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審決分類 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する B21J
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B21J
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する B21J
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する B21J
管理番号 1350870
審判番号 訂正2018-390131  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-09-07 
確定日 2019-03-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3787502号に関する訂正審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第3787502号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 請求の趣旨及び主な手続の経緯
本件訂正審判の請求の趣旨は,特許第3787502号の明細書,特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり訂正することを認める,との審決を求めるものである。

また,特許第3787502号(以下「本件特許」という)の主な手続の経緯は,以下のとおりである。
平成12年 3月 8日 :本件特許に係る出願における優先権主張の
基礎とする先の出願
(特願2000-63015号)
平成13年 3月 8日 :本件特許に係る出願
(特願2001-64809号)
平成15年11月 7日付け:拒絶理由通知
平成16年 1月13日 :意見書及び手続補正書の提出
同 年 8月25日付け:拒絶査定
同 年 9月30日 :拒絶査定不服審判請求
平成17年12月15日付け:拒絶理由通知
平成18年 2月 3日 :拒絶査定不服審判請求の請求人と
審判合議体による面接
同 年 2月14日 :意見書及び手続補正書提出
同 年 2月27日付け:審決(原査定を取り消し,特許すべき
ものとする。)
同 年 3月31日 :本件特許の設定登録
平成19年 5月22日 :判定請求(イ号方法は本件特許発明の
技術的範囲に属するとの判定を求める。)
同 年11月27日付け:判定(イ号方法は本件特許発明の
技術的範囲に属しない。)
平成30年 9月 7日 :本件訂正審判請求
同 年11月15日付け:訂正拒絶理由通知
同 年12月18日 :意見書の提出
平成31年 1月 8日付け:審尋
同 年 1月25日 :意見書の提出
同 年 2月 5日 :本件訂正審判請求の請求人と審判官による
電話応対
同 年 2月15日 :上申書の提出

第2 訂正の内容
本件訂正審判の訂正の内容は,以下のとおりである。なお,下線は,訂正前後における訂正箇所を示すために当審で付したものである。

1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を用い,金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を切削することによって,得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後,この金型を用いてプレスすることによって,硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」
と記載されているのを,
「遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,
硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,
金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を用い,
金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ,
傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,
これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を切削することによって,
得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後,
この金型を用いてプレスすることによって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」
と訂正する。

2.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を用い,金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ,傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,同じく同時三軸制御NCフライス機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削することによって,得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後,この金型を用いてプレスすることによって,硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」
と記載されているのを,
「遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,
硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,
金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を用い,
金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ,
傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き,
これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,同じく同時三軸制御NCフライス機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削することによって,
得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後,
この金型を用いてプレスすることによって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」
と訂正する。

3.訂正事項3
明細書の段落【0012】に
「【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために,請求項1の発明は,遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を切削方向と深さを一定のパターンで繰り返しながら金型表面上を移動させ,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を切削し,この金型を用いてプレスすることによって得られる硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」
と記載されているのを,
「【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために,請求項1の発明は,遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,
硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,
金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を切削方向と深さを一定のパターンで繰り返しながら金型表面上を移動させ,
これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分を切削し,
この金型を用いてプレスすることによって得られる硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」
と訂正する。

4.訂正事項4
明細書の段落【0013】に
「請求項1の発明は,切削方向と切削深さを任意に変えられる同時三軸制御NCフライス機を,硬貨表面に描かれる人物や動植物等の図形に用いるのではなく,これを金型の表面に対して一定パターンで繰り返すことにより,硬貨の地金部分に,鏡面仕上げやナシ地仕上げによらない立体的な幾何学的模様からなる新たな地模様を描き出し,硬貨の装飾価値を高めるものである。」
と記載されているのを,
「 請求項1の発明は,切削深さを任意に変えられる同時三軸制御NCフライス機を,硬貨表面に描かれる人物や動植物等の図形に用いるのではなく,これを金型の表面に対して一定パターンで繰り返すことにより,硬貨の地金部分に,鏡面仕上げやナシ地仕上げによらない立体的な幾何学的模様からなる新たな地模様を描き出し,硬貨の装飾価値を高めるものである。」
と訂正する。

