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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W |
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管理番号 | 1351143 |
審判番号 | 不服2018-2773 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-27 |
確定日 | 2019-05-21 |
事件の表示 | 特願2014-107465「移動局、移動通信システム及びネットワーク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日出願公開、特開2015- 89101、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成26年5月23日(国内優先権主張 平成25年9月26日)の出願であって,その手続の経緯は以下の通りである。 平成29年 5月12日付け 拒絶理由通知書 平成29年 6月28日 意見書,手続補正書の提出 平成29年11月21日付け 拒絶査定 平成30年 2月27日 拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成29年11月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(特許法第29条第1項第3号)について ・請求項 1,3 ・引用文献等 1 ●理由2(特許法第29条第2項)について ・請求項 1,3 ・引用文献等 1又は1,3-4 ・請求項 2,4-5 ・引用文献等 1-2又は1-4 <引用文献等一覧> 1.特開2012-119826号公報 2.特開2010-41630号公報 3.特開2012-23642号公報(新たに引用された文献;周知技術を示す文献) 4.特表2013-526181号公報(新たに引用された文献;周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1-5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は,平成30年2月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 アプリケーション機能部と,NAS機能部と,RRC機能部とを備える移動局であって, 前記アプリケーション機能部は,所定サービスの発信要求を前記NAS機能部に送信し, 前記NAS機能部は,前記所定サービスに起因する発信要求であることを示す発信サービス値を含むサービス要求を前記RRC機能部に送信し, 前記RRC機能部は,前記NAS機能部から受信した前記サービス要求に前記発信サービス値が含まれている場合,移動通信ネットワークによってアクセス規制が発動されている場合でも,RRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信し, 前記所定サービスは,ショートメッセージサービス(SMS),災害用伝言板及び音声通話の何れかである移動局。」 本願発明2-5の概要は,以下のとおりである。 本願発明2,3は,本願発明1を減縮した発明である。 本願発明4は,本願発明1のRRC機能部について,「移動通信ネットワークによってアクセス規制が発動されている場合でも,RRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信し」との事項を,「移動通信ネットワークからRRCコネクション拒絶によって通知される待機値に基づく待機タイマが起動中であってもRRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信し」との事項に置き換えた発明である。 本願発明5は,本願発明4を減縮した発明である。 第4 引用例の記載事項及び引用発明 1.引用例1 原査定の拒絶の理由で引用された,特開2012-119826号公報(以下,「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与したものである。) 「【0024】 図2に示すように,移動局UEは,IMS/MMTEL機能11と,アプリケーション機能12と,NAS(Non Access Stratum)機能13と,AS機能14とを具備している。」 (中略) 【0026】 アプリケーション機能12は,IMS/MMTELレイヤ以外のアプリケーションレイヤの役割を果たすものであり,NAS機能13に対して,かかるアプリケーションレイヤによって制御されるアプリケーションの発信要求を送信するように構成されている。 【0027】 NAS機能13は,NASレイヤの役割(アタッチ制御や位置登録制御や発着信制御等)を果たすように構成されている。 【0028】 また,NAS機能13は,IMS/MMTEL機能11やアプリケーション機能12から発信要求を受信した場合,かかる発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプ(サービスタイプ)を特定し,AS機能14に対して,特定した宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプを示す「Type Indicator」を含む発信要求を送信するように構成されている。 