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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
管理番号 1350693
異議申立番号 異議2019-700040  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-22 
確定日 2019-04-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6363607号発明「樹脂粒子群及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6363607号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6363607号(以下「本件特許」という。)は、2014年(平成26年)3月28日(優先権主張 平成25年8月30日、日本国)を国際出願日とする特許出願に係るものであって、平成30年7月6日に特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人羽川延子(以下、「申立人」という。)により、請求項1?7に係る特許について、平成31年1月22日に特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?7に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、請求項1?7に係る発明を、順に、「本件発明1」等という。)

「【請求項1】
架橋ビニル系樹脂からなる体積平均粒子径が0.5?10μmの樹脂粒子群であって、
体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する樹脂粒子の個数が10万個中5個以下であり、
0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1%以下であることを特徴とする樹脂粒子群。
【請求項2】
前記架橋ビニル系樹脂が、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋スチレン系樹脂、架橋(メタ)アクリル-スチレン共重合樹脂の何れかであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂粒子群。
【請求項3】
光学部品用であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂粒子群。
【請求項4】
樹脂粒子群の生成後に、気流分級機を用いた分級により前記樹脂粒子群から粗大樹脂粒子群を除去する分級工程を含む、請求項1?3の何れか一つに記載の樹脂粒子群の製造方法であって、
前記樹脂粒子群の分級工程は、樹脂粒子群の生成後に解砕工程を経ることなく実施され、
前記気流分級機は、
樹脂粒子群が供給される分級用空洞部と、
前記分級用空洞部の外周部に配置され、前記分級用空洞部に旋回流が発生するように前記分級用空洞部に互いの間から空気を送り込む複数のガイドベーンと、
前記分級用空洞部の上部及び下部にそれぞれ空気を噴射する第1及び第2の噴射ノズルと、
前記分級用空洞部から分級された樹脂粒子群を含む気流を上方へ排出する分級樹脂粒子群排出口と、
前記分級用空洞部から粗大樹脂粒子群を下方へ排出する粗大樹脂粒子群排出口とを備えていることを特徴とする樹脂粒子群の製造方法。
【請求項5】
請求項1?3の何れか一つに記載の樹脂粒子群と、バインダーとを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を、フィルム状に成形した樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の樹脂組成物を、基材フィルム上に塗布してなることを特徴とする防眩フィルム。」


第3 特許異議申立書に記載した理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、証拠方法として以下の(3)の甲第1号証?甲第4号証を提出して、概略、以下(1)及び(2)の申立理由には理由があるから、請求項1?7に係る特許は取り消すべきものであると主張している。

(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性)
本件発明1?7は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1?7に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。(引用文献は、下記の甲第1号証)

(2)申立理由2(甲第2号証に基づく新規性)
本件発明1?4は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1?4に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。(引用文献は、下記の甲第2号証)

(3)証拠方法
甲第1号証:国際公開2008/023648号
甲第2号証:特開2009-254938号公報
甲第3号証:日清エンジニアリング株式会社の「粉体機器総合カタログ」(2011年10月改訂)の4頁
甲第4号証:株式会社セイシン企業の「高効率精密気流分級機 クラッシール」のカタログ(2014年8月改訂)
(以下、それぞれ「甲1」?「甲4」という。)


第4 申立書に記載の申立理由についての当審の判断
当審合議体は、以下に述べるように、申立人の主張する申立理由には理由がなく、申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?7についての特許を取り消すことはできないと判断する。

1 甲1?4に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された甲1には以下の記載がある。(なお、下線は当審で付したものである。この決定において、以下同様である。)。

「請求の範囲
[1] 平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が1000個/0.5g以下であることを特徴とする微粒子。
・・・
[3] 請求項1または2に記載の微粒子の製造方法であって、
固形分濃度0.5?50質量%、B型粘度0.5?20mPa・sの微粒子分散液を湿式分級する工程、
湿式分級後の微粒子を、乾燥、粉砕して、水分含量0.05?2質量%の粉体微粒子とする工程、
上記粉体微粒子を乾式分級する工程を含むことを特徴とする微粒子の製造方法。
[4] 請求項1または2に記載の微粒子を含むことを特徴とする樹脂組成物。
[5] 請求項4に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする塗布用組成物。
[6] 請求項5に記載の塗布用組成物を、基材上に塗布して得られることを特徴とする光学フィルム。
・・・
[8] 防眩フィルムとして用いられるものである請求項6に記載の光学フィルム。」

