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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1351221 |
審判番号 | 不服2018-7313 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-29 |
確定日 | 2019-05-21 |
事件の表示 | 特願2016-571021「タッチポイント認識方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/192709、平成29年 6月22日国内公表、特表2017-517079、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)5月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年6月17日、中国)を国際出願日とする出願であって、平成29年10月31日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年2月2日付けで手続補正がされ、平成30年2月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年5月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、平成31年3月5日付けで当審より拒絶理由が通知され、平成31年3月22日に手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成31年3月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 タッチポイント認識方法であって、 タッチスクリーンの上のタッチイベントを得るステップと、 前記タッチイベントに従いタッチスクリーンエッジ領域の範囲内のタッチジェスチャの複数のタッチポイントを決定するステップであって、前記タッチスクリーンエッジ領域は前記タッチスクリーンのエッジから所定ピクセル幅の領域である、ステップと、 前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントを無効なタッチポイントとして認識するステップであって、 前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントのうちの1つのタッチポイントが前記タッチイベントに従い決定された後の所定時間期間の間に、前記タッチイベントの他に前記タッチスクリーンにより渡されるタッチプレスが受信されない場合、前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記1つのタッチポイントを最初のタッチポイントとして検出するステップと、 前記複数のタッチポイントが前記最初のタッチポイントとして検出された場合、前記タッチジェスチャの期間が予め設定された時間閾より大きい又は等しいことを検出するステップと、 前記タッチジェスチャの前記期間が前記予め設定された時間閾より大きい又は等しいことが検出された場合、前記最初のタッチポイントを前記無効なタッチポイントとして認識するステップと、 前記1つのタッチポイント以外の前記複数のタッチポイントのうちの残りのタッチポイントについて、 前記残りのタッチポイントが移動し、前記残りのタッチポイントの移動距離が予め設定された距離閾より小さい、又は前記残りのタッチポイントの移動速度が予め設定された速度閾より小さい場合、前記残りのタッチポイントを無効なタッチポイントとして認識するステップと、 前記残りのタッチポイントが移動せず、前記残りのタッチポイントが移動しない期間が予め設定された時間閾より大きい又は等しい場合、前記残りのタッチポイントを前記無効なタッチポイントとして認識するステップと、 を含むタッチポイント認識方法。 【請求項2】 タッチポイント認識装置であって、 タッチスクリーンの上のタッチイベントを得るよう構成される取得モジュールと、 前記タッチイベントに従いタッチスクリーンエッジ領域の範囲内のタッチジェスチャの複数のタッチポイントを決定するよう構成されるタッチポイント決定モジュールであって、前記タッチスクリーンエッジ領域は前記タッチスクリーンのエッジから所定ピクセル幅の領域である、タッチポイント決定モジュールと、 前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントを無効なタッチポイントとして認識するよう構成される認識モジュールであって、 前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントのうちの1つのタッチポイントが前記タッチイベントに従い決定された後の所定時間期間閾の間に、前記タッチイベントの他に前記タッチスクリーンにより渡されるタッチプレスが受信されない場合、前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記1つのタッチポイントを最初のタッチポイントとして検出するタッチポイント検出ユニットと、 