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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1350936
審判番号 不服2018-9093  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-02 
確定日 2019-04-18 
事件の表示 特願2016-240741号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月21日出願公開、特開2018-94033号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月12日の出願であって、平成29年10月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月21日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年3月26日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に補正前の請求項3を削除する手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年12月21日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明は以下のとおりのものである。なお、A?Hは本願発明の構成を分説するため当審で付した。

「【請求項1】
A 遊技球が入球可能な所定の入賞口を開放する特別遊技を実行するか否かの判定を行う判定手段と、
B 前記判定手段によって前記特別遊技を実行すると判定された場合に、前記特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
C 前記特別遊技が実行された後に、遊技者に有利な特定遊技状態または前記特定遊技状態よりも遊技者に不利な非特定遊技状態にすることが可能な遊技状態制御手段と、
D 所定の演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
E 前記演出実行手段は、前記特定遊技状態になっているときにおいて前記特別遊技が実行される際に、前記所定の入賞口への遊技球の発射を促す発射演出を実行可能であり、
F 前記発射演出は、前記特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出と、少なくとも当該特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出と、を含み、
G 前記第1発射演出は、前記特別遊技が実行された後に前記特定遊技状態になるときと前記非特定遊技状態になるときとで、互いに異なる内容の演出を実行可能である
H 遊技機。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由のうち、理由2の請求項1に係る拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2009-28174号公報(以下、「引用例1」という。)
2.特開2014-155676号公報(以下、「引用例2」という。)
3.特開2015-177876号公報(以下、「引用例3」という。)

第4 引用文献の記載及び引用発明
引用例2である特開2014-155676号公報(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0022】
まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。」

「【0058】
また、図1に示すように、可変入賞球装置15の右側には、大入賞口を形成する特別可変入賞球装置20が設けられている。特別可変入賞球装置20は大入賞口扉(図示略)を備え、第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと、第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)においてソレノイド21によって大入賞口扉が開放状態に制御されることによって、入賞領域となる大入賞口が開放状態になる。大入賞口に入賞した遊技球はカウントスイッチ23aで検出される。」

「【0066】
この実施の形態では、確変大当り(15R確変大当り、4R確変大当り、突然確変大当り)となった場合には、可変表示の表示結果が特定表示結果(大当り図柄)となる確率が通常状態よりも高められた遊技状態である高確率状態に移行するとともに、遊技球が始動入賞しやすくなる(すなわち、特別図柄表示器8bや演出表示装置9における可変表示の実行条件が成立しやすくなる)ように制御された遊技状態である高ベース状態に移行する。一方、通常大当り(4R通常大当り、突然通常大当り)となった場合には、高確率状態には移行しないが、大当り終了後の所定期間(30変動又は次の大当り発生まで)は高ベース状態に移行する。高ベース状態である場合には、例えば、高ベース状態でない低ベース状態と比較して、可変入賞球装置15が開状態となる頻度が高められたり、可変入賞球装置15が開状態となる時間が延長されたりして、始動入賞しやすくなる。」

「【0080】
また、ゲートスイッチ32a、第1始動口スイッチ14a、第2始動口スイッチ15a、カウントスイッチ23a、および各入賞口スイッチ30a,30bからの検出信号を遊技制御用マイクロコンピュータ560に与える入力ドライバ回路58も主基板31に搭載されている。また、可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16、および大入賞口を形成する特別可変入賞球装置20を開閉するソレノイド21を遊技制御用マイクロコンピュータ560からの指令に従って駆動する出力回路59も主基板31に搭載されている。」

