擬胃緩衝液及び腸緩衝液を含む、任意の生理学的関連水溶液(例えば、1?8のpH値を有するもの)において観察される最小値である場合、0.1mg/mL未満、または0.05mg/mL未満、または0.02mg/mL未満、またはさらには0.01mg/mL未満の水溶性を有する、低溶解性薬物に好適である。
【0033】
本発明の液体組成物及び固体分散剤に含まれるヒドロキシアルキルメチルセルロースは、水溶液中の水難溶性薬物等の水難溶性有効成分の濃度を、過飽和レベルで維持することができる。非存在下よりも著しく高いヒドロキシアルキルメチルセルロースの水溶液中の水難溶性有効成分の濃度が、維持され得る。

【0038】
この発明から恩恵を受けるために、有効成分が低溶解性有効成分である必要はないが、低溶解性有効成分は、本発明で使用するのに好適な部類を表す。使用の所望の環境において適切な水溶性を呈する有効成分は、最大1?2mg/mL、さらには20?40mg/mLもの高い水溶性を有し得る。有用な低溶解性薬物は、国際特許出願第2005/115330号、17?22頁に列挙される。
【0039】
本発明の液体組成物は、液体組成物の総重量に基づいて、上述のとおり、好適には1?40、さらに好適には2.5?30、最も好適には5?20、特に7?15重量パーセントの少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロース、好適には40?99、さらに好適には54.9?97.4、最も好適には65?94.5、特に70?92重量パーセントのi)有機液体希釈剤またはii)少量の水、例えばさらに上に記載される量の水とブレンドした有機液体希釈剤、及び好適には0?40、さらに好適には0.1?40、最も好適には0.5?25、特に1?15重量パーセントの有効成分を含む。
【0040】
本発明の一態様において、上述のとおり、少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロース、1つ以上の有効成分、及び任意選択で1つ以上の補助剤を含む本発明の液体組成物は、液体形態、例えば懸濁液、噴霧可能な組成物、またはシロップの形態で使用され得る。液体組成物は、例えば、経口、眼内、局所的、直腸内、または鼻腔内適用に有用である。液体希釈剤は、一般的に、上述のとおり任意選択で少量の水と混合されるエタノールまたはグリセロール等、薬学的に許容されるべきである。
【0041】
本発明の別の態様において、本発明の液体組成物は、上述のとおり少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロース中に、さらに上に記載されるとおり、薬物等の少なくとも1つの有効成分、及び任意選択で1つ以上の補助剤を含む固体分散剤を生成するために使用される。固体分散剤は、組成物から液体希釈剤を除去することにより生成される。液体希釈剤は、上述のとおり任意選択で少量の水とブレンドされる液体有機希釈剤であり、すなわち、組成物が任意の添加剤として水を含む場合、本発明の固形分散剤を調製するために、有機液体希釈剤及び水は液体組成物から除去される。
【0042】
液体組成物から液体希釈剤を除去する一方法は、液体組成物を膜もしくはカプセルへと流延することによってか、または液体組成物を、有効成分を同様に含み得る固体担体上に塗布することによる。固体分散剤を生成するための好適な方法は、噴霧乾燥によってである。用語「噴霧乾燥」は、液体混合物を小さな液滴へと分離し(霧化)、液滴から溶媒を蒸発させるための強い駆動力がある噴霧乾燥器具中の混合物から、溶媒を急速に除去することを伴うプロセスを指す。噴霧乾燥プロセス及び噴霧乾燥器具は、全般的にPerry’s Chemical Engineers’Handbook,pages 20-54 to 20-57(Sixth Edition 1984)に記載される。

【0045】
本発明の別の態様において、本発明の液体組成物は、コーティングされた組成物を形成するために、錠剤、顆粒、ペレット、カプレット、口内錠、坐薬、膣坐薬、または移植可能な剤形等の剤形をコーティングするために使用され得る。本発明の液体組成物が薬物等の有効成分を含む場合、薬物層形成が達成され得る、すなわち、剤形及びコーティングが、異なる最終使用のための異なる有効成分を含み得る及び/または異なる放出動態を有し得る。
【0046】
本発明のなお別の態様において、本発明の液体組成物は、液体組成物を浸漬ピンと接触させるステップを含む方法において、カプセル製造のために使用され得る。
【0047】
コーティングされた剤形及びカプセルは、既知の方法で、乾燥され得るか、乾燥させられ得る。」

「【0049】
以下の実施例は、単に例示の目的のためであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。特に指定がない限り、全ての百分率は重量による。
【0050】
実施例及び比較実施例
HPMCのメトキシル%及びヒドロキシプロポキシル%の決定
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のメトキシル%及びヒドロキシプロポキシル%の決定を、米国薬局方(USP35、「Hypromellose」、3467?3469頁)にしたがって実施した。
【0051】
得られた値は、メトキシル%及びヒドロキシプロポキシル%であった。続いてこれらを、メトキシル置換基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシル置換基のモル置換(MS)に変換した。塩の残留量が変換の考慮に入っている。
【0052】
HPMCの粘度の決定
HPMC試料の粘度を、水中2.0重量%の溶液として20℃±0.1℃で測定した。水中2.0重量%のHPMC溶液を、米国薬局方(USP35、「Hypromellose」、3467?3469頁)に従い、続いてDIN51562-1:1999-01(January1999)に従ったUbbelohde粘度測定法で調製した。
【0053】
分率(A)/分率(B)の比率の決定
セルロースエーテルのエーテル置換基の決定は、一般に知られ、例えば、Bengt Lindberg、Ulf Lindquist、及びOlle Stenbergによる、Carbohydrate Research,176(1988)137-144,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,DISTRIBUTION OF SUBSTITUENTS IN O-ETHYL-O-(2-HYDROXYETHYL)CELLULOSEに記載される。
【0054】
具体的には、非置換ヒドロキシアルコキシル基の分率(A)/分率(B)の比率の決定を、以下のとおり行う。