「[0011] 本発明の微粒子は、粒径の好適範囲を逸脱する粗大な粒子の含有量が低レベルに低減されたものである。また、本発明法によれば、粒径の好適範囲を逸脱する粗大粒子とともに微小粒子の含有量も低減することができる。したがって、本発明の粒子を含む樹脂組成物から得られる成形品は、粗大粒子に由来する欠点が生じ難いものと考えられる。また、微小な粒子の含有量も低減されているので、樹脂自体の透明性も害し難いと考えられる。本発明の微粒子は、特に、光学用樹脂組成物に好適であり、かかる樹脂組成物から得られる光拡散フィルム、防眩性フィルム、そして、本発明の微粒子を含む光拡散板は、優れた光学特性を示すものと考えられる。
[0012] 本発明の微粒子とは、平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が1000個/0.5g以下であるところに特徴を有するものである。
[0013] 上述のように、光学分野に用いられる微粒子に、粒径の好適範囲を逸脱する粗大な粒子が含まれるとフィルム表面に傷を生じたり、当該微粒子が視認され易くなる虞がある。特に、本発明者らの検討により、使用する微粒子の平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する微粒子が存在(増加)する際に、上記現象が顕著になることが確認されている。好ましくは、平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が500個/0.5g以下であり、より好ましくは200個/0.5g以下であり、さらに好ましくは100個/0.5g以下、最も好ましくは50個/0.5g以下である。」

「[0016] なお、本発明の微粒子の平均粒子径は、特に限定されるわけではないが、0.1?50μmであることが好ましく、より好ましくは1?30μm、さらに好ましくは2?20μmである。平均粒子径が上記範囲内である場合は、例えば、光学用途に用いた際に、優れた光拡散性や面発光性(輝度)を発揮させることができる等の有利な効果が得られる。平均粒子径が小さすぎる場合には、媒体となる樹脂への分散性が低下するおそれがあり、大きすぎる場合は、十分な光拡散効果が得られない虞がある。なお、粒度分布測定、平均粒子径、並びに、前記微小粒子の含有量は、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定し、体積基準で算出した。
[0017] 本発明の微粒子の形状は、特に限定はされないが、例えば、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕状、偏状、まゆ状およびこんぺい糖状などが挙げられる。特に、光学用途に用いる場合(光学用樹脂組成物などに用いる場合)は、真球状かほぼ真球に近い形状であって、その短粒子径に対する長粒子径の比率が1.0?1.2の範囲にあり、かつ、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。」

「[0023] 上記粉体微粒子の乾式分級には、風力を利用した気流分級装置を用いるのが好ましい。気流分級装置とは、気流を利用して、微粒子(粉粒体層)を粒度(粉粒体の粒径、質量)に応じて分離する装置である(すなわち、粒子の持つ慣性と、気流から受ける抗力のバランスによって飛距離が定まり分級される)。・・・
[0024] 上記気流分級装置の分級メカニズムは特に限定されない。したがって、気流のみを利用するもの、気流に推進力を与える回転ローターや、風を導くためのガイドベーンを備え、これらが複合的に作用して生じる気流を利用するもの、さらに、これらとその他の分級手段(篩やメッシュ)を組み合わせたものであっても良い。
[0025] 具体的な気流分級装置としては、DXF型(日本ニューマチック工業社製)などの高精度気流分級装置;ターボクラシファイア(日清エンジニアリング社製)、クラッシール(セイシン社製)、ターボプレックス(登録商標、ホソカワミクロン社製)などの分級ローターを有する回転ローター式気流分級装置;エルボージェット(日鉄鉱業社製)などのコアンダ効果を利用した気流分級装置(エルボージェット型分級機);乾式篩ハイボルター(東洋ハイテック社製)、乾式篩ブロワーシフター(ユーグロップ社製)などの網の目開きを利用した気流分級装置が挙げられる。これらの中でも、高精度気流分級装置、回転ローター式気流分級装置およびコアンダ効果を利用した気流分級装置は、粗大な粒子を効率的に除去できるので好ましい。
[0026] 上記高精度気流分級装置とは、ムービングパーツ(可動可能な部材)がなく、分散ゾーンおよび分級ゾーンへの流入エアーにより、高速旋回気流を発生させて、装置内に供給した粒子に遠心力を与えると共に、粒子に与えられた遠心力の抗力となるように吸引ブロワーにより分級ゾーンから空気を排気させ、この遠心力と抗力とのバランスにより粒子から粗粉と微粉とを分級する装置である。回転ローター式気流分級装置とは、回転自由な円筒(分級ローター)と、装置外部から装置内へ空気を取り込む吸気口を備え、上記ローターの高速回転により装置内に渦流を発生させて、装置内に供給した粒子に渦流による遠心力を与え、一方、吸気口からは、遠心力の抗力となるように空気を取り込み、この遠心力と抗力とのバランスにより、粒子から粗粉と微粉とを分級する装置である。・・・。」

「[0153] 本発明に係る樹脂組成物は、本発明の微粒子と透明バインダー樹脂とを含む樹脂組成物である。」

「[0167] 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、特に断らない限り、質量部を「部」、質量%を「%」と表すことがある。」