「【0111】
初期化処理の実行(S10?S15)が完了すると、CPU56は、メイン処理で、表示用乱数更新処理(S17)および初期値用乱数更新処理(S18)を繰り返し実行する。表示用乱数更新処理および初期値用乱数更新処理を実行するときには割込禁止状態に設定し(S16)、表示用乱数更新処理および初期値用乱数更新処理の実行が終了すると割込許可状態に設定する(S19)。この実施の形態では、表示用乱数とは、大当りとしない場合の特別図柄の停止図柄を決定するための乱数や大当りとしない場合にリーチとするか否かを決定するための乱数であり、表示用乱数更新処理とは、表示用乱数を発生するためのカウンタのカウント値を更新する処理である。また、初期値用乱数更新処理とは、初期値用乱数を発生するためのカウンタのカウント値を更新する処理である。この実施の形態では、初期値用乱数とは、普通図柄に関して当りとするか否か決定するための乱数を発生するためのカウンタ(普通図柄当り判定用乱数発生カウンタ)のカウント値の初期値を決定するための乱数である。後述する遊技の進行を制御する遊技制御処理(遊技制御用マイクロコンピュータ560が、遊技機に設けられている演出表示装置、可変入賞球装置、球払出装置等の遊技用の装置を、自身で制御する処理、または他のマイクロコンピュータに制御させるために指令信号を送信する処理、遊技装置制御処理ともいう)において、普通図柄当り判定用乱数のカウント値が1周(普通図柄当り判定用乱数の取りうる値の最小値から最大値までの間の数値の個数分歩進したこと)すると、そのカウンタに初期値が設定される。」

「【0128】
第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bおよび演出表示装置9に大当り図柄となる図柄のうち、15R確変大当り図柄を示す図柄が停止表示される場合には、演出図柄の可変表示が開始されてから、演出図柄の可変表示状態がリーチ状態となった後にリーチ演出が実行され、またはリーチ状態とならずに、最終的に演出表示装置9における「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリア9L、9C、9Rに、大当り図柄となる所定の演出図柄の組み合わせ(例えば「777」)が停止表示される。15R確変大当りでは、特別可変入賞球装置20の大入賞口扉が、所定期間(例えば29秒間)あるいは所定個数(例えば10個)の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態とすることにより、特別可変入賞球装置20を遊技者にとって有利な第1状態に変化させるラウンドが実行される。こうしてラウンド中に大入賞口を開放状態とした大入賞口扉は、遊技盤6の表面を落下する遊技球を受け止め、その後に大入賞口を閉鎖状態とすることにより、特別可変入賞球装置20を遊技者にとって不利な第2状態である閉鎖状態に変化させて、1回のラウンドを終了させる。15R確変大当りでは、大入賞口の開放サイクルであるラウンドの実行回数が15となる。15R確変大当りの終了後には、次の大当りが発生するまで高確率/高ベース状態に制御される。
【0129】
第1特別図柄表示器8aに大当り図柄となる図柄のうち、4R確変大当り図柄を示す図柄が停止表示される場合には、演出図柄の可変表示が開始されてから、演出図柄の可変表示状態がリーチ状態とならずに、最終的に演出表示装置9における「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリア9L、9C、9Rに、大当り図柄となる所定の演出図柄の組み合わせ(例えば「135」)が停止表示される。4R確変大当りでは、特別可変入賞球装置20の大入賞口扉が、所定期間(例えば29秒間)あるいは所定個数(例えば10個)の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態とすることにより、特別可変入賞球装置20を遊技者にとって有利な第1状態に変化させるラウンドが実行される。4R確変大当りでは、大入賞口の開放サイクルであるラウンドの実行回数が4となる。4R確変大当りの終了後には、次の大当りが発生するまで高確率/高ベース状態に制御される。
【0130】
第1特別図柄表示器8aに大当り図柄となる図柄のうち、4R通常大当り図柄を示す図柄が停止表示される場合には、演出図柄の可変表示が開始されてから、演出図柄の可変表示状態がリーチ状態とならずに、最終的に演出表示装置9における「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリア9L、9C、9Rに、大当り図柄となる所定の演出図柄の組み合わせ(例えば「135」)が停止表示される。4R通常大当りでは、特別可変入賞球装置20の大入賞口扉が、所定期間(例えば29秒間)あるいは所定個数(例えば10個)の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態とすることにより、特別可変入賞球装置20を遊技者にとって有利な第1状態に変化させるラウンドが実行される。4R通常大当りでは、大入賞口の開放サイクルであるラウンドの実行回数が4となる。4R通常大当りの終了後から所定期間(30回の変動表示を実行するまで又は次の大当りの発生まで)は、低確率/高ベース状態に制御される。
【0131】
第2特別図柄表示器8bに大当り図柄となる図柄のうち、突然確変大当り図柄を示す図柄が停止表示される場合には、演出図柄の可変表示が開始されてから、演出図柄の可変表示状態がリーチ状態とならずに、最終的に演出表示装置9における「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリア9L、9C、9Rに、大当り図柄となる所定の演出図柄の組み合わせ(例えば「135」)が停止表示される。突然確変大当りでは、特別可変入賞球装置20の大入賞口扉が、所定期間(例えば0.1秒間)あるいは所定個数(例えば10個)の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態とすることにより、特別可変入賞球装置20を遊技者にとって有利な第1状態に変化させるラウンドが実行される。突然確変大当りでは、大入賞口の開放サイクルであるラウンドの実行回数が2となる。突然確変大当りの終了後には、次の大当りが発生するまで高確率/高ベース状態に制御される。
【0132】
第2特別図柄表示器8bに大当り図柄となる図柄のうち、突然通常大当り図柄を示す図柄が停止表示される場合には、演出図柄の可変表示が開始されてから、演出図柄の可変表示状態がリーチ状態とならずに、最終的に演出表示装置9における「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリア9L、9C、9Rに、大当り図柄となる所定の演出図柄の組み合わせ(例えば「135」)が停止表示される。突然通常大当りでは、特別可変入賞球装置20の大入賞口扉が、所定期間(例えば0.1秒間)あるいは所定個数(例えば10個)の入賞球が発生するまでの期間にて大入賞口を開放状態とすることにより、特別可変入賞球装置20を遊技者にとって有利な第1状態に変化させるラウンドが実行される。突然確変大当りでは、大入賞口の開放サイクルであるラウンドの実行回数が2となる。突然確変大当りの終了後から所定期間(30回の変動表示を実行するまで又は次の大当りの発生まで)は、低確率/高ベース状態に制御される。」

