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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1351182
審判番号 不服2018-11040  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-10 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2014- 50337「光偏向装置,光偏向ミラー及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 5日出願公開,特開2015-175889,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成26年3月13日の出願であって,以降の手続は次のとおりである。
平成29年11月 1日 拒絶理由通知(同年同月7日発送)
同年12月27日 手続補正書・意見書提出
平成30年 5月14日 拒絶査定(同年同月22日送達)
同年 8月10日 審判請求書・手続補正書提出
平成31年 2月27日 拒絶理由通知(同年3月5日発送)
同年 3月20日 手続補正書提出

2 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明は,平成31年3月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうち請求項1及び6に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1及び6に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである(以下,本願の請求項1?7に係る発明を,それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)。

「【請求項1】
反射面を有するミラーと,
前記ミラーを回転可能に支持するとともに複数の折返部を有して蛇行して形成した一対の蛇行状梁部と,
前記蛇行状梁部の前記各梁部にそれぞれ設けた複数の圧電部材と,を有し,
前記複数の圧電部材に電圧波形を印加することにより前記各梁部を変形させ,その変形の累積により前記ミラーを回転駆動させる光偏向装置において,
所定の温度において,前記各圧電部材に印加する電圧波形の駆動周波数fvを,nを整数として,前記光偏向装置の共振周波数f0との相対比がf0/fv=n+1/2となるように調整することで,前記ミラーの周辺の所定範囲の温度変化に対する共振周波数のシフトをΔfとして,前記駆動周波数fvにn<(f0+Δf)/fv<n+1の関係を維持させる電圧調整部を有することを特徴とする光偏向装置。」
「【請求項6】
光軸と直交する同一面内で互いに直交する2軸を回動させることによって二次元光走査を行うミラーと,
前記ミラーを回転可能に支持するとともに複数の梁部を折り返すように蛇行状に形成した蛇行状梁部と,
前記蛇行状梁部の前記各梁部にそれぞれ設けた複数の圧電部材と,を有し,
前記2軸のうち,少なくとも一方の軸周りの回転駆動に請求項1乃至請求項5の何れか1の請求項に記載の光偏向装置の共振周波数との周波数の相対比が整数倍にならない駆動周波数を有する電圧波形が前記圧電部材に印加されることを特徴とする光偏向ミラー。」

なお,請求項2?5の記載は請求項1の記載をより限定したものであり,請求項7には請求項1?5に係る光偏向装置を備えた画像投影装置が記載されている。

3 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。
---< 引用例等一覧 >-------------------
1 特開2012-185315号公報
2 特開2012-252265号公報
3 特開2012-242461号公報
--------------------------------
引用例1には,「第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形を規定する前記正弦波Sa,Sbの周波数は,これらの周波数が,光偏向器A1のミラー部1の揺動軸X2周りの揺動に関する固有振動数(詳しくは,外側圧電アクチュエータ10a,10b,可動部9,トーションバー2a,2bにより構成される機構の固有振動数。以降,ミラー部揺動固有振動数という)に一致もしくは近接した周波数とならないように選定されている。」との技術思想が記載され,「ミラー部揺動固有振動数(102Hz,205Hz)」に対して,第1駆動電圧及び第2駆動電圧の周波数を60Hzとすることも記載されており,上記技術思想を具体化するにあたり,周波数を最適化するための調整部を設けることは当業者にとって容易であり,また,使用される温度を想定して周波数の調整を行うことは適宜になし得ることであるから,請求項1?7に係る発明は,引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである,というものである。