5.訂正事項5
明細書の段落【0014】に
「 また,請求項2の発明は,遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を切削方向と深さを一定のパターンで繰り返しながら金型表面上を移動させ,これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,同じく同時三軸制御NCフライス機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削し,この金型を用いてプレスすることによって得られる硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」
と記載されているのを,
「 また,請求項2の発明は,遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって,
硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に,
金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を切削方向と深さを一定のパターンで繰り返しながら金型表面上を移動させ,
これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること,及び,同じく同時三軸制御NCフライス機により硬貨の表面に浮き出る文字,図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削し,
この金型を用いてプレスすることによって得られる硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と,この幾何学的地模様から浮き出る文字,図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。」
と訂正する。

6.訂正事項6
明細書の段落【0017】に
「図1に示すように,立体彫り用の同時三軸制御NCフライス機9を用い,金型2に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら,横方向に移動させ,特定のパターンを金型2上に描く。」
と記載されているのを,
「 図1に示すように,立体彫り用の同時三軸制御NCフライス機9を用い,金型2に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら,横方向に移動させ,特定のパターンを金型2上に描く。」
と訂正する。

7.訂正事項7
明細書の段落【0019】に
「この繰り返しパターンは,同時三軸制御NCフライス機9に対し,切削の深度・角度と横方向への移動の相関関係を,プログラム等で前もって設定しておけば,自動的にかつ失敗無く所定パターンを彫り込むことができる。」
と記載されているのを,
「 この繰り返しパターンは,同時三軸制御NCフライス機9に対し,切削の深度・水平面に対する金型の切削角度と横方向への移動の相関関係を,プログラム等で前もって設定しておけば,自動的にかつ失敗無く所定パターンを彫り込むことができる。」
と訂正する。

第3 訂正の適否の判断
1.訂正事項1について
(1)訂正の目的
訂正事項1は,「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」という事項を,「金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」に訂正し(以下「訂正事項1A」という。),「金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ」という事項を,「金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ」に訂正する(以下「訂正事項1B」という。)ものであるが,その訂正の目的は,以下に示すように,特許法(以下「法」という。)126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。

ア.訂正前の請求項1の記載が明瞭でなかったこと
訂正前の請求項1の「金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ」という記載において,「角度」とは,何の角度を意味するのか明瞭でなかった。
また,「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」という記載の「任意の角度」と上記の記載の「角度」の関係も明瞭でなかった。

イ.訂正後の請求項1の記載が明瞭となったこと
訂正事項1Bは,「金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ」と記載することで,上記ア.では明瞭でなかった角度が,水平面に対する金型の切削角度を意味することが明瞭となった。
また,訂正事項1Aにおいて,「金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」と記載することで,角度に関する複数箇所の記載が整理された結果,明瞭となった。

ウ.小括
以上のとおり,訂正前の請求項1において,「角度」の記載が複数箇所にあり,その意味する内容が明瞭でなかったが,訂正後の請求項1において,水平面に対する金型の切削角度を意味することが明瞭となったから,訂正事項1の訂正の目的は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。

(2)新規事項の有無
ア.訂正事項1Bの「切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ」という事項は,金型表面全体に繰り返し模様からなる地模様を形成する際の,金型表面上でのNCフライス機の移動を特定するものであるが,当業者であれば,切削深さと,水平面に対する金型の切削角度を変えながら加工すれば,金型に傾斜面が形成されると理解できる。

イ.当該理解を前提に,願書に添付した明細書及び図面を参照すると,金型表面の地模様を加工することについて,以下の記載がある。

「【0017】
図1に示すように,立体彫り用の同時三軸制御NCフライス機9を用い,金型2に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら,横方向に移動させ,特定のパターンを金型2上に描く。
【0018】
この作業を繰り返すことにより,金型2の表面に,繰り返し模様からなる地模様を形成する。
【0019】
この繰り返しパターンは,同時三軸制御NCフライス機9に対し,切削の深度・角度と横方向への移動の相関関係を,プログラム等で前もって設定しておけば,自動的にかつ失敗無く所定パターンを彫り込むことができる。」
「【0025】
図2は,この発明の硬貨の製造方法によって得られた硬貨3を示すもので,(A)は平面図で(B)は正面断面図で,(C)は(B)の拡大図である。【0026】
図に示すように,地模様8部分に細かい格子状の模様が入り,これにより,従来,平面仕上げ,鏡面仕上げ,又はナシ地仕上げであった硬貨の地模様とは異なる輝きが得られる。」

図1


図2


ウ.図2(C)には,地模様8部分の断面が,「V」を並べた形状であることが示されているから,金型に傾斜面が形成されているということができ,訂正事項1Bは,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものといえる。