「【0217】
特別図柄通常処理(S300):特別図柄プロセスフラグの値が0であるときに実行される。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、特別図柄の可変表示が開始できる状態になると、保留記憶バッファに記憶される数値データの記憶数(合算保留記憶数)を確認する。保留記憶バッファに記憶される数値データの記憶数は合算保留記憶数カウンタのカウント値により確認できる。また、合算保留記憶数カウンタのカウント値が0でなければ、第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する。大当りとする場合には大当りフラグをセットする。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をS301に応じた値(この例では1)に更新する。尚、大当りフラグは、大当り遊技が終了するときにリセットされる。」

「【0248】
このラウンド中処理において、演出制御用CPU101は、例えば、演出表示装置9において大当り表示図柄を表示するとともに、ラウンド数を示す文字やその他のキャラクタなどを表示する演出を実行する。
【0249】
また、演出制御用CPU101は、演出表示装置9において、遊技者に右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射するように促す右打ち示唆表示を実行する。具体的には、大当り種別が「15R確変大当り」である場合には、遊技者が右打ちを行うことによって大入賞口への入賞を期待できるため、例えば、図23(A)に示すように、画面右上に大きく、遊技者が視認し易い態様で「右打ちしてね」の文字と右向きの矢印を表示する。また、「4R確変大当り」、「4R通常大当り」である場合には、遊技者が右打ちを行うことによって大入賞口への入賞を期待できるため、例えば、図23(B)に示すように、画面右上に遊技者が視認し易い態様で「右打ち」の文字と右向きの矢印を表示する。一方、大当り種別が「突然確変大当り」や「突然通常大当り」であり、遊技者が右打ちを行っても大入賞口への入賞を期待できないような大当りである場合には、例えば、図23(C)に示すように、画面右上に小さく、遊技者が視認し難い態様で「右打ち」の文字と右向きの矢印を表示する。このように、実質的に大入賞口への遊技球の入賞が困難な「突然通常大当り」、「突然確変大当り」に制御されているときには、右打ち示唆表示を視認困難な態様とすることで、無駄な遊技球の発射を抑制することができる。」

「【0272】
演出制御用CPU101は、大当り遊技状態中において、開放状態になる特別可変入賞球装置20が右遊技領域7Bに設けられていることから、遊技者に右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射するように促す右打ち示唆表示を実行する(15R確変大当りの場合はチャレンジタイム中以外の第1?8,14,15ラウンド)。また、遊技者も、大入賞口に遊技球を入賞させることにより多量の賞球を獲得するチャンスであることから、基本的には右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射する。つまり、右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射している限り、遊技球が第1始動入賞口13aに入賞することはほぼないので、左打ちすることは無駄打ち、つまり、遊技者にとってリスクとなる。」