4 引用例に記載された発明
(1)引用例1に記載された発明
ア 本願の出願前に日本国内において頒布され,原査定の理由に引用された文献である引用例1(特開2012-185315号公報)には,図とともに以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)
「【0033】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1?図6を参照して説明する。なお,本実施形態は,前記第1発明の一実施形態である。
【0034】
図1に示すように,本実施形態の光偏向器A1は,入射された光を反射するミラー部1と,ミラー部1が搭載された可動部9と,ミラー部1を可動部9に対して揺動軸X1の周りに揺動させるための圧電アクチュエータ8a,8b,8c,8dと,ミラー部1及び可動部9を支持基体11に対して揺動軸X2の周りに揺動させるための圧電アクチュエータ10a,10bとを備えている。
【0035】
ミラー部1は,円板状のミラー部基体1aと,このミラー部基体1a上に光の反射面として形成された金属薄膜1bとを備え,ミラー部基体1aの直径方向の両端から外側へ向かって1対のトーションバー2a,2bが延設されている。そして,ミラー部1は,これらのトーションバー2a,2bを介して可動部9に連結されて,該可動部9に搭載されている。
【0036】
具体的には,可動部9は,方形枠状に形成されており,ミラー部1の周囲を囲むように設けられている。そして,ミラー部基体1aから延設されたトーションバー2a,2bのそれぞれの先端部が,可動部9の内周部に連結されている。これにより,ミラー部1は,トーションバー2a,2bを介して可動部9に連結されていると共に,トーションバー2a,2bの捩れによって,該トーションバー2a,2bの軸心たる揺動軸X1の周りに揺動可能となっている。
【0037】
ミラー部1を可動部9に対して揺動させる圧電アクチュエータ8a?8dは,本実施形態では,2対備えられている。その一方の対の圧電アクチュエータ8a,8cは,可動部9の内側でトーションバー2aを挟んで対向するように配置され,他方の対の圧電アクチュエータ8b,8dは,可動部9の内側でトーションバー2bを挟んで対向するように配置されている。
【0038】
以降,これらの圧電アクチュエータ8a?8dを内側圧電アクチュエータ8a?8dという。また,これらの内側圧電アクチュエータ8a?8dを区別する必要が無いときは,それぞれを総称的に内側圧電アクチュエータ8という。
【0039】
各内側圧電アクチュエータ8は,圧電駆動によって屈曲変形するように構成された圧電カンチレバーにより構成されている。そして,一方の対の内側圧電アクチュエータ8a,8cは,トーションバー2aと直交する方向(揺動軸X1と直交する方向)に延在しており,それぞれの先端部がトーションバー2aに連結されると共に,それぞれの基端部が可動部9の内周部に連結されている。
【0040】
同様に,圧電アクチュエータ8b,8dは,トーションバー2bと直交する方向(揺動軸X1と直交する方向)に延在しており,それぞれの先端部がトーションバー2bに連結されると共に,それぞれの基端部が可動部9の内周部に連結されている。
【0041】
支持基体11は,方形枠状に形成されており,可動部9の周囲を囲むように設けられている。そして,ミラー部1及び可動部9を支持基体11に対して揺動させる一対の圧電アクチュエータ10a,10bが,支持基体11の内周部と可動部9の外周部との間で,可動部9を挟んで揺動軸X2の方向(揺動軸X1と直交する方向)に対向するようにして配置されており,これらの圧電アクチュエータ10a,10bを介して,可動部9が支持基体11に支持されている。
【0042】
以降,これらの圧電アクチュエータ10a,10bを外側圧電アクチュエータ10a,10bという。また,これらの外側圧電アクチュエータ10a,10bを区別する必要が無いときは,それぞれを総称的に外側圧電アクチュエータ10という。
【0043】
各外側圧電アクチュエータ10は,圧電駆動によって屈曲変形するようにそれぞれ構成された複数(図示例では4つ)の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)を連結して構成されている。この場合,各外側圧電アクチュエータ10を構成する複数の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)は,支持基体11の内周部と可動部9の外周部との間で,揺動軸X2と直交する方向(揺動軸X1と同方向)に延在して,該揺動軸X2の方向に間隔を存して並ぶように配置されていると共に,そのそれぞれの圧電カンチレバーが隣合う圧電カンチレバーに対して折り返されるように連結されている。従って,各外側圧電アクチュエータ10は,揺動軸X2と直交する方向を振幅方向として蛇行するようにして延在している。
【0044】
そして,各外側圧電アクチュエータ10の一端部(最も支持基体11寄りの圧電カンチレバー3(4)の基端部)が,支持基体11の内周部に連結されると共に,他端部(最も可動部9寄りの圧電カンチレバー3eの先端部)が,可動部9の外周部に連結されている。
【0045】
これにより,可動部9が,外側圧電アクチュエータ10a,10bを介して支持基体11に支持されていると共に,各外側圧電アクチュエータ10を構成する圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)の屈曲変形によって支持基体11に対して揺動軸X2の周りに揺動可能となっている。」

