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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1351214
審判番号 不服2018-10944  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-09 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2016-174321「発光装置用パッケージ成形体及びそれを用いた発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開、特開2016-213505、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月20日に出願した特願2012-10449号の一部を平成28年9月7日に新たな特許出願としたものであって、その経緯は次のとおりである。
平成29年 3月 3日 :手続補正書
平成29年 7月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年12月 1日 :意見書・手続補正書
平成30年 5月 7日付け:拒絶査定(平成30年5月15日送達)
平成30年 8月 9日 :審判請求書
平成30年 9月13日 :手続補正書(方式)
平成31年 2月20日付け:当審拒絶理由通知書
平成31年 4月 2日 :意見書・手続補正書

第2 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由の概要
1 原査定の拒絶の理由の概要
本願請求項1?6に係る発明は、以下の引用文献1?7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 当審拒絶理由の概要
(1)本願請求項3?6に係る発明は、以下の引用文献8,1,9,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)本願請求項3?6に係る発明は明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
なお、当審拒絶理由は、本願請求項1及び2を対象としていない。

[引用文献等一覧]
1.特開2011-119557号公報
2.特開2005-235934号公報
3.特開2007-194401号公報
4.特開2010-62427号公報
5.特開2008-60344号公報
6.実願昭62-70466号(実開昭63-178342号)のマイクロフィルム
7.特開2004-40099号公報
8.特開2009-135484号公報(当審拒絶理由で新たに追加されたもの)
9.国際公開第2008/081794号(当審拒絶理由で新たに追加されたもの)

第3 当審の判断
1 本願発明の認定
本願請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、平成31年4月2日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、独立請求項に係る本願発明1及び本願発明3は、次のとおりである。
[本願発明1]
「凹部を有するパッケージ成形体を準備するパッケージ準備工程と、
前記凹部の底面に発光部品を実装する実装工程と、
前記凹部内で前記発光部品を被覆する封止部材を形成する封止部材形成工程と、
を含む発光装置の製造方法であって、
前記パッケージ準備工程は、
上面に第1溝部が設けられた第1リードと上面に第2溝部が設けられた第2リードとを含むリードフレームを準備するリードフレーム準備工程と、
下面に角部が面取り加工された凸部を備えた上側金型を、該面取り加工された角部が前記第1溝部と前記第2溝部とに対向するように前記凸部の上面を第1リードの上面と第2リードの上面に接触させ、下側金型の上面を前記第1リードの下面と前記第2リードの下面と接触させることにより、前記上側金型と前記下側金型とによって前記リードフレームを挟持して、前記凸部の周りに第1溝部と第2溝部とに通じる空洞を形成し、該空洞に樹脂を注入する樹脂成型工程と、
を含む発光装置の製造方法。」

[本願発明3]
「第1リードおよび第2リードを含むリードと樹脂成形体とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有するパッケージ成形体と、
前記凹部の底面に載置された発光部品と、
前記凹部内に位置し、前記発光部品を被覆する封止部材と、を有し
前記リードの上面には、前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部が位置する部分に溝部が設けられており、
前記溝部内に配置された樹脂成形体の一部は、前記凹部の底面において露出し、
前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されており、
前記封止部材は、前記樹脂成形体の前記角部を被覆する、発光装置。」

本願発明2は、本願発明1を限定したものである。
本願発明4?6は、本願発明3を限定したものである。

2 引用文献の記載事項等の認定
(1)引用文献1(特開2011-119557号公報)
ア 引用文献1には、次の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】」、
「発光素子搭載領域と、該発光素子搭載領域の周囲に設けられた凹部を有する基板と、
該基板の前記発光素子搭載領域に搭載された発光素子と、
前記凹部に充填されると共に、前記発光素子を囲繞する反射体を構成する反射材料と、
前記反射体により囲繞された領域に充填されると共に、前記基板の表面と同一平面上における前記反射材料との界面が前記凹部の形成領域に配された光透過性材料とを備える
発光装置。」(【請求項1】)、
「発光素子搭載領域と、該発光素子搭載領域の周囲に設けられた凹部を有する基板の前記凹部を反射材料で充填すると共に、同反射材料で前記基板の表面と同一平面上における前記発光素子搭載領域側の端部が前記凹部の形成領域に位置し、前記発光素子搭載領域を囲繞する反射体を形成する工程と、
前記基板の発光素子搭載領域に発光素子を搭載する工程と、
光透過性材料を前記反射体により囲繞された領域に充填する工程とを備える
発光装置の製造方法。」(【請求項4】)、
「前記反射体は、トランスファーモールド技術によって形成する
請求項4に記載の発光装置の製造方法。」(【請求項5】)、
「前記反射体により囲繞された領域をトランスファーモールド技術によって光透過性材料で充填する
請求項4または請求項5に記載の発光装置の製造方法。」(【請求項6】)

(イ)「<1.第1の実施の形態>」、
「図1は本発明を適用した発光装置の一例である半導体発光装置を説明するための模式図であり、ここで示す半導体発光装置1は、金属製リードフレーム2と、半導体発光素子3と、反射用樹脂材料4と、レンズ用樹脂材料5とを備えている。」(【0016】)、


「なお、ここで示す半導体発光装置1は発光装置の一例であり、金属製リードフレーム2は基板の一例であり、半導体発光素子3は発光素子の一例であり、反射用樹脂材料4は反射材料の一例であり、レンズ用樹脂材料5は光透過性材料の一例である。」(【0017】)、
「図2は金属製リードフレーム2を説明するための模式的な平面図であり、ここで示す金属製リードフレーム2は、厚さが概ね0.2mm程度であり、スリット6によって半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8とに分割されている。なお、半導体発光素子3の搭載面とは反対側の面(図1の下面)はスリット6に両側に有底の溝部6Aが形成されている。」(【0018】)、
「更に詳しくは、半導体発光素子搭載部7及び金属線接続部8は板形状を有しており、所定のパターニング加工が施されることによって離間している。そして、離間している半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8との間に、半導体発光素子3の搭載面から半導体発光素子3の搭載面の反対側の面にまで達するスリット6が設けられている。なお、半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8とは、反射用樹脂材料4によって絶縁されている。つまり、スリット6に反射用樹脂材料4が充填されることによって、半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8は絶縁されている。」(【0019】)、
「ここで、半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8とはスリット6によって電気的に非接続状態が保たれているために、必ずしもスリット6の両側に有底の溝部6Aが形成される必要は無い。但し、後述する様に、半導体発光素子3の搭載面とは反対側の面には端子半田めっきが設けられており、こうした端子半田めっき同士が意図せず電気的に接続してしまわない様に、半導体発光素子3の搭載面とは反対側の面に溝部6Aが設けられた方が好ましい。」(【0020】)、
「なお、半導体発光素子3の搭載面とは反対側の面に溝部6Aが設けられることによって、半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8との間隙が拡がることとなり、意図しない端子半田めっき同士の電気的接続を抑制することが期待できる。」(【0021】)、
「また、金属製リードフレーム2には、半導体発光素子3を搭載する半導体発光素子搭載領域9が設けられ、半導体発光素子搭載領域9の周辺には、半導体発光素子搭載領域9を取り囲む様に凹部10が設けられている。具体的には、半導体発光素子搭載領域9を中心として、直径が1.65mm程度の略円状を描く様に、深さ約0.08mm、幅約0.225mmの凹部10が設けられている。」(【0022】)、
「ここで、本実施の形態では、スリット6の近傍に凹部10が形成されていない。具体的には、図2中符号Bで示す領域には凹部10が形成されていない。これは、こうした領域は溝部6Aが設けられている領域であるために、凹部10が設けられた場合には溝部6Aと凹部10とによって金属製リードフレーム2を貫通してしまう可能性があり、金属製リードフレーム2の強度が低下する恐れがあるためである。」(【0023】)、