以上の記載事項から、引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、引用発明の構成a?hは本願発明の構成A?Hに対応している。

「a 第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する遊技制御用マイクロコンピュータ560と(【0217】)、
b 第1特別図柄表示器8aに大当り図柄が導出表示されたときと、第2特別図柄表示器8bに大当り図柄が導出表示されたときに生起する大当り遊技状態において大入賞口を形成する特別可変入賞球装置20を開放状態にする前記遊技制御用マイクロコンピュータ560と(【0058】、【0080】)、
c 大当りの終了後、可変表示の表示結果が大当り図柄となる確率が通常状態よりも高められた遊技状態である高確率状態または低確率状態に制御する前記遊技制御用マイクロコンピュータ560と(【0066】、【0111】、【0128】?【0132】)、
d 演出表示装置9において大当り表示図柄を表示するとともに、ラウンド数を示す文字やその他のキャラクタなどを表示する演出を実行する演出制御用CPU101と(【0248】)、
を備え、
e、f 前記演出制御用CPU101は、大当り遊技状態中において、開放状態になる特別可変入賞球装置20が右遊技領域7Bに設けられていることから、遊技者に右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射するように促す右打ち示唆表示を実行可能であり、15R確変大当りの場合はチャレンジタイム中以外の第1?8,14,15ラウンドに右打ち示唆表示を実行し(【0272】)、
g 大当り種別が「15R確変大当り」である場合には、遊技者が右打ちを行うことによって大入賞口への入賞を期待できるため、画面右上に大きく、遊技者が視認し易い態様で「右打ちしてね」の文字と右向きの矢印を表示し、「4R通常大当り」である場合には、遊技者が右打ちを行うことによって大入賞口への入賞を期待できるため、画面右上に遊技者が視認し易い態様で「右打ち」の文字と右向きの矢印を表示可能である(【0249】)
h パチンコ遊技機1(【0022】)。」(以下「引用発明」という。)

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。なお、見出しの(a)?(h)は本願発明の構成A?Hに対応している。

(a)引用発明の「a 第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する」ことは、引用発明の「b 第1特別図柄表示器8aに大当り図柄が導出表示されたときと、第2特別図柄表示器8bに大当り図柄が導出表示されたときに生起する」「大入賞口を形成する特別可変入賞球装置20を開放状態にする」「大当り遊技状態」を実行するか否かを決定することであるといえる。
したがって、引用発明の「a 第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願発明の「A 遊技球が入球可能な所定の入賞口を開放する特別遊技を実行するか否かの判定を行う判定手段」に相当する。

(b)引用発明の「b 第1特別図柄表示器8aに大当り図柄が導出表示され」る、または、「第2特別図柄表示器8bに大当り図柄が導出表示され」るのは、引用発明のaの「第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとする」ことが「決定」されたときであるといえる。
したがって、引用発明の「b 第1特別図柄表示器8aに大当り図柄が導出表示されたときと、第2特別図柄表示器8bに大当り図柄が導出表示されたときに生起する大当り遊技状態において大入賞口を形成する特別可変入賞球装置20を開放状態にする前記遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願発明の「B 前記判定手段によって前記特別遊技を実行すると判定された場合に、前記特別遊技を実行する特別遊技実行手段」に相当する。

(c)引用発明のcの「可変表示の表示結果が大当り図柄となる確率が通常状態よりも高められた遊技状態である高確率状態」及び「低確率状態」は、それぞれ、本願発明のCの「遊技者に有利な特定遊技状態」及び「前記特定遊技状態よりも遊技者に不利な非特定遊技状態」に相当する。
したがって、引用発明の「c 大当りの終了後、可変表示の表示結果が大当り図柄となる確率が通常状態よりも高められた遊技状態である高確率状態または低確率状態に制御する前記遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願発明の「C 前記特別遊技が実行された後に、遊技者に有利な特定遊技状態または前記特定遊技状態よりも遊技者に不利な非特定遊技状態にすることが可能な遊技状態制御手段」に相当する。

