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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C07H
管理番号 1351138
審判番号 不服2018-14726  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-05 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2015-525562「A2AアゴニストとしてのN-アルキル2-(二置換)アルキニルアデノシン-5’-ウロンアミド」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日国際公開、WO2014/022577、平成27年 8月24日国内公表、特表2015-524440、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2013年7月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月1日 (US)米国、2013年3月15日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年4月1日に手続補正書が提出され、平成29年7月28日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月26日付けで拒絶査定がされ、同年11月5日に拒絶査定不服審判が請求され、同年12月20日に手続補正書(方式)が提出され、同年12月21日に手続補足書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年6月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1.本願請求項1?19に係る発明は、下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2008/0009460号明細書
2.米国特許出願公開第2008/0312160号明細書
3.特開平5-9198号公報

第3 本願発明
本願請求項1?19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明19」という。)は、平成30年2月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される発明である。

「 【請求項1】
式Iaの化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、

RはCH_(3)であり、
R^(1)は、独立して、H、C_(1?8)アルキル及びC_(3?8)シクロアルキルから選択され、
R^(2)は、C_(1?8)アルキル、C_(3?8)シクロアルキル-C_(0?8)アルキレン-、C_(1?8)アルコキシ-C_(1?8)アルキレン-、5員?10員ヘテロシクリル-C_(0?8)アルキレン-、5員?10員ヘテロアリール-C_(0?8)アルキレン-、及びアリール-C_(0?8)アルキレン-から選択され、
環Aは、フェニル環であるか、又は示されている炭素原子を介して結合し、O、N及びS(O)_(p)から選択される1?3個の環内ヘテロ原子を有する5員?6員ヘテロアリールであり、
環Aは、場合により1?3個のR^(3)基で置換されており、
R^(3)は、独立して、C_(1?8)アルキル、F、Cl、Br、I、-CN、OR^(a)、SR^(a)、NR^(a)R^(b)、CF_(3)、OCF_(3)、COR^(a)、CO_(2)R^(a)、C(O)NR^(a)R^(b)、OC(O)R^(a)、OCO_(2)R^(a)、OC(O)NR^(a)R^(b)、NR^(b)COR^(a)、NR^(b)CO_(2)R^(a)、NR^(b)C(O)NR^(a)R^(b)、S(O)_(p)NR^(a)R^(b)、C_(3?10)シクロアルキル-C_(0?8)アルキレン-、5員?10員ヘテロシクリル-C_(0?8)アルキレン-、アリールオキシ、アリール-C_(0?8)アルキレン-、及び5員?10員ヘテロアリール-C_(0?8)アルキレン-から選択され、
R^(a)は、独立して、H、C_(1?8)アルキル及びC_(3?8)シクロアルキル-C_(0?8)アルキレン-から選択され、
R^(b)は、独立して、H、C_(1?8)アルキル及びC_(3?8)シクロアルキル-C_(0?8)アルキレン-から選択され、
pは、独立して、0、1及び2から選択される
ことを特徴とする、式Iaの化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、
RはCH_(3)であり、
R^(1)は、H及びC_(1?4)アルキルから選択され、
R^(2)は、C_(1?4)アルキル、C_(3?6)シクロアルキル-C_(0?2)アルキレン-、及びC_(1?4)アルコキシ-C_(1?4)アルキレン-から選択され、
環Aは、フェニル、ピリジル、チエニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリミジル及びピリダジニルから選択され、
環Aは、場合により1?2個のR^(3)基で置換されており、
R^(3)は、独立して、C_(1?4)アルキル、F、Cl、Br、I、-CN、OR^(a)、SR^(a)、NR^(a)R^(b)、CF_(3)、OCF_(3)、COR^(a)、CO_(2)R^(a)、C(O)NR^(a)R^(b)及びS(O)_(p)NR^(a)R^(b)から選択され、
