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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1350988
審判番号 不服2017-18018  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-05 
確定日 2019-04-11 
事件の表示 特願2015-162529「偏光板及び液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日出願公開、特開2016- 85444〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成27年8月20日(優先権主張 平成26年10月27日(以下、「本件優先日」という。))を出願日とする出願であって、平成29年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年6月22日付けで意見書が提出され、同年8月29日付けで拒絶査定がなされ、同年12月5日付けで本件拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において平成30年9月13日付けで拒絶理由(最後)(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月14日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2 平成30年11月14日付けの手続補正書による手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成30年11月14日付けの手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成30年11月14日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成29年12月5日付けの手続補正書による補正後(以下、「本件補正前」という。)の特許請求の範囲についてするものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?5が次の(1)のとおりであったものを、次の(2)のとおりに補正するものであり、次の(3)の補正事項からなる(下線は、当合議体が付したものであり、本件補正による補正箇所を示す。)。

(1)本件補正前の請求項1?5
「【請求項1】
偏光子の光源側に第一の保護フィルムを有する偏光板であって、
偏光子の厚みは15μm以下であり、
第一の保護フィルムが、反射型偏光フィルム、または熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体であり、
第一の保護フィルムが、熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体である場合には、反射型偏光フィルムが熱可塑性樹脂フィルムに対して光源側に配置され、
反射型偏光フィルムは、延伸フィルムであり、
偏光板の光源側最表面における対水接触角が、100°以下であり、
温度85℃で100時間の熱処理を行なったときに以下の式で定義される偏光板の寸法変化率Sが、-1.4≦S≦0.0である光源側偏光板。
S=((熱処理後の寸法-熱処理前の寸法)×100)/熱処理前の寸法
【請求項2】
さらに偏光子の視認側に第二の保護フィルムを有する請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記光源側偏光板の視認側の最表面に、粘着剤層を有する請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
液晶セルと該液晶セルの光源側に配置された請求項1?3のいずれかに記載の偏光板とを有する液晶パネル。
【請求項5】
液晶セルと、該液晶セルの視認側に配置された偏光板と、該液晶セルの光源側に配置された請求項1?3のいずれかに記載の偏光板とを有する液晶表示装置。」

(2)本件補正後の請求項1?5
「【請求項1】
偏光子の光源側に第一の保護フィルムを有し且つ第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面の反対側の面にハードコード層を有する光源側偏光板であって、
偏光子の厚みは15μm以下であり、
第一の保護フィルムが、反射型偏光フィルム、または熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体であり、
第一の保護フィルムが、熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体である場合には、反射型偏光フィルムが熱可塑性樹脂フィルムに対して光源側に配置され、
反射型偏光フィルムは、延伸フィルムであり、
偏光板の光源側最表面における対水接触角が、100°以下であり、
温度85℃で100時間の熱処理を行なったときに以下の式で定義される偏光板の寸法変化率Sが、-1.4≦S≦0.0である光源側偏光板。
S=((熱処理後の寸法-熱処理前の寸法)×100)/熱処理前の寸法
【請求項2】
さらに偏光子の視認側に第二の保護フィルムを有する請求項1に記載の光源側偏光板。
【請求項3】
視認側の最表面に、粘着剤層を有する請求項1または2に記載の光源側偏光板。
【請求項4】
液晶セルと該液晶セルの光源側に配置された請求項1?3のいずれかに記載の光源側偏光板とを有する液晶パネル。
【請求項5】
液晶セルと、該液晶セルの視認側に配置された偏光板と、該液晶セルの光源側に配置された請求項1?3のいずれかに記載の光源側偏光板とを有する液晶表示装置。」

(3)補正事項
ア 補正事項1
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に、「偏光子の光源側に第一の保護フィルムを有する」とあるのを、「偏光子の光源側に第一の保護フィルムを有し且つ第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面の反対側の面にハードコード層を有する」と補正する。

イ 補正事項2
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した「偏光子の光源側に第一の保護フィルムを有する偏光板」において「偏光板」とあるのを、「光源側偏光板」に補正する。

ウ 補正事項3
本件補正前の特許請求の範囲の請求項2?5に、それぞれ「請求項1に記載の偏光板」、「請求項1または2に記載の偏光板」、「請求項1?3のいずれかに記載の偏光板」、「請求項1?3のいずれかに記載の偏光板」とあるのを、「請求項1に記載の光源側偏光板」、「請求項1または2に記載の光源側偏光板」、「請求項1?3のいずれかに記載の光源側偏光板」、「請求項1?3のいずれかに記載の光源側偏光板」に補正する。

2 補正の目的について
(1) 補正事項1
前記補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載した「偏光子の光源側」の「第一の保護フィルム」に関し、「第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面の反対側の面にハードコード層を有する」ものに限定するものである。
また、前記補正事項1による補正の前後において、請求項1に係る発明の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、前記補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

(2) 補正事項2
前記補正事項2は、本件補正前の請求項1に記載において、「光源側偏光板」と「偏光板」との記載が混在しており、不明りょうであったものを、「光源側偏光板」との記載に統一することによって、明りょうな記載とするものである。
したがって、前記補正事項2は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当する。

(3) 補正事項3
前記補正事項3は、請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項2?5中の「偏光板」との記載を、前記補正事項2に対応して、「光源側偏光板」との記載に統一することによって、明りょうな記載とするものである。
したがって、前記補正事項3は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当する。

3 新規事項の追加の有無について
前記補正事項1に係る「第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面の反対側の面にハードコード層を有する」との限定事項は、本件出願の願書に最初に添付した明細書の段落【0026】に記載されているから、前記補正事項1は、本件出願の願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。

4 独立特許要件について
前記2(1)で述べたように、請求項1についての本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正後発明」という。)について、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
(1)本件補正後発明
本件補正後発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。