(d)引用発明の「d 演出表示装置9において大当り表示図柄を表示するとともに、ラウンド数を示す文字やその他のキャラクタなどを表示する演出を実行する演出制御用CPU101」は、本願発明の「D 所定の演出を実行する演出実行手段」に相当する。

(e)引用発明のe、fの「開放状態になる特別可変入賞球装置20が右遊技領域7Bに設けられていることから、遊技者に右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射するように促す右打ち示唆表示」は、本願発明のEの「前記所定の入賞口への遊技球の発射を促す発射演出」に相当する。
また、引用発明において、e、fの「右打ち示唆表示」が、高確率状態または低確率状態にかかわらず実行可能であることは明らかである。
したがって、引用発明の「e、f 前記演出制御用CPU101は、大当り遊技状態中において、開放状態になる特別可変入賞球装置20が右遊技領域7Bに設けられていることから、遊技者に右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射するように促す右打ち示唆表示を実行可能であ」ることは、本願発明の「E 前記演出実行手段は、前記特定遊技状態になっているときにおいて前記特別遊技が実行される際に、前記所定の入賞口への遊技球の発射を促す発射演出を実行可能であ」ることに相当する。

(f)引用発明のe、fにおいて、「大当り遊技状態中において」「遊技者に右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射するように促す右打ち示唆表示を実行可能であり、15R確変大当りの場合はチャレンジタイム中以外の第1?8,14,15ラウンドに右打ち示唆表示を実行」するのであるから、15R確変大当りの場合の第1?8ラウンドの右打ち示唆表示は継続的に実行されるものといえる。
また、引用発明のgの「4R通常大当り」である場合、15R確変大当りのようなチャレンジタイムはないから、大当り遊技状態中の右打ち示唆表示が第1?4ラウンドに継続的に実行されることは明らかである。
したがって、引用発明の「e、f 前記演出制御用CPU101は、大当り遊技状態中において」「遊技者に右遊技領域7Bに向けて遊技球を発射するように促す右打ち示唆表示を実行可能であり、15R確変大当りの場合はチャレンジタイム中以外の第1?8,14,15ラウンドに右打ち示唆表示を実行」することと、本願発明の「F 前記発射演出は、前記特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出と、少なくとも当該特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出と、を含」むこととは、「F’前記発射演出は、少なくとも当該特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出を含」む点で共通する。

(g)引用発明の「g 大当り種別が「15R確変大当り」である場合には、遊技者が右打ちを行うことによって大入賞口への入賞を期待できるため、画面右上に大きく、遊技者が視認し易い態様で「右打ちしてね」の文字と右向きの矢印を表示し、「4R通常大当り」である場合には、遊技者が右打ちを行うことによって大入賞口への入賞を期待できるため、画面右上に遊技者が視認し易い態様で「右打ち」の文字と右向きの矢印を表示可能である」ことは、本願発明の「G 前記第1発射演出は、前記特別遊技が実行された後に前記特定遊技状態になるときと前記非特定遊技状態になるときとで、互いに異なる内容の演出を実行可能である」ことに相当する。

(h)引用発明の「h パチンコ遊技機1」は、本願発明の「H 遊技機」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「A 遊技球が入球可能な所定の入賞口を開放する特別遊技を実行するか否かの判定を行う判定手段と、
B 前記判定手段によって前記特別遊技を実行すると判定された場合に、前記特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
C 前記特別遊技が実行された後に、遊技者に有利な特定遊技状態または前記特定遊技状態よりも遊技者に不利な非特定遊技状態にすることが可能な遊技状態制御手段と、
D 所定の演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
E 前記演出実行手段は、前記特定遊技状態になっているときにおいて前記特別遊技が実行される際に、前記所定の入賞口への遊技球の発射を促す発射演出を実行可能であり、
F’前記発射演出は、少なくとも当該特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出を含み、
G 前記第1発射演出は、前記特別遊技が実行された後に前記特定遊技状態になるときと前記非特定遊技状態になるときとで、互いに異なる内容の演出を実行可能である
H 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
「F’前記発射演出は、少なくとも当該特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出」だけでなく、本願発明は「前記特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出」「を含」むのに対し、引用発明はそのようなものでない点。

