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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1351254
審判番号 不服2018-9229  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-04 
確定日 2019-06-03 
事件の表示 特願2016-175410「太陽電池の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月19日出願公開,特開2017- 17331,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2008年4月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年1月23日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2010-543393号の一部を平成26年12月4日に新たな特許出願とした特願2014-245878号の一部を新たな特許出願としたものであって,平成28年12月6日に手続補正書が提出され,平成29年7月27日付けで拒絶理由通知がされ,平成30年2月5日に意見書と手続補正書が提出され,平成30年2月22日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成30年7月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成30年8月8日に手続補正書が提出され,平成30年9月18日付けで前置報告がされ,平成30年10月3日及び平成30年12月27日に審判請求人から上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年2月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-6に係る発明は,以下の引用文献1-2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2007-180519号公報
2.ARANA, L.R., et al.,"Isotropic etching of silicon in fluorine gas for MEMS micromachining",Journal of Micromechanics and Microengineering,英国,IOP Publishing,2007年 2月28日,Vol.17, No.2,pp.384-392

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正における,請求項1に記載されたフッ素の含有量の上限を「25体積%」から「22体積%」へと減少させる補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして,前記「22体積%」という上限は,当初明細書の【0016】に記載されているから,新規事項を追加するものではない。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-6に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,平成30年7月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
シリコンウェーハから太陽電池を製造する方法であって,フッ素及び窒素の混合物から成るエッチングガスで前記シリコンウェーハをエッチングするステップを含み,前記フッ素の含有量が1体積%以上かつ22体積%以下であり,前記シリコンウェーハの表面をエッチングして前記表面を粗面化する,方法。
【請求項2】
N型ドープコーティングを伴うP型ドープシリコンウェーハが処理される,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの亀裂を有するウェーハがエッチングされる,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リン‐ガラス様コーティングを有するウェーハがエッチングされる,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エッチングの後に前記シリコンウェーハに対して接点電極が適用される,請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法によって製造された二つ以上の太陽電池を組立てる,ソーラーパネルの製造方法。」

第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
第1のチャンバ内に太陽電池素子用の基体を配置し,第1のガスを供給して前記基体の一主面をエッチングすることで,エッチング残渣を付着させつつ前記一主面を粗面化する粗面化工程と,
第2のチャンバの内部に前記基体を配置し,前記第1のガスより低反応性の第2のガスを供給し,前記第2のガスをプラズマ状態とすることによって,前記一主面に残存する前記エッチング残渣を除去する残渣除去工程と,
を含むことを特徴とする太陽電池素子の製造方法。
・・・
【請求項4】
前記粗面化工程は,反応性イオンエッチングにより行われることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の太陽電池素子の製造方法。」

「【背景技術】
【0002】
太陽電池は表面に入射した太陽光などの光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。この電気エネルギーへの変換効率を向上させるため,従来から様々な試みがなされてきた。そのひとつに基板の表面に照射された光の反射を低減することで電気エネルギーヘの変換効率を高める技術がある。」

「【0005】
シリコン基板を用いて太陽電池素子を形成する場合に,基板の表面を水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液でエッチングすると,基板の表面に微細な表面凹凸構造が形成され,基板の表面の反射をある程度低減させることができる。
【0006】
例えば,面方位が(100)面の単結晶シリコン基板を用いた場合は,このような方法でピラミッド状の表面凹凸構造を基板の表面に均一に形成することができる。しかしながら,アルカリ水溶液によるエッチングでは結晶の面方位に依存することから,多結晶シリコン基板で太陽電池素子を形成する場合,表面凹凸構造を均一には形成できず,全体の反射率も効果的には低減できないという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するために,太陽電池素子を多結晶シリコン基板で形成する場合,反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて,基板の一主面に表面凹凸構造を形成することが提案されている(例えば,特許文献1参照)。
【0008】
ドライエッチングするとシリコンは基本的には気化するが,一部は気化しきれず,シリコン分子同士が吸着して基板の表面にエッチング残渣として残る。このことを利用し,基板の表面を反応性イオンエッチング法および類似のドライエッチング法でエッチングすることで生じる,基板材料を主成分とするエッチング残渣が,基板の表面に再付着する速度を促進させ,このエッチング残渣を該エッチングのマスクとして利用することで,基板の表面を粗面化することができる。
【0009】
この方法を用いると,多結晶シリコン基板を用いた場合でも,その面方位の影響を受けにくいエッチングが可能となり,その表面に,多数の微細な突起からなる表面凹凸構造を均一に形成することができる。すなわち,多結晶シリコンを用いた太陽電池素子であっても,反射率をより効果的に低減し,変換効率を向上させることができる。」