R^(a)は、独立して、H、C_(1?4)アルキル及びC_(3?8)シクロアルキル-C_(0?8)アルキレン-から選択され、
R^(b)は、独立して、H、C_(1?4)アルキル及びC_(3?8)シクロアルキル-C_(0?8)アルキレン-から選択され、
pは、独立して、0、1及び2から選択される
ことを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、
Rはメチルであり、
R^(1)はHであり、
R^(2)は、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、シクロプロピル、シクロプロピル-メチレン、シクロブチル、シクロブチル-メチレン、シクロペンチル及びメトキシ-エチレンから選択され、
環Aは、フェニル、ピリジル及びチエニルから選択され、
環Aは、場合により1?2個のR^(3)基で置換されており、
R^(3)は、独立して、C_(1?4)アルキル、F、Cl、Br、I、-CN、OR^(a)、SR^(a)、NR^(a)R^(b)、CF_(3)、OCF_(3)、COR^(a)、CO_(2)R^(a)、C(O)NR^(a)R^(b)及びS(O)_(p)NR^(a)R^(b)から選択され、
R^(a)は、独立して、H及びC_(1?4)アルキルから選択され、
R^(b)は、独立して、H及びC_(1?4)アルキルから選択され、
pは、独立して、0、1及び2から選択される
ことを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、
Rはメチルであり、
R^(1)はHであり、
R^(2)は、メチル、イソブチル、シクロプロピル、シクロプロピル-メチレン、シクロブチル、シクロペンチル及びメトキシ-エチレンから選択され、
環Aは、フェニル、ピリジル及びチエニルから選択され、
環Aは、場合により1?2個のR^(3)基で置換されており、
R^(3)は、独立して、C_(1?4)アルキル、F、Cl、-CN、OR^(a)、CF_(3)及びOCF_(3)から選択され、
R^(a)は、独立して、H及びC_(1?4)アルキルから選択され、
R^(b)は、独立して、H及びC_(1?4)アルキルから選択される
ことを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
請求項4に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、
Rはメチルであり、
R^(1)はHであり、
R^(2)は、メチル、イソブチル、シクロプロピル、シクロプロピル-メチレン、シクロブチル、シクロペンチル及びメトキシ-エチレンから選択され、
環Aは、場合により1?2個のR^(3)基で置換されているフェニルであり、
R^(3)は、独立して、CH_(3)、F、Cl、-CN、CF_(3)及びOCF_(3)から選択される
ことを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
請求項4に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、
Rはメチルであり、
R^(1)はHであり、
R^(2)は、メチル、イソブチル、シクロプロピル、シクロプロピル-メチレン、シクロブチル、シクロペンチル及びメトキシ-エチレンから選択され、
環Aは、場合により1?2個のR^(3)基で置換されている3-ピリジルであり、
R^(3)は、独立して、CH_(3)、F、Cl、-CN、CF_(3)及びOCF_(3)から選択される
ことを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
請求項4に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、
Rはメチルであり、
R^(1)はHであり、
R^(2)は、メチル、イソブチル、シクロプロピル、シクロプロピル-メチレン、シクロブチル、シクロペンチル及びメトキシ-エチレンから選択され、
環Aは、場合により1?2個のR^(3)基で置換されている4-ピリジルであり、
R^(3)は、独立して、CH_(3)、F、Cl、-CN、CF_(3)及びOCF_(3)から選択される
ことを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
請求項4に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、
Rはメチルであり、
R^(1)はHであり、
R^(2)は、メチル、イソブチル、シクロプロピル、シクロプロピル-メチレン、シクロブチル、シクロペンチル及びメトキシ-エチレンから選択され、
環Aは、場合により1?2個のR^(3)基で置換されている2-チエニルであり、
R^(3)は、独立して、CH_(3)、F、Cl、-CN、CF_(3)及びOCF_(3)から選択される
ことを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、前記化合物が以下の化合物1乃至20から選択されることを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。

【請求項10】
請求項9に記載の化合物において、前記化合物が、

又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩
から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩において、前記化合物が以下の化合物1乃至33から選択されることを特徴とする、化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。