【0064】
上に定義されるとおり、モル分率に基づいて分率(A)/分率(B)の比率が決定され、分率(A)は、さらにメトキシル基で置換された(ヒドロキシアルコキシル基の)ヒドロキシル基を有する置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(B)は、さらにメトキシル基で置換されない(ヒドロキシアルコキシル基の)ヒドロキシル基を有する非置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表す。比較実施例A及び実施例1において、ヒドロキシアルコキシル基は、ヒドロキシプロポキシル基である。
【0065】
貯蔵安定性
本発明の液体組成物及び比較液体組成物の貯蔵安定性を評価するために、実施例1及び比較実施例Aそれぞれの10重量パーセントのHPMCを、90/10の重量比を有するメタノール/水の混合物に、室温で2時間攪拌することにより、別々に溶解した。
【0066】
25℃でHPMCを含む混合物の複素粘度|η*|を、Anton Paar Physica UDS200レオメーター(Ostfildern、Germany)を用いて、振動剪断流中、掃引時間実験で調査した。Cup&Bob(Z3-DIN)形状を使用し、蒸発を防ぐため、形状上面を小さな金属板で覆った。測定を、1Hzの一定振動数及び0.5%の一定歪み(変位振幅)で18時間超、線形状粘弾性領域で行った。これらの測定を、各一平均値のデータ収集速度5分で行った。第1の測定を、上述のとおり溶液が調製されて10分後に行った。最終測定を、溶液の調製から1080分後に行う。その結果は、下記表1に要約される。貯蔵安定性測定の詳細は、下記表2に列挙される。
【0067】
比較液体組成物を調製するのに使用される、0.30未満の分率(A)/分率(B)の比率を有するHPMCの調製
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、以下の手順に従って生成した。細かく粉砕した木材セルロースパルプを、ジャケット付き攪拌された反応器に充填した。酸素を除去するため、反応器を脱気し窒素でパージし、次いで再度脱気した。水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中1モルのアンヒドログルコース単位毎に、4.94モルの量の水酸化ナトリウムをセルロースに噴霧し、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液及びセルロースの混合物を、約15分間、40℃で攪拌後、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、2.79モルのジメチルエーテル及び5.94モルの塩化メチルを反応器へ添加した。1モルのアンヒドログルコース単位毎に2.14モルの酸化プロプレンを、ジメチルエーテル及び塩化メチルの添加の直後に、反応器に添加した。次いで、反応器の内容物を、80分で80℃に加熱した。80℃に達した後、反応を60分間進行させた。
【0068】
反応後、反応器を排気し、冷ました。反応器の内容物を除去し、85?95℃の温度の湯を含有する槽に移した。次いで、粗HPMCをギ酸で中和し、湯で塩化物不含に洗浄(AgNO_(3)凝集試験により評価)し、室温に冷まし、空気掃引乾燥機を用いて55℃で乾燥させた。その物質を、次いで、0.5mmスクリーンを用いてAlpine UPZ粉砕機を使用し、粉砕した。
【0069】
続いて、粉砕したHPMCを3?4mPa・sの所望の粘度を達成するために、1kgのHPMC毎に約3gの塩化水素ガスで70?80℃で約5時間加熱することにより、部分的に解重合した。部分的に解重合されたHPMCを、重炭酸ナトリウムで中和した。生成されたHPMCは、水中2.0重量%溶液として20℃で測定して、3.3mPa・sの粘度を有した。
【0070】
本発明の液体組成物を調製するのに使用される、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有するHPMCの調製
細かく粉砕した木材セルロースパルプを、ジャケット付き攪拌された反応器に充填した。酸素を除去するため、反応器を脱気し窒素でパージし、次いで再度脱気した。反応は、二段階で実施した。第1の段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロース中1モルのアンヒドログルコース単位毎に、2.70モルの量の水酸化ナトリウムをセルロースに噴霧し、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液及びセルロースの混合物を、約25分間、40℃で攪拌後、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、1.02モルのジメチルエーテル及び0.19モルの塩化メチルをスラリーとして反応器へ添加した。1モルのアンヒドログルコース単位毎に0.75モルの酸化プロプレンを、スラリーの添加の直後に、反応器に添加した。攪拌を、10分間継続した。次いで、反応器の内容物を、15分で65℃に加熱した。65℃に達した後、第1の段階反応を80分間進行させた。次いで、反応器の内容物を、15分以内で40℃に冷ました。
【0071】
反応の第2の段階を、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、5.14モル当量の塩化メチルの量の塩化メチルを添加することにより開始した。次いで、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、1モルのアンヒドログルコース単位毎に2.23モルの水酸化ナトリウムの量で添加し、温度を40℃で5分間継続した。次いで、反応器の内容物を80分で82℃に加熱した。82℃に達した後、第2の段階の反応を、30分間進行させた。
【0072】
反応後、反応器を排気し、冷ました。反応器の内容物を除去し、85?95℃の温度の湯を含有する槽に移した。次いで、粗HPMCをギ酸で中和し、湯で塩化物不含に洗浄(AgNO3凝集試験により評価)し、室温に冷まし、空気掃引乾燥機を用いて55℃で乾燥させた。その物質を、次いで、0.5mmスクリーンを用いてAlpine UPZ粉砕機を使用し、粉砕した。
【0073】
続いて、粉砕したHPMCを3?4mPa・sの所望の粘度を達成するために、1kgのHPMC毎に約3gの塩化水素ガスで80℃、約2.5時間加熱することにより、部分的に解重合した。部分的に解重合されたHPMCを、重炭酸ナトリウムで中和した。生成されたHPMCは、水中2.0重量%溶液として20℃で測定して、3.6mPa・sの粘度を有した。
【0074】
下記の表1及び2の結果は、分率(A)/分率(B)の比率が少なくとも0.30であるHPMCを含む本発明の液体組成物が、長期間にわたる貯蔵にあたり、非常により高い粘度安定性を有する、すなわち、本発明の液体組成物が、長期間にわたる液体組成物の貯蔵後、分率(A)/分率(B)の比率が0.30未満である比較HPMCを含む液体組成物よりも、非常に小さい粘度増加の速度を呈することを例示する。実施例の液体組成物のHPMCは、20℃で水中2.0重量%溶液として実質的に同じ粘度ならびに比較実施例の液体組成物のHPMCと実質的に同じメトキシル%及びヒドロキシプロポキシル%基だが、大幅に高い分率(A)/分率(B)の比率の有する。
【0075】
【表1】