(イ)
「【0062】
次に,本実施形態の光偏向器A1の作動を以下に説明する。
【0063】
光偏向器A1は,例えば,電子写真の画像形成装置や,走査型ディスプレイ等の画像表示装置に備えられ,ミラー部1に入射する光を,画像投影面等に対して偏向・走査する。
【0064】
・・・(中略)・・・
【0067】
一方,ミラー部1の揺動軸X2周りの揺動は,本実施形態では,次のように行なわれる。
【0068】
本実施形態では,外側圧電アクチュエータ10a,10bを圧電駆動する第2制御手段22は,その機能として,外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動するための第1駆動電圧を出力する第1駆動電圧出力手段22aと,外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動するための第2駆動電圧を出力する第2駆動電圧出力手段22bとを備えている。従って,第2制御手段22は,本発明における駆動電圧出力手段に相当するものである。
【0069】
そして,第2制御手段22は,外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)のそれぞれの下部電極5と上部電極7と間に,第1駆動電圧を印加することで,各圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動して屈曲変形させる。同時に,第2制御手段22は,外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)のそれぞれの下部電極5と上部電極7と間に,第2駆動電圧を印加することで,各圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動して屈曲変形させる。
【0070】
上記第1駆動電圧及び第2駆動電圧は,例えば図4(a),(b)にそれぞれ示すように,一定振幅での電圧値の増減を周期的に繰り返す波形の所定周波数の電圧信号である。この場合,これらの第1駆動電圧及び第2駆動電圧の周波数は互いに同じであり,例えば60Hzである。
【0071】
そして,第1駆動電圧は,その電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をT1a,電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をT1bとしたとき(T1a+T1bは第1駆動電圧の1周期分の時間幅),T1aとT1bとの比率は,T1a,T1bの一方が他方よりも長い時間幅となるように設定されている。
【0072】
具体的には,本実施形態では,T1a>T1bとされると共に,それらの比率は,例えば,T1a:T1b=6:4となるように設定されている。
【0073】
さらに,第1駆動電圧の立ち上がり期間における波形と,立ち上がり期間における波形とは,それぞれ,互いに異なる周波数の正弦波の半周期分の波形とされている。
【0074】
・・・(中略)・・・
【0077】
一方,第2駆動電圧は,第1駆動電圧の波形の逆位相の波形の電圧信号とされている。
・・・(中略)・・・
【0080】
補足すると,第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形を規定する前記正弦波Sa,Sbの周波数は,これらの周波数が,光偏向器A1のミラー部1の揺動軸X2周りの揺動に関する固有振動数(詳しくは,外側圧電アクチュエータ10a,10b,可動部9,トーションバー2a,2bにより構成される機構の固有振動数。以降,ミラー部揺動固有振動数という)に一致もしくは近接した周波数とならないように選定されている。
【0081】
具体的には,本実施形態では,ミラー部1を揺動軸X2周りに揺動させる機構の機械的な振動の周波数特性は,例えば図6に示すような周波数特性となり,102Hz,205Hz程度の周波数が,比較的大きなゲインを有するミラー部揺動固有振動数となることが実験的に確認された。なお,図6の縦軸のゲインは,横軸の各周波数に対するミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角の振幅の大きさに相当するものである。また,図6の周波数特性を有する本実施形態の例では,各外側圧電アクチュエータ10a,10bの厚さ,全長,幅は,それぞれ30μm,35mm,0.2mmであり,そのバネ定数は,5.0×10^(-3)N/m^(2)である。
【0082】
そして,上記のミラー部揺動固有振動数に対して,正弦波Sa,Sbの周波数は,本実施形態の例では,それぞれ50Hz,75Hzであるので,ミラー部揺動固有振動数(102Hz,205Hz)に比して小さい周波数となっている。
【0083】
・・・(中略)・・・
【0090】
加えて,第1駆動電圧及び第2駆動電圧のそれぞれの立ち上がり期間及び立ち下がり期間の波形が,正弦波の部分波形となっているため,第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形をノコギリ波とした場合に較べて,第1駆動電圧及び第2駆動電圧に含まれる高調波成分の大きさ(振幅)を,ミラー部揺動固有振動数に一致もしくは近い周波数の高調波成分を含めて低減することができる。このため,図4(c)に例示した如く,ミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角(揺動量)にミラー部揺動固有振動数に応じた高周波振動が発生するのを抑制しつつ,該ミラー部1の偏向・走査を行なうことができる。
【0091】
従って,本実施形態の光偏向器A1を例えば画像表示装置に使用した場合,高品質の精細な画像表示を実現できることとなる。」