エ.また,訂正前の請求項1に「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」が記載されている以上,訂正事項1Aが,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものといえることは明らかである。

オ.したがって,訂正事項1に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえ,法126条5項に規定する要件に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
ア.訂正事項1Aについて
訂正事項1Aは,同時三軸制御NCフライス機において切削可能な方向について,「任意の角度の斜め方向」を文言上,削除しているが,訂正事項1Bにおいて,水平面に対する金型の切削角度を変えながら加工することが特定され,金型の切削角度を変えながら加工することは,同時三軸制御NCフライス機が任意の角度の斜め方向に切削可能であることを意味するから,訂正事項1Aによって,特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。

イ.訂正事項1Bについて
(ア)当審は,訂正事項1Bにより,特許請求の範囲が拡張された旨の訂正拒絶理由を通知したが,以下に示すように,訂正事項1Bにより,特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。

(イ)訂正拒絶理由の概要は,訂正前の請求項1における「切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ」という記載における「角度を変え」という事項は,切削深さの方向に沿う軸(以下「Z軸」という。)に対する加工工具の傾斜角度を変えることを意味すると理解できるから,訂正前の請求項1には,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えることが特定されていたのに対して,訂正事項1Bにより,訂正後の請求項1は,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えずに移動することを含むこととなったから,実質上特許請求の範囲を拡張するものである,というものである。

(ウ)しかし,訂正前の請求項1の同時三軸制御NCフライス機は,Z軸に対する加工工具の傾斜角度を変えることができないから,訂正前の請求項1には,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えることが特定されていたとはいえない。

(エ)訂正前の請求項1の同時三軸制御NCフライス機が,Z軸に対する加工工具の傾斜角度を変えることができないことについて詳述すると,まず,願書に添付した明細書(以下「訂正前の明細書」という。)には,同時三軸制御NCフライス機が,Z軸に対する加工工具の傾斜角度を変更可能であることの明記はない。
また,「同時三軸制御NCフライス機」という用語は,その加工工具が,3次元空間の位置を特定するための何らかの3つの軸に基づいて,加工対象物に対して相対的に移動(以下,加工対象物に対して相対的に移動することを,単に「移動」という。)可能であることを意味することは,本件特許に係る出願の優先日当時の技術常識である。
この技術常識を前提に,訂正前の明細書における3つの軸を検討すると,まず,この内の2つの軸については,段落【0017】(上記(2)イ.)の「切削深さと角度を変えながら,横方向に移動させ」という記載から,加工工具が,切削深さの方向に沿う軸(すなわちZ軸)と,横方向に沿う軸(以下「X軸」という。)の方向に直線移動可能であることは明らかである。そして,残る1つの軸については,段落【0018】に「この作業を繰り返すことにより,金型2の表面に,繰り返し模様からなる地模様を形成する」と記載されているところ,繰り返し模様を形成するためには,加工工具が,Z軸とX軸に直交する方向の軸(以下「Y軸」という。)に沿って直線移動した上で,「この作業を繰り返す」必要があることに鑑みれば,加工工具が,Y軸の方向に直線移動可能であることは明らかである。したがって,訂正前の明細書に接した当業者であれば,訂正前の請求項1の同時三軸制御NCフライス機の加工工具は,X軸,Y軸,Z軸の3つの軸に沿って直線移動するものであると理解するほかない。そうすると,加工工具は当該3つの軸に沿う直線移動のほかには移動できない(例えば,回転軸に基づく回転移動はできない)から,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えることはできない。

(オ)もっとも,願書に添付した図面の図1や図4には,あたかも,訂正前の請求項1の同時三軸制御NCフライス機の加工工具が,Z軸に対する傾斜角度を変えることができるように記載されているが,上記(エ)で説示するとおり,訂正前の請求項1の「同時三軸制御NCフライス機」の加工工具は,Z軸に対する傾斜角度を変えることができない以上,願書に添付した図面の図1や図4の記載は誤っていると理解するほかない。
また,願書に添付した図面の図8には,従来の技術である立体彫刻機の加工工具が,Z軸に対する傾斜角度を変えることができるように記載されているが,一般的な立体彫刻機(例えば,立体彫刻機については,特開2000-141990号公報の段落【0012】及び図6に示されている,株式会社ミマキエンジニアリングのデスクトップ型モデリングマシンNC-5等参照。また,金型等を立体的に加工するNCフライス盤については,特開平4-285804号公報等参照。)の加工軸は,Z軸に対する傾斜角度を変えることができるように構成されていないから,願書に添付した図面の図8の記載も誤っていると解するのが相当である。
そして,請求人は,平成31年1月25日付けの意見書において,願書に添付した図面の図1,図4及び図8における,加工軸がZ軸に対する傾斜角度を変更可能である旨の記載は,いずれも誤りであることを認めている。
したがって,願書に添付した図面における,加工軸がZ軸に対する傾斜角度を変更可能である旨の記載は,いずれも信頼できるものではないから,図面の記載のみを根拠として,訂正前の請求項1の同時三軸制御NCフライス機が,Z軸に対する加工工具の傾斜角度を変えるものであると認定することはできない。