(2) 引用例1とその記載事項
当審拒絶理由において引用例1として引用された、本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/163212号には次の記載がある(なお、下線は、当合議体が付したものである。)。
ア 「 技術分野
[0001]
高温環境下での寸法収縮率が異なる背面側偏光板と前面板が一体化された前面側偏光板とからなる偏光板のセット、およびこれらを液晶セルに貼合した前面板一体型液晶表示パネルに関するものである。
背景技術
[0002]
液晶表示装置は、従来から卓上計算機、電子時計、パーソナルコンピューターなどに使用されているが、近年急激にその需要が増加しており、最近では携帯電話やタブレット型端末などにも使用されるなど、その用途も広がっている。これらの液晶表示装置は通常、液晶セルの表裏に一対の偏光板が配置されて液晶表示パネルとなる。
[0003]
最近の市場では、画面が大型化した携帯電話やタブレット型端末等のモバイル機器の普及に伴い、その構成部材である液晶表示パネルの軽量化、薄型化が要求されており、液晶セルのガラスや前面板を薄くする傾向がある。また、界面における反射や光の散乱をなくして視認性を向上するために、前面板が粘着剤や紫外線硬化型樹脂で液晶表示パネルと一体化される傾向もある。
[0004]
従来の液晶表示パネルでは、前面板および液晶セルが厚いため、高温環境下でも偏光板の収縮による反りは抑制されていたが、上記のような近年の前面板の厚さや液晶セルに使用されているガラスを薄くする傾向に伴い、高温環境下での偏光板の収縮に起因する液晶表示パネルの反りが発生し、最終製品の筐体に収まらないなどの問題がある。
[0005]
このような液晶表示パネルの反りを抑制するために、以前から液晶セルの視認側と液晶セルの視認側とは反対側(背面側)に配置する偏光板の厚さを変更することで液晶表示パネルの反りを抑制する手法が開発されている。例えば、特開2012-58429号公報(特許文献1)では、液晶セルの視認側に配置する偏光板の偏光膜(本発明でいう偏光子)の厚さを、液晶セルの背面側に配置する偏光膜より薄くすることで液晶表示パネルの反りを抑制する方法が記載されている。
[0006]
しかし、高温環境下における液晶表示パネルの反りは、上記のとおり偏光子の厚さによる偏光板の収縮に起因するため、特許文献1のように視認側に配置する偏光板の偏光子の厚さを薄くした場合、特に視認性向上のために前面板を粘着剤や紫外線硬化型樹脂などで一体化させた液晶表示パネルの場合には、反りが発生することがあり、反りの抑制は、必ずしも満足のいくものではない。
[0007]
また、特許第4666430号(特許文献2)には、プラスチック基板液晶セルを使用した液晶表示素子(本発明でいう液晶表示パネル)において、液晶セルの視認側および背面側の偏光板を構成する保護膜の厚さを変えることにより、プラスチック基板液晶セルの反り量が抑制された液晶表示素子について記載されている。この方法によると、液晶セルの反りを抑制するという目的は達成されているものの、視認性向上のために偏光板に前面板が一体化された状態で高温環境におかれた場合、特許文献2のように保護膜の厚さを変える方法では、保護膜の熱収縮に起因する液晶セルの反りが発生し、最終製品の筐体に収まらないという問題が生ずる場合がある。」

イ 「 発明が解決しようとする課題
[0008]
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、液晶表示パネルとした際に高温環境下での反り量が抑制される偏光板のセット、およびこの偏光板のセットを液晶セルに貼合してなる前面板一体型液晶表示パネルを提供することにある。」

ウ 「 課題を解決するための手段
[0009]
すなわち、本発明は、液晶セルの視認側に配置され、ヤング率が2GPa以上で液晶セルから遠い側となる前面板が紫外線硬化型樹脂または粘着剤を介して前面側偏光板に貼合されている前面板一体型偏光板と、液晶セルの背面側に配置される背面側偏光板とのセットであって、この前面側偏光板は、前面板に貼合されない状態で、85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率が、この背面側偏光板の、85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率より大きいことを特徴とする、偏光板のセットである。
[0010]
上記偏光板のセットにおいて、前面側偏光板は、前面板に貼合されない状態で、85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率が1.2%以上、好ましくは、1.3%以上の偏光板が好ましく、上記背面側偏光板は、85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率が1.1%以下の偏光板が好ましい。
[0011]
上記偏光板のセットにおいて、上記の前面側偏光板および背面側偏光板はともに、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも一方の面に透明保護膜が積層された構造を有し、少なくとも一方の偏光板は、液晶セル側となる透明保護膜が面内位相差を有する偏光板のセットであってもよい。
[0012]
上記偏光板のセットにおいて、上記の前面側偏光板および背面側偏光板はともに、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の両面に透明保護膜が積層された構造を有し、前面側偏光板を構成する偏光子が、背面側偏光板を構成する偏光子よりも厚い偏光板のセットでもよい。
[0013]
この背面側偏光板は、液晶セルから遠くなる側に他の光学フィルムが積層されていることが好ましい。
[0014]
前面側偏光板は、その吸収軸が液晶セルの短辺方向となり、背面側偏光板は、その吸収軸が液晶セルの長辺方向となっていることが好ましい。
・・・略・・・
[0016]
本発明によれば、前面板を一体化した液晶表示パネルにおける高温環境下での反りを解消することができ、高温環境下での最終製品の筐体に収まる前面板一体型液晶表示パネルを得ることができる。」

エ 「 図面の簡単な説明
[0017]
図1は、本発明に係る偏光板のセットにおける好ましい層構成の例を示す概略断面図である。
図2は、本発明に係る前面板一体型液晶表示パネルにおける好ましい層構成の例を示す概略断面図である。」