(ウ)ここで,図1は以下のものである。


イ 上記各記載から,引用例1には以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という。)。
「光偏向器A1であって,入射された光を反射するミラー部1と,ミラー部1が搭載された可動部9と,ミラー部1を可動部9に対して揺動軸X1の周りに揺動させるための内側圧電アクチュエータ8と,ミラー部1及び可動部9を支持基体11に対して揺動軸X2の周りに揺動させるための各外側圧電アクチュエータ10a,10bとを備え,
支持基体11は,方形枠状に形成されており,可動部9の周囲を囲むように設けられ,ミラー部1及び可動部9を支持基体11に対して揺動させる外側圧電アクチュエータ10a,10bが,支持基体11の内周部と可動部9の外周部との間で,可動部9を挟んで揺動軸X2の方向(揺動軸X1と直交する方向)に対向するようにして配置されており,各外側圧電アクチュエータ10a,10bを介して,可動部9が支持基体11に支持されており,
各外側圧電アクチュエータ10a,10bは,圧電駆動によって屈曲変形するようにそれぞれ構成された複数の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)を連結して構成され,各外側圧電アクチュエータ10a,10bを構成する複数の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)は,支持基体11の内周部と可動部9の外周部との間で,揺動軸X2と直交する方向(揺動軸X1と同方向)に延在して,該揺動軸X2の方向に間隔を存して並ぶように配置されていると共に,そのそれぞれの圧電カンチレバーが隣合う圧電カンチレバーに対して折り返されるように連結され,従って,各外側圧電アクチュエータ10a,10bは,揺動軸X2と直交する方向を振幅方向として蛇行するようにして延在しており,
外側圧電アクチュエータ10a,10bを圧電駆動する第2制御手段22は,その機能として,外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動するための第1駆動電圧を出力する第1駆動電圧出力手段22aと,外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動するための第2駆動電圧を出力する第2駆動電圧出力手段22bとを備え,
第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形を規定する正弦波Sa,Sbの周波数は,これらの周波数が,光偏向器A1のミラー部1の揺動軸X2周りの揺動に関する固有振動数(詳しくは,外側圧電アクチュエータ10a,10b,可動部9,トーションバー2a,2bにより構成される機構の固有振動数。以降,ミラー部揺動固有振動数という)に一致もしくは近接した周波数とならないように選定されており,
例えば,ミラー部1を揺動軸X2周りに揺動させる機構の機械的な振動の周波数特性として,102Hz,205Hz程度の周波数が比較的大きなゲインを有するミラー部揺動固有振動数であるのに対して,正弦波Sa,Sbの周波数は,それぞれ50Hz,75Hzであって,ミラー部揺動固有振動数(102Hz,205Hz)に比して小さい周波数となっており,
第1駆動電圧及び第2駆動電圧のそれぞれの立ち上がり期間及び立ち下がり期間の波形が,正弦波の部分波形となっているため,第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形をノコギリ波とした場合に較べて,第1駆動電圧及び第2駆動電圧に含まれる高調波成分の大きさ(振幅)を,ミラー部揺動固有振動数に一致もしくは近い周波数の高調波成分を含めて低減することができ,ミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角(揺動量)にミラー部揺動固有振動数に応じた高周波振動が発生するのを抑制しつつ,該ミラー部1の偏向・走査を行なうことができる,
光偏向器A1。」

(2)引用例2に記載された事項
ア 本願の出願前に日本国内において頒布され,原査定の理由に引用された文献である引用例2(特開2012-252265号公報)には,図とともに以下の記載がある。
「【0051】
-光走査装置の動作-
本発明の実施の形態に係る光走査装置1は,画像信号に応じて輝度が変調され,光源5から出射されたレーザ光Lを,走査部11において反射して2軸方向に走査し,スクリーン等に画像を表示できる。
【0052】
走査部11は,圧電モノモルフ14a?14dの駆動部,コイル25に駆動信号が印加されることにより,X軸方向(水平方向)及びY軸(垂直方向)に揺動し,2軸方向の走査を行う。
【0053】
例えば,駆動部となる圧電モノモルフ14a,14bは,導線23a,23bを介して,例えば約5?20V程度の交流電圧を印加されることにより,アーム部13a,13bを駆動する。検出部となる圧電モノモルフ14c,14dは,アーム部13a,13bの駆動による応力歪みが生じ,この応力歪みに生じた電圧を発生する。
【0054】
圧電モノモルフ14c,14dにそれぞれ生じた電圧に応じて,圧電モノモルフ14c,14dにそれぞれ生じた電圧の,それぞれ180°反転した逆位相となるような駆動信号を圧電モノモルフ14a,14bにそれぞれ出力するフィードバック制御を行うことにより,光走査装置1のX軸方向の駆動を,例えば約10k?50kHz程度の共振周波数で行うことができる。
【0055】
光走査装置1の駆動用,検出用の配線は,ワイヤ17a?17fを介して行われることができる。Y軸方向駆動時の,駆動用,検出用信号の他,可動支持部15等の接地も同様に,ワイヤ17a?17fを介して行われて良い。
【0056】
コイル25に例えば0.1?1A程度の交流電流が流れることにより,可動支持部15は,回転軸RYとしてY軸方向に揺動する。ワイヤ17は,細長い金属なのでX軸方向の駆動に比べ,ねじればね定数が小さく,共振周波数でなくとも大きな振幅を得ることができる。例えば,約50?200Hz程度の低い周波数での駆動や,ランプ波形での駆動も可能である。
【0057】
更に,磁石24a,24dは密度が高く,Y軸方向の駆動について共振周波数は小さくなる。よって,Y軸方向の駆動について約50?200Hz程度の低い周波数に設計された寸法とすることも可能であり,この場合,非共振周波数での駆動に比して消費電力を低減させることができる。
【0058】
また,固定周波数で駆動する場合でも,例えば60Hzで駆動する場合,共振周波数を駆動周波数の整数倍である高次高調波周波数の中間の周波数とすることで,駆動周波数に対する高調波成分による不要振動を抑制することが可能となる。例えば共振周波数を390Hzとなるようにワイヤ17の線径や間隔(ピッチ)を最適化した場合,駆動周波数の高調波成分は360Hzと420Hzの中間となるので,ランプ波形上に加わる高調波が抑制可能となる。」
イ 上記記載から,引用例2には以下の技術事項が記載されているといえる。
「X軸方向(水平方向)及びY軸(垂直方向)に揺動し,2軸方向の走査を行う走査部11を備える光走査装置1において固定周波数で駆動する場合,ワイヤ17の線径や間隔(ピッチ)を最適化して,共振周波数を駆動周波数の整数倍である高次高調波周波数の中間の周波数とすることで,駆動周波数に対する高調波成分による不要振動を抑制することが可能となること。」