(カ)以上のとおり,訂正前の請求項1に係る同時三軸制御NCフライス機は,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えずに移動するものであり,訂正後の請求項1に係る同時三軸制御NCフライス機も,加工工具がZ軸に対する傾斜角度を変えずに移動するものであるから,訂正事項1Bによって,特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえない。

ウ.訂正事項1による特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項1A及び訂正事項1Bによって,実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されているとはいえないから,訂正事項1に係る訂正は,法126条6項に規定する要件に適合する。

(4)小括
したがって,訂正事項1に係る訂正は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当し,法126条5項及び6項に規定する要件に適合する。

2.訂正事項2について
(1)訂正の目的
訂正事項2は,「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」という事項を,「金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」に訂正し(以下「訂正事項2A」という。),「金型に対して一定のパターンで切削深さと角度を変えながら金型表面上を移動させ」という事項を,「金型に対して一定のパターンで切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら金型表面上を移動させ」に訂正する(以下「訂正事項2B」という。)ものであるが,その訂正の目的は,上記1.(1)に示す理由と同様の理由により,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。

(2)新規事項の有無
訂正事項2Bは,上記1.(2)ア.ないしウ.に示す理由と同様の理由により,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものといえる。
また,訂正事項2Aは,上記1.(2)エ.に示す理由と同様の理由により,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものといえる。
したがって,訂正事項2に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえ,法126条5項に規定する要件に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
訂正事項2Aは,上記1.(3)ア.に示す理由と同様の理由により,特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また,訂正事項2Bは,上記1.(3)イ.に示す理由と同様の理由により,特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
よって,訂正事項2に係る訂正は,法126条6項に規定する要件に適合する。

(4)小括
したがって,訂正事項2に係る訂正は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当し,法126条5項及び6項に規定する要件に適合する。

3.訂正事項3について
訂正事項3は,訂正前の明細書の段落【0012】の「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」という記載を「金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」と訂正するものであるが,訂正事項1Aの記載と整合するように訂正するものであるから,その訂正の目的は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。
また,訂正事項3が,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは,上記1.(2)及び(3)で説示するとおりであるから,訂正事項3に係る訂正は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当し,法126条5項及び6項に規定する要件に適合する。

4.訂正事項4について
訂正事項4は,訂正前の明細書の段落【0013】の「切削方向と切削深さを任意に変えられる同時三軸制御NCフライス機」という記載を「切削深さを任意に変えられる同時三軸制御NCフライス機」と訂正するものであるが,訂正事項1Bの記載と整合するように訂正するものであるから,その訂正の目的は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。
また,訂正事項4が,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは,上記1.(2)及び(3)で説示するとおりであるから,訂正事項4に係る訂正は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当し,法126条5項及び6項に規定する要件に適合する。

5.訂正事項5について
訂正事項5は,訂正前の明細書の段落【0014】の「金型の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」という記載を「金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機」と訂正するものであるが,訂正事項2Aの記載と整合するように訂正するものであるから,その訂正の目的は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。
また,訂正事項5が,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは,上記2.(2)及び(3)で説示するとおりであるから,訂正事項5に係る訂正は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当し,法126条5項及び6項に規定する要件に適合する。

6.訂正事項6について
訂正事項6は,訂正前の明細書の段落【0017】の「切削深さと角度を変えながら,横方向に移動させ」という記載を「切削深さと,水平面に対する金型の切削角度と,を変えながら,横方向に移動させ」と訂正するものであるが,訂正事項1B及び訂正事項2Bの記載と整合するように訂正するものであるから,その訂正の目的は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。
また,訂正事項6が,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは,上記1.(2)及び(3),並びに上記2.(2)及び(3)で説示するとおりであるから,訂正事項6に係る訂正は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当し,法126条5項及び6項に規定する要件に適合する。

7.訂正事項7について
訂正事項7は,訂正前の明細書の段落【0019】の「切削の深度・角度と横方向への移動」という記載を「切削の深度・水平面に対する金型の切削角度と横方向への移動」と訂正するものであるが,訂正事項1B及び訂正事項2Bの記載と整合するように訂正するものであるから,その訂正の目的は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。
また,訂正事項7が,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは,上記1.(2)及び(3),並びに上記2.(2)及び(3)で説示するとおりであるから,訂正事項7に係る訂正は,法126条1項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当し,法126条5項及び6項に規定する要件に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本件審判の請求は,法126条1項3号に掲げる事項を目的とし,かつ,法126条5項及び6項に規定する要件に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
硬貨の製造方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、遊戯施設内のメダル遊戯機などに使用される硬貨(金属メダル)の製造方法に関するもので、特に、硬貨表面の装飾に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、遊戯施設内のゲームセンター等で使用される各種メダル遊技機では、その施設内のみで使用される金属メダル等の硬貨を用いて、各種遊戯を楽しめるようになっている。
【0003】
ところで、上記硬貨の表面には、各遊戯施設を表す名称や略称からなる文字、あるいは遊戯施設を表す特有の図形等からなる模様が描かれてており、別施設の硬貨がまぎれこまないようにしている。
【0004】
これらの硬貨の表面に描かれた模様は、図6に示すように、硬貨を製造するプレス機1に設置されるプレス用金型2,2に予め彫りこまれており、硬貨3をプレス及び打ち抜きする際、同時にプレス圧力により硬貨3の表面に金型2の凹凸が反転して表現されるものである。
【0005】
図7は、硬貨の製造時に用いられる金型2と硬貨3の表面の文字等の模様について説明したもので、硬貨3の表面にあらわされた文字となる断面凸状に浮き出た凸部4は、金型2において凹状に彫られた部分に対応し、プレス金型2に対して硬貨3の表面に浮き出る部分を、平面彫刻機5で厚み方向に掘り込んで行う。
【0006】
ところで、平面彫刻機5のように、厚み方向にのみ切削する切削工具では、切削した文字等の部分及び切削を行わなかった部分は、平面仕上げであり、金属の地肌のままの色合いであるが、金型2の切削を行わなかった平面部分(金型2の断面凸部)を放電加工機で不規則かつ微細に地金を削り取り、いわゆるナシ地仕上げを行ったり、硬貨3の凸部4に対応する部分(金型2の断面凹部)は細かく研磨して鏡面仕上げとすることを行い、該金型2によりプレスされて得られた硬貨3の表面において、地模様部分をナシ地仕上げ、文字等の凸部4は鏡面仕上げにし、硬貨3の肉眼観察における装飾効果を高めたりしている。
【0007】
もちろん、上記とは逆に、地模様を鏡面仕上げ、文字部分をナシ地仕上げとしたり、全体を鏡面仕上げ、或いはナシ地仕上げとすることもある。
【0008】
又、図8は、金型2に対して、金型2の厚み方向及び任意の角度の斜め方向へ切削可能な立体彫刻機6を用い、金型2に対して人物や動植物等の立体的な図形を彫り込み、得られた硬貨3の表面に任意の断面形状を持つ凸部7を形成し、この凸部7により人物や動植物を立体的に表現して、より硬貨3の装飾効果を高めたものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、これらの硬貨は、表面に浮き出た文字や図形により、当該硬貨が使用される遊戯施設を表示したり装飾効果を高めることができるが、文字や図形の部分を除いた地模様は、前述のように、平面仕上げ、鏡面仕上げ、ナシ地仕上げのいずれかであり、変化に乏しい。
【0010】
又、メダル遊戯機で使用される硬貨は、一般の貨幣硬貨に比べてコスト等の兼ね合いがあって高価な金属は使用し難く、表面の輝きが鈍いものが多い。
【0011】
そこで、この発明の課題は、硬貨表面の地模様に立体型彫りによる変化を起こし、硬貨の輝きを増し、硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めた、硬貨の製造方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって、
硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に、
金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を切削方向と深さを一定のパターンで繰り返しながら金型表面上を移動させ、
これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること、及び、平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分を切削し、
この金型を用いてプレスすることによって得られる硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と、この幾何学的地模様から浮き出る文字、図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。
