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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する F24F
審判 訂正 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 訂正する F24F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F24F
管理番号 1350883
審判番号 訂正2018-390158  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-10-10 
確定日 2019-03-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3460996号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3460996号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3460996号(以下、「本件特許」という。)は、平成14年4月2日に特許出願(特願2002-99758号)したものであって、請求項1?6に係る発明について平成15年8月15日に特許権の設定登録がなされたものである。
その後、平成30年10月11日に平成30年10月10日付けの審判請求書により本件訂正審判の請求がなされ、平成30年10月30日に上申書が提出され、当審において、平成30年11月30日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、これに対し、平成30年12月28日に意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正審判の請求について
1 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を認める、との審決を求めるものである。

2 本件訂正の内容
本件訂正は、請求項1?6からなる一群の請求項に係る訂正であって、次に示す訂正事項を含むものである(なお、下線は、訂正箇所を示す。)。

[訂正事項]
特許請求の範囲の請求項1に、
「排気ダクトに接続された吸気部がその吸引端を加熱調理部付きテーブルの加熱調理部に上方から臨ませ、この吸引端を介して吸引することにより、前記加熱調理部に対する排気を前記加熱調理部付きテーブルごとになせるようにされている、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置において、
前記吸気部がパイプで形成され、かつ前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、さらにこの吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズよりも小さくされ、そしてこの吸引端は、前記加熱調理部から立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされていることを特徴とする」と記載されているのを、
「天井の排気ダクトに接続された吸気部がその吸引端を加熱調理部付きテーブルの焼き網を備えた焼肉用の炭火コンロ又はガスコンロからなる加熱調理部に上方から臨ませ、この吸引端を介して吸引することにより、前記加熱調理部に対する排気を前記加熱調理部付きテーブルごとになせるようにされている、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置において、
前記吸気部がパイプで形成され、かつ前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、さらにこの吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズよりも小さくされ、そしてこの吸引端は、前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされていることを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項1、2を引用する請求項3、請求項3を引用する請求項4、請求項4を引用する請求項5、請求項5を引用する請求項6も同様に訂正する。)。

第3 訂正拒絶理由の概要
平成30年11月30日付けで通知した訂正拒絶理由は、概ね以下のとおりである。
訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、本件訂正後の請求項1?6に係る発明(以下、「訂正発明1」?「訂正発明6」という。)は、次の(1)及び(2)のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができず、特許法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件訂正を認めることはできない。
(1)特許法第36条第6項第2号(明確性)について
訂正後の請求項1の「前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、」という記載が、不明確である。
したがって、訂正発明1?6が明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、訂正発明1?6は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(2)特許法第29条第2項(進歩性)について
訂正発明1は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
・引用文献1:韓国登録実用新案第20-0246475号公報
・引用文献2:実願昭54-044816号(実開昭55-144927号)のマイクロフィルム

第4 当審の判断
1 訂正の目的について
「排気ダクト」については、「天井の」として設置位置を限定したものである。
「加熱調理部」については、「又は」に続く記載が「ガスコンロ」のみであるが、当該訂正事項とともに「前記焼き網を通過して」と熱気流の立ち上がりについて限定する記載からみて、「又は」を用いる事項については、「焼き網を備えた焼肉用の炭火コンロ」「又は」「焼き網を備えた焼肉用のガスコンロ」とする記載であると認められるから、当該訂正事項は、加熱調理部をより具体化して限定するものである。
したがって、訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

2 特許請求の範囲の実質的な拡張又は変更について
上記1で述べたとおり、訂正事項は、「排気ダクト」の設置位置を限定するとともに、「前記焼き網を通過して」と熱気流の立ち上がりについて限定し、さらに、「加熱調理部」をより具体化して限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、訂正事項は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 新規事項の追加について
訂正事項は、「排気ダクト」の設置位置を限定する「天井の」という事項に関し、本件特許の願書に添付した明細書(旧法適用の出願により特許請求の範囲を含む)又は図面(以下、「本件特許の明細書等」という。)における明細書の段落【0016】の「・・・図1に見られるように本発明による排気装置は、従来の排気装置と同様、排気用の送風機1と、この送風機1に接続され、天井Sの裏を通される排気ダクト2を含む。」との記載並びに図1及び2の記載に基づいており、また、「加熱調理部」をより具体化する「焼き網を備えた焼肉用の炭火コンロ又はガスコンロからなる」という事項に関し、明細書の段落【0001】の「・・・本発明は、例えば炭火コンロやガスコンロなどのような加熱調理部が取り付けられている加熱調理部付きテーブルに対して個別に排気をなすための排気装置に関する。」との記載、段落【0002】の「・・・加熱調理部付きテーブルに対する個別排気のための排気装置は、加熱調理部付きテーブルが据えられている焼肉店などの飲食店に設置されるのが一般的である。」との記載、段落【0019】の「・・・図の例では、加熱調理部Kが炭火コンロであり、この炭火コンロKの焼き網Mの径サイズW・・・」との記載並びに図2の記載に基づいており、さらに、熱気流を限定する「前記焼き網を通過して」という事項に関し、段落【0019】の 「・・・図2に示すように、加熱調理部Kからはローソクの炎のようなパターンで熱気流Hが立ち昇っており、・・・図の例では、加熱調理部Kが炭火コンロであり、この炭火コンロKの焼き網M・・・」との記載及び図2の記載に基づいているから、本件特許の明細書等の記載の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

4 独立特許要件について
本件訂正の目的は上記1のとおりであるから、本件訂正後の請求項1?6に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第126条第7項の規定に適合するか)について検討を要するところ、本件特許に関し、東京地方裁判所の侵害訴訟事件(平成29年(ワ)第39602号)において特許無効の抗弁がされ、審判請求人より平成30年10月30日(差出日:平成30年10月29日)に特許無効の抗弁に関する上申書が提出されたので、その内容も含め、以下検討する。