(3)引用例3に記載された事項
ア 本願の出願前に日本国内において頒布された文献である引用例3(特開2012-242461号公報)には,図とともに以下の記載がある。
「【0011】
(全体構成の説明)
図1は,本発明の一実施の形態における光走査装置の構成図である。本発明の光走査装置は,大きくは光源1と,走査手段2から構成される。光源1は,用途に応じて適宜選択されたR(赤),G(緑),B(青)などの波長の光束を射出するLD(Laser Diode),LED(Light Emitting Diode)などからなる発光素子で構成されている。この発光素子には,映像信号を生成する映像信号処理回路3と,光源1のビームの強度を変調するための駆動信号生成回路4が接続されている。
【0012】
一方,走査手段2は,前述の光源1を直線や曲線,または平面上に走査するための走査素子5と,この走査素子5の駆動を制御するための制御部6とを少なくとも備えている。走査素子5は,例えば一軸や二軸の駆動部を備えたミラーデバイスなどの光学反射素子を選択する。この走査素子5は,駆動させる軸の数に応じた駆動系7と,この駆動系7の動作状態を検出するためのモニタ8を備えている。
【0013】
制御部6は,走査素子5の駆動条件を演算し,実際の駆動信号を生成するものであり,演算部9と信号生成回路10とから構成されている。演算部9では,予めメモリ等に記憶させておいた走査素子5における駆動系7の共振周波数,フレームレートFr,各種定数(a,Nなど)及び請求項における(数1)?(数4),または(数5)?(数8)の関係式とから,駆動系7を実際に駆動させるための駆動条件(周波数,振幅,位相)を演算し,その結果を信号生成回路10に出力する。本実施例では,走査素子として直交する二軸の駆動部を備えており,これら各駆動部に対応して信号生成回路を二系統(第一の信号生成回路および第二の信号生成回路)有する。
【0014】
演算部9に記憶する駆動系7の共振周波数は,モニタ8の出力をもとに適宜記憶と更新を繰り返してもよい。走査素子5の駆動系7は,周囲温度の変化や光源による加熱,振動などの環境変化や,製造ばらつきによる共振周波数にズレが生じやすい。そのため,モニタ8により駆動系7の実際の共振周波数を常に測定し,その結果を演算部9にフィードバックして駆動条件を適宜更新することにより,環境変化に強く,緻密な軌跡が得られる光走査装置を実現することができる。」
イ 上記記載から,引用例3には以下の技術事項が記載されているといえる。
「光走査装置の走査手段2が,走査素子5と,この走査素子5の駆動を制御するための制御部6とを少なくとも備え,
走査素子5は,例えば一軸や二軸の駆動部を備えたミラーデバイスなどの光学反射素子が選択され,駆動させる軸の数に応じた駆動系7と,この駆動系7の動作状態を検出するためのモニタ8を備え,
制御部6は,走査素子5の駆動条件を演算し,実際の駆動信号を生成するものであり,演算部9と信号生成回路10とから構成されている。演算部9では,予めメモリ等に記憶させておいた走査素子5における駆動系7の共振周波数,フレームレートFr,各種定数及び各関係式とから,駆動系7を実際に駆動させるための駆動条件(周波数,振幅,位相)を演算し,その結果を信号生成回路10に出力するものであり,
走査素子5の駆動系7は,周囲温度の変化や光源による加熱,振動などの環境変化や,製造ばらつきによる共振周波数にズレが生じやすいため,モニタ8により駆動系7の実際の共振周波数を常に測定し,その結果を演算部9にフィードバックして駆動条件を適宜更新することにより,環境変化に強く,緻密な軌跡が得られる光走査装置を実現することができるものであること。」