「[0183] 実施例1
製造例1で得られた重合体粒子分散液を、目開き20μmのステンレス鋼製金網で分級した(湿式分級工程)。次いで、湿式分級後の重合体粒子分散液を自然沈降により固液分離した。得られたケーキをイオン交換水およびメタノールで洗浄した後、100℃で5時間真空乾燥することにより、粒子が凝集してなる乾燥物を得た。該乾燥物を粉砕することにより、粉砕粒子を得た(回収率99質量%)。
・・・
[0185] 得られた粉砕粒子を高精度気流分級機(「DFX5型」、日本ニューマチック工業株式会社製)に投入し、高速旋回気流および吸引ブロワーにより粉砕粒子に与えられる遠心力と抗力とのバランスを調節することにより分級し、供給した粉砕粒子に対する回収率85質量%で微粒子を得た(乾式分級工程)。」

「[0204] [微粒子の平均粒子径、粗大粒子量の測定]
上記実施例・・・で得られた微粒子0.5gをメタノール100gに分散させて重合体粒子分散液を調整し、精密粒度分布測定装置(製品名「マルチサイザーII」、ベックマン・コールター株式会社製)を使用して、粒子径の測定を行い、体積基準で平均粒子径を算出した。
[0205] 粗大粒子1(平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子)の量の測定は、次のようにして行った。上記平均粒子径測定と同様にして調整した微粒子分散溶液(粘度:3mPa・s、固形分濃度:0.5質量%)を、平均粒子径の1.75?2倍の目開きを有するメッシュ(ニッケル製、東京プロセスサービス株式会社)と、濾過鐘にブフナーロートを備えた吸引濾過装置を使用して、減圧下で濾過を行った。
[0206] 次いで、メッシュ上に残留した粒子を走査型電子顕微鏡(SEM、「S-3500N」、日立製作所製、加速電圧:25kV)を使用して、200倍で全視野観察し、目視で平均粒子径の2倍以上の粗大粒子の個数(個/0.5g)を数えた。」

「[0214] 製造例11(ポリスチレン粒子)
スチレン50部、エチレングリコールジメタクリレート50部、アゾ系重合開始剤(V-65、和光純薬工業社製)5部、t-ブチルハイドロキノン0.5部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5部およびイオン交換水100部を混合、撹拌して乳化させ、重合性単量体の水分散液を得た。
[0215] ・・・反応釜に、粒子径1μmの単分散ポリスチレンラテックス(固形分濃度5%)40部をイオン交換水200部に添加し分散させ、このシード粒子の水分散体を65℃に昇温し、上記重合性単量体の水分散液の全量、およびポリビニルアルコールの2%水溶液200部を5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、85℃に昇温して、さらに3時間この温度に保ち、ポリスチレン粒子を含む懸濁液を得た。
[0216] 製造例12(ポリスチレン粒子)
表4に示すように、ラジカル重合性モノマーの組み合わせを変更し、単分散ポリスチレンラテックス(粒子径:0.6μm(製造例12)、0.7μm(製造例13))の添加量を適宜調整した以外は、製造例11と同様にして、ポリスチレンラテックス微粒子分散溶液を調整した。
[0217] [表4]



「[0232] 実施例15
実施例1と同様の方法で、製造例13で得られた重合体粒子分散液から粉砕微粒子を調製した(かさ比重0.7g/cm^(3)、粒子径9.3μm、水分含有量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
[0233] 得られた粉砕微粒子を回転ローター式気流分級装置(ターボクラシファイアTC-15、日清エンジニアリング製)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率83質量%で分級した微粒子を得た。」

「[0238] 実施例9?13および比較例4における分級処理の内容、得られた微粒子および粉体粒子に関する評価結果を表5に示す。尚、各評価方法は、上記の通りである。
[0239] [表5]



以上の記載、特に、請求項1及び3に係る発明の具体的態様に相当する、実施例15の微粒子の製造に関する記載([0232]、[0233]及び[0239]の[表5])、実施例15で用いられる重合体粒子分散液に関する製造例13([0217]の[表4])の記載、並びに、[0214]?[0216]の記載によれば、甲1には、以下の2つの発明が記載されていると認められる。

「スチレンジビニルベンゼンブチルアクリレート重合体からなり、
体積平均粒子径が9.3μmであり、
体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が50個/0.5gである微粒子であって、
以下の工程(i)?(iv)の工程により製造された微粒子。
(i)スチレン40質量部に対し、ジビニルベンゼンが15質量部、ブチルアクリレートが45質量部である重合性モノマーを、単分散ポリスチレンラテックス水分散体を使用したシード重合により重合して、固形分濃度17.5質量%、B型粘度3.0mPa・sの重合体微粒子分散液を得る工程、
(ii)上記重合体微粒子分散液を湿式分級する工程、
(iii)上記湿式分級後の微粒子を、乾燥、粉砕して、水分含量0.5質量%以下の粉体微粒子とする工程、
(iv)上記粉体微粒子を回転ローター式気流分級装置(ターボクラシファイアTC-15、日清エンジニアリング製)に投入して分級を行う工程」(以下、「甲1微粒子発明」という。)

