• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  E04F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04F
管理番号 1350692
異議申立番号 異議2019-700060  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-29 
確定日 2019-04-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6365161号発明「化粧シート及び化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6365161号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6365161号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成26年9月17日に出願され、平成30年7月13日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月1日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年1月29日に特許異議申立人 古郡 裕介(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6365161号の請求項1ないし10の特許に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも一方の表面が凹凸面である化粧シートであって、該凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra_(2.5))、及びカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra_(0.08))が、以下の条件(1)及び(2)を満たす化粧シート。
0.82μm≦Ra_(2.5)≦3.80μm (1)
Ra_(0.08)≦0.39μm (2)
【請求項2】
前記凹凸面の任意の方向について、さらに以下の条件(3)を満たす請求項1に記載の化粧シート。
0.05≦Ra_(0.08)/[Ra_(2.5)-Ra_(0.08)]≦0.50 (3)
【請求項3】
前記凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(Rz_(2.5))が以下の条件(4)を満たす請求項1又は2に記載の化粧シート。
Rz_(2.5)≦15.00μm (4)
【請求項4】
前記凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の十点平均粗さ(Rz_(0.08))が以下の条件(5)を満たす請求項1?3の何れか1項に記載の化粧シート。
Rz_(0.08)≦1.80μm (5)
【請求項5】
前記凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の凹凸の平均間隔(Sm_(2.5))が以下の条件(6)を満たす請求項1?4の何れか1項に記載の化粧シート。
350μm≦Sm_(2.5) (6)
【請求項6】
基材上に凹凸層を有してなり、該凹凸層の表面が前記凹凸面である請求項1?5の何れか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記基材と前記凹凸層との間に意匠層を有してなる請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記意匠層が木目模様を含む請求項7に記載の化粧シート。
【請求項9】
被着材と、請求項1?8の何れか1項に記載の化粧シートの凹凸面とは反対側の面とを積層し、一体化してなる化粧材。
【請求項10】
床用の化粧材として用いる請求項9に記載の化粧材。」

3 申立理由の概要
(1)取消理由1(進歩性要件違反)
本件発明1ないし10は、甲第1号証に記載の発明、甲第2号証に記載の発明、または、甲第1号証ないし甲第3号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1ないし10に係る特許は、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(サポート要件違反)
本件発明1ないし10は、発明の詳細な説明に記載したものではないため、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、請求項1ないし10に係る特許は、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(明確性要件違反)
本件発明1ないし10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、請求項1ないし10に係る特許は、取り消されるべきものである。
(4)取消理由4(実施可能要件違反)
本件発明1ないし10は、発明の詳細な説明が、当業者が請求項1ないし10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定に違反してされたものであり、請求項1ないし10に係る特許は、取り消されるべきものである。
[証拠]
甲第1号証:特開2013-226791号公報
甲第2号証:特開2001-1402号公報
甲第3号証:特開2001-182276号公報

4 証拠の記載事項
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載
甲第1号証には、図面とともに以下のとおり記載されている(下線は当決定で付した。以下同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は鏡面性、加工適性及び使用適性に優れる化粧シート、及びこの化粧シートを用いた化粧板に関する。」

(イ)「【0004】
前述の製造方法により製造される化粧シートは、樹脂層と絵柄層との密着性を高めるために一定量の接着剤を用いるものであるが、このように接着剤を用いる化粧シートにおいては、化粧シートを巻き上げる際に基材の裏面の凹凸が接着層の接着剤に賦形され、化粧シートの鏡面性が低下する場合があった。
本発明は、前記従来の課題を鑑みてなされたものであって、優れた鏡面性、加工適性及び使用適性を有する化粧シート、及びこの化粧シートを用いた化粧板を提供することを目的とする。」

(ウ)「【0009】
[化粧シート]
本発明の化粧シートは、厚さが40μm以上である基材上に、少なくとも、厚さが1?25μmである接着層、表面保護層、及び厚さが15?200μmである転写用フィルムをこの順に有し、基材の面のうち接着層とは反対側の面の算術平均表面粗さ(Ra)が15μm以下であり、転写用フィルムの面のうち表面保護層と接する面の算術平均表面粗さ(Ra)が20μm以下であり、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であるため、加工適性及び使用適性だけでなく、極めて優れた鏡面性を有するものである。」