【0076】
【表2】




6 当審の判断
(1)明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について
ア 本件発明1の「有機液体希釈剤」について、異議申立人は、「文言上、有機液体を希釈する希釈剤または有機液体である希釈剤を意味するが、本件明細書の段落[0029]の記載を考慮すると後者と考える。このとき、希釈剤は、溶液の濃度を希釈するための液体を意味するため、溶液の存在が必要となる。しかし、液体組成物の他の成分である『ヒドロキシアルキルメチルセルロース』は…通常固体であり、対象となる有効成分の溶液が存在しない。したがって、『有機液体希釈剤』の記載を含む本件発明1は不明確とな」ると主張する。
しかしながら、本件明細書の【0029】には、「用語『有機液体希釈剤』は、本明細書で使用されるとき、25℃及び大気圧で液体である有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物を意味する。」と記載されており、請求項1の「有機液体希釈剤」は、【0029】に記載された「25℃及び大気圧で液体である有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物」を意味することは明らかであるから、請求項1の「有機液体希釈剤」は明確である。

イ 本件発明7の「固体分散剤」について、異議申立人は、「文言上、固体を分散する分散剤または固体の分散剤を意味し、分散剤は、微粒子を液体中に分散させるために用いる界面活性剤等を意味する。したがって、ヒドロキシアルキルメチルセルロース中に少なくとも1つの有効成分を含む固体分散剤は不明確であ」る旨主張する。
ここで、本件発明7の「固体分散剤」とは、所定の「ヒドロキシアルキルメチルセルロース中に少なくとも1つの有効成分を含む」組成物であり(請求項7)、また、有機液体希釈剤と、1つ以上の有効成分と、所定のヒドロキシアルキルメチルセルロースとを含む液体組成物から、液体希釈剤を除去することで製造されるものである(請求項8)。
そして、発明の詳細な説明における、「多くの現在知られている薬物は、低い水への溶解性を有し、それ故、好適な剤形を調製するために複雑な技法が必要とされる。低水溶性の薬物と組み合わせた薬学的に許容される水溶性ポリマーの使用に多くの研究が費やされている。水溶性ポリマーの使用は、薬物の結晶度を低減し、それにより薬物の溶解に必要な活性化エネルギーを最小化すること、及び薬物分子の周囲の親水性条件を確立し、それにより薬物自体の溶解性を向上させ、その生物学的利用能、すなわち、投与後個体によるその体内吸収を増加させることを目指す。」(【0002】)、「難溶解性薬物の生物学的利用能を増加させるための、非晶質固体分散剤の調製について論じる。非結晶固体分散剤を調製するための一般的に適用される製造方法は、噴霧乾燥である。」(【0003】)、「この高い重要性及び多数の水難溶性薬物を考慮すると、本発明の目的は、有機液体希釈剤と水難溶性薬物などの有効成分を組み込むことができるセルロースエーテルとを含み、かつセルロースエーテル中に有効成分を含む固体分散剤を生成するために噴霧乾燥され得る、新しい液体組成物を提供することである。 」(【0008】)、「本発明の液体組成物及び固体分散剤に含まれるヒドロキシアルキルメチルセルロースは、水溶液中の水難溶性薬物等の水難溶性有効成分の濃度を、過飽和レベルで維持することができる。非存在下よりも著しく高いヒドロキシアルキルメチルセルロースの水溶液中の水難溶性有効成分の濃度が、維持され得る。」(【0033】)、「この発明から恩恵を受けるために、有効成分が低溶解性有効成分である必要はないが、低溶解性有効成分は、本発明で使用するのに好適な部類を表す。」(【0038】)との記載を踏まえると、本件発明7の「固体分散剤」は、有効成分(好適には低溶解性ないし水難溶性有効成分)の生物学的利用能を増加させるために、当該有効成分を所定のヒドロキシアルキルメチルセルロース中に分散させたものと理解されるものであるので、明確である(なお、当業界においては、難溶性の有効成分の生物学的利用能を向上させるために、固体状態の有効成分を水溶性ポリマー等の不活性な担体中に分散させたものを、一般に、「固体分散体」と呼称している〔要すれば、国際公開第2011/152297号の【0003】を参照〕)。
そうしてみると、「固体分散剤」についての文言解釈を前提とした、異議申立人の上記特許法第36条第6項第2号違反の主張は、当を得ないものである。なお、異議申立人も、他の申立理由については、「固体分散剤」に関して上記の合議体の見解と同様の解釈を前提として主張しているところである。