「スチレンジビニルベンゼンブチルアクリレート重合体からなり、
体積平均粒子径が9.3μmであり、
体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が50個/0.5gである微粒子の製造方法であって、以下の工程(i)?(iv)からなる製造方法。
(i)スチレン40質量部に対し、ジビニルベンゼンが15質量部、ブチルアクリレートが45質量部である重合性モノマーを、単分散ポリスチレンラテックス水分散体を使用したシード重合により重合して、固形分濃度17.5質量%、B型粘度3.0mPa・sの重合体微粒子分散液を得る工程、
(ii)上記重合体微粒子分散液を湿式分級する工程、
(iii)上記湿式分級後の微粒子を、乾燥、粉砕して、水分含量0.5質量%以下の粉体微粒子とする工程、
(iv)上記粉体微粒子を回転ローター式気流分級装置(ターボクラシファイアTC-15、日清エンジニアリング製)に投入して分級を行う工程」(以下、「甲1製法発明」という。)

なお、甲1微粒子発明及び甲1製法発明において発明特定事項として記載されている括弧書きの数字は、合議体が便宜的に記載したものである。
また、申立人は、甲1に記載された発明を具体的には認定していないので、合議体が最も本件発明1に近いと考える実施例15を、甲1に記載された発明の認定の根拠とした。


(2)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された刊行物である甲2には以下の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体または気体を有する粒子を含む粒子混合物から、この粒子混合物中においてある値を基準としてそれよりも大きい粒径の粒子を第一粒子群、前記粒子混合物中の前記第一粒子群以外の粒子を第二粒子群としたとき、
前記第一粒子群を除去する篩い分け工程と、
前記篩い分け工程後の粒子混合物を、流体中にて個々の粒子の質量および個々の粒子が受ける流体抵抗の差により乾式分級する流体分級工程とを有する粒子の分級方法。
・・・
【請求項3】
前記流体分級工程が、慣性力と流体抵抗の両因子の総合的作用により分級するものである請求項1または2に記載の粒子の分級方法。
【請求項4】
前記粒子混合物が、有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質・無機質複合粒子の混合物である請求項1?3のいずれかに記載の粒子の分級方法。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の分級方法を用いて得られる粒子。」

「【0014】
・・・本発明に係る粒子の分級方法によれば、その内部気泡を有する粒子を十分に除去できる。この除去が行なわれた粒子群は、光学用樹脂材料として使用するのに好適である。」

「【0083】
(篩い分け工程)
篩い分け工程は、粒子混合物から第一粒子群を除去することを目的に、粒子混合物を湿式分級または乾式分級する工程である。本工程では、第一粒子群除去のための目開きに設定された篩いで粒子混合物が分級される。
・・・
【0090】
(流体分級工程)
篩い分け工程の後に本流体分級工程が行われる。流体分級工程では、篩い分け工程で第一粒子群が除去されることにより全部または大部分が第二粒子群になった粒子混合物を乾式分級する。当該乾式分級には、粒子混合物を構成する個々の粒子の質量差および粒子混合物を構成する個々の粒子が受ける流体抵抗差に基いた原理の分級方法が選択される。
【0091】
これら質量差および流体抵抗差の相互作用によって分級する公知の装置としては、・・・回転する分級羽根(ローター)によってつくられる回転流によって生じる遠心力と空気による抗力の釣り合いを原理とするホソカワミクロン社製ミクロンセパレータ、ミクロプレックス、アキュカット、日清エンジニアリング社製ターボクラシファイア、セイシン社製O-SEPA、セイシン社製クラッシール、エアセパレータ等の回転羽根付き遠心分級;等が挙げられる。
【0092】
乾式分級方法としては、粒子が受ける慣性力と流体抵抗の両因子の総合的作用により分級する方法が好ましい。例えば、分級装置として日鉄鉱業社製エルボージェット(以下、単に「エルボージェット」ということがある)を選択し、これを使用して分級する方法である。エルボージェットを使用した場合には、流体抵抗に大きく影響するコアンダ効果がある。コアンダ効果とは、流通方向の一方の側だけに壁が置かれた噴流はその壁面に沿って流れる性質であり、このコアンダ効果を利用するコアンダ式気流分級装置であるエルボージェットは、中実な第一粒子群を効率的に除去できるので好ましい。
【0093】
前記エルボージェットは、粒子を気流と共に装置内に噴出するエジェクター部と、分級室内にまで粒子を含む噴流を導くコアンダブロックと、粒子を性状(粗粉、細粉、微粉など)に応じて隔離する分級エッジを分級目的に応じた位置に備えている。上記エジェクター部から噴出された噴流(粒子を含む)は、コアンダブロックに沿って流れようとする。このとき第一粒子群の構成粒子と第二粒子群の構成粒子の比重が同じであれば各粒子に働く慣性力に差が生じることになるから、第一粒子群の構成粒子はより遠くへ飛行しようとし、第一粒子群の構成粒子と第二粒子の構成粒子とが分級される。
【0094】
本実施形態の分級方法は、上記の通りである。本実施形態の分級方法によれば、当該方法で分級された粒子0.5gにおける第一粒子群の個数を、20個/0.5g以下にすることも可能である。」