(1)本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
そして、本件訂正後の請求項1?6に係る発明を、以下、それぞれ順に「訂正発明1」?「訂正発明6」という。
「 【請求項1】 天井の排気ダクトに接続された吸気部がその吸引端を加熱調理部付きテーブルの焼き網を備えた焼肉用の炭火コンロ又はガスコンロからなる加熱調理部に上方から臨ませ、この吸引端を介して吸引することにより、前記加熱調理部に対する排気を前記加熱調理部付きテーブルごとになせるようにされている、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置において、
前記吸気部がパイプで形成され、かつ前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、さらにこの吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズよりも小さくされ、そしてこの吸引端は、前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされていることを特徴とする加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項2】 前記吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズの1/3以下とされている請求項1に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項3】 前記吸気部がその吸引端を上下動させるように形成されている請求項1または請求項2に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項4】 前記吸気部は、径の異なるパイプを継ぎ合わせることで伸縮できるように形成され、この伸縮により吸引端の上下動をなせるようにされている請求項3に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項5】 下側のパイプの径よりも上側のパイプの径が太くなるようにされている請求項4に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項6】 前記吸気部は、最下段のパイプに接続のワイヤを巻き上げることで前記最下段のパイプが次段のパイプに入り込むように上昇させられ、そしてこの上昇に伴って前記最下段のパイプに設けてあるストッパ部が次段のパイプの下端に当接して当該次段のパイプをその上のパイプに入り込ませるように上昇させるという各パイプの順次的上昇により、伸縮における縮み動作をなすように形成されている請求項5に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。」

(2)特許法第36条第6項第2号(明確性)について
訂正拒絶理由において、不明確であるとした、「前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、」との事項に関し、請求人は、「従って、本件明細書や図面の記載および出願経過を鑑みれば、「前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、」とは、グリース溜めなどの他の機能部の有無に関わらず、従来のように吸引端にフードや平面の遮板などの煙を集めるための機能や構造が無いという意味であって極めて明確な構成であります。」(平成30年12月28日に提出された意見書2頁25?29行)と主張しているため、以下、本件特許の明細書等の記載並びに出願経過を踏まえて検討する。

ア 本件特許の明細書等の記載について
(ア)明細書等の記載
本件特許の明細書等には以下の記載がある。なお、下線は理解の一助として当審において付したものである。
「【0002】
【従来の技術】
加熱調理部付きテーブルに対する個別排気のための排気装置は、加熱調理部付きテーブルが据えられている焼肉店などの飲食店に設置されるのが一般的である。そのような排気装置の従来における代表的な構成を簡略化して図3に示す。この排気装置は、排気用の送風機1、この送風機1に接続され、通常は天井Sの裏を通される排気ダクト2、この排気ダクト2に接続され、その吸引端3を加熱調理部付きテーブルTの加熱調理部(図示を省略)に上方から臨ませるようにして設けられる吸気部4を含んでいる。そしてその吸気部4は、いわゆるフード構造とされている。つまり吸気部4は、スカート状にして下方に向けて広がるように形成され、その吸引端3のサイズが加熱調理部のサイズよりも大きくなるようにされている。そしてその大きなサイズの吸引端3が加熱調理部付きテーブルTから所定高さ離れた上方において加熱調理部を広く覆うようにされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来の加熱調理部付きテーブル用の個別排気装置では、その吸気部がフード構造に形成されていた。これは、吸気部をフード構造にしてその吸引端のサイズを加熱調理部のサイズより大きくすることで、加熱調理部から発生する煙や熱気をより効率的に吸引・排気できるという考え方に基づくものである。しかし実際には必ずしも効率的な吸引・排気がなされておらず、周辺の空気にわずかな流れがあってもそれで吸引流が乱されて漏れのない吸引・排気をなせなくなるというのが実情である。
【0004】
フード構造の吸気部は、このように吸引・排気の効率が必ずしも高くないというだけでなく、そのサイズが大きいということに伴って以下のような問題も招いていた。その一つは、サイズの大きいフード構造の吸気部が上方から臨んでいるので、それが加熱調理部付きテーブルを囲んでの飲食の邪魔になるということである。このことは従来でも当然に考慮され、吸引端をできるだけ加熱調理部付きテーブルから離すようにしていた。しかし吸引・排気能力との関係で離せる高さは、加熱調理部付きテーブルの上面から400?500mm程度が限界であり、飲食中に圧迫感を与えたり、また会話を楽しんだりしながらの飲食の雰囲気が損なわれたりするのを避けられなかった。
【0005】
他の一つは、加熱調理部付きテーブルを設置してある部屋の空調に大きな容量を必要とし、それだけ空調コストが増加するという問題である。すなわち吸気部がサイズの大きいフード構造であるために排気風量を大きくする必要があることから室内の空気の循環量が多くなり、その結果として大きな空調容量が必要になり、空調コストの増加を招いていたということである。
【0006】
この他にも、吸気部を可動構造にする場合にその構造が大掛かりになるという問題もある。すなわち加熱調理部付きテーブルが据えてある店内の美観などのために非使用時に吸引端を引き上げておくことができるようにするべく、可動構造を吸気部に与える場合に、吸気部が重いためにその可動構造が大掛かりにならざるを得ないということである。
【0007】
本発明は、以上のような従来の加熱調理部付きテーブル用の個別排気装置における事情に鑑みてなされてものであり、従来の加熱調理部付きテーブル用の個別排気装置における上記のような問題点を解消することを目的としている。