「【0028】
<太陽電池素子の構成概要>
図1は本実施の形態に係る太陽電池素子の製造方法を用いて形成される太陽電池素子10の構成を概略的に示す断面模式図である。図1に示すように,太陽電池素子10は,表面側(受光面側)に表面凹凸構造2を有する半導体基板1と,半導体基板1の該表面側に形成されてなる表面側不純物拡散層3と,半導体基板1の裏面側に形成されてなる裏面側不純物拡散層(BSF)4と,反射防止膜5と,表面電極6と,取出電極7aと集電電極7bとからなる裏面電極7とから,主として構成される。
【0029】
半導体基板1の極性はp型,n型いずれでもよいが,本実施の形態では便宜上ドーピング不純物元素としてB(ホウ素)をSi(シリコン)に含有したp型のシリコン基板を半導体基板1として用いる場合について説明する。」

「【0033】
半導体基板1の表面側には,入射する光を反射させずに有効に取り込むための表面凹凸構造2が形成されてなる。表面凹凸構造2は,例えば,所定のチャンバ内に半導体基板1を載置して真空引きしたうえで,ガスを導入して一定圧力に保持し,該チャンバ内に設けられた電極にRF電力を印加することでプラズマを発生させ,プラズマ中のイオンやラジカルによって半導体基板1の表面をエッチングすることで形成される。
【0034】
この表面凹凸構造2のアスペクト比(高さ/幅)は0.1?2の範囲とすることが望ましい。アスペクト比が2を超えると太陽電池素子の製造過程で表面凹凸構造2が破損し,太陽電池素子を形成した場合にリーク電流が多くなって良好な出力特性が得られないという問題がある。アスペクト比が0.1未満では,例えば波長500?1000nmの光の平均反射率が25%程度となり,半導体基板1の表面での反射率が大きくなるという問題がある。
【0035】
この表面凹凸構造2の形成については,後で詳細に説明する。」

「【0053】
なお,エッチングガス(第1のガス)としては,半導体基板1に対するエッチング作用が大きい,特に化学的な反応性が高い,17族の元素を含むガスを用いる。なお,17族の元素とは,族番号に1-18の通し番号を用いる1989年改訂のIUPAC無機化学命名法に基づき17族に分類される元素を指す。
【0054】
例えば,エッチングガスとして塩素系ガスとフッ素系ガスと酸素ガスとを所定流量で流しながら,反応圧力を5?15Pa程度とし,RF電力を5?10kW程度で印加してプラズマを発生させることで,半導体基板1の表面を粗面化することができる。
【0055】
より具体的にいえば,チャンバ17内に,塩素(Cl_(2))と酸素(O_(2))と三フッ化メタン(CHF_(3))を流量比で1:6:4の割合で導入しながら,反応圧力を7Paとし,プラズマを発生させるRF電力5kWとして,5分間程度のエッチングを行うのが,その好適な一例である。
【0056】
ただし,第1のガスは,塩素(Cl_(2)),三フッ化メタン(CHF_(3))に限定されることはなく,例えば,塩素系ガスとしてHCl,ClF_(3),フッ素系ガスとしてF_(2),NF,CF_(4),C_(2)F_(6),C_(3)F_(8),ClF_(3),SF_(6)等の他の気体を組み合わせて使用しても構わない。
【0057】
図3(a)は,このようにして,半導体基板1の表面を粗面化した直後の状態を示す図である。粗面化工程を経た直後の半導体基板1の表面には,図3(a)に示すような,突起部23の上にピラー部22を介してエッチング残渣21が付着した構造が,微細均一に形成されてなる。
【0058】
半導体基板1の表面をエッチングすると,該表面の構成成分は基本的には離脱する。しかしながら,該構成成分の一部は離脱しきれずに半導体基板1の表面に残り,離脱した物質の一部は再度,半導体基板の表面に吸着する。これらがエッチング残渣21となることによって,図3(a)のような構造が形成される。すなわち,粗面化工程においては,エッチングされた半導体基板1の材料を主成分とするエッチング残渣21を半導体基板1の表面に意図的に再付着させ,これをエッチングのマスクとして利用することで,ひいては表面凹凸構造2の形成につながる半導体基板1の表面の粗面化を実現している。
【0059】
このように,ガス条件,反応圧力,RF電力などを適宜に調整し,半導体基板1と同一材料からなるエッチング残渣21が,半導体基板1の表面に再付着するような条件でドライエッチングを行うと,係る半導体基板1の表面を確実に粗面化することができる。逆に半導体基板1の表面に,図3(a)に示すようなエッチング残渣21が残らない,即ちエッチング残渣をエッチングマスクとして利用できないような条件でドライエッチングを行ったとしても,基板表面をエッチングすることで形成された凹部の内底面がフラットになることから,粗面化およびこれに引き続く表面凹凸構造2の形成は困難である。」