【0029】 AS機能14は,AS/RRC(Radio Resource Control)レイヤの役割(無線発着信制御や無線リソース制御や無線測定制御等)を果たすように構成されている。 【0030】 具体的には,AS機能14は,待ち受けセルにおいて,無線基地局eNBによって送信されている報知情報を受信するように構成されている。 【0031】 例えば,AS機能14は,待ち受けセルにおいて,「ac-Barring For MO-Data」や,「ac-Barring For MO-Signalling」や,「SSAC For MMTEL-Voice」や,「SSAC For MMTEL-Video」や,CSFB用アクセス規制情報や,MTC用アクセス規制情報に加えて,「ac-Barring(ACB) For TYPE x」を受信するように構成されている。 【0032】 また,AS機能14は,待ち受けセルにおいて,NAS機能13から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプに対応する「ac-Barring For TYPE x」が報知されているか否かに応じて,かかる発信要求を送信するか否かについて判定するように構成されている。」 (中略) 【0037】 図3に示すように,ステップS1000において,移動局UEのAS機能14は,待ち受けセルにおいて,無線基地局eNBによって報知されている報知情報,例えば,「ac-Barring For TYPE x」を受信する。 【0038】 ステップS1001において,移動局UEのIMS/MMTEL機能11又はアプリケーション機能12が,移動局UEのNAS機能13に対して,発信要求を送信する。 【0039】 NAS機能13は,ステップS1002において,かかる発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプを特定し,ステップS1003において,AS機能14に対して,かかるEPSベアラのタイプを示す「Type Indicator」を含む発信要求を送信する。 【0040】 ステップS1004において,AS機能14は,待ち受けセルにおいて,NAS機能13から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプに対応する「ac-Barring For TYPE x」が報知されているか否かに応じて,かかる発信要求を送信するか否かについて判定する。 【0041】 AS機能14は,待ち受けセルにおいて,NAS機能13から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプに対応する「ac-Barring For TYPE x」が報知されていないと判定した場合,無線基地局eNBに対して,かかる発信要求を送信する。 【0042】 一方,AS機能14は,待ち受けセルにおいて,NAS機能13から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプに対応する「ac-Barring For TYPE x」が報知されていると判定した場合,報知されている「ac-Barring For TYPE x」に応じた規制判定処理を行い,その結果,規制中であると判定した場合,無線基地局eNBに対して,かかる発信要求を送信しない。」 上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると,引用例1には,次の技術事項が記載されている。 ア 上記段落0024には,アプリケーション機能とNAS機能とAS機能とを備える移動局が記載されている。 イ 上記段落0026-0028の記載によると,アプリケーション機能は,NAS機能に対してアプリケーションの発信要求を送信し,NAS機能は,発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプを含む発信要求をAS機能に送信することが記載されていると認められる。 ウ 上記段落0041,0042の記載によると,AS機能は,NAS機能から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプと,eNBから報知された「ac-Barring For TYPE x」との対応に基づいて規制判定処理を行うものであるから,「ac-Barring For TYPE x」は,アクセス規制の対象を示すものであるといえるところ,上記0041の記載よると,AS機能が,NAS機能から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプに対応する「ac-Barring For TYPE x」が報知されていない場合,eNBに対して,かかる発信要求を送信することが記載されていると認められる。 そうすると,引用例1には,AS機能は,NAS機能から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプがeNBからの報知情報に対応しない場合に,eNBに対して前記発信要求を送信することが記載されていると認められる。 