「【0019】
下段のパイプ13は、その先端を吸引端12としており、この吸引端12のサイズ、より具体的にはその開口サイズRが加熱調理部KのサイズWより小さくなるようにされている。吸引端12の開口サイズをこのように設定したのは、図2に示すように、加熱調理部Kからはローソクの炎のようなパターンで熱気流Hが立ち昇っており、加熱調理部Kからの煙もこの熱気流Hに乗って流れる傾向にあることを利用して加熱調理部Kからの煙や熱気を効率的に吸引して排気できるようにするためである。つまり熱気流Hの上端部を包み込むように吸引端12を臨ませことで、熱気流Hを効果的に利用した吸引をなすことができ、これにより加熱調理部Kからの煙や熱気をより効率的に吸引して排気できるようにしているということである。熱気流Hの上端部を吸引端12が包み込む広さは熱気流Hの上端部の広がりよりも若干広い程度で足りる。そしてこのことを満足させる範囲においてできるだけ吸引端12の開口サイズRを小さくする。このため、吸引端12の開口サイズは加熱調理部Kのサイズの1/3以下となるのが通常である。図の例では、加熱調理部Kが炭火コンロであり、この炭火コンロKの焼き網Mの径サイズWが250mmであるのに対して開口サイズRを50mmとしおり、開口サイズを加熱調理部のサイズの1/5に設定している。」
「【0020】
先端を吸引端12とするこの下段のパイプ13には、炭火コンロKから立ち昇る油分が各パイプ13、14、15の内面に付着して垂れ落ちるのを防ぐためのグリース溜め16を先端部に設けるの通常である。このため下段のパイプ13の径は、グリース溜め16を付加する分だけ太くなることになる。」
「【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によると、加熱調理部付きテーブルに対する個別排気について従来よりも効率的な排気をなすことができる。また吸気部の吸引端のサイズをきわめて小さくすることができ、吸気部が加熱調理部付きテーブルを囲んでの飲食の邪魔になるようなことも効果的に避けることができる。また吸気部の吸引端のサイズを小さくすることで、排気のための風量を減らすことができ、空調コストの低減が可能となるとともに、吸気部の吸引端を上下動させるについて、そのための機構を簡易なもので済ませることができ、その可動化におけるコストを低減することも可能となる。」




(イ)発明の課題及び解決手段について
発明が解決しようとする課題は、従来の加熱調理部付きテーブル用の個別排気装置において、吸気部がフード構造に形成されていたことによる問題、すなわち、実際には効率的な吸気・排気がなされていないこと、フード構造はサイズが大きく飲食の邪魔になり且つ圧迫感を与えること、排気風量の大きいフード構造であるため空調コストの増大を招くことなどを解決することである(【0002】?【0006】)。
そして、このような課題の特にフード構造による問題を解決する手段は、訂正発明1の「前記吸気部がパイプで形成され、かつ前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、さらにこの吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズよりも小さくされ、」という事項であると認められ、該事項により、「【0030】【発明の効果】・・・また吸気部の吸引端のサイズをきわめて小さくすることができ、吸気部が加熱調理部付きテーブルを囲んでの飲食の邪魔になるようなことも効果的に避けることができる。また吸気部の吸引端のサイズを小さくすることで、排気のための風量を減らすことができ、空調コストの低減が可能となる」という効果を奏するといえる。
この点、上記事項の「前記吸気部がパイプで形成され、かつ前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され」とは、従来のスカート状にして下方に向けて広がるように形成されたフード構造(【0002】)を採用しない構成を意味するという点では技術的に一応明らかであるといえる。
しかし、上記事項は「のみ」という用語の存在により、文言上は、パイプの先端部開口とはいえない他の部材を排除する構成として理解されるものであるのに対し、本件の図2を参照すると、訂正発明1で特定する「吸引端のサイズ」(開口サイズR)は、パイプの先端部開口のみでなく、グリース溜め16を介するサイズとして示されているから、上記事項が技術的に明確であるかについて、本件明細書及び図面の記載を参照して検討する必要がある。

(ウ)明確性について
本件の図2を参照すると、パイプの外径及び内径を示す下段のパイプ13に対し、開口サイズRはグリース溜め16を介するため、下段のパイプ13の内径とは異なるさらに内方位置の内径寸法が開口サイズRとして示されている(各部材については【0019】参照。)。
そして、本件明細書には、「【0019】下段のパイプ13は、その先端を吸引端12としており、この吸引端12のサイズ、より具体的にはその開口サイズRが加熱調理部KのサイズWより小さくなるようにされている。」と記載されており、図2に示された「開口サイズR」は、訂正発明1の「吸引端のサイズ」を意味するものと認められる。そうすると、訂正発明1の「サイズ」を規定する「吸引端」は、グリース溜め16の存在により下段のパイプ13の内径とは異なるさらに内方に位置するものとなるから、「吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され」ているとは直ちにいえない態様となっている。
他方、本件明細書には次の事項が記載されている。
「【0020】先端を吸引端12とするこの下段のパイプ13には、炭火コンロKから立ち昇る油分が各パイプ13、14、15の内面に付着して垂れ落ちるのを防ぐためのグリース溜め16を先端部に設けるの通常である。このため下段のパイプ13の径は、グリース溜め16を付加する分だけ太くなることになる。・・・したがってこの例におけるパイプ13の径は、吸引端12の開口径50mmにグリース溜め16の幅15mmを加えた80mm程度となる。」
上記記載から、グリース溜め16を設ける態様は、グリース溜め16を付加する分だけ下段のパイプ13の径が太くなり、パイプの内径寸法すなわち開口サイズRを維持しつつパイプの外径寸法を大きくすることであり、これはパイプが肉厚になったものと技術的に解することができる。そうすると、グリース溜め16を設ける態様は、パイプのみからなる構成に含まれるものと解される。
以上から、訂正発明1の「前記吸気部がパイプで形成され、かつ前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、」は、技術的に明確なものといえる。

したがって、訂正発明1?6は明確である。

イ まとめ
以上のとおり、訂正発明1?6は明確であるといえるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、訂正発明1?6は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできない。

(3)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 引用文献について
(ア)引用文献1
a 引用文献1の記載
本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物である韓国登録実用新案第20-0246475号公報(以下、「引用文献1」という。平成30年10月30日提出の上申書に添付された被告第1準備書面の29頁で示された乙第2号証)には、図面とともに次の記載がある。なお、翻訳文は乙第2号証(訳文)を基にしており、翻訳文の下線は理解の一助として当審において付したものである。