前記複数のタッチポイントが前記最初のタッチポイントとして検出された場合、前記タッチジェスチャの期間が予め設定された時間閾より大きい又は等しいことを検出するタチ期間検出ユニットと、 無効認識ユニットであって、 前記タッチジェスチャの前記期間が前記予め設定された時間閾より大きい又は等しいことが検出された場合、前記最初のタッチポイントを前記無効なタッチポイントとして認識し、 前記1つのタッチポイント以外の前記複数のタッチポイントのうちの残りのタッチポイントについて、 前記残りのタッチポイントが移動し、前記残りのタッチポイントの移動距離が予め設定された距離閾より小さい、又は前記残りのタッチポイントの移動速度が予め設定された速度閾より小さい場合、前記残りのタッチポイントを無効なタッチポイントとして認識し、 前記残りのタッチポイントが移動せず、前記残りのタッチポイントが移動しない期間が予め設定された時間閾より大きい又は等しい場合、前記残りのタッチポイントを前記無効なタッチポイントとして認識する、無効認識ユニットと、 を含む認識モジュールと、 を含むタッチポイント認識装置。」 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-217814号公報)には、図面(特に、図1a、図1bを参照。)とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。 (1) 段落【0013】-【0018】 「【0013】 本発明は、意図しないオペレーションを最小限に抑えるためのタッチセンサパネルの端部領域でのタッチ接触の選択的拒否に関する。更に、端部接触の拒否に対する幾つかの例外を可能にすることによって、タッチセンサパネルの機能を最大にすることができる。 【0014】 図1aは、本発明の実施形態による端部拒否を実装する例示的なタッチセンサパネル100を示す。端部帯域102(接触拒否領域)は、中心エリア104を囲むタッチセンサパネル100の外側境界に作成することができる。全ての接触(例えば指又は手のひら)が端部帯域102内で検出される場合には、接触を無視することができる。図1aの実施例では、タッチ画像106及び108が端部帯域102内に位置付けられた重心110及び112をそれぞれ有するので、接触を無視することができる。 【0015】 図1bは、本発明の実施形態による例示的なタッチセンサパネル100上で発生する可能性のある第2のシナリオを示す。図1bの実施例では、端部帯域102における接触116と共に接触114が中心エリア104で検出された場合、中心エリアと端部帯域の両方で接触を認識することができる。上述の基準(拒否又は認識基準)に従うこのシナリオにおける端部接触の認識は、端部帯域で始まる接触を有するピンチングジェスチャーなどの意図的なジェスチャーが無視されるのを防ぐことができる。 【0016】 しかしながら、中心エリア104でのポインティングなどのオペレーションを実行するのに指が使用されるときには、端部帯域102に偶発的に置かれたいわゆる「小指」又は他の指が認識される可能性があり、ポインティングジェスチャーの代わりに意図しないジェスチャーが実行される恐れがある。従って、本発明の他の実施形態では、接触114及び116が中心エリア104と端部帯域102の両方で検出された場合、及び端部接触116の重心118が閾量(例えば1mm)を超えて移動しなかった場合には、これを無視することができる。しかしながら、端部接触116がいずれかの方向で閾量を超えて移動した場合(中心エリアにおいて他の指が検出されなかった場合でも)には、これを認識することができ、ジェスチャーの一部とすることができる追跡可能な接触となる。この認識によってまた、端部帯域102内で行われるオペレーションの追跡が可能になる。 ・・・(中略)・・・ 【0018】 図3aは、本発明の実施形態による端部拒否を実装する別の例示的なタッチセンサパネル300を示す。図3aの実施例では、タッチセンサパネル300は、幾つかの非ジェスチャー動作を行うために通常は確保しておくことができる下部領域302を含むことができる。例えば、下部領域302での指タップは、「クリック」又は選択機能として解釈することができる。従って、下部領域302での接触は、これらの機能を除く全ての目的に対して通常は無視することができる。これにも関わらず、幾つかの状況においては、ジェスチャーの一部として下部領域302での接触を認識させることが望ましい場合がある。従って、本発明の幾つかの実施形態によれば、拒否又は認識基準に従って、下部領域内で発生した指として識別される接触304(すなわち、一定の閾サイズのタッチの非同心画像)は、重心306が静止している場合は無視することができるが、重心が静止でない場合にはジェスチャーの一部として認識することができる。タッチ事象の識別は、本明細書においてその全体が引用により組み込まれる「Method and Apparatus for Integrating Manual Input(マニュアル入力を統合するための方法及び装置)」という名称の米国特許第6,323,846号に開示されている。本明細書で定義される静止とは、重心の移動が計算された重心の中心から閾量よりも少ないか、或いはある速度閾値未満に留まることを意味する。瞬間ポジションとローパスフィルタ(LPF)平均ポジション値との間の差が一定の閾値を超える場合、重心は移動しており、もはや静止ではないと考えることができる。