したがって,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「アプリケーション機能とNAS機能とAS機能とを備える移動局であって, アプリケーション機能はNAS機能に対してアプリケーションの発信要求を送信し, NAS機能は,発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプを含む発信要求をAS機能に送信し, AS機能は,NAS機能から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプがeNBからの報知情報に対応しない場合に,eNBに対して前記発信要求を送信する,移動局」 2.引用例2 原査定の拒絶の理由で引用された,特開2010-41630号公報(以下,「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与したものである。) 「【0012】 図2に示すように,本実施形態に係る移動局UEは,AS(Access Stratum)処理部100として,ASコネクション(第1コネクション)制御部11を具備し,NAS(Non Access Stratum)処理部200として,規制処理部21と,NASコネクション(第2コネクション)制御部22とを具備している。」 「【0016】 また,NASコネクション制御部22は,特定通信用のASコネクションの設定処理において無線基地局eNBに対して送信するASコネクション設定応答信号(RRC Connection Setup Complete)内で,NASコネクション設定要求信号を送信するように構成されていてもよい。 【0017】 規制処理部23は,NASコネクション設定要求信号に対する拒絶信号(PDN Connectivity Reject/Service Reject)を受信してから当該拒絶信号に含まれている規制時間が経過するまで,特定通信用のASコネクションを設定するように要求するASコネクション設定要求信号(RRC Connection Request)及びNASコネクション設定要求信号の送信を規制するように構成されている。 【0018】 ただし,NASコネクション設定要求信号に対する拒絶信号を受信してから当該規制時間が経過するまでであっても,ASコネクション制御部11は,緊急呼用のASコネクションを設定するように要求するASコネクション設定要求信号を送信することができ,NASコネクション制御部22は,緊急呼用のNASコネクションを設定するように要求するNASコネクション設定要求信号を送信することができるものとする。 【0019】 また,NASコネクション設定要求信号に対する拒絶信号を受信してから当該規制時間が経過するまでであっても,ASコネクション制御部11は,特定接続先以外の接続先に対するASコネクション設定要求信号やNASコネクション設定要求信号を送信することができるものとする。」 したがって,上記引用例2には「移動局が無線基地局から拒絶信号を受信することにより,所定の規制時間が経過するまで,ASコネクション設定要求信号の送信が規制されている場合に,緊急呼のASコネクション設定については,前記規制を受けることなく無線基地局に送信できる」ことが記載されていると認められる。 3.周知例1 原査定の拒絶の理由で引用された,特開2012-23642号公報(以下,「周知例1」という。)の段落0063-0075には,以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与したものである。) 「【0063】 続いて,図5を参照して,基地局10及び携帯電話機20に係る処理の流れについて説明する。 図5は,本実施形態に係る規制部17による通信規制状態における,携帯電話機20及び基地局10の発呼要求に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお,発呼要求に含まれている緊急発呼要求フラグの初期値は,OFFに設定されるものとする。また,携帯電話機20は,基地局10から規制信号及び確率情報を受信しているものとする。 【0064】 ステップS101において,第2制御部28は,操作部22及び緊急操作部23により発呼要求の入力を受け付けたか否かを判定する。第2制御部28は,この判定がYESの場合,ステップS102に処理を移し,この判定がNOの場合,ステップS101の処理を再実行する。 (中略) 【0069】 ステップS109において,第1制御部18は,ステップS108において受信した発呼要求が緊急発呼要求であるか否かを判定する。具体的には,第1制御部18は,この発呼要求に含まれている緊急発呼要求フラグに基づいて,発呼要求が緊急発呼要求であるか否かを判定する。第1制御部18は,この判定がYESの場合,処理をステップS110に移し,この判定がNOの場合,処理をステップS113に移す。 【0070】 ステップS110において,第1制御部18は,ステップS108において受信した発呼要求に含まれる所定の宛先が緊急電話番号か否かを判定する。具体的には,第1制御部18は,ステップS108において受信した発呼要求に含まれる所定の宛先が,第1記憶部16に記憶されている特定の宛先であるか否かを判定する。第1制御部18は,この判定がYESの場合,処理をステップS111に移し,この判定がNOの場合,処理をステップS112に移す。 