(エ)「【0046】
また、転写用フィルムの濡れ指数は、密着性と剥離性を両立させる観点から、35?50mN/mが好ましく、40?45mN/mがより好ましい。なお、本明細書において濡れ指数とは、JIS K 6768に準拠して測定した値である。
なお、転写用フィルムを剥がして転写を行う工程は、(i)基材2と転写用フィルムとを貼り合わせた後、すなわち、転写用フィルムを他の層と積層して化粧シートとした後に行ってもよく、(ii)保護フィルム(マスキングフィルム)としての役割をもたせるために、化粧シートを後述の基板11に貼り合わせた後に行ってもよく、また、(iii)施工後、使用直前に行ってもよく、特に限定されない。」

(オ)「【実施例】
【0054】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例によってなんら限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1の化粧シートを下記(a)?(c)の工程に従って作製した。
(a)基材としてのポリオレフィン樹脂シート(ポリプロピレン樹脂(PP)シート:厚み150μm、裏面の算術平均表面粗さ10μm)上に、ウレタン樹脂を主体とし、着色顔料として酸化チタンを含有するインキを、乾燥後の塗布量が2g/m^(3)となるようにグラビア印刷することにより着色隠蔽層及び着色層をそれぞれ形成した。
(b)転写用フィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム:東洋紡(株)製、商品名「A4100」、厚さ50μm、算術平均表面粗さ0.1μm)上に電離放射線硬化性樹脂組成物(2官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量:3,000)を乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布し、165kV、5Mradにて硬化を行い表面保護層を形成した(硬化後の表面保護層の厚さ:5μm)。
(c)上記(b)で得られた表面保護層の表面にコロナ処理を施し、この処理面に2液硬化型接着剤(大日精化工業(株)製、商品名「E295NT」)を硬化後の厚さが5μmとなるように塗布した後、この接着層と上記(a)の着色層とが接するようにラミネートすることにより化粧シートを作成した。
【0055】
なお、基材及び転写用フィルムの算術平均表面粗さは以下の方法により測定した。
<測定方法>
算術平均表面粗さ(Ra)
JIS B0601:2001に準拠し、(株)小坂研究所製の高精度表面粗さ計「SE‐3FAT」を使用して、針の半径2μm、荷重30mgで拡大倍率20万倍、カットオフ0.08mmの条件下でチャートを描かせ、表面粗さ曲線からその中心線方向に測定長さLの部分を抜き取った。この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向とY軸として、粗さ曲線をY=f(x)で表わした時、次の式で与えられた値をnm単位で表わした。また、この測定は、基準長を1.25mmとして4個測定し、平均値で表わした。」

(カ)「【表1】



表1の実施例1から、以下のことが読み取れる。
「転写用フィルムの表面保護層と接する面の算術平均表面粗さが0.1μmであること。」

イ 甲第1号証に記載された発明
上記アから、甲第1号証には以下の発明(「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材上に、接着層、表面保護層、転写用フィルムをこの順に有した化粧シートであって、JIS B0601:2001に準拠してカットオフ0.08mmの条件下で測定した、転写用フィルムの表面保護層と接する面の算術平均表面粗さが0.1μmであること。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載
甲第2号証には、図面とともに以下のとおり記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キャスト法による合成樹脂樹脂皮膜の製造に使用する賦型シートに係わり、特に合成皮革を製造するときに、該合成皮革に凹凸形状を賦型する工程用の複合賦型シートとその製造方法に属する。」

(イ)「【0031】(測定方法)測定は、日本工業規格(JIS B 0601-1994)「表面粗さ-定義及び表示」に基づいて測定された。なお、この規格の対応国際規格を以下に示す。
・・・
【0032】(測定条件)
触針の先端半径:5μm
荷重:4mN
カットオフ値:表1に記載されている標準値を選択する。
基準長さ:表2に記載されている標準値を選択する。
測定機器:ミツトヨ社製表面粗さ測定装置Suftest-201
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0036】
【実施例】(実施例)坪量が52g/m^(2) の模造紙(基体シート1)の一方の側に、算術平均粗さRaが1μmの凹凸形状をもつ冷却ロールをもつTダイ型溶融押出しコータで、ポリプロピレン(離形性樹脂2)を厚み30μmで形成し、図2(A)に示す微小凹凸面30をもつ離形シート11を作製した。このときの微小凹凸面は、算術平均粗さ0.7μm、カットオフ値0.8mm、評価長さ4mmであった。
【0037】次いで、ペーパーロールと、凸部51をhに形成したエンボスロールとをエンボス加工機に設置し、上記の離形シート11を120℃に予熱し、図2(B)に示すように10℃に冷却したエンボスロール5で60kg/cmの圧力で、冷却賦型して賦型模様3をもつ賦型シート10を形成した。このときの賦型シート10の図2(C)に示す微小凹凸面31は、マスターロールの凸部で、図4(A)に示す状態で密着されて形成され、そして前記微小凹凸面31の表面状態は、算術平均粗さ0.1μm、カットオフ値0.25mm、評価長さ1.25mmであった。また、賦型模様3の深さは、エンボスロール5に設けた凸部51に賦型された高さ50μmと略等しい表面状態である、最大高さ45μm、基準長さ0.25mm、評価長さ1.25mmとなっていた。」