・・・(省略)・・・

」(1頁?7頁)

<翻訳文>
「要約
・・・
明細書
・・・
考案の詳細な説明
考案の目的
考案が属する技術及びその分野の従来技術
本考案は、飲食店設備のうちテーブルで肉を焼く時に発生する煙を周辺の空気と共に吸入してこれを排気ダクトで排出させるようにした飲食店設備用排気フード装置に関するものである。
一般的に飲食店、特に肉を焼いて食べることができる飲食店ではテーブルごとに肉を焼くことができる火床が備えられているが、前記テーブルの火床を利用して肉を焼く時は肉が熱によって火が通るので、この過程で動物性油が含有された煙が発生する。
よって、前記のように肉を焼く過程で発生した煙を外部に迅速に排出させることができなければ、この煙が飲食店内にそのまま広がるようになるため室内の空気を汚染させ客に不快感を与えるようになることにより、焼くための肉を売る大部分の飲食店では肉を焼く過程で発生する煙を周辺の空気と共に外部に迅速に排出させ、室内の環境を澄んできれいに維持させるための排気設備システムを備えているが、前記排気設備システムは飲食店内の天井部に固定され室内と室外を連通する排気ダクト(1)と、前記排気ダクト内の適所に設置されて吸入力を発生させる吸入ファン(図示は省略する)と、前記排気ダクト(1)に垂直方向に設置されてテーブル(2)の火床(3)に載せられた焼き板(4)で肉を焼く時に肉が焼かれることによって発生する煙を吸入ファンの回転による吸入力によって周辺空気と共に吸入した後、これを排気ダクト(1)で排出させる排気フード装置からなっている。
従来の飲食店設備用排気フード装置は、添付された図1乃至図2のように垂直状態で固定管(11)があり、前記固定管の上部には固定管(11)を天頂の排気ダクト(1)に固定させることができるように固定ブラケット(12)が固定されており、前記固定管(11)の下部には縮めたり伸ばしたりすることのできるベローズ管(13)が固定されており、前記ベローズ管の下部には下方にいくにつれて直径が広くなる上狭下広形状の吸入管(14)が固定されており、前記固定管(11)の周面適所には電源が供給され選択的に正、逆駆動力を発生させるモータ(15)が固定されており、前記モータには固定管(11)内に位置された状態でプーリ(16)が軸結合されており、前記プーリには巻かれることが可能なようにワイヤ(17)の一端が固定されると共に前記ワイヤの他端は固定ピン(18)によってベローズ管(13)の下部内径部に固定されている構造である。
・・・
上記の図2aのような状態で客がテーブル(2)周囲に座って火床(3)に載せられた焼き板(4)上に肉を置いて焼くようになる場合には、前記肉を焼く過程で発生した煙が室内に広く広がる前にこれを直ちに吸入して外部に排出させる排気過程を遂行しなければならないが、この時には固定管(11)の下部に固定された状態で畳まれているベローズ管(13)を広げて前記ベローズ管の下部に固定された吸入管(14)が可及的テーブル(2)の火床(3)の方に近接されるようにしなければならない。
・・・
このように固定管(11)に固定されたベローズ管(13)が広げられ前記ベローズ管に固定された吸入管(14)がテーブル(1)の火床(3)と近接状態にあるようになると、飲食店内の天井面に固定されている排気ダクト(1)内の吸入ファン(図示は省略する)が作動していることを勘案する時、室内の空気が吸入管 (14)内に吸入されるので肉を焼く過程で発生した煙も前記空気と混ざりながら吸入管(14)内に吸入され、前記吸入管内に吸入された空気と煙は継続してベローズ管(13)と固定管(11)を連続的に経て排気ダクト(1)に入った後、前記排気ダクトを通じて室外に抜け出るようになるので結局肉を焼く過程で発生した煙が室内で広がらず大部分室外に抜け出るようになって室内の環境が快適な状態に造成される。
・・・
しかし、従来このような飲食店設備用排気フード装置は・・・次のような様々な問題点も抱えている。
・・・
第三、固定管(11)に固定されたモータ(15)の相当部分が排出される空気及び煙の移動通路である前記固定管(11)の内部に位置しているので、前記空気及び煙には肉を焼く過程で生成された動物性油と炭が焦げながら生成された灰(ash)などの異物質が混合していることを勘案する際、前記異物質がモータ(15)に付くようになるしかなく、前記モータが頻繁に故障するようになり、モータ(15)が故障する場合には使用をすることができなくなる。
第四、使用する過程では動物性油及び灰のような異物質が固定管(11)、ベローズ管(13)、吸入管(14)の内径部に付くようになるので、これを除去するために棒雑巾で前記固定管(11)、ベローズ管(13)、吸入管(14)の内径部を随時清掃しているが、その都度、モータ(15)、プーリ(16)、ワイヤ (17)などが干渉を起こすようになって円滑な清掃がなされることができないでいる。
第五、固定管(11)、ベローズ管(13)、吸入管(14)の内径部に付いている各種異物質(動物性油、灰など)がもし下方に落ちる場合、これを受ける構造を有していないので客が肉を焼く過程で汚い異物質が肉に落ちる場合が度々発生して客に不快感を抱かせている。
考案が成そうとする技術的課題
本考案は、上記の従来の様々な問題点を解決するために案出したものであって、固定管に垂直方向に移動されるように延長管を設置して前記延長管を手動的に上、下移動させることによって吸入管の高低位置が調節されるようにすることにその目的がある。
また本考案の他の目的は、吸入管の下部に異物質受け管を分離可能に設置して使用過程で下方に落ちる各種異物質がテーブルの火床の方へ落ちず、前記異物質受け管にたまるようにすることにある。
考案の構成及び作用
前記目的を達成するための本考案形態は、複数個の管で連結構成されて飲食店内の排気ダクトに垂直状態に固定されることができる固定管と、前記固定管の内径部に上、下に移動可能に嵌められた延長管と、前記延長管が移動された状態で特定位置に止まるようにする延長管停止手段と、前記延長管を延長管停止手段によって停止させなかった場合、重力方向に抜け出さないようにする延長管引っ掛かり手段と、前記延長管の下部に固定されて使用時に空気及び煙が最初に吸入されることができる上狭下広形状の吸入管からなる飲食店設備用排気フード装置が提供される。
以下、本考案を実施例で図示した添付の図3乃至図5を参考にして更に詳しく説明すると次のとおりである。