5 当審の判断
(1)本願発明1について
ア 対比
(ア)引用発明の「入射された光を反射するミラー部1」は,本願発明1の「反射面を有するミラー」に相当する。
(イ)引用発明の「外側圧電アクチュエータ10a,10b」は,「支持基体11の内周部と可動部9の外周部との間で,可動部9を挟んで揺動軸X2の方向(揺動軸X1と直交する方向)に対向するようにして配置され」,「ミラー部1及び可動部9を支持基体11に対して揺動軸X2の周りに揺動させる」ものであって,「揺動軸X2と直交する方向を振幅方向として蛇行するようにして延在して」いるものであるから,当該「外側圧電アクチュエータ10a,10b」は,本願発明1の「前記ミラーを回転可能に支持するとともに複数の折返部を有して蛇行して形成した一対の蛇行状梁部」に相当する。
(ウ)引用発明の「圧電駆動によって屈曲変形するようにそれぞれ構成された複数の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)」は,本願発明1の「前記蛇行状梁部の前記各梁部にそれぞれ設けた複数の圧電部材」に相当する。
(エ)引用発明の「光偏向器A1であって,入射された光を反射するミラー部1と,ミラー部1が搭載された可動部9と,」「ミラー部1及び可動部9を支持基体11に対して揺動軸X2の周りに揺動させるための各外側圧電アクチュエータ10a,10bとを備え」,「各外側圧電アクチュエータ10a,10bは,圧電駆動によって屈曲変形するようにそれぞれ構成された複数の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)を連結して構成され」たものは,本願発明1の「前記複数の圧電部材に電圧波形を印加することにより前記各梁部を変形させ,その変形の累積により前記ミラーを回転駆動させる光偏向装置」に相当する。

(オ)本願明細書の,
「 【0030】
この時,共振周波数と駆動周波数が相対的に整数倍の関係になっていると,共振による振動成分を反射ミラーの動作成分が強めてしまうことで,光走査の高調波に共振が干渉した波うち現象が生じ,走査均一性が低下することになる。
【0031】
そのため,想定する温度変動と共振周波数の変動範囲に対して,印加する駆動用信号の周波数と共振周波数の相対値が常に整数倍の関係からずれているように調整することで,機械的共振による振動の非共振駆動による光走査への干渉を抑制することができる。」
との記載を参照すると,
本願発明1における,「所定の温度において,前記各圧電部材に印加する電圧波形の駆動周波数fvを,nを整数として,前記光偏向装置の共振周波数f0との相対比がf0/fv=n+1/2となるように調整することで,前記ミラーの周辺の所定範囲の温度変化に対する共振周波数のシフトをΔfとして,前記駆動周波数fvにn<(f0+Δf)/fv<n+1の関係を維持させる電圧調整部」との構成は,「機械的共振による振動の非共振駆動による光走査への干渉を抑制することができる」ようにするための構成であることがわかる。
よって,引用発明の「外側圧電アクチュエータ10a,10bを圧電駆動する第2制御手段22」であって,「その機能として,外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動するための第1駆動電圧を出力する第1駆動電圧出力手段22aと,外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動するための第2駆動電圧を出力する第2駆動電圧出力手段22bとを備え」,
「第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形を規定する前記正弦波Sa,Sbの周波数は,これらの周波数が,光偏向器A1のミラー部1の揺動軸X2周りの揺動に関する固有振動数(詳しくは,外側圧電アクチュエータ10a,10b,可動部9,トーションバー2a,2bにより構成される機構の固有振動数。以降,ミラー部揺動固有振動数という)に一致もしくは近接した周波数とならないように選定されており,」
「第1駆動電圧及び第2駆動電圧のそれぞれの立ち上がり期間及び立ち下がり期間の波形が,正弦波の部分波形となっているため,第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形をノコギリ波とした場合に較べて,第1駆動電圧及び第2駆動電圧に含まれる高調波成分の大きさ(振幅)を,ミラー部揺動固有振動数に一致もしくは近い周波数の高調波成分を含めて低減することができ,ミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角(揺動量)にミラー部揺動固有振動数に応じた高周波振動が発生するのを抑制しつつ,該ミラー部1の偏向・走査を行なうことができる」ものと,
本願発明1の「所定の温度において,前記各圧電部材に印加する電圧波形の駆動周波数fvを,nを整数として,前記光偏向装置の共振周波数f0との相対比がf0/fv=n+1/2となるように調整することで,前記ミラーの周辺の所定範囲の温度変化に対する共振周波数のシフトをΔfとして,前記駆動周波数fvにn<(f0+Δf)/fv<n+1の関係を維持させる電圧調整部」とは,
「前記各圧電部材に印加する電圧波形を,機械的共振による振動の非共振駆動による光走査への干渉を抑制することができるように調整する電圧調整部」である点で一致する。