オ 「 発明を実施するための形態
[0018]
以下、本発明に係る偏光板のセットおよびこれを用いた前面板一体型液晶表示パネルについて適宜、図を用いて説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
[0019]
まず、本発明の偏光板のセットは、前面板一体型偏光板40と背面側偏光板50から構成される。図1は、本発明に係る偏光板のセットにおける好ましい層構成の例の概略断面図を示したものである。図1を参照して、本発明の偏光板のセットを構成する前面板一体型偏光板40は、液晶セルの視認側に配置され、液晶セルから遠い側に配置される前面板10が、前面側偏光板30に紫外線硬化型樹脂または粘着剤20を介して貼り合わされたものである。なお、前面側偏光板30は、前面側偏光板の偏光子37の両面に、前面側偏光板の透明保護膜35a,35bがそれぞれ貼合されたものである。また背面側偏光板50は、背面側偏光板の偏光子57の両面に、背面側偏光板の透明保護膜55a,55bがそれぞれ貼合されたものである。
・・・略・・・
[0024]
偏光子57を適用した背面側偏光板50は、これを85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率が0.1%以上1.1%以下のものが好ましいく、0.5%以上1.1%以下がより好ましい。背面側偏光板の寸法変化率の下限値は、0.1%より低くなりすぎると、光学特性に支障をきたし、液晶表示時にコントラストが低い問題が発生するおそれがある。
[0025]
本発明の偏光板セットにおいては、前面側偏光板を構成する偏光子37は、液晶セルの背面側に配置された背面側偏光板50を構成する背面側偏光板の偏光子57(以下、偏光子57ともいう)より厚い形態が、好ましい。前面側偏光板を構成する偏光子37の厚さは、好ましくは、20μm以上である。液晶セルの背面側偏光板50の偏光子57の厚さは、好ましくは、15μm以下である。これらの条件を満たす偏光板のセットを液晶セル60の両面に配置することが、前面板が一体化された液晶表示パネル(図2)の反り量を抑制するのに有効である。
[0026]
前面側および背面側の偏光板に用いられる偏光子としては、上記の寸法変化率に関する条件および/または偏光子の厚さを満たす限り、任意の適切なものを用いることができる。
・・・略・・・
[0029]
本発明で規定する前面側偏光板30および背面側偏光板50はともに、上記のように製造される偏光子の少なくとも一方の面に透明保護膜が積層された構造を有する。この透明保護膜としては、適宜の透明樹脂から形成されているものを用いることができる。具体的には、透明性や均一な光学特性、機械強度、熱安定性などに優れるポリマーからなるものを用いるのが好ましい。このような透明保護膜としては、例えば、トリアセチルセルロース・・・略・・・ポリオレフィン系フィルム、ポリノルボルネン系フィルムなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
[0030]
前面側偏光板30に適用される透明保護膜35a,35bおよび背面側偏光板50に適用される透明保護膜55a,55bは、同じものであってもよいし、それぞれ独立で、異なるものであってもよい。また、液晶セルに近い方の透明保護膜である35bもしくは55aの両者もしくは一方が無い形態でも良い。本発明では、少なくとも一方の偏光板における液晶セル側に設けられる透明保護膜が面内位相差を有することが好ましい。
・・・略・・・
[0033]
透明保護膜の表面には、必要に応じてハードコート層、反射防止層または防眩層等の表面処理層を設けてもよい。ハードコート層は、偏光板表面の傷付き防止のために形成される表面処理層であり、主に紫外線硬化型樹脂、例えばアクリル系やシリコーン系などの樹脂から透明保護膜との密着性や硬度に優れるものが適宜に選定され、透明保護膜の表面に形成することができる。
・・・略・・・
[0036]
本発明において、偏光板は、その使用に際して他の光学機能を示す光学層を一層または二層以上積層して用いることができる。その光学層については特に限定はなく、例えば、反射層、半透過型反射層、位相差板、輝度向上フィルムなどを挙げることができる。・・・略・・・あるいは前記した偏光子と透明保護膜からなら偏光板に、さらに輝度向上フィルムが積層されている偏光板とすることもできる。
・・・略・・・
[0039]
輝度向上フィルムは、液晶表示装置等における輝度の向上を目的として用いられ、その例としては、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した円偏光分離シートなどが挙げられる。
[0040]
本発明において、背面側偏光板50は、上記した他の光学機能を示す光学層を液晶セルから遠くなる側に一層または二層以上積層して用いることが好ましい。
・・・略・・・
[0043]
前記した偏光板を構成する透明保護膜または偏光板上に設けられた光学層には、液晶セル等の他部材と接着するために粘着剤層を設けることができる。その粘着剤層は、アクリル系等の従来に準じた適宜の粘着剤にて形成することができる。特に、高温環境下での剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や前面板一体型液晶表示パネルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶画像装置の形成などの観点より、耐熱性に優れる粘着剤層であることが好ましい。粘着剤層は必要に応じて必要な面に設ければよく、例えば、偏光子と透明保護膜からなる偏光板の透明保護膜について言及するならば、必要に応じて透明保護膜の片面または両面に粘着剤層を設ければよい。なお、粘着剤層には、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の適宜なものを用いることができる。
・・・略・・・
[0046]
次に、本発明に係る前面板一体型液晶表示パネルについて説明する。本発明に係る前面板一体型液晶表示パネルは、前記した前面板一体型偏光板40および背面側偏光板50を液晶セルに貼合したものであり、図2に本発明に係る前面板一体型液晶表示パネルにおける好ましい層構成の例を概略断面図で示した。図2を参照して、本発明の前面板一体型液晶表示パネル80は、図1の偏光板のセットを構成する前面板一体型偏光板40を液晶セル60の視認側に、背面側偏光板50を液晶セル60の背面側にそれぞれ粘着剤を介して貼合した構成である。
[0047]
液晶セル60と偏光板のセットの貼合に用いる粘着剤としては、透明性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好ましい。」