第6 判断
(相違点について)
パチンコ遊技機において、所定の入賞口への遊技球の発射を促す発射演出が、特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出だけでなく、特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出を含むこと、すなわち相違点に係る本願発明の構成は、例えば、以下の引用例に記載されているように周知技術である。

ア 拒絶査定時に提示された本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-91528号公報(以下、「引用例4」という。下線は当審で付した。以下同様。)
「【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。」

「【0139】
ここで第1特図または第2特図の非確変,第1確変,第2確変,または第3確変の15ラウンド大当りについては、図42(A)に示すように、遊技者が把握しやすい第1右打ち指示報知AR1を所定回数行った後に、図42(B)に示すように、遊技者が把握しづらい第2右打ち指示報知AR2を行う。多量の遊技媒体を獲得できる15ラウンド大当りの場合には、右打ち報知を積極的に行う意義があるが、それが大当り終了まで継続されると煩わしいため、途中で第1右打ち指示報知AR1から第2右打ち指示報知AR2に変化させることにより、遊技者に煩わしさを感じさせず、遊技の興趣を向上しているのである。ここで「第1右打ち指示報知AR1を所定回数行った後に第2右打ち指示報知AR2を行う」の例としては、1ラウンド目では第1右打ち指示報知AR1を行って2ラウンド目で第2右打ち指示報知AR2を行うものや、特別可変入賞球装置7に所定個数の遊技媒体が入賞したこと等も含まれる。」

イ 拒絶査定時に提示された本願の出願前に頒布された特開2013-244051号公報(以下、「引用例5」という。)
「【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。」

「【0421】
右打ち台(右打ち機)である遊技機1は、特定遊技状態に制御されるときに所定位置に遊技媒体を発射することを示唆する指示報知(右打ち指示)を行うとともに、特定遊技状態において演出が再現して実行された後に指示報知を再度行うようにしてもよい。例えば、遊技機1は、1ラウンド目の開始時に1度目の指示報知を行い、一度、報知を終了し、再現演出の終了時に2度目の指示報知を行うようにしてもよい。また、遊技機1は、全ラウンドにおいて右打ち指示を行うが、1ラウンド目の開始時及び再現演出の終了時には、特に強調して右打ち指示を行うようにしてもよい(全ラウンドにおいて右打ち指示を行う態様においては特に強調した右打ち指示が指示報知に該当する)。なお、報知の態様は限定しないが、例えば、報知情報(右打ち指示する矢印の画像等)を画像表示装置5の表示画面に表示してもよいし、報知情報(右打ちを指示する音声)をスピーカ8L、8Rから出力してもよい。これにより、再現表示に見とれて遊技媒体の発射を止めてしまうことによる遊技者の不利益を防止することができる。」

ウ 拒絶査定時に提示された本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-73730号公報(以下、「引用例6」という。)
「【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。」

「【0360】
続いて、楽曲が追加され、選曲表示や右打ち表示が行われる場合の主な演出動作例を、図38および図39を参照して説明する。まず、図38(a)に示すように大当り(確変)となると、図35のステップS610の処理により、図38(b)に示すように、選曲表示と右打ち表示が行われる。図38(b)に示す例では、1回目の大当りの例を示しており、すなわち、連荘カウント値が「1」である場合の例を示しており、この場合には、追加楽曲記憶一覧に初期時から追加されている楽曲Aが選択可能に表示されることとなる(それ以外の楽曲は、図示するように「?????」として選択不可能に表示される)。そして、遊技者の操作により楽曲Aが選択されると、図35のステップS612の処理により楽曲Aが設定され、図38(c)および(d)に示すように、図34のステップS186により楽曲Aが出力される。そして、図34のステップS187の処理により、図38(e)に示すように、ラウンド大当り状態の終了となる。ここまでが、1回の大当りである。なお、右打ち表示については、図34のステップS186の処理にて継続して表示される。この場合、図示するように、ラウンド大当り状態(すなわち、特別可変入賞球装置7が第1状態の場合)における右打ち表示は、図38(b)に示す態様(図39(b)も同様)(すなわち、特別可変入賞球装置7が第1状態となる前の態様)と異なる態様(図38(b)や図39(b)よりも小さな態様)であればよい。これによれば、遊技媒体の打込み先を明確に示しつつ実行中の演出の妨げとなることを防止することができる。」