【請求項12】
治療有効量の、請求項1乃至11の何れか1項に記載の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩、及び薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
対象中のアデノシンA_(2A)受容体が関連している状態を処置するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、治療有効量の、請求項1乃至11の何れか1項に記載の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩を含み、
前記アデノシンA_(2A)受容体が関連している状態が、自己免疫刺激、炎症、アレルギー性疾患、皮膚疾患、感染症、消耗病、臓器移植、組織又は細胞の移植、神経障害性疼痛、開放創、薬物治療による有害作用、心血管病態、虚血再潅流障害、透析、痛風、化学的外傷、温熱性外傷、糖尿病性腎症、鎌状赤血球症、蹄葉炎、蹄葉炎疾患、緑内障及び高眼圧症、脊椎損傷、心筋梗塞、急性心筋梗塞から選択される
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項14】
対象中のアデノシンA_(2A)受容体が関連している状態を処置するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、治療有効量の、請求項1乃至11の何れか1項に記載の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩を含み、
前記アデノシンA_(2A)受容体が関連している状態が、関節炎、クローン病、慢性閉塞性肺疾患、敗血症、炎症性腸疾患、緑内障、高眼圧症、糖尿病性腎症、組織又は細胞の移植から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
対象中のアデノシンA_(2A)受容体が関連している状態を処置するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、治療有効量の、請求項1乃至11の何れか1項に記載の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩を含み、
前記アデノシンA_(2A)受容体が関連している状態が、志賀毒素、クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)毒素A、クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)毒素B、又は偽膜性大腸炎が誘導する病態によって引き起こされることを特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
哺乳動物の心筋潅流異常を診断するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が請求項1乃至11の何れか1項に記載の化合物を含み、
前記医薬組成物が冠状動脈狭窄症の存在の検出、冠状動脈狭窄症の重症度の評価、又はその組合せを行うために用いられる
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
対象の眼圧を低下させるための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、治療有効量の、請求項1乃至11の何れか1項に記載の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
局所投与のための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、治療有効量の、請求項1乃至11の何れか1項に記載の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩、及び薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物において、前記組成物が経皮貼付剤であることを特徴とする組成物。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(訳文にて示す。)。
(1-1)「特許請求の範囲
1 それを必要とする患者に有効量のA_(2A)アデノシン受容体アゴニストを投与することを含む鎌状赤血球症の患者における急性炎症事象を治療する方法。
・・・
6 前記A_(2A)アデノシン受容体アゴニストが、式(I)を有する化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法:
(I)

式中
Z^(a)はC≡C・・・
ZはCR^(3)R^(4)R^(5)・・・
・・・
R^(4)とR^(5)は独立して水素、(C_(1)-C_(8))アルキル・・・
・・・
R^(3)は・・・(C_(3)-C_(8))シクロアルキル、ヘテロサイクル、ヘテロサイクル(C_(1)-C_(8))アルキレン・・・R^(a)C(=O)N(R^(b))-・・・
・・・
各R^(7)は独立に水素・・・
・・・
Xは・・・-C(O)NR^(b)R^(c)・・・
・・・
ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)・・・のいずれのアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクル・・・は、その炭素上で・・・CO_(2)R^(a) ・・・からなる群から選択される1又はそれ以上の置換基で任意に置換される。
・・・
各R^(a)、R^(b)、R^(c)は独立に水素、(C_(1)-C_(8))アルキル・・・アリール・・・
・・・
mは0?8・・・。
・・・」(特許請求の範囲)
(1-2)「

」(第7ページ左欄)

そうすると、引用文献1には、摘示(1-1)の式(I)の式に含まれる摘示(1-2)に記載の化合物が具体的に記載されている。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「下記の化合物:

式中
R^(c)はEt、cPr、R^(7)はH、-(R^(1))_(m)-Zは

又は



2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている(訳文にて示す。)。

(2-1)「特許請求の範囲
1 それを必要とする患者に有効量のA_(2A)アデノシン受容体アゴニストを投与することを含むC.ディフィシル又はC.デシフィシル毒素Aが誘発する状態を治療する方法であって、その状態が腸損傷、腸炎、下痢及びその組みあわせから選択される方法。
・・・
10 前記A_(2A)アデノシン受容体アゴニストが、式Iを有する化合物、立体異性体又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法:
I