イ 甲第2号証に記載された発明
上記アから、甲第2号証には以下の発明(「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「合成皮革に凹凸形状を賦型する工程用の複合賦型シート10であって、JIS B 0601-1994に基づいて測定された、微小凹凸面31の表面状態は、算術平均粗さ0.1μm、カットオフ値0.25mmである、複合賦型シート。」

(2)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載
甲第3号証には、図面とともに以下のとおり記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鏡面性に優れ、また耐火性、不燃性、加工性等に優れる鏡面性化粧板およびその製造方法に関する。」
(イ)「【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記の従来の課題を解決することを得た。即ち本発明は、無機質基板の少なくとも一方の面に、接着剤層、金属箔層、化粧層、および透明または半透明樹脂層がこの順で積層されてなる化粧板において、前記化粧層表面のカットオフ2.5mmのときの中心線平均粗さとカットオフ0.8mmのときの中心線平均粗さとの差が0.15μm以下であり、かつ前記透明または半透明樹脂層表面のカットオフ2.5mmのときの中心線平均粗さが0.15μm以下であることを特徴とする鏡面性化粧板を提供するものである。 ・・・。」
(ウ)「【0045】
【実施例】以下本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明は下記例によりなんら制限を受けるものではない。各層の表面粗さ(Ra)は、JIS B0601付属書に従って測定した。なお、金属箔層、塗膜層、印刷層については作成途中で測定した。測定条件を表2に示す。」

イ 甲第3号証に記載の技術事項
上記アから、甲第3号証には、以下の技術事項(「甲3の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「無機質基板の少なくとも一方の面に、接着剤層、金属箔層、化粧層、および透明または半透明樹脂層がこの順で積層されてなる化粧板において、JIS B0601付属書に従って測定した、化粧層表面のカットオフ2.5mmのときの中心線平均粗さとカットオフ0.8mmのときの中心線平均粗さとの差を0.15μm以下とすること。」

5 当審の判断
(1)特許法第29条第2項について
ア 本件発明1について
(ア)甲1発明を主発明として
a 対比
甲1発明において、「転写用フィルム」は、剥離して転写を行うものであると解される。なお、これは、上記4(1)ア(エ)の「転写用フィルムを剥がして転写を行う」との記載からも明らかである。そして、甲1発明において、「転写用フィルム」を剥がして得られる「表面保護層」の表面は、「転写用フィルム」の「表面保護層と接する面の算術平均表面粗さ」と同様の算術平均表面粗さを有するものと解される。
してみると、甲1発明において、「転写用フィルム」を剥離して、「表面保護層」が最表面となる「化粧シート」は、本件発明1の「少なくとも一方の表面が凹凸面である化粧シート」に相当する。

すると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「少なくとも一方の表面が凹凸面である化粧シート。」

(相違点1)
凹凸面について、本件発明1では、「任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra_(2.5))、及びカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra_(0.08))が、以下の条件(1)及び(2)を満たす。0.82μm≦Ra_(2.5)≦3.80μm (1)Ra_(0.08)≦0.39μm (2)」であるのに対し、甲1発明では、「JIS B0601:2001に準拠してカットオフ0.08mmの条件下で測定した、算術平均表面粗さが0.1μmである」点。

b 判断
上記相違点1について判断する。
甲2発明には、カットオフ値0.08mm及びカットオフ値2.5mmとした際の算術平均粗さをどの程度とするかは特定されていない。
また、甲3の技術事項には、「カットオフ2.5mmのときの中心線平均粗さとカットオフ0.8mmのときの中心線平均粗さとの差を0.15μm以下」としたことが特定されているのであって、カットオフ値0.08mm及びカットオフ2.5mmとした際の算術平均粗さについて、本件発明1の条件(1)及び(2)を満たすようにしたことは特定されていない。
してみると、甲1発明において、甲2発明、甲3の技術事項を参酌しても、本件発明1の条件(1)を満たすようなカットオフ値2.5mmの算術平均粗さとすることの根拠はない。
よって、甲1発明において、甲2発明、甲3の技術事項を参酌しても、相違点1の、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra_(2.5))に係る構成を得ることは当業者にとって容易であるとはいえない。