「【0077】
第2のガスには,不活性ガスを含むことが好適である。
【0078】
ここで,不活性ガスとは,18族に属する,ヘリウム(He),ネオン(Ne),アルゴン(Ar),クリプトン(Kr),キセノン(Xe),ラドン(Rn)等の元素からなるガスを指すこととする。
【0079】
不活性ガスを構成する原子は,化学的に非常に不活性であるため,半導体基板1に対するエッチング作用もなく,また,半導体基板1に対して不純物として作用することもなく,単にエッチング残渣21を除去する作用のみを有するからである。
【0080】
ここで,不活性ガスのひとつである窒素ガスを第2のガスに使用した場合を例にとって説明する。
【0081】
粗面化工程の後,一度,チャンバ内の気体を真空引きする減圧工程を経て,チャンバ内に第2のガスとして窒素ガスを供給する。そして,RF電源15からRF電力をRF電極12に印加すると,気体温度に比べて電子温度が高くなったいわゆる非平衡プラズマである窒素プラズマが形成される。このような窒素プラズマの状態を形成し,窒素分子や窒素イオン,窒素ラジカルなどの活性種によって,一定時間プラズマ放電を起こすことにより,エッチング残渣21を除去することができる。
【0082】
窒素プラズマによるエッチング残渣除去は,フッ素系エッチングガスを用いた場合よりも,半導体基板1との反応性が低いため,半導体基板1に損傷を与えることなく,微細な突起部23を保持しつつエッチング残渣21を除去することができる。
【0083】
ここで,半導体基板1との反応性が低いということは,窒素には半導体基板1との間で,エッチング作用が働きにくいことを示している。従って,エッチング残渣21は,窒素分子や窒素イオン,窒素ラジカルなどのプラズマ種による衝突などにより,除去されたものだと考えられる。また,不活性ガスは,フッ素系エッチングガスに比べてはるかに安全で安価な安定したガスであり,特別な取り扱いや,安全装置,除害設備を設ける必要もなく,環境にも悪影響を与えない。よって,低コストで,生産性を低下させることなくエッチング残渣除去を行なうことができる。」

(2)したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「第1のチャンバ内に太陽電池素子用の基体を配置し,第1のガスを供給して前記基体の一主面をエッチングすることで,エッチング残渣を付着させつつ前記一主面を粗面化する粗面化工程であって,
前記粗面化工程が,反応性イオンエッチングにより行われる工程と,
第2のチャンバの内部に前記基体を配置し,前記第1のガスより低反応性の第2のガスを供給し,前記第2のガスをプラズマ状態とすることによって,前記一主面に残存する前記エッチング残渣を除去する残渣除去工程と,
を含む太陽電池素子の製造方法であって,
前記太陽電池素子用の基体は,ドーピング不純物元素としてB(ホウ素)をSi(シリコン)に含有したp型のシリコン基板であり,
前記第1のガス(エッチングガス)としては,半導体基板1に対するエッチング作用が大きい,特に化学的な反応性が高い,17族の元素を含むガスを用いるものであって,例えば,エッチングガスとして塩素系ガスとフッ素系ガスと酸素ガスとを所定流量で流しながら,反応圧力を5?15Pa程度とし,RF電力を5?10kW程度で印加してプラズマを発生させることで,半導体基板1の表面を粗面化するものであり,より具体的にいえば,チャンバ内に,塩素(Cl_(2))と酸素(O_(2))と三フッ化メタン(CHF_(3))を流量比で1:6:4の割合で導入しながら,反応圧力を7Paとし,プラズマを発生させるRF電力5kWとして,5分間程度のエッチングを行うのが,その好適な一例である,
太陽電池素子の製造方法。」

(3)さらに,上記引用文献1には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 太陽電池は表面に入射した太陽光などの光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり,この電気エネルギーへの変換効率を向上させるため,基板の表面に照射された光の反射を低減して電気エネルギーヘの変換効率を高める技術があること。

イ シリコン基板を用いて太陽電池素子を形成する場合に,基板の表面を水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液でエッチングすると,基板の表面に微細な表面凹凸構造が形成され,基板の表面の反射をある程度低減させることができるが,アルカリ水溶液によるエッチングでは結晶の面方位に依存することから,多結晶シリコン基板で太陽電池素子を形成する場合,表面凹凸構造を均一には形成できず,全体の反射率も効果的には低減できないという問題があること。