ウ その他、請求項1?10の記載において、特段不明確な点は見出せない。
したがって、本件発明1?10は、明確である。

エ 以上によれば、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

(2)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1は、有機液体希釈剤と、1つ以上の有効成分と、分率(A)/分率(B)が少なくとも0.30であるヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む液体組成物に係る発明である。
物の発明の実施とは、その物を生産、使用等をする行為をいうから、物の発明については、明細書の記載及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を製造し、使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。

(イ)本件明細書の発明の詳細な説明には、ステップi)、ii)及びiii)の製造方法を用いて、ヒドロキシアルコキシル基を大部分形成した後に、メトキシル基での置換を行うことにより、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを生成することができると記載されている(【0023】?【0028】)。
また、有機液体希釈剤としてアルコール、エーテル、ケトン、アセテートやハロゲン化炭化水素等が、また、有効成分として肥料や薬物等が、それぞれ具体的に例示され(【0029】【0032】?【0038】)、液体組成物における各成分(有機液体希釈剤、有効成分、ヒドロキシアルキルメチルセルロース)の好適な含有量(重量%)について記載されている(【0039】)。
さらに、液体組成物は、例えば、経口、眼内局所的、直腸内または鼻腔内適用に有用であること、錠剤等の剤形をコーティングするために使用できること、浸漬ピンと接触させるステップを含む方法においてカプセル製造のために使用され得ること、噴霧乾燥して有機液体希釈剤や水を除去することにより固体分散剤を生成すること等、様々に使用できることが記載されている(【0040】?【0042】【0045】?【0047】)。
そして、実施例1及び比較実施例Aにおいて、分率(A)/分率(B)の比率が、それぞれ0.56及び0.24である以外は、粘度、DS及びMSの数値がほぼ同じであるヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下「HPMC」ということがある。)を製造し、そのHPMCを、メタノール/水(90/10の重量比)の混合物に10重量%となるように溶解させた場合には、比較実施例Aに比べ実施例1の方が、優れた粘度安定性を有することが記載されている(【0049】?【0076】)。

(ウ)上記(イ)の記載によれば、当業者は、実施例1で製造された分率(A)/分率(B)の比率が0.56以外の、少なくとも0.30の当該比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを、過度な試行錯誤を要することなく製造することができる。そして、当業者は、その製造したヒドロキシアルキルメチルセルロースを用いて、本件明細書に例示された有機液体希釈剤及び有効成分とともに液体組成物を製造することができる。
また、当業者は、剤形のコーティングや固体分散剤の生成等のために、該液体組成物を使用することができる。
そうすると、本件発明1を実施することは、当業者が過度な試行錯誤を要することなくなし得るといえる。

(エ)したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されている。

イ 本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を更に特定するものであり、本件発明2は有機液体希釈剤を「アルコール、エーテル、ケトン、アセテート、またはハロゲン化炭化水素」に、本件発明3は分率(A)/分率(B)の比率を「0.35?0.90」に、本件発明4は「1.6?2.4のDSと、0.08?0.90のMS」を有することを、本件発明5は「水中2重量%溶液として20℃で測定される、1.20?100mPa・sの粘度」を有することを、本件発明6は、ヒドロキシアルキルメチルセルロースを「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」に、それぞれ特定するものである。
本件発明1と同様の理由により、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2?6を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されている。

ウ 本件発明7について
本件発明7は、分率(A)/分率(B)の比率が少なくとも0.30である、少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロース中に、少なくとも1つの有効成分を含む、固体分散剤に係る発明である。
本件明細書の発明の詳細な説明には、固体分散剤は、本件発明1に係る液体組成物から有機液体希釈剤(及び水)を噴霧乾燥等により除去して調製される旨が記載されている(【0041】?【0042】)。
そうすると、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、上記固体分散剤を製造し、それを使用することができるといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明7を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されている。