c 申立人の主張について
申立人は、異議申立書の第12頁第16行?第13頁第15行において、甲第7号証(参考図3)を示しつつ、本件発明の実施例1、実施例2、及び比較例1?5から、Ra_(2.5)の数値は、Ra_(0.08)の5?10倍、もしくは1.6?21倍であることから、甲1発明においても、条件(1)を満たす蓋然性が高い旨、主張する。
しかしながら、仮に、Ra_(2.5)の数値が、Ra_(0.08)の5?10倍、もしくは1.6?21倍であるとしても、「カットオフ0.08mmの条件下で測定した」、「算術平均表面粗さが0.1μmである」ものについて、上記倍率により推定されるカットオフ2.5mmの算術平均表面粗さの数値範囲は振れ幅が大きいので、必ずしも本件発明1の条件(1)を満たすとはいえない。よって、上記主張は採用できない。
また、申立人は、異議申立書の第30頁第1行?5行に、「甲第1号証及び甲第2号証の組合せによれば・・・進歩性が否定される」と記載しているが、上記のとおり、甲1発明において、カットオフ値2.5mmの際の算術平均粗さの特定のない甲2発明を参酌しても、上記相違点1に係る構成を得ることはできないことは明らかである。

d 小括
したがって、甲1発明において、甲2発明、甲3の技術事項を参酌しても、本件発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(イ)甲2発明を主発明として
a 対比
(a)甲2発明において、シートの表面には、「微小凹凸面」が設けられていることから、本件発明1の「化粧シート」と甲2発明の「複合賦型シート」は、「少なくとも一方の表面が凹凸面である」、「シート」である点では共通する。

すると、本件発明1と甲2発明は、以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「少なくとも一方の表面が凹凸面であるシート。」

(相違点2)
「凹凸面」について、本件発明1では、「凹凸面の任意の方向について、カットオフ値を2.5mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra_(2.5))、及びカットオフ値を0.08mmとした際のJIS B0601:1994の算術平均粗さ(Ra_(0.08))が、以下の条件(1)及び(2)を満たす化粧シート。0.82μm≦Ra_(2.5)≦3.80μm (1) Ra_(0.08)≦0.39μm (2)」であるのに対し、甲2発明では、「JIS B 0601-1994に基づいて測定された、微小凹凸面31の表面状態は、算術平均粗さ0.1μm、カットオフ値0.25mmである」点。

(相違点3)
「シート」が、本件発明1では、「化粧シート」であるのに対し、甲2発明では、「複合賦型シート」である点。

b 判断
上記相違点2について検討する。
甲1発明には、カットオフ値0.08mmに加えて、カットオフ値2.5mmとした際の算術平均粗さをどの程度とするかは特定されていない。
また、甲3の技術事項には、「カットオフ2.5mmのときの中心線平均粗さとカットオフ0.8mmのときの中心線平均粗さとの差を0.15μm以下」としたことが特定されているのであって、カットオフ値0.08mm及びカットオフ2.5mmとした際の算術平均粗さについて、本件発明1の条件(1)及び(2)を満たすようにしたことは特定されていない。
してみると、甲2発明において、甲1発明、甲3の技術事項を参酌しても、カットオフ値を0.08mmと2.5mmとした際の算術平均粗さに着目する根拠はない。
よって、甲2発明において、甲1発明、甲3の技術事項を参酌しても、相違点2に係る構成を得ることは当業者にとって容易であるとはいえない。

c 申立人の主張について
申立人は、異議申立書の第18頁第1行?第6行において、算術平均粗さは、カットオフ値が2.5mmになれば、カットオフ値0.25mmの際の数倍となるから、甲2発明においても、条件(1)を満たす蓋然性が高い旨、主張する。
しかしながら、仮に、カットオフ値2.5mmとした際の算術平均粗さが、カットオフ値0.25mmとした際の算術平均粗さの数倍であるとしても、甲2発明において、「算術平均粗さ0.1μm、カットオフ値0.25mmである」であるものについて、必ずしも本件発明1の条件(1)を満たすとはいえない。よって、上記主張は採用できない。
また、申立人は、異議申立書の第30頁第1行?5行に、「甲第1号証及び甲第2号証の組合せによれば・・・進歩性が否定される」と記載しているが、上記のとおり、甲2発明において、カットオフ値2.5mmの際の算術平均粗さの特定のない甲1発明を参酌しても、上記相違点2に係る構成を得ることはできないことは明らかである。

d 小括
したがって、相違点3について検討するまでもなく、甲2発明において、甲1発明、甲3の技術事項を参酌しても、本件発明1の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(ウ)まとめ
本件発明1は、甲1発明、甲2発明及び甲3の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