添付された図3は本考案の飲食店設備用排気フード装置を示した分解斜視図であり。図4a及び4bは本考案の飲食店設備用排気フード装置が飲食店内に設置された状態を示した縦断面であり、図5は図4aの「A」部分拡大図であって、本考案の実施例は複数個の管が垂直状態で連結されている固定管(101)があり、前記固定管の上部には固定管(101)を天頂の排気ダクト(1)に固定させることができるように固定ブラケット(102)が固定され、前記固定管(101)の下部には上、下に移動可能に延長管(103)が嵌められ、前記延長管は上、下に移動された状態で特定位置に止まるように延長管停止手段によって停止され、前記延長管(103)は延長管停止手段によって停止されなかった場合、固定管(101)から重力方向に抜け出さないようにする延長管引っ掛かり手段が具備され、前記延長管(103)の下部には使用時に空気及び煙が最初に吸入されることができるように上狭下広形状の吸入管(104)が分離可能に結合される。
・・・
一方、吸入管(104)の下部にはその下端周が内径部の方に折曲されるように異物質受け溝(111a)を有する異物質受け管(111)が分離可能な状態で結合される。
・・・
このように構成された本考案の排気フード装置は、飲食店内の天井面に固定された排気ダクト(1)に固定管(101)の上端を固定ブラケット(102)で固定することで図4のように設置が完了するが、前記固定管(101)の上端が排気ダクト(1)に固定された状態では前記排気ダクトの内部と固定管(101)の内部が互いに連通された状態にあるようになることは理解可能である。
・・・
上記の図4aのような状態で客がテーブル(2)周囲に座って火床(3)に載せられた焼き板(4)上に肉を置いて焼くようになる場合には、前記肉を焼く過程で発生した煙が室内に広く広がる前にこれを周辺空気と共に直ちに吸入して外部に排出させる排気過程を遂行しなければならないが、この時には上方に移動されている延長管(103)を下方に移動させ、前記延長管の下部に固定された吸入管(104)が可及的テーブル(2)の火床(3)の方に近接されるようにしなければならない。
・・・
一方、本考案の装置を図4のように設置した後に肉を焼く過程では、後述するところのように肉を焼く時に発生した煙が周辺の空気と共に吸入管(104)に最初に吸入された後、延長管(103)と固定管(101)を連続的に通じて排気ダクト(1)に抜け出るので、この過程で前記煙及び空気に含まれた各種異物質(動物性油、灰など)が延長管(103)及び吸入管(104)の内径部に大部分くっ付いてまた下方に落ちるようになるが、前記直下方に落ちる各種異物質は前記吸入管(104)の下部に分離可能な状態で結合されている異物質受け管(111)の異物質受け溝(111a)に落ちてたまるようになるので、結局油や灰のような各種異物質が直下方に落ちてもテーブル(2)の火床(3)の方には落ちなくなることは理解可能である。
前記で下方に落ちる各種異物質を受ける異物質受け管(111)は既に説明されたところのように吸入管(104)の下部に分離可能な状態に結合されているので、前記異物質受け管(111)の異物質受け溝(111a)にたまっている油や灰を捨てようとする場合には吸入管(104)から異物質受け管(111)を分離した後に捨てればよく、以後また吸入管(104)に結合させて使用すればよいが、前記異物質受け管(111)を吸入管(104)に結合させる時は前記異物質受け管(111)の吸入管(104)との結合部分である上部内側周に形成された各突起(113)が一旦前記吸入管(104)のうち異物質受け管(111)との結合部分である下部外側周面に形成された各凹溝(112)の垂直部(112a)直下方に近接されるようにした後、前記異物質受け管(111)を上方に押しつつ図面上の右側に回せばよく、この場合、異物質受け管(111)に形成された各突起(113)が吸入管(104)に形成された凹溝(112)の垂直部(112a)を経て水平部(112b)に案内されるので結局異物質受け管(111)が吸入管(104)に分離可能な状態にまた結合されるのである。
このように延長管(103)に固定された吸入管(104)がテーブル(1)の火床(3)と近接状態にあるようになると、飲食店内の天井面に固定されている排気ダクト(1)内の吸入ファン(図示は省略する)が作動していることを勘案する際、室内の空気が吸入管(104)内に吸入されるので肉を焼く過程で発生した煙も前記空気と混ざりながら吸入管(104)内に吸入され、前記吸入管内に吸入された空気と煙は継続して延長管(103)と固定管(101)を連続的に経て排気ダクト(1)に入って行った後、前記排気ダクトを通じて室外に抜け出るようになるので結局肉を焼く過程で発生した煙が室内に広がらず大部分室外に抜け出るようになって室内の環境が快適な状態に造成される。
また、図4bのような状態で肉を焼くことが完了してからは、下部に移動されていた延長管(103)をまた上方に移動させ図4aのようになるようにしなければならないが、これに対する説明は具体化せずとも十分に理解可能であろうと考えられ省略することとする。
以上で検討したところのような本考案の実施例の構成要素において、固定管(101)は複数個の菅が垂直状態に連結されているが、その中で真ん中にある管の形状が略卵を横に寝かせたような形状をなしていることは、単純に意匠的な審美感を高めようとしたものであるので大きな意味はない。
・・・
請求の範囲
請求項1
複数個の管で連結構成されて飲食店内の排気ダクトに垂直状態に固定されることができる固定管と、
前記固定管の内径部に上、下に移動可能に嵌められた延長管と、
前記延長管が移動された状態で特定位置に止まるようにする延長管停止手段と、
前記延長管を延長管停止手段によって停止させなかった場合、重力方向に抜け出ないようにする延長管引っ掛かり手段と、
前記延長管の下部に固定されて使用時に空気及び煙が最初に吸入されることができる上狭下広形状の吸入管からなることを特徴とする飲食店設備用排気フード装置。
・・・
請求項4
請求項1において、
吸入管の下部にその下端周が内径部の方に折曲された状態で異物質受け溝を有する異物質受け管が分離可能に結合されたことを特徴とする飲食店設備用排気フード装置。
請求項5
請求項4において、
吸入管の異物質受け管との結合部分である下部外側周面に下端からから上部につながるように垂直部と水平部を一体で有する凹溝が複数個形成され、前記異物質受け管の吸入管との結合部分である上部内側周には前記凹溝の個数と同様の突起が形成されて前記突起が凹溝の垂直部を通じて水平部に嵌められていることによって前記異物質受け管が吸入管に分離可能に結合されたことを特徴とする飲食店設備用排気フード装置。」