オ 「 実施例
[0049]
以下に、実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ない限り重量基準である。
[0050]
〔実施例1〕
(1)偏光板のセットの作製
前面側偏光板(偏光板1)は、次のように作製した。まず、厚さ60μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ23μmの偏光子を得た。次に、この偏光子の片側に、水100部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した商品名“KL-318”〕を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業(株)から入手した商品名“スミレーズレジン 650(30)”、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加したエポキシ系接着剤を塗布し、透明保護膜として厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC4UY”〕を貼り合せ、その反対側には前記の接着剤を用いて、ノルボルネン系樹脂で延伸されていないフィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR”〕を貼合した。
[0051]
背面側偏光板(偏光板2)は、次のように作製した。まず、厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された厚さ11μmの偏光子を得た。この偏光子に対し、前面側偏光板と同様の方法で透明保護膜を貼合した。その後、TAC面側に5μm厚の粘着材〔リンテック(株)製の商品名“#L2”〕を貼合し、そこに26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)を貼合した。
[0052]
上記(1)で作製した前面側偏光板および背面側偏光板について、高温環境下における偏光板の寸法変化率は、次の方法で測定した。まず、作製したそれぞれの偏光板を、長尺方向30mm?50mm、幅方向20?50mmの正方形もしくは長方形に裁断し、85℃の環境下に100時間静置した。次に、裁断時の長尺方向(吸収軸方向)の寸法(L_(0))および高温環境下に静置した後の長尺方向の寸法(L_(1))を(株)ニコン製の二次元測定器“NEXIV VMR-12072”を用いて測定し、以下の式から寸法変化率(%)を求めた。結果を表1の「偏光板の寸法変化率」の欄に示した。
寸法変化率=[(L_(0)-L_(1))/L_(0)]×100
[0053]
(2)前面板一体型液晶表示パネルの作製
(1)で作製した偏光板のセットを液晶セルに貼合し、前面板一体型液晶表示パネルを作製した。(1)で作製した偏光板のノルボルネン系樹脂“ZEONOR”側の表面に、厚さ20μmの粘着剤〔リンテック(株)製の商品名“P-3132”〕を塗布した後、前面側偏光板を液晶セルの短辺に対して偏光子の吸収軸が平行になるように5インチサイズに裁断し、背面側偏光板を液晶セルの長辺に対して偏光子の吸収軸が平行になるように5インチサイズに裁断した。次いで、裁断した偏光板をそれぞれ粘着剤側で液晶セルに貼り合せ、前面側偏光板のトリアセチルセルロースフィルム側に紫外線硬化型光学弾性樹脂〔デクセリアス(株)製の商品名“Super View Resin”〕を塗布し、その上にヤング率が70GPaで、厚さが0.55mmの前面板〔コーニング社製の商品名“Gorilla”〕を積層した。その後、前面板側から紫外線を照射〔フュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”、積算光量1200mJ/cm 2 〕を実施し、前面板一体型液晶セルを作製した。
[0054]
上記(2)で作製した前面板一体型液晶表示パネルについて、高温環境下における反り量を次の方法で測定した。まず、作製した前面板一体型液晶表示パネルを、85℃の環境下に240時間静置した後、前面板を上側にして(株)ニコン製の二次元測定器“NEXIV VMR-12072”の測定台上に置いた。次いで、測定台の表面に焦点を合わせ、そこを基準とし、前面板一体型液晶表示パネルの4角部、4辺の各中央および前面板一体型液晶表示パネル表面の中央に焦点を合わせ、基準とした焦点からの距離を測定した後、測定台からの距離が絶対値で最も長い距離を反り量とした。測定結果を表1の「反り量」の欄に示した。
[0055]
〔実施例2〕
(1)偏光板のセットの作製
基材フィルム上にポリビニルアルコール水溶液を塗布し、乾燥して、偏光子製造用の原反となる積層フィルムを作製した。ここでは、厚さ110μmで融点163℃のポリプロピレンフィルムを基材フィルムとした。
次に平均重合度1,100でケン化度99.5モル%のアセトアセチル基変性ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製の商品名“ゴーセファイマー Z-200”)を、95℃の熱水に溶解し、3%濃度の水溶液を調製した。この水溶液に架橋剤として、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(田岡化学工業(株)製の商品名“スミレーズレジン 650”、固形分濃度30%の水溶液)を、ポリビニルアルコールの固形分6部あたり5部の割合で混合し、プライマー用塗工液とした。
そして、先のポリプロピレンからなる基材フィルムにコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に、プライマー用塗工液をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で10分間乾燥して、厚さ0.2μmのプライマー層を形成した。
次に平均重合度2,400でケン化度98.0?99.0モル%のポリビニルアルコール粉末((株)クラレから入手した商品名“PVA124”)を、95℃の熱水に溶解し、8%濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、前記基材フィルムのプライマー層上にリップコーターを用いて室温で塗工し、80℃で20分間乾燥して、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール層からなる積層フィルムを作製した。
得られた積層フィルムを、温度160℃で5.8倍に自由端縦一軸延伸した。こうして得られた積層延伸フィルムの全体厚さは28.5μmであり、ポリビニルアルコール層の厚さは5.0μmであった。
得られた積層延伸フィルムを、水/ヨウ素/ヨウ化カリウムの重量比100/0.35/10の水溶液に26℃で90秒間浸漬して染色した後、10℃の純水で洗浄した。次にこの積層フィルムを、水/ホウ酸/ヨウ化カリウムの重量比100/9.5/5の水溶液に76℃で300秒間浸漬して、ポリビニルアルコールを架橋させた。引き続き、10℃の純水で10秒間洗浄し、最後に80℃で200秒間の乾燥処理を行った。以上の操作により、ポリプロピレン基材フィルム上に、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール層からなる偏光子が形成されている偏光性積層フィルムを作製した。
上記で作製した偏光性積層フィルムの基材フィルムとは反対面(偏光子面)に、水100部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した商品名“KL-318”〕を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業(株)から入手した商品名“スミレーズレジン 650(30)”、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加したエポキシ系接着剤を塗布し、透明保護膜として厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC)〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC2UA”〕を貼り合せ、基材フィルムのみを剥離することによって、TAC/ポリビニルアルコール系偏光子/プライマー層からなる偏光板を得た。
次にプライマー面側にエポキシ化合物と光カチオン重合開始剤を含む紫外線硬化型接着剤を塗工し、ノルボルネン系樹脂で延伸されていないフィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR”〕を貼合し、ノルボルネン系樹脂側から紫外線を照射〔フュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”、積算光量1200mJ/cm^(2)〕を実施し、接着剤を硬化させることにより、TAC/ポリビニルアルコール系偏光子/プライマー層/ノルボルネン系樹脂の偏光板(3)を得た。
その後、TAC面側に5μm厚の粘着材〔リンテック(株)製の商品名“#L2”]を貼合し、そこに26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)を貼合した。
[0056]
上記で作製した偏光板(3)について、偏光板を長尺方向30mm?50mm、幅方向20?50mmの正方形もしくは長方形の大きさに裁断し、実施例1と同様のやり方で、寸法変化率(%)を求めた。
前面側偏光板に偏光板(2)のTAC面側の粘着剤および輝度向上フィルムを取り除いた物を、背面側偏光板として偏光板(3)のノルボルネン系樹脂“ZEONOR”側の表面に前記粘着剤を塗布し、液晶セルに貼合した以外は実施例1と同様にして前面板一体型液晶セルを作製し、高温環境下における反り量を測定した。結果を表1の「反り量」の欄に示した。
[0057]
〔実施例3]
液晶セルに貼合する前面側偏光板として、実施例1で用いた背面側偏光板(偏光子の厚さが11μmのもの)のTAC面側の粘着剤および輝度向上フィルムを取り除いた物を用いた以外は、実施例1と同様にして前面板一体型液晶表示パネルを作製し、高温環境下における反り量を測定した。結果を表1の「反り量」の欄に示した。
[0058]
〔実施例4〕
(1)偏光板のセットの作製
前面側偏光板は、次のように作製した。まず、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ28μmの偏光子を得た。次に、この偏光子の片側に、水100部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した商品名“KL-318”〕を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業(株)から入手した商品名“スミレーズレジン 650(30)”、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加したエポキシ系接着剤を塗布し、透明保護膜として厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC4UY”〕を貼り合せ、TAC/PVA層からなる偏光板を得た。
その後、上記で作成した偏光板について、偏光板を長尺方向30mm?50mm、幅方向20?50mmの正方形もしくは長方形の大きさに裁断し、実施例1と同様のやり方で、寸法変化率(%)を求めた。
[0059]
背面側偏光板は次のように作成した。まず、基材フィルム上にポリビニルアルコール水溶液を塗布し、乾燥して、偏光子製造用の原反となる積層フィルムを作製した。ここでは、厚さ110μmで融点163℃のポリプロピレンフィルムを基材フィルムとした。
次に平均重合度1,100でケン化度99.5モル%のアセトアセチル基変性ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製の商品名“ゴーセファイマー Z-200”)を、95℃の熱水に溶解し、3%濃度の水溶液を調製した。この水溶液に架橋剤として、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(田岡化学工業(株)製の商品名“スミレーズレジン 650”、固形分濃度30%の水溶液)を、ポリビニルアルコールの固形分6部あたり5部の割合で混合し、プライマー用塗工液とした。
そして、先のポリプロピレンからなる基材フィルムにコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に、プライマー用塗工液をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で10分間乾燥して、厚さ0.2μmのプライマー層を形成した。
次に平均重合度2,400でケン化度98.0?99.0モル%のポリビニルアルコール粉末((株)クラレから入手した商品名“PVA124”)を、95℃の熱水に溶解し、8%濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、前記基材フィルムのプライマー層上にリップコーターを用いて室温で塗工し、80℃で20分間乾燥して、基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール層からなる積層フィルムを作製した。
得られた積層フィルムを、温度160℃で5.8倍に自由端縦一軸延伸した。こうして得られた積層延伸フィルムの全体厚さは28.5μmであり、ポリビニルアルコール層の厚さは5.0μmであった。
得られた積層延伸フィルムを、水/ヨウ素/ヨウ化カリウムの重量比100/0.35/10の水溶液に26℃で90秒間浸漬して染色した後、10℃の純水で洗浄した。次にこの積層フィルムを、水/ホウ酸/ヨウ化カリウムの重量比100/9.5/5の水溶液に76℃で300秒間浸漬して、ポリビニルアルコールを架橋させた。引き続き、10℃の純水で10秒間洗浄し、最後に80℃で200秒間の乾燥処理を行った。以上の操作により、ポリプロピレン基材フィルム上に、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール層からなる偏光子が形成されている偏光性積層フィルムを作製した。
上記で作製した偏光性積層フィルムの基材フィルムとは反対面(偏光子面)に、水100部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した商品名“KL-318”〕を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業(株)から入手した商品名“スミレーズレジン 650(30)”、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加したエポキシ系接着剤を塗布し、透明保護膜として厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC)〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC2UA”〕を貼り合せ、基材フィルムのみを剥離することによって、TAC/ポリビニルアルコール系偏光子/プライマー層からなる偏光板を得た。その後、TAC面側に5μm厚の粘着材〔リンテック(株)製の商品名“#L2”〕を貼合し、そこに26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)を貼合した。
上記で作成した偏光板について、偏光板を長尺方向30mm?50mm、幅方向20?50mmの正方形もしくは長方形の大きさに裁断し、実施例1と同様のやり方で、寸法変化率(%)を求めた。
その後、透明保護層が無い偏光子面に直接厚さ20μmの粘着剤〔リンテック(株)製の商品名“P-3132”〕を塗布した後、実施例1と同様にして前面板一体型液晶表示パネルを作製し、高温環境下における反り量を測定した。結果を表1の「反り量」の欄に示した。
・・・略・・・
[0062]
表1