「なお、金属製リードフレーム2に貫通孔が形成されたとしても充分な強度を確保することができる場合には、スリット6の近傍(溝部6Aの形成領域)に凹部10を形成しても良い。また、溝部6Aが形成されていない場合には、スリット6の近傍に凹部10を形成しても良い。」(【0024】)、
「更に、金属製リードフレーム2の半導体発光素子3の搭載面のうち、半導体発光素子3と金属製ワイヤで電気的に接続される領域には、銀めっき11が形成されている。また、金属製リードフレーム2の半導体発光素子3の搭載面とは反対側の面には、半導体発光装置1を実装基板(図示せず)等に接続するための端子半田めっき17が設けられている。」(【0025】)、
「また、金属製リードフレーム2の半導体発光素子3の搭載面の凹部10よりも半導体発光素子3とは反対側に第2の凹部18が設けられている。ここで、第2の凹部18に反射用樹脂材料4が充填されることで、金属製リードフレーム2と反射体14との接着強度がアンカー効果によって強化されることとなる。
なお、第2の凹部18を形成しなくても、金属製リードフレーム2と反射体14との接着強度を充分に確保することができる場合には、必ずしも第2の凹部18が形成される必要は無い。」(【0026】)、
「半導体発光素子3とは、例えば、LEDチップ等であり、金属製リードフレーム2の半導体発光素子搭載領域9に所定の導電性接着材料12を介して搭載されている。具体的には、半導体発光素子3は、例えば銀ペースト等の導電性ペーストを接着材料として、金属製リードフレーム2の半導体発光素子搭載領域9に固定保持されることとなる。」(【0027】)、
「また、半導体発光素子3の外部接続パッド(図示せず)と金属製リードフレーム2とは金属製ワイヤ13で電気的に接続されている。」(【0028】)、
「具体的には、半導体発光素子3の頂面(金属製リードフレーム2と対向する側の面と反対側の面であって、図1に示す上側の面)に設けられた外部接続パッド(図示せず)と、金属線接続部8とを例えば金細線によって電気的に接続されている。」(【0029】)、
「この様に、半導体発光素子3は、導電性接着材料(例えば銀ペースト)12及び金属製ワイヤ(例えば金細線)13によって、金属製リードフレーム2の半導体発光素子3の搭載面と電気的に接続されている。」(【0030】)、
「反射用樹脂材料4は、絶縁性材料であり、スリット6、溝部6A、凹部10及び第2の凹部18に充填されている。また、反射用樹脂材料4は、半導体発光素子3を囲繞する反射体14を構成し、半導体発光素子3から発せられた光は反射体によって指向性が制御されることとなる。」(【0031】)、
「具体的には、反射体14によって形作られる凹形状部15の底部に半導体発光素子3及びその周辺領域が位置する様に構成されている。そして、この様に構成することによって、半導体発光素子3から発せられた光を凹形状の側壁で反射し、光の指向性を制御している。なお、反射体14は半導体発光素子3よりもその厚みが大きくなる様に構成されている。」(【0032】)、
「なお、反射用樹脂材料4は、半導体発光素子3から発生する光を高効率で反射できる様に、反射率が高い白色の材料であることが好ましい。また、半導体発光素子3から発せられる光で劣化し難い材料であることが好ましい。」(【0033】)、
「また、反射体14は、金属製リードフレーム2の半導体発光素子3の搭載面と同一平面上における半導体発光素子3側の端部(図1中符号Cで示す領域)が凹部10の形成領域に位置すべく構成されている。具体的には、図1中の拡大図で示す様に、反射体14は凹部10の幅方向の略中心位置を起点としが概ね45°の角度をなす傾斜部を有して構成されている。」(【0034】)、
「なお、反射体14と半導体発光素子3との間隔や、反射体14の傾斜部の角度については、半導体発光装置1の特性に応じて適宜変更となるものである。」(【0035】)、
「ここで、本実施の形態における反射体14は、半導体発光素子3よりも厚みが大きい場合を例に挙げて説明を行っているが、反射体14は必ずしも半導体発光素子3よりも厚みが大きく構成される必要は無い。但し、反射体14は半導体発光素子3から発せられる光の指向性を制御するものであり、より充分に光の指向性を制御するためには、反射体14は半導体発光素子3よりも大きな厚みである方が好ましい。」(【0036】)、
「レンズ用樹脂材料5は、光透過性を有する絶縁性材料であり、半導体発光素子3を完全に覆う様に反射体14が形成する凹形状部15に充填されると共に、反射体14を被覆する様に構成されている。なお、レンズ用樹脂材料5は高い光透過性を実現できる様に、透明の材料であることが好ましい。」(【0037】)、
「また、本実施の形態では、レンズ用樹脂材料5が反射体14の表面を被覆して構成された場合を例に挙げて説明を行っているが、必ずしもレンズ用樹脂材料5が反射体14の表面を被覆する必要は無い。」(【0038】)、
「ここで、レンズ用樹脂材料5としては、例えば熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、シリコン樹脂等)を用いることができる。そして、この熱硬化性樹脂の形状によって半導体発光素子3が発する光に目的とする光学特性を持たせることができることとなる。本実施の形態では、レンズ用樹脂材料5には半球状のレンズ部分16が設けられている。」(【0039】)、
「また、レンズ用樹脂材料5は、外部からの物理的または電気的な接触に対して、半導体発光素子3や金属製ワイヤ13を保護するといった役割をも果たしている。」(【0040】)、
「本発明を適用した半導体発光装置1では、上述の様に、金属製リードフレーム2の半導体発光素子3の搭載面と同一平面上における半導体発光素子3側の反射体14の端部が凹部10の形成領域に位置すべく形成されている。そのため、金属製リードフレーム2と反射用樹脂材料4とレンズ用樹脂材料5が同一界面で接することを回避することができ、温度変化に起因した応力の集中による反射用樹脂材料4やレンズ用樹脂材料5の剥離を抑制することができるのである。」(【0041】)、
「また、凹部10に反射用樹脂材料4が充填されているために、金属製リードフレーム2と反射体14との接着強度がアンカー効果によって強化されることとなり、この点においても反射用樹脂材料4の剥離を抑制することができる。」(【0042】)、
「なお、半導体発光装置1に凹部10が設けられた場合(本発明を適用した半導体発光装置)と、凹部10が設けられていない場合(従来の半導体発光装置)の双方について、応力シミュレーション解析を行った。なお、応力シミュレーションは、モールド成形時を想定して150℃の状態から25℃の状態へと温度変化が生じた場合の反射体14の半導体発光素子3側の端部に加わる応力値を解析した。」(【0043】)、
「その結果、半導体発光装置1に凹部10が設けられていない場合には、反射体14の半導体発光素子3側の端部に1.954Kgf/mm^(2)の応力が加わっていることが確認できた。一方、凹部10が設けられた場合には、反射体14の半導体発光素子3側の端部に1.617Kgf/mm^(2)の応力しか加わっていないことが確認できた。
即ち、凹部10が設けられたことによって、反射体14の半導体発光素子3側の端部に加わる応力を緩和することができることを確認することができた。」(【0044】)

(ウ)「<2.第2の実施の形態>」、
「以下、上記の様に構成された半導体発光装置1の製造方法について説明を行う。即ち、本発明を適用した発光装置の製造方法の一例である半導体発光装置の製造方法について説明を行う。」(【0045】)、
「図3A及び図3Bは本発明を適用した半導体発光装置の製造方法を説明するための模式図であり、図4は本発明を適用した半導体発光装置の製造方法の工程を示すフローチャートである。」(【0046】)、


「本発明を適用した半導体発光装置の製造方法では、先ず、図3A(a)で示す様に、金属の板材を所定形状にパターニングして金属製リードフレーム基材20を形成する。」(【0047】)、
「具体的には、例えば、打ち抜きプレス加工やエッチング加工等の適当な加工方法を用いて、金属の板材を所定形状にパターニングすることによって図5で示す様な、多連状の金属製リードフレーム基材20を形成する。」(【0048】)、
「ここで、図5で示す金属製リードフレーム基材20は、半導体発光装置1を構成する金属製リードフレーム2が複数個連なったものである。金属製リードフレーム基材20は、リードフレーム2のみならず、両端に配置されたサポートフレーム21と、サポートフレーム21同士の間に架橋する様に渡され骨組み状となっている複数の桟フレーム22とを含んでいる。」(【0049】)、


「ここで、個々の金属製リードフレーム2は、上述した様に、スリット6によって半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8とに分割され、有底の溝部6A、凹部10や第2の凹部18が設けられている。なお、半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8とは、金属製リードフレーム基材20では分離されており、隣接する桟フレーム22によって吊られる様に保持されている。」(【0050】)、
「ところで、半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8とを分離するスリット6の間隔が小さければ、半導体発光装置1の小型化に寄与することとなる。
ここで、一般に金属製リードフレーム基材20を形成する金属の板材の厚みが大きければ大きいほど、スリット6の幅も広くなってしまう。そのため、金属製リードフレーム基材20を形成する金属の板材の厚みは小さい方が好ましく、本実施の形態では概ね0.2mmの板材を用いている。」(【0051】)、
「次に、金属製リードフレーム基材20の半導体発光素子3の搭載面のうち、半導体発光素子3と金属製ワイヤで電気的に接続される領域に銀めっき11を形成する。」(【0052】)、
「続いて、トランスファーモールド技術を用いて、スリット6、溝部6A、凹部10及び第2の凹部18に反射用樹脂材料4を充填する。
また、同時に、反射用樹脂材料4によって、半導体発光素子搭載領域9を囲繞する反射体14を形成する。更に、桟フレーム22の下方(半導体発光素子3の搭載面とは反対側方向)にも反射用樹脂材料4を充填する(図3A(b)参照。)。」(【0053】)、
「ここで、反射体14は、金属製リードフレーム2の半導体発光素子3の搭載面と同一平面上における半導体発光素子搭載領域9側の端部が凹部10の形成領域に位置する様に形成する。なお、製造誤差を考慮すると、反射体14の端部が凹部10の略中心に位置する様な設計とすることが好ましい。」(【0054】)、
「また、反射体14によって形作られる凹形状部15の底部に半導体発光素子搭載領域9及びその周辺領域が位置する様に構成されている。このとき、半導体発光素子3から発生する光を高効率で反射できる様に、反射用樹脂材料4としては白色の材料を用いることが好ましい。」(【0055】)、
「ここで、本実施の形態ではトランスファーモールド技術を用いる場合を例に挙げて説明を行っている。しかし、スリット6、溝部6A、凹部10及び第2の凹部18に反射用樹脂材料4を充填することができ、反射体14を形成することができれば充分であり、必ずしもトランスファーモールド技術を用いる必要は無い。」(【0056】)、
「続いて、熱硬化性の銀ペースト等の導電性接着材料12を、個々の金属製リードフレーム2の半導体素子搭載部7の半導体発光素子搭載領域9に塗布する。そして、導電性接着材料12を介在させて半導体発光素子3を半導体発光素子搭載領域9に搭載する(図3A(c)参照。)。この様にして、半導体発光素子3を金属製リードフレーム2に搭載するダイボンド処理が行われることとなる。」(【0057】)、
「次に、半導体発光素子搭載領域9に搭載された半導体発光素子3の外部接続パッド(図示せず)と金属製リードフレーム2とを、例えば直径20?30μm程度の金細線等の金属製ワイヤ13によって電気的に接続を行うワイヤーボンドを行う(図3A(d)参照。
)。これにより、半導体発光装置1としての電気的回路が形成されることとなる。」(【0058】)、
「次に、半導体発光素子3と金属製ワイヤ13を完全に覆う様に、トランスファーモールド技術を用いて、レンズ用樹脂材料5を凹形状部15に充填する。また、同時に、レンズ用樹脂材料5で半球状のレンズ部分16を形成する(図3B(e)参照。)。なお、高い光透過性を実現できる様に、レンズ用樹脂材料5としては透明の材料を用いることが好ましい。」(【0059】)、
「ここで、本実施の形態ではトランスファーモールド技術を用いる場合を例に挙げて説明を行っている。しかし、凹形状部15にレンズ用樹脂材料5を充填することができ、レンズ部分16を形成することができれば充分であり、必ずしもトランスファーモールド技術を用いる必要は無い。」(【0060】)、
「但し、例えば、ポッティング技術を用いて凹形状部15にレンズ用樹脂材料5を充填する場合には、レンズ用樹脂材料5の粘度の影響を受けて充填量のバラツキを受けやすく、また、レンズ部分16の形状制御が非常に困難である。更に、熱硬化時の揮発成分の蒸発や硬化収縮等の影響によっても均一な封止形状を実現することが難しい。そのため、こうした点に鑑みると、トランスファーモールド技術を用いた方が好ましい。」(【0061】)、
「次に、金属製リードフレーム基材20の半導体発光素子3の搭載面とは反対側の面にめっき処理を行い、端子半田めっき17を形成する(図3B(f)参照。)。」(【0062】)、
「こうした工程を経ることによって、複数の半導体発光装置1が格子状に配列された状態となる。」(【0063】)、
「その後、ダイシングブレード23によって、格子状に配列された半導体発光装置1の外形に沿って、多連状の金属製リードフレーム基材20を切断する(図3B(g)参照。)。これにより、複数の半導体発光装置1が多連状の金属製リードフレーム20より切り出され、単個の半導体発光装置1を得ることができる。」(【0064】)、
「本発明を適用した半導体発光装置の製造方法では、上述の様に、金属製リードフレーム2の半導体発光素子3の搭載面と同一平面上における半導体発光素子搭載領域9側の反射体14の端部が凹部10の形成領域に位置する様に、反射体14を形成している。そのため、金属製リードフレーム2と反射用樹脂材料4とレンズ用樹脂材料5が同一界面で接することを回避することができ、温度変化に起因した応力の集中による反射用樹脂材料4やレンズ用樹脂材料5の剥離を抑制することができるのである。」(【0065】)、
「また、凹部10に反射用樹脂材料4を充填しているために、金属製リードフレーム2と反射体14との接着強度がアンカー効果によって強化されることとなり、この点においても反射用樹脂材料4の剥離を抑制することができる。」(【0066】)、
「更に、本発明を適用した半導体発光装置の製造方法では、トランスファーモールド技術を用いてレンズ用樹脂材料5を凹形状部15に充填している。そのため、レンズ用樹脂材料5を、半導体発光素子3が発する光に関して目的とされる光学特性に基づいた形状に成形することを極めて容易に実現することができ、かつ、その形状安定性を確保することができる。更に、トランスファーモールド金型内でレンズ用樹脂材料5の硬化を行うために、硬化時の揮発成分の蒸発や硬化収縮による封止形状のバラツキをも抑えることができることとなる。」(【0067】)、
「また、本発明を適用した半導体発光装置の製造方法では、桟フレーム22の下方にも反射用樹脂材料4を充填し、そのことによって、ダイシングブレード23によるダイシング時にバリが発生することを抑制することができる。
即ち、ダイシングブレード23によって切断する桟フレーム22の上方(半導体発光素子3の搭載面方向)及び下方(半導体発光素子3の搭載面とは反対側方向)の双方が反射用樹脂材料4で被覆されている。そのため、ダイシング時に桟フレーム22が表面に露出することなく、上述の様に、バリの発生を抑制することができるのである。」(【0068】)

(エ)図1から、反射体14は、金属製リードフレーム2とあわさって、くぼみ部を形成しているとともに、前記くぼみ部は、実質的に平坦な側面から底面に連続する角部を備えており、前記角部が位置する部分には、凹部10が設けられており、前記凹部10内に配置された反射体14の一部は、前記くぼみ部の底面において露出していることがみてとれる。

イ 上記アによれば、引用文献1には、次の方法発明(以下「引用文献1方法発明」という。)及び装置発明(以下「引用文献1装置発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用文献1に記載された発明を認定する際に用いた段落番号等を括弧内に示すとともに、対応する図面番号を付している(以下同じ。)。

[引用文献1方法発明]
発光素子搭載領域9と、該発光素子搭載領域9の周囲に設けられた凹部10を有する基板2の前記凹部10を反射材料4で充填すると共に、同反射材料4で前記基板2の表面と同一平面上における前記発光素子搭載領域9側の端部Cが前記凹部10の形成領域に位置し、前記発光素子搭載領域9を囲繞する反射体14を形成する工程と、
前記基板2の発光素子搭載領域9に発光素子3を搭載する工程と、
光透過性材料5を前記反射体14により囲繞された領域に充填する工程とを備える
発光装置の製造方法であって、(【請求項4】)
前記反射体14は、トランスファーモールド技術によって形成するものであり、(【請求項5】)
前記反射体14により囲繞された領域をトランスファーモールド技術によって光透過性材料5で充填するものであり、(【請求項6】)
前記基板2は、金属製リードフレーム2からなり、(【0016】)
金属製リードフレーム2は、スリット6によって半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8とに分割されており、(【0018】)
金属製リードフレーム2は、複数個連なって金属製リードフレーム基材20を構成し、上記の発光装置の製造方法は、基板2が金属製リードフレーム基材20に属している状態で実行されて、複数の半導体発光装置1が格子状に配列された状態を得るものであり、ダイシングブレード23によって、格子状に配列された半導体発光装置1の外形に沿って、多連状の金属製リードフレーム基材20を切断し、これにより、単個の半導体発光装置1を得ることができる、(【0049】、【0052】、【0063】、【0064】)
発光装置の製造方法。」

[引用文献1装置発明]
「発光素子搭載領域9と、該発光素子搭載領域9の周囲に設けられた凹部10を有する基板2と、
該基板2の前記発光素子搭載領域9に搭載された発光素子3と、
前記凹部10に充填されると共に、前記発光素子3を囲繞する反射体14を構成する反射材料4と、
前記反射体14により囲繞された領域に充填されると共に、前記基板2の表面と同一平面上における前記反射材料4との界面が前記凹部10の形成領域に配された光透過性材料5とを備える
発光装置であって、(【請求項1】)
前記反射体14は、トランスファーモールド技術によって形成するものであり、(【請求項5】)
前記基板2は、金属製リードフレーム2からなり、(【0016】)
金属製リードフレーム2は、スリット6によって半導体発光素子搭載部7と金属線接続部8とに分割されており、(【0018】)
反射体14は、金属製リードフレーム2とあわさって、くぼみ部を形成しているとともに、前記くぼみ部は、実質的に平坦な側面から底面に連続する角部を備えており、前記角部が位置する部分には、凹部10が設けられており、前記凹部10内に配置された反射体14の一部は、前記くぼみ部の底面において露出している(図1、上記ア(エ))、
発光装置。」

(2)引用文献2(特開2005-235934号公報)
引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「壁面部材(30)は、その中央部が青色発光ダイオード素子(24)及び蛍光体(27)を分散させた第一の樹脂(26)がおさまるための穴となっていて、中央に面した部分は斜面になっていること、(【0039】)
この斜面は、光を前方に取り出すための反射面であって、その斜面の曲面形は、光の反射方向を考慮して決定されること、(【0039】)



(3)引用文献3(特開2007-194401号公報)
引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「凹部の側面の断面角度は、配向の指向角を制御するために自由に設計することが可能であり、曲線から構成されていてもよいこと、(【0020】)