そして、継続して表示される発射演出の煩わしさを感じさせず遊技の興趣を向上するために、引用発明にこの周知技術を適用することに当業者にとって格別の困難性はなく、そのようにして相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

(効果について)
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(請求人の主張について)
請求人は、審判請求書において、
ア 引用例1、引用例2、および引用例3には、本願発明の「特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出と、少なくとも特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出と」の両方の発射演出を行うこと、特に、「特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出」についての記載や示唆が見当たらない、

イ 引用例4、引用例5、および引用例6には、本願発明の「発射演出は、特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出と、少なくとも特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出と、を含み、第1発射演出は、特別遊技が実行された後に特定遊技状態になるときと非特定遊技状態になるときとで、互いに異なる内容の演出を実行可能である」ことについての記載や示唆が見当たらない、

ウ 本願発明は、特別遊技が開始されるときであって遊技者の注目が特に大きくなるタイミングで実行される“第1発射演出”の内容を、特別遊技が実行された後に特定遊技状態になるときと非特定遊技状態になるときとで、互いに異ならせ、この構成によって、遊技者は、経験的に、第1発射演出の内容に応じて、特別遊技が実行された後の遊技状態を予測するようになる一方で、第1発射演出が行われた後には、第1発射演出とは別に、特別遊技中に継続的に第2発射演出を表示し、このように、例えば特別遊技中に行う第2発射演出と、特別遊技の開始時の一時的な第1発射演出とを切り分けることで、開始時に遊技者が行った特別遊技が実行された後の遊技状態の予測を利用しつつ、特別遊技中に、例えば特別遊技状態の終了後の遊技状態を改めて遊技者に予想させるような内容の演出を別途実行することが可能になる、

エ 本願発明は、第1発射演出および第2発射演出の両方を行うことを前提としたうえで、第1発射演出の内容を特定遊技状態になるときと非特定遊技状態になるときとで互いに異ならせることで、従来にない遊技演出を行うことが可能になり、このような効果を参酌することによっても、本願発明における進歩性の存在を推認できることは明らかである
旨を主張する。

しかしながら、請求人の主張の上記ア及びイについて、本願発明の「特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出と、少なくとも特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出と」の両方の発射演出を行うことは、上記(相違点について)で検討したとおり周知技術であり、継続して表示される発射演出の煩わしさを感じさせず遊技の興趣を向上するために、引用発明にこの周知技術を適用することに当業者にとって格別の困難性はなく、そのようにして本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
また、請求人の主張の上記ウについて、特別遊技が開始されるときであって遊技者の注目が特に大きくなるタイミングで実行される“第1発射演出”の内容を、特別遊技が実行された後に特定遊技状態になるときと非特定遊技状態になるときとで、互いに異ならせ、遊技者が、経験的に、第1発射演出の内容に応じて、特別遊技が実行された後の遊技状態を予測するようになるのは、引用発明も同様であり、第1発射演出が行われた後に、第1発射演出とは別に、特別遊技中に継続的に第2発射演出を表示する、すなわち、所定の入賞口への遊技球の発射を促す発射演出が、特別遊技中に継続的に実行される第2発射演出だけでなく、特別遊技が開始されるときに一時的に実行される第1発射演出を含むという周知技術を適用した際には、例えば特別遊技中に行う第2発射演出と、特別遊技の開始時の一時的な第1発射演出とを切り分けることで、開始時に遊技者が行った特別遊技が実行された後の遊技状態の予測を利用しつつ、特別遊技中に、例えば特別遊技状態の終了後の遊技状態を改めて遊技者に予想させるような内容の演出を別途実行することが可能になることは明らかである。
さらに、請求人の主張の上記エについて、第1発射演出および第2発射演出の両方を行うことを前提としたうえで、第1発射演出の内容を特定遊技状態になるときと非特定遊技状態になるときとで互いに異ならせることで、従来にない遊技演出を行うことが可能になるという効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(まとめ)
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-18 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-04 
出願番号 特願2016-240741(P2016-240741)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 輝秋  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 田邉 英治
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 伊與田 幸穂  
代理人 尾形 文雄  
代理人 古部 次郎  

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