[0063]
表1の結果から明らかなように、実施例1から4では、前面板一体型液晶表示パネルは、液晶セルの前面側の偏光板の85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率が、背面側偏光板の85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率より大きい組み合わせになっている。
[0064]
実施例1から4では、前面板一体型液晶表示パネルは、液晶セルの前面側の偏光板の85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率が1.2%以上であり、背面側偏光板は、85℃にて100時間加熱したときの吸収軸方向の寸法変化率が1.1%以下であることを満足する組み合わせになっている。また、実施例1、2および4では、前面側偏光板を構成する偏光子が、背面側偏光板を構成する偏光子よりも厚くなっている。
実施例1から4においては、高温環境下で240時間静置した後の前面板一体型液晶表示パネルの反り量は、絶対値で0.5mm以下であることがわかる。」

カ 「 産業上の利用可能性
[0065]
本発明によれば、前面板を一体化した液晶表示パネルにおける高温環境下での反りを解消することができ、高温環境下での最終製品の筐体に収まる前面板一体型液晶表示パネルを得ることができ
る。」

キ 「 符号の説明
[0066]
10:前面板、
20:粘着剤または紫外線硬化型樹脂、
30:前面側偏光板、
35a,35b:前面側偏光板の透明保護膜、
37:前面側偏光板の偏光子、
40:前面板一体型偏光板、
50:背面側偏光板、
55a,55b:背面側偏光板の透明保護膜、
57:背面側偏光板の偏光子、
60:液晶セル、
80:前面板一体型液晶表示パネル。」

ク 「 図1



ケ 「 図2



(3) 引用発明
ア 引用例1の段落[0049]?[0054]の記載(上記(2)オ参照)によれば、〔実施例1〕の「(1)偏光板のセットの作製」における「背面側偏光板(偏光板2)」は、段落[0051]に記載の方法により作製されたものであるところ、「ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された厚さ11μmの偏光子」「に対し」、段落[0050]の11?19行に記載された「前面側偏光板と同様の方法で透明保護膜を貼合した」ものである。

イ 引用例1の段落[0049]?[0054]及び段落[0062]表1(上記(2)参照オ)の記載によれば、〔実施例1〕で作製した「背面側偏光板」の「高温環境下における」「寸法変化率」は、段落[0052]に記載の方法により測定されるものであるところ、その結果を示す段落[0062]「表1」の「偏光板の寸法変化率」「背面側」欄によれば、「1.1%」である。

ウ 引用例1の段落[0046]の記載(上記(2)エ参照)及び図1、2(上記(2)ク、ケ参照)によれば、「背面側偏光板(50)」は、「液晶セル(60)の背面側に」「粘着剤を介して貼合」されるものである。

エ そうすると、上記(2)ア?ケ及び上記ア?ウより、引用例1には、〔実施例1〕の「(1)偏光板のセットの作製」に記載の方法により作製された「背面側偏光板」として、以下の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。

「液晶セルの背面側に粘着剤を介して貼合される背面側偏光板であって、
厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬し、
その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬し、
引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された厚さ11μmの偏光子を得て、
この偏光子の片側に、水100部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した商品名“KL-318”〕を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業(株)から入手した商品名“スミレーズレジン 650(30)”、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加したエポキシ系接着剤を塗布し、透明保護膜として厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC4UY”〕を貼り合せ、その反対側には前記の接着剤を用いて、ノルボルネン系樹脂で延伸されていないフィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR”〕を貼合し、
その後、TAC面側に5μm厚の粘着材〔リンテック(株)製の商品名“#L2”〕を貼合し、そこに26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)を貼合せて作製したものであり、
高温環境下における背面側偏光板の寸法変化率は1.1%である、
背面側偏光板。
(ここで、高温環境下における背面側偏光板の寸法変化率は、作製した背面側偏光板を、長尺方向30mm?50mm、幅方向20?50mmの正方形もしくは長方形に裁断し、85℃の環境下に100時間静置し、次に、裁断時の長尺方向(吸収軸方向)の寸法(L_(0))および高温環境下に静置した後の長尺方向の寸法(L_(1))を(株)ニコン製の二次元測定器“NEXIV VMR-12072”を用いて測定し、以下の式から寸法変化率(%)を求めたものである。
寸法変化率=[(L_(0)-L_(1))/L_(0)]×100)」

(4) 対比
本件補正後発明と引用発明とを対比する。
ア 「偏光子」
(ア) 引用発明の「偏光子」は、本件補正後発明の「偏光子」に相当する。
引用発明の「偏光子」は、「厚さ11μm」である。そうすると、引用発明は、本件補正後発明の「偏光子の厚みは15μm以下であ」るとの要件を満たしている。

イ 「熱可塑性フィルム」、「反射型偏光フィルム」及び「第一の保護フィルム」
(ア) 「TAC」とは、「トリアセチルセルロース」の略号であることは技術常識であるから、引用発明の「TAC面側」は、「偏光子11」の「厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム」「を貼り合せ」た方の「面側」を意味する。
そうすると、引用発明は、その作製方法からみて、「26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」、「5μm厚の粘着材〔リンテック(株)製の商品名“#L2”〕」、「透明保護膜」である「厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC4UY”〕」、「エポキシ系接着剤」層、「厚さ11μmの偏光子」、「エポキシ系接着剤」層、「ノルボルネン系樹脂で延伸されていないフィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR”〕」の順で積層された積層体である。

(イ) 3M製の「Advanced Polarized Film(APF)」として知られる製品は、反射型偏光フィルムであり、延伸フィルムからなることは技術常識である(本件出願明細書の段落【0022】、【0023】の記載からも確認できることである。)。
そうすると、引用発明の「26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」は、本件補正後発明の「反射型偏光フィルム」に相当する。また、引用発明は、本件補正後発明の「反射型偏光フィルムは、延伸フィルムであり」との要件を満たす。

(ウ) 「トリアセチルセルロース」が熱可塑性樹脂であることは技術常識である。
そうすると、引用発明の「トリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC4UY”〕」は、本件補正後発明の「熱可塑性フィルム」に相当する。

(エ) 引用発明の「26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」は、「透明保護膜」である「厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC4UY”〕」に「5μm厚の粘着材〔リンテック(株)製の商品名“#L2”〕」を介して「貼り合せ」られたものであるから、「透明保護膜」である「厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC4UY”〕」と同様に、「偏光膜11」を機械的に「保護」する機能を有するものということができる。そうすると、引用発明の「26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」は、保護フィルムであるということができる。
してみると、上記(ア)より、引用発明における「透明保護膜」である「厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)社製の商品名“KC4UY”〕」と「26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」との積層体は、本件補正後発明の「第一の保護フィルム」に相当し、引用発明は、本件補正後発明の「第一の保護フィルムが、反射型偏光フィルム、または熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体であり」との要件を満たす。

(オ) 反射型偏光フィルムである「3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」を「輝度向上フィルム」として用いていることから、引用発明は、「26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」を光源側にし、「ノルボルネン系樹脂で延伸されていないフィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名“ZEONOR”〕」を液晶セル側にして用いられることが予定されたものであることは、技術常識から自明である。
そうすると、上記(エ)より、引用発明は、「第一の保護フィルムが、熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体である場合には、反射型偏光フィルムが熱可塑性樹脂フィルムに対して光源側に配置され」との要件を満たす。

ウ 「寸法変化率」
(ア) 引用発明の「高温環境下における」「寸法変化率」は「1.1%」である。
また、引用発明における「高温環境下における」「寸法変化率」とは、「作製した背面側偏光板を」「長尺方向30mm?50mm、幅方向20?50mmの正方形もしくは長方形に裁断し」た時(「裁断時」)の「長尺方向(吸収軸方向)の寸法(L_(0))」及び「85℃の環境下に100時間静置」すなわち「高温環境下に静置した後の長尺方向の寸法(L_(1))」として、「式」「寸法変化率=[(L_(0)-L_(1))/L_(0)]×100)」「から寸法変化率(%)」として「求めた」ものである。

(イ) 引用発明の「高温環境下」に「静置」する条件「温度85℃の環境下で100時間静置」と、本件補正後発明の「熱処理」条件「温度85℃で100時間」は、同じである。
そうすると、引用発明の「長尺方向30mm?50mm、幅方向20?50mmの正方形もしくは長方形に裁断し」た時(「裁断時」)の「長尺方向(吸収軸方向)の寸法(L_(0))」及び「高温環境下に静置した後の長尺方向の寸法(L_(1))」は、本件補正後発明の「熱処理前の寸法」及び「熱処理後の寸法」に相当する。

(ウ) したがって、引用発明の「寸法変化率」と、「本件補正後発明」の「偏光板の寸法変化率S」は、符号が逆で、絶対値が等しいパラメータということができる。

(エ) してみると、引用発明の「寸法変化率」の符号を逆にすると「-1.1%」となるから、引用発明は、本件補正後発明の「偏光板の寸法変化率Sが、-1.4≦S≦0.0である」との要件を満たす。