(4)引用文献4(特開2010-62427号公報)
引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「第1の反射面20b及び第2の反射面20cは、発光素子10の光軸5を通る断面において曲線であってもよく、図6では、第1の反射面20b及び第2の反射面20cが、共に上方に向かって凹となる曲面により構成されていること、(【0030】)



(5)引用文献5(特開2008-60344号公報)
引用文献5には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「反射フィラー含有樹脂層52の形状として、図2のようなもの。



(6)引用文献8(特開2009-135484号公報)
ア 引用文献8には、次の記載がある。
(ア)【特許請求の範囲】、
「底面と側面とからなる凹部が形成されたパッケージ成形体と
前記凹部の底面に載置された発光素子と
前記発光素子を覆って前記凹部に充填された透光性の封止樹脂と
を含む光半導体装置であって、
前記透光性の封止樹脂と空気との界面から光を取り出す発光装置であり、
前記凹部底面の面積が7mm^(2)以上であり、
前記凹部の側面が底面と接する部分と水平面との角度が45°以下である光半導体装置。」(【請求項1】)、
「パッケージ成形体の凹部の縦断面の側面部の線分形状が、円、楕円、長円、卵型および放物線のうちのいずれかの曲線の一部であるか、もしくは前記凹部の縦断面の形状が、三角形以上の多角形のいずれかの形状である請求項1または2に記載の光半導体装置。」(【請求項3】)」

(イ)「(凹部断面形状)」、
「図1に、(a)本発明の光半導体装置の縦断面模式図、(b)本発明の光半導体装置の凹部の別の一例を表す縦断面拡大図および(c)凹部のさらに別の一例を表す縦断面拡大図を示す。パッケージ成形体100の凹部縦断面の側面部の線分が、図1(c)のように放物線、円、楕円およびオーバルと呼ばれる長円、卵型等のうちいずれかの曲線の一部であるのが好ましい。または、図1(a)、(b)の樹脂部103のように、前記凹部縦断面の形状が、三角形以上の多角形の形状であるのが好ましい。断面形状は左右対称であるのが更に好ましい。」(【0019】)、


「また、凹部側面が底面と接する部分と水平面との角度θは、図1(a)に示すように45°以下であり、凹部側面の縦断面の形状は底面に近づくにつれ側面の傾斜が水平に近づくのが好ましい。」(【0020】)、
「上記縦断面の側面部は、直線であるか、または図1(b)に示すように複数の直線で底面に向けて段階的に傾斜角θが小さくなる折れ線形状や図1(c)に示すように円弧または放物線の一部のように連続的に変化する曲線形状、もしくはその複合とすることができる。」(【0021】)、
「なお、前記側面が底面と接する際に図1(c)のように放物線等の曲線である場合は、底面と放物線等が接した点から接線を引き底面となす角をθとする。」(【0022】)

(ウ)「【符号の説明】」、
「100・・・・・パッケージ成形体(樹脂成形体)
101・・・・・透明封止樹脂
102・・・・・半導体発光素子
103・・・・・樹脂部(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)
105・・・・・リード(金属配線)
106・・・・・リード(金属配線)
109・・・・・ワイア(ボンディングワイヤ)
112・・・・・光取出し面
200・・・・・光半導体搭載領域(凹部)
205・・・・・金属配線
300・・・・・樹脂注入口
301・・・・・金型
306・・・・・蛍光体
310・・・・・はんだバンプ
θ・・・・・・・パッケージ成形体の凹部側面が底面と接する部分と水平面との角」(【0053】)

(エ)図1によれば、引用文献8のパッケージ成形体は、リード106とリード105を含むリードと、樹脂部103とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有することが見て取れる。

イ 上記アによれば、引用文献8には、次の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。
「底面と側面とからなる凹部が形成されたパッケージ成形体と
前記凹部の底面に載置された発光素子と
前記発光素子を覆って前記凹部に充填された透光性の封止樹脂と
を含む光半導体装置であって、
前記透光性の封止樹脂と空気との界面から光を取り出す発光装置であり、
前記凹部底面の面積が7mm^(2)以上であり、
前記凹部の側面が底面と接する部分と水平面との角度が45°以下である光半導体装置であって、(【請求項1】)
前記パッケージ成形体は、リード106とリード105を含むリードと、樹脂部103とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有しており、(上記ア(エ))
パッケージ成形体100の凹部縦断面の側面部は、直線であるか、複数の直線で底面に向けて段階的に傾斜角θが小さくなる折れ線形状や、円弧または放射線の一部のように連続的に変化する曲線形状、もしくはその複合とすることができる、(【0019】、【0021】)
光半導体装置。」

3 原査定の拒絶の理由に対する判断
原査定の進歩性欠如の拒絶理由は、引用文献1に記載された発明を主引用発明とするものである。
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用文献1方法発明との対比
(ア)本願発明1の「凹部を有するパッケージ成形体を準備するパッケージ準備工程と、」との特定事項について
a 引用文献1方法発明の「基板2」と「反射体14」とを含む構造は、本願発明1の「パッケージ成形体」に相当する。
b 引用文献1方法発明の上記構造は、「前記反射体14により囲繞された領域」を備えるから、本願発明1でいう「凹部」を有するといえる。
c 引用文献1方法発明が、本願発明1でいうパッケージ成形体「を準備するパッケージ準備工程」を備えることは明らかである。
d よって、引用文献1方法発明は、本願発明1の「凹部を有するパッケージ成形体を準備するパッケージ準備工程と、」との特定事項を備える。

(イ)本願発明1の「前記凹部の底面に発光部品を実装する実装工程と、」との特定事項について
引用文献1方法発明は、「前記基板2の発光素子搭載領域9に発光素子3を搭載する工程」を備えるところ、上記(ア)bにも照らせば、本願発明1の「前記凹部の底面に発光部品を実装する実装工程と、」との特定事項を備えることが明らかである。

(ウ)本願発明1の「前記凹部内で前記発光部品を被覆する封止部材を形成する封止部材形成工程と、」との特定事項について
引用文献1方法発明は、「光透過性材料5を前記反射体14により囲繞された領域に充填する工程」を備えるところ、上記(ア)b及び上記(イ)にも照らせば、本願発明1の「前記凹部内で前記発光部品を被覆する封止部材を形成する封止部材形成工程と、」との特定事項を備えることが明らかである。

(エ)本願発明1の「発光装置の製造方法であって、」との特定事項について
引用文献1方法発明の「発光装置の製造方法」は、本願発明1の「発光装置の製造方法」に相当する。