(カ)以上から,両者は以下の点で一致する。
「反射面を有するミラーと,
前記ミラーを回転可能に支持するとともに複数の折返部を有して蛇行して形成した一対の蛇行状梁部と,
前記蛇行状梁部の前記各梁部にそれぞれ設けた複数の圧電部材と,を有し,
前記複数の圧電部材に電圧波形を印加することにより前記各梁部を変形させ,その変形の累積により前記ミラーを回転駆動させる光偏向装置において,
前記各圧電部材に印加する電圧波形を,機械的共振による振動の非共振駆動による光走査への干渉を抑制することができるように調整する電圧調整部を有する光偏向装置。」

(キ)一方,両者は以下の点で相違する。
《相違点》
本願発明1は,「所定の温度において,前記各圧電部材に印加する電圧波形の駆動周波数fvを,nを整数として,前記光偏向装置の共振周波数f0との相対比がf0/fv=n+1/2となるように調整することで,前記ミラーの周辺の所定範囲の温度変化に対する共振周波数のシフトをΔfとして,前記駆動周波数fvにn<(f0+Δf)/fv<n+1の関係を維持させる電圧調整部」を備えるのに対し,引用発明は,「前記各圧電部材に印加する電圧波形を,機械的共振による振動の非共振駆動による光走査への干渉を抑制することができるように調整する電圧調整部」に対応する構成は備えるものの,上記本願発明1に係る構成までは備えない点。

エ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)引用発明においては,「第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形を規定する正弦波Sa,Sbの周波数は,これらの周波数が,光偏向器A1のミラー部1の揺動軸X2周りの揺動に関する固有振動数(詳しくは,外側圧電アクチュエータ10a,10b,可動部9,トーションバー2a,2bにより構成される機構の固有振動数。以降,ミラー部揺動固有振動数という)に一致もしくは近接した周波数とならないように選定されており」,「第1駆動電圧及び第2駆動電圧のそれぞれの立ち上がり期間及び立ち下がり期間の波形が,正弦波の部分波形となっているため,第1駆動電圧及び第2駆動電圧の波形をノコギリ波とした場合に較べて,第1駆動電圧及び第2駆動電圧に含まれる高調波成分の大きさ(振幅)を,ミラー部揺動固有振動数に一致もしくは近い周波数の高調波成分を含めて低減することができ」ることから,「ミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角(揺動量)にミラー部揺動固有振動数に応じた高周波振動が発生するのを抑制」できるものである。
しかしながら,引用例1の記載を見ても,「光偏向器A1のミラー部1の揺動軸X2周りの揺動に関する固有振動数」が温度により変化する旨,及び,当該変化に対応した動作を行う旨の記載はない。

(イ)前記4(2)イのとおり,引用例2には,「X軸方向(水平方向)及びY軸(垂直方向)に揺動し,2軸方向の走査を行う走査部11を備える光走査装置1において固定周波数で駆動する場合,ワイヤ17の線径や間隔(ピッチ)を最適化して,共振周波数を駆動周波数の整数倍である高次高調波周波数の中間の周波数とすることで,駆動周波数に対する高調波成分による不要振動を抑制することが可能となること」が記載されているが,共振周波数が温度により変化する旨の記載はない。また,引用例2には,共振周波数を調整して駆動周波数に対する高調波成分による不要振動を抑制することが記載されてはいるものの,駆動周波数を調整することまでは記載されていない。