ウ ドライエッチングするとシリコンは基本的には気化するが,一部は気化しきれず,シリコン分子同士が吸着して基板の表面にエッチング残渣として残るので,これを利用して,基板の表面を反応性イオンエッチング法および類似のドライエッチング法でエッチングすることで生じる,基板材料を主成分とするエッチング残渣が,基板の表面に再付着する速度を促進させ,このエッチング残渣を該エッチングのマスクとして利用して,基板の表面を粗面化すると,多結晶シリコン基板を用いた場合でも,その面方位の影響を受けにくいエッチングが可能となり,その表面に,多数の微細な突起からなる表面凹凸構造を均一に形成することができるので,多結晶シリコンを用いた太陽電池素子であっても,反射率をより効果的に低減し,変換効率を向上させることができること。

エ 一主面に残存する前記エッチング残渣を除去する残渣除去工程で用いられる第2のガスには,不活性ガスを含むことが好適であり,窒素プラズマによるエッチング残渣除去は,フッ素系エッチングガスを用いた場合よりも,半導体基板1との反応性が低いため,半導体基板1に損傷を与えることなく,微細な突起部を保持しつつエッチング残渣を除去することができるものであり,エッチング残渣は,窒素分子や窒素イオン,窒素ラジカルなどのプラズマ種による衝突などにより,除去されると考えられること。

オ 第1のガスは,塩素(Cl_(2)),三フッ化メタン(CHF_(3))に限定されることはなく,例えば,塩素系ガスとしてHCl,ClF_(3),フッ素系ガスとしてF_(2),NF,CF_(4),C_(2)F_(6),C_(3)F_(8),ClF_(3),SF_(6)等の他の気体を組み合わせて使用しても構わないこと。

2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の第385頁右欄から第386頁左欄にかけての2.2. F2 etching system及び第387頁左欄から第389頁左欄にかけての3.1. Etching of silicon with F2には,25体積%のフッ素を含有するフッ素及び窒素の混合物から成るエッチングガスによってシリコンをエッチングすることと,エッチングにおいてシリコン表面が粗面化されるという技術的事項が記載されていると認められる。

3.その他の文献について
また,前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2005-354048号公報)の【0002】,【0014】-【0018】,引用文献4(特表2002-539096号公報)の【0015】,及び,引用文献5(特開平03-138082号公報)の第5頁左上欄第15行?右上欄第18行には,エッチング等の処理を行うに際し,処理ガスであるフッ素ガスを不活性ガスとしての窒素ガスで希釈するという技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明における「ドーピング不純物元素としてB(ホウ素)をSi(シリコン)に含有したp型のシリコン基板」,「太陽電池素子」は,本願発明1における「シリコンウェーハ」,「太陽電池」に相当する。

イ 引用発明における「第1のガスを供給して前記基体の一主面をエッチングすることで,エッチング残渣を付着させつつ前記一主面を粗面化する粗面化工程」は,本願発明1の「シリコンウェーハの表面をエッチングして前記表面を粗面化する」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

<一致点>
「シリコンウェーハから太陽電池を製造する方法であって,前記シリコンウェーハの表面をエッチングして前記表面を粗面化する,方法。」

<相違点>
本願発明1は,「フッ素及び窒素の混合物から成るエッチングガスで前記シリコンウェーハをエッチングするステップを含み,前記フッ素の含有量が1体積%以上かつ22体積%以下であり」という構成を備えるのに対し,引用発明は,「『第1のガスを供給して前記基体の一主面をエッチングすることで,エッチング残渣を付着させつつ前記一主面を粗面化する粗面化工程』であって,『前記第1のガス(エッチングガス)としては,半導体基板1に対するエッチング作用が大きい,特に化学的な反応性が高い,17族の元素を含むガスを用いるものであって,例えば,エッチングガスとして塩素系ガスとフッ素系ガスと酸素ガスとを所定流量で流しながら,反応圧力を5?15Pa程度とし,RF電力を5?10kW程度で印加してプラズマを発生させることで,半導体基板1の表面を粗面化するものであり,より具体的にいえば,チャンバ内に,塩素(Cl_(2))と酸素(O_(2))と三フッ化メタン(CHF_(3))を流量比で1:6:4の割合で導入しながら,反応圧力を7Paとし,プラズマを発生させるRF電力5kWとして,5分間程度のエッチングを行うのが,その好適な一例である』」と特定されている点。