エ 「光源側偏光板」
(ア) 引用発明の「背面側偏光板」は、「液晶セルの背面側に粘着剤を介して貼合される」ものである。技術的にみて、引用発明の「背面側偏光板」は、本件補正後発明の「光源側偏光板」に相当する。

(イ) 上記イ(ア)の積層体の構造とイ(エ)より、引用発明の「背面側偏光板」と、本件補正後発明の「光源側偏光板」は、「偏光子の光源側に第一の保護フィルムを有し」ている点で共通する。

オ 一致点、相違点
以上の対比結果を踏まえると、本件補正後発明と引用発明は、
「偏光子の光源側に第一の保護フィルムを有する光源側偏光板であって、
偏光子の厚みは15μm以下であり、
第一の保護フィルムが、反射型偏光フィルム、または熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体であり、
第一の保護フィルムが、熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体である場合には、反射型偏光フィルムが熱可塑性樹脂フィルムに対して光源側に配置され、
反射型偏光フィルムは、延伸フィルムであり、
温度85℃で100時間の熱処理を行なったときに以下の式で定義される偏光板の寸法変化率Sが、-1.4≦S≦0.0である光源側偏光板。
S=((熱処理後の寸法-熱処理前の寸法)×100)/熱処理前の寸法」で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点)
本件補正後発明は、「第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面の反対側の面にハードコード層を有」し、「偏光板の光源側最表面における対水接触角が、100°以下であ」るのに対して、
引用発明は、「第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面の反対側の面にハードコード層を有」しておらず、また、「偏光板の光源側最表面における対水接触角が、100°以下であ」るのか不明である点。

(5) 判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明においては、「背面側偏光板」の光源側の最表面は「輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」(以下、「APF V3」という。)となっているところ、引用例1の段落[0033]には、「透明保護膜の表面には、必要に応じてハードコート層、反射防止層または防眩層等の表面処理層を設けてもよい。ハードコート層は、偏光板表面の傷付き防止のために形成される表面処理層であり、主に紫外線硬化型樹脂、例えばアクリル系やシリコーン系などの樹脂から透明保護膜との密着性や硬度に優れるものが適宜に選定され、透明保護膜の表面に形成することができる。」と記載されている。

イ ここで、液晶表示装置において、光源側偏光板の光源側の面と、バックライト(導光板等),光拡散素子(プリズムシート等)等の光源側光学部材あるいは表示装置のフレームとを、額縁状の接着シートや両面テープ等の粘着・接着剤で固定することは、本件優先日前に周知の技術である。また、このような固定に際して、狭額縁化等のためその粘着・接着剤による接着面積が狭い場合、十分な接着力が得られない、あるいは剥離が生じやすいという問題があることも、本件優先日前に周知の技術的事項である。
例えば、
(ア)特開2005-99221号公報の段落【0008】?【0012】、【0015】(段落【0015】の「偏光板とLCDフレーム間の両面テープによる接着面積が狭いためにLCDと両面テープに剥離が生じ」)、図7(「裏偏光板6」、「両面テープ22」、「拡散シート20」、「フレーム15」)等、
(イ)特開2002-229013号公報の段落【0003】、【0026】、【0027】、【0037】(段落【0037】の「両面接着テープ120が額縁領域31内の偏光板216上に設けられている。そのため、両面接着テープ120の貼り付け面積が狭くなる。したがって両面接着テープ120の接着力が低下し、落下した場合などのように液晶装置1に衝撃が加えられると、液晶パネル111がバックライトユニット15から分離、又は位置ずれし易くなる。」)、図12(「偏光板216」、「両面接着テープ120」、「バックライトユニット115」)等、
(ウ)特開2009-122386号公報の段落【0002】?【0004】、【0011】、【0012】(段落【0011】の「特に、額縁領域105の幅を比較的狭くした狭額縁構造を有する液晶表示装置100においては、額縁領域105における偏光板103,104の面積が小さくなりやすい。さらに、バックライトユニット106が配置される側の偏光板103における額縁領域105での面積が小さい場合には、バックライトユニット106が接着テープ107を介して接着される偏光板103の接着領域108が小さくなるため、バックライトユニット106と偏光板103との接着性が低くなってしまう。」)、図17(「偏光板103」、「接着テープ107」、「バックライトユニット106」)等、
(エ)特開2008-275977号公報の段落【0002】?【0004】、【0063】(段落【0003】の「装置を狭額縁化すると、両面テープと液晶表示パネルとの接着面積が小さくなり、それだけ接着強度は低下する。」)、図3(「偏光板116」、「両面テープ112」、「バックライト113」)等、
(オ)特開2009-98556号公報の段落【0002】、【0003】、【0009】(段落【0009】の「表示装置の額縁サイズを小さくしようとした場合には、必然的に両面テープ114の面積が小さくなり、両面テープ114の粘着力はより低下して上記問題が顕著に現れる。」)、図19?21(「101a 偏光板」、「106 両面テープ」、「光学シート 108a?c」、「102 光源用FPC」)等、
(カ)特開2003-121815号公報の段落【0003】?【0007】(段落【0006】の「LCDとLCDフレームの固定は上記有効表示エリアを侵さない範囲である有効表示エリアの外側の偏光板とLCDフレームを両面テープによって固定されるのが一般的である。」、段落【0007】の「LCDの外形寸法公差と偏光板の貼付位置公差のバラツキにより、LCDとLCDフレームの両面テープ固定の面積が非常に少なく、LCDとLCDフレームが確実に固定できない」)等、
(キ)特開2003-50393号公報の段落【0045】?【0051】、図1?5(「第1偏光板6a」、「接着シート320」、「バックライト200」)等、
(ク)特開2002-365430号公報の段落【0002】?【0004】、図8(「偏光板21」、「輝度向上フィルム26」、「両面テープ29」、「バックライトユニット」)等を参照。

ウ また、ハードコート層を粘着・接着剤を介して他の部材・層と接着する際に、該ハードコート層表面の水との接触角を100度以下とすることにより、接着性・密着性を向上させることは、本件優先日前に周知の技術である。
例えば、
(ア)特開2013-155219号公報の段落請求項1、【0006】?【0009】、【0016】、【0030】、【0031】(段落【0016】の「ハードコート層は、水との接触角が70度以下でなければならない。水との接触角が70度より大きい場合は、タッチパネルの内部に使用される両面粘着テープとの密着性が悪く容易に剥離する。」)、図1(「ハードコート層8」、「両面粘着テープ9」)等、
(イ)特開2012-20538号公報の段落【0004】、【0008】、【0034】、【0035】、【0093】【表1】(段落【0034】の「水の接触角が86度よりも大きい場合は、極性溶媒に対する濡れ性の向上効果が極端に低くなるため、粘着加工がしにくい、あるいは親水性基を持つ粘着層との密着性の向上効果が低くなる傾向にある。」)等、
(ウ)国際公開第2013/069683号の段落[0023]、[0044]、[0053]、[0072]、[0083][表1](段落[0044]の「保護シート4は、ハードコート層42側(基材41側とは反対側)の表面42aの水接触角が105°以下であることが好ましく、90°以下であることがより好ましく、85°以下であることがさらに好ましい。これにより、保護シート4のハードコート層42側の表面42aに粘着剤層31を介して偏光板12を貼り合わせた際、優れた密着強度が得られる。」)、図1、図2(「ハードコート層42」、「粘着剤層31」)等、
(エ)国際公開第2014/038466号の段落[0005]、[0006]、[0022]、[0029]、[0032]、[0033]、[0248][表2]、[0261][表4]、[0273](段落[0022]の「フィルム4におけるタッチパネル20側の表面(ハードコート層4bの表面)の接触角は、60°未満に設定されている。」、段落[0029]の「フィルム4におけるタッチパネル20側の表面の接触角は60°未満となっている。このようにフィルム4の表面の接触角を低く抑えることにより、フィルム4に対して反射防止層31や粘着剤層32が引っ付きやすくなり、それらの接着性を向上させることができる。」)、図1、図2(「ハードコート層4b」、「粘着剤層32」)等、
(オ)特開2014-189755号公報の段落【0043】、【0047】(段落【0047】の「上記ハードコート層の表面の純水の接触角が60?90°が好ましく、65?85°がより好ましい。上記範囲内の接触角であることで、ハードコート層表面に対して印刷インキや両面粘着テープが密着しやすくなる。」)、図1(「ハードコート層4」、「両面粘着テープ1」)等、
(カ)特開2012-187703号公報の段落【0011】?【0013】(段落【0011】の「保護フィルムの粘着層を貼着するアクリル系コーティング表面の水に対する接触角は、90°以下とする。」、段落【0012】の「アクリル系コーティング表面の水に対する接触角が小さくなるほど、保護フィルムとアクリル系コーティングとの密着性は高まる。」、【0013】の「アクリレート系化合物としては、好ましくはアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物であり、・・・略・・・架橋構造を形成することにより高強度の塗膜を形成することができるため、・・・略・・・セミフィニッシュドレンズの光学面側の最表面を保護するハードコート層として機能し得るものであり」)等を参照。

エ 当業者であれば上記イ及びウに係る知識を当然に備えているところ、上記アの引用例1の記載・示唆に基づき、引用発明の光源側の最表面である「APF V3」の傷付き防止のために、「APF V3」表面に、水との接触角が100°以下となる表面を有するハードコート層を形成することは、引用発明を固定する際のハードコート層の粘着・接着剤との接着性を考慮した当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明において上記の構成としたものは、上記相違点に係る本件補正後発明の「第一の保護フィルムにおける偏光子との貼合面の反対側の面にハードコード層を有」し、「偏光板の光源側最表面における対水接触角が、100°以下であ」るとの構成を備えることとなる。

エ したがって、本件補正後発明は、引用発明及び上記の本件優先日前に周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6) 小括
以上のとおり、本件補正後発明は、引用発明及び上記の本件優先日前に周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

5 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記「第2」「1(1)」に記載したとおりのものである。

2 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、
(理由1.新規性)本件出願の請求項1?5に係る発明は、本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
(理由2.進歩性)本件出願の請求項1?5に係る発明は、本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1に記載された発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用例1:国際公開第2014/163212号

3 引用例1とその記載事項及び引用発明
当審拒絶理由において引用された引用例1とその記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由]4(2)」及び「第2[理由]4(3)」に記載されたとおりである。

4 対比
本件発明と引用発明との対比は、上記「第2[理由]4(4)」ア?エに記載したものと同様である。
してみると、本件発明と引用発明とは、
「偏光子の光源側に第一の保護フィルムを有する偏光板であって、
偏光子の厚みは15μm以下であり、
第一の保護フィルムが、反射型偏光フィルム、または熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体であり、
第一の保護フィルムが、熱可塑性樹脂フィルムと反射型偏光フィルムとの積層体である場合には、反射型偏光フィルムが熱可塑性樹脂フィルムに対して光源側に配置され、
反射型偏光フィルムは、延伸フィルムであり、
温度85℃で100時間の熱処理を行なったときに以下の式で定義される偏光板の寸法変化率Sが、-1.4≦S≦0.0である光源側偏光板。
S=((熱処理後の寸法-熱処理前の寸法)×100)/熱処理前の寸法」で一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点1)
本件発明においては、「偏光板の光源側最表面における対水接触角が、100°以下であ」るのに対して、
引用発明においては、「背面側偏光板」の光源側最表面における対水接触角が100°以下であるのか不明である点。

5 判断
上記相違点1について検討する。
(1) 引用発明においては、光源側偏光板の光源側最表面を構成する部材は、「26μm厚の輝度向上フィルム(3M製の商品名“Advanced Polarized Film,Version 3”)」である。
一方、本件出願明細書の発明の詳細な説明の実施例2あるいは実施例4の記載(本件出願明細書段落【0056】?【0058】、【0061】、【0066】【表1】(「対水接触角」)等)によれば、「26μm厚の反射型偏光フィルム(3M社より入手した商品名”Advanced Polarized Film,Version 3(APF-V3)”)」により構成される「偏光板の光源側最表面」の「対水接触角」は、「87°」あるいは「86°」である。
そうすると、引用発明においても、「偏光板の光源側最表面」における「対水接触角」は86°?87°程度であると認められる。
してみると、上記相違点1は実質的な相違点を構成しない。

(2) よって、本件発明は、引用発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
あるいは、仮に上記相違点1が実質的な相違点であるとしても、本件発明は、引用発明及び上記の本件優先日前に周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、あるいは、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-06 
結審通知日 2019-02-12 
審決日 2019-02-26 
出願番号 特願2015-162529(P2015-162529)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
P 1 8・ 575- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 河原 正
清水 康司
発明の名称 偏光板及び液晶表示装置  
代理人 坂元 徹  
代理人 中山 亨  

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