この基準を使用して、緩慢なドリフティング又はローリング運動を伴う接触は無視することができるが、速いドリフトは、ジェスチャーの一部として接触を認識させることができる。」 (2) 図1a、図1b 引用文献1の図1a、図1bを参照すると、端部帯域102は、タッチスクリーンの端部から所定の幅を持つものであるといえる。 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「タッチセンサパネルの端部領域におけるタッチ接触(タッチ事象)の選択的拒否に関する方法であって、 タッチセンサパネル100において、端部帯域102(接触拒否領域)は、中心エリア104を囲むタッチセンサパネル100の外側境界に作成し、 ここで、端部帯域102は、タッチスクリーンの端部から所定の幅を持ち、 全ての接触(例えば指又は手のひら)が端部帯域102内で検出される場合には、接触を無視することができ、 端部帯域102における接触116と共に接触114が中心エリア104で検出された場合、 端部接触116の重心118が閾量(例えば1mm)を超えて移動しなかった場合には、これを無視することができ、 端部接触116がいずれかの方向で閾量を超えて移動した場合(中心エリアにおいて他の指が検出されなかった場合でも)には、これを認識することができ、 タッチセンサパネルは、幾つかの非ジェスチャー動作を行うために通常は確保しておくことができる下部領域302を含むことができ、 下部領域内で発生した指として識別される接触304(すなわち、一定の閾サイズのタッチの非同心画像)は、重心306が静止している場合は無視することができるが、 重心が静止でない場合にはジェスチャーの一部として認識することができ、 ここで、静止とは、重心の移動が計算された重心の中心から閾量よりも少ないか、或いはある速度閾値未満に留まることを意味する、 タッチセンサパネルの端部領域におけるタッチ接触(タッチ事象)の選択的拒否に関する方法。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特表2013-529338号公報)には、段落【0030】-【0032】に、図面とともに、以下の記載がある。 「【0030】 タッチセンサ式ディスプレイ118上で受信されたジェスチャは、属性に基づいて分析され、メタナビゲーションジェスチャと、他のタッチまたは非メタナビゲーションジェスチャとを区別し得る。メタナビゲーションジェスチャは、ジェスチャが、ディスプレイエリア206と非ディスプレイエリア208との間の境界210等、ディスプレイ112の周縁近傍の境界を乗り越えると、識別され得る。図2の実施例では、メタナビゲーションジェスチャの原点が、非ディスプレイエリア208を被覆する、タッチセンサ式オーバーレイ114のエリアを利用して、決定され得る。 【0031】 ディスプレイエリア206と非ディスプレイエリア208との間で境界210の周囲に延在する、バッファ領域212または帯域は、タッチが、境界210およびバッファ領域212外に原点を有し、バッファ領域212を通って、境界210内の点へと、境界210を乗り越えると、メタナビゲーションジェスチャが識別されるように利用され得る。図2に例証されるが、バッファ領域212は、可視でなくてもよい。代わりに、バッファ領域212は、例えば、所定の数の画素に匹敵する幅に延在する、境界210の周囲の領域であり得る。代替として、境界210は、所定の数のタッチセンサに延在し得るか、またはディスプレイエリア206から所定の距離だけ延在し得る。境界210は、タッチセンサ式領域であり得るか、またはタッチが検出されない領域であり得る。 【0032】 例えば、バッファ領域212内に原点を有するジェスチャは、非メタナビゲーションジェスチャとして識別され得る。随意に、そのようなジェスチャからのデータは、アプリケーションによって、非メタナビゲーションジェスチャとして、利用され得る。代替として、そのようなジェスチャからのデータは、バッファ領域212上に原点を有するタッチが、携帯用電子デバイス100における入力として利用されないように、破棄され得る。」 したがって、上記引用文献2には、タッチの「原点」の位置が、「バッファ領域」(これは、「所定の数の画素に匹敵する幅に延在する、境界210の周囲の領域であ」る。)よりも外側にあるか、「バッファ領域」の上にあるかという場合分けに応じて、タッチを選択的に無効化するという技術的事項が記載されていると認められる。 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2013-142922号公報)には、段落【0060】-【0067】に、図面とともに、以下の記載がある。 「【0060】 タッチ無効化部9は、上記のタッチが所定期間継続するか否かを検出する。換言すれば、タッチ無効化部9は、タッチ検出値がタッチ基準閾値Dthを超えている期間が、所定期間継続するか否かを検出する。 ・・・(中略)・・・ 【0067】 タッチ無効化部9は、タッチパネル1における同じ箇所が所定期間継続してタッチされたときに、このタッチによる電子機器に対する指示を無効とする。これにより、例えば電子機器を持つ手がタッチパネル1に接触する場合のように、タッチパネル1に対する物体の意図しない接触が継続するとき、該接触による指示は行われない。