イ 本件発明2ないし10について
本件発明2ないし10は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに構成を限定したものであるから、上記アに示した理由と同様の理由により、甲1発明、甲2発明及び甲3の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(2)特許法第36条第6項第1号について
ア 判断
本件発明1ないし10に特定されている事項は、発明の詳細な説明【0013】?【0029】及び表1を参酌すれば、発明の詳細な説明に記載されていることは明らかである。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明【発明の効果】には「【0011】本発明の化粧シート及び化粧材は、適度な艶により高級感を有しつつ、正反射光の強度が強すぎることにより視認者に不快感を与えることを防止できる。さらに、本発明の化粧シート及び化粧材は、白化により絵柄の階調レベル及び鮮明性の低下を抑制でき、意匠性を良好にすることができる。」と記載されており、当該記載から、本件発明1?10の構成を有することにより、「艶」や「白化」に対して当該効果を奏することが理解できるものであるから、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて、本件発明1?10が規定されているとはいえない。

したがって、本件発明1ないし10は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 申立人の主張について
申立人は、サポート要件違反について、概略、以下のとおり主張している。

「6)すなわち、参考図1の構成の化粧シートが作製されて、評価されている。しかるに、本件特許の請求項1等において、「少なくとも一方の表面が凹凸面である化粧シート」とのみ記載されている。7)これでは、実施例等に記載された、参考図1の構成の化粧シートのみならず、あらゆる表面凹凸を有する化粧シート(賦形シート等)が含まれてしまうことになる。より具体的には、本件特許が目的とする艶や高級感、さらには正反射光の強度を問題にする一方、全く無関係な化粧シート(賦形シート等)が含まれてしまうことになる。さらに言えば、表面に、不透明な樹脂層を備えた場合、下方の装飾層が視認できず、艶や白化が問題なくなり、少なくとも実施例1や実施例2においても得られないことになる。8)よって、本件特許は、明細書に記載された範囲を超えて、特許請求の範囲が記載されており、特許法第36条第6項第1項に規定された要件に反し、サポート要件違反であることは明白である。」(異議申立書第21頁第13行?第22頁第3行)

上記主張について検討する。
本件明細書の発明の詳細な説明【0001】の「本発明は、化粧シート及び化粧材に関する。」との記載を参酌すれば、本件発明は、「化粧シート」に用途限定されていることは明らかであるから、申立人が主張するように、化粧シートとはいえない全く無関係な賦形シート等が含まれるとは認められない。
また、上記したように、本件発明1?10の構成と「艶」や「白化」に関する効果は対応づけて理解できるので、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて、本件発明1?10が規定されているとまではいえない。

ウ まとめ
本件発明1ないし10は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではない。

(3)特許法第36条第6項第2号について
ア 判断
本件発明1ないし10では、Ra等が示す用語の意味やその数値範囲も明確に特定されており、それぞれの構成及び数値限定などについて、互いの関係が明確に記載されていることは明らかであるから、本件発明1ないし10で特定された化粧シートや化粧材の範囲が明確に理解できる。
してみると、本件発明1ないし10は明確である。

イ 申立人の主張について
申立人は、明確性要件違反について、概略、以下のとおり主張している。(異議申立書第22頁第6行?第26頁第11行)

(ア)「「艶による高級感がある場合」と、「艶による高級感がない場合」とを明確に定めてほしいものである。・・・このような評価基準で、どのようにして評価したかを記載していない以上、発明の構成と効果との関係が、はなはだ不明瞭である。・・・8)いずれにしても、このような恣意的、感覚的、かつ曖昧な評価に基づいて、なぜゆえに実施例及び比較例として区別したのか、その経緯が不明である。」
(イ)「請求項1及び請求項2において、Ra_(0.08)及びRa_(2.5)を適当な数値に変えない限り、条件(3)を満足しないことになる。」
(ウ)「請求項1?請求項3において、Ra_(0.08)及びRa_(2.5)を適当な数値に変えない限り、条件(4)を満足しないことになる。」
(エ)「請求項1?請求項4において、Ra_(0.08)及びRa_(2.5)を適当な数値に変えない限り、条件(4)(決定注:条件(4)は条件(5)の誤記と認められる。)を満足しないことになる。」