【0071】 ステップS111において,第1制御部18は,携帯電話機20と,この発呼要求に対応する所定の宛先との通信を接続する。この処理が完了すると,本フローチャートに係る処理を終了する。すなわち,携帯電話機20は,通話可能状態となる。 【0072】 ステップS112において,第1制御部18は,発呼要求情報を,ショートメッセージ機能(ショートメッセージサービス)を使用して,第1通信部15により所定の宛先に送信させる。 【0073】 ステップS113において,第1制御部18は,携帯電話機20に切断要求(リリースオーダー)を送信する。 【0074】 ステップS114において,第2制御部28は,基地局10から切断要求(リリースオーダー)を受信する。 ステップS115において,第2制御部28は,ステップS114において,切断要求(リリースオーダー)を受信したことに応じて,基地局10との通信を切断する。 【0075】 以上のように,本実施形態の通信システム1によれば,第1制御部18は,規制部17による通信規制状態において,第1通信部15により携帯電話機20から所定の宛先への発呼要求を受信した場合,所定の宛先に携帯電話機20からの発呼を示す発呼要求情報を送信させ,この発呼要求に基づく携帯電話機20との通信を切断する。 (後略)」 したがって,上記周知例1には,「通信規制時に発呼が行われた場合,通話の代わりに,発呼情報をショートメッセージを使用して送信する。」という周知技術が記載されていると認められる。 4.周知例2 原査定の拒絶の理由で引用された,特表2013-526181号公報(以下,「周知例2」という。)の段落0032には,以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与したものである。) 「【0032】 APNは,データサービスのためのPDNゲートウェイまたはホームエージェントを選択するために使用される論理名に関する文字列によって与えられうる。異なるネットワークオペレータは別個にAPNを定義しうる。例えば,ネットワークオペレータは,(i)ネットワークオペレータを識別するオペレータ識別子(ID),および,(ii)ネットワークオペレータについてのルーティング情報を特定するネットワークIDを含むようにAPNを定義しうる。ネットワークオペレータは,さらに,例えば,「sms.xyz.com」など,サービスに基づいてAPNを定義しうる。ここで,「sms」はサービスを表し,「xyz」はネットワークオペレータの名称を表す。一般に,APNは,特定のデータサービスのためにUEのアタッチのポイントを特定しうる。」 したがって,上記周知例2には,「サービスに基づいて接続先のAPNの宛先を決定する。」という周知技術が記載されていると認められる。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア.引用発明の「アプリケーション機能」,「NAS機能」は,明らかに,本願発明の「アプリケーション機能部」,「NAS機能部」に相当する。 そして,RRCの機能は,RRCレイヤの役割を果たすものであることが,当業者の技術常識であるところ,引用例1の段落0029によると,AS機能はRRCレイヤの役割を果たすものであるから,引用発明の「AS機能」は,RRCレイヤの役割を果たす「RRC機能部」であるといえる。 そうすると,引用発明の「移動局」は,「アプリケーション機能部と,NAS機能部と,RRC機能部とを備える移動局」といえる点で,本願発明1の「移動局」と共通している。 イ.本願の明細書の段落0078-0080によると,本願発明1のアプリケーション機能部からの「所定サービスの発信要求」は,SMS等を実行するアプリケーションからの発信要求を含むものであるから,本願発明1の「所定サービスの発信要求」は,「アプリケーションの発信要求」を含むものである。 したがって,引用発明の「アプリケーションの発信要求」は,本願発明1の「所定サービスの発信要求」に含まれる。 ウ.引用発明の「発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラ」と,本願発明1の「所定サービスに起因する発信要求であることを示す発信サービス値」とは,いずれも所定サービスの発信要求に関する情報に含まれるものである。 そして,NAS機能からAS機能に対しての発信要求は,サービス要求として送信されることが,当業者の技術常識であって,引用発明においても,NAS機能が,発信要求をサービス要求としてAS機能に送信するものであるといえるところ,引用発明の「NAS機能は,発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプを含む発信要求をAS機能に送信」することと,本願発明1とは,NAS機能部が,所定サービスの発信要求に関する情報を含むサービス要求をRRC機能部に送信することで共通する。 エ.本願発明1の「NAS機能部から受信した前記サービス要求に前記発信サービス値が含まれている場合,RRCコネクション要求を移動通信ネットワークに送信する」ことは,本願の明細書の段落0079,図14などの記載によると,「NAS機能部から受信した前記サービス要求に」含まれている「発信サービス値」が,移動通信ネットワークからの報知情報に対応する場合に,前記サービス要求に対応したRRCコネクション要求を移動通信ネットワークに送信することを含む。 