式中
Z^(a)はC≡C・・・
ZはCR^(3)R^(4)R^(5)・・・
・・・
R^(4)とR^(5)は独立して水素、(C_(1)-C_(8))アルキル・・・
・・・
R^(3)は・・・(C_(3)-C_(8))シクロアルキル、ヘテロサイクル、ヘテロサイクル(C_(1)-C_(8))アルキレン・・・R^(a)C(=O)N(R^(b))-・・・
・・・
各R^(7)は独立に水素・・・
・・・
Xは・・・-C(O)NR^(b)R^(c)・・・
・・・
ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)・・・のいずれのアルキル、シクロアルキル、ヘテロサイクル・・・は、その炭素上で・・・CO_(2)R^(a) ・・・からなる群から選択される1又はそれ以上の置換基で置換される。
・・・
各R^(a)、R^(b)、R^(c)は独立に水素、(C_(1)-C_(8))アルキル・・・アリール・・・
・・・
mは0?8・・・。
・・・」(特許請求の範囲)
(2-2)「

・・・。」(第6ページ左欄)

そうすると、引用文献2には、摘示(2-1)の式Iの式に含まれる摘示(2-2)に記載の化合物が具体的に記載されている。
したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「下記の化合物:

式中
R^(c)はEt、cPr、R^(7)はH、-(R^(1))_(m)-Zは

又は




原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。
(3-1)「【請求項1】式(I)
【化1】

〔式中、Rは式(A)または(B)を示す:
【化2】

(式中、R^(1)はアルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン化アルキル基を示し、nは0?10の整数を示す)
【化3】

(式中、R^(2)は水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を示し、nは0?10の整数を示す)〕で表わされる2‐アルキニルアデノシン誘導体およびその塩。」【特許請求の範囲】
(3-2)「【0009】一般式(I)で表わされる2‐アルキニルアデノシン誘導体の代表的な例を以下に挙げる。
・・・
(7) 2‐(3‐N‐ベンゾイルアミノ‐1‐プロピニル)アデノシン(式(A):R1=フェニル、n=1)(化合物7)
(8) 2‐(3‐N‐(p‐クロロベンゾイル)アミノ‐1‐プロピニル)アデノシン(式(A):R1=p‐クロロフェニル、n=1)(化合物8)
(9) 2‐(3‐N‐(o‐メトキシベンゾイル)アミノ‐1‐プロピニル)アデノシン(式(A):R1=o‐メトキシフェニル、n=1)(化合物9)
・・・」
(3-3)「【0028】試験例1
(アデノシン受容体に対する親和性)アデノシン受容体に対する親和性は、R. F. Bruns 等、Mol. Pharmacol.,29,331-346,(1986);R. F. Bruns 等、Proc. Natl. Acad. Sci.,U.S.A. ,77,5547,(1980) ;特開昭63-201196号および特開昭62-111996号公報に記載された方法と実質的に同様の方法に従って測定した。すなわち、A_(1)受容体に対する親和性は、ウィスター系ラットの脳の膜調製品を用いて測定し、2.5nM〔^(3)H〕-N^(6)-シクロヘキシルアデノシン(〔^(3)H〕-CHA)の膜調製品への特異的結合を50%置換させる被検化合物の濃度から親和性定数(Ki)を算出した。また、A_(2)受容体に対する親和性は、ウィスター系ラットの線状体の膜調製品を用いて測定し、5nM〔^(3)H〕-5’-N-エチルカルボキサミドアデノシン(〔^(3)H〕-NECA)の膜調製品への特異的結合を50%置換させる被検化合物の濃度から親和性定数(Ki)を算出した。具体的には、放射性リガンド(〔^(3)H〕-CHAまたは〔^(3)H〕-NECA)の上記各膜調製品への飽和結合実験の結果から、解離定数(K_(D))および最大結合部位数(B_(max) )を求めた。さらに各種濃度の被検化合物を添加してインキュベートした結果から置換曲線を描き、上記濃度の放射性リガンドの特異的結合を50%置換させる被検化合物の濃度(IC_(50))を求めた。これらの結果からCheng およびPrusoff の計算式(Biochem.Pharmacol., 22,3099 (1973))によって親和性定数(Ki)を算出した(「神経伝達物質とレセプター結合」,第83?119頁,1987年9月15日,(株)星和書店発行参照)。また、A_(2)受容体に対する選択性は、上記各Ki値の比(A_(1)/A_(2))として表示した。結果を第1表に示す。
【0029】試験例 2
(SHRの血圧および心拍数に対する作用)雄性自然発症高血圧ラット(SHR)をウレタンとα-クロラロースを用いて麻酔した。血圧および心拍数は、頸動脈に挿入したカニューレを介して圧トランスデューサーを用いて測定した。被検化合物の投与は、大腿静脈より0.03?100μg/kg、公比3の用量で5分間隔で行い、各用量投与後、5分間における血圧および心拍数を測定し、その最大値を求めた。この結果から各SHRの被検化合物投与前の血圧を30% 降下させる被検化合物の用量(ED_(30))と、投与前の心拍数を10% 低下させる被検化合物の用量(ED_(10))をそれぞれ求めた。各被検化合物の血圧および心拍数に与える作用を各々ED_(30)およびED_(10)を指標として比較した。この結果も第1表に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【発明の効果】本発明化合物は、A_(2)受容体に対して高い親和性を有する一方、A_(1)受容体に対しては低い親和性を有する。すなわちA_(2)受容体に対する選択性が極めて高い化合物である。また、本発明化合物は、顕著な血圧降下作用を示す一方、心臓に対する抑制作用は低いものである。したがって、これらの化合物を、高血圧、虚血性疾患(虚血性心疾患、虚血性脳疾患など)などを治療または予防するための循環器疾患用薬として使用することが期待できる。」