」(図3)



」(図4a)



」(図4b)



」(図5)

b 上記a及び図面の記載から分かること
上記a及び図3?5の記載によれば、吸入管104の下部に結合された異物質受け管111において、その下端周が内径部の方に折曲されるように異物質受け溝111aを有するところ、異物質受け管の内径部の方に折曲された下端周により吸引用の開口が形成されることは明らかである。
そして、図3?5の記載において、異物質受け管の内径部の方に折曲された下端周により形成された開口の径サイズと火床3の水平方向のサイズとの関係に着目すると、異物質受け管の内径部の方に折曲された下端周により形成された開口の径サイズが、火床3の水平方向のサイズよりも小さくされていることが分かる。特に、このサイズの大小関係は、図2a及び図2bにおける火床3と同等の大きさの上狭下広形状の吸入管14を採用しないものとしたことによっても示唆されているといえる。

c 引用発明
上記a及びbを総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「飲食店内の天井に固定された排気ダクト1に垂直状態で固定されることができる固定管101と、前記固定管101の内径部に上、下に移動可能に嵌められた延長管103と、前記延長管103が移動された状態で特定位置に止まるようにする延長管停止手段と、前記延長管103を延長管停止手段によって停止させなかった場合、重力方向に抜け出さないようにする延長管引っ掛かり手段と、前記延長管103の下部に固定されて使用時に空気及び煙が最初に吸入される上狭下広形状の吸入管104と、前記吸入管104の下部に分離可能に結合され、下端周が内径部の方に折曲された状態の異物質受け溝111aを有するとともに、前記下端周により形成された開口を有する異物質受け管111とからなり、客がテーブル2周囲に座って火床3に載せられた焼き板4上に肉を置いて焼く場合には、上方に移動されている前記延長管103を下方に移動させ、前記延長管103の下部に固定された前記吸入管104が前記テーブル2の前記火床3の方に近接され、前記肉を焼く過程で発生した煙が室内に広く広がる前にこれを周辺空気と共に直ちに吸入して外部に排出させる排気過程を遂行するようにされている、飲食店設備用排気フード装置において、
前記異物質受け管の内径部の方に折曲された下端周により形成された開口の径サイズが前記火床3の水平方向のサイズよりも小さくされている飲食店設備用排気フード装置。」

(イ)引用文献2
a 引用文献2の記載
本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物である実願昭54-044816号(実開昭55-144927号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。平成30年10月30日提出の上申書に添付された原告第1準備書面の4頁で示された甲第11号証)には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は理解の一助として当審において付したものである。

「2.実用新案登録請求の範囲
焼肉用ガスコンロの上部に設置する排煙吸引装置において、ドーナツ形の遮板(8)をコンロの網(4)に比較的近い距離の上部に設置し、遮板(8)の中央上部に連続してダクト(9)があり、コンロに載せた網(4)の径A、網(4)上面と遮板(8)の下面との距離H、遮板(8)の外径B、ダクト(9)の半径Cとの関係が、B=0.3?0.6A、C=0.2?0.3A、H=0.3?0.6Aにある事を特徴とする焼肉用上部排煙式ガスコンロの排煙装置。
3.考案の詳細な説明
本考案は、焼肉用上部排煙式ガスコンロの排煙装置に関するものである。
従来の焼肉用ガスコンロの排煙には、第1図に示す如きものが使用されている。ガスコンロは、テーブル1に嵌め込まれた外函2と、その内部に設置されたガスバーナー3とからなり、外函2の上部に肉5を置く網4を載せ、バーナー3を点火して肉5を焼く。この場合肉5より脂分およびたれが焔11上に落ち、大量の煙が発生する。この煙を排出する為に、コンロの上部に距離を隔てて排煙フード6を設置し、煙を捕捉して排出している。このフードは従来は、網上面より1m以上の距離を隔てて設置される。この場合、網の径a、フード径b、網上面とフード下面との距離hとの間には次の如き関係を必要とする。
b=a+0.25h・・・・・・(1)
従ってhを1mの位置に設置すると、フード径bは網径aより250mm大きくしなければならない。
この様に大きなフードを使用すると、煙以外に大量の暖冷房された室内空気を吸込むので、室内の暖冷房の容量を大きくしなければならない。
また、フードが大きく、食事者の頭上にあるので、フード内面に凝結した脂分が落下するため、食事者に不快感を与える事がある。更にフイルター7が大きいので、その掃除の手間がかかる。
さらにフードが大きいので、その設備費が大きく、吸込排気量が大きいので、フアンの容量も大きくしなければならない
本考案はこれらの欠点を解消する為に、排煙装置を小型化して排煙効果を増大し、設備コストを減少させることを目的としたものである。
本考案の一実施例を、第2図を用いて説明する。
ガスコンロは、テーブル1に嵌め込まれた外函2、ガスバーナー3、とからなり外函2の上に肉5を置く網4を載せバーナーに点火して焼く。こ丶に於てドーナツ形の遮板8は網4の上面より、比較的近い距離に位置する様に設置する。従来はフード6が、円錘又は角錘が必要であったが、本考案ではフードに替えて平面の遮板8を用いる。
本考案に於ては、網4の径A、網4の上面と遮板8の下面との距離H、遮板8の外径Bの大きさの関係は、考案者の実験結果より次の関係のものがよい結果を得ている。
B=0.3?0.6A・・・・・(2)
H=0.3?0.6A・・・・・(3)
実施した排煙装置の大きさの一例を示すと、次の寸法のものが良結果を得ている。
網4の径A=220mm、網4の上面と遮板8との距離H=120mm、遮板8の径B=120mm、である。
遮板8の中央に内挿される排煙ダクト9の径Cは、濃厚な排煙を吸引するので、径が小さくてすみ、網4の径Aとの関係は
C=0.2?0.3A・・・・・(4)
が、実験的に好結果を得ている。
またダクト9の径Cが小さいので、ダンパー10の取付けが簡単で、排煙の調節が容易に出来る。それと同時にフィルター7も小さく取外しが容易で、掃除の手間も少なくなる。
本考案によれば、次の如き効果がある。
(1) 遮板8、ダクト9が小さく、遮板8は平板であるので、排煙装置が小型で製作費が少なくてよい。
(2) 発生した煙を直ちに吸引するので、室内の暖冷房された空気の排出が極めて少なく、室内の暖冷房費を節約出来る。
(3) 網4と遮板8との距離が少ないので、渦流による空気の乱れがなく、室内に煙が立ちこめる事がない。
(4) 遮板8の位置が低いので、脂が人の上に落ちて食事者の不快感を与える事がない。
(5) 焼肉5に近い位置に遮板8があるので、加熱効果がよく、燃料ガスを節約出来る。」(明細書1頁4行?5頁8行)