(ウ)前記4(3)イのとおり,引用例3には,「光走査装置の走査手段2」において「走査素子5の駆動系7は,周囲温度の変化や光源による加熱,振動などの環境変化や,製造ばらつきによる共振周波数にズレが生じやすいため,モニタ8により駆動系7の実際の共振周波数を常に測定し,その結果を演算部9にフィードバックして駆動条件を適宜更新すること」が記載されてはいるが,当該構成は,温度変化等に伴う共振周波数の変化に応じて駆動条件を更新するものであるから,相違点に係る「所定の温度において,前記各圧電部材に印加する電圧波形の駆動周波数fvを,nを整数として,前記光偏向装置の共振周波数f0との相対比がf0/fv=n+1/2となるように調整することで,前記ミラーの周辺の所定範囲の温度変化に対する共振周波数のシフトをΔfとして,前記駆動周波数fvにn<(f0+Δf)/fv<n+1の関係を維持させる」ことまで記載されているとはいえない。

(エ)そして,本願発明1は,相違点に係る構成を備えることにより,本願明細書の段落【0067】に記載されているとおり,「温度の変動の度に煩雑な調整をすることなく,常に同一設定の駆動周波数広い温度範囲でリニアな光走査速度均一性を維持することが可能にな」り,また,「外部の温度検出手段を用いるなどして温度のテーブルデータに基づく駆動制御を行うといった複雑な信号処理をすることなく,環境によらない高品質な画質を投影することができる」という作用・効果を奏するものである。

(オ)よって,本願発明1は,引用発明及び引用例2及び3にそれぞれ記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?5及び本願発明7について
請求項2?5の記載は請求項1の記載をより限定したものであり,請求項7には請求項1?5に係る光偏向装置を備えた画像投影装置が記載されているから,本願発明2?5及び本願発明7は,いずれも本願発明1に係る発明の発明特定事項の全てを含むものである。
よって,本願発明2?5及び本願発明7は,前記(1)と同じ理由により,引用発明及び引用例2及び3にそれぞれ記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本願発明6について
本願発明6は,「光偏向ミラー」に係る発明であるところ,二次元光走査のために回動させる「2軸のうち,少なくとも一方の軸周りの回転駆動に請求項1乃至請求項5の何れか1の請求項に記載の光偏向装置の共振周波数との周波数の相対比が整数倍にならない駆動周波数を有する電圧波形が前記圧電部材に印加される」ものである。
ここで,「請求項1乃至請求項5の何れか1の請求項に記載の光偏向装置の共振周波数との周波数の相対比が整数倍にならない駆動周波数を有する電圧波形」とは,少なくとも請求項1の「所定の温度において,前記各圧電部材に印加する電圧波形の駆動周波数fvを,nを整数として,前記光偏向装置の共振周波数f0との相対比がf0/fv=n+1/2となるように調整することで,前記ミラーの周辺の所定範囲の温度変化に対する共振周波数のシフトをΔfとして,前記駆動周波数fvにn<(f0+Δf)/fv<n+1の関係を維持させる電圧調整部」に係る「電圧波形」であると解される。
そして,当該電圧調整部に係る「電圧波形」を印加することは,前記(1)で検討したとおり,引用発明及び引用例2及び3にそれぞれ記載された技術事項に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって,本願発明6についても,引用発明及び引用例2及び3にそれぞれ記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから,原査定の理由により,本願を拒絶することはできない。

6 当審より通知した拒絶理由について
(1)当審より通知した拒絶理由の概要
当審より通知した拒絶理由の概要は,平成30年8月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載における,「所定の温度において,前記各圧電部材に印加する電圧波形の駆動周波数fvを,nを整数として,前記光偏向装置の共振周波数f0との相対比がf0/fv=n+1/2となるように調整することで,前記駆動周波数fvにf0/fv=n+1/2の関係を維持させる」とは具体的に何を行っているのか不明瞭であるから,請求項1(請求項1を引用する請求項2?7も同様)の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない,というものである。

(2)当審拒絶理由についての判断
平成31年3月20日にされた手続補正により,特許請求の範囲の請求項1の該当記載は,「所定の温度において,前記各圧電部材に印加する電圧波形の駆動周波数fvを,nを整数として,前記光偏向装置の共振周波数f0との相対比がf0/fv=n+1/2となるように調整することで,前記ミラーの周辺の所定範囲の温度変化に対する共振周波数のシフトをΔfとして,前記駆動周波数fvにn<(f0+Δf)/fv<n+1の関係を維持させる」と補正され,前記(1)の理由は解消された。
よって,当審より通知した拒絶理由により,本願を拒絶することはできない。

7 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-07 
出願番号 特願2014-50337(P2014-50337)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 山村 浩
近藤 幸浩
発明の名称 光偏向装置、光偏向ミラー及び画像表示装置  
代理人 有我 軍一郎  
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