(2)相違点についての判断
引用文献2には,25体積%のフッ素を含有するフッ素及び窒素の混合物から成るエッチングガスによってシリコンをエッチングすることと,エッチングにおいてシリコン表面が粗面化されるという技術的事項が記載されていると認められる。

一方,上記第5の1.(3)ウのとおり,引用文献1には,基板の表面を反応性イオンエッチング法および類似のドライエッチング法でエッチングすることで生じる,基板材料を主成分とするエッチング残渣が,基板の表面に再付着する速度を促進させ,このエッチング残渣を該エッチングのマスクとして利用して基板の表面を粗面化することで,多数の微細な突起からなる表面凹凸構造を均一に形成することができるとする技術的事項が記載されていることから,引用発明の「第1のガス(エッチングガス)」として,「『半導体基板1に対するエッチング作用が大きい,特に化学的な反応性が高い,17族の元素を含むガス』,『例えば,エッチングガスとして塩素系ガスとフッ素系ガスと酸素ガス』,『より具体的にいえば,チャンバ内に,塩素(Cl_(2))と酸素(O_(2))と三フッ化メタン(CHF_(3))』」を用いるのは,当該組成を有するガスを選択することによって,基板材料を主成分とするエッチング残渣が,基板の表面に再付着する速度を促進して,その結果として,多数の微細な突起からなる表面凹凸構造を均一に形成するためであると認められる。

さらに,上記第5の1.(3)エのとおり,引用文献1には,一主面に残存する前記エッチング残渣を除去する残渣除去工程で用いられる第2のガスには,不活性ガスを含むことが好適であり,窒素プラズマによるエッチング残渣除去は,フッ素系エッチングガスを用いた場合よりも,半導体基板1との反応性が低いため,半導体基板1に損傷を与えることなく,微細な突起部を保持しつつエッチング残渣を除去することができるものであり,エッチング残渣は,窒素分子や窒素イオン,窒素ラジカルなどのプラズマ種による衝突などにより,除去されると考えられるとする技術的事項が記載されており,窒素イオンなどのプラズマ種による衝突により,エッチング残渣が除去されるといえる。

してみれば,基板材料を主成分とするエッチング残渣が,基板の表面に再付着する速度を促進して,その結果として,多数の微細な突起からなる表面凹凸構造が均一に形成された粗面化された表面を得る引用発明において,当該粗面化された表面を得るための反応性イオンエッチング工程で用いる第1のガスとして,引用発明で選択されている「『半導体基板1に対するエッチング作用が大きい,特に化学的な反応性が高い,17族の元素を含むガス』,『例えば,エッチングガスとして塩素系ガスとフッ素系ガスと酸素ガス』,『より具体的にいえば,チャンバ内に,塩素(Cl_(2))と酸素(O_(2))と三フッ化メタン(CHF_(3))』」に替えて,引用文献2に記載された「25体積%のフッ素を含有するフッ素及び窒素の混合物から成るエッチングガス」を用いると,前記窒素のイオン化によって形成される窒素イオンの衝突により前記エッチング残渣が除去されることなり,その結果,エッチング残渣が,基板の表面に再付着する速度が減少してしまい,多数の微細な突起からなる表面凹凸構造が均一に形成されることが妨げられるものと認められる。

すなわち,引用発明の第1のガスとして,「『半導体基板1に対するエッチング作用が大きい,特に化学的な反応性が高い,17族の元素を含むガス』,『例えば,エッチングガスとして塩素系ガスとフッ素系ガスと酸素ガス』,『より具体的にいえば,チャンバ内に,塩素(Cl_(2))と酸素(O_(2))と三フッ化メタン(CHF_(3))』」を用いることに替えて,引用文献2に記載された「25体積%のフッ素を含有するフッ素及び窒素の混合物から成るエッチングガス」を用いることには阻害要因があるといえる。

そして,上記引用文献3?5に記載された上記技術的事項によっても,上記判断は左右されるものではない。

したがって,上記相違点におけるフッ素の含有量の違いについてまでは判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6も,本願発明1の「フッ素及び窒素の混合物から成るエッチングガスで前記シリコンウェーハをエッチングするステップを含み,前記フッ素の含有量が1体積%以上かつ22体積%以下であり」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により,本願発明1-6は「フッ素及び窒素の混合物から成るエッチングガスで前記シリコンウェーハをエッチングするステップを含み,前記フッ素の含有量が1体積%以上かつ22体積%以下であり」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-20 
出願番号 特願2016-175410(P2016-175410)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊田 寛史高橋 宣博  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
発明の名称 太陽電池の製造方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
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