エ 本件発明8について
本件発明8は、本件発明1?6のいずれかの液体組成物を提供するステップと、前記液体組成物から液体希釈剤を除去するステップとを含む、本件発明7の固体分散剤を生成するための方法に係る発明である。
物を生産する方法の発明の実施とは、その方法を使用する行為、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから、物を生産する方法の発明については、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づき、当業者が発明に係る方法により、発明に係る物を製造することができ、その物を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
本件明細書の発明の詳細な説明には、固体分散剤は、液体組成物から有機液体希釈剤(及び水)を噴霧乾燥等により除去して調製される旨が記載されているから(【0041】?【0042】)、当業者は、本件発明8に係る方法により、固体分散剤を製造することができ、その固体分散剤を使用することができる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明8を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されている。

オ 本件発明9?10について
本件発明9は、本件発明1?6のいずれかを剤形と接触させるステップを含む、剤形をコーティングするための方法に係る発明であり、また、本件発明10は、本件発明1?6のいずれかを浸漬ピンと接触させるステップを含む、カプセルの製造のための方法に係る発明である。
本件明細書の発明の詳細な説明には、錠剤、顆粒等の剤形をコーティングするために、また、浸漬ピンを接触させるステップを含む方法においてカプセル製造のために、本発明(本件発明1?6)の液体組成物を使用することが記載されている(【0045】?【0047】)。
そうすると、当業者は、本件発明9?10に係る方法により、剤形をコーテイングし、また、カプセルを製造し、そのカプセルを使用することができる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明9?10を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されている。

カ 異議申立人の主張について
異議申立人は、有効成分と有機液体希釈剤は粘度に影響を与えることを指摘した上で、「本件明細書には、液体組成中に有効成分が存在する実施例、90/10の重量比のメタノール/水の混合物以外の実施例、分率(A)/分率(B)の比率0.56以外の実施例、1.95のDS(メトキシル)と0.26のMS(ヒドロキシプロポキシル)以外の実施例が存在せず、これらの結果を特許請求の範囲に記載された範囲に拡張できる根拠もなく、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、過度の実験等を要する」旨を主張する。

しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識からみて、有効成分や有機液体希釈剤が、液体組成物を製造できない程に、また、製造した液体組成物を使用できない程に、液体組成物の(経時的な)粘度を上昇させるとはいえない。また、異議申立人は、「たとえ少ない含有量であっても、増粘剤のように粘度に大きな影響を与える試薬もあり、有効成分の存在下での実施は必要である。」とも主張するが、本件発明は増粘剤を必須とするものではなく、本件明細書には増粘剤を用いることは記載されていないので、増粘剤に関する主張は本件発明の実施可能要件に直接影響するものではない。
また、MS、DS及び分率(A)/分率(B)の比率の数値に関し、実施例が一つしか記載されていなくても、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に、明確かつ十分に記載されていることは上記したとおりである。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

キ 小括
以上によれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

(3)サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)について
ア 本件発明1について
(ア)本件明細書の発明の詳細な説明には、有機液体希釈剤及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースエーテルを含む組成物は、貯蔵安定性がないことが多く、長期間にわたる液体組成物の貯蔵後、非常に大きな粘度増加を呈することが記載され(【0007】)、「本発明の好適な目的は、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む既知の比較液体組成物よりも、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む新しい液体組成物を提供することである。」(【0008】)と記載されていることによれば、本件発明1の課題は、「有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む既知の比較液体組成物よりも、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む新しい液体組成物を提供すること」であるといえる。

(イ)本件明細書の発明の詳細な説明には、「置換及び非置換ヒドロキシアルコキシル基の特定の比率のヒドロキシアルキルメチルセルロースが、液体組成物内へ組み込まれる場合、粘度増加の速度が、低減され得ることが見出された。」(【0009】)、「有機液体希釈剤及び上述のヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む本発明の液体組成物は、貯蔵にあたり、驚くべき安定した粘度を有することが見出されている。驚くべきことに、本発明の液体組成物は、より良好な粘度安定性を有する、すなわち、長期間にわたる液体組成物の貯蔵後、0.30未満の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む比較液体組成物よりも小さい粘度増加の速度を、呈することが見出されている。」(【0030】)と記載されている。
これらの記載と上記(ア)に示した本件発明1の課題からみて、本件発明1の課題を解決したといえるためには、本件発明1における課題解決手段である「少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率」を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを用いることにより、0.30未満の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを用いる「既知の比較液体組成物」に比べ、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する液体組成物を提供することを当業者が認識できることが必要であると解される。

(ウ)また、実施例1及び比較実施例Aにおいて、分率(A)/分率(B)の比率が、それぞれ0.56及び0.24であること以外は、粘度、DS及びMSの数値がほぼ同じであるHPMCを製造し、そのHPMCを、メタノール/水(90/10の重量比)の混合物に10重量%となるように溶解させた場合には、比較実施例Aに比べ実施例1の方が、優れた粘度安定性を有することが記載されていることから(【0049】?【0076】)、分率(A)/分率(B)の比率が0.24から0.56へと大きくなると、粘度安定性が高まることが理解できる。
また、これらの実験系に、有効成分を添加した場合やメタノール以外の有機液体希釈剤を用いた場合においても、分率(A)/分率(B)の比率が0.24から0.56へと大きくなると、同様に、粘度安定性が高まることが予測できる。