(オ)本願発明1の「前記パッケージ準備工程」に関する特定事項について
a 本願発明1の「上面に第1溝部が設けられた第1リードと上面に第2溝部が設けられた第2リードとを含むリードフレームを準備するリードフレーム準備工程と、」との特定事項について
(a)引用文献1方法発明の「基板2」である「金属製リードフレーム2」が「複数個連なって」「構成」された「金属製リードフレーム基材20」は、本願発明1の「リードフレーム」に相当する。
(b)引用文献1方法発明の金属製リードフレーム2が有する「半導体発光素子搭載部7」は、本願発明1の「第1リード」に相当する。
そして、引用文献1方法発明の半導体発光素子搭載部7は、「凹部10」を有するといえるところ、かかる「凹部10」は、本願発明1の「第1溝部」に相当する。さらに、この「凹部10」が、本願発明1でいう「第1リード」の「上面」に設けられていることは、明らかである。
(c)引用文献1方法発明の金属製リードフレーム2が有する「金属線接続部8」は、本願発明1の「第2リード」に相当する。
そして、引用文献1方法発明の金属線接続部8は、「凹部10」を有するといえるところ、かかる「凹部10」は、本願発明1の「第2溝部」に相当する。さらに、この「凹部10」が、本願発明1でいう「第2リード」の「上面」に設けられていることは、明らかである。
(d)引用文献1方法発明が、「リードフレームを準備する準備工程」を備えることは明らかである。
(e)よって、引用文献1方法発明は、本願発明1の「上面に第1溝部が設けられた第1リードと上面に第2溝部が設けられた第2リードとを含むリードフレームを準備するリードフレーム準備工程と、」との特定事項を備える。

b 本願発明1の「下面に角部が面取り加工された凸部を備えた上側金型を、該面取り加工された角部が前記第1溝部と前記第2溝部とに対向するように前記凸部の上面を第1リードの上面と第2リードの上面に接触させ、下側金型の上面を前記第1リードの下面と前記第2リードの下面と接触させることにより、前記上側金型と前記下側金型とによって前記リードフレームを挟持して、前記凸部の周りに第1溝部と第2溝部とに通じる空洞を形成し、該空洞に樹脂を注入する樹脂成型工程と、」との特定事項について
(a)引用文献1方法発明は、「該発光素子搭載領域9の周囲に設けられた凹部10を有する基板2の前記凹部10を反射材料4で充填する」とともに、「前記反射体14は、トランスファーモールド技術によって形成するものであ」るから、本願発明1とは、「第1溝部」と「第2溝部」に「樹脂を注入する樹脂成形工程」を備える点で一致する。
(b)しかし、引用文献1方法発明は、「下面に角部が面取り加工された凸部を備えた上側金型を、該面取り加工された角部が前記第1溝部と前記第2溝部とに対向するように前記凸部の上面を第1リードの上面と第2リードの上面に接触させ、下側金型の上面を前記第1リードの下面と前記第2リードの下面と接触させることにより、前記上側金型と前記下側金型とによって前記リードフレームを挟持して、前記凸部の周りに第1溝部と第2溝部とに通じる空洞を形成し、該空洞に樹脂を注入する」ものなのか、明らかでない。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本願発明1と引用文献1方法発明とは、
「凹部を有するパッケージ成形体を準備するパッケージ準備工程と、
前記凹部の底面に発光部品を実装する実装工程と、
前記凹部内で前記発光部品を被覆する封止部材を形成する封止部材形成工程と、
を含む発光装置の製造方法であって、
前記パッケージ準備工程は、
上面に第1溝部が設けられた第1リードと上面に第2溝部が設けられた第2リードとを含むリードフレームを準備するリードフレーム準備工程と、
第1溝部と第2溝部に樹脂を注入する樹脂成形工程と、
を含む発光装置の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
第1溝部と第2溝部に樹脂を注入する樹脂成形工程が、
本願発明1は、「下面に角部が面取り加工された凸部を備えた上側金型を、該面取り加工された角部が前記第1溝部と前記第2溝部とに対向するように前記凸部の上面を第1リードの上面と第2リードの上面に接触させ、下側金型の上面を前記第1リードの下面と前記第2リードの下面と接触させることにより、前記上側金型と前記下側金型とによって前記リードフレームを挟持して、前記凸部の周りに第1溝部と第2溝部とに通じる空洞を形成し、該空洞に樹脂を注入する」ものであるのに対し、
引用文献1方法発明は、そうであるのか明らかでない点。

ウ 相違点1の判断
(ア)相違点1の構成のうち、「下面に」「凸部を備えた上側金型を、」「角部が前記第1溝部と前記第2溝部とに対向するように前記凸部の上面を第1リードの上面と第2リードの上面に接触させ、下側金型の上面を前記第1リードの下面と前記第2リードの下面と接触させることにより、前記上側金型と前記下側金型とによって前記リードフレームを挟持して、前記凸部の周りに第1溝部と第2溝部とに通じる空洞を形成し、該空洞に樹脂を注入する」という構成については、以下のとおり、実質的な相違点ではないと評価しうる。

a 引用文献1方法発明は、「反射体14」を「トランスファーモールド技術によって形成する」ものであるところ、トランスファーモールド技術とは、熱硬化性樹脂を用いた成型技術の一種であって、より具体的には、閉じた金型を形成して、その金型のキャビティに、加熱室内で予熱・軟化させられた熱硬化性樹脂を、圧入するものであると認められる。そして、閉じた金型を形成する際に、上側金型と下側金型を用いることは、例示するまでもなく技術常識である。
そうすると、相違点1の構成のうち、「下面に」「凸部を備えた上側金型」の「前記凸部の上面を第1リードの上面と第2リードの上面に接触させ、下側金型の上面を前記第1リードの下面と前記第2リードの下面と接触させることにより、前記上側金型と前記下側金型とによって前記リードフレームを挟持して、前記凸部の周りに第1溝部と第2溝部とに通じる空洞を形成し、該空洞に樹脂を注入する」という構成までは、実質的な相違点ではないと評価する余地がある。

b 上記aを前提とすると、引用文献1方法発明は、さらに、相違点1の構成のうち、下面に凸部を備えた上側金型を、「角部が前記第1溝部と前記第2溝部とに対向するように」前記凸部の上面を第1リードの上面と第2リードの上面に接触させる点も、開示していることになる。
なぜならば、引用文献1方法発明は、「同反射材料4で前記基板2の表面と同一平面上における前記発光素子搭載領域9側の端部C」が「前記凹部10の形成領域に位置し」ているものであるところ、これを上側金型の観点から整理すれば、上側金型は、「端部C」を形成するべく「角部」を備えていることになるし、また、かかる「角部」は、「凹部10」(本願発明1の「第1溝部」及び「第2溝部」に相当。)に「対向する」ことになるからである。

c このように、相違点1の構成のうち、「下面に」「凸部を備えた上側金型を、」「角部が前記第1溝部と前記第2溝部とに対向するように前記凸部の上面を第1リードの上面と第2リードの上面に接触させ、下側金型の上面を前記第1リードの下面と前記第2リードの下面と接触させることにより、前記上側金型と前記下側金型とによって前記リードフレームを挟持して、前記凸部の周りに第1溝部と第2溝部とに通じる空洞を形成し、該空洞に樹脂を注入する」という構成までは、実質的な相違点ではないと評価しうる。