b 引用文献2に記載された技術
上記a及び図2の記載によれば、引用文献2には、次の事項からなる技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認める。
「焼肉用上部排煙式ガスコンロの排煙装置において、テーブル1に嵌め込まれた外函2、ガスバーナー3、とからなり外函2の上に肉5を置く網4を載せたガスコンロで、ガスバーナー3に点火して肉5を焼く場合に発生する煙を、排煙ダクト9により上方から吸引する技術。」

イ 訂正発明1について
(ア)対比
訂正発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明における「飲食店内の天井に固定された排気ダクト1」は、訂正発明1における「天井の排気ダクト」に相当する。
また、引用発明における「テーブル2」は、引用文献1の図2a、図2b、図4a及び図4bに記載されているように火床3が一体となっているから、訂正発明1における「加熱調理部付きテーブル」に相当する。

・引用発明における「排気ダクト1に垂直状態で固定されることができる固定管101と、前記固定管101の内径部に上、下に移動可能に嵌められた延長管103と、前記延長管103が移動された状態で特定位置に止まるようにする延長管停止手段と、前記延長管103を延長管停止手段によって停止させなかった場合、重力方向に抜け出さないようにする延長管引っ掛かり手段と、前記延長管103の下部に固定されて使用時に空気及び煙が最初に吸入される上狭下広形状の吸入管104と、前記吸入管104の下部に分離可能に結合され、下端周が内径部の方に折曲された状態の異物質受け溝111aを有するとともに、前記下端周により形成された開口を有する異物質受け管111」は、「肉を焼く過程で発生した煙が室内に広く広がる前にこれを周辺空気と共に直ちに吸入して外部に排出させる」ための管部材を含むものであるから、訂正発明1における「吸気部」及び「吸気部がパイプで形成され」に相当する。

・引用発明の異物質受け管111は、異物質受け溝111a以外のものを備えていないのであるから、引用発明の「異物質受け管111」の「下端周により形成された開口」は、訂正発明1の「前記パイプの先端部開口のみで形成され」た「前記吸引端」に相当する。

・引用発明における「火床3」は、訂正発明1における「炭火コンロ又はガスコンロ」と、「加熱調理部」であることで技術が共通し、またその限りにおいて一致すると認められるから、以下これを前提に両者の相当関係を整理すると次のとおりである。

・引用発明における「客がテーブル2周囲に座って火床3に載せられた焼き板4上に肉を置いて焼く場合には、上方に移動されている前記延長管103を下方に移動させ、前記延長管103の下部に固定された前記吸入管104が前記テーブル2の前記火床3の方に近接され、前記肉を焼く過程で発生した煙が室内に広く広がる前にこれを周辺空気と共に直ちに吸入して外部に排出させる排気過程を遂行するようにされている」は、それにより「異物質受け管111」の「下端周により形成された開口」が上方から下方に移動して「テーブル2の火床3の方に近接され」るのであるから、訂正発明1の「吸気部がその吸引端を加熱調理部付きテーブルの」「焼肉用の」「加熱調理部に上方から臨ませ、この吸引端を介して吸引することにより、前記加熱調理部に対する排気を前記加熱調理部付きテーブルごとになせるようにされている」に相当する。

・引用発明における「飲食店設備用排気フード装置」は、火床3を備えたテーブル2に対して個別に排気をするものであるから、訂正発明1における「加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置」に、相当する。

・引用発明における「前記異物質受け管の内径部の方に折曲された下端周により形成された開口の径サイズ」は、訂正発明1における「この吸引端のサイズ」に相当する。
また、引用発明における「前記火床3の水平方向のサイズ」は、訂正発明1における「前記加熱調理部のサイズ」に相当する。
そうすると、引用発明における「前記異物質受け管の内径部の方に折曲された下端周により形成された開口の径サイズが前記火床3の水平方向のサイズよりも小さくされている」は、訂正発明1における「この吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズよりも小さくされ」に相当する。