(エ)そうすると、分率(A)/分率(B)の比率を大きくすることにより、上記(イ)に示した課題解決手段である「少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率」を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを用いる液体組成物とすれば、比較実施例Aの分率(A)/分率(B)の比率が0.24であるHPMCに代表される、0.30未満の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを用いる「既知の比較液体組成物」に比べ、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する液体組成物となり、本件発明1の課題を解決できることを、当業者が認識することができるといえる。

(オ)したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を更に特定するものであるから、本件発明1と同じ課題を解決するものといえる。
そして、本件発明1と同様の理由により、本件発明2?6は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものである。
したがって、本件発明2?6は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

ウ 本件発明7?8について
本件発明7は固体分散剤に係る発明であり、本件発明8は、本件発明1?6に係る液体組成物から液体希釈剤を除去することにより本件発明7に係る固体分散剤を生成するための方法であるから、本件発明7?8の課題は、「有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む既知の比較液体組成物よりも、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む新しい液体組成物を用いて固体分散剤を提供すること」である。
上記ア及びイのとおり、本件発明1?6は、「有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む既知の比較液体組成物よりも、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む新しい液体組成物を提供する」という課題を解決できると当業者が認識できるのであるから、本件発明7に係る固体分散剤、及び本件発明8に係る固体分散剤を生成するための方法は、当該発明の課題を解決できると当業者が認識できるものといえる。
したがって、本件発明7?8は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

エ 本件発明9?10について
本件発明9は、本件発明1?6のいずれかを剤形と接触させるステップを含む、剤形をコーティングするための方法に係る発明であるから、本件発明9の課題は、「有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む既知の比較液体組成物よりも、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む新しい液体組成物を用いて、剤形をコーティングするための方法を提供すること」である。
また、本件発明10は、本件発明1?6のいずれかを浸漬ピンと接触させるステップを含む、カプセルの製造のための方法に係る発明であるから、本件発明10の課題は、「有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む既知の比較液体組成物よりも、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む新しい液体組成物を用いた、カプセルの製造のための方法を提供すること」である。
上記ア及びイのとおり、本件発明1?6は、「有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む既知の比較液体組成物よりも、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する、有機液体希釈剤及びセルロースエーテルを含む新しい液体組成物を提供する」という課題を解決できると当業者が認識できるのであるから、本件発明9?10は、当該発明の課題を解決できると当業者が認識できるといえる。
したがって、本件発明9?10は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

オ 異議申立人の主張について
異議申立人は、有効成分と有機液体希釈剤は粘度に影響を与えることを指摘した上で、「本件明細書には、液体組成中に有効成分が存在する実施例、90/10の重量比のメタノール/水の混合物以外の実施例、分率(A)/分率(B)の比率0.56以外の実施例、1.95のDS(メトキシル)と0.26のMS(ヒドロキシプロポキシル)以外の実施例が存在せず、これらの結果を特許請求の範囲に記載された範囲に拡張できる根拠もな」い旨を主張する。

しかしながら、上記したように、本件発明の課題を解決したといえるためには、「少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率」を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースという課題解決手段を用いることにより、0.30未満の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを用いる「既知の比較液体組成物」に比べ、貯蔵にあたり、より良好な粘度安定性を有する液体組成物を提供することが必要であると解されるところ、これは、有効成分と有機液体希釈剤の種類やMS、DS等の当該比率以外の条件はほぼ同じものとした場合を前提とするものであると解するのが相当である。
そして、実施例1及び比較実施例Aにより、当該比率以外の条件(有効成分は除く)はほぼ同じとした上で、当該比率を0.24から0.56へと増加させることで課題が解決できることが具体的に示されていることから、当業者であれば、0.30未満の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを用いる「既知の比較液体組成物」に比べ、当該比率を増加させて少なくとも0.30としたものの方が、粘度安定性に優れ、本件発明の課題を解決できると認識することができる。
また、本件明細書の発明の詳細な説明には、MSは、一般に0.05?1.00、特に0.21?0.35であること、及び、DSは、好適には1.4?2.5、特に1.9?2.05であることが記載されているだけであって(【0018】【0019】)、DS及びMSが特定の数値であることが、本件発明の課題を解決するために必須であると認識することはできない。
そして、このような当業者の認識に反する技術常識が存在するものでもない。
したがって、異議申立人の上記主張は、採用できない。

カ 小括
以上によれば、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(4)進歩性(特許法第29条第2項)について
ア 甲1に記載された発明
上記4(1)の記載(特に、【0029】)からみて、甲1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。

「ニフェジピン1.2g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(ヒドロキシプロポキシル基8.7質量%、メトキシル基28.8質量%、6mPa・s)2.4gをエタノール:水=8:2(質量比)の混合溶媒中に溶解して調製した、固体分散体液。」(以下「甲1発明A」という。)

「ニフェジピン1.2g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(ヒドロキシプロポキシル基8.7質量%、メトキシル基28.8質量%、6mPa・s)2.4gをエタノール:水=8:2(質量比)の混合溶媒中に溶解して、固体分散体液を調製し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乳糖及びコーンスターチの混合物を流動層造粒コーティング装置中で流動させて、前記固体分散体液を噴霧・造粒・乾燥した後、整粒して得た、固体分散体の顆粒剤。」(以下「甲1発明B」という。)

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明Aとを対比すると、甲1発明Aの「エタノール」、「ニフェジピン」、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)」、「固体分散体液」は、本件発明1の「有機液体希釈剤」、「有効成分」、「ヒドロキシアルキルメチルセルロース」、「液体組成物」に、それぞれ相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「有機液体希釈剤と、1つ以上の有効成分と、少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロースと、を含む液体組成物。」
<相違点>
ヒドロキシアルキルメチルセルロースが、本件発明1では、「ヒドロキシアルコキシル基が分率(A)と分率(B)とに分類される」ものであり、「分率(A)は、さらにメトキシル基で置換されたヒドロキシル基を有する置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(B)は、さらにメトキシル基で置換されないヒドロキシル基を有する非置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(A)/分率(B)の比率は、少なくとも0.30である」と特定されているのに対し、甲1発明Aでは、分率(A)と分率(B)について何ら特定されていない点。

(イ)判断
a 甲1発明AにおけるHPMCは、メトキシル基28.8質量%、ヒドロキシプロポキシル基8.7質量%である。この数値から換算すると、DS(メトキシル)1.88、MS(ヒドロキシプロポキシル)0.23となる(注:異議申立書に添付された参考資料1の計算による。)。
しかし、甲1には、HPMCの分率(A)と分率(B)については、何ら記載されておらず、メトキシル基とヒドロキシプロポキシル基の質量%から換算できるものでもないから、甲1発明AにおけるHPMCはどの程度の分率(A)/分率(B)の比率を有するのか、その手がかりとなる記載はない。

b 甲2には、従来の反応に比べ、副反応が少なくなり反応効率が大幅に向上するという利点を有する、二段階からなるヒドロキシアルキルメチルセルロースの製造方法(第1段階〔ハロゲン化アルキルの不存在下又は存在下で、アルカリセルロースにアルキレンオキサイドを反応させる段階〕と第2段階〔ハロゲン化アルキルを反応させる段階〕を有する製造方法(以下「二段階法」という。))が開示され(特許請求の範囲)、実施例1において得られたHPMCは、DS1.88、MS0.25であったことが記載されているものの、「分率(A)/分率(B)の比率」については何ら記載されていない。
そして、本件優先日当時、甲2の実施例1に記載された方法で製造したHPMCが、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有することが技術常識であったとする具体的な根拠は見出せない。
したがって、本件優先日当時、甲2の実施例1に記載された方法で製造したHPMCが、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有することを、当業者が認識していたとはいえない。
そうすると、甲1と甲2を知る当業者が、副反応が少なくなり反応効率が大幅に向上するという利点を有し、かつ、DSとMSが甲1発明Aのそれとほぼ同じであるHPMCを製造する方法である、甲2の実施例1に記載された方法を採用して、甲1発明AのHPMCを製造したとしても、製造されたHPMCが、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率であることを、本件優先日当時において、当業者が認識することができたとはいえない。
したがって、本件優先日当時に、当業者が、甲1発明AにおけるHPMCを、甲2に記載された製造方法により製造したとしても、相違点に係る発明特定事項に想到することができたとはいえない。

c 甲3には、20?30℃の室温で溶解させることができ、かつ熱可逆ゲル化時には高い熱可逆ゲル強度を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースとして、「ヒドロキシアルコキシル基の置換モル数が0.05?0.1で、メトキシル基の置換度が1.6?1.9である水溶性ヒドロキシアルキルメチルセルロースであって、 該ヒドロキシアルコキシル基は該ヒドロキシアルコキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換された置換ヒドロキシアルコキシル基と、置換されていない非置換ヒドロキシアルコキシル基とに分けられ、該非置換ヒドロキシアルコキシル基のモル分率(B)に対する、該置換ヒドロキシアルコキシル基のモル分率(A)の比(A/B)が0.4以上である水溶性ヒドロキシアルキルメチルセルロース」(請求項1)が開示され、実施例と比較例において製造されたHPMCは、いずれも、A/Bが0.4?0.8の範囲に包含されるものであることが記載されている(【0025】の表1)。
甲3における「A/B」は、本件発明1の「分率(A)/分率(B)の比率」に相当するから、甲3の上記記載からみて、本件発明1の「分率(A)/分率(B)の比率」が少なくとも0.30であるヒドロキシアルキルメチルセルロースは、本件優先日当時、当業者において知られていたものであることが理解できる。
しかしながら、甲3には、HPMC水溶液を加熱すると、セルロース鎖に対して分子内で局在化して存在しているメトキシル基部分が疎水和を生じて含水されたゲル状物となり、冷却すると疎水和が減少して元の水溶液に戻る「熱可逆ゲル化性」という特徴を有しており、水溶液は加熱されても優れた保形性を示すことから、HPMCは、例えばセラミックの押出成形用のバインダーとして用いられていることが記載されているものの(【0002】)、それ以外の用途に用いることは何ら記載されていない。
甲3に記載された、熱可逆ゲル化性に着目してセラミック押出成形用のバインダーとして用いられるHPMCと、甲1発明Aの固体分散体において難溶性薬物のキャリヤーとして用いるHPMCとでは、技術分野が相違し、HPMCに求められる作用・機能も相違するから、甲1発明AのHPMCとして、甲3に記載されたものを採用する動機付けがない。

d なお、甲4?6には、ヒドロキシアルキルメチルセルロースの「分率(A)/分率(B)の比率」について何ら記載されていない。

e そうすると、甲1発明Aから、相違点に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得たということはできない。

f そして、本件発明1は、相違点に係る発明特定事項を備えることにより、貯蔵にあたり、良好な粘度安定性を有するという効果を奏する。

(ウ)したがって、本件発明1は、甲1?3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を更に特定するものである。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2?4は甲1?3に記載された事項に基づいて、また、本件発明5?6は甲1?5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲1発明Bとを対比すると、甲1発明Bの「ニフェジピン」、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)」、「固体分散体」は、本件発明7の「有効成分」、「ヒドロキシアルキルメチルセルロース」、「固体分散剤」に、それぞれ相当する。
そうすると、本件発明7と甲1発明Bとの一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「少なくとも1つのヒドロキシアルキルメチルセルロース中に少なくとも1つの有効成分を含む固体分散剤。」
<相違点>
ヒドロキシアルキルメチルセルロースが、本件発明7では、「ヒドロキシアルコキシル基が分率(A)と分率(B)とに分類される」ものであり、「分率(A)は、さらにメトキシル基で置換されたヒドロキシル基を有する置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(B)は、さらにメトキシル基で置換されないヒドロキシル基を有する非置換ヒドロキシアルコキシル基の全てのモル分率の合計を表し、分率(A)/分率(B)の比率は、少なくとも0.30である」と特定されているのに対し、甲1発明Bでは、分率(A)と分率(B)について何ら特定されていない点。

(ウ)判断
本件発明7と甲1発明Bとの相違点は、本件発明1と甲1発明Aとの相違点と同じであるから、上記イのとおり、甲1発明BのHPMCとして、「分率(A)/分率(B)の比率は、少なくとも0.30である」ものを用いることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、本件発明7は、甲1?3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

オ 本件発明8?10について
本件発明8?10は、いずれも、本件発明1?6のいずれかの液体組成物を発明特定事項として含む方法の発明である。
上記のとおり、本件発明1?6を当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明8?9は、甲1?5の記載に基づいて、また、本件発明10は、甲1?6の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 異議申立人の主張について
異議申立人は、(i)甲2の実施例1では、甲1の実施例で使用したHPMCの置換度にほぼ等しい1.86のDS、0.25のMS.を有するHPMCを得ていること、及び、(ii)本件明細書の【0028】は、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを生成する方法は甲2に詳細に記載されると指摘し、「この日本特許出願(当審注:甲2)の実施例1?3に記載されるとおりに生成される。」と記載することから、「当業者は、甲第1号証の実施例で使用するHPMCの製造方法として、副反応が少なく反応効率が大幅に向上する置換度がほぼ等しいHPMCを生じる甲第2号証の実施例1の製造方法を用いた場合、得られたHPMCは少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有する。」と主張する。

しかしながら、上記イ(イ)に示したように、本件優先日当時、甲2の実施例1に記載された方法で製造したHPMCが、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有することを、当業者が認識していたとはいえないから、甲1と甲2を組み合わせても本件発明には至らない。
なお、本件明細書には、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースを生成する方法は、「好適には、セルロース中1モルのアンヒドログルコース単位毎のモル当量のヒドロキシアルキルエーテル化剤及びメチルエーテル化剤が、所望のMS(ヒドロキシアルコキシル)及びDS(メトキシル)を達成するために、適応されることを除き、この日本特許出願の実施例1?3に記載されるとおりに生成される。」(【0028】)と記載されているものの、甲2の実施例1に記載された二段階法で製造すれば、必ず、「少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有する」ものとなると記載されているわけでもない。また、本件明細書の実施例1の製造方法は、甲2の実施例1と同様の二段階法ではあるものの、第1段階で塩化メチルの存在下で酸化プロピレンを反応させているのに対し、甲2の実施例1の製造方法は、第1段階でメチルクロリド(塩化メチル)の非存在下で、プロピレンオキサイド(酸化プロピレン)を反応させていることなど、詳細な条件が本件明細書の実施例1と甲2の実施例1とでは異なっている。したがって、本件明細書の記載を参酌しても、甲2の実施例1で製造したHPMCが、少なくとも0.30の分率(A)/分率(B)の比率を有するものであると、直ちに認めることもできない。

キ 小括
以上によれば、本件発明1?10は、甲1?6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?10についての特許は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、また、同法第29条第2項の規定に違反してされたものでもないから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-03-26 
出願番号 特願2016-545752(P2016-545752)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 藤原 浩子
前田 佳与子
登録日 2018-06-15 
登録番号 特許第6353061号(P6353061)
権利者 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
発明の名称 有機液体希釈剤及び特定のヒドロキシアルキルメチルセルロースを含む組成物  
代理人 齋藤 都子  
代理人 松井 光夫  
代理人 河村 英文  
代理人 古賀 哲次  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
代理人 胡田 尚則  
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