(イ)しかしながら、相違点1の構成のうち、上側金型において、「角部が面取り加工され」ている構成は、実質的な相違点であるし、これを容易想到であると評価するに足りる証拠もない。
この点、原査定は、引用文献2?引用文献5を挙げるところ、これらの文献が、仮に、上側金型において、「角部が面取り加工され」ている構成を開示していると解したとしても、これらの文献は、本願発明1の第1溝部と第2溝部に相当する構成を開示しているわけではない。そして、引用文献1方法発明において「角部が面取り加工され」ているとの構成が採用されることによって、端部Cが面取り加工された状態で凹部(本願発明1の「第1溝部」及び「第2溝部」)に対向する発光装置が製造されることになるところ、これにより、上側金型の離型性を向上させつつ、バリの形成を抑制できるという、従来技術ではなし得なかった格別の効果を奏するものと認められる。
よって、引用文献1方法発明から出発した当業者は、引用文献2?引用文献5の構成に接したとしても、相違点1の構成には至らなかったと解するのが相当である。
また、引用文献6及び7を考慮しても、上記の判断を左右しない。

エ 本願発明1の小括
したがって、本願発明1は、引用文献1方法発明及び引用文献2?引用文献7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を限定したものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用文献1方法発明及び引用文献2?引用文献7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本願発明3について
ア 本願発明3と引用文献1装置発明との対比
(ア)本願発明3の「第1リードおよび第2リードを含むリードと樹脂成形体とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有するパッケージ成形体と、」との特定事項について
a 引用文献1装置発明の「基板2」と「反射体14」とを含む構造は、本願発明3の「パッケージ成形体」に相当する。
そして、引用文献1装置発明の「基板2」である「金属製リードフレーム2」は、本願発明3の「リード」に相当し、引用文献1装置発明の「トランスファーモールド技術によって形成するものであ」る「反射体14」は、本願発明3の「樹脂成形体」に相当する。

b 引用文献1装置発明の金属製リードフレーム2が有する「半導体発光素子搭載部7」は、本願発明3の「第1リード」に相当する。
そして、引用文献1装置発明の金属製リードフレーム2が有する「金属線接続部8」は、本願発明3の「第2リード」に相当する。

c 引用文献1装置発明の「反射体14」は、「金属製リードフレーム2とあわさって、くぼみ部を形成している」から、引用文献1装置発明の「基板2」と「反射体14」とを含む構造(本願発明3の「パッケージ成形体」に相当。)は、本願発明3でいう「前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有する」ものといえる。

d よって、引用文献1装置発明は、本願発明3の「第1リードおよび第2リードを含むリードと樹脂成形体とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有するパッケージ成形体と、」との特定事項を備える。

(イ)本願発明3の「前記凹部の底面に載置された発光部品と、」との特定事項について
a 引用文献1装置発明の「発光素子3」は、本願発明3の「発光部品」に相当する。
そして、引用文献1装置発明の「発光素子3」は、「該基板2の前記発光素子搭載領域9に搭載され」ているから、上記(ア)cにも照らすと、本願発明3でいう「前記凹部の底面に載置された」ものといえる。

b よって、引用文献1装置発明は、本願発明3の「前記凹部の底面に載置された発光部品と、」との特定事項を備える。

(ウ)本願発明3の「前記凹部内に位置し、前記発光部品を被覆する封止部材と、を有し」との特定事項について
a 引用文献1装置発明の「前記反射体14により囲繞された領域に充填される」「光透過性材料5」は、本願発明3の「封止部材」に相当する。

b 上記(イ)にも照らせば、引用文献1装置発明は、本願発明3の「前記凹部内に位置し、前記発光部品を被覆する封止部材と、を有し」との特定事項を備える。

(エ)本願発明3の「前記リードの上面には、前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部が位置する部分に溝部が設けられており、」との特定事項について
a 引用文献1装置発明の「凹部10」は、本願発明3の「溝部」に相当する。
そして、かかる「凹部10」は、「基板2」(金属製リードフレーム2)が有しているものであるから、本願発明3でいう「前記リードの上面に」設けられているといえる。

b 上記aに加え、引用文献1装置発明は、「反射体14は、金属製リードフレーム2とあわさって、くぼみ部を形成しているとともに、前記くぼみ部は、実質的に平坦な側面から底面に連続する角部を備えており、前記角部が位置する部分には、凹部10が設けられている」ものであることを踏まえれば、引用文献1装置発明は、本願発明3の「前記リードの上面には、前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部が位置する部分に溝部が設けられており、」との特定事項を備える。

(オ)本願発明3の「前記溝部内に配置された樹脂成形体の一部は、前記凹部の底面において露出し、」との特定事項について
引用文献1装置発明は、「前記凹部10内に配置された反射体14の一部は、前記くぼみ部の底面において露出している」ものであるから、本願発明3の「前記溝部内に配置された樹脂成形体の一部は、前記凹部の底面において露出し、」との特定事項を備える。

(カ)本願発明3の「前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されており、」との特定事項について
引用文献1装置発明は、上記特定事項を備えない。

(キ)本願発明3の「前記封止部材は、前記樹脂成形体の前記角部を被覆する、」との特定事項について
上記(ウ)にも照らせば、引用文献1装置発明は、本願発明3の「前記封止部材は、前記樹脂成形体の前記角部を被覆する、」との特定事項を備えるといえる。

(ク)本願発明3の「発光装置。」との特定事項について
引用文献1装置発明の「発光装置」は、本願発明3の「発光装置」に相当する。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本願発明3と引用文献1装置発明とは、
「第1リードおよび第2リードを含むリードと樹脂成形体とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有するパッケージ成形体と、
前記凹部の底面に載置された発光部品と、
前記凹部内に位置し、前記発光部品を被覆する封止部材と、を有し
前記リードの上面には、前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部が位置する部分に溝部が設けられており、
前記溝部内に配置された樹脂成形体の一部は、前記凹部の底面において露出し、
前記封止部材は、前記樹脂成形体の前記角部を被覆する、発光装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点2]
本願発明3は、「前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されて」いるのに対し、引用文献1装置発明は、そうではない点。

ウ 相違点2の判断
原査定は、引用文献2?引用文献5が、相違点2に係る構成を開示している旨認定する。
しかしながら、引用文献2?引用文献5が、仮に、相違点2に係る構成を開示しているとしても、引用文献1装置発明から出発した当業者は、次のとおり、(相違点2に係る構成には至るとしても、)本願発明3の構成に至らなくなってしまう。
(ア)まず、引用文献2?引用文献5は、本願発明3の「前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面」を開示しない。そのため、引用文献1装置発明に引用文献2?引用文献5に記載された技術的事項を適用できたとしても、「前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面」という一致点とされた構成(上記イ)も併せて変更されてしまうのであり、その結果、新たに相違点が発生することになる。