上記主張について検討する。
上記申立人の主張(ア)について、【表1】をみると、Ra_(0.08)及びRa_(2.5)と、「艶」、「白化」との関係が関連づけられて理解できることから、不明瞭であるとまでいえない。
上記申立人の主張(イ)について、本件発明2は、本件発明1を限定したものであり、上記(イ)のような状況があることは不自然ではない。
また、本件発明の実施例1、実施例2のように、本件発明1の条件(1)及び(2)と、本件発明2の条件(3)を同時に満たすRa_(0.08)及びRa_(2.5)が存在している。
してみると、条件(1)、(2)を満たすRa_(0.08)及びRa_(2.5)が、条件(3)を満たさないこともあり得るからといって、本件発明2の構成が不明瞭であるとはいえない。
上記申立人の主張(ウ)、(エ)についても同様の理由で、本件発明3及び4の構成が不明瞭であるとはいえない。

ウ まとめ
本件発明1ないし10は明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。

(4)特許法第36条第4項第1号について
ア 判断
本件発明1ないし10には、主にカットオフ値2.5mmと0.08mmとした際の表面粗さのパラメータ(Ra、Rz、Sm)が特定されていることから、これらの表面粗さのパラメータの特定について、発明の詳細な説明に、当業者が実施できる程度に記載されているか否か検討する。
発明の詳細な説明【0068】及び【0069】には、カットオフ値2.5mmと0.08mmとした際の表面粗さ測定方法が記載されており、これに従えば、当業者は、カットオフ値2.5mmと0.08mmとした際の表面粗さのパラメータの特定について、理解できることは明らかである。
してみると、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

イ 申立人の主張について
申立人は、実施可能要件違反について、概略、以下のとおり主張している。(異議申立書第26頁第16行?第29頁第5行)

「1)本来、JIS B0601:1994によれば、所定の表面粗さを測定する場合のカットオフ値は、測定される表面粗さ(Ra等)の値に対応して一次的に定まるものであって、かつ、評価長さ(基準長さ)についても同様に一次的に定まるべき特性である。・・・6)とすれば、本件特許において、測定される表面粗さ(Ra等)に対して、2種類のカットオフ値(0.08mm、2.5mm)を用い、それぞれ表面粗さの指標であるRa等を測定すること自体、JIS B0601:1994に準拠しておらず、測定違反である。ましてや、本件特許において、いずれの実施例等の測定においても、表面粗さ(Ra等)の測定に際しての、評価長さを4mmとしているのは、JIS B0601:1994に準拠していないことに疑義は無い。・・・本来実施することができない測定法に基づいたRa_(0.08)及びRa_(2.5)により、化粧シートの構成を定めることなど、事実上、誰も追加実験を行うことができず、実施可能要件違反のそのものである。」

上記主張について検討する。
甲第2号証の【0033】及び【0034】にも示されているように、JIS B0601:1994では、特定範囲のRaに対して1つのカットオフ値を用いることが定められているとしても、本件明細書の発明の詳細な説明【0068】及び【0069】を参照して、2種類のカットオフ値を用いてRaの値を得ることは可能である。このことは、1つの部材に対して2種類のカットオフ値を用いて表面粗さのパラメータを測定した甲3の技術事項を見ても明らかである。

また、申立人は、本件発明の実施例においては「評価長さを4mmとしている」と主張するが、「評価長さを4mmとしている」ことは、本件明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず、「評価長さを4mmとしている」との主張の趣旨が不明である。
よって、申立人の主張は採用できない。
してみると、本件明細書の発明の詳細な説明により、当業者は本件発明を実施することができるものと認められる。

ウ まとめ
本件発明1ないし10は、発明の詳細な説明が、当業者が本件発明1ないし10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によって、請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-04-09 
出願番号 特願2014-188776(P2014-188776)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (E04F)
P 1 651・ 537- Y (E04F)
P 1 651・ 121- Y (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坪内 優佳  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 富士 春奈
住田 秀弘
登録日 2018-07-13 
登録番号 特許第6365161号(P6365161)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 化粧シート及び化粧材  
代理人 大谷 保  
代理人 平澤 賢一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