このため、タッチパネル1に対する物体の意図しない接触に起因する誤動作を防止することが可能となる。」 したがって、上記引用文献3には、タッチの「継続時間」による場合分けに応じて、タッチを選択的に無効化するという技術的事項が記載されていると認められる。 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「タッチセンサパネルの端部領域におけるタッチ接触(タッチ事象)の選択的拒否に関する方法」は、本願発明1の「タッチポイント認識方法」に相当する。 イ 引用発明の「全ての接触(例えば指又は手のひら)が端部帯域102内で検出される」こと、及び、「端部帯域102における接触116と共に接触114が中心エリア104で検出され」ることは、本願発明1の「タッチスクリーンの上のタッチイベントを得るステップ」に相当する。 ウ 引用発明の「タッチセンサパネル100」における「端部帯域102(接触拒否領域)」は、本願発明1の「タッチスクリーンエッジ領域」に相当する。 また、引用発明の「端部帯域102(接触拒否領域)」は、「タッチスクリーンの端部から所定の幅を持」つから、タッチスクリーンの端部から所定の画素(ピクセル)数分の幅を持つものであるといえる。 よって、引用発明の「タッチセンサパネル100において、端部帯域102(接触拒否領域)は、中心エリア104を囲むタッチセンサパネル100の外側境界に作成し、ここで、端部帯域102は、タッチスクリーンの端部から所定の大きさの幅を持ち、全ての接触(例えば指又は手のひら)が端部帯域102内で検出される」ことは、本願発明1の「前記タッチイベントに従いタッチスクリーンエッジ領域の範囲内のタッチジェスチャの複数のタッチポイントを決定するステップであって、前記タッチスクリーンエッジ領域は前記タッチスクリーンのエッジから所定ピクセル幅の領域である、ステップ」に相当するといえる。 エ 引用発明の「全ての接触(例えば指又は手のひら)が端部帯域102内で検出される場合には、接触を無視する」ことは、本願発明1の「前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントを無効なタッチポイントとして認識するステップ」に相当する。 よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。 [一致点] 「タッチポイント認識方法であって、 タッチスクリーンの上のタッチイベントを得るステップと、 前記タッチイベントに従いタッチスクリーンエッジ領域の範囲内のタッチジェスチャの複数のタッチポイントを決定するステップであって、前記タッチスクリーンエッジ領域は前記タッチスクリーンのエッジから所定ピクセル幅の領域である、ステップと、 前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントを無効なタッチポイントとして認識するステップと、 を含むタッチポイント認識方法。」 [相違点1] 本願発明1では、「前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントを無効なタッチポイントとして認識するステップ」が、さらに、 「前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントのうちの1つのタッチポイントが前記タッチイベントに従い決定された後の所定時間期間の間に、前記タッチイベントの他に前記タッチスクリーンにより渡されるタッチプレスが受信されない場合、前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記1つのタッチポイントを最初のタッチポイントとして検出するステップと、 前記複数のタッチポイントが前記最初のタッチポイントとして検出された場合、前記タッチジェスチャの期間が予め設定された時間閾より大きい又は等しいことを検出するステップと、 前記タッチジェスチャの前記期間が前記予め設定された時間閾より大きい又は等しいことが検出された場合、前記最初のタッチポイントを前記無効なタッチポイントとして認識するステップと、 前記1つのタッチポイント以外の前記複数のタッチポイントのうちの残りのタッチポイントについて、 前記残りのタッチポイントが移動し、前記残りのタッチポイントの移動距離が予め設定された距離閾より小さい、又は前記残りのタッチポイントの移動速度が予め設定された速度閾より小さい場合、前記残りのタッチポイントを無効なタッチポイントとして認識するステップと、 前記残りのタッチポイントが移動せず、前記残りのタッチポイントが移動しない期間が予め設定された時間閾より大きい又は等しい場合、前記残りのタッチポイントを前記無効なタッチポイントとして認識するステップ」 (以下、これら一連のステップを「最初のタッチポイントに係る一連のステップ」という。)を含むのに対して、引用発明では、「全ての接触(例えば指又は手のひら)が端部帯域102内で検出される場合には、接触を無視することができ」るステップは、さらに、上記「最初のタッチポイントに係る一連のステップ」を含まない点。 (2) 相違点についての判断 上記[相違点1]について検討する。 本願発明1の上記[相違点1]に係る「最初のタッチポイントに係る一連のステップ」という構成は、上記引用文献2-3には記載されておらず、周知技術であるとも認められない。 