(イ)さらに、引用文献1装置発明において、「前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成され」るようにできたとしても、「角部が位置する部分に溝部が設けられて」いるという一致点とされた構成(上記イ)が、一致点のまま維持されるのかも不明である。
すなわち、引用文献1装置発明が「角部が位置する部分に溝部が設けられて」いるように構成された技術的理由は、「金属製リードフレーム2」と「反射材料4」と「光透過性材料5」が同一界面で接することを回避して、温度変化に起因した応力の集中による反射材料4や光透過性材料5の剥離を抑制する(引用文献1の【0042】)ことにある。そうすると、「角部」の表面が曲面から構成されるものである場合においてまで、「溝部」が設けられる位置が、当該曲面から構成される「角部が位置する部分」である必要性は必ずしもない(「角部」のうち、「底面」からの立ち上がりに係る部位を観念した上で、その部位の近傍に、「溝部」が設けられていれば足りる。)。

(ウ)そして、一致点とされた上記各構成を、変更することなく維持したままで、引用文献2?引用文献5に記載された「前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されて」いる構成を採用できるとする根拠はない。

(エ)このような次第で、引用文献1装置発明から出発した当業者は、引用文献2?引用文献5に記載された技術的事項に接したとしても、本願発明3の構成には至らない。
引用文献6及び7を考慮しても、上記の判断を左右しない。

エ 本願発明3の小括
したがって、本願発明3は、引用文献1装置発明及び引用文献2?引用文献7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本願発明4?6について
本願発明4?6は、本願発明3を限定したものであるから、上記(3)と同様の理由により、引用文献1装置発明及び引用文献2?引用文献7に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)原査定の拒絶の理由に対する判断の小括
よって、原査定の拒絶の理由により、本願を拒絶することはできない。

4 当審拒絶理由に対する判断
当審拒絶理由は、本願発明1及び2を対象としていないので、以下、本願発明3?6について検討する。
また、進歩性欠如の拒絶理由は、引用文献8に記載された発明を主引用発明とするものである。
(1)本願発明3について
ア 本願発明3と引用発明8との対比
(ア)本願発明3の「第1リードおよび第2リードを含むリードと樹脂成形体とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有するパッケージ成形体と、」との特定事項について
a 引用発明8の「リード106」、「リード105」及び「リード」は、それぞれ、本願発明3の「第1リード」、「第2リード」及び「リード」に相当する。
b 引用発明8の「樹脂部103」は、本願発明3の「樹脂成形体」に相当するといえる。
c 上記a及びbに加え、引用発明8が「前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有して」いることを踏まえれば、引用発明8は、本願発明3の「第1リードおよび第2リードを含むリードと樹脂成形体とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有するパッケージ成形体と、」との特定事項を備えるといえる。

(イ)本願発明3の「前記凹部の底面に載置された発光部品と、」との特定事項について
引用発明8の「前記凹部の底面に載置された発光素子」は、本願発明3の「前記凹部の底面に載置された発光部品」に相当する。

(ウ)本願発明3の「前記凹部内に位置し、前記発光部品を被覆する封止部材と、」との特定事項について
引用発明8の「前記発光素子を覆って前記凹部に充填された透光性の封止樹脂」は、本願発明3の「前記凹部内に位置し、前記発光部品を被覆する封止部材」に相当する。

(エ)本願発明3の「前記リードの上面には、前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部が位置する部分に溝部が設けられており、
前記溝部内に配置された樹脂成形体の一部は、前記凹部の底面において露出し、
前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されており、
前記封止部材は、前記樹脂成形体の前記角部を被覆する、」との特定事項について
引用発明8は、上記特定事項を備えない。

(オ)本願発明3の「発光装置」との特定事項について
引用発明8の「光半導体装置」は、本願発明8の「発光装置」に相当する。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本願発明3と引用発明8とは、
「第1リードおよび第2リードを含むリードと樹脂成形体とを有し、前記リードの上面の一部が底面に位置する凹部を有するパッケージ成形体と、
前記凹部の底面に載置された発光部品と、
前記凹部内に位置し、前記発光部品を被覆する封止部材と、を有する
発光装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点3]
本願発明3は、「前記リードの上面には、前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部が位置する部分に溝部が設けられており、
前記溝部内に配置された樹脂成形体の一部は、前記凹部の底面において露出し、
前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されており、
前記封止部材は、前記樹脂成形体の前記角部を被覆する、」のに対し、
引用発明8は、そうではない点。

ウ 相違点3の判断
(ア)まず、引用発明8から出発した当業者は、相違点3のうち、「前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部」であって、「前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されて」いるとの構成に至らない。
すなわち、引用発明8は、「前記樹脂成形体の前記凹部」の断面を、「直線であるか、複数の直線で底面に向けて段階的に傾斜角θが小さくなる折れ線形状や、円弧または放射線の一部のように連続的に変化する曲線形状、もしくはその複合とすることができる」ものとしている。しかしながら、引用発明8が、(相違点3のような)「実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部」であって、「前記角部の表面は曲面から構成されて」いる構成を開示しているのかは、上記の内容からは判然としない。
そして、引用発明8において、「前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部」であって、「前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されて」いるとの構成を採用することが容易想到であることを示す証拠はない。
よって、引用発明8から出発した当業者は、相違点3のうち、「前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部」であって、「前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されて」いるとの構成に至らない。

(イ)上記(ア)は措き、仮に、引用発明8から出発した当業者が、相違点3のうち、「前記樹脂成形体の前記凹部の実質的に平坦な側面から前記底面に連続する角部」であって、「前記樹脂成形体の前記角部の表面は曲面から構成されて」いるとの構成に至るとしても、上記(3)ウ(イ)と同様の理由で、当業者は、引用発明8において、かかる曲面から構成されている「角部が位置する部分」に「溝部」が設けられているとの構成に至らない。

(ウ)このように、引用発明8から出発した当業者は、引用文献1装置発明に接したとしても、相違点3の構成に至らない。
引用文献2及び引用文献9を考慮しても、上記判断は左右されない。

エ 本願発明3の小括
したがって、本願発明3は、引用発明8、引用文献1装置発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本願発明4?6について
本願発明4?6は、本願発明3を限定したものであるから、上記(1)と同様の理由により、引用発明8、引用文献1装置発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)明確性要件について
当審拒絶理由は、平成31年4月2日提出の手続補正書によって補正される前の請求項3に「前記樹脂成形体の前記凹部の底面側の角部」との記載が、「前記角部の表面は曲面から構成されて」いることを併せると明確でないというものであったが、上記補正により解消した。

(4)当審拒絶理由に対する判断の小括
よって、当審拒絶理由により、本願を拒絶することはできない。

第4 むすび
このように、原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由により、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2016-174321(P2016-174321)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小濱 健太佐藤 俊彦  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 森 竜介
山村 浩
発明の名称 発光装置用パッケージ成形体及びそれを用いた発光装置  
代理人 山尾 憲人  
代理人 言上 惠一  

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