第5 判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)


で表される部分化学構造を有する化合物」
(相違点1)
プリン環の2位のC≡Cの置換基について、本願発明1では

であり、R^(1)が、独立して、H等であり、R^(2)がC_(1-8)アルキル等であり、環Aが、フェニル環等であるのに対し、引用発明1では

又は

である点。
(相違点2)
リボースの5位のアミドの置換基について、本願発明1ではメチルであるのに対し、引用発明1ではEt又はcPrである点。

(2)相違点についての判断
(相違点1)
上記相違点1について検討すると、引用文献1には、プリン環の2位のC≡Cの置換基としてZはCR^(3)R^(4)R^(5)であって、R^(3)はR^(a)C(=O)N(R^(b))-、R^(4)とR^(5)は独立して水素、(C_(1)-C_(8))アルキル、R^(a)はアリール、R^(b)は(C_(1)-C_(8))アルキルを選択できることが記載されている(摘記(1-1))。しかしながら、Zは、R^(3)、R^(4)、R^(5)、R^(a)、R^(b)として前記選択できるものとして示した基以外にも数多くの選択肢を含んでおり、また、具体的に記載された化合物においても本願発明1の置換基とは全く異なる基であることから、これら多数の選択肢から本願発明1の特定の組みあわせを選択する動機付けはなく、当業者といえども容易に想到することはできない。
また、引用文献3には、式(I)の化合物において、プリン環の2位のC≡Cの置換基として、

が記載されており(摘記(3-1)、(3-2))、ここで、R^(1)はアリール基が選択できるが、N原子の置換基が水素原子であり(摘記(3-1))、アルキル等ではない。
そして、引用文献3の式(I)の化合物はA_(2A)アデノシン受容体に対して親和性を有することは記載されているものの(摘記(3-3))、A_(2A)アデノシン受容体アゴニストであることは記載されていない。
そうすると、引用文献3の上記記載をみても、引用発明1において、A_(2A)アデノシン受容体アゴニストである化合物を期待して、相違点1にかかる本願発明1の置換基を採用する動機付けはなく、当業者といえども容易に想到することはできないといえる。
(相違点2)
上記相違点2を検討すると、引用文献1においてリボースの5位の置換基としてアミドを選択した場合、その置換基は水素、(C_(1-8))アルキル、アリール等であることが記載されている(摘記(1-1))。そして、上記一致点の部分化学構造を有する化合物について、具体的に記載されたものは、エチル基、シクロプロピル基が記載されているにとどまり(摘記(1-2))、アルキルのうち該置換基として、むしろ、炭素数2?3のものを採用することが記載されており、炭素数1であるメチルを積極的に採用すべきということは記載ないし示唆されていないといえることから、当業者といえども容易に想到することはできないといえる。
また、引用文献3では、式(I)の化合物のリボースの5位は何ら変換されておらず、引用文献3の記載から、引用発明1においてリボースの5位を変換することに当業者が想到することに困難があるといわざるを得ず、当業者といえども容易に想到することはできないといえる。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(3)対比
本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)