そして,また,eNBは,明らかに移動通信ネットワークに含まれるものであるところ,移動局がアイドル状態にあるときに,RRC機能部に対して発信要求が行われると,前記発信要求に対応するRRCコネクション要求を移動通信ネットワークに対して送信することは,当業者の技術常識であって,引用例1の上記段落0041-0042の記載によると,待機セルにおいて移動局がアイドル状態のときに,RRC機能部に対して発信要求が行われると,前記発信要求に対応するRRCコネクション要求を移動通信ネットワークに送信することが記載されていると認められる。 そうすると,引用発明の「AS機能は,NAS機能から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプがeNBからの報知情報に対応しない場合に,eNBに対して発信要求を送信する」ことと,本願発明1の「前記RRC機能部は,前記NAS機能部から受信した前記サービス要求に前記発信サービス値が含まれている場合,移動通信ネットワークによってアクセス規制が発動されている場合でも,RRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信」することとは,RRC機能部が,NAS機能部から受信した所定サービス要求に含まれる所定サービスの発信要求に関する情報が,移動通信ネットワークからの報知情報に対応するか否かに応じて,前記所定のサービスの発信要求に対応するRRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信することで共通する。 したがって,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。 [一致点] 「アプリケーション機能部と,NAS機能部と,RRC機能部とを備える移動局であって, 前記アプリケーション機能部は,所定サービスの発信要求を前記NAS機能部に送信し, 前記NAS機能部は,前記所定サービスの発信要求に関する情報を含むサービス要求をRRC機能部に送信し, 前記RRC機能部が,前記NAS機能部から受信した前記所定サービス要求に含まれる所定サービスの発信要求に関する情報が,移動通信ネットワークからの報知情報に対応するか否かに応じて,前記所定のサービスの発信要求に対応するRRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信する,移動局。」 [相違点1] 一致点の「所定サービスの発信要求に関する情報」に関し,本願発明1は,「所定サービスに起因する発信要求であることを示す発信サービス値を含むサービス要求」であるのに対して,引用発明は,「発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプを含む発信要求」である点。 [相違点2] 一致点の「前記所定サービス要求に含まれる所定サービスの発信要求に関する情報が,移動通信ネットワークからの報知情報に対応するか否かに応じて,RRCコネクション要求を送信する」ことに関し,本願発明1は,「前記サービス要求に前記発信サービス値が含まれている場合,移動通信ネットワークによってアクセス規制が発動されている場合でも,RRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信」するのに対して,引用発明は,「NAS機能から受信した発信要求の宛先APNに対して設定されているEPSベアラのタイプがeNBからの報知情報に対応しない場合に,eNBに対して前記発信要求を送信する」点。 [相違点3] 本願発明1では,「前記所定サービスは,ショートメッセージサービス(SMS),災害用伝言板及び音声通話の何れかである」との発明特定事項を有するのに対して,引用発明では,そのような特定事項を有していない点。 (2)判断 まず,相違点2について検討する。 本願発明1の「前記サービス要求に前記発信サービス値が含まれている場合,移動通信ネットワークによってアクセス規制が発動されている場合でも,RRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信」することは,所定サービスの発信要求に関する情報が,報知情報に対応する場合,「移動通信ネットワークによってアクセス規制が発動されている場合でも」RRCコネクション要求を送信できるようにすることで,所定サービスの発信要求をアクセス規制から除外するものであると認められる。 一方,引用発明は,所定サービスの発信要求に関する情報が,アクセス規制の対象として報知情報に対応しない場合に,RRCコネクション要求を送信するものであって,報知情報に対応する所定サービスの発信要求をアクセス規制から除外することについては開示されておらず,そのようにする動機付けも見出せない。 また,周知例1には,「通信規制時に発呼が行われた場合,通話の代わりに,発呼情報をショートメッセージを使用して送信する」こと,及び周知例2には,「サービスに基づいて接続先のAPNの宛先を決定する」という周知技術が記載されているのみであり,引用発明に,前記周知例1,2に記載された周知技術を適用できたとしても,上記相違点2に係る構成に至らないことは明らかである。 よって,相違点2を,当業者が容易に想到できたものとすることはできない。 