したがって、両者は、
「天井の排気ダクトに接続された吸気部がその吸引端を加熱調理部付きテーブルの焼肉用の加熱調理部に上方から臨ませ、この吸引端を介して吸引することにより、前記加熱調理部に対する排気を前記加熱調理部付きテーブルごとになせるようにされている、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置において、
前記吸気部がパイプで形成され、かつ前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、さらにこの吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズよりも小さくされている加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

・相違点
訂正発明1においては、加熱調理部が、「焼き網を備えた」「炭火コンロ又はガスコンロからなる加熱調理部」であり、「この吸引端は、前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされている」のに対して、引用発明においては、加熱調理部が、「焼き板4」が「載せられた」「火床3」であり、熱気流の態様に対応した「異物質受け管111」の「下端周に形成された開口」の高さ位置の特定を有していない点。

(イ)判断
引用文献2に記載された技術に例示されるように、加熱調理部として、焼き網を備えたガスコンロを用いることは、本件特許の出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。
また、焼肉に用いる火床として、焼き網を備えた炭火コンロを用いることも、本件特許の出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である。
さらに、飲食店の加熱調理部を設置したテーブルとして、焼き網を備えたコンロを用いることは、本件特許の出願前に普通に採用されることである(以下、「慣用手段」という。)。
しかし、引用文献1において、火床3に載せられた「焼き板4」が、スリット等の熱気流を通過させる構成を有しているとの記載ないし示唆はないから、加熱調理部から立ち上がる熱気流は、焼き板4を通過することなく、焼き板4の周囲に沿うものとなる。
そうすると、引用発明は、相違点に係る訂正発明1の構成である「この吸引端は、前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされている」の特に「焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むこと」を想定して、「下端周に形成された開口」の高さを設定するものではない。
他方、焼き網を用いる引用文献2についても、「焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むこと」を想定した煙を吸引する開口の高さとするものではない。
特に、引用文献2には、訂正発明1の吸引端の高さに対応する寸法として、「網4の上面と遮板8との距離H=120mm」と記載されている(明細書4頁3?4行)。これに対し、訂正発明1は、該高さについて、「【0024】・・・吸引端12の加熱調理部付きテーブルTに対する高さ位置は、上述したように、熱気流Hの上端部を吸引端12が包み込む状態になる高さ位置であり、加熱調理部Kが炭火コンロである場合であれば、150?200mm程度となるのが通常である」と記載されており、引用文献2の上記120mmは、訂正発明1の該高さの下限値に近い値であるものの想定される寸法の範囲外である。その上、引用文献2の排気ダクトに煙を吸引する開口を備える「遮板8」は、「フードに替え」て設けられる「ドーナツ形」の「平板」であり(明細書3頁11?14行)、訂正発明1の従来技術に相当する技術であるから、上記下限値に近い寸法に基づき、焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部の包み込みを想定し、煙を吸引する開口の高さを設定するものとして、引用文献2に記載された技術を理解することはできない。
さらに、焼き網に係る周知技術1及び2並びに慣用手段を引用発明に用いるとしても、「焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むこと」を想定して、「下端周に形成された開口」の高さを設定する技術的事項を直ちに導き出せるとはいえない。
そして、訂正発明1は、「加熱調理部付きテーブルに対する個別排気について従来よりも効率的な排気をなすことができる。また吸気部の吸引端のサイズをきわめて小さくすることができ、吸気部が加熱調理部付きテーブルを囲んでの飲食の邪魔になるようなことも効果的に避けることができる。また吸気部の吸引端のサイズを小さくすることで、排気のための風量を減らすことができ、空調コストの低減が可能となる」(【0030】)という所期の効果を奏するものである。
したがって、訂正発明1は、引用発明、引用文献2に記載された技術、周知技術1、周知技術2及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 訂正発明2?6について
訂正発明2?6は、訂正発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、他の発明特定事項の検討を要するまでもなく、訂正発明1についての判断と同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載された技術、周知技術1、周知技術2及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、訂正発明1?6は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできない。

(4)小括
上記(2)及び(3)によれば、訂正事項は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項?第7項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井の排気ダクトに接続された吸気部がその吸引端を加熱調理部付きテーブルの焼き網を備えた焼肉用の炭火コンロ又はガスコンロからなる加熱調理部に上方から臨ませ、この吸引端を介して吸引することにより、前記加熱調理部に対する排気を前記加熱調理部付きテーブルごとになせるようにされている、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置において、
前記吸気部がパイプで形成され、かつ前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され、さらにこの吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズよりも小さくされ、そしてこの吸引端は、前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされていることを特徴とする加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項2】
前記吸引端のサイズが前記加熱調理部のサイズの1/3以下とされている請求項1に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項3】
前記吸気部がその吸引端を上下動させるように形成されている請求項1または請求項2に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項4】
前記吸気部は、径の異なるパイプを継ぎ合わせることで伸縮できるように形成され、この伸縮により吸引端の上下動をなせるようにされている請求項3に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項5】
下側のパイプの径よりも上側のパイプの径が太くなるようにされている請求項4に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
【請求項6】
前記吸気部は、最下段のパイプに接続のワイヤを巻き上げることで前記最下段のパイプが次段のパイプに入り込むように上昇させられ、そしてこの上昇に伴って前記最下段のパイプに設けてあるストッパ部が次段のパイプの下端に当接して当該次段のパイプをその上のパイプに入り込ませるように上昇させるという各パイプの順次的上昇により、伸縮における縮み動作をなすように形成されている請求項5に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-03-06 
結審通知日 2019-03-08 
審決日 2019-03-19 
出願番号 特願2002-99758(P2002-99758)
審決分類 P 1 41・ 121- Y (F24F)
P 1 41・ 856- Y (F24F)
P 1 41・ 537- Y (F24F)
最終処分 成立  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 槙原 進
宮崎 賢司
登録日 2003-08-15 
登録番号 特許第3460996号(P3460996)
発明の名称 加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置  
代理人 木船 英雄  
代理人 木船 英雄  
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