で表される部分化学構造を有する化合物」
(相違点1)
プリン環の2位のC≡Cの置換基が、本願発明1では

であり、R^(1)は、独立して、H等であり、R^(2)はC_(1-8)アルキル等であり、環Aは、フェニル環等であるのに対し、引用発明2では

又は

である点。
(相違点2)
リボースの5位のアミドの置換基が、本願発明1ではメチルであるのに対し、引用発明2ではEt又はcPrである点。

(4)相違点についての判断
(相違点1)
上記相違点1について検討すると、引用文献2には、プリン環の2位のC≡Cの置換基としてZはCR^(3)R^(4)R^(5)であって、R^(3)はR^(a)C(=O)N(R^(b))-、R^(4)とR^(5)は独立して水素、(C_(1)-C_(8))アルキル、R^(a)はアリール、R^(b)は(C_(1)-C_(8))アルキルを選択できることが記載されている(摘記(2-1))。しかしながら、Zは、R^(3)、R^(4)、R^(5)、R^(a)、R^(b)として前記選択できるものとして示した基以外にも数多くの選択肢を含んでおり、また、具体的に記載された化合物においても本願発明1の置換基とは全く異なる基であることから、これら多数の選択肢から本願発明1の特定の組みあわせを選択する動機付けはなく、当業者といえども容易に想到することはできない。
また、引用文献3には、式(I)の化合物において、プリン環の2位のC≡Cの置換基として、

が記載されており(摘記(3-1)、(3-2))、ここで、R^(1)はアリール基が選択できるが、N原子の置換基が水素原子であり(摘記(3-1))、アルキル等ではない。
そして、引用文献3の式(I)の化合物はA_(2A)アデノシン受容体に対して親和性を有することは記載されているものの(摘記(3-3))、A_(2A)アデノシン受容体アゴニストであることは記載されていない。
そうすると、引用文献3の上記記載をみても、引用発明2において、A_(2A)アデノシン受容体アゴニストである化合物を期待して、相違点1にかかる本願発明1の置換基を採用する動機付けはなく、当業者といえども容易に想到することはできないといえる。
(相違点2)
上記相違点2を検討すると、引用文献2においてリボースの5位の置換基としてアミドを選択した場合、その置換基は水素、(C_(1-8))アルキル、アリール等であることが記載されている(摘記(2-1))。そして、上記一致点の部分化学構造を有する化合物について、具体的に記載されたものは、エチル基、シクロプロピル基が記載されているにとどまり(摘記(2-2))、アルキルのうち該置換基として、むしろ、炭素数2?3のものを採用することが記載されており、炭素数1であるメチルを積極的に採用すべきということは記載ないし示唆されていないといえることから、当業者といえども容易に想到することはできないといえる。
また、引用文献3では、式(I)の化合物のリボースの5位は何ら変換されておらず、引用文献3の記載から、引用発明2においてリボースの5位を変換することに当業者が想到することに困難があるといわざるを得ず、当業者といえども容易に想到することはできないといえる。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2?19について
本願発明2?19も、式Iaの化合物において、プリン環の2位の置換基が、

であり、R^(1)は、独立して、H等であり、R^(2)はC_(1-4)アルキル等であり、環Aは、フェニル環等であり、リボースの5位の置換基が

であり、Rがメチルであるとの構成を少なくとも備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1又は引用発明2、及び、引用文献3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3.理由1に対するまとめ
以上のとおり、本願発明1?19は、当業者が引用文献1?3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-09 
出願番号 特願2015-525562(P2015-525562)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C07H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新留 素子  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 冨永 保
瀬下 浩一
発明の名称 A2AアゴニストとしてのN-アルキル2-(二置換)アルキニルアデノシン-5’-ウロンアミド  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  
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