「【0095】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する・・・。
なお、以下、質量部を「部」、質量%を「%」と表す。
【0096】
(粒子分散液製造例1)
・・・γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、ポリシロキサン粒子の懸濁液を調整した。
【0097】
別途、上述のものとは異なる反応釜2で、スチレン360部、エチレングリコールジメタクリレート360部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V-65)3部、アニオン性界面活性剤(LA-10、第一工業社製)1.5部およびイオン交換水400部をホモミキサーにより、室温下(25℃)で15分間乳化分散させ、エマルション(モノマー溶液)を調整した。
【0098】
前記ポリシロキサン粒子の懸濁液の調製開始から2時間後(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの添加から2時間後)、反応釜1の滴下口より上記エマルションを添加した。1時間攪拌を継続し、ポリシロキサン粒子がモノマー成分を吸収していることを確認した後、ここにイオン交換水3500部を添加し、窒素雰囲気下、反応溶液を65℃まで昇温させて、65±2℃で2時間保持し、ラジカル重合反応を行い、重合体粒子(有機質無機質複合体粒子)を含む粒子分散液1を得た。下記式により算出した粒子分散液中に分散する重合体粒子の固形分濃度C_(0)は15質量%、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定した平均粒径は7.1μmであった。
【0099】
【数1】 ・・・
【0100】
さらに、粒子分散液1に含まれる第一粒子群(上記平均粒径の2倍以上の粒径を有する粒子)およびお椀状粒子の数を以下のようにして確認した。
【0101】
乾燥させた粒子0.5gをメタノール100gに分散させた液を調整し、平均粒径の1.75?2倍の目開きを有するメッシュ(ニッケル製、東京プロセスサービス株式会社製)と、濾過鐘にブフナーロートを備えた吸引濾過装置を使用して、減圧下で濾過を行った。
【0102】
次いで、メッシュ上に残留した粒子を走査型電子顕微鏡(SEM、「S-3500N」、日立製作所製、加速電圧:25kV)での観察により、最長径が上記精密粒度分布測定装置で測定した平均粒径の2倍以上の第一粒子群の個数と、この粒子群に含まれるお椀状粒子の個数を数えて、各々の個数を求めた。尚、SEM観察では、倍率200倍で全視野を観察し、個数を求めた。
【0103】
結果は、平均粒径の2倍以上の粒径を有する第一粒子群の個数が73050個/0.5g、お椀状粒子(粒径20μm以上)の個数が8000個/0.5gであった。
【0104】
(実施例1a)
篩い分け工程:
1750kgの粒子分散液1を、目開き20μmのステンレス鋼製金網で常圧下により250kg/hrで分級し、篩い分けを行なった。・・・
・・・
【0106】
篩い分け後の粒子分散液1(第一粒子群の一部が除去された粒子混合物の分散液)から粒子を分離し、乾燥後にSEMで確認したところ、粒子混合物0.5g中の第一粒子群は26900個、粒子混合物0.5g中のお椀状粒子は450個であった。
【0107】
流体分級工程:
篩い分け後の粒子分散液1を、自然沈降により固液分離した。得られたケーキをイオン交換水およびメタノールで洗浄した後、100℃で5時間真空乾燥する事により、粒子が凝集してなる乾燥物を得、この乾燥物を粉砕することにより粒子を得た。
【0108】
粉砕して得られた粒子を、コアンダ式気流分級装置(「エルボージェットEJ-15」、日鉄鉱業株式会社製)に投入し、粒子に与えられる慣性力と吸引ブロワーによる抗力のバランスを調節することにより気流分級を行った。・・・
・・・
【0110】
前記気流分級で回収された粒子をSEM観察したところ、粒子混合物0.5g中の第一粒子群は19個、粒子混合物0.5g中のお椀状粒子は5個であった。」

以上の記載、特に、請求項4、5に係る発明の具体的態様に相当する実施例1aの記載(【0104】?【0110】)、及び、実施例1aで用いられる粒子分散液1の製造についての記載(【0096】?【0098】)によれば、甲2には、以下の2つの発明が記載されていると認める。

「以下の工程(i)?(iv)により製造された粒子混合物であって、
スチレンとエチレングリコールジメタクリレートからの重合体である有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子からなり、
以下の工程(i)で製造された有機質無機質複合粒子の平均粒径の2倍以上の粒子径の粒子に相当する第一粒子群が、粒子混合物0.5g中に19個、お椀状粒子が5個含まれている粒子混合物。
(i)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合反応によりポリシロキサン粒子懸濁液を調整し、これにスチレンとエチレングリコールジメタクリレートを含むエマルションを添加して重合を行い、有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定した平均粒径が7.1μmの有機質無機質複合粒子を含む粒子分散液を製造する工程、
(ii)上記粒子分散液を、目開き20μmのステンレス鋼製金網で分級して、平均粒径の2倍以上の粒子径に相当する第一粒子群の一部が除去された粒子分散液を得る篩い分け工程、
(iii)上記篩い分け後の粒子分散液を、固液分離して、洗浄後、真空乾燥し、粒子が凝集してなる乾燥物を得て、次いで、この乾燥物を粉砕することにより粒子を得る工程、
(iv)粉砕して得られた粒子を、コアンダ式気流分級装置(「エルボージェットEJ-15」、日鉄鉱業株式会社製)に投入し、流体中にて個々の粒子の質量および個々の粒子が受ける流体抵抗の差により乾式分級する流体分級工程」(以下、「甲2粒子発明」という。)

「スチレンとエチレングリコールジメタクリレートからの重合体である有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子からなり、
以下の工程(i)で製造された有機質無機質複合粒子の平均粒径の2倍以上の粒子径の粒子に相当する第一粒子群が、粒子混合物0.5g中に19個、お椀状粒子が5個含まれている粒子混合物の製造方法であって、以下の工程(i)?(iv)からなる製造方法。
(i)γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合反応によりポリシロキサン粒子懸濁液を調整し、これにスチレンとエチレングリコールジメタクリレートを含むエマルションを添加して重合を行い、有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定した平均粒径が7.1μmの有機質無機質複合粒子を含む粒子分散液を製造する工程、
(ii)上記粒子分散液を、目開き20μmのステンレス鋼製金網で分級して、平均粒径の2倍以上の粒子径に相当する第一粒子群の一部が除去された粒子分散液を得る篩い分け工程、
(iii)上記篩い分け後の粒子分散液を、固液分離して、洗浄後、真空乾燥し、粒子が凝集してなる乾燥物を得て、次いで、この乾燥物を粉砕することにより粒子を得る工程、
(iv)粉砕して得られた粒子を、コアンダ式気流分級装置(「エルボージェットEJ-15」、日鉄鉱業株式会社製)に投入し、流体中にて個々の粒子の質量および個々の粒子が受ける流体抵抗の差により乾式分級する流体分級工程」(以下、「甲2製法発明」という。)

なお、甲2粒子発明及び甲2製法発明において発明特定事項として記載されている括弧書きの数字は、合議体が便宜的に記載したものである。
また、申立人は、甲2に記載された発明を具体的には認定していないので、合議体が最も本件特許発明1に近いと考える実施例1aを、甲2に記載された発明の認定の根拠とした。

(3)甲3に開示された事項
甲3には、日清エンジニアリング(株)の旋回気流式分級機である「エアロファインクラシファイア」についての説明が記載されている。
そして、甲3の「高速旋回により付加される強力な遠心力により、サブミクロン?シングルミクロンの高精度分級が可能に」、「『メインエアー』に加え、分級ゾーンの上下に『2次エアー』を導入するツインエアー方式・・・メインエアーによって生じる旋回流を2次エアーにより、整流・加速させる・・・」(4頁左欄)なる記載及び、4頁右下の図によれば、甲3には、
日清エンジニアリング(株)の気流分級機である「エアロファインクラシファイア」が、
「樹脂粒子群が供給される分級用空洞部と、
前記分級用空洞部の外周部に配置され、前記分級用空洞部に旋回流が発生するように前記分級用空洞部に互いの間から空気を送り込む複数のガイドベーンと、
前記分級用空洞部の上部及び下部にそれぞれ空気を噴射する第1及び第2の噴射ノズルと、
前記分級用空洞部から分級された樹脂粒子群を含む気流を上方へ排出する分級樹脂粒子群排出口と、
前記分級用空洞部から粗大樹脂粒子群を下方へ排出する粗大樹脂粒子群排出口」
を備えていることが示されているといえる。

(4)甲4に開示された事項
甲4には、セイシン企業(株)の気流分級機である「クラッシール」についての説明が記載されている。
そして、甲4の2頁目の「特長」の項目にある図及び「原理」の項目にある図によれば、甲4には、セイシン企業(株)の空気流分級機である「クラッシール」は、
「樹脂粒子群が供給される分級用空洞部と、
前記分級用空洞部の外周部に配置され、前記分級用空洞部に旋回流が発生するように前記分級用空洞部に互いの間から空気を送り込む複数のガイドベーンと、
前記分級用空洞部の上部及び下部にそれぞれ空気を噴射する第1及び第2の噴射ノズルと、
前記分級用空洞部から分級された樹脂粒子群を含む気流を上方へ排出する分級樹脂粒子群排出口と、
前記分級用空洞部から粗大樹脂粒子群を下方へ排出する粗大樹脂粒子群排出口」
を備えていることが示されているといえる。


2 申立理由1について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1微粒子発明とを対比する。
甲1微粒子発明における工程(i)で得られた「スチレンジビニルベンゼンブチルアクリレート重合体」は、本件発明1における「架橋ビニル系樹脂」に相当するし、また、甲1微粒子発明における「体積平均粒子径が9.3μm」の「微粒子」は、本件発明1における「体積平均粒子径が0.5?10μmの樹脂粒子群」に相当する。
また、甲1微粒子発明の「微粒子」には、「体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子」が含まれているところ、これは、本件発明1における「樹脂粒子群」に、「体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する樹脂粒子」が含まれていることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1微粒子発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違している。

<一致点>
架橋ビニル系樹脂からなる体積平均粒子径が0.5?10μmの樹脂粒子群であって、
体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する樹脂粒子が含まれている樹脂粒子群。

<相違点1>
体積平均粒子径が0.5?10μmの樹脂粒子群に含まれる体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する樹脂粒子について、本件発明1では「10万個中5個以下」と特定されているのに対し、甲1微粒子発明では「50個/0.5g」と特定されている点。
<相違点2>
体積平均粒子径が0.5?10μmの樹脂粒子群について、本件発明1では「0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1%以下」と特定されているのに対し、甲1微粒子発明では、当該円形度を有する樹脂粒子の割合は不明である点。

事案に鑑み相違点2から検討する。
本件発明1の樹脂粒子の「円形度」は、本件特許明細書の【0129】?【0133】に記載されるとおり、樹脂粒子群を界面活性剤水溶液中に分散させて調整した分散液をフロー式粒子像分析装置に導入し、樹脂粒子を撮像した画像と同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、樹脂粒子を撮像した画像の周囲長で除した値として求められたものであり、また、「0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合」は、当該方法によって測定した円形度が0.97以下の樹脂粒子の個数を測定個数で除することにより求められたものである。
一方、甲1の[0017]には、甲1微粒子発明の微粒子の形状について、真球状かほぼ真球に近い形状であって、その短粒子径に対する長粒子径の比率が1.0?1.2の範囲にあることが好ましい旨の記載はあるが、甲1微粒子発明の微粒子が、その短粒子径に対する長粒子径の比率が1.0の真球状であることが記載されているわけではない。また、甲1に記載される「短粒子径に対する長粒子径の比率」は、本件発明1の「円形度」とは測定法が異なっている。そうすると、甲1の記載からは、甲1微粒子発明の微粒子が、本件発明1の「0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1%以下」のものに相当すると結論付けることはできない。

かえって、本件特許明細書の【0014】に、「0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1%以下であるので、割れた樹脂粒子や変形した樹脂粒子の含有率が少な」いことが記載され、【0007】?【0009】に、従来の樹脂粒子群は、分級工程の前に凝集粒子を解砕する解砕(粉砕)工程を必要としていたために、解砕工程で樹脂粒子の割れ(破砕)や変形が起こる場合があった旨が記載され、本件発明1の樹脂粒子群に関しては、【0017】に、解砕工程を行わないことで、解砕工程にて樹脂粒子の割れや変形が起こることを回避でき、割れた樹脂粒子や変形した樹脂粒子の含有率が少ない樹脂粒子群を得ることができる旨が記載され、実施例1(【0143】?【0145】)に、粉砕工程を経ずに旋回気流式分級機で分級して得られた樹脂粒子群の0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が0.2%であることが示される一方、比較例1(【0150】?【0151】)に、解砕工程を経て強制渦式分級で分級して得られた比較例1の樹脂粒子群の0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1.3%であることが示されていることに鑑みれば、工程(iii)の粉砕工程を経て得られたものである甲1微粒子発明の微粒子は、「0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1%以下」との特定を満足しない蓋然性が高い。

そうすると、相違点2は実質的な相違点であるといえる。
そして、本件発明1は、少なくとも相違点2で甲1微粒子発明とは異なっているのであるから、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1を甲1微粒子発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできない。

(2)本件発明2?3、5?7について
本件発明2は、本件発明1において架橋ビニル系樹脂の種類を限定した発明に相当し、本件発明3は、本件発明1又は2において、樹脂粒子群の用途を特定した発明に相当する。
また、本件発明5は、本件発明1?3の何れかの樹脂粒子群とバインダーとを含む樹脂組成物の発明であり、本件発明6は、本件発明5の樹脂組成物がフィルム状に成形されたものであることが特定された発明である。
さらに、本件発明7は、本件発明5の樹脂組成物を基材フィルム上に塗布した防眩フィルムの発明である。
そうすると、本件発明2?3、5?7は、いずれも、本件発明1の樹脂粒子群についての発明特定事項を有する発明に関するものであるから、本件発明2?3、5?7と甲1微粒子発明とは、少なくとも上記(1)で記載した相違点1及び相違点2で相違する。
そして、相違点2についての判断は上記(1)で記載したとおりであり、上記(1)において本件発明1について記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で甲1微粒子発明と異なる本件発明2?3、5?7について、甲1に記載された発明であるということはできない。

(3)本件発明4について
本件発明4は、「請求項1?3の何れか一つに記載の樹脂粒子群の製造方法」についての発明、つまり、本件発明1?3の樹脂粒子群の製造方法の発明であり、また、甲1製法発明は、甲1微粒子発明の微粒子の製造方法の発明である。
そして、本件発明4と甲1製法発明とを、本件発明1と甲1微粒子発明との対比を踏まえて対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)で記載した相違点1及び2で相違する。
そして、相違点2についての判断は上記(1)で記載したとおりであり、上記(1)において本件発明1について記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で甲1製法発明と異なる本件発明4について、甲1製法発明、つまり、甲1に記載された発明であるということはできない。


3 申立理由2について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲2粒子発明とを対比する。
甲2粒子発明における「工程(i)?(iv)により製造された粒子混合物であって、スチレンとエチレングリコールジメタクリレートからの重合体である有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子」は、本件発明1における「架橋ビニル系樹脂からなる樹脂粒子群」に相当する。
また、甲2粒子発明における工程(i)の「コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定した平均粒径」は、「体積平均粒子径」である。
そうすると、本件発明1と甲2粒子発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違している。

<一致点>
架橋ビニル系樹脂からなる樹脂粒子群。

<相違点3>
架橋ビニル系樹脂からなる樹脂粒子群について、本件発明1では、「体積平均粒子径が0.5?10μm」と特定されているのに対し、甲2粒子発明では、工程(i)で製造された有機質無機質複合粒子の体積平均粒径(コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定した平均粒径)が7.1μmであることが特定されているのみで、本件発明1の樹脂粒子群に相当する、工程(i)?(iv)により製造された粒子混合物の体積平均粒子径は不明である点。
<相違点4>
架橋ビニル系樹脂からなる樹脂粒子群について、本件発明1では「体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する樹脂粒子の個数が10万個中5個以下」と特定されているのに対し、甲2粒子発明では、粒子混合物に、「工程(i)で製造された有機質無機質複合粒子の平均粒径の2倍以上の粒子径の粒子に相当する第一粒子群が、粒子混合物0.5g中に19個、お椀状粒子が5個含まれている」ことが特定されるのみで、本件発明1の樹脂粒子群に相当する、工程(i)?(iv)により製造された粒子混合物における体積平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する樹脂粒子の個数は不明である点。
<相違点5>
架橋ビニル系樹脂からなる樹脂粒子群について、本件発明1では「0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1%以下」と特定されているのに対し、甲2粒子発明では、当該円形度を有する樹脂粒子の割合は不明である点。

事案に鑑み相違点5から検討する。
甲2には、甲2粒子発明の工程(i)?(iv)により製造された有機質無機質複合粒子からなる混合物の粒子形状に関し、本件発明1の「0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1%以下」のものに相当することをうかがわせる記載はない。
むしろ、上記2(1)で説示したとおりの本件特許明細書の記載を踏まえれば、工程(iii)の粉砕工程を経て得られたものである甲2粒子発明の粒子混合物は、「0.97以下の円形度を有する樹脂粒子の割合が1%以下」との特定を満足しない蓋然性が高い。

そうすると、相違点5は実質的な相違点であるといえる。
そして、本件発明1は、少なくとも相違点5で甲2粒子発明とは異なっているのであるから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1を甲2粒子発明、すなわち甲2に記載された発明であるということはできない。

(2)本件発明2?3について
上記2(2)で記載したとおり、本件発明2?3は、いずれも、本件発明1の樹脂粒子群についての発明特定事項を有する発明に関するものであるから、本件発明2?3と甲2粒子発明とは、少なくとも上記3(1)で記載した相違点3?5で相違する。
そして、相違点5についての判断は上記3(1)で記載したとおりであり、上記3(1)において本件発明1について記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点5で甲2粒子発明と異なる本件発明2?3について、甲2に記載された発明であるということはできない。

(3)本件発明4について
本件発明4は、「請求項1?3の何れか一つに記載の樹脂粒子群の製造方法」の発明、つまり、本件発明1?3の樹脂粒子群の製造方法の発明であり、また、甲2製法発明は、甲2粒子発明の粒子混合物の製造方法の発明である。
そして、本件発明4と甲2製法発明とを、本件発明1と甲2粒子発明との対比を踏まえて対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)で記載した相違点3?5で相違する。
そして、相違点5についての判断は上記(1)で記載したとおりであり、上記(1)において本件発明1について記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点5で甲2製法発明と異なる本件発明4について、甲2製法発明、つまり、甲2に記載された発明であるということはできない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?7について、甲1に記載された発明であって特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない発明であるということはできないし、また、本件発明1?4について、甲2に記載された発明であって特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない発明であるということはできない。


第5 むすび
以上のとおり申立人の主張する申立理由1及び2によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-04-08 
出願番号 特願2015-534017(P2015-534017)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大島 祥吾
渕野 留香
登録日 2018-07-06 
登録番号 特許第6363607号(P6363607)
権利者 積水化成品工業株式会社
発明の名称 樹脂粒子群及びその製造方法  
代理人 特許業務法人あーく特許事務所  
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