すなわち、上記「第3」の「2.」、「3.」に記載されるように、引用文献2には、タッチの「原点」の位置が、「バッファ領域」よりも外側の位置にあるか、「バッファ領域」の上にあるかという場合分けに応じて、タッチを選択的に無効化するという技術的事項が記載され、引用文献3には、タッチの「継続時間」による場合分けに応じて、タッチを選択的に無効化するという技術的事項が記載されていると認められるが、「最初のタッチポイント」であるか否かに基づいて行うことは、上記引用文献2-3には記載されていない。 なお、引用発明では、その他の選択的に無効化を行うための基準として、端部帯域102における接触116(端部接触116)と中心エリア104における接触114とが検出された場合に、端部接触116の移動量による場合分けに応じて、接触を無視したり、認識したりすることや、タッチセンサパネルの下部領域302の接触304について、重心が静止しているか静止でないかに応じて、接触を無視したり、認識したりしているものの、「最初のタッチポイント」であるか否かに基づくものではない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2は、本願発明1の「タッチポイント認識方法」に対応する「タッチポイント認識装置」の発明であり、本願発明1の上記[相違点1]に係る「最初のタッチポイントに係る一連のステップ」と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定(平成30年2月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 理由2 本願の請求項1に係る発明は、上記引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由3 本願の特許請求の範囲の請求項1、2の「最初のタッチポイント」という記載の意味は不明確であるから、本願は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない。 しかしながら、上記理由2については、平成31年3月22日付け手続補正により補正された請求項1は、上記「最初のタッチポイントに係る一連のステップ」という事項を有するものとなっているから、上記のとおり、本願発明1は、上記引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。 また、同様に、平成31年3月22日付け手続補正により補正された請求項2は、上記「最初のタッチポイントに係る一連のステップ」に対応するものの構成を有するものとなっているから、本願発明2は、上記引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。 また、上記理由3については、平成31年3月22日付け手続補正により補正された請求項1において、「最初のタッチポイント」とは、「前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントのうちの1つのタッチポイントが前記タッチイベントに従い決定された後の所定時間期間の間に、前記タッチイベントの他に前記タッチスクリーンにより渡されるタッチプレスが受信されない場合、前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記1つのタッチポイントを最初のタッチポイントとして検出する」ものであることが補正により特定された結果、この拒絶の理由は解消した。 また、同様に、平成31年3月22日付け手続補正により補正された請求項2において、「最初のタッチポイント」とは、「前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記複数のタッチポイントのうちの1つのタッチポイントが前記タッチイベントに従い決定された後の所定時間期間閾の間に、前記タッチイベントの他に前記タッチスクリーンにより渡されるタッチプレスが受信されない場合、前記タッチスクリーンエッジ領域の範囲内の前記タッチジェスチャの前記1つのタッチポイントを最初のタッチポイントとして検出する」ものであることが補正により特定された結果、この拒絶の理由は解消した。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)について 当審では、請求項1-2の「複数のタッチポイントを最初のタッチポイントとして検出する」という記載の意味が不明確である旨の拒絶の理由を通知しているが、平成31年3月22日付けの補正において、「1つのタッチポイントを最初のタッチポイントとして検出する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-05-07 |
出願番号 | 特願2016-571021(P2016-571021) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼瀬 健太郎 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 梶尾 誠哉 |
発明の名称 | タッチポイント認識方法及び装置 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |