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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
判定2018600018 審決 特許
判定2019600004 審決 特許
判定2019600001 審決 特許
判定2019600005 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G03B
管理番号 1350694
判定請求番号 判定2018-600029  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 判定 
判定請求日 2018-09-13 
確定日 2019-04-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第5562305号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「Alphashot XL PRO」は、特許第5562305号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯
本件判定請求の趣旨は、「イ号図面に示す「Alphashot XL PRO」(以下「イ号製品」という。)は、特許第5562305号発明の技術的範囲に属する,との判定を求める。」というものである。

本件特許に係る出願は平成23年8月18日をその出願日とするものであって,平成26年6月20日に特許権の設定登録がなされた。
その後,平成30年9月13日(判定請求書差出日)に,本件特許権の特許権者である「萬里科技股▲ふん▼有限公司(▲ふん▼は,代用文字)」から,本件判定請求がなされ、その後,判定請求書の欠落した頁を補充する平成31年1月30日付けの手続補正書が判定請求人より提出されたところ,これに対して,平成31年2月28日付けで被請求人である「オービットブイユージャパン株式会社」より,「イ号製品は、特許第5562305号発明の技術的範囲に属しない,との判定を求める。」ことを答弁の趣旨とする判定請求答弁書(平成31年2月28日)が提出されたものである。

第2 本件特許発明
本件特許発明は、本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,これらを,それぞれ,「本件特許明細書」,「本件特許請求の範囲」,「本件特許図面」といい,これらをまとめて,「本件特許明細書等」ということもある。)の記載からみて、本件特許請求の範囲の請求項1にに記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。
なお,判定請求人が技術範囲に属するとの判定を求めるその本件特許発明は,判定請求書の記載からみて,本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明をその対象とするものであると認められる。また,本件特許発明の各構成要件の分説(A)?(E)は、判定請求人の判定請求書における分説を用いた。
「【請求項1】
(A)回転盤駆動機構を具えた撮影棚において,被写体を載置するための透明円盤と,
(B)回転盤駆動ユニットであって,複数のタイミングプーリと,これらタイミングプーリのいずれか一つと接続されたモータと,タイミングベルトであって,これらタイミングプーリーに掛けられ,並びにこれらタイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動される,上記タイミングベルトとを包含し,これらタイミングプーリのうち少なくとも二つの上縁を囲むようにゴムリングが接合され,これらタイミングプーリの少なくとも二つの下縁に該タイミングベルトが嵌合されると共に,これらゴムリングは該透明円盤の一側面に接触し,該モータが該モータに接続された該タイミングプーリを適時に駆動して該タイミングベルトを介して該透明円盤の該側面に接触するこれらゴムリングを具えたタイミングプーリを回転させ,該透明円盤を起動或いは制動停止させる,上記回転盤駆動ユニットと,
(C)回転盤支持ユニットであって,該回転盤駆動ユニットと該回転盤支持ユニットが共同で該透明円盤を支持し,該回転盤支持ユニットは複数の遊び車を具え,並びにこれら遊び車と一部のこれらタイミングプーリは,異なる方向より該透明円盤の該側面に接触する,上記回転盤支持ユニットと,
(D)透明円盤の下方に設置された底部ランプセットと,を包含したことを特徴とする
(E)回転盤駆動機構を具えた撮影棚」

第3 イ号製品
1 判定請求書によるイ号製品の説明
判定請求人は,イ号製品につき,判定請求書の「6 (4) イ号製品の説明」の項(7?9頁)において、以下のとおり特定している。
「Alphashot XL PRO(イ号製品)は,イ号図面及び説明書並びにイ号製品の外観写真に示すように,期待通りの商品画像を撮影するための商品画像撮影装置である。
イ号製品は,本件特許発明に即して記載すると,次のとおりのものである。・・・
「(a)回転盤駆動機構を具えた撮影棚であって,半透明プラスチック円盤及び透明ガラス円盤からなる透明円盤(32)を具えている。
(b)二つのタイミングプーリ(77,78),一本のタイミングベルト(81)及び一個のモータ(72)からなる回転盤駆動ユニット(58)を含む。タイミングプーリ(77,78)は,下縁にタイミングベルト(81)が嵌合されるとともに,上縁を取り囲むようにゴムリング(109)が接合されており,ゴムリング(109)を介して透明円盤(32)の側面に接触する。よって,モータ(72)がタイミングベルト(81)を介してタイミングプーリ(77,78)を回転させることで,透明円盤(32)を起動或いは制動停止可能である。
(c)回転盤駆動ユニット(58)及び二つの遊び車(87,88)を具える回転盤支持ユニット(59)にはボールローラ(65,66,85,86)が二つずつ設けられており,協働で透明円盤(32)の底部を支持している。また,ゴムリング(109)を具える二つのタイミングプーリ(77,78)と二つの遊び車(87,88)が,透明円盤(32)の左右両側にそれぞれ接触している。
(d)透明円盤(32)の下方に底部ランプセット(122)が設置されている。」

2 判定請求人が提出したイ号説明書及び証拠について
(1)判定請求人の提出したイ号説明書には,「Alphashot XL PRO」,「最大被写体サイズ」,「最大被写体重量」,「用途」,「最適な被写体」との記載ともに,赤いブーツをその中に設置した脚部にキャスターを具え,銀色の角柱チャネル様の部材により直方体形状に組み上げられた棚及び当該棚に組み合わされた黒色の角柱チャネル様の部材により構成される赤いブーツにレンズを向けたカメラのようなものが支持される柱を具えた製品の写真が示されており,細部が不明であるものの,直方体形状の棚の写真前方長側面には,白い扉に青色の円形様のマークが付されていることが看て取れる。
(2)判定請求人の提出したイ号製品の外観写真には,脚部にキャスターを具え,銀色の角柱チャネル様の部材により直方体形状に組み上げられた棚及び当該棚に組み合わされた黒色の角柱チャネル様の部材により構成される柱を具えた製品の写真が示されており,ブーツが置かれていた面に相当する面が白色であり,また,左側の長側面の白い扉に,上記(1)と同様の円形様のマークが付されていることが看て取れる。
(3)判定請求人の提出した甲2号証の写真から,白色の底面に無色透明な円盤とその上に重ねられて用いられる白色円盤を具え,その無色透明円盤の下側には点状の白色光源を具えた平面が存在することが看て取れる。
(4)判定請求人の提出した甲3号証の写真から,無色透明円盤が,無色透明円盤の周縁部近傍下面に接する2つの白いローラ部材と,銀色の円板状部材とその周りを同心状に取り囲むように形成された黒い部材とからなり,黒い部材が無色透明円盤の端部の側面に接する2つのプーリと,銀色の円板状部材とその周りを同心状に取り囲むように形成された黒い部材とからなり,黒い部材が無色透明円盤の端部の側面に接するもう1つのプーリとを備え,2つのプーリの下側にはベルトが掛け回されているものを備える支持する部材により支持されていることが看て取れる。
(5)判定請求人が提出した甲4号証の写真から,2つのプーリに掛け回されているベルトが,2つのプーリの黒い部材が形成されている部分よりも下側の軸部分に掛け回されていることが看て取れるとともに,当該2つのプーリのうち,下側のプーリは駆動モータの駆動軸に設けられていることが推認できる。そして,当該駆動モータを回転することで,写真下側のプーリが回転し,タイミングベルトを介してもう一つのプーリが回転し,当該2つのプーリが無色透明円盤の端部の側面に接していることから,当該接している無色透明円盤を回転させることが可能なものであることは,技術常識に照らせば自明なこととして理解できる。
(6)判定請求人が提出した甲5号証の写真から,無色透明円盤の周縁部近傍下面に接する2つの白いローラ部材と無色透明円盤の端部の側面に接触する2つの白いプーリを備える支持する部材により無色透明円盤が支持されていることが看て取れる。
(7)判定請求人の提出した甲6号証の写真から,無色透明円盤の下側に複数の点状の白色光源を具えた平面が存在することが看て取れる。
(8)判定請求人が提出した証拠説明書の記載によれば,判定請求人の提出した甲2ないし6号証は,いずれもイ号製品の該当部分を判定請求人の代表取締役が撮影したものであるとしている。
しかしながら,判定請求人が提出したイ号説明書及びイ号製品の外観写真において示されたそれぞれの製品が同じものであることや,これらイ号説明書において示されているイ号製品と甲2号証ないし甲6号証において撮影されている製品が同じ製品であることについて判定請求人は特段の説明や立証をしておらず,判定請求人の提出した証拠及び証拠説明書のみでは,これらが同じ製品についてのものであることを直ちに認めるに足りるものとはいえない。
他方,被請求人は,この点について特に争っておらず,また,これらの書類及び各証拠等において示された各製品が同一のものであることを否定すべき矛盾が存在するとまではいえない。
以上のことから,イ号説明書及びイ号製品の外観写真並びに甲2号証ないし甲6号証の写真において撮影されている各製品が同じ製品についてのものであることを前提として,以下検討することとする。

3 当審によるイ号製品の特定
(1)上記2(1)によれば,イ号説明書には,「最大被写体サイズ」,「最適な被写体」との記載があるとともに,その写真には,イ号製品の内部に赤いブーツが設置され,当該赤いブーツにレンズを向けたカメラのようなものが看て取れることからすれば,イ号説明書に記載のイ号製品は,「撮影用の棚」であると認められる。
また,2(2)及び(3)によれば,イ号製品の白色の底面には,無色透明円盤と白色円盤からなる部分が存在するものと認められ,当該円盤部分に被写体を置くものであることは,技術常識に照らせば自明のことである。
そして,2(4)及び(5)のとおり,イ号製品は,無色透明円盤の周縁部近傍下面に接する2つの白いローラ部材と,銀色の円板状部材とその周りを同心状に取り囲むよう形成された黒い部材とからなり,黒い部材が無色透明円盤の端部の側面に接する2つのプーリと,銀色の円板状部材とその周りを同心状に取り囲むよう形成された黒い部材とからなり,黒い部材が無色透明円盤の端部の側面に接するもう1つのプーリとを備えており,2つのプーリ部材の下側にはベルトが掛け回されているものであって,2つのプーリ部材に掛け回されているベルトは,2つのプーリの黒い部材が形成されている部分よりも下側の軸部分に掛け回されており,当該2つのプーリのうち,片方のプーリ軸は駆動モータの駆動軸とされており,当該駆動モータを回転駆動することにより片方のプーリが回転し,ベルトを介して他方のプーリが回転し,当該2つのプーリが無色透明円盤を回転可能とする駆動部材を備え,無色透明円盤は,当該駆動部材により支持されているものと認められる。
また,2(6)によれば,イ号製品の無色透明円盤は,無色透明円盤の周縁部近傍下面に接する2つの白いローラ部材と無色透明円盤の端部の側面に接触する2つの白いプーリを備えた無色透明円盤を支持する部材により支持されているものと認められる。
そして,イ号製品の無色透明円盤は,駆動部材と支持する部材とにより協働して支持されており,また,駆動部材の2つのプーリ及びもう一つのプーリと支持部材の2つの白いプーリ部材とは,異なる方向より無色透明円盤の端部の側面に接触していることは,技術常識に照らせば明らかである。
さらに,2(7)によれば,イ号製品は,無色透明円盤の下側に複数の点状の白色光源を具えるものであると認められる。

(2)以上のことからすれば,イ号製品はつぎのとおりのものであると認めることができる。
「(a)被写体を載置するための白色円盤及び無色透明円盤からなる円盤を備え,
(b)二つのプーリともう一つのプーリ,一本のタイミングベルト及び一個のモータ,無色透明円盤の周縁部近傍下面に接する二つの白いローラ部材,からなる無色透明円盤を回転駆動可能に支持する駆動部材であって,下側の軸にベルトが掛け回され,銀色の円板状部材とその周りを同心状に取り囲むよう形成された黒い部材とからなり,黒い部材が無色透明円盤の端部の側面に接する二つのプーリと,銀色の円板状部材とその周りを同心状に取り囲むよう形成された黒い部材とからなり,黒い部材が無色透明円盤の端部の側面に接するもう一つのプーリを備え,当該二つのプーリのうち,片方のプーリのプーリ軸は駆動モータの駆動軸とされており,当該駆動モータを駆動することにより片方のプーリが回転し,ベルトを介して他方のプーリが回転し,当該二つのプーリが無色透明円盤を回転可能とする駆動部材と,
(c)無色透明円盤の周縁部近傍下面に接する二つの白いローラ部材と無色透明円盤の端部の側面に接触する二つの白いプーリを備えた無色透明円盤を支持する部材とを備えるものであり,
無色透明円盤は,駆動部材と支持する部材とにより協働して支持され,駆動部材の二つのプーリ及びもう一つのプーリと支持部材の二つの白いプーリは,異なる方向より無色透明円盤の端部の側面に接触し,
(d)無色透明円盤の下側に複数の点状の白色光源を具える
(e)撮影用の棚」

(3)判定請求人は,イ号製品の特定について上記1のとおり主張している。
ア イ号製品の構成要件(a)について
判定請求人は,イ号製品が「半透明プラスチック円盤及び透明ガラス円盤からなる透明円盤(32)」を具えている旨主張しているが,上記2(3)のとおり,イ号製品は,白色円盤と無色透明円盤からなる円盤を備えているものであると認められるものの,当該白色円盤や透明円盤の材質が判定請求人の主張する材料により形成されていると認定できる根拠は何ら示されていない。
イ イ号製品の構成要件(b)について
判定請求人は,イ号製品が「タイミングプーリは,下縁にタイミングベルトが嵌合されるとともに,上縁を取り囲むようにゴムリングが接合されており,ゴムリングを介して透明円盤の側面に接触する」ものである旨主張している。
しかしながら,上記2(4)のとおり,イ号製品の無色透明円盤の端部の側面に接触する2つのプーリは,「銀色の円板状部材とその周りを同心状に取り囲むよう形成された黒い部材とから形成されるとともに,黒い部材が透明円盤の端部の側面に接する」ものであると認めることができるが,当該黒い部材の材質は,判定請求人の提出した各甲号証からは特定できず,判定請求人は,当該黒い部材がゴムリングであることの根拠については何らの説明もない。
また,判定請求人は,イ号製品が「モータ(72)がタイミングベルト(81)を介してタイミングプーリ(77,78)を回転させる」ものである旨主張するが,イ号製品のモータがベルトを介して回転させるものは二つのプーリのうちの他方のプーリ(78)であって,モータ軸に設けられるプーリ(77)は,モータが回転させるものであるし,もう一つのプーリも,タイミングベルトで駆動されるものでないことは明らかである。
さらに,判定請求人は,イ号製品が「モータがタイミングベルトを介してタイミングプーリを回転させることで透明円盤を起動或いは制動停止可能である」旨主張しているが,上記2(4)のとおり,技術常識に照らして「駆動モータを駆動することで,プーリ(77)が回転し,タイミングベルトを介してもう一つのプーリ(78)が回転し,当該2つのプーリが無色透明円盤の端部の側面に接していることから,当該接している無色透明円盤を回転させることが可能である」ことは自明なことといえるが,イ号製品が無色透明円盤をどのように回転動作させるのかをうかがわせる証拠を判定請求人は何ら示しておらず,判定請求人は,そのように認定できる根拠についてもモータにより駆動するということしか示していないから,判定請求人の提出した証拠から,イ号製品が回転円盤を「制動停止可能」であることまでが理解できるものではない。
また,判定請求人は,イ号製品が「タイミングベルトがプーリ下縁に嵌合される」ものである旨主張しているが,イ号製品において,タイミングベルトがプーリに下縁で嵌合されているとまではいうことができないことも上記2(4)のとおりである。

第4 当事者の主張
1 請求人の主張(判定請求書)
(1)構成要件(A)について
甲2号証に示されるとおり,イ号製品の透明円盤は,半透明プラスチック円盤及び透明ガラス円盤で構成された被写体を載置するものであるから,イ号製品は,本件特許発明の構成要件(A)を充足する。(判定請求書(5-1)

(2)構成要件(B)について
甲3号証及び甲4号証に示されるとおり,本件特許発明もイ号製品もいずれも,タイミングプーリ,タイミングベルト及びモータを含むという点で両者は共通している。
イ号製品は,モータがタイミングベルトを介してタイミングプーリを回転させることで,透明円盤を起動或いは制動停止するのに対して,本件特許発明ではそのことが明記されていないという点で相違する。
この点について,本件特許発明の構成(B)の「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動される」を補足すると,本件特許発明でタイミングベルトとタイミングプーリを設置する目的は,一つのモータで複数のタイミングプーリを同期回転可能とすることと考えている。換言すれば,モータが起動することによってタイミングベルトに接続されている全てのタイミングプーリを,タイミングベルトを介して直接駆動又は間接駆動により同期回転させる。この根拠として,例えば,本件特許の明細書段落【0016】には,「タイミングベルト81でタイミングプーリ77,78が接続される」と明記されている。
すなわち,モータにタイミングプーリが直接接続されているか否かに関わらず,全てのタイミングプーリが最終的にタイミングベルトによって同期回転することになる。モータ上方のタイミングプーリがタイミングベルトに依って駆動されないのであれば,タイミングベルト内にタイミングプーリが設けられるはずがなく,該モータ上方のタイミングプーリの上縁に透明円盤の側面に接するためのゴムリングが設けられるはずもない。
よって,本件特許発明の構成(B)は,イ号製品の構成(b)と同様に,モータがタイミングベルトを介して複数のタイミングプーリを回転させるものである。
したがって,本件特許発明の構成要件(B)はイ号製品(b)と実質的に同一である。
なお,本件特許の実施例には,ゴムリングを備えない一般的なタイミングプーリ76をモータによって動作させることで,タイミングベルトに接続されるゴムリングを備える二つ以上のタイミングプーリを間接的に動作させ,透明円盤の側面に接触させるとの記載がある。しかし,請求項1には明細書に開示されているが必須ではない減速機73についての記載がないため,該減速機上のタイミングプーリ76もまた請求項1に含まれない。
したがって,タイミングプーリ76の有無はモータの配置位置に影響するにすぎず,本件特許の請求の範囲におけるモータ駆動の事実には影響しない。(判定請求書(5-2))

(3)構成要件(C)について
甲5号証に示されるとおり,本件特許発明の構成(C)もイ号製品の構成(c)もいずれも,回転盤支持ユニットが透明円盤を支持しており,回転盤支持ユニットが遊び車を備えており,当該遊び車が透明円盤の左右両側にそれぞれ接触しているという点で共通している。したがって,イ号製品は,本件特許発明構成要件(C)を充足する。(判定請求書 (5-3))

(4)構成要件(D)について
甲6号証に示されるとおり,イ号製品の底部にランプセットが設けられているから,イ号製品は,本件特許発明の構成要件(D)を充足する。(判定請求書(5-4))


2 被請求人の主張(判定請求答弁書(平成31年2月28日)
(1)構成要件を満たさない。
イ号製品は,判定請求人が分説した本件特許発明の構成要件(B)を充足しない。
ア イ号製品は,構成要件(B)のうち,特に「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つがタイミングベルトを介して駆動される」との構成を有していない。
判定請求書の7頁の右下側の写真からは,モータ72によって,駆動させるタイミングプーリ77,78のうち,タイミングプーリ78のみがタイミングベルト81を介して駆動されているだけであり,タイミングプーリ77はタイミングベルト81を介しては駆動されていないことが読み取れる。さらに具体的には,モータ72のシャフトに直接タイミングプーリ77が接続されて駆動されている。そのため,タイミングプーリ77は,タイミングベルト81を介しては駆動されていない。(判定請求答弁書2及び3頁)

(2)請求人の主張への反論1
請求人は,「本件特許発明の構成(B)は,イ号製品の構成(b)と同様に,モータがタイミングベルトを介して複数のタイミングベルト(当審注:タイミングプーリの誤記と認めれる。)を回転させるものである」と記載している。
しかしながら,本件特許請求の範囲の請求項1においては,「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動される」と記載されている。その為,請求人自らも,イ号製品においては「少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動され」ていないことを,認めているといえる。
より詳しく説明すると,「すくなくとも2つのAがBを介して駆動されている。」という日本語を解釈する場合,何らかの駆動源(本件ではモータ)があり,その駆動源からの駆動力がBによって,2つのAに何らかの手段で伝達され,2つのAが駆動されている,と考えるのが普通である。
この日本語の文言では,たとえ2つのAがあったとしても,その1つだけがBを介して駆動される場合を含まない。(判定請求答弁書3頁)

(3)請求人の主張への反論2
請求人は,「本件特許発明の構成(B)は,イ号製品の構成(b)と実質的に同一である。」と記載している。
この記載の意味は,必ずしも明確ではないが,「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動される」との文言に対して,補強や拡張などを求めているようにも読めるので念のため反論しておく。
本件特許請求の範囲の請求項1では,「少なくとも二つ」との文言を使用している。これは,「少なくとも一つ」という表現があるにもかかわらず,あえて「少なくとも二つ」を使用したということができる。つまり,あえて「少なくとも二つ」を積極的・能動的に選択して使用したものである。
しかも,発明の詳細な説明の図4からも明確にわかるように,本件発明の実施例でも「タイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動され」ている形式であり,この実施例と「少なくとも二つ」との表現が完全に一致している。
したがって,「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動される」との文言を,拡張・補強等して判断することは認められない。(判定請求答弁書3及び4頁)

第5 当審の判断
1 構成要件(B)の充足性について
事案に鑑み,構成要件(B)の充足性についてまず検討する。
(1)上記第3の3で認定したとおり,イ号製品の無色透明円盤を回転可能に支持する駆動部材は,「二つのプーリともう一つのプーリ,一本のベルト及び一個のモータ,無色透明円盤の端部近傍下面に接する二つの白いローラ部材」からなるものであって,「二つのプーリの下側の軸にベルトが掛け回され」ており,「二つのプーリのうち,片方のプーリのプーリ軸は駆動モータの駆動軸とされており,当該駆動モータを駆動することにより片方のプーリが回転し,ベルトを介して他方のプーリが回転し,当該二つのプーリが無色透明円盤を回転可能とする」ものであるから,イ号製品の無色透明円盤を駆動可能な駆動部材において,ベルトを介して駆動されるプーリは一つである。
これに対して,本件特許発明の構成要件(B)においては,「複数のタイミングプーリと,これらタイミングプーリのいずれか一つと接続されたモータ」と,「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動され」るものであり,当該「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つの上縁を囲むようにゴムリングが接合され」,「該モータが該モータに接続された該タイミングプーリ」を「駆動して」,「該タイミングベルトを介して該透明円盤の該側面に接触するこれらゴムリングを具えたタイミングプーリを回転させる」ことが特定されているのであるから,「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つ」が,タイミングベルトを介して駆動されることが特定されているものと解される。
してみると,イ号製品は,本件特許発明の構成要件(B)を充足しない。
(2)判定請求人の主張について
ア 判定請求人は,「イ号製品は,モータがタイミングベルトを介してタイミングプーリを回転させることで,透明円盤を起動或いは制動停止するのに対して,本件特許発明ではそのことが明記されていないと主張しているが,本件特許発明の構成要件(B)においては,「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動され」るものであり,当該「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つの上縁を囲むようにゴムリングが接合され」,「該モータが該モータに接続された該タイミングプーリ」を「駆動して」,「該タイミングベルトを介して該透明円盤の該側面に接触するこれらゴムリングを具えたタイミングプーリを回転させ,該透明円盤を起動或いは制動停止させる」ことが明確に特定されているから,判定請求人の主張は,前提において誤りである。

イ 判定請求人は,本件特許発明でタイミングベルトとタイミングプーリを設置する目的は,モータが起動することによってタイミングベルトに接続されている全てのタイミングプーリを,タイミングベルトを介して直接駆動又は間接駆動により同期回転させることにあるから,モータにタイミングプーリが直接接続されているか否かに関わらず,全てのタイミングプーリが最終的にタイミングベルトによって同期回転することになることを理由に,本件特許発明の構成(B)は,イ号製品の構成(b)と同様に,モータがタイミングベルトを介して複数のタイミングプーリを回転させるものであると主張する。
しかしながら,本件特許発明とイ号製品とが,モータがタイミングベルトを介して複数のタイミングプーリを直接接続されているか否かに関わらず同期回転させるものであることで共通するとしても,本件特許発明の構成要件(B)においては,「これらタイミングプーリのうち少なくとも二つが該タイミングベルトを介して駆動され」ることが特定されている点でイ号製品のものとは異なるものであることには変わりはないから,判定請求人の主張によっても,イ号製品が本件特許発明の構成要件(B)を充足するものということはできない。

2 小括
以上検討したとおり,イ号製品は,少なくとも,本件特許発明の構成要件(B)を充足しない点で,本件特許発明の技術的範囲に属するものとはいえないから,本件特許発明のその他の構成要件の充足性について検討するまでもなく,イ号製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するものとすることはできない。

第6 むすび
以上検討したとおり、イ号製品は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2019-03-28 
出願番号 特願2011-178972(P2011-178972)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 尾崎 淳史
荒井 隆一
登録日 2014-06-20 
登録番号 特許第5562305号(P5562305)
発明の名称 回転盤駆動機構を具えた撮影棚  
代理人 植村 貴昭  
代理人 山下 隆志  
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