したがって,その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明,及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に想到できたとはいえない。 そして,本願発明1は,引用発明に基づいて,当業者が容易に想到できたものではないから,引用発明と同一のものでもない。 2.本願発明2-3について 本願発明2-3は,本願発明1を減縮したものであるから,引用発明に,引用例2に記載された技術を適用できたとしても,上記1(2)と同様の理由によって,引用発明,引用例2に記載の技術,及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。 そして,本願発明3は,引用発明に基づいて,当業者が容易に想到できたものではないから,引用発明と同一のものでもない。 3.本願発明4について (1)対比 本願発明4と引用発明とを対比する。 本願発明4は,本願発明1における「RRC機能部は,..移動通信ネットワークによってアクセス規制が発動されている場合でも,RRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信」するとの事項を,「RRC機能部は,..移動通信ネットワークからRRCコネクション拒絶によって通知される待機値に基づく待機タイマが起動中であってもRRCコネクション要求を前記移動通信ネットワークに送信」するとの事項としたものであるところ,本願発明1と引用発明とは,上記1(1)ア-ウで述べたとおりであるから,同様に,本願発明4と引用発明とは,上記1(1)の一致点で一致し,また,以下の点で相違している。 [相違点1,3] 上記1(1)の相違点1,3と同様である。 [相違点2] 一致点の「所定サービスの発信要求に関する情報が,移動通信ネットワークからの報知情報に対応するか否かに応じて」RRCコネクション要求を送信することに関し,本願発明4は,サービス要求に含まれる所定サービスの発信要求に関する情報が,報知情報に対応する場合,「移動通信ネットワークからRRCコネクション拒絶によって通知される待機値に基づく待機タイマが起動中であっても」前記所定のサービスの発信要求に対応するRRCコネクション要求を送信するのに対して,引用発明は,所定サービスの発信要求に関する情報が,報知情報に対応しない場合に,前記所定のサービスの発信要求に対応するRRCコネクション要求を送信する点。 (2)判断 まず,相違点2について検討する。 本願発明4は,「移動通信ネットワークからRRCコネクション拒絶によって通知される待機値に基づく待機タイマ」を備え,前記タイマに基づいてアクセス規制を行い,サービス要求に所定サービスの発信要求に関する情報が,報知情報に対応する場合,「移動通信ネットワークからRRCコネクション拒絶によって通知される待機値に基づく待機タイマが起動中であっても」前記所定のサービスの発信要求に対応するRRCコネクション要求を送信することで,所定サービスの発信要求をアクセス規制から除外するものであると認められる。 一方,引用発明は,eMBからの報知情報に対応する所定サービスの発信要求に対してアクセス規制するものであり,「移動通信ネットワークからRRCコネクション拒絶によって通知される待機値に基づく待機タイマ」を備えること,及び報知情報に対応する所定サービスの発信要求をアクセス規制から除外することについては開示されていない。 そして,引用例2に記載された技術は,引用発明の前提である,eMBからの報知情報に対応する所定サービスの発信要求に対してアクセス規制するものではないため,引用発明に引用例2に記載された技術を適用できたとしても,上記相違点2に係る構成に至らないことは明らかである。 また,周知例1には,「通信規制時に発呼が行われた場合,通話の代わりに,発呼情報をショートメッセージを使用して送信する」こと,及び周知例2には,「サービスに基づいて接続先のAPNの宛先を決定する」という周知技術が記載されているのみであり,引用発明に,引用例2に記載の技術に加えて,前記周知例1,2に記載された周知技術を適用できたとしても,上記相違点2に係る構成に至らないことも明らかである。 したがって,その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用例1に記載された発明,及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に想到できたとはいえない。 4.本願発明5について 本願発明5は,本願発明4をさらに限定したものであるから,上記4と同様の理由によって,引用例1に記載された発明,及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に想到できたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-05-08 |
出願番号 | 特願2014-107465(P2014-107465) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石田 紀之 |
特許庁審判長 |
菅原 道晴 |
特許庁審判官 |
長谷川 篤男 脇岡 剛 |
発明の名称 | 移動局、移動通信システム及びネットワーク装置 |
代理人 | 三好 秀和 |