【0013】
請求項1の発明は、切削深さを任意に変えられる同時三軸制御NCフライス機を、硬貨表面に描かれる人物や動植物等の図形に用いるのではなく、これを金型の表面に対して一定パターンで繰り返すことにより、硬貨の地金部分に、鏡面仕上げやナシ地仕上げによらない立体的な幾何学的模様からなる新たな地模様を描き出し、硬貨の装飾価値を高めるものである。
【0014】
また、請求項2の発明は、遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって、硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に、
金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を切削方向と深さを一定のパターンで繰り返しながら金型表面上を移動させ、
これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること、及び、同じく同時三軸制御NCフライス機により硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削し、
この金型を用いてプレスすることによって得られる硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と、この幾何学的地模様から浮き出る文字、図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。
【0015】
請求項1の発明で用いる同時三軸制御NCフライス機を用いて、硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削しておけば、得られる硬貨の表面の文字等の部分は側縁部から傾斜を有して浮き出るので、平面彫刻機によって彫り込むものに比較して、模様部分の表面積が増加して光の反射面が増大し、更に浮き出た文字等の側縁部は凸部の立ち上がりによる影か生じないので輝きが増すと同時に、文字、図形等の模様により傾斜面が種々の方向を向いているので、色々な角度で光を反射する。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、立体彫り用の同時三軸制御NCフライス機9を用い、金型2に対して一定のパターンで切削深さと、水平面に対する金型の切削角度と、を変えながら、横方向に移動させ、特定のパターンを金型2上に描く。
【0018】
この作業を繰り返すことにより、金型2の表面に、繰り返し模様からなる地模様を形成する。
【0019】
この繰り返しパターンは、同時三軸制御NCフライス機9に対し、切削の深度・水平面に対する金型の切削角度と横方向への移動の相関関係を、プログラム等で前もって設定しておけば、自動的にかつ失敗無く所定パターンを彫り込むことができる。
【0020】
次に、従来と同様、平面彫刻機によって、最終的に硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の硬貨が使用される場所に応じた模様を、金型2の所定位置に彫りこむ。(図示せず)
【0021】
尚、同時三軸制御NCフライス機9を用いるのは、この順番によらなくとも、最初に平面彫刻機によって文字や図形等に対応する部分を彫り込んでから、最後に金型2の表面に同時三軸制御NCフライス機9による地模様を刻んでも良い。
【0022】
彫刻が済んだ金型2に対し、ダイヤモンド粒子を用いて金属製ブラシや羽ブラシを回転させながら磨き込み、金型2のバリ等を削除したり角を滑らかにし、プレス後の硬貨が角張らないようにしたり、プレス後の硬貨の金型2との剥離性を高めたりする。
【0023】
更に、必要に応じて硬貨3に浮き出た凸部4(又は7)に対応する凹部を研磨し、鏡面仕上げとしても良い。
【0024】
次に、従来例で示した図と同様に、金型2をプレス機1に設定し、プレス圧力により硬貨3の表面に金型2の模様を反転転写する。
【0025】
図2は、この発明の硬貨の製造方法によって得られた硬貨3を示すもので、(A)は平面図で(B)は正面断面図で、(C)は(B)の拡大図である。
【0026】
図に示すように、地模様8部分に細かい格子状の模様が入り、これにより、従来、平面仕上げ、鏡面仕上げ、又はナシ地仕上げであった硬貨の地模様とは異なる輝きが得られる。
【0027】
図3は、この発明の硬貨の製造方法によって得られた硬貨の他の例を示すものであり、(A)は一定間隔の溝状の線を入れ、かつ溝に所定間隔で浅い部分を設け、地模様8に特異な輝きを得たものであり、その手段は同時三軸制御NCフライス機9を所定間隔で深さを変化させつつ金型上を移動させ、これを金型の移動方向と垂直方向にずらして繰り返した金型により得られる。
【0028】
上記のパターンは、人手による作業では熟練を要するが、同時三軸制御NCフライス機9をコンピュータ制御にし、予め同時三軸制御NCフライス機9と金型との位置関係とを予めプログラミングしておけば簡単に同じものが得られる。
【0029】
(B)は地模様8を網目模様としたもので、(C)は地模様8を波状にしたもので、これら複雑なパターンであっても、金型の製造時に所定パターンをプログラミングしておけば、容易にこれらの地模様8を有する硬貨を得ることができる。
【0030】
図4は、この発明の他の実施形態を示すものであり、前述の金型2の切削時に、同時三軸制御NCフライス機9を用いて、硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分を、一定の角度傾斜させて二つの方向から切削してゆき、断面V形状のV溝10を形成する。
【0031】
図5は、図4のように文字等の模様部分をV溝10に形成した金型2を用いて作成された硬貨3を示すもので(A)は平面図、(B)は正面断面図であり、表面に文字「J」を形成した例としたものである。
【0032】
文字部分は、図4の金型2のV溝により形成されているので、その断面は2つの傾斜面11を有している。
【0033】
この文字は、側縁部から傾斜面11を有して地金から部分から浮き出ているので、平面彫刻機によって彫り込んだ金型により得られた断面凸形状のものに比較して、文字部分の表面積が増加して光の反射面が増大すると共に、浮き出た文字等の側縁部から連続して傾斜面11を有して浮き上がっていくので、凸部の立ち上がりによる影か生じないので輝きが増す。
【0034】
また、文字の傾斜面11が硬貨3の表面で種々の方向を向いているので、色々な角度で光を反射するので、図3で示した地模様と共に、より輝きが増すことになる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、この発明の硬貨の製造方法によれば、従来、平面仕上げ、鏡面仕上げ、又はナシ地仕上げのみであった硬貨の地模様に、立体的幾何学模様からなる地模様が得られ、硬貨の輝きを増し、硬貨の装飾価値あるいは遊戯価値を高めることができる。
【0036】
更に、硬貨の表面に表される文字、図形等の模様も、金型においてV溝状に形成しておけば、硬貨表面の輝きがより増すことになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の製造方法を示す正面図である。
【図2】この発明の製造方法により得られた硬貨を示す図で、(A)は平面図で(B)(C)は正面断面図である。
【図3】(A)(B)(C)はこの発明の製造方法により得られた硬貨の他の例を示す平面図である。
【図4】この発明の製造方法を示す正面図である。
【図5】この発明の製造方法により得られた硬貨の文字部分を示すもので、(A)は平面図で(B)は断面正面図である。
【図6】硬貨を製造する方法を示す正面図である。
【図7】従来の製造方法を示す正面図である。
【図8】従来の製造方法を示す正面図である。
【符号の説明】
1 プレス機
2 金型
3 硬貨
4,7 凸部
5 平面彫刻機
6 立体彫刻機
8 地模様
9 同時三軸制御NCフライス機
10 V溝
11 傾斜面
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって、
硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に、
金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を用い、
金型に対して一定のパターンで切削深さと、水平面に対する金型の切削角度と、を変えながら金型表面上を移動させ、
傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き、
これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること、及び、平面彫刻機により硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分を切削することによって、
得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後、
この金型を用いてプレスすることによって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と、この幾何学的地模様から浮き出る文字、図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。
【請求項2】
遊戯場で使用される硬貨の製造方法であって、
硬貨をプレスして表面に模様を表すための金型の表面に、
金型の厚み方向へ切削可能な同時三軸制御NCフライス機を用い、
金型に対して一定のパターンで切削深さと、水平面に対する金型の切削角度と、を変えながら金型表面上を移動させ、
傾斜面を含む特定のパターンを金型上に描き、
これを金型表面全体に繰り返すことにより繰り返し模様からなる地模様を形成すること、及び、同じく同時三軸制御NCフライス機により硬貨の表面に浮き出る文字、図形等の模様に対応する部分をV溝状に切削することによって、得られた金型の凹凸部を含む表面全体を金属製ブラシを回転させながら磨き込んだ後、
この金型を用いてプレスすることによって硬貨の表面に立体的な幾何学的地模様と、この幾何学的地模様から浮き出る文字、図形等の模様を得ることを特徴とする硬貨の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-02-15 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-05 
出願番号 特願2001-64809(P2001-64809)
審決分類 P 1 41・ 841- Y (B21J)
P 1 41・ 853- Y (B21J)
P 1 41・ 855- Y (B21J)
P 1 41・ 854- Y (B21J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金澤 俊郎  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 刈間 宏信
篠原 将之
登録日 2006-03-31 
登録番号 特許第3787502号(P3787502)
発明の名称 硬貨の製造方法  
代理人 本田 史樹  
代理人 増山 健  
代理人 増山 健  
代理人 本田 史樹  

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